説明

窒化物半導体発光素子

【課題】本発明は窒化物半導体発光素子に関する。
【解決手段】本発明の一実施形態による窒化物半導体発光素子は、n型及びp型窒化物半導体層と、上記n型及びp型窒化物半導体層の間に形成された活性層と、上記n型窒化物半導体層と上記活性層との間に形成された電子注入層と、を含み、上記電子注入層は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層が積層された多層構造からなり、上記多層構造は、2回以上繰り返され、上記多層構造を構成する層のうち少なくとも1つの層は、上記活性層に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さく、上記多層構造を構成する層のうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層は、活性層に近いものほど、厚さが厚い構成を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、GaN等のIII−V族窒化物半導体は、優れた物理的、化学的特性によって発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)等の発光素子の核心素材として脚光を浴びている。III−V族窒化物半導体材料を利用したLEDやLDは、青色または緑色波長帯の光を得るための発光素子に多く利用されており、このような発光素子は高電流/高出力を求めるBLU(Back Light Unit)、電光板、照明装置等の各種製品の光源として応用されている。
【0003】
窒化物半導体発光素子が多様な分野で使用されるにつれ、高出力、大面積の発光素子から活性層への効果的な電流注入方法が重要になってきている。従来は、活性層への電流拡散及び応力緩和のために超格子層を積層し、電流注入のためにEEL(Electron Ejection Layer)を増加させる方法が使用されてきた。しかしながら、このような複雑な積層構造により、ストレスが増加(file−up)して界面において欠陥の発生可能性が増加し、その欠陥が活性層へ拡散され、半導体発光素子の光効率及び信頼性が低下する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、二次元電子ガス(2DEG)効果を通じて電流拡散が改善され、電流注入効率及び光効率が向上した窒化物半導体発光素子を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、電流注入層を形成して窒化物層のストレスを緩和し、欠陥の発生可能性を減らした窒化物半導体発光素子を提供することである。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、窒化物半導体の構造を単純化して製造時間を短縮することで、生産性及び再現性に優れた窒化物半導体発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、n型及びp型窒化物半導体層と、上記n型及びp型窒化物半導体層の間に形成された活性層と、上記n型窒化物半導体層と上記活性層との間に形成された電子注入層とを含み、上記電子注入層はバンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層が積層された多層構造からなり、上記多層構造は、2回以上繰り返され、上記多層構造を構成する層のうち少なくとも1つの層は、上記活性層に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことを特徴とする窒化物半導体発光素子を提供する。
【0008】
また、上記多層構造はInAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式を有する半導体物質からなり、AlとInとの組成比を異にして互いに異なるバンドギャップエネルギーを有することができる。
【0009】
また、上記多層構造はInGaN/GaN/AlGaNの積層構造を有することができる。
【0010】
また、上記多層構造はAlGaN/GaN/InGaNの積層構造を有することができる。
【0011】
また、上記多層構造はInGaN/GaN/AlGaN/GaNの積層構造を有することができる。
【0012】
また、上記多層構造は、第1層と、上記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第1及び第2層は、上記第3層を介して交互に配置された構造であることができる。
【0013】
また、上記第1及び第2層は、活性層に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。
【0014】
また、上記第3層は、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する2つ以上の層からなり、上記2つの層は、上記第1及び第2層の間でバンドギャップエネルギーが順次増加または減少するように積層されることができる。
【0015】
また、上記多層構造は、第1層と、上記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第1層、第3層及び第2層が順次積層された構造であることができる。
【0016】
また、上記多層構造は、第1層と、上記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第2層、第3層及び第1層が順次積層された構造であることができる。
【0017】
また、上記多層構造を構成する層のうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層は、活性層に近いものほど、厚さが厚いことができる。
