説明

窒化チタン剥離液、及び窒化チタン被膜の剥離方法

【課題】窒化チタン被膜を剥離するための窒化チタン剥離液であって、絶縁層に影響を与えることなく、窒化チタン被膜を剥離することができる窒化チタン剥離液を提供すること。
【解決手段】フッ酸、過酸化水素、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性有機溶剤が多価アルコール又はそのアルキルエーテルを含む、窒化チタン剥離液。本発明によれば、窒化チタン剥離液がグリコールエーテルを含有するので、窒化チタン被膜を剥離する際に、窒化チタン剥離液による絶縁層への浸食を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化チタン剥離液、及び窒化チタン被膜の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス製造等におけるエッチング加工では、一般にフォトレジストや電子線レジスト等のレジスト材料を被エッチング基材表面に塗布し、リソグラフィー技術によってパターン形成したレジスト膜をエッチングマスクとしてエッチングを行い、エッチング後にレジスト膜を剥離して被エッチング基材に所定のパターンを形成している。ここで、レジスト膜をエッチングマスクとしたエッチングにおいて、用いられる被エッチング基材のエッチングレートによっては、被エッチング基材に対するレジスト膜のエッチング選択性の問題から、レジスト膜がエッチングマスクとして十分に機能しない場合があった。
【0003】
このため、レジスト膜をエッチングマスクとして用い、エッチング選択性が低くなる被エッチング基材をエッチングする場合には、チタン被膜や窒化チタン被膜等からなり、ハードマスクと呼ばれるエッチングマスクを設け、被エッチング基材に対するエッチングマスクのエッチング選択性を高く維持している。ハードマスクをエッチングマスクとして用いた場合において、被エッチング基材のエッチング後に、導体層や絶縁層に損傷を与えることなく、チタンや窒化チタンからなるエッチングマスクを除去できるエッチングマスクの剥離液が求められている。
【0004】
窒化チタン被膜を利用する他の技術としては、例えばハイブリッドゲート構造を有するトランジスタの製造技術が知られている。ハイブリッドゲート構造を有するp型トランジスタにおいては、高誘電率膜に窒化チタン被膜が積層された構造が形成されており、この窒化チタン被膜をパターン形成する際に用いる窒化チタン剥離液であるエッチング液として、高誘電率膜の特性に影響を与えないエッチング液が求められている。
【0005】
ここで、チタン薄膜の溶解液としては、特許文献1に、フッ酸及び過酸化水素を含む水溶液からなることを特徴とするチタンのエッチング剤が開示されている。特許文献1に記載のチタンのエッチング剤によれば、レジストを浸食せず、また下地がアルミニウム又はその合金、SiO、Siの場合、それらの材料にも影響が少なく、チタン薄膜の微細なパターンの形成が可能であるとされる。
【特許文献1】特開2002−146562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載のエッチング剤は窒化チタン被膜の剥離液としても用いることができるものではあるが、当該エッチング剤における絶縁膜の防食効果は必ずしも十分ではなく、窒化チタン被膜を剥離する際の条件によっては、絶縁層の電気的性質に影響を及ぼす場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、窒化チタン被膜を剥離するための窒化チタン剥離液であって、絶縁層に影響を与えることなく、窒化チタン被膜を剥離することができる窒化チタン剥離液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フッ酸、過酸化水素、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性溶剤が多価アルコール又はそのアルキルエーテルを含む窒化チタン剥離液を用いて窒化チタン薄膜を剥離したとき、絶縁層に損傷を与えることなく窒化チタン被膜を剥離できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
本発明の第一の態様は、フッ酸、過酸化水素、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性有機溶剤が多価アルコール又はそのアルキルエーテルを含む、窒化チタン剥離液である。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、タングステン又はタングステン合金を含む層と、低誘電率膜と、を有する半導体多層積層体に形成される窒化チタン被膜を、本発明の窒化チタン剥離液に接触させることにより剥離する、窒化チタン被膜の剥離方法である。
【0012】
更に、本発明の第三の態様は、高誘電率膜を有する半導体多層積層体に形成される窒化チタン被膜を、パターン形成されたレジスト膜を介して本発明の窒化チタン剥離液に接触させることによりエッチングする、窒化チタン被膜のエッチング方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、窒化チタン剥離液が多価アルコール又はそのアルキルエーテルを含有するので、窒化チタン被膜を剥離する際に、窒化チタン剥離液による絶縁層への浸食を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<窒化チタン剥離液>
本発明の窒化チタン剥離液は、フッ酸、過酸化水素、及び水溶性有機溶剤を含む。更に、本発明の窒化チタン剥離液は、必要に応じて無機酸、及び防食剤を含んでいてもよい。なお、この窒化チタン剥離液は、窒化チタン被膜、導体層、絶縁層を有する半導体多層積層体において、窒化チタン被膜を剥離する用途、及び絶縁膜を有する半導体多層積層体において、レジスト膜をエッチングマスクとして窒化チタン被膜をエッチングする用途に、特に好適に用いることができるものである。本発明の窒化チタン剥離液を後者の用途で用いる場合、窒化チタン剥離液は、必要に応じて無機酸、及び防食剤を含んでいてもよいが、これらの成分を含んでいる必要は無い。
【0015】
[フッ酸]
本発明の窒化チタン剥離液は、フッ酸を含む。窒化チタン剥離液がフッ酸を含むことにより、窒化チタン被膜を効率的に剥離することができる。窒化チタン剥離液に含有させることができるフッ酸の含有量は、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。フッ酸の含有量を上記範囲内とすることにより、窒化チタン剥離液への窒化チタンの溶解性を高く維持するとともに、導体層及び絶縁層に対する浸食を抑制することができる。上記含有量は、0.1質量%以上2質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
[過酸化水素]
本発明の窒化チタン剥離液は、過酸化水素を含む。窒化チタン剥離液が過酸化水素を含むことにより、窒化チタン剥離液への窒化チタンの溶解を促進することができる。更に、過酸化水素は、窒化チタン被膜の溶解の過程で発生する水素ガスを随時捕捉できることから、窒化チタンの溶解が、水素ガスによって局所的に阻害されることがない。
【0017】
窒化チタン剥離液に含有させることができる過酸化水素の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。過酸化水素の含有量を0.1質量%以上とすることにより、窒化チタン剥離液への窒化チタンの溶解性を高く維持することができる。また、過酸化水素の含有量を20質量%以下とすることにより、過剰の過酸化水素によって導体層や絶縁層が浸食されることがない。上記含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0018】
[水溶性有機溶剤]
本発明の窒化チタン剥離液は、多価アルコール又はそのアルキルエーテルを含む水溶性有機溶剤を含有する。窒化チタン剥離液が多価アルコールのアルキルエーテルを含有することにより、窒化チタン被膜を剥離する際における、窒化チタン剥離液による絶縁層への浸食を抑制することができる。
【0019】
窒化チタン剥離液に用いることができる多価アルコールのアルキルエーテルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、グリコールエーテルが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物が更に好ましい。
【化1】

