説明

立体映像表示装置およびその視差量調整方法

【課題】視聴者の位置に応じて、視差量を調整する際、視差量を調整した立体的な映像に欠けが発生することを抑制し、視聴者の快適性を向上させた立体映像表示装置およびその視差量調整方法を提供することを目的としている。
【解決手段】右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を調整する調整部250を有し、この調整部250は、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、X軸の正側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を、X軸の負側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量よりも大きくする、または、X軸の負側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を、X軸の正側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量よりも大きくして視差量を調整する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差を利用して立体的な映像を表示する立体映像表示装置およびその視差量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネルや液晶パネルを用いて、立体的な映像を見る立体映像表示装置の開発が積極的に行われている。例えば、両眼視差を利用した立体映像表示装置は、互いに視差を有する右目用映像と左目用映像を周期的に画面に表示する。
【0003】
右目用映像が写し出された際は、この映像を右目で見て、左目用映像が写し出された際は、この映像を左目で見る。これらの右目用映像と左目用映像が互いに視差を有するので、映像が立体的に見える。この立体的な映像は、右目用映像と左目用映像の視差量によって、立体的な映像の奥行き感や飛び出し感が変わる。視差量が大きければ、奥行きや飛び出しも大きくなり、視差量が小さければ、奥行きや飛び出しも小さくなる。
【0004】
このような立体映像表示装置において、右目用映像を右目で見て、左目用映像を左目で見るためには、例えば、シャッター方式のメガネを用いる。このシャッター方式のメガネには、右目用レンズと左目用レンズに、光の通過と遮断を切り替える液晶フィルタを配置している。液晶フィルタのシャッター開閉によって、光の通過と遮断を切り替える。
【0005】
具体的には、表示パネルの画面に映し出される右目用映像と左目用映像が切り替わるタイミングに同期させて、右目用レンズと左目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッター開閉のタイミングを切り替える。
【0006】
すなわち、右目用映像に切り替わるタイミングに同期させて、右目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを開いて光を通過させ、左目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを閉じて光を遮断し、右目だけに右目用映像を見せる。
【0007】
また、左目用映像に切り替わるタイミングに同期させて、左目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを開いて光を通過させ、右目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを閉じて光を遮断し、左目だけに左目用映像を見せる。
【0008】
このとき、右目用映像と左目用映像との切り替えタイミングと、液晶フィルタのシャッター開閉のタイミングとは、表示パネルとメガネとを無線や有線で接続して同期のタイミングを取る。
【0009】
これを交互に繰り返し続けることによって、視聴者は、右目用映像と左目用映像から立体的な映像を見ることができる。このシャッター方式のメガネを用いた立体映像表示装置は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0010】
さらに、シャッター方式のメガネを用いた立体映像表示装置において、立体的な映像を見る視聴者の位置によって、右目用映像と左目用映像の視差を変化させることが、特許文献3や特許文献4に開示されている。一般的に、立体映像表示装置と視聴者との距離に応じて、右目用映像と左目用映像の奥行き感や飛び出し感が変わる。このために、特許文献3や特許文献4では、右目用映像と左目用映像を横方向に互いにずらし、視差量を調整している。この視差量の調整によって、視聴者は奥行き感や飛び出し感を変化させた立体的な映像を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−36939号公報
【特許文献2】特開平10−240212号公報
【特許文献3】特開2004−349736号公報
【特許文献4】特開2004−180069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来の立体映像表示装置では、表示パネルの画面に右目用映像と左目用映像を表示させ、これら右目用映像と左目用映像に基づいて立体的な映像を見ることができる。また、立体的な映像を見る視聴者の位置に応じて、右目用映像と左目用映像の視差量を調整すれば、立体的な映像の奥行き感や飛び出し感を変えることもできる。
【0013】
しかし、これらの視差量の調整は、一般的に、視聴者が画面を正面から見る場合を前提にしている。例えば、視聴者が画面の右端や左端に位置している場合、奥行き感や飛び出し感を調整することはできても、奥行きの方向や飛び出しの方向については、何ら考慮されていないと考えられる。視聴者が画面の右端や左端に位置して立体的な映像を見ると、奥行きの方向や飛び出しの方向は視聴者と画面とを結ぶ延長線上となる。したがって、視聴者が画面の正面にいない場合は、立体的な映像の飛び出しの方向や奥行きの方向は視聴者が画面の正面に位置する場合に比べ斜め方向となってしまう。
【0014】
立体的な映像を見る上では、視聴者の位置に応じて、立体的な映像の奥行き感や飛び出し感が変わるので、視聴位置は重要となる。特に、立体的な映像を提供するコンテンツ制作会社等は、立体的な映像を見るための視聴位置を予め設定し、その視聴位置において最適となる立体的な映像を製作することが一般的だと思われる。
【0015】
そのために、コンテンツ制作会社等が設定する視聴位置とは異なる位置において、立体的な映像を見る場合、コンテンツ制作会社等の意図する立体的な映像とは異なって見え、最適な立体的な映像を見ることができない可能性がある。
【0016】
上記従来の構成は、コンテンツ制作会社等の意図する立体的な映像を快適に見ることを目的としていない。すなわち、立体的な映像の奥行き感や飛び出し感を変化させることはできるが、映画等の1つの作品として立体的な映像のコンテンツを見る場合、その立体的な映像における奥行き方向や飛び出し方向を考慮して、視差量の調整をしたものではない。
【0017】
このように上記従来の構成では、視聴者の位置に応じて、視差量を調整する際、立体的な映像の奥行き方向や飛び出し方向を考慮していないので、特に、映画等の1つの作品として立体的な映像のコンテンツを見る場合、視聴者にとって必ずしも快適ではないという問題を有する。
【0018】