【0018】
本発明の他の側面は、n型及びp型窒化物半導体層と、上記n型及びp型窒化物半導体層の間に形成された活性層と、上記n型窒化物半導体層と上記活性層との間に形成された電子注入層とを含み、上記電子注入層は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層が積層された多層構造からなり、上記多層構造は2回以上繰り返され、上記多層構造を構成する層のうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層は、上記活性層に近いものほど、厚さが厚いことを特徴とする窒化物半導体発光素子を提供する。
【0019】
また、上記多層構造は、InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式を有する半導体物質からなり、AlとInとの組成比を異にして互いに異なるバンドギャップエネルギーを有することができる。
【0020】
また、上記多層構造は超格子構造を形成することができる。
【0021】
また、上記多層構造は、第1層と、上記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第1及び第2層は、上記第3層を介して交互に配置された構造であることができる。
【0022】
また、上記第1及び第2層のうち少なくとも1つは、活性層に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。
【0023】
また、上記第3層は、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する2つ以上の層からなり、上記2つの層は、上記第1及び第2層の間でバンドギャップエネルギーが順次増加または減少するように積層されることができる。
【0024】
また、上記多層構造は、第1層と、上記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第1層、第3層及び第2層が順次積層された構造であることができる。
【0025】
また、上記多層構造は、第1層と、上記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第2層、第3層及び第1層が順次積層された構造であることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態によると、電流拡散が改善されて電流注入効率が向上した窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【0027】
また、半導体層のストレスを緩和させることにより、欠陥の発生可能性が減少し、これにより、発光素子の光効率及び信頼性が大幅に改善された窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態による窒化物半導体発光素子を示す概略断面図である。
【図2】図1に示される本発明の第1実施形態による多層構造の電子注入層を示す部分断面図である。
【図3】図2に示される電子注入層のバンドギャッププロファイルの一例を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に適用できる電子注入層のバンドギャッププロファイルの変形例を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態による電子注入層を示す部分断面図である。
【図6】図5に示される電子注入層のバンドギャッププロファイルの一例を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルの変形例を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルの他の変形例を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルのさらに他の変形例を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルのさらに他の変形例を示すグラフである。
【図11】図7に示される実施形態による窒化物半導体発光素子と従来のGaN系LED素子との光学的及び電気的特性を比較したグラフである。
【図12】図7に示される実施形態による窒化物半導体発光素子と従来のGaN系LED素子との生産時間を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照して説明する。但し、本発明の実施形態は、他の多様な形態に変形されることができ、本発明の範囲は、以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供するものである。従って、図面における要素の形状及びサイズ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0030】
図1は本発明の第1実施形態による窒化物半導体発光素子を示す概略断面図であり、図2は図1に示される本発明の第1実施形態による多層構造の電子注入層を示す部分断面図であり、図3は図2に示される電子注入層のバンドギャッププロファイルの一例を示すグラフである。図1から図3を参照すると、本発明の第1実施形態による窒化物半導体発光素子10は、n型及びp型窒化物半導体層12、16と、上記n型及びp型窒化物半導体層12、16の間に形成された活性層15と、上記n型窒化物半導体層12と上記活性層15との間に形成された電子注入層14とを含み、上記電子注入層14は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層14a、14b、14cが積層された多層構造14'からなり、上記多層構造14'は、2回以上繰り返され、上記多層構造14'を構成する層のうち少なくとも1つの層は、上記活性層15に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。
