説明

窓ガラス付き車両

【課題】運転席の窓ガラスについた汚れを確実に落とすことが可能な窓ガラス付き車両を提供する。
【解決手段】運転席30と、運転席30のフロントガラス(窓ガラス)35と、フロントガラス35の汚れをウインドウォッシャー液(窓用洗浄液)を用いて拭き取るワイパーWとを備えるトラクタ(窓ガラス付き車両)21において、ウインドウォッシャー液が、ボンネット25に備えるノズルN1,N2、およびワイパーWに備えるノズルN3,N4を介して噴射可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席と、運転席の窓ガラスと、その窓ガラスの汚れを窓用洗浄液を用いて拭き取るワイパーとを備える、窓ガラス付き車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトラクタ(窓ガラス付き車両)の運転席の窓ガラスの汚れは、ボンネット上に形成されたノズルよりフロントガラスに向けて上向きにウインドウォッシャー液(窓用洗浄液)を噴射し、それに連動して直後に作動するワイパーによって擦り(拭き)取っていた。このため、ワイパーの拭き取り精度の良否は窓ガラスの洗浄に大きな影響を与えるものであった。そこで、特許文献1のように、ワイパーブレードを2枚刃構造とし、かつ、ワイパーブレードの両端を他の部分よりも大きく曲がった形状として、フロントガラスの曲面に沿うようにすることで、拭き取り精度の向上を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−012131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなワイパーであっても、たとえば、フロントガラスの汚れの位置がウインドウォッシャー液の吹きつけられる箇所から離れている場合には、汚れの箇所に直接ウインドウォッシャー液を散布することができない。このような場合には、作動するワイパーによって、ウインドウォッシャー液を汚れの箇所に引き伸ばしながら汚れ自体を擦ることになる。したがって、汚れの箇所にウインドウォッシャー液を十分浸透させることができないままでワイパーで擦ることになり、ワイパー作動中に汚れを完全に落とすことができないという問題があった。そこで、この発明の目的は、運転席の窓ガラスについた汚れを確実に落とすことが可能な窓ガラス付き車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、運転席と、該運転席の窓ガラスと、該窓ガラスの汚れを窓用洗浄液を用いて拭き取るワイパーとを備える窓ガラス付き車両において、
前記窓用洗浄液が、ボンネットに備えるノズル、およびワイパーに備えるノズルを介して噴射可能であることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の窓ガラス付き車両において、前記窓用洗浄液が、前記ボンネットに備えるノズル、または前記ワイパーに備えるノズルのいずれかを選択して噴射されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の窓ガラス付き車両において、自走するための駆動部を備え、該駆動部から発する熱を利用して前記窓用洗浄液を温めることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の窓ガラス付き車両において、前記駆動部がエンジンであり、該エンジンから発する排気熱を利用して前記窓用洗浄液を温めることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の窓ガラス付き車両において、前記駆動部が前記ボンネット内に備えられ、前記窓用洗浄液を収納する洗浄液タンクを前記駆動部近傍でかつ、前記ボンネット内に設けることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の窓ガラス付車両において、前記エンジンから発する排気熱が、洗浄液タンク内に収納された前記窓用洗浄液を加温するに加えて、前記洗浄液タンクより、前記ボンネットに備えるノズル、および前記ワイパーに備えるノズルに向かう前記窓用洗浄液をも加温することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の窓ガラス付き車両において、加圧手段を備え、該加圧手段によって前記窓用洗浄液を加圧した後に前記ノズルより噴射する窓ガラス付き車両であって、
