立軸ポンプおよび立軸ポンプの点検方法
【課題】ポンプを据え付けた状態で水中軸受の摩耗状態を適切に推定または検知でき、該水中軸受の適切な交換時期を把握し、交換することができる立軸ポンプおよび該立軸ポンプの点検方法を提供する。
【解決手段】本発明の立軸ポンプは、回転軸6と、回転軸6に固定された羽根車10と、回転軸6を回転自在に支持する水中軸受12,15と、羽根車10と水中軸受12,15とを収容するケーシング2と、ケーシング2をポンプ据付床22に連結するポンプベース23とを備える。ケーシング2の外面には座30が取り付けられ、この座30は、ポンプベース23より下方で、かつ該ポンプベース23の近傍に位置する。座30は、立軸ポンプの振動を測定する振動計31が設置される略平坦部31aを有し、ポンプベース23には、座33の上方に位置する貫通孔32が形成される。
【解決手段】本発明の立軸ポンプは、回転軸6と、回転軸6に固定された羽根車10と、回転軸6を回転自在に支持する水中軸受12,15と、羽根車10と水中軸受12,15とを収容するケーシング2と、ケーシング2をポンプ据付床22に連結するポンプベース23とを備える。ケーシング2の外面には座30が取り付けられ、この座30は、ポンプベース23より下方で、かつ該ポンプベース23の近傍に位置する。座30は、立軸ポンプの振動を測定する振動計31が設置される略平坦部31aを有し、ポンプベース23には、座33の上方に位置する貫通孔32が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や排水などの液体を揚水する立軸ポンプおよび該立軸ポンプの点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の立軸ポンプを示す模式図である。図1に示すように、一般に、立軸ポンプは、水槽上部のポンプ据付床500に設置され、吊下管502を介して羽根車504を収容するケーシング506が吊り下げられる。このような立軸ポンプは、羽根車504や水中軸受508が水中に浸漬された状態で運転され、使用時間の経過とともにこれらの部材に徐々に摩耗や腐食が起こる。このため、立軸ポンプの点検作業を定期的に行って軸受部(外軸受510や水中軸受508)や羽根車504の摩耗状況、ケーシング506の腐食状況を確認し、必要に応じて補修または交換を行うことが必要となる。その中でも、水中軸受508の損傷や摩耗は、ポンプの異常振動の原因となり、最終的にポンプ故障(運転不能)にまで至る要因となる。このため、水中軸受508の点検は重要点検項目の1つとされる。
【0003】
立軸ポンプの点検・整備方法としては、1)ポンプを据え付けたまま行う方法と、2)ポンプを引き上げて行う方法とがある。1)の点検方法は、ポンプを引き上げずに済むため、費用が安く、かつ点検・整備にかかる期間も短くできる。しかしながら、例えば、立軸ポンプの水中軸受508は通常水中に没水しているため、上記1)の方法では、水中軸受508の摩耗状態を適切に測定または検知することは難しく、また水中軸受508を交換することもできない。また、水槽内の水を排水してドライにした状態でも、水中軸受508は羽根車504の上部に位置しているため、やはり水中軸受508の点検や整備および交換はできない。すなわち、水槽内の水を抜き、軸受部を大気中に露出させても軸受の設置位置の問題により、満足な点検ができない。
【0004】
このため、地上部で測定できる外軸受510やポンプベース514などの振動を測定し、間接的に水中軸受508の状態を推測することになる。しかしながら、この方法では、振動源となる水中軸受508付近で測定を行うわけではないため、測定点までの種々の減衰要因により、水中軸受の摩耗等による異常振動を計測することが難しく、適切に損傷や摩耗状況を判断することができない。
【0005】
横軸ポンプの場合には、ケーシングや羽根車等の回転体が機場の床面上にあり、分解やケーシングの外壁の任意の位置に振動ピックアップなどを取り付けることが容易であるが、立軸ポンプの場合には、羽根車504やガイドベーン516、吊下管502は床下の水槽内にあり、測定位置が床上に限定されてしまう。すなわち、外軸受510、ポンプベース514、原動機520などにセンサを取り付けることになる。
【0006】
立軸ポンプにおいては、水槽内に位置する羽根車504や水中軸受508の振動は、その振動源から離れるにつれて応答が小さくなるため、羽根車504や水中軸受508から離れた位置で振動を測定したとしても、振動源である水中軸受508の摩耗や損傷の状態を確実に把握するのは難しい。すなわち、羽根車504や水中軸受508から離れた位置では、外軸受510やポンプベース514などの支点の影響により羽根車504や水中軸受508で発生した振動が減衰しやすい。また、より厳密には、軸封に用いるグランドパッキンの締め具合によっても上記減衰効果が変わる。
【0007】
これに対して、上記2)の方法によれば、水中軸受508の摩耗状態を適切に測定または検知することが可能であり、また水中軸受508の交換も可能である。このため、従来、立軸ポンプの水中軸受508の摩耗を確認するために、上記2)の方法を行っていた。
【0008】
しかしながら、上記2)の方法は、費用がかかり、点検・整備にかかる時間も長くなってしまう。例えば、天井クレーンを用いて立軸ポンプを引き上げる場合には、点検員となる機械技術者、作業員およびクレーンオペレータなどが必要となり、引き上げのために相当の作業費用を要する。また、重量物であるポンプの引き上げ、再組立作業は危険作業といえる。
【0009】
また、引き上げおよび点検作業は、引き上げ後に、点検整備を行い、その後、再設置、芯出し、試運転という工程を経なければならず、かなりの日数を要する。さらに、機場によっては、点検・整備時でも、常に必要量の排水をできる状態にしておく必要があるが、点検期間中は、点検を行っているポンプを運転することができないため、仮設ポンプを設置するなどして、排水能力を確保する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ポンプを据え付けた状態で水中軸受の摩耗状態を適切に推定または検知でき、該水中軸受の適切な交換時期を把握することができる立軸ポンプおよび該立軸ポンプの点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、回転軸と、前記回転軸に固定された羽根車と、前記回転軸を回転自在に支持する水中軸受と、前記羽根車と前記水中軸受とを収容するケーシングと、前記ケーシングをポンプ据付床に連結するポンプベースとを備えた立軸ポンプであって、前記ケーシングの外面には座が取り付けられ、前記座は、前記ポンプベースより下方で、かつ該ポンプベースの近傍に位置し、前記座は、前記立軸ポンプの振動を測定する振動計が設置される略平坦部を有し、前記ポンプベースには、前記座の上方に位置する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記立軸ポンプは、前記振動計を前記貫通孔から前記座まで案内する保護管