説明

窒化物単結晶体の製造方法

【課題】成長速度が高く、安価で結晶性に優れたGaN単結晶等の窒化物単結晶体の製造方法を提供する。
【解決手段】窒化ボロンから成る容器2に、窒素源であるNa3N粉末のほか、ナトリウム、ガリウムの混合物、さらに、NaF粉末を収容し、圧力容器5内に雰囲気ガス6として窒素ガスを供給し、圧力を4MPaとしたあと、ヒーター1に通電することにより、容器2内の原料を780℃の温度になるまで昇温し、原料融液3を形成した。つづいて、GaN単結晶から成る円板状の種結晶4を、液面を封止材7で覆った原料融液3中に浸漬して、種結晶4上にGaN単結晶体9を成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種結晶を用いてGaN,AlN,AlGaN等の窒化物単結晶体を溶液成長法(フラックス成長法)によって成長させる窒化物単結晶体の製造方法に関し、特に、発光ダイオード(LED),半導体レーザ(LD)等の発光素子、トランジスタ,パワーFET等のパワーデバイス等の電子素子に適用される窒化物単結晶体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GaN,AlGaN等の窒化物単結晶(窒化ガリウム系化合物半導体単結晶)は、高融点であること、Nの平衡蒸気圧が高いことから、液相からのバルク型の単結晶の製造が困難である。そのため、サファイア(Al23),炭化珪素(SiC)等の異種材料基板(成長する単結晶と異なる材料から成る基板)の上に、窒化物単結晶から成る薄膜を気相で成長させて、その薄膜を各種デバイス用に利用している。
【0003】
しかし、サファイア等の基板は、その上に成長させるGaN,AlGaN等の窒化物単結晶から成る薄膜との格子定数差が大きい。例えば、サファイアはGaNとの格子不整合が13.7%もあるため、成長した薄膜には転位が多く発生する。特に、LEDでは高輝度化、電子デバイスではハイパワー化が必要なため、窒化物単結晶の転位の低減が必要となっている。また、これらの発光素子、電子素子が汎用品になるためには、基板の低コスト化が不可欠である。
【0004】
そこで、GaNの平衡状態となるような高温高圧下の融液からGaN単結晶を結晶成長させる液相成長法が試みられている(例えば、特許文献1参照)。また、ナトリウムを添加した原料融液を用いたGaN単結晶のフラックス成長法が提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【特許文献1】国際公開第1999/034037号パンフレット
【特許文献2】特開2002−128586号公報
【特許文献3】国際公開第2004/013385号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フラックス成長法によって実際に製造されるGaN単結晶の成長速度は、1時間当たりに成長する結晶長が30μm以下と遅く、高コストになる。これは、結晶成長用の原料融液中の溶質であるGaNが、溶媒(Ga,Na)に比べて希薄であるためと考えられる。特に、原料融液中の窒素成分の溶解度が低いために、原料融液中に存在する窒化ガリウムの比率が低くなるためと考えられる。
【0006】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、原料融液中における窒素の溶解度を向上させて、窒化物単結晶体の成長速度を向上させ、その結果、安価で結晶性に優れたGaN単結晶等の窒化物単結晶体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の窒化物単結晶体の製造方法は、化学式XN(ただし、XはGa,Al及びInのうちの少なくとも1種である。)で表される窒化物単結晶から成る種結晶を、液面を封止材で覆った原料融液中に浸漬して、前記種結晶から窒化物単結晶体を成長させるものである。
【0008】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、前記封止材は、LiF,NaF及びKFのうちの少なくとも1種から成るものである。
【0009】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、前記種結晶は、GaN単結晶またはAlN単結晶から成るものである。
【0010】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、前記種結晶は、Al23,GaAs,ZrB2,LiGaO2,LiAlO2,Ga23またはSiCの単結晶から成る基体の表面に、GaN単結晶層またはAlN単結晶層が形成されているものである。
【0011】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、前記原料融液は、窒素源としてNa3N,Li3N,Cu3N及びCa32のうちの少なくとも1種を含むものである。