前記加圧手段と前記ワイパーに備えるノズルとの間に減圧手段を備え、前記ワイパーに備えるノズルより噴射される前記窓用洗浄液の噴射圧を、前記ボンネットに備えるノズルより噴射される前記窓用洗浄液の噴射圧よりも低くすることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の窓ガラス付き車両において、前記窓用洗浄液が前記ノズルより噴射された後に、前記ワイパーが作動して前記窓ガラスの汚れを拭き取ることを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の窓ガラス付車両において、前記ワイパーが、前記窓ガラスに当接してふき取りを行うワイパーブレードと、該ワイパーブレードを支持するワイパー支持部と、前記窓用洗浄液を前記ワイパーに備えるノズルへ導くためのパイプとを備え、
該パイプの先端に前記ノズルを備えるとともに、前記パイプの先端部が前記ワイパー支持部より露出し、前記パイプの露出部分が蛇腹状に形成されて前記ノズルの噴射方向を変えうることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の窓ガラス付車両において、前記窓用洗浄液を洗浄液タンクに貯留するとともに、前記窓用洗浄液をパイプを介して前記ワイパーに備えるノズルより噴射する窓ガラス付き車両であって、
前記ワイパーを回動させるための回動軸と、該回動軸を保持する回動部とを備え、
該回動部が前記回動軸とともに回動する回動部材と、該回動部材の外縁を取り囲むように設けられる不動部材とで構成され、
前記回動部材と前記不動部材とが、中央部にて空間を形成して前記窓用洗浄液を保持する収容部を構成するとともに、縁辺部にて気密性をもって接触し、
前記不動部材と前記収容部との間に第1パイプを貫通して取り付けて前記洗浄液タンクから前記収容部に前記窓用洗浄液を流入させる一方、前記可動部材と前記収容部との間に第2パイプを貫通して取り付けて前記収容部から前記ワイパーに前記窓用洗浄液を送出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、運転席と、運転席の窓ガラスと、窓ガラスの汚れを窓用洗浄液を用いて拭き取るワイパーとを備える窓ガラス付き車両において、窓用洗浄液が、ボンネットに備えるノズル、およびワイパーに備えるノズルを介して噴射可能であるので、汚れの箇所に窓用洗浄液を適切に吹き付けることができる。これにより、窓用洗浄液を汚れに十分な量だけ浸透させた後に、ワイパーで汚れを擦ることができ、汚れを完全に落とすことができる。したがって、運転席の窓ガラスについた汚れを確実に落とすことが可能な窓ガラス付き車両を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、窓用洗浄液が、ボンネットに備えるノズル、またはワイパーに備えるノズルのいずれかを選択して噴射されるので、汚れの箇所に応じて窓用洗浄液の噴射位置を選択することができ、不必要に窓用洗浄液を使用することがない。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、自走するための駆動部を備え、駆動部から発する熱を利用して窓用洗浄液を温めるので、加温された窓用洗浄液を汚れに噴射することが可能となり、常温の窓用洗浄液に比べて汚れを分解しやすくなり、窓ガラスについた汚れをいっそう確実に落とすことが可能な窓ガラス付き車両を提供することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、駆動部がエンジンであり、エンジンから発する排気熱を利用して窓用洗浄液を温めるので、高温な熱を用いて窓用洗浄液を効率よく加温することができる。また、別途、加温装置を設ける必要がなく、簡単な構造の窓ガラス付き車両を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、駆動部がボンネット内に備えられ、窓用洗浄液を貯留する洗浄液タンクを駆動部近傍でかつ、ボンネット内に設けるので、洗浄液タンク内に貯留されている時点で窓用洗浄液を加温することができる。また、駆動部の廃熱を利用するので、別途、加温装置を設ける必要がなく、効率的に窓用洗浄液を加温することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、エンジンから発する排気熱が、洗浄液タンク内に収納された窓用洗浄液を加温するに加えて、洗浄液タンクより、ボンネットに備えるノズル、およびワイパーに備えるノズルに向かう窓用洗浄液をも加温するので、窓用洗浄液をいっそう効率的に加温して窓ガラスに噴射することができる。