本発明は上記問題を解決し、視聴者の位置に応じて、視差量を調整する際、立体的な映像の奥行き方向や飛び出し方向を考慮し、視聴者の快適性を向上させた立体映像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明の立体映像表示装置は、映像が表示される画面を有する表示パネルと、前記映像を前記画面に表示させる映像制御部とを備え、前記映像は互いに視差を有する右目用映像と左目用映像を含み、周期的に前記画面に表示される前記右目用映像と前記左目用映像を、メガネを用いて見る立体映像表示装置であって、前記映像制御部は、前記映像の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、奥行方向をZ軸方向とした互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、前記右目用映像と前記左目用映像の視差量を調整する調整部を有し、前記調整部は、前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する、または、Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する構成である。
【0020】
また、上記目的を達成するために本発明の立体映像表示装置の視差量調整方法は、映像が表示される画面を有する表示パネルと、前記映像を前記画面に表示させる映像制御部とを備え、前記映像は互いに視差を有する右目用映像と左目用映像を含み、周期的に前記画面に表示される前記右目用映像と前記左目用映像を、メガネを用いて見る立体映像表示装置の視差量調整方法であって、前記映像の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、奥行方向をZ軸方向とした互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、前記右目用映像と前記左目用映像の視差量を調整するとともに、前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する、または、Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の立体映像表示装置およびその視差量調整方法によれば、互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、メガネの基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、右目用映像と左目用映像の視差量を調整する調整部を有するので、視聴者の位置に応じて、立体的な映像の奥行き方向や飛び出し方向を変化させることができる。
【0022】
すなわち、視聴者が最適な立体的な映像を見ることのできる視聴位置において、視聴者が掛けたメガネの位置をメガネの基準座標とし、実際に視聴者が立体的な映像を見ている視聴位置において、視聴者が掛けたメガネの位置をメガネの現在座標とした時、メガネの基準座標に対する現在座標の変化を変化量として算出することができる。
【0023】
このメガネの基準座標に対する現在座標の変化量に合わせて、右目用映像と左目用映像の視差量を調整すれば、視聴者の位置が最適な視聴位置から変化しても、立体的な映像の奥行き方向や飛び出し方向を適切な状態に変化させることができる。
【0024】
特に、調整部は、メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する、または、Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整するので、視聴者が画面の右端や左端に位置している場合でも、立体的な映像の奥行き方向や飛び出し方向を適切な状態に変化させることができる。
【0025】
例えば、視聴者が画面の右側(X軸の正側)に位置した場合、左側の領域(X軸の負側の領域)の端部に向かって、右目用映像と左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、右側の領域(X軸の正側の領域)の端部に向かって、右目用映像と左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する。
【0026】
これによって、右側の領域(X軸の正側の領域)における立体的な映像は奥に引っ込み、左側の領域(X軸の負側の領域)における立体的な映像は手前に飛び出すので、擬似的に、画面の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0027】
特に、右側の領域(X軸の正側の領域)の端部に向かって、徐々に、右目用映像と左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくし、左側の領域(X軸の負側の領域)の端部に向かって、徐々に、右目用映像と左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくさせると、擬似的に、画面の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を高精度に作り出せる。
【0028】
視聴者が画面の左側(X軸の負側)に位置した場合は、上記の状態が逆になるだけであって、擬似的に、画面の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0029】
以上のように、視聴者が画面の右端や左端に位置したとしても、擬似的に、画面の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。したがって、視聴者は立体的な映像を正面にして見ることができ、立体的な映像に対する奥行き方向や飛び出し方向も斜め方向ではなく正面方向となるので、視聴者の快適性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1におけるシャッター方式のメガネと立体映像表示装置との関係を示すブロック図
【図2】同立体映像表示装置において映像を表示した際の表示パネルの正面図
【図3】右目用映像と左目用映像を含む映像を説明するための概略図
【図4】メガネの基準座標に対する現在座標の変化と視差量の変化を示す相関図
【図5】視差量調整時におけるメガネと調整部の機能ブロック図
【図6】視差量調整時における映像ブロックの移動前後の状態を示す説明図
【図7】メガネの基準座標に対する現在座標の変化と視差量の変化を示す相関図
【図8】視差量調整時における映像ブロックの移動前後の状態を示す説明図
【図9】実施の形態2における視差量調整時におけるメガネと調整部の機能ブロック図
【図10】視差量調整時における映像ブロックの移動前後の状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施の形態における立体映像表示装置について図面を参照しながら説明する。
【0032】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1における立体表示装置について説明する。
【0033】
図1は実施の形態1におけるシャッター方式のメガネと立体映像表示装置との関係を示すブロック図、図2は同立体映像表示装置において映像を表示した際の表示パネルの正面図、図3は右目用映像と左目用映像を含む映像を説明するための概略図である。
【0034】
<1.メガネ100と立体映像表示装置200との関係>
まず、シャッター方式のメガネ100と立体映像表示装置200との関係について説明する。図1、図2において、立体映像表示装置200は、映像210を表示する画面220が配置された表示パネル230と、映像210の表示を制御する映像制御部240とを備えている。この表示パネル230としては、例えば、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等を用いる。
