説明

竪型粉砕機の制御方法及び制御装置

【課題】 原料をホッパに一旦貯留してから竪型粉砕機に投入するシステムにおいて、竪型粉砕機に発生し易い異常振動を、効果的に防止できる竪型粉砕機の制御方法並びに制御装置が求められていた。
【解決手段】 予め、竪型粉砕機1の運転中に、原料ホッパ21内に蓄えた原料の量を検出しながら振動値を検出し、振動値が竪型粉砕機1の許容範囲を超える直前のホッパ21内の原料の量を境界値として記憶する。竪型粉砕機1の制御運転中においては、検出したホッパ21内の原料の量が、予め記憶した境界値まで減少した際に、回転テーブルの回転数を減速する調整を行うことよって、異常振動を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に石炭、オイルコークス、石灰石、スラグ、クリンカ、セメント原料、又化学品等を原料として粉砕する竪型粉砕機の制御方法及び制御装置に係り、特に、竪型粉砕機で原料を微粉砕する際に生じやすい異常振動を防止又は抑制するに好適な竪型粉砕機の制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭やオイルコークス等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
【0003】
近年では、特に、竪型粉砕機によって原料を微粉砕するケースも増えてきており、竪型粉砕機内に分級機構を備えた型式の竪型粉砕機が増加している。分級機構を内部に備えた竪型粉砕機としては,特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。
【0004】
【特許文献1】特開平5−104012号公報
【0005】
特許文献1に示される竪型粉砕機は、粉砕機の下部から吹き込んだ気流によって、粉砕した原料を搬送し上昇させるとともに、竪型粉砕機内の上部に配した分級機構によって、気流により搬送された原料の中から微粉のみを選抜して、機外に取出すタイプの竪型粉砕機であって、一般的にエアスエプト式と呼ばれる型式の竪型粉砕機である。
【0006】
以下、特許文献1に開示されたエアスエプト式の竪型粉砕機の構造等について簡略に説明する。特許文献1に開示された竪型粉砕機は、回転テーブルの上方に、分級機構として複数毎の回転羽根を有した回転セパレータを備えており、該回転セパレータの中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュートが配されている。そして、原料投入シュートを介し、原料投入口から回転テーブル上に原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
【0007】
原料投入シュートによって回転テーブルの上方から、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル上で渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブルの外周部に向かって移動する。回転テーブルの外周縁部にはダムリングが設けられ、回転テーブル上で所要の原料厚みを保持するように構成されているので、回転テーブルの外周部に移動した原料は、ダムリングでせき止められ、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれ粉砕される。
【0008】
なお、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリングを乗り越え、回転テーブル上面の外周部とケーシングとの隙間である環状通路(環状空間部と称することもある)へと向かう。
【0009】
竪型粉砕機の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口より、エキゾーストファン等の送風機により、竪型粉砕機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機のケーシング内で、該回転テーブル下方から回転セパレータ上方に向かうガスの気流が生じている。
従って、該ダムリングを乗り越えて環状通路に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング内を上昇する。
【0010】
ケーシング内において上昇する気流は、回転セパレータの影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング下方に落下する等し、回転セパレータを通過することができない。回転セパレータを通過できず、落下した原料は、再度粉砕ローラに噛み込まれて粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0011】
環状通路に達した原料の中で特に粒径の大きな原料は、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。
【0012】
なお、前述した竪型粉砕機で問題となりやすいのは、竪型粉砕機の異常振動である。特許文献1には、竪型粉砕機の運転中に原料層厚の時間的変化を監視し、予め設定した時間幅で原料層厚が単調減少したとき等において、回転テーブル上の原料層厚を改善して振動を回避するために、回転テーブルの回転速度を調整して異常振動を防止する竪型粉砕機の制御方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記した従来技術に従い、回転テーブル上の原料層厚を調整することより振動を回避できる場合も多いが、竪型粉砕機の運転中においては、回転テーブル上の原料層厚がほとんど変化しないにもかかわらず、異常振動が発生する場合がある。