これによって、窓ガラスについた汚れをさらにいっそう確実に落とすことが可能な窓ガラス付き車両を提供することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、加圧手段を備え、その加圧手段によって窓用洗浄液を加圧した後にボンネットに備えるノズル、およびワイパーに備えるノズルより噴射する窓ガラス付き車両であって、加圧手段とワイパーに備えるノズルとの間に減圧手段を備え、ワイパーに備えるノズルより噴射される窓用洗浄液の噴射圧を、ボンネットに備えるノズルより噴射される窓用洗浄液の噴射圧よりも低くするので、加圧手段の加圧値および減圧手段の減圧値を適宜設定することができ、ボンネットに備えるノズルの噴射圧と、ワイパーに備えるノズルの噴射圧とを独立して調整することが可能となる。したがって、最適な噴射圧を設定して所望の箇所に噴射することが可能な窓ガラス付き車両を提供することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、窓用洗浄液がボンネットに備えるノズル、およびワイパーに備えるノズルより噴射された後に、ワイパーが作動して窓ガラスの汚れを拭き取るので、窓用洗浄液によって窓ガラス表面に液層を形成した後にワイパーがこの液層上で拭き取り動作を行うことができる。したがって、乾燥した窓ガラス面をワイパーが作動することを回避することができ、これにより、ワイパーの磨耗を防止することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、ワイパーが、窓ガラスに当接してふき取りを行うワイパーブレードと、そのワイパーブレードを支持するワイパー支持部と、窓用洗浄液をワイパーに備えるノズルへ導くためのパイプとを備え、そのパイプの先端にノズルを備えるとともに、パイプの先端部がワイパー支持部より露出し、パイプの露出部分が蛇腹状に形成されてノズルの噴射方向を変えうるので、必要に応じてパイプの方向を変更させることで、容易にノズルの噴射方向を変えることができる。したがって、より適切に窓ガラスに窓用洗浄液を噴射することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、窓用洗浄液を洗浄液タンクに貯留するとともに、窓用洗浄液をパイプを介してワイパーに備えるノズルより噴射する窓ガラス付き車両であって、ワイパーを回動させるための回動軸と、その回動軸を保持する回動部とを備え、その回動部が回動軸とともに回動する回動部材と、その回動部材の外縁を取り囲むように設けられる不動部材とで構成され、回動部材と不動部材とが、中央部にて空間を形成して窓用洗浄液を保持する収容部を構成するとともに、縁辺部にて気密性をもって接触し、不動部材と収容部との間に第1パイプを貫通して取り付けて洗浄液タンクから収容部に窓用洗浄液を流入させる一方、可動部材と収容部との間に第2パイプを貫通して取り付けて収容部からワイパーに窓用洗浄液を送出するので、ワイパーが回動する際に、パイプがねじれることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の窓ガラス付き車両の一例としてのトラクタの側面図である。
【図2】図1の要部概略正面図である。
【図3】洗浄液タンクからノズルに至る経路を説明する図である。
【図4】この発明の別の例としてのワイパーの(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図5】この発明のさらに別の例としてのワイパーの(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図6】この発明の窓ガラス付き車両の窓ガラスにロータリージョイントを取り付けた例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1にこの発明の窓ガラス付車両としてのトラクタ21の側面図を、図2にはその要部概略正面図を示す。トラクタ21は、車体フレーム22の前後に前輪23および後輪24を2つずつ備え、前輪23の上方にボンネット25を形成し、その内側には駆動部としてのエンジンを備える。そして、ボンネット25の後部に連続して運転キャビン26を設ける。
【0027】
運転キャビン26内には、エンジンキー、アクセルペダル,クラッチペダル,ブレーキペダルなどの操作ペダル28、シフトレバー、ハンドル29、運転席30、さらに、速度、燃料、警報などを表示する表示部(不図示)などを設ける。運転キャビン26は、フロントガラス(窓ガラス)35、リアガラスに加えて、視認性を向上させるためにドア31をガラス製にしている。また、運転キャビン26の左前部にはラジオ放送などを受信するアンテナ32を取り付けるとともに、運転キャビン26の両前部には後方確認用のミラー33を設ける。
【0028】