【0031】
上記n型及びp型窒化物半導体層12、16は、AlInGa(1−x−y)Nの組成式(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1である)を有することができ、例えば、GaN、AlGaN、InGaN等の物質がこれに該当することができる。n型及びp型窒化物半導体層12、16の間に形成された活性層15は、電子と正孔との再結合によって所定のエネルギーを有する光を放出し、量子井戸層と量子障壁層が交互に積層された多重量子井戸(MQW)構造、例えば、InGaN/GaN構造が用いられる。一方、n型及びp型窒化物半導体層12、16及び活性層15は、当該技術分野において公知のMOCVD、MBE、HVPE等の半導体層成長工程を用いて形成されることができる。
【0032】
図1を参照すると、本実施形態による窒化物半導体発光素子10は、上記n型及びp型窒化物半導体層12、16及び活性層15を含む発光構造物の一面に配置された基板11をさらに含むことができる。上記基板として11は、サファイア、SiC、MgAl、MgO、LiAlO、LiGaO、GaN等の物質からなる基板を用いることができる。サファイアは、六角−菱型(Hexa−Rhombo R3c)の対称性を有する結晶体で、c軸方向及びa軸方向の格子定数がそれぞれ13.001Å及び4.758Åであり、C(0001)面、A(1120)面、R(1102)面等を有する。この場合、上記C面は窒化物薄膜の成長が比較的容易であり、高温で安定しているため、窒化物成長用基板に主に使用される。バッファ層(図示せず)は、窒化物等からなるアンドープ半導体層として使用され、その上に成長する半導体層の格子欠陥を緩和させることができる。
【0033】
上記n型及びp型窒化物半導体層12、16の上には上記n型及びp型窒化物半導体層12、16のそれぞれと電気的に連結されるn側及びp側電極18a、18bが形成されることができる。図1に示されるように、上記n側電極18aは、上記p型窒化物半導体層16、活性層15、電子注入層14及びn型窒化物半導体層12の一部がエッチングされて露出したn型窒化物半導体層12の上に形成され、上記p側電極18bは、上記p型窒化物半導体層16の上に形成されることができる。この場合、図1には、p型窒化物半導体層16とp側電極18bとのオーミックコンタクト機能を向上させるために、ITO、ZnO等からなる透明電極層17をさらに備えることができる。図1に示される構造は、n側及びp側電極18a、18bが同一方向を向くように形成された構造が示されているが、上記n側及びp側電極18a、18bの位置及び連結構造は、必要に応じて、多様に変形されることができる。例えば、上記基板11が除去されて露出したn型窒化物半導体層12の上に上記n側電極18aが形成される場合、電流が流れる領域が拡大して電流分散機能が向上することができる。
【0034】
電子注入層14は、n型窒化物半導体層12と活性層15との間に位置し、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層14a、14b、14cが積層された多層構造14'が2回以上繰り返し積層された形態であり、多層構造14'を形成する層のうち少なくとも1つの層は、活性層15に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。図2及び図3を参照すると、本実施形態による電子注入層14を構成する多層構造14'は、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する3つの第1、第2及び第3層14a、14b、14cを含む。具体的には、上記多層構造14'は、第1層14aと、上記第1層14aより小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層14bと、上記第1及び第2層14a、14bの間のバンドギャップエネルギーを有する第3層14cとからなり、上記第1及び第2層14a、14bが、上記第3層14cを介して交互に配置され、順番に第1層14a/第3層14c/第2層14b/第3層14cに構成された全部で4つの層が1つの多層構造14'をなすことができる。
【0035】
上記多層構造は、InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式を有する半導体物質からなることができ、上記多層構造を構成する半導体層は、AlとInとの組成比を異にして互いに異なるバンドギャップエネルギーを有するようにすることができる。具体的には、Inの含量が高いほど、バンドギャップエネルギーが小さくなり、Alの含量が高いほど、バンドギャップエネルギーが大きくなるため、例えば、上記第1、第2及び第3層14a、14b、14cをそれぞれAlGaN、InGaN、GaNで構成して上記電子注入層14が、AlGaN/GaN/InGaN/GaNからなる多層構造14'が2回以上繰り返し積層された超格子構造を有するようにすることができる。バンドギャップが変調された電子注入層14が超格子構造を有する場合、結晶欠陥を遮断する効果はさらに増加する。
【0036】