この原因については、明確になっていないが、特に、原料をホッパに一旦貯留してから竪型粉砕機に投入するシステムにおいて、異常振動が誘発されやすいという傾向があった。しかし、従来は、このような場合においても、対処的に運転条件を変化させて振動を回避するしか方法がなく、振動を効果的に防止できる竪型粉砕機の制御方法並びに制御装置が求められていた。
【0014】
本発明は、以上のような要求に鑑みてなされたものであり、竪型粉砕機の異常振動を防止する竪型粉砕機の制御方法並びに制御装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機の制御方法は、
(1) 複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて、ホッパ内に蓄えた原料を回転テーブル上に供給することによって、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕する竪型粉砕機の制御方法において、該ホッパ内の原料の量を検出し、該ホッパ内の原料の量にあわせて、回転テーブルの回転数を調整する。
【0016】
(2) (1)に記載の竪型粉砕機の制御方法において、前記検出した原料の量が、予め記憶した境界値まで減少した際に、回転テーブルの回転数を減速する調整を行う。
【0017】
(3) (2)に記載の竪型粉砕機の制御方法において、予め運転中に、前記ホッパ内に蓄えた原料の量を検出しながら竪型粉砕機の振動値を検出し、該振動値が竪型粉砕機の許容範囲を超える直前における原料の量を境界値として記憶する。
【0018】
(4) (2)に記載の制御方法を行う竪型粉砕機の制御装置であって、前記ホッパ内の原料の量を検出するための測定器、及び境界値を記憶する記憶機、を備えるとともに
該測定器で検出した原料の量と記憶機に記憶した境界値とを比較して、該測定器で検出した原料の量が該境界値より小さくなった場合に、回転テーブルの回転数を減速する指令を発信する制御装置を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、原料をホッパに貯留してから竪型粉砕機に投入する粉砕システムにおいて生じやすい竪型粉砕機の異常振動を、ホッパ内の原料の量から予測して、異常振動が生じる前に竪型粉砕機の回転テーブル回転速度を調整して異常振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の好ましい実施形態の例について詳細に説明する。
図1は本実施形態に係り竪型粉砕機の概略の構造を説明するための説明図である。図2は本実施形態に係り竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。
図3はホッパ内に発生するセグリ現象を概念的に説明する図であり、図4は回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフ、図5は振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフ、図6はテーブル回転数とホッパ容量の関係を示すグラフである。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング1B、回転テーブル2、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)外周部を円周方向に等分する位置に配設した複数個のコニカル型の粉砕ローラ3、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2B、減速機2Bを介して回転テーブル2を駆動する可変速式の電動機2M、及び電動機2Mの回転数を制御する制御盤50、を備えている。
【0022】
粉砕ローラ3は、軸7により下部ケーシングに回動自在に軸着した上部アーム6と、該上部アーム6と一体に形成した下部アーム6Aとを介して油圧シリンダ8のピストンロッド9に連結されており、該油圧シリンダ8の作動によって回転テーブル上面2Aの方向に押圧されて、回転テーブル上面2Aに原料を介して従動することによって回転する。
【0023】
前記ケーシング1Bの回転テーブル上面2Aの中央上部には、セパレータ14と、原料投入口35が設けられており、また、セパレータ14の中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュート13が配されて、原料投入シュート13を介して原料投入口35から回転テーブル上面2Aに原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
【0024】
また、セパレータ14は、セパレータ14の回転軸を中心として上方に拡径する逆円錐台状に一定間隔の隙間をあけて並べられた複数枚の羽根14Aを備えて、図示しない駆動装置により自在に回転できる構成となっている。
【0025】