をさらに備え、前記座は前記保護管の内部に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記保護管と前記貫通孔とは弾性体を介して接続されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記座は、前記ケーシングの外面から前記貫通孔まで延びる剛体であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、自身の固有振動数が可変に構成される固有振動数可変部材をさらに備え、前記固有振動数可変部材は、前記ケーシング、前記ポンプベース、および前記座のいずれかに取り付けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、前記立軸ポンプの振動を測定し、前記立軸ポンプの固有振動数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記立軸ポンプに取り付けられた固有振動数可変部材の自身の固有振動数を変化させながら、前記固有振動数可変部材の振動を測定し、前記固有振動数可変部材の振動の大きさから前記立軸ポンプの固有振動数を含む卓越周波数を決定することを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、前記立軸ポンプの振動を測定し、所定の測定周波数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断する工程を有し、前記測定周波数は、前記立軸ポンプの回転速度をN[min−1]、αを自然数とすると、α×(N/60)で表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポンプを据え付けた状態で水中軸受の摩耗状態を適切に推定または検知でき、該水中軸受の適切な交換時期を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2は本発明の第1の実施形態である立軸ポンプの全体構成を示す模式図である。
図2に示すように、立軸ポンプは、吸込ベルマウス1a及びポンプボウル1bを有するインペラケーシング1と、インペラケーシング1を水槽内に吊り下げる吊下管3と、吊下管3の上端に接続される吐出曲管4と、インペラケーシング1内に収容される羽根車10と、羽根車10が固定される回転軸6とを備えている。吊下管3は、水槽上部のポンプ据付床22に形成された挿通孔24を通して下方に延び、吊下管3の上端に設けられたポンプベース23を介してポンプ据付床22に固定される。回転軸(立軸)6は、吐出曲管4、吊下管3、及びインペラケーシング1内を通って鉛直方向に延びている。なお、インペラケーシング1及び吊下管3によりケーシング2が構成される。
【0018】
吸込ベルマウス1aは下方を向いて開口し、吸込ベルマウス1aの上端はポンプボウル1bの下端に固定されている。羽根車10は回転軸6の下端に固定されており、羽根車10と回転軸6とは一体的に回転するようになっている。この羽根車10の上方(吐出側)には複数のガイドベーン14が配置されている。これらのガイドベーン14はポンプボウル1bの内周面に固定されている。
【0019】
回転軸6は外軸受11,水中軸受12,および水中軸受(中間軸受)15により回転自在に支持されている。水中軸受12はポンプボウル1bに収容されており、水中軸受15は吊下管3に収容されている。水中軸受12を支持する支持部材7はボウルブッシュ13の内面に固定されており、さらに、ボウルブッシュ13はガイドベーン14を介してインペラケーシング1に支持されている。また、水中軸受15を支持する支持部材17は、吊下管3の内周面に固定されている。水中軸受12,15は、回転軸6に滑り接触する、いわゆる滑り軸受である。
【0020】
図2に示すように、回転軸6は吐出曲管4から上方に突出している。回転軸6の上端は駆動軸16に連結されており、駆動軸16は駆動源18に連結されている。駆動源18により回転軸6を介して羽根車10を回転させると、水槽内の水(取扱液)が吸込ベルマウス1aから吸い込まれ、ポンプボウル1b、吊下管3、吐出曲管4を通って図示しない吐出配管に移送される。なお、立軸ポンプ運転時においては、羽根車10や水中軸受12を収容するインペラケーシング1は、水面よりも下に位置している。
【0021】
ケーシング2の吊下管3の外周面には座30が固定されている。この座30は硬質の材料から形成されており、振動計31が設置される平坦部30aを有している。また、ポンプベース23には、座30の上方に位置して貫通孔32が形成されている。この貫通孔32は略鉛直方向に延び、その内部を振動計31が自在に移動できる程度の大きさの断面形状を有している。この貫通孔32は作業員の手が挿入可能な程度の大きさを有していることが好ましい。振動計31は座30の平坦部30aに取り付けられ、ケーシング2(すなわち立軸ポンプ)の振動を計測する。振動計31はケーブル35を介してモニタリング部36に接続されている。
【0022】
座30はポンプベース23のすぐ下に配置されている。この座30とポンプベース23の上面との距離は1m以内であることが好ましい。なお、振動計31は磁石などにより座30に常設してもよく、または点検時に作業員が手作業で振動計31を座30に押し当てて振動を計測してもよい。
【0023】
水中軸受12,15が摩耗すると、駆動源18により回転する回転軸6が水中軸受12,15に当たり、振動が発生する。また、水中軸受12,15の摩耗量がさらに大きくなると、回転する羽根車10がケーシング2に接触し、振動が発生する。これら振動は水中軸受12,15の摩耗量に応じて大きくなる傾向にある。したがって、立軸ポンプの振動の計測値から水中軸受12,15の摩耗状態を推定することができる。上述のモニタリング部36は、振動計31により測定された計測値(振動の振幅、振動速度、振動加速度など)から水中軸受12,15の摩耗量や損傷を判断し、水中軸受12,15の交換時期を推定又は検知するように構成されている。なお、振動の測定は定期的に行ってもよく、または常に振動を監視してもよい。また、座30は複数設けることもできる。
【0024】
本実施形態では、座30はポンプベース23のすぐ下に配置されているので、座30の位置は通常水面よりも上方である。したがって、振動計31に防水加工を施す必要がない。また、振動計31は、作業員が手作業により貫通孔32に挿入可能な程度のサイズであればよいので、市販の振動計を用いることができる。
【0025】
図3は本発明の第2の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0026】
図3に示すように、ポンプベース23には、貫通孔32から座30まで延びる保護管40が配置されている。保護管40は貫通孔32に隙間なく嵌合されており、座30は保護管40内に収容されている。保護管40の下端(開口端部)はケーシング2(吊下管3)の外周面に固定されている。すなわち、液体が保護管40内に浸入しないように、保護管40の下端は密閉されている。保護管40の断面は円形状または矩形状のいずれでもよい。