このように、電子注入層14にAlGaN層が含まれる場合、サファイア基板との格子定数の差が減少して応力を緩和させ、半導体層内の欠陥発生率を減少させることができる。また、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する3つ以上の層が積層された多層構造14'を含むことにより、効果的に電位欠陥を遮断して半導体発光素子の結晶品質を向上させることができる。特に、InGaN層14bは、AlGaN14a及びGaN層14cの成長時、電位欠陥を効果的にベンディング(bending)させ中断(stopping)させることができ、GaN層14cは、バンドギャップエネルギーが大きいAlGaN層14aから発生した引張応力(tensile stress)とバンドギャップエネルギーが小さいInGaN層14bから発生した圧縮応力(compress stress)とを緩和させることができる。従って、上記電子注入層14は、応力を緩和させると共に、電位欠陥を遮断させることができる。上記電子注入層14が有する向上した応力緩和効果は、電子注入層14の上部に形成された半導体層の結晶品質改善にさらに寄与する。
【0037】
また、上記多層構造14'を構成する層のうち少なくとも1つの層は、上記活性層15に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。図3を参照すると、上記多層構造14'を構成する第1から第3層14a、14b、14cのうち少なくとも1つの層、ここでは最も大きいバンドギャップエネルギーを有する第1層14aが活性層15に近いほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。このように、上記多層構造14'を構成する層のうち少なくとも1つの層のバンドギャップエネルギーが活性層15に近いほど、低くなる傾斜構造を形成することにより、上記n型窒化物半導体層12から活性層15への電子注入を容易にして電流注入効率を向上させることができる。従って、本実施形態によると、n型窒化物半導体層12と活性層15との間に電子注入層14を介在させることによって電流注入効率を改善させると共に、応力を緩和し電位欠陥を遮断して結晶性を向上させる効果が得られる。
【0038】
図4は本発明の第1実施形態に適用できる電子注入層のバンドギャッププロファイルの変形例を示すグラフである。図3に図示される実施形態とは異なり、多層構造14'を構成する第1から第3層14a、14b、14cのうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層14bは、活性層15に近いほど、より小さいバンドギャップエネルギーを有し、第1及び第3層14a、14cは、電子注入層14の全領域において一定に維持されるバンドギャップエネルギーを有することができる。この場合も、図3の説明と同様に、n型窒化物半導体層12から活性層15への電子注入効率を向上させることができる。本実施形態とは異なり、第1から第3層14a、14b、14cのバンドギャップエネルギーが全て傾斜構造を有するか、または、2つの層のバンドギャップエネルギーが傾斜構造を有し、1つの層のバンドギャップエネルギーが一定に維持される構造を有する等、多様に変形されることができる。
【0039】
一方、図1から図4には、第1層14a/第3層14c/第2層14b/第3層14cからなる1つの多層構造14'が、2回以上繰り返し積層された形態の電子注入層14が示されているが、これに制限されず、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する3つ以上の層からなる多層構造が繰り返し積層される形態の電子注入層であれば、いずれも可能である。例えば、上記電子注入層14は、AlGaN/GaN/InGaNの3つの層からなる多層構造が2回以上繰り返し積層される形態であることができる。
【0040】
図5は本発明の第2実施形態による電子注入層を示す部分断面図であり、図6は図5に示される電子注入層のバンドギャッププロファイルの一例を示すグラフである。本実施形態は、第1実施形態と比較して、電子注入層14の構成のみが異なっており、他の構成は同一である。本実施形態による電子注入層24は、n型窒化物半導体層12と活性層15との間に形成され、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層24a、24b、24cが積層された多層構造24'からなり、上記多層構造24'は2回以上繰り返され、上記多層構造を構成する層のうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層24bは、上記活性層15に近いものほど、厚さが厚いことができる。
【0041】
図5及び図6を参照すると、本実施形態による電子注入層24を構成する多層構造24'は、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する3つの第1、第2及び第3層24a、24b、24cを含む。具体的には、上記多層構造24'は、第1層24aと、上記第1層24aより小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層24bと、上記第1及び第2層24a、24bの間のバンドギャップエネルギーを有する第3層24cとからなり、上記第1及び第2層24a、24bは、上記第3層24cを介して交互に配置され、順番に第1層24a/第3層24c/第2層24b/第3層24cで構成された全部で4つの層が1つの多層構造24'をなすことができる。この際、上記多層構造24'を構成する層のうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層24bは、活性層15に近いものほど、厚さが厚いことができる。これにより、活性層15に近い領域により多くの電子が分布されるようにして電流拡散及び電流注入効率を向上させることができる。
【0042】
