説明

立体視用メガネ及び立体視用電子機器

【課題】立体視用メガネを用いる投射型表示装置において、クロストークを低減する。
【解決手段】投射型表示装置100は、ランプユニット102と、緑色、赤色、および青色に対応するライトバルブ110R,110G,110Bと、各色の光を合成するプリズム112と、緑色に対応するライトバルブ110Gからプリズム112までの入力光路に設けられ、入射する光の偏光方向を回転させて出射するか回転させずに出射するかを制御可能な偏光回転部120と、右眼用画像の表示時と左眼用画像の表示時とで偏光方向の回転の有無を切り替えるように偏光回転部120を制御する制御部150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を立体視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
左右視差を有する右眼用映像と左眼用映像とを時分割表示することにより、立体視映像を認識させるフレームシーケンシャル方式の立体視方法が、従来から提案されている。このフレームシーケンシャル方式においては、時分割表示される映像と同期して交互に開閉する右眼用シャッターおよび左眼用シャッターを有するメガネ(アクティブシャッタメガネ)を利用者が着用することにより、左右視差を反映した異なる映像が利用者の右眼および左眼にそれぞれ提示され、立体視映像として認識される。
【0003】
フレームシーケンシャル方式の立体視映像システムでは、液晶の応答速度、コントラスト比不足に起因して左(右)用の画像が右(左)目に見えてしまうという現象(以下、クロストークと称する)が問題になっている。
クロストークを改善するため、特許文献1には、シャッター眼鏡を左右交互に開閉するにあたって、左右両方のシャッターが閉じているブランキング期間を設けて画像の混成を抑圧する技術が開示されている。
また、特許文献2には、投射型表示装置において光源の点灯・消灯を制御し、これと同期してシャッター眼鏡の開閉を制御することにより、画像の混成を抑圧する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−152897号公報
【特許文献2】特開2010−61105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ブランキング期間では左右のシャッターが閉じているので、眼鏡を通過する積算光量が少なくなるといった問題がある。
また、特許文献2に記載の技術は、光源が消灯する期間を設けるので、投射光量が減少するといった問題があった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、光量を確保しつつ、クロストークを低減することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明にかかる投射型表示装置は、右眼用画像および左眼用画像を時分割で投射可能な装置であって、光源と、複数の色に対応した複数のライトバルブと、前記複数のライトバルブから出射される各色の光を合成するプリズムと、少なくとも一の前記ライトバルブと前記プリズムとの間に設けられ、入射光の偏光軸を回転させて出射するか回転させずに出射するかを制御可能な偏光回転部と、前記右眼用画像の表示時と前記左眼用画像の表示時とで前記偏光軸の回転の有無を切り替えるように前記偏光回転部を制御する制御部とを備える。
【0007】
この発明によれば、右眼用画像および左眼用画像が時分割でスクリーンに投射される。スクリーンが、例えば、散乱型スクリーンである場合、投射光が散乱されるため偏光成分が減衰するが、完全には無くならない。右眼用画像の表示時と左眼用画像の表示時とで、偏光回転部は偏光軸の回転の有無を切り替えるので、立体視用メガネの右眼用シャッターの偏光軸と左眼用シャッターの偏光軸とを、偏光回転部の偏光軸の回転と整合させることにより、クロストークが減少する。
【0008】
上述した投射型表示装置において、開放時に偏光軸が第1方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する右眼用シャッターおよび開放時に偏光軸が第2方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する左眼用シャッターを備える立体視用メガネに対して、前記右眼用シャッターの開放及び遮蔽と、前記左眼用シャッターの開放及び遮蔽とを指定する制御信号を出力し、前記制御部は、右眼用画像を表示するとき、前記偏光回転部の出射光の偏光軸が前記第1方向となり、左眼用画像を表示するとき、前記偏光回転部の出射光の偏光軸が前記第2方向となるように、前記偏光回転部を制御することが好ましい。