【0027】
このような構成によれば、座30が保護管40によって囲まれているので、液面位置が上昇した場合でも、立軸ポンプの取扱液が座30に接触することがない。したがって、取扱液が海水や汚水のような場合でも、座30の腐食が防止される。仮に結露水や塵芥が保護管40の底部に溜まっても、座30はポンプベース23のすぐ下に配置されているので、これら結露水や塵芥を容易に取り除くことができる。さらに、振動計測時に振動計31が誤って落下してしまうことを防止することができる。また、貫通孔32が保護管40により塞がれているので、液面位置が上昇した場合でも、液体がポンプベース23の上面に溢れることがない。
【0028】
図4は本発明の第3の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は第2の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、保護管40がケーシング2の振動を抑制しないように、保護管40の外面と貫通孔32の内面との間には隙間が形成されている。保護管40の外面にはゴムなどの弾性体42が取り付けられており、保護管40と貫通孔32とは弾性体42によって気密に接続されている。このような構成によれば、ケーシング2の振動が保護管40の拘束により減衰することがないので、精度の高い振動の計測が可能となる。また、保護管40と貫通孔32との間の隙間が弾性体42によってシールされているので、取扱液が汚水である場合に、悪臭の拡散を防止することができる。
【0030】
図5に示すように、振動計測を行っていない間は、貫通孔32に蓋43を被せることが好ましい。蓋43を被せることにより、液面が上昇した場合に液体の保護管40内への浸入を防ぐことができるため、弾性体42を設けなくてもよい。
【0031】
図6は本発明の第4の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0032】
図6に示すように、本実施形態の座30は、ケーシング2(吊下管3)からポンプベース23まで延びる剛体により形成されている。より詳しくは、座30の一方の端部はケーシング2(吊下管3)の外周面に固定され、他方の端部はポンプベース23に形成された貫通孔32内又は近傍に位置している。この他方の端部(図6では上端)には、上述の平坦部30aが形成されている。貫通孔32の上端には蓋43が被されている。振動測定時には、図7に示すように、蓋43を取り外し、座30の平坦部30a上に振動計31が設置される。なお、平坦部30aはポンプベース23の上方に位置してもよい。また、蓋43に代えて、図8に示すように、平坦部30aの下方にゴムなどの弾性体42を取り付け、貫通孔32と座30との間の隙間をシールしてもよい。
【0033】
本実施形態によれば、振動計31をポンプベース23の貫通孔32に通す必要がなく、ポンプ据付床22上で振動測定作業を行うことができる。したがって、第1乃至第3の実施形態に比べて、容易に測定作業を行うことができる。特に、駆動源18の架台などの配置に起因してポンプベース23の下方に振動計31を取り付けることが困難な場合には、本実施形態の構成は有効である。
【0034】
次に、上述した立軸ポンプの点検方法の一実施形態について詳細に説明する。
図9は立軸ポンプの振動の大きさと周波数との関係を示すグラフである。図9において、縦軸は振動の大きさ(振幅、振動速度、または振動加速度)を示し、横軸は振動の周波数[Hz]を示している。図10は振動の大きさと経過時間との関係を示すグラフである。
【0035】
図9から分かるように、振動の大きさ(振幅、振動速度、または振動加速度)は、立軸ポンプの固有振動数において顕著に現れる。また、立軸ポンプの回転速度に応じて決定される所定の測定周波数においても、振動の大きさは顕著に現れる。ここで、所定の測定周波数とは、立軸ポンプの回転速度をN[min−1]、αを自然数(1,2,3,…)としたときに、α×(N/60)[Hz]で表される周波数をいう。以下、卓越周波数である上記固有振動数および上記所定の測定周波数を総称して特定周波数という。図10に示すように、上記特定周波数での振動の大きさは、運転時間の経過と共に徐々に大きくなる。これは、水中軸受12,15が運転時間の経過と共に徐々に摩耗するためである。したがって、運転時間の経過に伴う振動の大きさの変化(増加)から水中軸受12,15の摩耗量を推定することができる。
【0036】
より具体的には、上述のモニタリング部36は、固有振動数を含む周波数帯域F1(または、ポンプの回転速度から決定される上記測定周波数を含む周波数帯域F2)における振動の大きさ(振幅、振動速度、または振動加速度)を監視し、時間経過に伴う振動の変化量が所定の値に達したときに水中軸受12,15の交換時期に達したと判断することができる。
【0037】
一般に、立軸ポンプは、水槽内の液面位置によって運転状態が変わってくるため、常に同じ条件の下で立軸ポンプの振動を測定することが難しい。本実施形態によれば、振動の大きさが顕著に現れる周波数(特定周波数)または該特定周波数を含む周波数帯域における振動の大きさを監視することにより、水槽内の水位にほぼ関係なく、水中軸受12,15の摩耗によって発生する振動の大きさの変化(増加)を把握することができる。したがって、水中軸受12,15の摩耗量を適正に推定することができる。
【0038】
また、立軸ポンプの固有振動数は、立軸ポンプの据付状態(例えば、立軸ポンプのポンプ据付床への固定方法)により若干異なってくる。立軸ポンプの据付状態をポンプ製作工場において再現することは不可能であり、さらに計算により求めた固有振動数と実際の固有振動数との間にも差がある。したがって、立軸ポンプが実際にポンプ据付床に固定された状態で固有振動数を求め、その固有振動数を含む周波数帯域での振動の大きさによって水中軸受の摩耗量を判断することが好ましい。
【0039】
以下、現地等に設置している立軸ポンプの固有振動数の測定方法の一例について説明する。この例では、立軸ポンプが水槽上部のポンプ据付床22に固定されている状態で、立軸ポンプに外力を与えて固有振動数を測定する。具体的には、図11に示すように、ポンプベース23に形成されている挿入口50から蓋51を取り外し、この挿入口50にハンマなどの打撃具52を挿入し、打撃具52でケーシング2を打撃する。このとき、上述の振動計31により立軸ポンプの振動を測定し、固有振動数を求める。このように、立軸ポンプがポンプ据付床22に固定されている状態で立軸ポンプの固有振動数を求めることにより、より高い精度で水中軸受12,15の摩耗量を推定することができる。
【0040】
次に、立軸ポンプの固有振動数の他の測定方法について説明する。図12(a)に示すように、ポンプベース23の上部には棒状の固有振動数可変部材53が取り付けられている。この固有振動数可変部材53はねじ構造を有しており、図12(b)に示すように、その長さを変化させることで自身の固有振動数を変化させることが可能となっている。そして、固有振動数可変部材53の固有振動数を変化させながら(すなわち、固有振動数可変部材53の長さを変化させながら)、この固有振動数可変部材53の振動を測定する。
