説明

立形ガスタービン装置

【課題】従来困難であったパッケージ下部の騒音を確実に低減できるようにした立形ガスタービン装置を提供する。
【解決手段】上端及び周囲を覆う防音エンクロージャ12の内部に、立形ガスタービンと立形減速機16とを上下に収納し、この立形減速機16をパッケージベース18に固着し該立形減速機16の出力軸28をパッケージベース16の下方に突出させてパッケージ化した立形ガスタービン装置において、パッケージベース18と該パッケージベース18の周縁部に当接してパッケージ全体を支持するパッケージ支持枠48との間に防振ゴム46を介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば装置の小型コンパクト化を図って設置スペースを小さくできるようにしたパッケージ化した立形ガスタービン装置に係り、特にパッケージ下部における防音対策を施して騒音を低減させるようにした立形ガスタービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、排水機場のポンプ駆動用原動機としては、維持管理の簡素化や機場周辺に及ぼす騒音や振動などの環境問題等に対応しやすいことから、近年ガスタービンを使用することが増えている。また、これらの設備においては、装置全体がコンパクトになって排水機場における設置スペースを縮小できることから、立形ガスタービンと立形減速機とを上下に結合した立形ガスタービン装置の該減速機から鉛直方向に下方に延びる出力軸の下端に立形ポンプの主軸を連結したポンプ装置が開発されている。
【0003】
図5は、立形ガスタービン装置10を利用した立形ポンプ装置の一例を示すもので、この立形ポンプ装置は、例えば排水機場に設置されるもので、上端及び周囲を覆う防音エンクロージャ12の内部に、立形ガスタービン14と立形減速機16とを上下に連結して収納し、この立形減速機16をパッケージベース18に固着してパッケージ化した立形ガスタービン装置10は、立形ポンプ20の上に取付けた架台22の上に据付けられている。また、立形ポンプ20は、建屋のフロア24に据付けられていて、この主軸26と立形減速機16から下方に延びる出力軸28は、カップリング30を介して互いに連結されている。これにより、立形ガスタービン14を駆動すると、立形減速機16及びカップリング30を介して立形ポンプ20の主軸26が駆動されて水が排水される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパッケージタイプの立形ガスタービン装置にあっては、パッケージベース上に減速機を強固に設置して減速機の駆動トルクを出力軸に伝達するようになっているため、ガスタービンや減速機からの振動がパッケージベースを通じて設置架台や被駆動機器に固体伝播され、パッケージベースの下部に騒音が発生するといった問題があった。ここで、ガスタービンや減速機から発生する周囲の騒音は、防音エンクロージャによって低減させるが、駆動トルクの伝達面であるパッケージベース下部は、構造上の制約から防音対策を施すことが一般に困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、従来困難であったパッケージ下部の騒音を確実に低減できるようにした立形ガスタービン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上端及び周囲を覆う防音エンクロージャの内部に、立形ガスタービンと立形減速機とを上下に収納し、この立形減速機をパッケージベースに固着し該立形減速機の出力軸をパッケージベースの下方に突出させてパッケージ化した立形ガスタービン装置において、前記パッケージベースと該パッケージベースの周縁部に当接してパッケージ全体を支持するパッケージ支持枠との間に防振ゴムを介装したことを特徴とする立形ガスタービン装置である。
【0007】
これにより、立形減速機を固着したパッケージベースからパッケージ支持枠に固体伝播により伝わる振動を防振ゴムで減衰させ低減させて防音効果を上げることができる。この防振ゴムは、締付け具合によって振動を減衰させる効果が異なり、よりフリーにした方が振動を減衰させる効果が高い。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記パッケージベースの下面に配置した支持プレートと前記パッケージ支持枠との間に、駆動トルクを下方に伝達するピンを装着したことを特徴とする請求項1記載の立形ガスタービン装置である。
これにより、防振ゴムの摩擦力によることなく、ピンによる機械的な接続で機械的に強固な構造で駆動トルクを下方に伝達することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記支持プレートと前記パッケージ支持枠の少なくとも一方に、前記防振ゴムの締付け量を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の立形ガスタービン装置である。
これにより、防振ゴムをよりフリーな状態にして、振動を防止する効果を高め、しかも、例え防振ゴムが劣化しても、パッケージに不均等な歪みや軸方向の変位が生じてしまうことを防止することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上端及び周囲を覆う防音エンクロージャの内部に、立形ガスタービンと立形減速機とを上下に収納し、この立形減速機をパッケージベースに固着し該立形減速機の出力軸をパッケージベースの下方に突出させてパッケージ化した立形ガスタービン装置において、前記パッケージベースを構成するベース支持板とベース枠体との間に防振ゴムを介装したことを特徴とする立形ガスタービン装置である。