この場合には、右眼用画像の表示では第1方向を偏光軸とする投射光が投射されるが、左眼用シャッターの偏光軸は第2方向であるので、左眼用シャッターの応答が遅れたとしても、クロストークを減少させることができる。
【0009】
上述した投射型表示装置において、前記複数の色は、赤色、緑色、及び青色であり、 前記偏光回転部は、緑色の画像を形成する前記ライトバルブと前記プリズムとの間に設けられていることが好ましい。緑色は視感度が高いため、クロストークを効果的に抑圧することができる。
また、前記第1方向と前記第2方向とは直交することがクロストークを低減する観点から好ましい。
本発明に係る立体視用電子機器は、上述した投射型表示装置と、開放時に偏光軸が第1方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する右眼用シャッターおよび開放時に偏光軸が第2方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する左眼用シャッターを備える立体視用メガネと、を備えることを特徴とする。この発明によれば、光量を確保しつつ、クロストークを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】立体視用電子機器の概略図である。
【図2】本願実施形態の投射型表示装置の構成例を示す図である。
【図3】液晶ライトバルブと偏光回転部の関係を説明するための説明図である。
【図4】投射型表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】右目用表示期間の動作を説明するための説明図である。
【図6】右目用表示期間の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る立体視用電子機器Dの概略図である。立体視用電子機器Dは、相互に視差を有するカラーの画像を立体視可能に表示する表示装置であり、投射型表示装置100と立体視用メガネ300とを含んで構成される。投射型表示装置100は、画像を表示するための投射光Lpを散乱型スクリーン200に投射する。観察者は立体視用メガネ300を装着する。投射光Lpを散乱型スクリーン200の表面で反射させた反射光Lrが立体視用メガネ300を透過して観察者に知覚される。
【0012】
図2は、投射型表示装置の概略図である。本実施形態の投射型表示装置100は、透過型の液晶パネルをライトバルブ110(110R,110G,110B)として利用した液晶プロジェクタである。投射型表示装置100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット102が設けられている。このランプユニット102から射出された光は、内部に配置された3枚のミラー106および2枚のダイクロイックミラー108によって赤色光、緑色光、および青色光に分離されて、各色光に対応するライトバルブ110R、110Gおよび110Bにそれぞれ導かれる。なお、これらのライトバルブには、偏光子が設けられており、各色光は、各ライトバルブによって変調され偏光となる。各色の偏光のうち、赤色偏光および青色偏光は鉛直方向の偏光軸を有する。一方、緑色偏光の偏光軸は水平方向となる。
【0013】
緑色偏光は偏光回転部120に入力される。偏光回転部120は、ライトバルブ110Gとダイクロイックプリズム112との間に設けれ、入射光の偏光軸を回転させるか否かを制御することができる。この例の偏光回転部120は、TN(Twisted Nematic)液晶で構成されており、電圧が印加されない状態で緑色偏光の偏光軸を90度回転させ、電圧が印加された状態で偏光軸を回転させず、そのまま出力する。例えば波長550nmの緑色光であれば、式(1)を充足するように屈折率異方性Δnとセルギャップdとを定めればよい。但し、λは波長である。
Δnd=31/2 / (λ/2)=0.48μm……(1)
偏光回転部120には、後述する制御部150から第1制御信号CTL1が供給され、これに基づいて入射光の偏光軸の回転が制御される。
【0014】
従って、図3に示すように偏光回転部120は、第1制御信号CTL1が回転有りを指示する場合は、(a)に示すように水平方向の偏光軸を有する緑色偏光を出力し、第1制御信号CTL1が回転無し指示する場合は、(b)に示すように縦方向の偏光軸を有する緑色偏光を出力する。
【0015】
各色の偏光はダイクロイックプリズム112に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム112において、赤色偏光及び青色偏光は90度に屈折する一方、緑色偏光は直進する。これにより、赤色偏光、緑色偏光および青色偏光が混合された投射光Lpが、投射レンズ114を介して散乱型スクリーン200に投射される。散乱型スクリーン200に投射光Lpが投射されると、光が散乱するため、反射光Lrにおいて偏光成分は減少する。