運転キャビン26の前方のボンネット25上には、エンジンの排気を誘導するパイプ状の排気口27を鉛直方向に設ける。また、運転キャビン26の前部下方には、運転者が運転キャビン26に昇降するためのステップ34を車体フレーム22に固定して取り付ける。
運転キャビン26の後部下方には、フェンダ36が後輪24の後側上半分付近まで覆うように設けられ、反射板37がフェンダ36の後端に取り付けられる。このフェンダ36は本体フレーム22に固設されている。
【0029】
さらに、トラクタ21の後部には、トップリンク39,左右一対のロワーリンク40およびPTO軸41を延設する。トップリンク39および左右一対のロワーリンク40の先端には、三点リンク式のオートヒッチを取り付けるようにしてもよい。そして、必要に応じて、トラクタ21後部にはロータリー耕耘機50などの作業機をトップリンク39,ロワーリンク40を介して取り付け、PTO軸41をロータリー耕耘機50の入力軸に取り付ける。
【0030】
なお、フロントガラス35の下部にはワイパーWを設ける。ワイパーWは、回動中心Cに対して略180度回動可能に構成されている。符号WAは、このワイパーWの作動によって、拭き取り可能なエリアを示す。このワイパーWは、窓ガラスに当接してふき取りを行うワイパーブレードと、このワイパーブレードを保持するワイパー支持部とを備え、ワイパー支持部内には後述するように、パイプと2つのノズルとを備える(この発明において、ノズルは2つに限定されるものではない)。一方、ボンネット25の中心よりやや左右側寄りで、かつ、運転キャビン26近傍には、2つのノズルN1,N2をボンネット25より突出して設ける。このノズルN1,N2は後述するパイプを介してウインドウォッシャー液(窓用洗浄液)をフロントガラス35に噴射するためのものである(なお、この例では、水をウインドウォッシャー液として用いている)。すなわち、ノズルN1,N2は下方よりフロントガラス35に向かってウインドウォッシャー液を噴射する。
【0031】
図3には、ウインドウォッシャー液の噴出経路を示す。ウインドウォッシャー液は、貯蔵タンク(洗浄液タンク)Tに貯蔵されている。貯蔵タンクTは、トラクタ21のエンジン(駆動部)Eの上に載置され、かつ、ボンネット25内に収納されている。このため、駆動時にエンジンEの発する熱が貯蔵タンクTに容易に伝わり易く、ウインドウォッシャー液を貯蔵タンクTの外側から温める(または保温する)効果がある。貯蔵タンクTは、パイプPを介してポンプ(加圧手段)PUの入側と連結されている(ポンプPUの加圧値は、ノズルN1,N2の噴射圧に応じて適宜設定されるものとする)。
【0032】
ポンプPUの出側には別のパイプPが連結され、熱交換器HEと接続されている。熱交換器HEは、他方で排気口27に伝熱部材R1を挿入している。この伝熱部材R1は、排気口27内を流れるエンジンEからの排気熱を受け取る。排気口27には、排気熱を受け取る別の伝熱部材R2が挿入され、この伝熱部材R2の他端は貯蔵タンクT内に挿入され、貯蔵タンクT内のウインドウォッシャー液を加温する。なお、伝熱部材R1,R2は、マニフォールド部分よりも下流側、すなわち、複数のバルブが集合した下流側に設置されることが望ましい(図中では、排気の流れを矢印で示す)。このように構成することで、伝熱部材R1,R2は、複数のバルブからの排気熱を定常的に受けることができる。
【0033】
熱交換器HEの出側には、別のパイプP0が取り付けられている。このパイプP0の他端は流路切替部Sに接続されている。流路切替部Sは、1つの流入路と3つの流出路を有する。すなわち、ワイパーWへ向かうパイプP1、また、ノズルN1,N2へそれぞれ向かうパイプP2,P2である。この流路切替部Sは、ポンプPUより送り込まれる加圧されたウインドウォッシャー液をパイプP1またはパイプP2へと切り替えて送り出すためのものである。この流路切替部Sは、運転キャビン26内のハンドル29の近傍に備える不図示のウォッシャー液切替スイッチによって流出路の切替ができるようになっている。なお、流路切替部Sは、パイプP1とパイプP2の両方へウインドウォッシャー液を送り出すことができるように構成してもよい。
【0034】
パイプP1は、さらにリリーフ弁(減圧手段)Vを介して、ワイパーW内に延び、ワイパー支持部内にて2つのノズルN3,N4に連結されている。このリリーフ弁Vは、ノズルN3,N4より噴射されるウインドウォッシャー液の噴射圧を、ノズルN1,N2より噴射されるウインドウォッシャー液の噴射圧よりも低く設定するためのものである。すなわち、ポンプPUではその加圧値を、ノズルN1,N2のみを考慮して設定しているため、ノズルN3,N4の必要とする加圧値よりも大きく設定されてしまう(これは、ノズルN1,N2とフロントガラス35との距離が、ノズルN3,N4とフロントガラス35との距離よりも大きいことに起因するものである)。このリリーフ弁Vは、さらにパイプP3を介して貯蔵タンクTと連結され、一定量のウインドウォッシャー液を貯蔵タンクTへ還流させることでパイプP1内を減圧するようになっている。