【0041】
具体的には、立軸ポンプの運転時や打撃時に固有振動数可変部材53が大きく振動したとき、つまり共振したときの卓越周波数をとらえ、この卓越周波数から立軸ポンプの固有振動数を判断する。このように、固有振動数可変部材53の振動の大きさから立軸ポンプの固有振動数を求めることができる。この場合も、立軸ポンプをポンプ据付床22に固定した状態で立軸ポンプの固有振動数を求めることができるので、運転時間経過に伴う立軸ポンプの振動の大きさの変化を適正に監視することができる。
【0042】
図13(a)および図13(b)は固有振動数可変部材の他の例を示す模式図である。この例では、固有振動数可変部材54は、その質量を変えることにより自身の固有振動数が変化させることが可能となっている。すなわち、固有振動数可変部材54は、着脱可能な複数の重り54aを有しており、取り付けられた重り54aの数によって固有振動数可変部材54全体の固有振動数が可変となっている。なお、固有振動数可変部材54の内部に中空部を設け、この中空部に液体等のある程度の質量を有する物質を入れることにより固有振動数可変部材54全体の質量を変えるようにすることもできる。
【0043】
なお、上記固有振動数可変部材の取り付け箇所はポンプベース23に限られない。例えば、ケーシング2に固有振動数可変部材を取り付けてもよい。また、図14に示すように、座30に固有振動数可変部材53(または54)を固定してもよい。このような構成によれば、固有振動数可変部材の固有振動数を、立軸ポンプの固有振動数または上記測定周波数に合わせておくことにより、立軸ポンプの振動を増幅して計測することができ、より精度の高い振動測定が可能となる。
【0044】
また、上述の実施形態では、水中軸受12,15の摩耗量を推定する例について説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、羽根車10よりも下方に設けられる水中軸受(例えば、回転軸の先端を支持する水中軸受など)を監視対象としてもよい。また、振動の計測箇所は、外軸受11やポンプベース23であってもよい。
【0045】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の立軸ポンプを示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である立軸ポンプの全体構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図5】上述した第3の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図7】振動測定時の様子を示す模式図である。
【図8】上述した第4の実施形態に係る立軸ポンプの他の構成例を示す模式図である。
【図9】立軸ポンプの振動の大きさと周波数との関係を示すグラフである。
【図10】振動の大きさと経過時間との関係を示すグラフである。
【図11】立軸ポンプの固有振動数の測定方法の一例について説明するための模式図である。
【図12】図12(a)および図12(b)は固有振動数可変部材の一例を示す模式図である。
【図13】図13(a)および図13(b)は固有振動数可変部材の他の例を示す模式図である。
【図14】固有振動数可変部材の設置箇所の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1 インペラケーシング
1a 吸込ベルマウス
1b ポンプボウル
2 ケーシング
3 吊下管
4 吐出曲管
6 回転軸
7,17 支持部材
10 羽根車
11 外軸受
12,15 水中軸受
13 ボウルブッシュ
14 ガイドベーン
16 駆動軸
18 駆動源
19 ハンドホール
22 ポンプ据付床
23 ポンプベース
24 ポンプ挿通孔
30 座
30a 平坦部
31 振動計
32 貫通孔
35 ケーブル
36 モニタリング部
40 保護管
42 弾性体
43 蓋
44 延長管
50 挿入口
52 打撃具
53,54 固有振動数可変部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川水や排水などの液体を揚水する立軸ポンプおよび該立軸ポンプの点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の立軸ポンプを示す模式図である。図1に示すように、一般に、立軸ポンプは、水槽上部のポンプ据付床500に設置され、吊下管502を介して羽根車504を収容するケーシング506が吊り下げられる。このような立軸ポンプは、羽根車504や水中軸受508が水中に浸漬された状態で運転され、使用時間の経過とともにこれらの部材に徐々に摩耗や腐食が起こる。このため、立軸ポンプの点検作業を定期的に行って軸受部(外軸受510や水中軸受508)や羽根車504の摩耗状況、ケーシング506の腐食状況を確認し、必要に応じて補修または交換を行うことが必要となる。その中でも、水中軸受508の損傷や摩耗は、ポンプの異常振動の原因となり、最終的にポンプ故障(運転不能)にまで至る要因となる。このため、水中軸受508の点検は重要点検項目の1つとされる。
【0003】
立軸ポンプの点検・整備方法としては、1)ポンプを据え付けたまま行う方法と、2)ポンプを引き上げて行う方法とがある。1)の点検方法は、ポンプを引き上げずに済むため、費用が安く、かつ点検・整備にかかる期間も短くできる。しかしながら、例えば、立軸ポンプの水中軸受508は通常水中に没水しているため、上記1)の方法では、水中軸受508の摩耗状態を適切に測定または検知することは難しく、また水中軸受508を交換することもできない。また、水槽内の水を排水してドライにした状態でも、水中軸受508は羽根車504の上部に位置しているため、やはり水中軸受508の点検や整備および交換はできない。すなわち、水槽内の水を抜き、軸受部を大気中に露出させても軸受の設置位置の問題により、満足な点検ができない。
【0004】
このため、地上部で測定できる外軸受510やポンプベース514などの振動を測定し、間接的に水中軸受508の状態を推測することになる。しかしながら、この方法では、振動源となる水中軸受508付近で測定を行うわけではないため、測定点までの種々の減衰要因により、水中軸受の摩耗等による異常振動を計測することが難しく、適切に損傷や摩耗状況を判断することができない。
【0005】
横軸ポンプの場合には、ケーシングや羽根車等の回転体が機場の床面上にあり、分解やケーシングの外壁の任意の位置に振動ピックアップなどを取り付けることが容易であるが、立軸ポンプの場合には、羽根車504やガイドベーン516、吊下管502は床下の水槽内にあり、測定位置が床上に限定されてしまう。すなわち、外軸受510、ポンプベース514、原動機520などにセンサを取り付けることになる。
【0006】
