説明

竪型精穀機

【課題】 とうもろこしの表皮、胚乳及び胚芽をできるだけ原形をとどめたまま回収して、後工程の精選工程において容易に取り分けが可能となる竪型精穀機を提供する。
【解決手段】 立設した除糠精穀網筒10内に回転可能に設けた主軸7に、攪拌ロール9及び上送式螺旋ロール8を軸装するとともに、攪拌ロール9と除糠精穀筒10との間隙を精穀室11に、除糠精穀筒10と円筒型ケーシング4との間隙を集糠室26にそれぞれ形成した竪型精穀機1であって、攪拌ロール9は、外周面に棒状抵抗部材9b,多数の抵抗角柱9cを固着し、除糠精穀網筒10は、円形の打ち抜き孔が多数穿設してあり、集糠室26底部に配置した複数の糠掻き出し羽根28を介して精品穀粒を機外に排出すべく、穀粒排出部には、精品穀粒を集糠室26底部に落下させるための落下樋19を接続する一方、該落下樋19には、穀粒の吐出を規制して搗精度合いを調節する抵抗調節装置20を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とうもろこし等の穀粒を原料としてコーンエタノール燃料を生産するための前処理機として使用する竪型精穀機に関するものであり、特に、大きなサイズ(例えば、径が6mm〜10mm)の胚乳の産物を増加させるために好適な機械である。
【背景技術】
【0002】
従来、とうもろこしを利用する工業には、食品工業、飼料工業、醸造工業、澱粉工業など多数知られており、近年では、とうもろこし等の穀粒を原料としてコーンエタノール燃料を生産するための工業も知られている。この種の工業に利用されるとうもろこしは、前処理を行って、外皮及び胚芽を分離して良質な胚乳を得ることが重要である。
【0003】
前処理機としては竪型精穀機が知られており、典型的な構成として、立設した除糠精穀筒(スクリーン)内に回転可能に設けた主軸に、攪拌ロール及び上送螺旋ロールを軸装するとともに、前記除糠精穀筒の下部を穀粒供給部、上部を穀粒排出部にそれぞれ形成し、除糠精穀筒外側と機枠との空間を集糠室に形成している(特許文献1の図1の符号3に示す第2胚芽除去部を参照のこと。)。そして、とうもろこしを搗精する際、除糠精穀筒内を回転する攪拌ロールによりとうもろこし粒の外皮が剥離され、この剥離された外皮がスリット状の網目から漏出して集糠室に至り、該集糠室では外皮などの糠が吸引ダクトの吸引風によって機外に排出される。一方、除糠精穀筒内では外皮が除去され、残った胚乳部が粉砕されながら抵抗蓋に抗して穀粒排出樋に至り、該穀粒排出樋を流下して機外に排出されることになる。
【0004】
上記竪型精穀機は、除糠精穀筒内で剥離された外皮が吸引風によって機外に排出される構成であるが、糠掻き出し翼を集糠室の底部に位置させ、主軸の回転に伴い糠掻き出し翼を回転させることで、集糠室底部が間欠的に掃塵される手段も知られている(例えば、特許文献2の符号66 糠吸引翼を参照のこと)。このような糠掻き出し翼及び吸引ダクトからの吸引風による集糠機構の詳細を、図8を参照して詳細に説明する。図8は、従来の竪型精穀機100の概略の構成図であり、台座102上の円筒型ケーシング101内に、回転可能に回転軸103を立設し、該回転軸103には下部に上送螺旋104を軸着するとともに、該回転軸103の上部に攪拌転子105をそれぞれ軸着する。そして、攪拌転子105の外周を同心状に包囲する除糠筒106を立設し、該除糠筒106と攪拌転子105との間隙(げき)を精白室107に形成してある。攪拌転子105表面の長手方向には長尺状の攪拌バー105aを形成するとともに、攪拌バー105aに沿って噴風孔(図示せず)を開口してあり、中空状の回転軸103からの噴風が、噴風孔を介して精白室107に流通する構成となっている。また、除糠筒106と円筒型ケーシング101との間隙を集糠室108となし、該集糠室108の集糠室108の底部には、回転軸103から連繋する糠掻き出し翼109を位置させ、集糠室108底部を間欠的に掃塵する構成となっている。さらに、集糠室108には、吸引ダクト110が連通され、該吸引ダクト110の吸引風により、糠掻き出し翼109によって集糠された糠が機外に排出されることになる。
【0005】
符号111は精品排出部であり、該精品排出部111には、穀粒の吐出を規制して搗精度合いを調節する抵抗調節装置112を設けてあり、該抵抗調節装置112には抵抗板113を連結して設けている。さらに、精品排出部111には精品穀粒を機外に取り出せるように排出樋114を接続する。
【0006】