【0012】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、前記窒素源は、固形物として前記原料融液中に浸漬されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の窒化物単結晶体の製造方法は、化学式XN(ただし、XはGa,Al及びInのうちの少なくとも1種である。)で表される窒化物単結晶から成る種結晶を、液面を封止材で覆った原料融液中に浸漬して、種結晶から窒化物単結晶体を成長させることから、原料融液の液面から窒素が抜け出て原料融液中の窒素の溶解度が低下するのを大幅に抑制することができる。その結果、原料融液中の窒素の溶解度を向上させて、窒化物単結晶の結晶の成長速度を上昇させることができ、窒化物単結晶体を低コストに製造できる。
【0014】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、封止材は、LiF,NaF及びKFのうちの少なくとも1種から成ることから、これらの材料から成る封止材はフラックス溶液と分離し、溶液よりも軽いため溶液表面を覆うことができると共に、窒素とも反応しない特性を有するため、原料融液の液面から窒素が抜け出て原料融液中の窒素の溶解度が低下するのをさらに抑制することができる。その結果、原料融液中の窒素の溶解度をより向上させて、窒化物単結晶の結晶の成長速度をより上昇させることができ、さらなる低コスト化を可能にする。
【0015】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、種結晶は、GaN単結晶またはAlN単結晶から成るものであることから、発光素子、電子素子等を製造するのに適した基板等に用いられる結晶性の高い窒化物単結晶体を低コストに製造できる。
【0016】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、種結晶は、Al23,GaAs,ZrB2,LiGaO2,LiAlO2,Ga23またはSiCの単結晶から成る基体の表面に、GaN単結晶層またはAlN単結晶層が形成されていることから、種結晶全体が窒化物単結晶から成る必要はなく、表層部分のみが窒化物単結晶から成る種結晶を使用することができる。従って、種結晶を低コストに作製できる結果、窒化物単結晶体を低コストに製造できる。
【0017】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、原料融液は、窒素源としてNa3N,Li3N,Cu3N及びCa32のうちの少なくとも1種を含むことから、フラックス溶液中の窒素を高濃度に保つことができるという効果を有する。
【0018】
また、本発明の窒化物単結晶体の製造方法は好ましくは、窒素源は、固形物として原料融液中に浸漬されることから、窒化物単結晶体の成長の最初から最後まで窒素を連続的に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の窒化物単結晶体の製造方法の実施の形態について以下に説明する。
【0020】
本発明の窒化物単結晶体の製造方法は、化学式XN(ただし、XはGa,Al及びInのうちの少なくとも1種である。)で表される窒化物単結晶から成る種結晶を、液面を封止材で覆った原料融液中に浸漬して、種結晶から窒化物単結晶体を成長させるものである。
【0021】
化学式XN(ただし、XはGa,Al及びInのうちの少なくとも1種である。)で表される窒化物単結晶は、GaN単結晶,AlN単結晶,InN単結晶,またはGa,Al,Inの混晶系の単結晶である。
【0022】
原料融液は、好適な窒素源としてNa3N,Li3N,Cu3N及びCa32のうちの少なくとも1種を原料として含み、その他NaやGa等を含む。窒素とガリウムの組成比は、窒素源が窒素換算で0.02〜7mol%、Gaが93〜99.8mol%程度がよい。窒素源が0.02mol%未満では、成長速度が上がりにくく、7mol%を超えると、窒素溶解度が飽和し、GaN微結晶が種結晶以外の部分で成長するため基板収率が低下する傾向がある。
【0023】
原料融液の液面を覆う封止材の厚みは2〜30mm程度がよい。2mm未満では封止の効果が低くなる。30mmを超えると、封止の効果は変わらなくなるため、封止材を厚くする分無駄となる。
【0024】
封止材は、LiF,NaF及びKFのうちの少なくとも1種から成ることがよい。これらの材料から成る封止材はフラックス溶液と分離し、溶液よりも軽いため溶液表面を覆うことができると共に、窒素とも反応しないという特性を有するため、原料融液の液面から窒素が抜け出て原料融液中の窒素の溶解度が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0025】
種結晶は、GaN単結晶またはAlN単結晶から成るものであることがよい。種結晶から成長したGaNまたはAlNから成る窒化物単結晶体は、発光素子、電子素子等を製造するのに適した基板等に用いられる結晶性の高い窒化物単結晶体となる。
【0026】
また、種結晶は、Al23,GaAs,ZrB2,LiGaO2,LiAlO2,Ga23またはSiCの単結晶から成る基体の表面に、GaN単結晶層またはAlN単結晶層が形成されていることがよい。この場合、種結晶全体が窒化物単結晶から成る必要はなく、表層部分のみが窒化物単結晶から成る種結晶を使用することができる。従って、種結晶を低コストに作製できる結果、窒化物単結晶体を低コストに製造できる。基体の表面に形成されるGaN単結晶層またはAlN単結晶層は、厚みが3〜10μm程度であることが好ましい。3μm未満では、メルトバックにより形成した単結晶層が全溶解してしまい、それ以降の結晶成長が阻害される傾向がある。10μmを超えると、結晶成長が阻害されることはなくなるが、10μmを超えて厚くしてもその効果は変わらなくなる。