[上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基であり、Rは直鎖状又は分岐状の炭素数1以上4以下のアルキレン鎖であり、nは1以上6以下の整数である。]
【0020】
ここで、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが更に好ましい。R及びRが共にアルキル基であることにより、窒化チタン剥離液により、絶縁層が浸食されることをより有効に抑制することができる。
【0021】
また、グリコールエーテルの水溶性を高く維持することができるという点から、Rがエチレン鎖又はプロピレン鎖であることが好ましい。
【0022】
本発明の窒化チタン剥離液に含有することができる多価アルコールのアルキルエーテルの具体例としては、特に限定されるものではないが、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルを挙げることができる。これらの中でも、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。これらの多価アルコールのアルキルエーテルは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
窒化チタン剥離液に用いることができる多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【化2】

[上記一般式(2)において、Rは水酸基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1以上4以下のアルキレン鎖であり、mは1以上6以下の整数である。]
【0024】
ここで、上記一般式(2)において、Rは、エチレン鎖、プロピレン鎖、又は2−ヒドロキシプロピレン鎖であることが好ましい。
【0025】
本発明の窒化チタン剥離液に用いることができる多価アルコールの具体例としては、特に限定されるものではないが、プロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができる。これらの中でも、プロピレングリコールが好ましい。これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、多価アルコールのアルキルエーテルと多価アルコールとを混合して用いてもよい。
【0026】
本発明の窒化チタン剥離液における多価アルコール又はそのアルキルエーテルの含有量は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。多価アルコール又はそのアルキルエーテルの含有量が、10質量%以上であることにより、窒化チタン剥離液による、絶縁層への浸食を有効に抑制することができる。また、多価アルコール又はそのアルキルエーテルの含有量が90質量%以下であることにより、窒化チタン剥離液への窒化チタンの溶解性を、高く維持することができる。上記含有量は、50質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上85質量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
[無機酸]
本発明の窒化チタン剥離液は、更に無機酸を含んでいてもよい。特に、タングステン又はタングステン合金を含む層が設けられた半導体多層積層体においては、無機酸を用いて窒化チタン剥離液のpHを低下させることにより、タングステン又はタングステン合金を含む層への浸食を低下させることができる。
【0028】
窒化チタン剥離液に含有させることができる無機酸としては、フッ酸以外の無機酸であれば、特に限定されるものではないが、硝酸、硫酸、及び塩酸等を挙げることができる。これらの無機酸は、半導体多層積層体における各種材料に対する影響が少ないため、好ましく用いることができる。上記無機酸としては、硫酸が更に好ましい。
【0029】
窒化チタン剥離液における無機酸の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。無機酸の含有量が0.1質量%以上であることにより、窒化チタン剥離液の、特にタングステン又はタングステン合金等を含む層への浸食を有効に抑制することができる。また、無機酸の含有量が10質量%以下であることにより、窒化チタンの溶解性が低下することがない。上記含有量は、0.5質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
本発明の窒化チタン剥離液に無機酸を含有させる場合、25℃に温調した窒化チタン剥離液100mlを、pH4及びpH7の標準液で校正したpHメーターにて1分間測定したときのpHが3以下であることが好ましい。窒化チタン剥離液のpHを上記のように設定することにより、特にタングステン又はタングステン合金等を含む層を有する半導体多層積層体において、窒化チタン剥離液によるこの層への浸食を、有効に抑制することができる。
【0031】
[防食剤]
本発明の窒化チタン剥離液は、防食剤を含んでいてもよい。この防食剤としては、特に限定されるものではないが、タングステン又はタングステン合金等を含む層を有する半導体多層積層体に適用する場合には、環内に窒素原子を2個有する含窒素5員環化合物を用いることが好ましい。
【0032】
(環内に窒素原子を2個有する含窒素5員環化合物)
環内に窒素原子を2個有する含窒素5員環化合物を窒化チタン剥離液に用いた場合、窒化チタン剥離液の、特にタングステン又はタングステン合金等を含む層への浸食を有効に抑制することができる。
【0033】
環内に窒素原子を2個有する含窒素5員環化合物としては、特に限定されるものではなく、従来公知のイミダゾール及びピラゾール、並びにこれらの誘導体を挙げることができる。具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、及び1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、ピラゾール、アミノピラゾールを挙げることができる。上記含窒素5員環化合物の中でも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビニルイミダゾール、及びアミノピラゾールが好ましい。これらの含窒素5員環化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
