説明

立体表示装置および立体表示方法

【課題】順次走査型の液晶パネルで立体表示を行う際に、液晶パネルの特性を考慮した表示制御により高品質で実用性に優れた立体表示装置および立体表示方法を提供することを目的とする。
【解決手段】立体表示装置は、L画像またはR画像を2度繰り返し走査して液晶パネルに表示する表示制御部と、液晶パネルの画面領域を走査方向に複数個に分割した分割画面領域の各々に対応した複数個の個別光源領域ごとに走査点灯および走査消灯可能なバックライトと、L画像またはR画像の2度目の書き込み走査のタイミングに同期して、L画像またはR画像が走査されている分割画面領域に対応した個別光源領域を走査点灯させるようにバックライトを制御する光源制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置に表示された画像をシャッター眼鏡で視聴する立体表示技術に関するものである。特に、立体表示装置に液晶パネルを使用した場合の立体画像の表示技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示技術における一分野として、画像表示装置と視聴用のシャッター眼鏡を使用し、画像表示装置に交互に表示される左眼用画像および右眼用画像の表示に同期してシャッター眼鏡の左眼用シャッターおよび右眼用シャッターを開閉することで立体画像を視聴可能にする立体表示システムが普及しつつある。また、表示装置として、バックライトを有する液晶パネルが一般的に普及しており、液晶パネルを使用した立体表示技術の開発が進められてきている。
【0003】
上記立体表示システムにおいて左眼用画像および右眼用画像を表示するためには、1フレーム期間を時系列に分割して画像を倍速表示することが必要となる。したがって、液晶パネルを用いた立体表示の画像品質および実用性の向上を図るためにも、倍速表示や液晶パネルの残像特性に影響を与えるバックライト制御に係わる技術が重要となってきている。
【0004】
さらに、液晶パネルを使用する場合には、液晶パネル特有の技術的な制約条件に対応した立体表示に係わる課題、特に、走査型デバイスとしての順次書き込み走査に関する制約事項、液晶の透過率に係わる応答特性および透過率不足などに関する課題への対応が重要となってくる。
【0005】
従来の立体表示システムにおいて、残像による左眼用画像と右眼用画像とのクロストークを抑制する方法として、シャッター眼鏡の左眼用シャッターと右眼用シャッターとが同時に遮光状態となる同時遮光期間を各フレーム期間の一部分に設ける方法や、残像により左眼用画像と右眼用画像が重なって表示される期間ではバックライトを消灯する方法などが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−152897号公報
【特許文献2】特開2000−4451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の立体表示システムにおいて、残像による左眼用画像と右眼用画像のクロストーク抑制方法としては、シャッター眼鏡のシャッター開閉タイミングを制御するだけや液晶パネルのバックライト点灯を制御するだけであり、走査型デバイスとしての順次書き込み走査に関する制約事項、応答遅延および電気的な容量特性など、液晶パネルの特性に基づく課題を解決するものではなかった。
【0008】
本発明は、液晶パネルの特性を考慮した立体表示制御を行うことによって、液晶パネルを用いた高品質で実用性に優れた立体表示装置および立体表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の立体表示装置は、左眼用画像または右眼用画像を表示する液晶パネルと、左眼用画像または右眼用画像を2度繰り返し走査して液晶パネルに表示する表示制御手段と、液晶パネルの画面領域を走査方向に複数個に分割した分割画面領域の各々に対応した複数個の個別光源領域ごとに走査点灯および走査消灯可能な局所減光光源と、表示制御手段による左眼用画像または右眼用画像の2度目の走査タイミングに同期して、左眼用画像または右眼用画像が走査されている分割画面領域に対応した個別光源領域を走査点灯させるように局所減光光源を制御する光源制御手段を有することを特徴とする。このような構成により、左眼用画像または右眼用画像の2度目の走査タイミングで、左眼用画像または右眼用画像の走査に対応した個別光源領域を走査点灯させることができ、左眼用画像または右眼用画像に対する液晶パネルの応答が十分な状態で左眼用画像と右眼用画像とのクロストークの影響のない立体表示装置を提供することができる。
【0010】