例えば、上記第1、第2及び第3層24a、24b、24cをそれぞれAlGaN、InGaN、GaNで構成し、上記電子注入層24が、AlGaN/GaN/InGaN/GaNからなる多層構造24'が2回以上繰り返し積層された超格子構造を有するようにすることができる。バンドギャップが変調された電子注入層24が超格子構造を有する場合、結晶欠陥を遮断する効果はより高くなることができる。従って、本実施形態によると、電子注入層24が互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する多層構造24'からなることにより、半導体層の結晶欠陥を遮断すると共に、最も小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層24bが活性層15に近いものほど、厚さが厚くなることにより、n型窒化物半導体層12から活性層15への電子注入効率を向上させることができる。
【0043】
但し、上記実施形態においては、第1層24a/第3層24c/第2層24b/第3層24cからなる多層構造24'が2回以上繰り返し積層された形態の電子注入層24を説明しているが、これに制限されず、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する3つ以上の層からなる積層された多層構造が繰り返し積層される形態の電子注入層であれば、いずれも可能である。例えば、上記電子注入層24は、AlGaN/GaN/InGaNの3つの層からなる多層構造が2回以上繰り返し積層され、最も小さいバンドギャップエネルギーを有するInGaNが活性層15に近いほど、より厚い厚さを有するように形成されることができる。
【0044】
図7は本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルの変形例を示すグラフである。本実施形態は、図6に示される実施形態とは異なり、上記電子注入層34を構成する多層構造34'のうち少なくとも1つの層が活性層15に近いほど、バンドギャップエネルギーが小さい構成を有することができる。即ち、活性層15に近いほど、最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層の厚さが厚くなると共に、バンドギャップエネルギーが小さくなる傾斜構造を有することで、n型窒化物半導体層12から活性層15への電子注入効率を極大化することができる。
【0045】
図7を参照すると、本実施形態による電子注入層34を構成する多層構造34'は、図6に示される電子注入層24と同様に、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する3つの第1、第2及び第3層34a、34b、34cを含み、第1層34a/第3層34c/第2層34b/第3層34cで構成された全部で4つの層が1つの多層構造34'をなす。この際、第1及び第2層34a、34bは、活性層15に近いほど、より小さいバンドギャップエネルギーを有するため、傾斜構造を形成して電流注入効率を向上させることができる。
【0046】
図8は本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルの他の変形例を示すグラフである。本実施形態において、上記第3層44cは、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する2つ以上の層44c1、44c2からなる。図8を参照すると、電子注入層44は、最も高いバンドギャップエネルギーを有する第1層44aと、上記第1層44aより小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層44bと、上記第1及び第2層の間のバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、上記第3層は2つの層44c1、44c2に分かれる。上記第3層は上記第1及び第2層44a、44bを介してバンドギャップエネルギーが順次増加または減少するように積層される。各層のバンドギャップのサイズは各層44a、44b、44c1、44c2のAlとInとの組成比を調節して制御されることができる。
【0047】
本実施形態において最も大きいバンドギャップエネルギーを有する第1層44a及び最も小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層44bは、活性層15に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さく、その間のバンドギャップエネルギーを有する上記第3層44c1、44c2は、バンドギャップエネルギーが一定であり、最も小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層44bの厚さは、活性層15に近いほど、厚さが厚いことができる。これとは異なり、上記第3層44c1、44c2は、バンドギャップエネルギーが活性層15に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さいことができる。特に、本実施形態のようにバンドギャップエネルギーが積層方向に沿って順次増加または減少する構造を形成することで、バンドギャップエネルギーの差異による応力(stress)を効果的に緩和させることができる。即ち、最も小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層44bと最も大きいバンドギャップエネルギーを有する層44aとの間に配置された第3層44c1、44c2は、順次増加または減少するバンドギャップエネルギー構造を有するため、応力を効果的に緩和させる役割を果たす。
【0048】