立軸ポンプにおいては、水槽内に位置する羽根車504や水中軸受508の振動は、その振動源から離れるにつれて応答が小さくなるため、羽根車504や水中軸受508から離れた位置で振動を測定したとしても、振動源である水中軸受508の摩耗や損傷の状態を確実に把握するのは難しい。すなわち、羽根車504や水中軸受508から離れた位置では、外軸受510やポンプベース514などの支点の影響により羽根車504や水中軸受508で発生した振動が減衰しやすい。また、より厳密には、軸封に用いるグランドパッキンの締め具合によっても上記減衰効果が変わる。
【0007】
これに対して、上記2)の方法によれば、水中軸受508の摩耗状態を適切に測定または検知することが可能であり、また水中軸受508の交換も可能である。このため、従来、立軸ポンプの水中軸受508の摩耗を確認するために、上記2)の方法を行っていた。
【0008】
しかしながら、上記2)の方法は、費用がかかり、点検・整備にかかる時間も長くなってしまう。例えば、天井クレーンを用いて立軸ポンプを引き上げる場合には、点検員となる機械技術者、作業員およびクレーンオペレータなどが必要となり、引き上げのために相当の作業費用を要する。また、重量物であるポンプの引き上げ、再組立作業は危険作業といえる。
【0009】
また、引き上げおよび点検作業は、引き上げ後に、点検整備を行い、その後、再設置、芯出し、試運転という工程を経なければならず、かなりの日数を要する。さらに、機場によっては、点検・整備時でも、常に必要量の排水をできる状態にしておく必要があるが、点検期間中は、点検を行っているポンプを運転することができないため、仮設ポンプを設置するなどして、排水能力を確保する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ポンプを据え付けた状態で水中軸受の摩耗状態を適切に推定または検知でき、該水中軸受の適切な交換時期を把握することができる立軸ポンプおよび該立軸ポンプの点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、回転軸と、前記回転軸に固定された羽根車と、前記回転軸を回転自在に支持する水中軸受と、前記羽根車と前記水中軸受とを収容するケーシングと、前記ケーシングをポンプ据付床に連結するポンプベースとを備えた立軸ポンプであって、前記ケーシングの外面には座が取り付けられ、前記座は、前記ポンプベースより下方で、かつ該ポンプベースの近傍に位置し、前記座は、前記立軸ポンプの振動を測定する振動計が設置される略平坦部を有し、前記ポンプベースには、前記座の上方に位置する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記立軸ポンプは、前記振動計を前記貫通孔から前記座まで案内する保護管をさらに備え、前記座は前記保護管の内部に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記保護管と前記貫通孔とは弾性体を介して接続されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記座は、前記ケーシングの外面から前記貫通孔まで延びる剛体であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、自身の固有振動数が可変に構成される固有振動数可変部材をさらに備え、前記固有振動数可変部材は、前記ケーシング、前記ポンプベース、および前記座のいずれかに取り付けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、前記立軸ポンプの振動を測定し、前記立軸ポンプの固有振動数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記立軸ポンプに取り付けられた固有振動数可変部材の自身の固有振動数を変化させながら、前記固有振動数可変部材の振動を測定し、前記固有振動数可変部材の振動の大きさから前記立軸ポンプの固有振動数を含む卓越周波数を決定することを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、前記立軸ポンプの振動を測定し、所定の測定周波数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断する工程を有し、前記測定周波数は、前記立軸ポンプの回転速度をN[min−1]、αを自然数とすると、α×(N/60)で表されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポンプを据え付けた状態で水中軸受の摩耗状態を適切に推定または検知でき、該水中軸受の適切な交換時期を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2は本発明の第1の実施形態である立軸ポンプの全体構成を示す模式図である。
図2に示すように、立軸ポンプは、吸込ベルマウス1a及びポンプボウル1bを有するインペラケーシング1と、インペラケーシング1を水槽内に吊り下げる吊下管3と、吊下管3の上端に接続される吐出曲管4と、インペラケーシング1内に収容される羽根車10と、羽根車10が固定される回転軸6とを備えている。吊下管3は、水槽上部のポンプ据付床22に形成された挿通孔24を通して下方に延び、吊下管3の上端に設けられたポンプベース23を介してポンプ据付床22に固定される。回転軸(立軸)6は、吐出曲管4、吊下管3、及びインペラケーシング1内を通って鉛直方向に延びている。なお、インペラケーシング1及び吊下管3によりケーシング2が構成される。
【0018】
吸込ベルマウス1aは下方を向いて開口し、吸込ベルマウス1aの上端はポンプボウル1bの下端に固定されている。羽根車10は回転軸6の下端に固定されており、羽根車10と回転軸6とは一体的に回転するようになっている。この羽根車10の上方(吐出側)には複数のガイドベーン14が配置されている。これらのガイドベーン14はポンプボウル1bの内周面に固定されている。
【0019】
回転軸6は外軸受11,水中軸受12,および水中軸受(中間軸受)15により回転自在に支持されている。水中軸受12はポンプボウル1bに収容されており、水中軸受15は吊下管3に収容されている。水中軸受12を支持する支持部材7はボウルブッシュ13の内面に固定されており、さらに、ボウルブッシュ13はガイドベーン14を介してインペラケーシング1に支持されている。また、水中軸受15を支持する支持部材17は、吊下管3の内周面に固定されている。水中軸受12,15は、回転軸6に滑り接触する、いわゆる滑り軸受である。
【0020】
図2に示すように、回転軸6は吐出曲管4から上方に突出している。回転軸6の上端は駆動軸16に連結されており、駆動軸16は駆動源18に連結されている。駆動源18により回転軸6を介して羽根車10を回転させると、水槽内の水(取扱液)が吸込ベルマウス1aから吸い込まれ、ポンプボウル1b、吊下管3、吐出曲管4を通って図示しない吐出配管に移送される。なお、立軸ポンプ運転時においては、羽根車10や水中軸受12を収容するインペラケーシング1は、水面よりも下に位置している。