さらに、本発明の立体表示装置は、光源制御手段が、表示制御手段による左眼用画像または右眼用画像の1度目の走査タイミングに同期して、左眼用画像または右眼用画像が走査されている分割画面領域に対応した個別光源領域を走査消灯することを特徴とする。このような構成により、左眼用画像または右眼用画像に対する液晶パネルの応答が十分でない1度目の走査タイミングで局所減光光源を消灯することができ、左眼用画像と右眼用画像とのクロストークの影響をより確実に抑制し、また、省電力にも寄与する立体表示装置を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明の立体表示装置は、表示制御手段が、1度目の走査タイミングで液晶パネルに表示する左眼用画像または右眼用画像の時間軸方向の高域成分を強調することを特徴とする。このような構成により、液晶パネルへの書き込み電圧の値を確実に達成させることができ、鮮明な画像が表示される立体表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液晶パネルの特性を考慮して左眼用画像または右眼用画像の2度目の走査タイミングと同期して複数のバックライトを順次点灯させることで、左眼用画像と右眼用画像とのクロストークのない高品質で実用性に優れた立体表示装置および立体表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における立体表示システムを構成する立体表示装置およびシャッター眼鏡の概観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における立体表示装置の主要構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1の立体表示装置の表示部の構成を示す正面図および側面図である。
【図4】本発明の実施の形態1の立体表示装置の表示動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1の立体表示装置における表示動作を説明する模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1の立体表示装置における書き込み走査に対する液晶の透過率の変化を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の立体表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】液晶パネルを用いた従来の立体表示装置の表示動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を図1〜図8を用いて説明する。
【0015】
なお、以下では、左右の視差画像の表示順を左眼用の次に右眼用として立体表示を行う場合について説明しているが、表示順を右眼用の次に左眼用としても良い。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の立体表示システム(以下、「本システム」と略記する)1を構成する立体表示装置100およびシャッター眼鏡(以下、「眼鏡」と略記する)200の概観を示す斜視図である。
【0017】
本システム1は、立体表示装置100および眼鏡200から構成される。
【0018】
立体表示装置100は、表示部130および赤外線発光素子151を備え、表示部130には左眼用画像(以下、「L画像」と略記する)と右眼用画像(以下、「R画像」と略記する)が交互に表示され、赤外線発光素子151からはL画像およびR画像の表示に同期して眼鏡200のシャッター切替のタイミングを示す同期信号が眼鏡200に送信される。
【0019】
眼鏡200は、左眼用シャッター(以下、「左シャッター」と略記する)210a、右眼用シャッター(以下、「右シャッター」と略記する)210bおよび赤外線受光素子221を備え、立体表示装置100の赤外線発光素子151から赤外線として送信される同期信号を赤外線受光素子221で受信し、立体表示装置100に表示されるL画像およびR画像と同期するように、左シャッター210aと右シャッター210bの開閉を制御する。
【0020】
これにより、眼鏡200を介して立体表示装置100が表示する画像を立体的な画像として知覚することができる。
【0021】
次に、立体表示装置100の主要構成を図2を用いて説明する。
【0022】