【0035】
図3に示すように、映像210は、互いに視差を有する右目用映像210Rと左目用映像210Lを含む。映像制御部240は、この互いに視差を有する右目用映像210Rと左目用映像210Lを交互に表示パネル230の画面220に表示するように制御している。右目用映像210Rが写し出された際は、この右目用映像210Rを右目で見て、左目用映像210Lが写し出された際は、この左目用映像210Lを左目で見る。これらの右目用映像210Rと左目用映像210Lが互いに視差を有するので、映像210が立体的に見える。
【0036】
図3において、右目用映像210Rと左目用映像210Lには、「A」という文字が表示されている。この右目用映像210Rと左目用映像210Lが交互に表示パネル230の画面220に表示されると、視聴者には視差量(W1)を有する映像210として見える。すなわち、映像210が立体的に見える。この立体的な映像210は、右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量(W1)によって、立体的な映像210の奥行き感や飛び出し感が変わる。視差量(W1)が大きければ、奥行きや飛び出しも大きくなり、視差量(W1)が小さければ、奥行きや飛び出しも小さくなる。
【0037】
右目用映像210Rを右目で、左目用映像210Lを左目で見るためには、例えば、シャッター方式のメガネ100を用いる。このシャッター方式のメガネ100には、右目用レンズと左目用レンズに、光の通過と遮断を切り替える液晶フィルタを配置している。液晶フィルタのシャッター開閉によって、光の通過と遮断を切り替える。
【0038】
具体的には、表示パネル230に映し出される右目用映像210Rと左目用映像210Lが切り替わるタイミングに同期させて、右目用レンズと左目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッター開閉のタイミングを切り替える。
【0039】
すなわち、右目用映像210Rに切り替わるタイミングに同期させて、右目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを開いて光を通過させ、左目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを閉じて光を遮断し、右目だけに右目用映像210Rを見せる。
【0040】
また、左目用映像210Lに切り替わるタイミングに同期させて、左目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを開いて光を通過させ、右目用レンズに配置した液晶フィルタのシャッターを閉じて光を遮断し、左目だけに左目用映像210Lを見せる。右目用映像210Rと左目用映像210Lとの切り替えタイミングと、液晶フィルタのシャッター開閉のタイミングとは、表示パネル230とメガネ100とを無線や有線で接続して同期のタイミングを取る。
【0041】
このシャッター開閉を繰り返し続けることによって、視聴者は、視差を有する右目用映像210Rと左目用映像210Lを周期的に右目と左目で見ることになる。この結果、視聴者は、これら周期的に繰り返される右目用映像210Rと左目用映像210Lに基づいて立体的な映像210を見ることができる。
【0042】
<2.メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)と視差量の変化>
次に、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化(X軸方向)と視差量の変化について説明する。図4はメガネ100の基準座標に対する現在座標の変化(X軸方向)と視差量の変化を示す相関図である。
【0043】
図4において、映像210の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、奥行方向をZ軸方向とし、映像210の中心を原点とした互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、映像210の中心の原点を通るZ軸からX軸方向にメガネ100を移動させた場合を考える。
【0044】
図4(a)において、メガネ100をX軸の正側方向または負側方向に移動させない時、原点を頂点としたZ軸とX軸で形成される角度をθ1a度とするメガネ100の座標をメガネ100の基準座標とする。この角度θ1a度は角度が90度の場合である。このとき、例えば、図3における右目用映像210Rと左目用映像210Lに表示された文字「A」が、画面220の端部に位置する場合、視差量(W1a)を有する立体的な映像210として見ることになる。画面220の右側端部の視差量(W1a)と左側端部の視差量(W1a)は同じ視差量なので、立体的な映像210の右側端部における奥行き感や飛び出し感は、左側端部における奥行き感や飛び出し感と同じである。
【0045】
図4(b)において、メガネ100をX軸の正側方向に移動させ、原点を頂点とし、原点とメガネ100を結ぶ軸とX軸で形成される角度をθ1b度とするメガネ100の座標をメガネ100の現在座標とする。メガネ100を掛けた視聴者が画面220の中心から右方向に移動した状態である。このとき、図4(b)における右側端部の文字「A」は、図4(a)における右側端部の文字「A」に比べて、奥行き感や飛び出し感の大きい立体的な映像210として見える。また、図4(b)における左側端部の文字「A」は、図4(a)における左側端部の文字「A」に比べて、奥行き感や飛び出し感の小さい立体的な映像210として見える。図4(a)における文字「A」と図4(b)における文字「A」の奥行き感や飛び出し感を変えないようにしたい場合は、図4(b)における右側端部の文字「A」の視差量(W1bR)を、視差量(W1a)よりも小さくすればよく、図4(b)における左側端部の文字「A」の視差量(W1bL)を、視差量(W1a)よりも大きくすればよい。
【0046】
<2A.メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)に対する視差量の調整>
次に、メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)に対する視差量の調整について説明する。図5は視差量調整時におけるメガネと調整部の機能ブロック図、図6は視差量調整時における映像ブロックの移動前後の状態を示す説明図である。
【0047】
図4で説明したように、画面220を見る視聴者の位置に応じて、立体的な映像210の奥行き感や飛び出し感も異なってしまう。そのために、図5に示すように、映像制御部240は、右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を調整する調整部250を有する。
【0048】
メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、映像制御部240は、X軸の正側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を、X軸の負側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量よりも大きくして視差量を調整する、または、X軸の負側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を、X軸の正側の領域における右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量よりも大きくして視差量を調整する。