窒化チタン剥離液における、上記含窒素5員環化合物の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。上記含窒素5員環化合物の含有量が0.1質量%以上であることにより、窒化チタン剥離液の、特にタングステン又はタングステン合金等を含む層への浸食を有効に抑制することができる。また、上記含窒素5員環化合物の含有量が10質量%以下であることにより、窒化チタンの溶解性が低下することがない。上記含有量は、0.3質量%以上5質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。
【0035】
<窒化チタン被膜の剥離方法>
本発明の窒化チタン被膜の剥離方法は、タングステン又はタングステン合金を含む層と、絶縁層である低誘電率膜と、を有する半導体多層積層体において形成される窒化チタン被膜を、本発明の窒化チタン剥離液を接触させることにより剥離するものである。
【0036】
特に、本発明の窒化チタン被膜の剥離方法は、タングステン又はタングステン合金を含む層と、絶縁層である低誘電率膜とを有する半導体多層積層体において、パターニングされた窒化チタン被膜を用いて被エッチング基材をエッチングした後、本発明の窒化チタン剥離液を窒化チタン被膜に接触させて、エッチングマスクとしての役割を終えた窒化チタン被膜を溶解して剥離する場合に好適に実施することができるものである。
【0037】
更に、本発明の窒化チタン被膜の剥離方法は、絶縁層である高誘電率膜を有する半導体多層積層体に形成される窒化チタン被膜を、パターン形成されたレジスト膜を介して、本発明の窒化チタン剥離液に接触させることによりエッチングするものでもある。
【0038】
この場合、本発明の窒化チタン被膜の剥離方法は、絶縁膜である高誘電率膜を有する半導体多層積層体において、レジスト膜をエッチングマスクとして窒化チタン被膜をエッチングする場合に特に好適に実施することができるものである。
【0039】
なお、窒化チタン被膜と窒化チタン剥離液とを接触させる方法は、特に限定されるものではなく、通常行われる方法を採用することができる。具体的には、例えば浸漬法、パドル法、及びシャワー法等を用いて、窒化チタン被膜と窒化チタン剥離液とを接触させる方法を挙げることができる。なお、本発明の窒化チタン剥離液は、必要に応じて加熱して用いることができる。加熱を行うことにより、窒化チタン被膜の剥離性を向上させることができる。接触させる際の温度としては、20℃から60℃が好ましい。
【0040】
[タングステン又はタングステン合金を含む層]
タングステン又はタングステン合金を含む層に用いられる材料は、タングステン又はタングステン合金を含む金属材料であれば、特に限定されるものではない。このタングステン又はタングステン合金を含む層としては、半導体多層積層体における導体層を挙げることができる。
【0041】
[絶縁層]
低誘電率膜である絶縁層としては、例えば、半導体多層積層体において通常用いられる、SiOやlow−k材等からなる層を挙げることができる。また、高誘電率膜である絶縁層としては、例えば、半導体多層積層体において通常用いられる、高誘電率膜を指し、具体的には、HfOやHfSiONを挙げることができる。
【0042】
本発明の窒化チタン被膜の剥離方法によれば、本発明の窒化チタン剥離液を用いているため、特に絶縁層が設けられている半導体多層積層体において、当該絶縁層に対する浸食を最低限に抑えつつ、窒化チタン被膜を剥離することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下に挙げる実施例において、特に言及しない限り、「%」は「質量%」を表す。
【0044】
<実施例1>
31%過酸化水素水溶液40.00質量部、50%フッ酸0.50質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル57.95質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.50質量部、及び95%硫酸1.05質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0045】
<実施例2>
31%過酸化水素水溶液40.00質量部、50%フッ酸0.50質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル57.95質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.50質量部、及び95%硫酸1.05質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0046】
<実施例3>
31%過酸化水素水溶液15.00質量部、50%フッ酸0.40質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテル80.00質量部、イオン交換水4.10質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.50質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0047】
<比較例1>
純水59.50質量部に、31%過酸化水素水溶液40.00質量部、及び50%フッ酸0.50質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0048】
<評価>
[エッチングレートの測定]
実施例1から3、及び比較例1の窒化チタン剥離液を、各種基板に接触させ、接触前後の膜厚の差を求めた。測定は次の方法により行った。窒化チタン被膜を100nm成膜したウェハの抵抗値を測定し、窒化チタン被膜の膜厚に換算する。タングステン層を100nm成膜したウェハの抵抗値を測定し、タングステン層の膜厚に換算する。P−TEOS層を500nm成膜したウェハをエリプソメーターで測定する。上記の方法で、処理前後の膜厚を測定し、エッチングレートを算出した。測定した各材料のエッチングレート、並びにタングステンに対する窒化チタンのエッチング選択比、及びP−TEOSに対する窒化チタンのエッチング選択比を表1に示す。
【表1】