【0011】
これにより、立形減速機を固着したパッケージベースを構成するベース支持板からベース枠体に固体伝播により伝わる振動を防振ゴムで減衰させ低減させて防音効果を上げることができる。この防振ゴムは、締付け具合によって振動を減衰させる効果が異なり、よりフリーにした方が振動を減衰させる効果が高い。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記ベース支持板とベース枠体の上面に配置した支持プレートの間に、駆動トルクを下方に伝達するピンを装着したことを特徴とする請求項4記載の立形ガスタービン装置である。
これにより、防振ゴムの摩擦力によることなく、ピンによる機械的な接続で機械的に強固な構造で駆動トルクを下方に伝達することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記支持プレートと前記ベース枠体の少なくとも一方に、前記防振ゴムの締付け量を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項4または5記載の立形ガスタービン装置である。
これにより、防振ゴムをよりフリーな状態にして、振動を防止する効果を高め、しかも、例え防振ゴムが劣化しても、パッケージに不均等な歪みや軸方向の変位が生じてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パッケージベースと該パッケージベースの周縁部に当接してパッケージ全体を支持するパッケージ支持枠、またはパッケージベースを構成するベース支持板とベース枠体との間に防振ゴムを介装することで、下方に固体伝播により伝わる振動を防振ゴムで減衰させ低減させて防音効果を上げることができる。更に、これらを組み合わせることで、固体伝播と透過音の両者の低減で効果的に防音することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態の立形ガスタービン装置の全体構成を示すもので、この立形ガスタービン装置10は、上端及び周囲を覆って周辺の騒音を低減する防音エンクロージャ12の内部に、立形ガスタービン14と立形減速機16とを上下に結合して収納し、この立形減速機16をパッケージベース18に固着し、出力軸28を下方に露出させてパッケージ化したものである。
【0016】
そして、この立形ガスタービン装置10の下方には、パッケージ下部の騒音を低減するための下部防音装置40が取付けられ、この下部防音装置40を介して、立形ガスタービン装置10が架台22の上に据付けられ、立形減速機16から下方に延びる出力軸28にカップリング30を介して立形ポンプ(図示せず)等の主軸26が連結されている。
【0017】
下部防音装置40は、出力軸28乃至カップリング30の周囲を包囲する円筒状の防音カバー42と、この防音カバー42の周りに配置した矩形平板状の防音パネル44と、上面に防振ゴム46を取付けたパッケージ支持枠48と、パッケージベース18のベース枠体18aとパッケージ支持枠48とを連結するボルト50と、ベース枠体18aとパッケージ支持枠48との間に掛け渡したピン52とを有している。
【0018】
図2は、下部防音装置40の詳細を示す図で、ベース枠体18aとパッケージ支持枠48との間に、支持プレート54と防振ゴム46が上下に配置され、ベース枠体18aからパッケージ支持枠48に延びるボルト50によって、ベース枠体18aとパッケージ支持枠48が上下に連結されている。そして、ピン52は、その長さ方向に沿った中間に防振ゴム46の肉厚とほぼ等しい膨出部を有し、この下端をパッケージ支持枠48に設けた透孔内に打ち込むことによって固定され、下端は支持プレート54に設けた透孔に遊嵌している。
【0019】
これにより、立形減速機16を固着したパッケージベース18からパッケージ支持枠48に固体伝播により伝わる振動を防振ゴム46で減衰させ低減させることで、防音効果を上げることができる。一方、ピン52は、パッケージベース18のベース枠体18aからの駆動トルクを支持プレート54を介してパッケージ支持枠48側に伝達するためのもので、このように支持プレート54とパッケージ支持枠48との間にピン52を装着することで、防振ゴム46の摩擦力によることなく、ピン52による機械的な接続で機械的に強固な構造で駆動トルクをパッケージ支持枠48側に伝達することができる。
【0020】
ここで、この防振ゴム46は、締付け具合によって振動を減衰させる効果が異なり、よりフリーにした方が振動を減衰させる効果が高い。このため、図3に示すように、ボルト50に隣接して、パッケージ支持枠48に螺合するボルトからなるストッパ56が配置され、このストッパ56には、これを固定するナット58が螺着されている。そして、このストッパ56の先端が支持プレート54に軽く当たった状態で、ナット58を介してストッパ56を固定し、しかる後、ボルト50及び2重ナット60を介してパッケージベース18とパッケージ支持枠48を上下に連結するようにしている。
【0021】
つまり、このボルト50は、防振ゴム46を締め付けることなく、ベース枠体18aとパッケージ支持枠48とを上下に連結するためのもので、剪断力は主にピン52が受けるようになっている。しかも、このようにストッパ56を配置することで、防振ゴム46が劣化や経年変化で収縮しても、パッケージが不均等に沈下したり異常な軸方向変位を生じてしまうことを防止することができる。