【0049】
具体的には、次の通りである。
【0050】
図5において、メガネ100には、メガネ100の現在座標を検出する座標検出部110が配置されている。メガネ100の座標検出部110は、メガネ100の現在座標が基準座標からX軸方向に移動したことを検出している。この座標検出部110が検出したメガネ100の現在座標は、メガネ100に配置された送信部120を介して映像制御部240に送信される。この送信されたメガネ100の現在座標は、映像制御部240の調整部250に配置された受信部260が受信する。この受信部260が受信したメガネ100の現在座標に基づいて、演算部270は、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化量を算出する。
【0051】
一方、映像制御部240の調整部250は、視差ベクトル検出部280において、右目用映像210Rと左目用映像210Lに基づいて、映像領域320における視差ベクトルを検出する。図6に示すように、映像領域320は、細分化されて映像ブロック290に分割される。右目用映像210Rと左目用映像210Lの映像ブロック290における視差ベクトルを検出し、この視差ベクトルによって、右目用映像210Rと左目用映像210Lにおける視差量を検出する。
【0052】
上述した演算部270の算出結果と視差ベクトル検出部280の検出結果に基づいて、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化を調整するように、視差ベクトル加工部300によって、映像ブロック290の視差ベクトルを加工する。図6に示すように、この視差ベクトルの加工は、X軸方向に対して映像ブロック290を移動させることによって行う。これによって、視差ベクトルを増減できる。
【0053】
この際、映像ブロック290の移動によって、映像ブロック290の存在しない領域が発生し、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの一部の領域が欠落するので、補間映像生成部310によって、存在しない領域における映像ブロック290を補間する。そして、補間された右目用映像210Rと左目用映像210Lを出力映像として、画面220に表示させる。
【0054】
この補間は、一般的な補間技術を用いればよく、例えば、次のようにしてもよい。すなわち、右目用映像210Rに発生した映像ブロック290が存在しない領域の補間は、それに対応する左目用映像210Lの映像ブロック290に基づいて補間すればよい。または、表示される右目用映像210Rよりも、前に表示される右目用映像210Rの映像ブロック290や、後に表示される右目用映像210Rの映像ブロック290に基づいて補間すればよい。左目用映像210Lに発生した映像ブロック290の存在しない領域の補間は、上述の内容と逆になる。
【0055】
なお、視差ベクトル加工部300による視差ベクトルの加工は、演算部270で算出した算出結果に応じて、自動的に行ってもよいし、視聴者等が必要と感じる状況下において、視差調整量入力部330を介して視聴者が自ら手動的に行ってもよい。この視差調整量入力部330は、外部入力操作の可能な装置であればよい。
【0056】
<2B.映像ブロック290の移動と視差量の変化>
次に、メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)に対する映像ブロック290の具体的な移動と視差量の変化について説明する。
【0057】
まず、図6(a)に示すように、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lの映像領域320は、細分化された映像ブロック290に分割される。図6(a)では、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lともに、「1」〜「35」に細分化された映像ブロック290に分割されている。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lの映像ブロック290を比較して、映像が一致する映像ブロック290の位置が同一であるかまたは相違しているかを探索し、視差ベクトルを検出する。映像が一致する映像ブロック290の位置が同一である場合は、視差ベクトルは「0」となり、相違している場合は、相違量と方向に応じた視差ベクトルを有する。図6(b)では、右目用映像210Rと左目用映像210Lの全ての映像ブロック290が同一の位置で一致しており、視差ベクトルは「0」となる。すなわち、「A」〜「O」の映像ブロック290、「α」〜「ε」の映像ブロック290、「a」〜「o」の映像ブロック290が同一の位置で一致しており、視差ベクトルも「0」となる。
【0059】
次に、映像が一致する映像ブロック290を移動させる。図6(c)では、映像ブロック290の移動が非常に小さいので、図6(c)における映像ブロック290の位置が、図6(b)における映像ブロック290の位置と同一位置となっている。ここでは、右目用映像210Rと左目用映像210LのY軸上に位置する「α」〜「ε」の映像ブロック290を基準にして、Z軸からX軸の正側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの右側領域(X軸の正側領域)における「a」〜「o」の映像ブロック290は奥行き方向の視差量を大きくするように、右目用映像210Rと左目用映像210Lの左側領域(X軸の負側領域)における「A」〜「O」の映像ブロック290は飛び出し方向の視差量を大きくするように、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lのいずれかの映像ブロック290を移動させる。図6(c)では、左目用映像の映像ブロック290を移動させて視差量を変化させている。左目用映像210Lの映像ブロック290を移動させることによって、右目用映像210Rの映像ブロック290と左目用映像210Lの映像ブロック290との位置が相違するので、この相違量と方向に応じた視差ベクトルを有することになる。
【0060】
これによって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「A」〜「O」の映像ブロック290の視差ベクトルが調整され、視差量が変化する。特に、この場合は、映像ブロック290の飛び出し方向の視差量が大きくなる。また、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「a」〜「o」の映像ブロック290の視差ベクトルが調整され、視差量が変化する。特に、この場合は、映像ブロック290の奥行き方向の視差量が大きくなる。
【0061】
このように、映像領域320の一部の映像ブロック290を移動させることによって、視聴者が画面220の右側(X軸の正側)に位置した場合でも、左側の領域(X軸の負側領域)における右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、右側の領域(X軸の正側領域)における右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくすることができる。
【0062】
図7は、メガネの基準座標に対する現在座標の変化と視差量の変化を示す相関図である。図7(a)は、メガネ100の基準座標における立体的な映像210と視差量の関係を示し、図7(b)は、メガネ100の現在座標における立体的な映像210と視差量の関係を示している。