【0021】
ケーシング2の吊下管3の外周面には座30が固定されている。この座30は硬質の材料から形成されており、振動計31が設置される平坦部30aを有している。また、ポンプベース23には、座30の上方に位置して貫通孔32が形成されている。この貫通孔32は略鉛直方向に延び、その内部を振動計31が自在に移動できる程度の大きさの断面形状を有している。この貫通孔32は作業員の手が挿入可能な程度の大きさを有していることが好ましい。振動計31は座30の平坦部30aに取り付けられ、ケーシング2(すなわち立軸ポンプ)の振動を計測する。振動計31はケーブル35を介してモニタリング部36に接続されている。
【0022】
座30はポンプベース23のすぐ下に配置されている。この座30とポンプベース23の上面との距離は1m以内であることが好ましい。なお、振動計31は磁石などにより座30に常設してもよく、または点検時に作業員が手作業で振動計31を座30に押し当てて振動を計測してもよい。
【0023】
水中軸受12,15が摩耗すると、駆動源18により回転する回転軸6が水中軸受12,15に当たり、振動が発生する。また、水中軸受12,15の摩耗量がさらに大きくなると、回転する羽根車10がケーシング2に接触し、振動が発生する。これら振動は水中軸受12,15の摩耗量に応じて大きくなる傾向にある。したがって、立軸ポンプの振動の計測値から水中軸受12,15の摩耗状態を推定することができる。上述のモニタリング部36は、振動計31により測定された計測値(振動の振幅、振動速度、振動加速度など)から水中軸受12,15の摩耗量や損傷を判断し、水中軸受12,15の交換時期を推定又は検知するように構成されている。なお、振動の測定は定期的に行ってもよく、または常に振動を監視してもよい。また、座30は複数設けることもできる。
【0024】
本実施形態では、座30はポンプベース23のすぐ下に配置されているので、座30の位置は通常水面よりも上方である。したがって、振動計31に防水加工を施す必要がない。また、振動計31は、作業員が手作業により貫通孔32に挿入可能な程度のサイズであればよいので、市販の振動計を用いることができる。
【0025】
図3は本発明の第2の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0026】
図3に示すように、ポンプベース23には、貫通孔32から座30まで延びる保護管40が配置されている。保護管40は貫通孔32に隙間なく嵌合されており、座30は保護管40内に収容されている。保護管40の下端(開口端部)はケーシング2(吊下管3)の外周面に固定されている。すなわち、液体が保護管40内に浸入しないように、保護管40の下端は密閉されている。保護管40の断面は円形状または矩形状のいずれでもよい。
【0027】
このような構成によれば、座30が保護管40によって囲まれているので、液面位置が上昇した場合でも、立軸ポンプの取扱液が座30に接触することがない。したがって、取扱液が海水や汚水のような場合でも、座30の腐食が防止される。仮に結露水や塵芥が保護管40の底部に溜まっても、座30はポンプベース23のすぐ下に配置されているので、これら結露水や塵芥を容易に取り除くことができる。さらに、振動計測時に振動計31が誤って落下してしまうことを防止することができる。また、貫通孔32が保護管40により塞がれているので、液面位置が上昇した場合でも、液体がポンプベース23の上面に溢れることがない。
【0028】
図4は本発明の第3の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は第2の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0029】
図4に示すように、保護管40がケーシング2の振動を抑制しないように、保護管40の外面と貫通孔32の内面との間には隙間が形成されている。保護管40の外面にはゴムなどの弾性体42が取り付けられており、保護管40と貫通孔32とは弾性体42によって気密に接続されている。このような構成によれば、ケーシング2の振動が保護管40の拘束により減衰することがないので、精度の高い振動の計測が可能となる。また、保護管40と貫通孔32との間の隙間が弾性体42によってシールされているので、取扱液が汚水である場合に、悪臭の拡散を防止することができる。
【0030】
図5に示すように、振動計測を行っていない間は、貫通孔32に蓋43を被せることが好ましい。蓋43を被せることにより、液面が上昇した場合に液体の保護管40内への浸入を防ぐことができるため、弾性体42を設けなくてもよい。
【0031】
図6は本発明の第4の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0032】
図6に示すように、本実施形態の座30は、ケーシング2(吊下管3)からポンプベース23まで延びる剛体により形成されている。より詳しくは、座30の一方の端部はケーシング2(吊下管3)の外周面に固定され、他方の端部はポンプベース23に形成された貫通孔32内又は近傍に位置している。この他方の端部(図6では上端)には、上述の平坦部30aが形成されている。貫通孔32の上端には蓋43が被されている。振動測定時には、図7に示すように、蓋43を取り外し、座30の平坦部30a上に振動計31が設置される。なお、平坦部30aはポンプベース23の上方に位置してもよい。また、蓋43に代えて、図8に示すように、平坦部30aの下方にゴムなどの弾性体42を取り付け、貫通孔32と座30との間の隙間をシールしてもよい。
【0033】
本実施形態によれば、振動計31をポンプベース23の貫通孔32に通す必要がなく、ポンプ据付床22上で振動測定作業を行うことができる。したがって、第1乃至第3の実施形態に比べて、容易に測定作業を行うことができる。特に、駆動源18の架台などの配置に起因してポンプベース23の下方に振動計31を取り付けることが困難な場合には、本実施形態の構成は有効である。
【0034】
次に、上述した立軸ポンプの点検方法の一実施形態について詳細に説明する。
図9は立軸ポンプの振動の大きさと周波数との関係を示すグラフである。図9において、縦軸は振動の大きさ(振幅、振動速度、または振動加速度)を示し、横軸は振動の周波数[Hz]を示している。図10は振動の大きさと経過時間との関係を示すグラフである。
【0035】
図9から分かるように、振動の大きさ(振幅、振動速度、または振動加速度)は、立軸ポンプの固有振動数において顕著に現れる。また、立軸ポンプの回転速度に応じて決定される所定の測定周波数においても、振動の大きさは顕著に現れる。ここで、所定の測定周波数とは、立軸ポンプの回転速度をN[min−1]、αを自然数(1,2,3,…)としたときに、α×(N/60)[Hz]で表される周波数をいう。以下、卓越周波数である上記固有振動数および上記所定の測定周波数を総称して特定周波数という。図10に示すように、上記特定周波数での振動の大きさは、運転時間の経過と共に徐々に大きくなる。これは、水中軸受12,15が運転時間の経過と共に徐々に摩耗するためである。したがって、運転時間の経過に伴う振動の大きさの変化(増加)から水中軸受12,15の摩耗量を推定することができる。