【0016】
ところで、散乱型スクリーン200を用いても反射光Lrは完全に偏光解消される訳では無く、偏光成分が残っている。本実施形態の立体視用メガネ300において、右眼用シャッター310が開放状態のとき、偏光軸が横方向の光が透過し、偏光軸が縦方向の光は不透過となる。一方、左眼用シャッター320が開放状態のとき、偏光軸が縦方向の光が透過し、偏光軸が横方向の光は不透過となる。
【0017】
しかしながら、シャッターの応答には遅れがある。このため、左眼用シャッター320を開放状態から遮蔽状態に遷移させる信号を供給しても、直ちに左眼用シャッター320が遮蔽状態に遷移するのではなく、遅れを持って状態が変化する。仮に、右目用の画像の投射光Lpに、図1に示すように横方向の偏光成分があると、これが左眼用シャッター320を通過してしまいクロストークの原因となる。特に、人の視感度が高い緑色光では、認識されやすい。
【0018】
そこで、本実施形態では、偏光回転部120を緑色光の光路中に設け、右眼用シャッター310および左眼用シャッター320の開閉制御と同期して、偏光緑光の偏光軸を回転制御している。より具体的には制御部150は、右眼用シャッター310および左眼用シャッター320の開閉を制御する第2制御信号CTL2を生成して立体視用メガネ300に供給するとともに、上述した第1制御信号CTL1を生成して偏光回転部120に供給する。なお、第1制御信号CTL1と第2制御信号CTL2が同じ信号であってもよい。
【0019】
図4に第1制御信号CTL1と偏光回転部120の出射光との関係を示す。第1制御信号CTL1は左目用表示期間Taにおいてローレベルとなり、右目用表示期間Tbにおいてハイレベルとなる。第1制御信号CTL1はローレベルで偏光軸の90度回転を指示し、ハイレベルで偏光軸の無回転を指示する。この例では、偏光回転部120にTN液晶を用いるので、第1制御信号CTL1がローレベルの場合、TN液晶に電圧は印加されず、第1制御信号CTL1がハイレベルの場合、TN液晶に電圧が印加される。なお、上述したように液晶ライトバブル110Gの出射される偏光緑光の偏光軸は横方向である。
【0020】
左目用表示期間Taにおいては、偏光回転部120が偏光軸を90度回転させる。このため、図5に示すように散乱型スクリーン200からの反射光Lrのうち緑色光には縦方向の偏光成分が存在する。左眼用シャッター320の偏光軸は縦方向であるので、緑色光の偏光成分は透過するが、右眼用シャッター310の偏光軸は横方向であるので、緑色光の偏光成分は透過しない。これによって、左眼用の画像が人の右目で視認されることによるクロストークを低減できる。
【0021】
右目用表示期間Tbにおいては、偏光回転部120が偏光軸を回転させない。このため、図6に示すように散乱型スクリーン200からの反射光Lrのうち緑色光には横方向の偏光成分が存在する。右眼用シャッター310の偏光軸は横方向であるので、緑色光の偏光成分は透過するが、左眼用シャッター320の偏光軸は縦方向であるので、緑色光の偏光成分は透過しない。これによって、右眼用の画像が人の左目で視認されることによるクロストークを低減できる。
【0022】
左右のクロストークの程度を見積もるために、片方の白表示の影響でもう一方の黒表示に現れるクロストーク量CTBWを以下に示す式(2)で与える。
CTBW = (GBW - GBB) / (GWB - GBB) ×100(%)……(2)
但し、GBW:他方の白表示の影響を受けた黒表示の光量、GWB:他方の黒表示の影響を受けた白表示の光量、GBB:両方が黒表示の場合の光量とする。
散乱型スクリーン200としてホワイトマットを用い、立体視用メガネ300を通過した光量をフォトディテクターで検出して、「GBW」、「GWB」 、および「GBB」を測定した。この実験により、偏光回転部120を用いない時のクロストーク量CTBW が約5%であったのに対して、TN液晶からなる偏光回転部120を用いるとクロストーク量CTBW が1.5%まで改善された。
【0023】
<2.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる変形が可能である。