【0063】
上述した調整部250による視差量の調整によって、図7(b)に示すように、立体的な映像210の右側の領域(X軸の正側領域)は奥に引っ込み、左側の領域(X軸の負側領域)は手前に飛び出すので、擬似的に、図7(a)に示すように、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0064】
特に、右側の領域(X軸の正側の領域)の端部に向かって、徐々に、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして調整する、または、左側の領域(X軸の負側の領域)の端部に向かって、徐々に、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくして視差量を調整すれば、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を高精度に作り出せる。
【0065】
視聴者が画面220の左側(X軸の負側)に位置した場合は、上記の状態が逆になるだけであって、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0066】
<2C.視差を有する映像ブロック290の移動と視差量の変化>
次に、メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)に対する視差を有する映像ブロック290の具体的な移動と視差量の変化について説明する。
【0067】
視差のない右目用映像210Rと左目用映像210Lにおいて、視聴者が画面220の右側の領域(X軸の正側領域)または左側の領域(X軸の負側領域)に位置した場合は、上述したように映像ブロック290を移動させれば、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0068】
一方、視差のある右目用映像210Rと左目用映像210Lにおいて、視聴者が画面220の右側の領域(X軸の正側の領域)または左側の領域(X軸の負側領域)に位置した場合は、視差のある映像ブロック290の視差量に対して、上述の移動した映像ブロック290の視差量が上乗せされる。
【0069】
具体的には、次の通りである。
【0070】
図8は、視差量調整時における映像ブロックの移動前後の状態を示す説明図である。
【0071】
まず、図8(a)に示すように、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lの映像領域320は、細分化された映像ブロック290に分割される。図8(a)では、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lともに、「1」〜「35」に細分化された映像ブロック290に分割されている。
【0072】
次に、図8(b)に示すように、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lの映像ブロック290を比較して、映像が一致する映像ブロック290の位置が同一であるかまたは相違しているかを探索し、視差ベクトルを検出する。映像が一致する映像ブロック290の位置が同一である場合は、視差ベクトルは「0」となり、相違している場合は、相違量と方向に応じた視差ベクトルを有する。
【0073】
図8(b)では、右目用映像210Rと左目用映像210Lにおける「X」、「Y」、「Z」の映像ブロック290の位置が相違しているので、この「X」、「Y」、「Z」の映像ブロック290は、互いに、相違量と方向に応じた視差ベクトルを有する。この「X」、「Y」、「Z」の映像ブロック290の相違量が視差量となる。
【0074】
また、図8(b)では、上記を除いた映像ブロック290は同一の位置で一致しており、視差ベクトルは「0」となる。すなわち、「A」〜「O」の映像ブロック290、「α」〜「ε」の映像ブロック290、「a」〜「o」の映像ブロック290の内、上記の「X」、「Y」、「Z」を除いた映像ブロック290が該当する。
【0075】
次に、図8(c)に示すように、右目用映像210Rと左目用映像210LのY軸上に位置する「α」〜「ε」の映像ブロック290を基準にして、右目用映像210Rと左目用映像210Lの右側領域(X軸の正側領域)における「a」〜「o」の映像ブロック290は奥行き方向の視差量を大きくするように、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lのいずれかの映像ブロック290を移動させる。
【0076】
また、右目用映像210Rと左目用映像210Lの左側領域(X軸の負側領域)における「A」〜「O」の映像ブロック290は飛び出し方向の視差量を大きくするように、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lのいずれかの映像ブロック290を移動させる。
【0077】
図8(c)では、左目用映像の映像ブロック290を移動させて相違量を変化させている。このとき、上記の映像ブロック290の移動分だけ、「X」、「Y」、「Z」の映像ブロック290も移動させる。
【0078】
これによって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「A」〜「O」の映像ブロック290の飛び出し方向の視差ベクトルが調整され、視差量が変化する。特に、この場合は、映像ブロック290の飛び出し方向の視差量が大きくなる。
【0079】
また、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「a」〜「o」の映像ブロック290の奥行き方向の視差ベクトルが調整され、視差量が変化する。特に、この場合は、映像ブロック290の奥行き方向の視差量が小さくなる。
【0080】
また、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「X」、「Y」、「Z」の映像ブロック290は、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「A」〜「O」の映像ブロック290の視差ベクトルが調整された分だけ、視差量が変化する。
【0081】
このように、映像領域320の一部の映像ブロック290を移動させるので、視聴者が画面220の右側(X軸の正側)に位置した場合でも、左側の領域(X軸の負側領域)における右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、右側の領域(X軸の正側領域)における右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくすることができる。
【0082】
さらに、右目用映像210Rと左目用映像210Lにおけるあらかじめ視差を有する領域は、この視差を有する領域の視差量に対して、上述した視差量が上乗せされる。すなわち、この上乗せされた視差量分だけ、視差を有する領域の視差量は大きくなる。
【0083】
<実施の形態1のまとめ>
上記構成によれば、互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を調整する調整部250を有するので、視聴者の位置に応じて、立体的な映像210の奥行き方向や飛び出し方向を変化させることができる。
【0084】