図2に示すように、左右両眼の視差角を伴って撮影した、または、コンピュータグラフィクスなどによって生成した立体映像信号と立体映像信号の表示タイミングを示すV同期信号が信号処理部120に入力される。入力された立体映像信号は、分離部121においてL画像とR画像とに分離され、L画像およびR画像はフレームメモリ122内のL画像メモリ122aおよびR画像メモリ122bにそれぞれ格納される。また、フレームメモリ122に格納されたL画像およびR画像を呼び出す場合は、L画像およびR画像について、表示周波数(フレーム周波数)を倍速化する。例えば、呼び出し速度を2倍速化した場合には、L画像およびR画像の表示期間(フレーム期間)はそれぞれ信号処理部120に入力された映像信号の1/2となって、交互に表示部130に表示される。書き込みおよび読み出しのタイミングについては、信号処理部120に入力されるV同期信号から生成される書き込みタイミングに基づいてフレームメモリ122に書き込んだ後、V同期信号から生成される読み出しタイミングに基づいて2倍のスピードで読み出しを行う。また、表示管理部123ではL画像およびR画像の選択および表示制御を行い、L画像を2倍速で読み出した後、0.5フレーム期間後にR画像を2倍速で読み出し、表示部130にL画像およびR画像を交互に表示する。
【0023】
ここで、立体表示装置100の表示部130として液晶パネル131を用いる場合、液晶パネル131が走査型デバイスであるため、画像を走査して表示するには、例えば、画面領域の上部から下部に順次電圧をかけて画像データの書き込みが必要となる(以下、この画像データの書き込みのことを「書き込み走査」と略記する)。
【0024】
しかし、液晶パネル131には、書き込み走査のタイミングと透過率が所望の値に到達するタイミングに比較的大きな時間差が発生するといった応答特性がある(以下、この書き込み走査のタイミングと透過率が所望の値に到達するタイミングとの時間差を「応答遅延」と略記する)。さらに、書き込み走査において、書き込まれた電圧により液晶の容量Cが変化するために液晶が所望の書き込み電圧(所望の透過率)に達しないといった特性も有する(以下、この容量Cの変化に起因する書き込み電圧が所望の電圧に達しないことを「透過率不足」と略記する)。
【0025】
以下、上記の応答遅延や透過率不足に対応した本システム1の立体表示装置100について詳細に説明していく。
【0026】
図3は、立体表示装置100の表示部130の構成を示す正面図および側面図である。
【0027】
図3に示すように、立体表示装置100の表示部130はL画像またはR画像を表示する液晶素子を並べた液晶パネル131およびバックライト(BL)132を備え、液晶パネル131は、例えば、その画面領域131aが画像表示の走査方向Dに三つの領域A1、A2、A3に分割され、それぞれの分割された画面の領域(以下、「分割画面領域」と略記する)に対応して液晶パネル131の表示面の裏側(背面側)に局所減光光源としてのバックライト132a、132b、132cが並設されている。また、バックライト132a、132b、132cは、走査方向Dにおけるそれぞれの光源領域B1、B2、B3が分割画面領域A1、A2、A3の境界付近で互いに重複するように配置される。さらに、バックライト132a、132b、132cは、L画像またはR画像が走査されている分割画面領域A1、A2、A3に対応した光源領域B1、B2、B3を個別に照射するように走査点灯できる。
【0028】
図2に示した信号処理部120の表示管理部123は、表示制御部123aおよび光源制御部123bから構成されている。
【0029】
表示制御部123aは、応答遅延や透過率不足に対応するために、液晶パネル131に対してL画像またはR画像を繰り返し2度の書き込み走査を行う。
【0030】
光源制御部123bは、L画像とR画像のクロストークを抑制するために、表示制御部123aによるL画像またはR画像の1度目の書き込み走査のタイミングに同期して、バックライト132a、132b、132cを走査消灯し、表示制御部123aによるL画像またはR画像の2度目の書き込み走査のタイミングに同期して、L画像またはR画像が走査されている分割画面領域A1、A2、A3に対応した個別光源領域B1、B2、B3を順次走査点灯させるようにバックライト132a、132b、132cの制御を行う。
【0031】
図4は、本システム1の表示動作を示すタイミングチャートであり、図4(a)はL画像およびR画像がともに白画像の場合、図4(b)は、L画像が白画像、R画像が黒画像の場合を示している。本システム1では、表示画像の1フレーム期間を4分割して液晶パネル131に対する書き込み走査を4倍速で行う。
【0032】