【0035】
一方、パイプP2の先端には、ノズルN1,N2を備える。ノズルN1〜N4は通常の自動車やトラクタに付いているものと同様の構造である。パイプP,P0,P1,P2は、フレキシブルな素材、たとえば、ビニールなどであってもよいし、プラスチックなどのような硬質の素材であってもよい。
【0036】
次に、ワイパーWを用いてトラクタ21のフロントガラス35を洗浄する動作を説明する。まず、運転者は、トラクタ21の運転席20に着席してエンジンキーを回してエンジンEをかける。すると、排気口27内は、エンジンEの燃焼によって発生した高温の排気が流れる。これによって、伝熱部材R1,R2が加熱され、この熱はそれぞれ熱交換器HEと貯蔵タンクTへと伝達される。
【0037】
たとえば、フロントガラス35の一部にがんこな汚れがある場合には、ウォッシャー液切替スイッチをワイパーW側に切り替える。そして、不図示の洗浄スイッチを押下・保持してウインドウォッシャー液を噴射させる。すると、ポンプPUが作動し、ウインドウォッシャー液を貯蔵タンクTから吸引し、圧力を加えて、熱交換器HE側へ送り出す。ウインドウォッシャー液は、熱交換器HEにて、排気口27からの廃熱を受け取って加温され、流路切替部Sを介してパイプP1へと送り出される。
【0038】
そして、リリーフ弁Vにて所望の圧力に減圧された後、ワイパーW内を通って、ノズルN3,N4より噴射される。これに続けて、ワイパーWはフロントガラス35の拭き取り動作を開始する。なお、リリーフ弁Vでは、パイプP1によって送られてきたウインドウォッシャー液の一部をパイプP3を介して貯蔵タンクTに返還することによって減圧が行われる。
【0039】
つぎに、ウォッシャー液切替スイッチをボンネット側に切り替えたときの動作を説明する。不図示の洗浄スイッチを押下・保持してウインドウォッシャー液を噴射させるが、このときの貯蔵タンクT〜流路切替部Sまでのウインドウォッシャー液の流れは、上述の場合と同様であるので説明を省略する。ウインドウォッシャー液は、流路切替部Sにて、流路を切り替えられて、パイプP2へと向かい、ノズルN1,N2より噴射される。噴射されたウインドウォッシャー液は、なお、ウォッシャー液切替ボタンは、汚れの場所や運転者の判断で適宜、切り替えるものとする。
【0040】
このようにこの例では、常温のウインドウォッシャー液を貯蔵タンクTで加温するとともにポンプPUの出側に設けられた熱交換器HEによってさらに瞬間的に加温する構成となっている。これは、水をウインドウォッシャー液として用いる必要のある農作業の特殊性に起因する。すなわち、洗剤を主成分とするウインドウォッシャー液を圃場で用いると、洗剤が飛散することによって農作物への有害な影響が懸念され、水をウインドウォッシャー液として用いることが望まれる。しかし、水によるウインドウォッシャー液は、洗剤によるウインドウォッシャー液に比べて洗浄効果が低くなってしまい、フロントガラス35が十分に清掃できないという問題があった。これを補うために、この例では、水を加温して短時間で汚れに浸透しやすくする技術を提示している。
【0041】
また、外気温が低くなる季節には、通常は不凍液をウインドウォッシャー液に添加する。しかし、不凍液の成分による農作物への有害な影響が懸念され、農作業車にはこれを使うことは好ましくない。したがって、水のウインドウォッシャー液を使うことになるが、貯蔵タンクT内の水が凍結してしまい、寒冷期には、ウインドウォッシャー液を使うことができないという問題があった。これを解決するために、この例では、貯蔵タンクT自体をエンジンEの熱によって温めて凍結を防止する技術を提示している(伝熱部材R2による加温も凍結防止に寄与している)。
【0042】
以上、この例では、発明の技術をノズルN1〜N4をフロントガラスに噴射する例について説明したが、リアガラスに適用してもよい。すなわち、リアガラスの上方で、運転キャビン26の屋根近傍に2つのノズルを設ける。一方、リアガラスに取り付けたリアワイパーに別の2つのノズルを設ける(この構成はワイパーWと同様とする)。そして、ハンドル29近傍にリアウインドウ用の洗浄スイッチを設け、この洗浄スイッチを押下・保持している間のみ、ウインドウォッシャー液が噴出され、リアワイパーが作動するように構成する。さらに、貯蔵タンクTとノズルまでの間には別の流路切替部を設け(この構成は流路切替部Sと同様とする)、リアワイパー側とリアガラス上方側とを切り替えるようにする。この切替は、運転キャビン26内に備える別のウォッシャー液切替スイッチによって行うものとする。