【0036】
より具体的には、上述のモニタリング部36は、固有振動数を含む周波数帯域F1(または、ポンプの回転速度から決定される上記測定周波数を含む周波数帯域F2)における振動の大きさ(振幅、振動速度、または振動加速度)を監視し、時間経過に伴う振動の変化量が所定の値に達したときに水中軸受12,15の交換時期に達したと判断することができる。
【0037】
一般に、立軸ポンプは、水槽内の液面位置によって運転状態が変わってくるため、常に同じ条件の下で立軸ポンプの振動を測定することが難しい。本実施形態によれば、振動の大きさが顕著に現れる周波数(特定周波数)または該特定周波数を含む周波数帯域における振動の大きさを監視することにより、水槽内の水位にほぼ関係なく、水中軸受12,15の摩耗によって発生する振動の大きさの変化(増加)を把握することができる。したがって、水中軸受12,15の摩耗量を適正に推定することができる。
【0038】
また、立軸ポンプの固有振動数は、立軸ポンプの据付状態(例えば、立軸ポンプのポンプ据付床への固定方法)により若干異なってくる。立軸ポンプの据付状態をポンプ製作工場において再現することは不可能であり、さらに計算により求めた固有振動数と実際の固有振動数との間にも差がある。したがって、立軸ポンプが実際にポンプ据付床に固定された状態で固有振動数を求め、その固有振動数を含む周波数帯域での振動の大きさによって水中軸受の摩耗量を判断することが好ましい。
【0039】
以下、現地等に設置している立軸ポンプの固有振動数の測定方法の一例について説明する。この例では、立軸ポンプが水槽上部のポンプ据付床22に固定されている状態で、立軸ポンプに外力を与えて固有振動数を測定する。具体的には、図11に示すように、ポンプベース23に形成されている挿入口50から蓋51を取り外し、この挿入口50にハンマなどの打撃具52を挿入し、打撃具52でケーシング2を打撃する。このとき、上述の振動計31により立軸ポンプの振動を測定し、固有振動数を求める。このように、立軸ポンプがポンプ据付床22に固定されている状態で立軸ポンプの固有振動数を求めることにより、より高い精度で水中軸受12,15の摩耗量を推定することができる。
【0040】
次に、立軸ポンプの固有振動数の他の測定方法について説明する。図12(a)に示すように、ポンプベース23の上部には棒状の固有振動数可変部材53が取り付けられている。この固有振動数可変部材53はねじ構造を有しており、図12(b)に示すように、その長さを変化させることで自身の固有振動数を変化させることが可能となっている。そして、固有振動数可変部材53の固有振動数を変化させながら(すなわち、固有振動数可変部材53の長さを変化させながら)、この固有振動数可変部材53の振動を測定する。
【0041】
具体的には、立軸ポンプの運転時や打撃時に固有振動数可変部材53が大きく振動したとき、つまり共振したときの卓越周波数をとらえ、この卓越周波数から立軸ポンプの固有振動数を判断する。このように、固有振動数可変部材53の振動の大きさから立軸ポンプの固有振動数を求めることができる。この場合も、立軸ポンプをポンプ据付床22に固定した状態で立軸ポンプの固有振動数を求めることができるので、運転時間経過に伴う立軸ポンプの振動の大きさの変化を適正に監視することができる。
【0042】
図13(a)および図13(b)は固有振動数可変部材の他の例を示す模式図である。この例では、固有振動数可変部材54は、その質量を変えることにより自身の固有振動数が変化させることが可能となっている。すなわち、固有振動数可変部材54は、着脱可能な複数の重り54aを有しており、取り付けられた重り54aの数によって固有振動数可変部材54全体の固有振動数が可変となっている。なお、固有振動数可変部材54の内部に中空部を設け、この中空部に液体等のある程度の質量を有する物質を入れることにより固有振動数可変部材54全体の質量を変えるようにすることもできる。
【0043】
なお、上記固有振動数可変部材の取り付け箇所はポンプベース23に限られない。例えば、ケーシング2に固有振動数可変部材を取り付けてもよい。また、図14に示すように、座30に固有振動数可変部材53(または54)を固定してもよい。このような構成によれば、固有振動数可変部材の固有振動数を、立軸ポンプの固有振動数または上記測定周波数に合わせておくことにより、立軸ポンプの振動を増幅して計測することができ、より精度の高い振動測定が可能となる。
【0044】
また、上述の実施形態では、水中軸受12,15の摩耗量を推定する例について説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、羽根車10よりも下方に設けられる水中軸受(例えば、回転軸の先端を支持する水中軸受など)を監視対象としてもよい。また、振動の計測箇所は、外軸受11やポンプベース23であってもよい。
【0045】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の立軸ポンプを示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である立軸ポンプの全体構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図5】上述した第3の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る立軸ポンプの一部を示す模式図である。
【図7】振動測定時の様子を示す模式図である。
【図8】上述した第4の実施形態に係る立軸ポンプの他の構成例を示す模式図である。
【図9】立軸ポンプの振動の大きさと周波数との関係を示すグラフである。
【図10】振動の大きさと経過時間との関係を示すグラフである。
【図11】立軸ポンプの固有振動数の測定方法の一例について説明するための模式図である。
【図12】図12(a)および図12(b)は固有振動数可変部材の一例を示す模式図である。
【図13】図13(a)および図13(b)は固有振動数可変部材の他の例を示す模式図である。
【図14】固有振動数可変部材の設置箇所の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1 インペラケーシング
1a 吸込ベルマウス
1b ポンプボウル
2 ケーシング
3 吊下管
4 吐出曲管
6 回転軸
7,17 支持部材
10 羽根車
11 外軸受
12,15 水中軸受
13 ボウルブッシュ
14 ガイドベーン
16 駆動軸
18 駆動源
19 ハンドホール
22 ポンプ据付床
23 ポンプベース
24 ポンプ挿通孔
30 座
30a 平坦部
31 振動計
32 貫通孔
35 ケーブル
36 モニタリング部
40 保護管