図4(a)の場合は、TB0およびTB1の開始タイミングで画面最上部から画面最下部までL画像の2度の書き込み走査が行われ、眼鏡200はTB1からTB3の間、左シャッター210aが開放される。L画像およびR画像がともに白画像の場合には、液晶パネル131の透過率は画面領域131a全体で最大となる。一方、液晶パネル131の画面領域131aの分割画面領域A1、A2、A3に対応して配設されたバックライト132a(画面上部)、132b(画面中間部)、132c(画面下部)は、図4(a)に示すように、表示制御部123aによるL画像の1度目の書き込み走査のタイミングTB0〜TB1に同期して、L画像が走査されている分割画面領域A1、A2、A3に対応して順次走査消灯され、L画像の2度目の書き込み走査のタイミングTB1〜TB2に同期してL画像が走査されている分割画面領域A1、A2、A3に対応して順次走査点灯される。その後、表示制御部123aによるR画像の1度目の書き込み走査のタイミングTB2〜TB3に同期してR画像が走査されている分割画面領域A1、A2、A3に対応して順次走査消灯され、R画像の2度目の書き込み走査のタイミングTB3〜TB4に同期してR画像が走査されている分割画面領域A1、A2、A3に対応して順次走査点灯される。
【0033】
なお、上記説明では説明の簡略化のため、眼鏡200の左シャッター210aの開放期間をTB1からTB3としたが、シャッターの開放開始/開放終了のタイミングは液晶の応答期間や分割バックライトの走査タイミングなどに応じて微調整し得るものである。
【0034】
同様に、L画像が白画像、R画像が黒画像の場合も、図4(b)に示すように、液晶パネル131への書き込み走査のタイミングに同期してバックライト132が走査消灯および走査点灯される。なお、図4(b)の場合、R画像が黒画像であるため液晶透過率の変化が図4(a)の場合と異なる。
【0035】
図5は、本システム1の表示動作を説明する模式図である。
【0036】
図5では、液晶パネル131のライン数が12で、液晶パネル131の背面側に配設されたバックライト132が4つの分割バックライトから構成され、1つの分割バックライトあたり(3+α)ラインの画面領域をカバーするものとしている。この場合、液晶パネル131には、L画像(1)→L画像(1)→R画像(1)→R画像(1)の順に画面領域131aの最上部から最下部へ書き込み走査が行われ、これに対して、バックライト132は、L画像(1)およびR画像(1)の1回目の書き込み走査の際には走査消灯され、L画像(1)またはR画像(1)の2回目の書き込み走査の際には4つの分割バックライトがL画像(1)またはR画像(1)の書き込み走査に同期して画面領域131aの最上部から最下部へ順次走査点灯される。
【0037】
なお、上記説明では説明の簡略化のため、バックライト132の消灯開始/点灯開始のタイミングをL画像またはR画像の1回目/2回目の書き込み走査の開始タイミングと完全に一致するものとしたが、各分割バックライトの消灯開始/点灯開始のタイミングは、バックライト132の発光特性や残光特性、および液晶の応答期間などに応じて微調整し得るものである。
【0038】
図6は、立体表示装置100への書き込み走査に対する液晶パネル131の透過率の変化を示す図である。
【0039】
図6に示すように、黒表示状態にある画素に対する書き込み走査のタイミングTB0で、液晶の電気容量Cの特性を考慮せずに白表示状態に変化させるための電圧の書き込みを行うと、液晶が透過率の変化とともに電気容量Cが変化するため、図6の(1)のように次の書き込み走査のタイミングTB1までに液晶の透過率をδ0(黒表示状態に対応)からδ1(白表示状態に対応)に変化させることができない。
【0040】
このため、本システム1における立体表示装置100では、オーバードライブ方式(時間軸方向に高域成分の強調を行うフィルタリング方式)により、透過率不足を補正する電圧を設定して書き込み走査を行う。これにより、図6の(2)のように書き込み走査のタイミングTB0から次の書き込み走査のタイミングTB1までに液晶の透過率をδ0(黒表示状態に対応)からδ1(白表示状態に対応)に確実に変化させることができる。なお、上記説明ではδ0が黒表示でδ1が白表示の場合について述べたが、δ0が白表示でδ1が黒表示の場合など、δ0、δ1が別の階調表示であれば、透過率が所望の値に変化しない場合があるため、同様にオーバードライブ方式が有用である。また、本システム1では、L画像またはR画像を繰り返し2度書き込み走査を行うので、オーバードライブ方式で書き込み走査を行うのは1度目の書き込み走査のみとすることもできる。
【0041】
次に、本システム1における立体表示装置100の動作を図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0042】