(1)上述した実施形態では、偏光回転部120にTN液晶を用いたが、本発明はこれに限定されるのではなく、偏光軸を回転できるのであれば、どのような構成であってもよい。例えば、VA(Vertical Alignment)、STN(Super Twisted Nematic)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensated Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)等の様々な動作モードの液晶が採用されうる。VA液晶を用いる場合、電圧が印加されない状態で緑色偏光をそのまま出力し、電圧が印加された状態での偏光軸を90度回転させる。例えば波長550nmの緑色光であれば、式(3)を充足するように屈折率異方性Δnとセルギャップdとを定めればよい。但し、λは波長である。
Δnd=λ/2=0.275μm……(3)
偏光回転部120にVA液晶を用いて、上述した実施形態と同様の実験によりクロストーク量CTBWを求めると、偏光回転部120を用いない時のクロストーク量CTBW が約5%であったのに対して、VA液晶からなる偏光回転部120を用いるとクロストーク量CTBW が0.8%まで改善された。このように、VA液晶を採用することによってさらにクロストークを低減することが可能となる。
【0024】
(2)上述した実施形態および変形例では、右眼用シャッター310と左眼用シャッター320とが同時に閉じるブランキング期間は無いものとして説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、ブランキング期間を設けて、さらにクロストークを低減させてもよい。
【0025】
(3)上述した実施形態および変形例では、赤色および青色については、偏光回転部120を設けていなかったが、これらの一部又は全部について、偏光回転部120を設けてもよい。この場合、液晶ライトバルブ110Rとプリズム112との間、液晶ライトバルブ110Bとプリズム112との間に、それぞれの色の偏光方向を一致させるように偏光回転部120を設ければよい。
【符号の説明】
【0026】
100…投射型表示装置、120…偏光回転部、150…制御部、200…散乱型スクリーン、300…立体視用メガネ、310…右眼用シャッター、320…左眼用シャッター、Lp…投射光、Lr…反射光、Lt…透過光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用画像および左眼用画像を時分割で投射可能な投射型表示装置であって、
光源と、
複数の色に対応した複数のライトバルブと、
前記複数のライトバルブから出射される各色の光を合成するプリズムと、
少なくとも一の前記ライトバルブと前記プリズムとの間に設けられ、入射光の偏光軸を回転させて出射するか回転させずに出射するかを制御可能な偏光回転部と、
前記右眼用画像の表示時と前記左眼用画像の表示時とで前記偏光軸の回転の有無を切り替えるように前記偏光回転部を制御する制御部と、
を備える投射型表示装置。
【請求項2】
開放時に偏光軸が第1方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する右眼用シャッターおよび開放時に偏光軸が第2方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する左眼用シャッターを備える立体視用メガネに対して、前記右眼用シャッターの開放及び遮蔽と、前記左眼用シャッターの開放及び遮蔽とを指定する制御信号を出力する投射型表示装置であって、
前記制御部は、右眼用画像を表示するとき、前記偏光回転部の出射光の偏光軸が前記第1方向となり、左眼用画像を表示するとき、前記偏光回転部の出射光の偏光軸が前記第2方向となるように、前記偏光回転部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記複数の色は、赤色、緑色、及び青色であり、
前記偏光回転部は、緑色の画像を形成する前記ライトバルブと前記プリズムとの間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記第1方向と前記第2方向とは直交することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の投射型表示装置と、
開放時に偏光軸が第1方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する右眼用シャッターおよび開放時に偏光軸が第2方向の光を透過し遮蔽時に光を遮蔽する左眼用シャッターを備える立体視用メガネと、
を備えることを特徴とする立体視用電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−145738(P2012−145738A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3720(P2011−3720)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】