42 弾性体
43 蓋
44 延長管
50 挿入口
52 打撃具
53,54 固有振動数可変部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定された羽根車と、
前記回転軸を回転自在に支持する水中軸受と、
前記羽根車と前記水中軸受とを収容するケーシングと、
前記ケーシングをポンプ据付床に連結するポンプベースとを備えた立軸ポンプであって、
前記ケーシングの外面には座が取り付けられ、
前記座は、前記ポンプベースより下方で、かつ該ポンプベースの近傍に位置し、
前記座は、前記立軸ポンプの振動を測定する振動計が設置される略平坦部を有し、
前記ポンプベースには、前記座の上方に位置する貫通孔が形成されていることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
前記立軸ポンプは、前記振動計を前記貫通孔から前記座まで案内する保護管をさらに備え、
前記座は前記保護管の内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記保護管と前記貫通孔とは弾性体を介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記座は、前記ケーシングの外面から前記貫通孔まで延びる剛体であることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
自身の固有振動数が可変に構成される固有振動数可変部材をさらに備え、
前記固有振動数可変部材は、前記ケーシング、前記ポンプベース、および前記座のいずれかに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項6】
回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、
前記立軸ポンプの振動を測定し、
前記立軸ポンプの固有振動数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、
運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断することを特徴とする立軸ポンプの点検方法。
【請求項7】
前記立軸ポンプに取り付けられた固有振動数可変部材の自身の固有振動数を変化させながら、前記固有振動数可変部材の振動を測定し、
前記固有振動数可変部材の振動の大きさから前記立軸ポンプの固有振動数を含む卓越周波数を決定することを特徴とする請求項6に記載の立軸ポンプの点検方法。
【請求項8】
回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、
前記立軸ポンプの振動を測定し、
所定の測定周波数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、
運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断する工程を有し、
前記測定周波数は、前記立軸ポンプの回転速度をN[min−1]、αを自然数とすると、α×(N/60)で表されることを特徴とする立軸ポンプの点検方法。
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定された羽根車と、
前記回転軸を回転自在に支持する水中軸受と、
前記羽根車と前記水中軸受とを収容するケーシングと、
前記ケーシングをポンプ据付床に連結するポンプベースとを備えた立軸ポンプであって、
前記ケーシングの外面には座が取り付けられ、
前記座は、前記ポンプベースより下方で、かつ該ポンプベースの近傍に位置し、
前記座は、前記立軸ポンプの振動を測定する振動計が設置される略平坦部を有し、
前記ポンプベースには、前記座の上方に位置する貫通孔が形成されていることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
前記立軸ポンプは、前記振動計を前記貫通孔から前記座まで案内する保護管をさらに備え、
前記座は前記保護管の内部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記保護管と前記貫通孔とは弾性体を介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記座は、前記ケーシングの外面から前記貫通孔まで延びる剛体であることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
自身の固有振動数が可変に構成される固有振動数可変部材をさらに備え、
前記固有振動数可変部材は、前記ケーシング、前記ポンプベース、および前記座のいずれかに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項6】
回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、
前記立軸ポンプの振動を測定し、
前記立軸ポンプの固有振動数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、
運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断することを特徴とする立軸ポンプの点検方法。
【請求項7】
前記立軸ポンプに取り付けられた固有振動数可変部材の自身の固有振動数を変化させながら、前記固有振動数可変部材の振動を測定し、
前記固有振動数可変部材の振動の大きさから前記立軸ポンプの固有振動数を含む卓越周波数を決定することを特徴とする請求項6に記載の立軸ポンプの点検方法。
【請求項8】
回転軸と該回転軸を回転自在に支持する水中軸受とを有する立軸ポンプの点検方法であって、
前記立軸ポンプの振動を測定し、
所定の測定周波数を含む周波数帯域における前記振動の大きさを監視し、
運転時間経過に伴う前記振動の変化量から前記水中軸受の摩耗状態を判断する工程を有し、
前記測定周波数は、前記立軸ポンプの回転速度をN[min−1]、αを自然数とすると、α×(N/60)で表されることを特徴とする立軸ポンプの点検方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−41465(P2009−41465A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207894(P2007−207894)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(506236820)株式会社 荏原由倉ハイドロテック (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(506236820)株式会社 荏原由倉ハイドロテック (31)
【Fターム(参考)】
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