ステップ1(S1)で、表示管理部123はフレームメモリ122からL画像を4倍速で読み出し、液晶パネル131に対して1度目の書き込み走査を行う。このときの書き込み走査はオーバードライブ方式で行われ、液晶パネル131に表示するL画像の時間軸方向の高域成分が強調される。同時に、L画像の1度目の走査タイミングに同期して、液晶パネル131の画面領域131aの走査方向Dに3分割された分割画面領域A1、A2、A3に対応したバックライト132a、132b、132cを走査消灯して、ステップ2(S2)に進む。
【0043】
ステップ2(S2)で、ステップ1(S1)で液晶パネル131に対して1度目の書き込み走査を行ったL画像の2度目の書き込み走査を行う。このとき、L画像の2度目の書き込み走査に同期して、液晶パネル131の分割画面領域A1、A2、A3に対応したバックライト132a、132b、132cを順次走査点灯して、ステップ3(S3)に進む。なお、L画像の2度目の書き込み走査では、オーバードライブ方式による書き込み走査は行わない。
【0044】
ステップ3(S3)で、表示管理部123はフレームメモリ122からR画像を4倍速で読み出し、液晶パネル131に対して1度目の書き込み走査を行う。このときの書き込み走査はオーバードライブ方式で行われ、液晶パネル131に表示するR画像の時間軸方向の高域成分が強調される。同時に、R画像の1度目の走査タイミングに同期して、液晶パネル131の画面領域131aの走査方向Dに3分割された分割画面領域A1、A2、A3に対応したバックライト132a、132b、132cを走査消灯して、ステップ4(S4)に進む。
【0045】
ステップ4(S4)で、ステップ3(S3)で液晶パネル131に対して1度目の書き込み走査を行ったR画像の2度目の書き込み走査を行う。このとき、R画像の2度目の書き込み走査に同期して、液晶パネル131の分割画面領域A1、A2、A3に対応したバックライト132a、132b、132cを順次走査点灯して、ステップ1(S1)に戻る。なお、R画像の2度目の書き込み走査では、オーバードライブ方式による書き込み走査は行わない。
【0046】
最後に、液晶パネル全面に対する点灯・消灯だけができるバックライトを備えた従来の立体表示装置を比較事例として説明することにより、本発明の液晶パネルを用いた立体表示装置の利点を明確にする。
【0047】
図8は、液晶パネルを用いた従来の立体表示装置の表示動作を示すタイミングチャートである。
【0048】
図8に示すように、この従来の立体表示装置では、L画像とR画像との間のクロストークを抑制するために、1フレーム期間を6つの期間に分割してL画像→黒画像→黒画像→R画像→黒画像→黒画像の順序で書き込み走査を行う。TA0のタイミングでL画像の最上部の書き込み走査が開始され、1/6フレーム期間経過したTA1のタイミングでL画像の最下部の書き込み走査が終了する。同様に、R画像や黒画像の最上部と最下部とではその書き込み走査に1/6フレーム期間だけタイミングの差異が発生する。
【0049】
なお、眼鏡の左シャッターは、L画像の最上部の書き込み走査開始時(TA0)で開放が開始され、L画像に引き続いて2つ目の黒画像の最下部の書き込み走査終了時(TA3)で開放が終了される。
【0050】
しかしながら、この従来の立体表示装置では、L画像またはR画像の書き込み走査を6倍速で行わなければならず、1ラインあたりの書き込み時間が短くなって液晶素子への書き込み不足が発生しやすくなる。これに対処するためには、トランジスタの性能・品質の向上が必要であるが、コストアップの要因となってしまう。
【0051】
さらに、書き込み走査時の液晶素子の電気的な容量Cの変化に起因する書き込み不足に対処するために、L画像またはR画像の書き込み走査に引き続いて2回の黒画像の書き込み走査が必要(1回の黒画像の書き込み走査では液晶素子が黒表示レベルの透過率にならないこと、および黒画像の表示の応答遅延によるクロストークが発生することを回避するため)であるが、これによって黒画像の表示期間が1フレーム期間の2/3を占めるため、L画像およびR画像の輝度が大幅に低下して立体表示の品質が低下する。さらに、1フレーム期間の2/3を占める黒画像表示期間もバックライトが点灯されるため、無駄な消費電力も大きくなる。
【0052】