【0027】
以下の実施の形態の説明では、原料融液をNa(フラックス),Ga(溶媒),Na3N(窒素源)を混合したものとし、封止材をNaFとし、種結晶をGaN単結晶とし、成長される窒化物単結晶体をGaN単結晶体とした例について、詳細に説明する。
【0028】
図1は、窒化物単結晶体の製造装置である高圧LPE(Liquid Phase Epitaxy)装置における単結晶体の成長炉Sの内部の要部断面図である。成長炉Sの内部において、概略的に筒状を形成する加熱ヒーター1の内側に、窒化ボロン(BN),酸化アルミニウム(Al)等から成る容器2が配置されている。
【0029】
容器2の中には、ナトリウムとガリウムを含む原料融液3が、700〜1000℃の温度で充填されている。ナトリウムとガリウムの混合比は、ナトリウム:ガリウム=10:90(mol%)〜75:35(mol%)がよい。ナトリウムの混合比が10mol%未満では、窒素の過飽和度が低くなり、窒化物単結晶体が成長しにくくなる。75mol%を超えると、窒化物単結晶体中にナトリウムが不純物として混入し、結晶品質が低下する傾向がある。
【0030】
原料融液3にはNa3Nから成る窒素源8を入れ、窒化物単結晶体の窒素供給源としている。窒素源8は、板状体等の固形物として原料融液3中に浸漬されている。
【0031】
また、容器2の中には、GaN単結晶体を成長させるための直径50.8mm、厚み0.3mmの円板状に形成されたGaN単結晶から成る種結晶4が、ホルダー10で保持されて配置されている。
【0032】
種結晶4は、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法で厚膜成長させた自立したGaN単結晶、サファイア基板上にMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法でエピ成長させたGaN単結晶膜を用いるのがよい。これにより、種結晶4からGaN単結晶体等の窒化物単結晶体9を直接成長させることができる。なお、「自立したGaN単結晶」とは、それを取り扱う際に、変形、破損等が生じないように形状が保持された状態にあることをいう。
【0033】
容器2は、ステンレス鋼,ハステロイ合金等から成る圧力容器5の中に設置されており、圧力容器5内の雰囲気ガス6として窒素ガスが2〜10MPaで充填されている。この窒素ガスは、窒化物単結晶体9を成長させるための窒素源、蒸気圧制御源にもなっている。また、雰囲気ガス6は、圧力容器5に設けられた雰囲気ガスの供給排出管11によって、圧力が制御される。
【0034】
上記の構成の成長炉Sを用いて、容器2内の原料融液3の上方及び種結晶4付近の温度を780℃程度と一定とするか、または785℃から徐冷温度0.2℃/時で徐冷することにより、種結晶4上に窒化物単結晶体(GaN単結晶体)9を成長させることができる。このとき、容器2の底部のヒーター1の温度を800℃程度になるように制御することにより、原料融液3中の窒素濃度を制御している。
【0035】
種結晶4上に成長した直径50.8mm、厚み0.8mmの円板状のGaN単結晶体を成長炉Sから取り出し、その表面をダイアモンド砥粒及びSiC砥粒を用いて粗研磨した後に、コロイダルシリカを用いた鏡面研磨を施し、直径50.8mm、厚み0.4mmのGaN単結晶体から成る基板を作製する。作製されたGaN単結晶体から成る基板は、表面の転位密度が2×104cm-2程度であり、従来にない大口径かつ高品質の窒化物単結晶体となる。
【0036】
以上より、光学素子、電子素子に適用される窒化ガリウム系化合物半導体をエピタキシャル成長するのに好適なGaN単結晶等から成る窒化物単結晶体が製造可能となる。
【0037】
窒化物単結晶体から成る基板上に窒化ガリウム系化合物半導体から成る半導体層を形成して、発光素子を構成する場合、その構成は以下のようになる。
【0038】
例えば、GaN単結晶体から成る基板上に、GaN等から成るバッファ層を介して窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する。このバッファ層は省くことができる。例えば窒化ガリウム系化合物半導体層は、化学式Ga1-x1-y1Iny1Alx1N(ただし、0≦x1+y1≦1、x1≧0、y1≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層と、化学式Ga1-x2-y2Iny2Alx2N(ただし、0≦x2+y2≦1、x2≧0、y2≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層との間に、化学式Ga1-x3-y3Iny3Alx3N(ただし、0≦x3+y3≦1、x3≧0、y3≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光層が挟まれて接合されている構成(ただし、(x3,y1,y2)<(x1,x2)、(x3,y1,y2)≦y3とする。)である。
【0039】