【0022】
そして、パッケージ支持枠48の内周面に、上面に平板状の防音パネル44を取付けたベースカバー62が、このベースカバー62の内周端に、内周面に円筒状の防音カバー42を取付けたカップリングカバー64がそれぞれ取付けられている。
【0023】
ここで、パッケージベース18は、ベース枠体18aとベース支持板18bとを有し、このベース支持板18bの上面に取付け座16aを介して立形減速機16が取付けられている。
【0024】
これにより、パッケージの下部にあっては、減速機16下面全体から発してパッケージ下方に透過音が抜けるが、この透過音をパッケージベース18の下方に設けた下部防音装置40の防音パネル44で遮蔽し、また出力軸28の周囲から漏れる音を防音カバー42で減音して、パッケージ下方に伝わる騒音を低減することができる。
【0025】
なお、パッケージ支持枠48は、型鋼で構成され、この型鋼の外周凹部内には、遮音材66が充填され、開口部は防音プレート68で閉塞されている。更に、パッケージベース18とパッケージ支持枠48の上端にかけた側方は、防油カバー70で囲繞されている。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施の形態の立形ガスタービン装置の要部を示すもので、これは、パッケージベース18の内部に下部防音装置を組み込んだものである。つまり、パッケージベース18を構成するベース枠体18aとベース支持板18bとの間に、支持プレート54と防振ゴム46とを上下に配置し、ベース支持板18bと支持プレート54との間にピン52を掛け渡し、更に、ベース枠体18aに防音パネル44を取付たものである。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の立形ガスタービン装置の概要図である。
【図2】図1の下部防音装置の要部拡大図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のガスタービン装置の図2相当図である。
【図5】立形ガスタービン装置を利用した立形ポンプ装置の概要図である。
【符号の説明】
【0028】
10 立形ガスタービン装置
12 防音エンクロージャ
14 立形ガスタービン
16 立形減速機
16a 取付け座
18 パッケージベース
18a ベース枠材
18b ベース支持板
22 架台
26 主軸
28 出力軸
30 カップリング
40 下部防音装置
42 防音カバー
44 防音パネル
46 防振ゴム
48 パッケージ支持枠
50 ボルト
52 ピン
54 支持プレート
56 ストッパ
58 ナット
60 2重ナット
62 ベースカバー
64 カップリングカバー
66 遮音材
68 防音プレート
70 防油カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端及び周囲を覆う防音エンクロージャの内部に、立形ガスタービンと立形減速機とを上下に収納し、この立形減速機をパッケージベースに固着し該立形減速機の出力軸をパッケージベースの下方に突出させてパッケージ化した立形ガスタービン装置において、
前記パッケージベースと該パッケージベースの周縁部に当接してパッケージ全体を支持するパッケージ支持枠との間に防振ゴムを介装したことを特徴とする立形ガスタービン装置。
【請求項2】
前記パッケージベースの下面に配置した支持プレートと前記パッケージ支持枠との間に、駆動トルクを下方に伝達するピンを装着したことを特徴とする請求項1記載の立形ガスタービン装置。
【請求項3】
前記支持プレートと前記パッケージ支持枠の少なくとも一方に、前記防振ゴムの締付け量を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の立形ガスタービン装置。
【請求項4】
上端及び周囲を覆う防音エンクロージャの内部に、立形ガスタービンと立形減速機とを上下に収納し、この立形減速機をパッケージベースに固着し該立形減速機の出力軸をパッケージベースの下方に突出させてパッケージ化した立形ガスタービン装置において、
前記パッケージベースを構成するベース支持板とベース枠体との間に防振ゴムを介装したことを特徴とする立形ガスタービン装置。
【請求項5】
前記ベース支持板とベース枠体の上面に配置した支持プレートの間に、駆動トルクを下方に伝達するピンを装着したことを特徴とする請求項4記載の立形ガスタービン装置。
【請求項6】
前記支持プレートと前記ベース枠体の少なくとも一方に、前記防振ゴムの締付け量を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項4または5記載の立形ガスタービン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−200538(P2006−200538A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26985(P2006−26985)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【分割の表示】特願2000−219432(P2000−219432)の分割
【原出願日】平成12年7月19日(2000.7.19)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】