図9は本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルのさらに他の変形例を示すグラフである。本実施形態による電子注入層54は、n型窒化物半導体層12と活性層15との間に形成され、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つの層54a、54b、54cが積層された多層構造54'からなり、上記多層構造54'は2回以上繰り返され、上記多層構造を構成する層のうち最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層54bは、上記活性層15に近いほど、厚さが厚いことができる。具体的には、上記多層構造54'は、第1層54aと、上記第1層54aより小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層54bと、上記第1及び第2層54a、54bの間のバンドギャップエネルギーを有する第3層54cからなり、上記第1及び第2層54a、54bは、上記第3層54cを介して交互に積層され、順に第1層54a/第3層54c/第2層54bで構成された全部で3つの層が1つの多層構造54'をなすことができる。
【0049】
本実施形態において、上記電子注入層54の内部には、例えば、AlGaNからなる第1層54aとGaNからなる第3層54cとのバンドギャップエネルギーの不連続性によってその界面に二次元電子ガス層(2DEG、図示せず)が形成される。この場合、上記二次元電子ガス層が形成された領域においては高いキャリア移動度が保障されるため、電流分散効果をより大きく改善させることができる。図10は本発明の第2実施形態による電子注入層のバンドギャッププロファイルのさらに他の変形例を示すグラフである。図10を参照すると、電子注入層64を構成する多層構造64'は、第2層64b/第3層64c/第1層64aの積層構造を有し、上記電子注入層64は超格子構造を有することができる。上記第1及び第2層64a、64bのバンドギャップエネルギーは、活性層15に近いものほど小さく、上記第3層64cのバンドギャップエネルギーは一定であり、上記第3層64cは活性層に近いほど、その厚さが厚いことができる。
【0050】
本実施形態において、上記電子注入層64の内部には、例えば、AlGaNからなる第1層64aとInGaNからなる第2層64bとのバンドギャップエネルギーの不連続性によってその界面に二次元電子ガス層(2DEG、図示せず)が形成されることができる。この場合、上記二次元電子ガス層が形成された領域においては高いキャリア移動度が保障されるため、電流分散効果をより大きく改善させることができる。
【0051】
図11は図7に示される実施形態による窒化物半導体発光素子と従来のGaN系LED素子との光学的及び電気的特性を比較したグラフであり、図12は図7に示される実施形態による窒化物半導体発光素子と従来のGaN系LED素子との生産時間を比較したグラフである。
【0052】
本発明者らは、本発明による輝度及び電気的特性の改善効果を確認するため、図7に示される構造の電子注入層34を有するGaN系LED素子と電子注入層を有さない従来のGaN系LED素子に対し、輝度及び電気的特性の評価実験を行った。この実験に用いられたLEDの上記多層構造は、AlGaN/GaN/InGaN/GaNが積層された構造で、活性層に近いものほど、AlGaN層34aとInGaN層34bとのバンドギャップエネルギーが小さく、GaN層34cのバンドギャップエネルギーは一定の構造を有する。また、最も小さいバンドギャップエネルギーを有するInGaN層34bは、活性層15に近いものほど、厚さが厚いことができる。
【0053】
こうした輝度及び電気的特性の評価実験の結果、上記の電子注入層34を有するLEDが従来のLEDに比べ、逆方向降伏電圧(Vr)の向上効果を有することが確認された。また、上記電子注入層34を有するLEDは、上記電子注入層34を有さないLEDに比べ、光パワー(Po)向上効果を有することが確認された(図11)。上記電子注入層34による光パワーの向上は輝度増加を意味し、これは半導体結晶内の欠陥減少及び電流拡散をもたらす。また、上記電子注入層34による逆方向降伏電圧の向上は、発光素子の信頼性改善を意味し、これは半導体結晶内の欠陥減少をもたらす。このように、本発明によると、電子注入層34の挿入によって結晶品質が改善し、その結果、発光輝度及び素子信頼性が高まる。
【0054】
また、本発明による生産性の向上効果を確認するため、図7に示される実施形態による電子注入層34を有するGaN系LED素子と従来のGaN系LED素子に対し、その製造時間を測定した。この実験に用いられたLEDの上記電子注入層34は、AlGaN/GaN/InGaN/GaNが繰り返し積層されて活性層に近いものほど、AlGaN層34aとInGaN層34bとのバンドギャップエネルギーが小さく、GaN層34cのバンドギャップエネルギーは一定の構造を有する。また、最も小さいバンドギャップエネルギーを有するInGaN層34bは、活性層に近いものほど、厚さが厚いことができる。こうした輝度及び電気的特性の評価実験の結果、上記の電子注入層34を有するLEDが従来のLEDに比べ、生産時間が40%短縮されることが確認された(図12)。
【0055】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定される。また、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で多様な形態の置換、変形及び変更が可能であることは通常の知識を有する者に自明である。
【符号の説明】
【0056】
11 基板
12 n型窒化物半導体層
14、24、34、44、54、64 電子注入層
14'、24'、34'、44'、54'、64' 多層構造
15 活性層
16 p型窒化物半導体層
17 透明電極層
18a n側電極