また、例えば第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層は、それぞれn型窒化ガリウム系化合物半導体層及びp型窒化ガリウム系化合物半導体層である。窒化ガリウム系化合物半導体をn型半導体とするには、元素周期律表において4族の元素であるシリコン(Si)等をドーパントとして窒化ガリウム系化合物半導体に混入させればよい。窒化ガリウム系化合物半導体をp型半導体とするには、元素周期律表において2族の元素であるマグネシウム(Mg)等をドーパントとして、窒化ガリウム系化合物半導体に混入させればよい。
【0040】
また、第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層は、両方ともアルミニウム(Al)を含む窒化ガリウム系化合物半導体から成るものとし、いずれも発光層に含まれるアルミニウムよりもその含有量を多くすることがよい。このようにすると、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層の禁制帯幅が両方とも発光層の禁制帯幅よりも大きくなるので、発光層に電子と正孔とを閉じ込めて、電子と正孔を効率良く再結合させて強い発光強度で発光させることができる。また、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層は、アルミニウムを含んだ窒化ガリウム系化合物半導体からなることにより、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層における禁制帯幅が比較的大きくなり、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層における紫外光等の短波長側の光の吸収を小さくすることができる。なお、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層は、いずれか一方がアルミニウムを含んだ窒化ガリウム系化合物半導体からなっていてもよい。
【0041】
なお、第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層は、それぞれp型窒化ガリウム系化合物半導体層及びn型窒化ガリウム系化合物半導体層としても構わない。
【0042】
また、第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層にはそれぞれ、発光層に電流を注入するための導電層(電極)を形成する。これにより、LEDや半導体レーザ(LD)等の発光素子が形成される。
【0043】
また、発光層を成す窒化ガリウム系化合物半導体の組成は、所望の発光波長が得られる適当なものに設定すればよい。例えば、発光層を、アルミニウムもインジウムも含まないGaNからなるものとすれば、禁制帯幅は約3.4エレクトロンボルト(eV)となり、約365ナノメートル(nm)の発光波長である紫外光によって発光層を発光させることができる。また、これよりも発光波長を短波長とする場合、発光層は、禁制帯幅を大きくする元素であるアルミニウムを発光波長に応じて設定される量だけ含ませた窒化ガリウム系化合物半導体から成るものとすればよい。
【0044】
また、発光層に禁制帯幅を小さくする元素であるインジウム(In)を含有させてもよく、所望の発光波長となるようにアルミニウムをより多く含有させる等して、アルミニウム,インジウム及びガリウムの組成比を適宜設定すればよい。また、発光層は、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とから成る量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された超格子である多層量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)としてもよい。
【0045】
このような発光素子は次のように動作する。即ち、発光層を含む窒化ガリウム系化合物半導体にバイアス電流を流して、発光層で波長350〜400nm程度の紫外光〜近紫外光を発生させ、発光素子の外側にその紫外光〜近紫外光を取り出すように動作する。
【0046】
発光素子は、CD,DVD等の光記録媒体の光ピックアップ用の光源としての半導体レーザに適用できるものであり、波長350〜400nm程度の紫外光〜近紫外光や紫光を用いることにより、高記録密度で長時間の記録・再生が可能な光記録媒体を製造、使用することができる。このような光ピックアップは、周知の構成のものでよく、例えば、発光素子と、発光素子から発光した光の光軸上に設置されたビームスプリッタ,偏光ビームスプリッタ,プリズム,反射鏡,回折格子,スリット,集光レンズ等とを組み合わせることにより、容易に構成することができる。
【0047】
また、発光素子は照明装置に利用できるものであり、その照明装置は、発光素子と、発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体及び燐光体の少なくとも一方とを具備している構成である。この構成により、輝度及び照度の高い照明装置を得ることができる。この照明装置は、発光素子を透明樹脂等で覆うか内包するようにし、その透明樹脂等に蛍光体や燐光体を混入させた構成とすればよく、蛍光体や燐光体によって発光素子の紫外光〜近紫外光を白色光等に変換するものとすることができる。また、集光性を高めるために透明樹脂等に凹面鏡等の光反射部材を設けることもできる。このような照明装置は、従来の蛍光灯等よりも消費電力が小さく、小型であることから、小型で高輝度の照明装置として有効である。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【実施例】