以上に説明した従来の立体表示装置に対して、本実施の形態の立体表示装置100では、L画像およびR画像の書き込み走査に同期して複数のバックライト132を走査点灯および走査消灯をすることで黒表示を行うため、クロストークを抑制するための黒画像の書き込み走査を必要としない。したがって、バックライト132の使用効率が高まり、無駄な電力消費を抑制することができる。また、L画像およびR画像の書き込み走査期間が1/6フレーム期間より長い1/4フレーム期間となるため、書き込み不足も解消できる。
【0053】
以上の通り、本発明によれば、液晶パネルの駆動速度の低減による装置の安定性の向上や、L画像とR画像との間のクロストーク低減のための黒画像の書き込み走査が不要となることによるバックライトの利用効率の向上が図れ、液晶パネルを使用した高品質で実用性に優れた立体表示装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の立体表示装置および立体表示方法は、左眼用画像と右眼用画像を交互に表示する液晶パネルのような順次走査型立体表示装置と、左眼用画像と右眼用画像の表示に同期して左右のシャッターが開閉するシャッター眼鏡とによって立体映像を視聴できる立体表示システムおよびその立体表示システムで使用される立体表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 立体表示システム
100 立体表示装置
120 信号処理部
121 分離部
122 フレームメモリ
122a L画像メモリ
122b R画像メモリ
123 表示管理部
123a 表示制御部
123b 光源制御部
130 表示部
131 液晶パネル
131a 画面領域
132,132a,132b,132c バックライト
151 赤外線発光素子
200 シャッター眼鏡
210a 左眼用シャッター
210b 右眼用シャッター
221 赤外線受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左眼用画像または右眼用画像を表示する液晶パネルと、
前記左眼用画像または前記右眼用画像を2度繰り返し走査して前記液晶パネルに表示する表示制御手段と、
前記液晶パネルの画面領域を走査方向に複数個に分割した分割画面領域の各々に対応した複数個の個別光源領域ごとに走査点灯および走査消灯可能な局所減光光源と、
前記表示制御手段による前記左眼用画像または前記右眼用画像の2度目の走査タイミングに同期して、前記左眼用画像または前記右眼用画像が走査されている前記分割画面領域に対応した前記個別光源領域を走査点灯させるように前記局所減光光源を制御する光源制御手段と
を有する立体表示装置。
【請求項2】
前記光源制御手段が、前記表示制御手段による前記左眼用画像または前記右眼用画像の1度目の走査タイミングに同期して、前記左眼用画像または前記右眼用画像が走査されている前記分割画面領域に対応した前記個別光源領域を走査消灯する請求項1記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段が、1度目の走査タイミングで前記液晶パネルに表示する前記左眼用画像または前記右眼用画像の時間軸方向の高域成分を強調する請求項1または2記載の立体表示装置。
【請求項4】
左眼用画像または右眼用画像を1度目の走査により液晶パネルに表示する第1表示ステップと、
前記第1表示ステップにおいて、前記液晶パネルの画面領域の走査方向に複数個に分割された分割画面領域で、前記左眼用画像または前記右眼用画像の1度目の走査がなされている前記分割画面領域に対応した局所減光光源の個別光源領域を前記左眼用画像または前記右眼用画像の1度目の走査タイミングに同期して走査消灯する走査消灯ステップと、
前記第1表示ステップで1度目の走査がなされた前記左眼用画像または前記右眼用画像を2度目の走査をして前記液晶パネルに表示する第2表示ステップと、
前記第2表示ステップにおいて、前記左眼用画像または前記右眼用画像の2度目の走査がなされている前記液晶パネルの前記分割画面領域に対応した前記局所減光光源の前記個別光源領域を前記左眼用画像または前記右眼用画像の2度目の走査タイミングに同期して走査点灯する走査点灯ステップと、
を含む立体表示方法。
【請求項5】
前記第1表示ステップで前記液晶パネルに表示する前記左眼用画像または前記右眼用画像の時間軸方向の高域成分を強調するオーバードライブステップを含む請求項4記載の立体表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112745(P2011−112745A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267114(P2009−267114)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】