【0043】
また、上述の例では、エンジンEを有する窓ガラス付き車両について説明したが、モータを駆動部として走行する車両に適用してもよい。この場合には、モータの発熱を利用して熱交換器にてウインドウォッシャー液を加温するように構成する。
【0044】
図4(a),(b)には、この発明の別の例のワイパーを示す。この例のワイパーW1は、ワイパー基端部W1aと、そのワイパー基端部W1aの先端に設けられたワイパー支持部W1bと、ワイパー支持部W1bが支持するワイパーブレードW1cと、ワイパーブレードW1cにウインドウォッシャー液を供給するパイプP4などを備える。ワイパー基端部W1aの基端側には、ワイパーの回動軸Aの先端を固設する。この回動軸Aの基端は、不図示のモータに接続されている。パイプP4の基端側は、図3に示すようにリリーフ弁Vの出側に接続されている(なお、この例のパイプP4はリリーフ弁Vを介することに限定されるものではなく、流路切替部Sの出側に直接接続されていてもよい)。ワイパーブレードW1c内部には中空状に流路Gが形成されている。この流路Gは、基端側でパイプP4の先端と連結されている。
【0045】
一方、流路Gの先端は、ワイパーブレードW1cがフロントガラス35と当接する部分(ワイパーブレードW1cの先端側)全域にわたって分枝して(この例では、7つに)いる。ワイパーW1cの基端側は、ワイパー支持部W1bに保持されている。ワイパー支持部W1bの基端側(ワイパー基端部W1aと連結されている側)は、上方に向かって折り曲げ自在にワイパー基端部W1aと連結されている。これによって、たとえば、ワイパーブレードW1cの先端側にごみなどが付着したときには、ワイパー支持部W1bの基端側を回動支点として、持ち上げてワイパーブレードW1cの先端側を清掃することができる。なお、ワイパーブレードW1c内に形成される流路Gは、ゴム製のワイパーブレードW1cと一体に形成されるものとする。
【0046】
このように構成されたワイパーW1によってフロントガラス35を清掃するときは、運転席にて、ウォッシャー液切替スイッチをワイパーW1側に切り替える。そして、不図示の洗浄スイッチを押下・保持してウインドウォッシャー液を噴射させる。すると、ポンプPUが作動し、ウインドウォッシャー液を貯蔵タンクTから吸引し、圧力を加えて、熱交換器HE側へ送り出す。ウインドウォッシャー液は、熱交換器HEにて、排気口27からの廃熱を受け取って急速加温され、流路切替部Sを介してパイプP4へと送り出される。そして、リリーフ弁Vにて所望の圧力に減圧された後、ワイパーW1内を通って、流路G(図4では7つある)より噴射される。これに続けて、ワイパーW1はフロントガラス35の拭き取り動作を開始する。したがって、ワイパーW1は、噴射されたウインドウォッシャー液をワイパーブレードW1cにてフロントガラス35に引き伸ばしながら回動し、同時に汚れを拭き取る。
【0047】
図5(a),(b)には、この発明のさらに別の例のワイパーを示す。この例のワイパーW2は、ワイパー基端部W2aと、そのワイパー基端部W2aの先端に設けられたワイパー支持部W2bと、ワイパー支持部W2bが支持するワイパーブレードW2cと、ワイパーブレードW2cにウインドウォッシャー液を供給するパイプP5などを備える。ワイパー基端部W1aの基端側には、ワイパーの回動軸Aの先端を固設する。この回動軸Aの基端は、不図示のモータに接続されている。パイプP5の基端側は、図3に示すようにリリーフ弁Vの出側に接続されている(なお、この例のパイプP5はリリーフ弁Vを介することに限定されるものではなく、流路切替部Sの出側に直接接続されていてもよい)。
【0048】
パイプP5はワイパー支持部W2bの先端よりにおいて、ワイパー支持部W2bより露出している。この露出部分は、蛇腹構造のフレキシブルパイプPJによって構成されている(すなわち、パイプP5の先端にフレキシブルパイプPJの基端が接続されている)。そして、フレキシブルパイプPJの先端には、ノズルN5を取り付ける。このフレキシブルパイプPJはノズルN5の噴射方向を自在に変えうる構造となっている。
【0049】
この例では、図5(b)に示すように、ノズルN5が、ワイパー支持部W2bに対してワイパーW2の回動方向前方側に位置するようにフレキシブルパイプPJを曲げる。また、ノズルN5は、ワイパーブレードW2cの先端(フロントガラスとの当接部分)から、高さHの位置となるように(ワイパー支持部W2bの天面よりも上側となるように)配置される。この高さHは、ノズルN5からウインドウォッシャー液を噴射したい範囲や単位面積あたりの噴射量に応じて変更することができる。すなわち、高さHを高くすることで噴射範囲を広くする(かつ、単位面積あたりの噴射量を少なくする)ことができるし、高さHを低くすることで噴射範囲を狭くする(かつ、単位面積あたりの噴射量を多くする)ことができる。