原料投入シュート13から投入した原料は、回転テーブル上面2Aを渦巻き状の軌跡を描きながら回転テーブル上面2Aの外周部に移動して、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。そして、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブル上面2Aの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル上面2Aの外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。ここで、ケーシング1Bの回転テーブル2の下方には、ガスを導入するためのガス導入口33を設けており、さらに回転テーブル上方には該ガスとともに粉砕した原料を取り出すための上部取出口39を設けている。
【0026】
竪型粉砕機1の運転中において、該ガス導入口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、前記ケーシング1B内において該回転テーブル下方からセパレータ14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が生じている。
【0027】
竪型粉砕機1内に投入した原料と、回転テーブル2と粉砕ローラ3に粉砕されてダムリング15を乗り越えた原料の一部は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、回転セパレータ14に達する。
ここで、径の大きく重量の大きな原料はセパレータ14の羽根14Aを通過することができずセパレータ14の下方に落下して再度粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕されるとともに、径の小さな原料は、隙間をあけて並べられた羽根14Aの間を抜けてセパレータ14を通過し、上部取出口39より取り出される。
【0028】
また、粉砕ローラ3に噛み込まれずそのまま環状通路に達した極一部の極大な粒径の原料は、環状通路30より回転テーブル下方に落下して下部取出口34より竪型粉砕機1の外に取り出される。
【0029】
なお、本実施形態に用いることのできる竪型粉砕機1の型式は、前述したものに限らないことは勿論であって、例えば、粉砕ローラ3の形状がスフェリカル形状のタイヤ型の竪型粉砕機1であっても良い。また、要求される製品の粒度に応じて、セパレータ14は固定タイプのものであっても良い。或いはセパレータを有しないタイプのものであっても良い。
【0030】
ここで、本実施形態においては、図2に示した後述する原料ホッパ21内の原料の量を測定するためのセンサとして重量センサS1を有しており、又竪型粉砕機1の振動値を測定するための振動センサS2を備えている。
【0031】
次ぎに、竪型粉砕機1に備えた制御盤50について簡略に説明する。
図1に示した実施形態において、制御盤50は、予め運転中に、振動センサS2より送信される振動値が入力されて、該振動値が竪型粉砕機1の許容範囲を超える直前におけるホッパ21内の原料の量を重量センサS1より検出して、境界値として記録する記憶機50Bを備えている。
【0032】
本実施形態による制御方法によって、竪型粉砕機1を制御中(制御運転中)には、記憶機50Bに記憶した境界値と、重量センサS1で測定したホッパ21内の原料の量を比較して、前記検出した原料の量が、予め記憶した境界値まで減少した際に、電動機2Mに対して、回転数を減速するための信号を発信する制御装置50Aを備えている。
なお、図1に示す実施形態において、電動機2Mは、可変速式であり、減速機2Bを介して回転テーブル2に連結されている。従って、電動機2Mは、制御盤50の制御装置50Aよりから送信される信号によって、その回転速度を自在に変化させて、回転テーブル2の回転速度を自在に変化させることができる。
【0033】
次に本実施形態に係る粉砕システムの好ましい1例ついて図2を参考に説明する。
図2に示した粉砕システムは、竪型粉砕機1、原料ホッパ20、エキゾーストファン89等を備えており、更に図示しないバケットエレベータなども備えている。
図2に示した粉砕システムにおいて、トラック等の、所謂、バッチ式の輸送手段によって搬送されて、原料ホッパ21に蓄えられた原料は、竪型粉砕機1に投入されて粉砕される。竪型粉砕機1内で粉砕された原料は、エキゾーストファン89によるガスの気流により、竪型粉砕機1内を上方に移動して製品取出口39から機外に取り出される。
また、竪型粉砕機1の中に投入された原料の中で、製品取出口39から機外に取り出されなかった一部の原料については、下部取出口34から機外に取り出されて、図示しないバケットエレベータ等を介して竪型粉砕機1に再度投入されて粉砕される。
(図2においては、下部取出口34からL1ラインに取り出されて、L1ラインから竪型粉砕機1に再度投入されて粉砕されている)
【0034】
以下、本発明の実施形態について、従来技術と異なる部分を中心として、第1の実施形態を説明する。
なお、第1実施形態に用いた竪型粉砕機1は、粉砕ローラの個数が3個であって、テーブル回転数は73RPMであり、粉砕ローラ中心直径Dは0.4mであり、テーブル直径Tは0.64mである。
【0035】
原料投入シュート13によって、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル2の外周部に向かって移動し、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。
【0036】