すなわち、視聴者が立体的な映像210を最適な状態で見ることのできる視聴位置において、視聴者が掛けたメガネ100の位置をメガネ100の基準座標とし、実際に視聴者が立体的な映像210を見ている視聴位置において、視聴者が掛けたメガネ100の位置をメガネ100の現在座標とした時、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化を変化量として算出することができる。このメガネ100の基準座標に対する現在座標の変化量に合わせて、右目用映像210Rと左目用映像210Lの視差量を調整すれば、視聴者の位置が最適な視聴位置から変化しても、立体的な映像210の奥行き方向や飛び出し方向を適切な状態に変化させることができる。
【0085】
特に、調整部250は、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の正側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の負側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する、または、Z軸からX軸の負側方向に向かって右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の正側方向に向かって右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整するので、視聴者が画面220の右端や左端に位置している場合でも、立体的な映像210に対する奥行き方向や飛び出し方向を適切な状態に変化させることができる。
【0086】
例えば、視聴者が画面220の右側(X軸の正側)に位置した場合、左側の領域(X軸の負側の領域)の端部に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、右側の領域(X軸の正側の領域)の端部に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する。
【0087】
これによって、立体的な映像210の右側の領域(X軸の正側の領域)よりも、左側の領域(X軸の負側の領域)の方が飛び出すので、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0088】
特に、右側の領域(X軸の正側の領域)の端部に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を徐々に大きくし、左側の領域(X軸の負側の領域)の端部に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を徐々に大きくさせると、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を高精度に作り出せる。
【0089】
視聴者が画面220の左側(X軸の負側)に位置した場合は、上記の状態が逆になるだけであって、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0090】
以上のように、視聴者が画面220の右端や左端に位置したとしても、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。したがって、視聴者は立体的な映像210を正面にして見ることができる。さらに、右目用映像210Rと左目用映像210Lの一部の領域が視差を有する場合、この領域の奥行き方向や飛び出し方向は、立体的な映像210に対して斜め方向ではなく正面方向となるので、視聴者の快適性を向上できる。
【0091】
また、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の正側方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の正側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の負側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整すれば、視聴者が画面220の右側(X軸の正側)に位置した場合、立体的な映像210における右側の領域(X軸の正側の領域)よりも、左側の領域(X軸の負側の領域)の方が飛び出すので、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。したがって、視聴者は立体的な映像210を正面にして見ることができる。
【0092】
特に、調整部250によってX軸の正側方向に向かって、または、X軸の負側方向に向かって、徐々に、視差量を大きくして視差量を調整すれば、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を高精度に作り出せる。
【0093】
さらに、右目用映像210Rと左目用映像210Lの一部の領域が視差を有する場合、この領域の奥行き方向や飛び出し方向は、立体的な映像210に対して斜め方向ではなく正面方向となるので、視聴者の快適性を向上できる。
【0094】
また、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の負側方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の正側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、Z軸からX軸の負側方向に向かって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整すれば、視聴者が画面220の左側(X軸の負側)に位置した場合、立体的な映像210の左側の領域(X軸の負側の領域)よりも、右側の領域(X軸の正側の領域)の方が飛び出すので、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。したがって、視聴者は立体的な映像210を正面にして見ることができる。
【0095】
特に、調整部250によってX軸の正側方向に向かって、または、X軸の負側方向に向かって、徐々に、視差量を大きくして視差量を調整すれば、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を高精度に作り出せる。
【0096】
さらに、右目用映像210Rと左目用映像210Lの一部の領域が視差を有する場合、この領域の奥行き方向や飛び出し方向は、立体的な映像210に対して斜め方向ではなく正面方向となるので、視聴者の快適性を向上できる。
【0097】
なお、立体映像表示装置200に配置された調整部250は、その一部または全部をメガネ100に配置してもよい。この場合、立体映像表示装置200に表示される右目用映像210Rと左目用映像210Lの情報を立体映像表示装置200からメガネ100に送信し、視差量を調整した後、視差量を調整した右目用映像210Rと左目用映像210Lの情報をメガネ100から立体映像表示装置200に再び送信し、立体映像表示装置200で表示することになる。
【0098】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における立体映像表示装置について説明する。実施の形態1における立体映像表示装置と同様な構成については、その説明を省略する。
【0099】
実施の形態2における立体映像表示装置は、実施の形態1における立体映像表示装置に対して、調整部250の視差ベクトル加工部300による映像ブロック290の加工が異なる。
【0100】
<1.メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)に対する視差量の調整>
図9は実施の形態2における視差量調整時におけるメガネと調整部の機能ブロック図、図10は視差量調整時における映像ブロックの移動前後の状態を示す説明図である。