【0049】
本発明の窒化物単結晶体の製造方法の実施例について以下に説明する。
【0050】
種結晶4として、直径50.8mm、厚み0.3mmの円板状のGaN単結晶から成るものを用いた。この種結晶4は以下のようにして作製した。サファイア基板上にHVPE法によってGaN単結晶層を0.6mmの厚みに厚膜成長させた後に、サファイア基板をダイアモンド砥粒を用いた機械研削によって除去し、片面(成長面)が鏡面研磨されたGaN単結晶から成る円板状の種結晶4を作製した。
【0051】
次に、成長炉Sにおけるステンレス鋼から成る圧力容器5内に設置された、内径60mm、深さ60mmの円筒状で窒化ボロン(BN)から成る容器2に、窒素源であるNa3N粉末50g、ナトリウム80g、ガリウム500gの混合物を収容した。さらに、容器2にNaF粉末60gを入れた。このとき、Na:Ga=34:66(mol%)であった。
【0052】
次に、容器2を円筒状のヒーター1の内側の中心部に配置し、圧力容器5内に雰囲気ガス6として窒素ガスを、圧力が4MPaとなるように供給し、ヒーター1に通電することにより、容器2内の原料を780℃の温度になるまで昇温し、原料融液3を形成した。
【0053】
次に、容器2の上方に配置しておいた、ホルダー10の下端に保持された種結晶4を、比重差により浮いている溶融した封止材7の直下の原料融液3に到達するまで降下させた。このとき、封止材7の厚みは8.5mmであった。
【0054】
次に、圧力容器5内の雰囲気ガス圧力を一定(4MPa)に保持したまま、原料融液3の温度を一定(780℃)に保持することにより、種結晶4上にGaN単結晶体を10時間成長させた。
【0055】
(比較例)
比較例として、容器2に封止材であるNaFと窒素源であるNa3Nを入れずに、温度、雰囲気ガス、成長時間等の他の条件は実施例と同じにして、GaN単結晶体を成長させた。
【0056】
その結果、実施例では10時間で厚み約2mmのGaN単結晶体を成長させることができたのに対し、比較例では10時間で厚み約0.08mmのGaN単結晶体しか成長させることができなかった。
【0057】
また、実施例及び比較例のGaN単結晶体について、断面を透過型電子顕微鏡像によって分析し、断面の表面の転位密度を測定した。その結果、実施例のGaN単結晶体の転位密度は1×104cm-2であり、比較例のGaN単結晶体の107cm-2に対して1000分の1であり、従来にない低い転位密度であることが判明した。
【0058】
また、1)封止材としてLiFまたはKFを用い他は実施例と同様した場合、2)窒素源としてLi3N,Cu3NまたはCa32を用い他は実施例と同様した場合、3)種結晶4としてAlN単結晶を用い他は実施例と同様した場合、4)種結晶4として、Al23,GaAs,ZrB2,LiGaO2,LiAlO2,Ga23またはSiCの単結晶から成る基体の表面に、GaN単結晶層またはAlN単結晶層が形成されているものを用い他は実施例と同様した場合、のいずれにおいても、上記と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の窒化物単結晶体の製造方法に用いる成長炉の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1:ヒーター
2:容器
3:原料融液
4:種結晶
7:封止材
8:窒素源
9:窒化物単結晶体
S:成長炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式XN(ただし、XはGa,Al及びInのうちの少なくとも1種である。)で表される窒化物単結晶から成る種結晶を、液面を封止材で覆った原料融液中に浸漬して、前記種結晶から窒化物単結晶体を成長させる窒化物単結晶体の製造方法。
【請求項2】
前記封止材は、LiF,NaF及びKFのうちの少なくとも1種から成る請求項1記載の窒化物単結晶体の製造方法。
【請求項3】
前記種結晶は、GaN単結晶またはAlN単結晶から成る請求項1または2記載の窒化物単結晶体の製造方法。
【請求項4】
前記種結晶は、Al23,GaAs,ZrB2,LiGaO2,LiAlO2,Ga23またはSiCの単結晶から成る基体の表面に、GaN単結晶層またはAlN単結晶層が形成されている請求項1または2記載の窒化物単結晶体の製造方法。
【請求項5】
前記原料融液は、窒素源としてNa3N,Li3N,Cu3N及びCa32のうちの少なくとも1種を含む請求項1乃至4のいずれか記載の窒化物単結晶体の製造方法。
【請求項6】
前記窒素源は、固形物として前記原料融液中に浸漬される請求項5記載の窒化物単結晶体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−96695(P2009−96695A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272199(P2007−272199)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】