回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル2A上面の外周部とケーシング1Bとの隙間である環状通路30へと向かう。
【0037】
竪型粉砕機1の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口33より、エキゾーストファン89によって、機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機1のケーシング1B内で、回転テーブル2下方から回転セパレータ14上方に向かうガスの気流が生じている。従って、ダムリング15を乗り越えて環状通路30に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング1B内を上昇する。
【0038】
ケーシング1B内において上昇する気流は、回転セパレータ14の影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング1B下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング1B下方に落下する等し、回転セパレータ14を通過することができない。
【0039】
回転セパレータ14を通過できず、落下した原料は、竪型粉砕機1内で循環して、再度、粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕される。或いは、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0040】
次ぎに、竪型粉砕機1の制御方法について説明する。
まず、本発明による竪型粉砕機1の第1実施形態においては、予め、ホッパ21内に蓄えた原料の量を、重量センサ21で検出しながら運転し、竪型粉砕機1に生じる振動値を振動センサS2で測定する。
そして、振動値が竪型粉砕機1の許容範囲を超える直前におけるホッパ21内の原料の量を、境界値として記憶機50Bに記録する。
言い換えると、本発明による第1の実施形態においては、まず、振動が大きくなる直前におけるホッパ21内の原料の量を境界値として記憶機50Bに記憶する。
なお、この境界値については、制御運転前に実際に測定しておき、制御運転の前に設定値として制御盤に入力し、記憶機50Bに記憶させても良い。
【0041】
次ぎに、竪型粉砕機1の制御運転中においては、重量センサS1で原料の量を検出するとともに、記憶している境界値と比較する。
そして、竪型粉砕機1の制御運転中においては、重量センサS1の検出した原料の量と、前記記憶している境界値が略一致、好ましくは一致したときに、制御装置50Aから、電動機2Mに回転数低下の信号を発信して、回転テーブルの回転数を低下させて、異常振動の発生を防止する。
【0042】
ここで、竪型粉砕機1の前に配された原料供給用のホッパ21に蓄えられる原料(例えば、石炭、オイルコークス等)は、昼間にトラックにて輸送されてホッパ21内に蓄えられており、夜間から翌日の朝までは、ホッパ21内に蓄えた原料で粉砕を行う。この場合に、朝方近くになるとホッパ21内の原料が少なくなるが、その際において、ホッパ21から供給される原料は、粒度分布が細かい原料が多くなるという現象が発生する。
【0043】
図3により、この現象を概念的に説明すれば、通常、原料を、一旦蓄えてから、徐々に排出するホッパ21等の貯留機においては、ホッパ21内における原料の流れが均一でない。例えば、壁面に近い部分に蓄えられた原料は壁面に付着したり、摩擦抵抗により流れが遅くなる等の理由により、ホッパ21内から排出されにくい等といった現象が生じる。
特に、原料の中に含まれている微粉は、壁面付近に集まり易く、又壁面などに付着しやすい等の理由によって、粒径の大きな原料に比較してホッパ21内から排出されにくい傾向がある。
【0044】
そのため、ホッパ21内の原料の量が減少して残り少なくなった際には、ホッパ21内の原料は粒径の小さいものが多くなるといった現象が生じる。この現象は、「ホッパのセグリ現象」と言われるものであるが、この結果ミルには細かい原料のみが供給され、その結果、竪型粉砕機1には振動が誘発されやすい状況となる。ホッパのセグリ現象が発生すると、細かい原料が多く竪型粉砕機1に供給されるため、粉砕ローラ3部では原料間および原料と粉砕ローラ3の摩擦係数が低下し振動が発生する。
【0045】
図4に回転テーブル2の回転速度と動摩擦係数(粉砕ローラと原料との間の動摩擦係数)の関係を示すが、微粉が、従来の量より多く、粉砕ローラ3に噛みこまれると、粉砕ローラ3と原料の間の摩擦係数は低下し、その結果、粉砕部ですべりなどが生じて、竪型粉砕機1の振動を誘発する原因となっている。
【0046】
図6にホッパ容量(%)とテーブル回転数(%)の関係を示す。ここで、ホッパ容量は、ホッパ21に蓄えることのできる原料の最大量に対して、残っている原料の量の割合を示すものである。図6から明らかなように、ホッパ21に蓄えることのできる原料の最大量に対して、残っている原料の量の割合が40%程度になると、テーブル回転数を70%程度まで減速しなければ異常振動が生じる。これは前述の作用を裏付けるものである。
【0047】
このような理由から、竪型粉砕機1の運転中においては、ホッパ21内の原料の量を検出して、該検出値が、予め記憶した異常振動になる直前の境界値まで減少したときに、回転テーブル2の回転速度を低下させて、粉砕ローラ3と原料の動摩擦係数を回復することが、振動の防止に有効である。