【0050】
このように構成されたワイパーW2によってフロントガラス35を清掃するときは、運転席にて、ウォッシャー液切替スイッチをワイパーW2側に切り替える。そして、不図示の洗浄スイッチを押下・保持してウインドウォッシャー液を噴射させる。すると、ポンプPUが作動し、ウインドウォッシャー液を貯蔵タンクTから吸引し、圧力を加えて、熱交換器HE側へ送り出す。ウインドウォッシャー液は、熱交換器HEにて、排気口27からの廃熱を受け取って急速加温され、流路切替部Sを介してパイプP5へと送り出される。そして、リリーフ弁Vにて所望の圧力に減圧された後、ワイパーW1内を通って、さらにフレキシブルパイプPJ内を通ってノズルN5よりフロントガラス35に向けて噴射される。これに続けて、ワイパーW2はフロントガラス35の拭き取り動作を開始する。
【0051】
図6には、この発明のさらにまた別の例を示す。この例では、図5(a),(b)に示したワイパーW2にロータリージョイント(回動部)50を取り付ける構成である。詳しくは、ワイパー基端部W2aの基端部に固設される回動軸Aとフロントガラス35との取り付け部分に関する構成である。ロータリージョイント50は、固定側としての外殻(不動部材)51と、これに嵌合する内殻(回動部材)52とを備える。
【0052】
内殻52は、円筒状の芯部52aとその芯部52aの上下端近傍に円筒を取り巻くように形成された円板状の円板部52bとで構成されている。芯部52a内側には回動軸Aを固設し、回動軸Aと一体に回動するようになっている。図6において、フロントガラス35の外側に位置する円板部52bには貫通孔が形成され、この貫通孔には、第2パイプP52の基端側を嵌めつける。パイプP52の先端側には、図5に示す構成と同様の蛇腹状のフレキシブルパイプを取り付け、さらにフレキシブルパイプの先端にはノズルを取り付ける。
【0053】
外殻51は、芯部52aより直径の大きな円筒状の外周部51aとその外周部51aの上下端に、円筒の内側に向かってドーナツ状に張り出して形成された円環部51bとで構成されている。外殻51は、内殻52の外縁を取り囲むように設けられる。外殻51の外周部51aは、フロントガラス35にシール剤を介して固設されている。図6において、外殻51の下部には貫通孔が形成され、その貫通孔には第1パイプP51の先端を嵌めつける。パイプP51の基端はリリーフ弁V(図3参照)の出側に接続されている。
【0054】
外殻51と内殻52とは縁辺部にてオイルシールによって密閉され摺動自在に構成される。詳しくは、外殻51の円環部51b内面と、内殻52の円板部52b外面とが重なりあうように配置され、両者の間にオイルを充填し、オイルを介して両者が気密性をもって接触するように構成する(このため、ウインドウォッシャー液は収容部53から漏れ出すことがない)。このように外殻51と内殻52とを配置することで、外殻51と内殻52とが中央部に中空状の収容部53を形成する。この収容部53には、ウインドウォッシャー液を保持することができる。
【0055】
このように構成されたロータリージョイント50では、ウインドウォッシャー液をノズルより噴射するときは、ポンプPUにて貯蔵タンクTからウインドウォッシャー液を吸引して加圧した後に、熱交換器HEにて加温する。そして、流路切替部S、リリーフ弁Vを経て第1パイプP51より収容部53にウインドウォッシャー液を流入させる。収容部53にはウインドウォッシャー液がすでに充填されているので、流入された分のウインドウォッシャー液は、第2パイプ52より送出する。そして、フレキシブルパイプを経てノズルより噴射される。噴射して一定時間経過後、ワイパーW2が回動を始める。ワイパーW2と回動軸Aの回動とともに内殻52も回動するので、第2パイプP52もワイパー基端部W2aと内殻52と一体となって回動する。したがって、第2パイプP52が撓んだり伸びたりすることがないし、ねじれることもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明の窓ガラス付き車両は、トラクタに限定されるものではなく、窓ガラスを有する他の農業機械、たとえば、コンバインなどにも適用することができる。これに加えて、農業機械以外のあらゆる窓ガラス付き車両にも適用しうる。
【符号の説明】
【0057】
21 トラクタ(窓ガラス付き車両)
25 ボンネット
26 運転キャビン
27 排気口
29 ハンドル
30 運転席
35 フロントガラス(窓ガラス)
50 ロータリージョイント(回動部)
51 外殻