【0049】
表1から分かるように、グリコールエーテルを含む実施例1から3の窒化チタン剥離液においては、比較例1の窒化チタン剥離液に比べ、窒化チタンのエッチングレートを低下させること無く、タングステン及びP−TEOSを焼成した絶縁膜のエッチングレートを低く抑えていることが分かる。このため、タングステン及びP−TEOSを焼成した絶縁膜それぞれに対する窒化チタンのエッチング選択比が高くなっている。即ち、実施例1から3の窒化チタン剥離液を用いることにより、タングステンやP−TEOSを焼成した絶縁膜に影響を与えることなく、窒化チタンを有効に剥離できることが分かる。
【0050】
<実施例4>
31%過酸化水素水溶液40.00質量部、50%フッ酸0.50質量部、プロピレングリコール58.0質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.50質量部、95%硫酸1.00質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0051】
<実施例5>
31%過酸化水素水溶液40.00質量部、50%フッ酸0.50質量部、トリエチレングリコールジメチルエーテル58.4質量部、及びイオン交換水1.10質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0052】
<比較例2>
31%過酸化水素水溶液40.00質量部、50%フッ酸0.50質量部、及びイオン交換水59.5質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0053】
<比較例3>
31%過酸化水素水溶液40.00質量部、50%フッ酸0.50質量部、ジメチルスルホキシド58.1質量部、及びイオン交換水1.40質量部を加えて窒化チタン剥離液とした。
【0054】
<評価>
[エッチングレートの測定]
実施例4及び5、及び比較例2及び3の窒化チタン剥離液を、各種基板に接触させ、接触前後の膜厚の差を求めた。測定は次の方法により行った。窒化チタン被膜を100nm成膜したウェハの抵抗値を測定し、窒化チタン被膜の膜厚に換算する。HfO層を500nm成膜したウェハをエリプソメーターで測定する。レジスト膜を300nm成膜したウェハをNanoSpecで測定する。上記の方法で、処理前後の膜厚を測定し、エッチングレートを算出した。測定した各材料のエッチングレートを表2に示す。
【表2】