18b p側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型窒化物半導体層と、
p型窒化物半導体層と、
前記n型窒化物半導体層及び前記p型窒化物半導体層の間に形成された活性層と、
前記n型窒化物半導体層と前記活性層との間に形成された電子注入層と
を含み、
前記電子注入層は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層が積層された多層構造を複数有し、前記複数の多層構造の各々の、対応する少なくとも1つの層は、前記活性層に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さい、窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記複数の多層構造の各々の、最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層は、活性層に近いものほど、厚さが厚い、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
n型窒化物半導体層と、
p型窒化物半導体層と、
前記n型窒化物半導体層及び前記p型窒化物半導体層の間に形成された活性層と、
前記n型窒化物半導体層と前記活性層との間に形成された電子注入層と
を含み、
前記電子注入層は、バンドギャップエネルギーが互いに異なる3つ以上の層が積層された多層構造を複数有し、前記複数の多層構造の各々の、最も小さいバンドギャップエネルギーを有する層は、前記活性層に近いものほど、厚さが厚い、窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記多層構造を構成する層の各々は、InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式を有する半導体物質からなり、AlとInとの組成比を異にして互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する、請求項1から3の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記多層構造は超格子構造を形成する、請求項1から4の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記多層構造は、InGaN/GaN/AlGaNの積層構造を有する、請求項1から5の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
前記多層構造は、AlGaN/GaN/InGaNの積層構造を有する、請求項1から5の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項8】
前記多層構造は、InGaN/GaN/AlGaN/GaNの積層構造を有する、請求項1から5の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項9】
前記多層構造は、第1層と、前記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、前記第1層より小さく前記第2層より大きいバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、前記第1層及び前記第2層は、前記第3層を介して交互に配置された構造である、請求項1から8の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項10】
前記複数の多層構造の、対応する前記第1層及び前記第2層のうち少なくとも1つの層の各々は、前記活性層に近いものほど、バンドギャップエネルギーが小さい、請求項9に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項11】
前記第3層は、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する2つ以上の層からなり、前記2つ以上の層は、前記第1層及び前記第2層の間でバンドギャップエネルギーが順次増加または減少するように積層される、請求項9または10に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項12】
前記多層構造は、第1層と、前記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、前記第1層より小さく前記第2層より大きいバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、前記第1層、前記第3層及び前記第2層が順次積層された構造である、請求項1から8の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項13】
前記多層構造は、第1層と、前記第1層より小さいバンドギャップエネルギーを有する第2層と、前記第1層より小さく前記第2層より大きいバンドギャップエネルギーを有する第3層とからなり、前記第2層、前記第3層及び前記第1層が順次積層された構造である、請求項1から8の何れか1項に記載の窒化物半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−222362(P2012−222362A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89430(P2012−89430)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(512066842)サムソン エルイーディー カンパニーリミテッド. (5)
【Fターム(参考)】