【0048】
ところで、摩擦係数と竪型粉砕機1の振動の関係は、摩擦係数が低下した際に振動、特に自励振動の起点となる。また、粉砕力(加振力)を増加すれば竪型粉砕機1の振動の原因となる。
【0049】
理由として、竪型粉砕機1に発生する振動は摩擦係数の他に下記のように考えることもできる。
【0050】

【0051】
なお、加振力をバネ定数で割ったものを変位量(A)とする。
【0052】
図5に示したように振動増幅係数M、加振振動数(ω)と粉砕層の振動数(ω0)の比率により変化することが分かる。
通常は、図5においてω/ω0が1.0以下(=共振点以下)で運転されているので、粉砕層の振動数(ω0)を変えずに(製品の粒度に比例し同粒度は変更できないため)加振振動数(ω)を低下させることにより振動増幅係数を低下させることができる。
【0053】
加振振動数(ω)は粉砕ローラの回転数に比例するため同調するテーブル回転数を変更することにより加振振動数を低減できる。この結果、分母、分子ω/ω0の内分子を低下させれば振動増幅係数は減少するので、竪型粉砕機1の振動が抑制できる。
【0054】
以上、説明したように、振動を抑制または抑止する方法として、摩擦係数の確保法と加振振動数の制御法がある。この2方法に共通するものは、回転テーブルの回転数であり、原料性状に合わせて都度適正な回転数に設定することにより竪型粉砕機1の能力を最大限に引き出すことができる。
【0055】
即ち、竪型粉砕機1に原料の供給を行うホッパ21内の原料の量が減少し、微粉の供給が多くなる場合に、回転テーブル2のテーブル回転数を任意に低下させ、加振振動数を低下し、振動増幅係数を減少させれば、竪型粉砕機1の振動を発生させる前に振動要因を排除することができる。
【0056】
以下、本発明による竪型粉砕機1の運転方法並びに制御方法について、前述した第1の実施形態と異なる部分を中心に、第2の実施形態を簡略に説明する。
【0057】
まず、本発明による第2実施形態においては、予め運転中に、重量センサ1でホッパ21内の原料の量を検出するとともに、竪型粉砕機1の振動値を振動センサS2で測定する。そして、ホッパ21内の原料の量と、振動値が竪型粉砕機1の許容範囲を超えないテーブル回転数の関係を記録する。
【0058】
竪型粉砕機1の制御運転中においては、ホッパ21内の原料の量を重力センサS1で検出しながら、記憶している振動値が竪型粉砕機1の許容範囲を超えないテーブル回転数の関係を比較して、ホッパ21内に残っている原料の量に応じて、回転テーブル2の回転数を調整することにより、振動の発生を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る竪型粉砕機の実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。
【図3】セグリ現象を概念的に説明する図である。
【図4】回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフである。
【図5】振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
【図6】ホッパ容量とテーブル回転数の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル
3 粉砕ローラ
13 原料投入シュート
14 回転セパレータ
15 ダムリング
1B ケーシング
21 原料ホッパ(新規原料供給用)
30 環状通路
33 ガス導入口
89 エキゾーストファン(送風機)
34 下部取出口
35 原料投入口
39 製品取出口(上部取出口)
50 制御盤
50A 制御装置
50B 記憶機
S1 重量センサ
S2 振動センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて、ホッパ内に蓄えた原料を回転テーブル上に供給することによって、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕する竪型粉砕機の制御方法において、
該ホッパ内の原料の量を検出し、該ホッパ内の原料の量にあわせて、回転テーブルの回転数を調整する竪型粉砕機の制御方法。
【請求項2】
前記検出した原料の量が、予め記憶した境界値まで減少した際に、回転テーブルの回転数を減速する調整を行う請求項1記載の竪型粉砕機の制御方法。
【請求項3】
予め運転中に、前記ホッパ内に蓄えた原料の量を検出しながら竪型粉砕機の振動値を検出し、該振動値が竪型粉砕機の許容範囲を超える直前における原料の量を境界値として記憶した請求項2に記載の竪型粉砕機の制御方法。
【請求項4】
前記ホッパ内の原料の量を検出するための測定器、及び境界値を記憶する記憶機、を備えるとともに、
該測定器で検出した原料の量と記憶機に記憶した境界値とを比較して、該測定器で検出した原料の量が該境界値より小さくなった場合に、回転テーブルの回転数を減速する指令を発信する制御装置を備えて、請求項2に記載の制御方法を行う竪型粉砕機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−178838(P2008−178838A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15822(P2007−15822)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】