【0101】
図9において、実施の形態2における立体映像表示装置の調整部250は、図7に示すように、メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の正側方向への距離変化である場合、Z軸からX軸の負側方向に向かって、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの拡大率を縮小して、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし視差量を調整する。また、Z軸からX軸の正側方向に向かって、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの拡大率を縮小して、右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する。
【0102】
メガネ100の基準座標に対する現在座標の変化に応じて、演算部270によって拡大率が設定され、この拡大率に基づいて、視差ベクトル加工部300によって視差量が調整される。
【0103】
<2B.映像ブロック290の移動と視差量の変化>
次に、メガネ100の現在座標の変化(X軸方向)に対する映像ブロック290の具体的な移動と視差量の変化について説明する。
【0104】
図10に示すように、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lの映像領域320は、細分化された映像ブロック290に分割される。図10(a)では、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lともに、「1」〜「35」に細分化された映像ブロック290に分割されている。
【0105】
次に、図10(b)に示すように、右目用映像210Rおよび左目用映像210Lの映像ブロック290を比較して、映像が一致する映像ブロック290の位置が同一であるかまたは相違しているかを探索し、視差ベクトルを検出する。映像が一致する映像ブロック290の位置が同一である場合は、視差ベクトルは「0」となり、相違している場合は、相違量と方向に応じた視差ベクトルを有する。図10(b)では、右目用映像210Rと左目用映像210Lの全ての映像ブロック290が同一の位置で一致しており、視差ベクトルは「0」となる。すなわち、「A」〜「O」の映像ブロック290、「α」〜「ε」の映像ブロック290、「a」〜「o」の映像ブロック290が同一の位置で一致しており、視差ベクトルも「0」となる。
【0106】
次に、図10(c)に示すように、映像が一致する映像ブロック290を移動させる。ここでは、右目用映像210Rと左目用映像210LのY軸上に位置する「α」〜「ε」の映像ブロック290を基準にして、Z軸からX軸の正側方向に向かって、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの右側領域(X軸の正側領域)における「a」〜「o」の映像ブロック290の拡大率を縮小して、奥行き方向の視差量を大きくし、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの左側領域(X軸の負側領域)における「A」〜「O」の映像ブロック290の拡大率を縮小して、飛び出し方向の視差量を大きくするように、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lのいずれかの映像ブロック290を移動させる。
【0107】
図10(c)では、左目用映像の映像ブロック290の拡大率を縮小して移動させている。左目用映像210Lの映像ブロック290の拡大率を縮小して移動させることによって、右目用映像210Rの映像ブロック290と左目用映像210Lの映像ブロック290との位置が相違するので、この相違量と方向に応じて視差ベクトルを有することになる。
【0108】
これによって、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「A」〜「O」の映像ブロック290の視差ベクトルが調整され、視差量が変化する。特に、この場合は、映像ブロック290の飛び出し方向の視差量が大きくなる。また、右目用映像210Rと左目用映像210Lの「a」〜「o」の映像ブロック290の視差ベクトルが調整され、視差量が変化する。特に、この場合は、映像ブロック290の奥行き方向の視差量が大きくなる。
【0109】
このように、映像領域320の一部の映像ブロック290の拡大率を縮小して移動させることによって、視聴者が画面220の右側(X軸の正側)に位置した場合でも、左側の領域(X軸の負側領域)における右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくし、右側の領域(X軸の正側領域)における右目用映像210Rと左目用映像210Lの奥行き方向の視差量を大きくすることができる。
【0110】
上述した調整部250による視差量の調整によって、図7(b)に示すように、立体的な映像210の右側の領域(X軸の正側領域)は奥に引っ込み、左側の領域(X軸の負側領域)は手前に飛び出すので、擬似的に、図7(a)に示すように、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0111】
特に、右側の領域(X軸の正側の領域)の端部に向かって、徐々に、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの拡大率を縮小して、右目用映像210Rと左目用映像210L奥行き方向の視差量を大きくして調整する、または、左側の領域(X軸の負側の領域)の端部に向かって、徐々に、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの拡大率を縮小して、右目用映像210Rと左目用映像210Lの飛び出し方向の視差量を大きくして視差量を調整すれば、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を高精度に作り出せる。
【0112】
視聴者が画面220の左側(X軸の負側)に位置した場合は、上記の状態が逆になるだけであって、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。
【0113】
<実施の形態2のまとめ>
以上のように、視聴者が画面220の右端や左端に位置したとしても、擬似的に、画面220の正面に視聴者が位置する状態と同じ状態を作り出せる。したがって、視聴者は立体的な映像210を正面にして見ることができる。さらに、右目用映像210Rと左目用映像210Lの一部の領域が視差を有する場合、実施の形態1で説明したように、この領域の奥行き方向や飛び出し方向は、立体的な映像210に対して斜め方向ではなく正面方向となるので、視聴者の快適性を向上できる。
【0114】
なお、実施の形態1および実施の形態2では、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの中心を、X軸とY軸とZ軸の原点として設定した場合について説明したが、その他の位置に設定しても同様のことが言える。特に、右目用映像210Rまたは左目用映像210Lの中心を、X軸とY軸とZ軸の原点として設定した場合は、X軸の正側方向の領域とX軸の負側方向の領域において、互いに、飛び出し方向と奥行き方向が対称になるので、立体的な映像210に歪を生じさせにくい。
【0115】