51a 外周部
51b 円環部
52 内殻
52a 芯部
52b 円板部
53 収容部
A 回動軸
C 回動中心
E エンジン(駆動部)
G 流路
HE 熱交換器
N1,N2,N3,N4,N5 ノズル
P,P0,P1,P2,P3,P4 パイプ
P51 第1パイプ
P52 第2パイプ
PJ フレキシブルパイプ
PU ポンプ(加圧手段)
R1,R2 伝熱部材
S 流路切替部
T 貯蔵タンク(洗浄液タンク)
V リリーフ弁(減圧手段)
W,W1,W2 ワイパー
WA 拭き取り可能なエリア
W1a,W2a ワイパー基端部
W1b,W2b ワイパー支持部
W1c,W2c ワイパーブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席と、該運転席の窓ガラスと、該窓ガラスの汚れを窓用洗浄液を用いて拭き取るワイパーとを備える窓ガラス付き車両において、
前記窓用洗浄液が、ボンネットに備えるノズル、およびワイパーに備えるノズルを介して噴射可能であることを特徴とする、窓ガラス付き車両。
【請求項2】
前記窓用洗浄液が、前記ボンネットに備えるノズル、または前記ワイパーに備えるノズルのいずれかを選択して噴射されることを特徴とする、請求項1に記載の窓ガラス付き車両。
【請求項3】
自走するための駆動部を備え、該駆動部から発する熱を利用して前記窓用洗浄液を温めることを特徴とする、請求項1に記載の窓ガラス付き車両。
【請求項4】
前記駆動部がエンジンであり、該エンジンから発する排気熱を利用して前記窓用洗浄液を温めることを特徴とする、請求項3に記載の窓ガラス付き車両。
【請求項5】
前記駆動部が前記ボンネット内に備えられ、前記窓用洗浄液を貯留する洗浄液タンクを前記駆動部近傍でかつ、前記ボンネット内に設けることを特徴とする、請求項3に記載の窓ガラス付き車両。
【請求項6】
前記エンジンから発する排気熱が、洗浄液タンク内に収納された前記窓用洗浄液を加温するに加えて、前記洗浄液タンクより、前記ボンネットに備えるノズル、および前記ワイパーに備えるノズルに向かう前記窓用洗浄液をも加温することを特徴とする、請求項4に記載の窓ガラス付車両。
【請求項7】
加圧手段を備え、該加圧手段によって前記窓用洗浄液を加圧した後に前記ボンネットに備えるノズル、および前記ワイパーに備えるノズルより噴射する窓ガラス付き車両であって、
前記加圧手段と前記ワイパーに備えるノズルとの間に減圧手段を備え、前記ワイパーに備えるノズルより噴射される前記窓用洗浄液の噴射圧を、前記ボンネットに備えるノズルより噴射される前記窓用洗浄液の噴射圧よりも低くすることを特徴とする、請求項1に記載の窓ガラス付き車両。
【請求項8】
前記窓用洗浄液が前記ボンネットに備えるノズル、および前記ワイパーに備えるノズルより噴射された後に、前記ワイパーが作動して前記窓ガラスの汚れを拭き取ることを特徴とする、請求項1に記載の窓ガラス付き車両。
【請求項9】
前記ワイパーが、前記窓ガラスに当接してふき取りを行うワイパーブレードと、該ワイパーブレードを支持するワイパー支持部と、前記窓用洗浄液を前記ワイパーに備えるノズルへ導くためのパイプとを備え、
該パイプの先端に前記ノズルを備えるとともに、前記パイプの先端部が前記ワイパー支持部より露出し、前記パイプの露出部分が蛇腹状に形成されて前記ノズルの噴射方向を変えうることを特徴とする、請求項1に記載の窓ガラス付車両。
【請求項10】
前記窓用洗浄液を洗浄液タンクに貯留するとともに、前記窓用洗浄液をパイプを介して前記ワイパーに備えるノズルより噴射する窓ガラス付き車両であって、
前記ワイパーを回動させるための回動軸と、該回動軸を保持する回動部とを備え、
該回動部が前記回動軸とともに回動する回動部材と、該回動部材の外縁を取り囲むように設けられる不動部材とで構成され、
前記回動部材と前記不動部材とが、中央部にて空間を形成して前記窓用洗浄液を保持する収容部を構成するとともに、縁辺部にて気密性をもって接触し、
前記不動部材と前記収容部との間に第1パイプを貫通して取り付けて前記洗浄液タンクから前記収容部に前記窓用洗浄液を流入させる一方、前記可動部材と前記収容部との間に第2パイプを貫通して取り付けて前記収容部から前記ワイパーに前記窓用洗浄液を送出することを特徴とする、請求項1に記載の窓ガラス付車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−68319(P2011−68319A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223181(P2009−223181)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】