【0055】
表2から分かるように、多価アルコールを含む実施例4及び5の窒化チタン剥離液においては、比較例2及び3の窒化チタン剥離液に比べ、窒化チタンのエッチングレートを低下させること無く、HfO層及びレジスト膜のエッチングレートを低く抑えていることが分かる。即ち、実施例4及び5の窒化チタン剥離液を用いることにより、絶縁膜やレジスト膜に影響を与えることなく、窒化チタン被膜を有効に剥離できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸、過酸化水素、及び水溶性有機溶剤を含有し、
前記水溶性有機溶剤が多価アルコール又はそのアルキルエーテルを含む、窒化チタン剥離液。
【請求項2】
前記水溶性有機溶剤が、下記一般式(1)で表される、請求項1に記載の窒化チタン剥離液。
【化1】

[上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基であり、Rは直鎖状又は分岐状の炭素数1以上4以下のアルキレン鎖であり、nは1以上6以下の整数である。]
【請求項3】
前記一般式(1)において、Rがエチレン鎖又はプロピレン鎖である、請求項2に記載の窒化チタン剥離液。
【請求項4】
前記水溶性有機溶剤がジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1から3のいずれかに記載の窒化チタン剥離液。
【請求項5】
前記水溶性有機溶剤が下記一般式(2)で表される、請求項1に記載の窒化チタン剥離液。
【化2】

[上記一般式(2)において、Rは水酸基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1以上4以下のアルキレン鎖であり、mは1以上6以下の整数である。]
【請求項6】
前記一般式(2)において、Rがエチレン鎖、プロピレン鎖、又は2−ヒドロキシプロピレン鎖である、請求項5に記載の窒化チタン剥離液。
【請求項7】
前記水溶性有機溶剤がプロピレングリコールである、請求項1、5、又は6に記載の窒化チタン剥離液。
【請求項8】
前記水溶性有機溶剤の含有量が10質量%以上90質量%以下である、請求項1から7のいずれかに記載の窒化チタン剥離液。
【請求項9】
更に、硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の無機酸を含有する、請求項1から8のいずれかに記載の窒化チタン剥離液。
【請求項10】
更に、環内に窒素原子を2個有する含窒素5員環化合物を含有する、請求項1から9のいずれかに記載の窒化チタン剥離液。
【請求項11】
タングステン又はタングステン合金を含む層と、低誘電率膜と、を有する半導体多層積層体において、窒化チタン被膜を剥離するために用いられる請求項1から10のいずれかに記載の窒化チタン剥離液。
【請求項12】
高誘電率膜を有する半導体多層積層体において、レジスト膜をエッチングマスクとして窒化チタン被膜をエッチングするために用いられる請求項1から10のいずれかに記載の窒化チタン剥離液。
【請求項13】
前記高誘電率膜がHfを含有する絶縁膜である請求項12に記載の窒化チタン剥離液。
【請求項14】
タングステン又はタングステン合金を含む層と、低誘電率膜と、を有する半導体多層積層体に形成される窒化チタン被膜を、請求項1から11のいずれかに記載の窒化チタン剥離液に接触させることにより剥離する、窒化チタン被膜の剥離方法。
【請求項15】
高誘電率膜を有する半導体多層積層体に形成される窒化チタン被膜を、パターン形成されたレジスト膜を介して請求項1から10のいずれか、12、又は13に記載の窒化チタン剥離液に接触させることによりエッチングする、窒化チタン被膜のエッチング方法。

【公開番号】特開2009−44129(P2009−44129A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144933(P2008−144933)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】