また、実施の形態1および実施の形態2では、X軸の正側方向または負側方向に向かって、徐々に、視差量を大きく、または、小さくなるように視差量を調整するために、視差ベクトルを抽出し、その視差ベクトルを加工して、左目用映像210Lを再構成したが、左目用映像210Lまたは右目用映像210Rを独立に、X軸の正側方向または負側方向に向かって、徐々に、画素変換(スケーラー)伸縮率を変化させた場合でも、同様の効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、視聴者が立体的な映像を最適な状態で見ることができ、視聴者の快適性を向上した立体映像表示装置に適用できる。
【符号の説明】
【0117】
100 メガネ
110 座標検出部
120 送信部
200 立体映像表示装置
210 映像
210R 右目用映像
210L 左目用映像
220 画面
230 表示パネル
240 映像制御部
250 調整部
260 受信部
270 演算部
280 視差ベクトル検出部
290 映像ブロック
300 視差ベクトル加工部
310 補間映像生成部
320 映像領域
330 視差調整量入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像が表示される画面を有する表示パネルと、
前記映像を前記画面に表示させる映像制御部とを備え、
前記映像は互いに視差を有する右目用映像と左目用映像を含み、
周期的に前記画面に表示される前記右目用映像と前記左目用映像を、
メガネを用いて見る立体映像表示装置であって、
前記映像制御部は、
前記映像の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、奥行方向をZ軸方向とした
互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、前記右目用映像と前記左目用映像の視差量を調整する調整部を有し、
前記調整部は、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する、または、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
立体映像表示装置。
【請求項2】
前記調整部は、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の正側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項3】
前記調整部は、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の負側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項4】
前記調整部は、
X軸の正側方向に向かって、または、X軸の負側方向に向かって、徐々に、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向または奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項5】
前記調整部は、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の正側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項6】
前記調整部は、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の負側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項7】
前記調整部は、
X軸の正側方向に向かって、または、X軸の負側方向に向かって、徐々に、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向または奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項1に記載の立体映像表示装置。
【請求項8】
映像が表示される画面を有する表示パネルと、
前記映像を前記画面に表示させる映像制御部とを備え、
前記映像は互いに視差を有する右目用映像と左目用映像を含み、
周期的に前記画面に表示される前記右目用映像と前記左目用映像を、
メガネを用いて見る立体映像表示装置の視差量調整方法であって、
前記映像の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向とし、奥行方向をZ軸方向とした
互いに直交するX軸とY軸とZ軸の座標系において、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化に基づいて、前記右目用映像と前記左目用映像の視差量を調整するとともに、
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する、または、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する立体映像表示装置の視差量調整方法。
【請求項9】
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の正側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項8に記載の立体映像表示装置の視差量調整方法。
【請求項10】
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の負側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項8に記載の立体映像表示装置の視差量調整方法。
【請求項11】
X軸の正側方向に向かって、または、X軸の負側方向に向かって、徐々に、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向または奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項8に記載の立体映像表示装置の視差量調整方法。
【請求項12】
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の正側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項8に記載の立体映像表示装置の視差量調整方法。
【請求項13】
前記メガネの基準座標に対する現在座標の変化が、Z軸からX軸の負側方向への距離変化である場合、
Z軸からX軸の正側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向の視差量を大きくし、
Z軸からX軸の負側方向に向かって、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項8に記載の立体映像表示装置の視差量調整方法。
【請求項14】
X軸の正側方向に向かって、または、X軸の負側方向に向かって、徐々に、前記右目用映像または前記左目用映像の拡大率を縮小して、前記右目用映像と前記左目用映像の飛び出し方向または奥行き方向の視差量を大きくして視差量を調整する
請求項8に記載の立体映像表示装置の視差量調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−102255(P2013−102255A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52673(P2010−52673)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】