次に、上記構成の作用を説明する。穀粒供給口から投入されたとうもろこし粒は、まず、上送螺旋104の底部に供給されて立設された精白室107に上送され、該精白室104内で高速に回転する攪拌転子105によって、とうもろこしの表皮部(先端帽部(Cap)、果皮(Pericarp)及び外種皮(Testa))が直ちに剥離され、胚乳部が剥き出しにされる。剥離された表皮部は糠分となり、除糠筒106のスリット状の網目から漏出して集糠室108底部に落下し、糠掻き出し翼109により間欠的に掃塵されて集糠された後、吸引ダクト110の吸引風によって機外に排出される。一方、除糠精穀筒106内の胚乳部は、砕けやすい性質を持っており、高速に回転する攪拌転子105によって粉砕されて胚乳部の内方中心部の胚芽が摘出され、粉砕された胚乳部とともに抵抗板113に抗して流出し、排出樋114を経て機外に排出されることになる。
【0007】
上述の図8に示す精穀機にあっては、抵抗板113により精白室107内が高圧となっているから、とうもろこし粒どうしの粒々摩擦によってとうもろこしの表皮部を剥離することに主に動力が消費される。そして、排出樋114から排出される胚乳や胚芽は、粒々摩擦によって小さく破砕されてしまい、胚乳及び胚芽できるだけ原形をとどめたまま回収することに難点があった。胚乳及び胚芽をできるだけ原形をとどめたまま回収することは、後工程に設けられるアスピレータ、シフター等による胚乳の取り分けに係る精選効率を向上させることや、胚芽に含まれる有用成分を破壊することなく付加価値の高い胚芽を提供するために有利となる。
【0008】
【特許文献1】特開2002-126544号公報
【特許文献2】特公平6-67485
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点にかんがみ、とうもろこしの表皮、胚乳及び胚芽をできるだけ原形をとどめたまま回収して、後工程の精選工程において容易に取り分けが可能となる竪型精穀機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、立設した除糠精穀筒内に回転可能に設けた主軸に、攪拌ロール及び上送式螺旋ロールを軸装するとともに、前記除糠精穀筒の下部を穀粒供給部、上部を穀粒排出部にそれぞれ形成し、さらに、前記攪拌ロールと前記除糠精穀筒との間隙を精白室、除糠精穀筒と円筒型ケーシングとの間隙を集糠室にそれぞれ形成した竪型精穀機であって、前記攪拌ロールは、外周面に該攪拌ロールとほぼ同じ長さを有する棒状抵抗部材を複数本固着するとともに、多数の抵抗角柱をロール表面に散りばめて固着してなり、前記除糠精穀筒は、多角形状の除糠精穀網によって形成され、該多角形状の除糠精穀網の全ての面に円形の打ち抜き孔が多数穿設してあり、前記集糠室底部に配置される複数の糠掻き出し羽根を介して精品穀粒を機外に排出すべく、前記穀粒排出部には、精品穀粒を前記集糠室底部に落下させるための落下樋を接続する一方、該落下樋には、穀粒の吐出を規制して搗精度合いを調節する抵抗調節装置を設ける、という技術的手段を講じた。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記集糠室底部には、その一部に糠排出口を穿設するとともに、該糠排出口に排糠ダクトが連通され、前記集糠室底部に配置した複数の糠掻き出し羽根の回転による掻き出しによって精品穀粒及び糠を機外に排出することを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3記載の発明は、前記集糠室底部と連通する排糠ダクトの下流側には、さらに精品アスピレータを接続することを特徴とする。
【0013】
そして、請求項4記載の発明は、前記精品アスピレータは、略四角筒状の本体と、該本体の下部に接続される漏斗状のホッパー部とから構成され、前記本体の一側壁には、前記排糠ダクトと接続する供給口を穿設するとともに、前記本体上部の角部には、前記本体内を負圧に保つ吸引機と連通するための吸引口を穿設し、さらに、前記本体内部には、前記供給口から供給される精品穀粒の落下衝撃を緩和するための緩衝板を設けることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明では、前記多角形状の除糠精穀網に穿設される多数の円形の打ち抜き孔は、その径の大きさを6〜10mmに設定することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明では、前記攪拌ロール表面に固着される多数の多数の抵抗角柱は、一辺が約16mm、高さが約10mmの矩形柱に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、精白室に供給されたとうもろこし粒が、高速に回転する攪拌ロールにより、棒状抵抗部材及び抵抗角柱による打ち付け衝撃、とうもろこし粒同士の衝突による衝撃、及び除糠精穀網内壁に押し付けられる摩擦により、とうもろこし粒表面の外皮が剥離される。剥離された外皮は糠分となり、とうもろこし粒の粒径よりも小さな打ち抜き孔が形成された除糠精穀網を漏出して集糠室底部に落下する。そして、外皮が剥離された胚乳は、砕けやすい性質を持っているため、低圧状態の精白室内において攪拌ロールを回転させ、大きく割砕して胚乳部の内方の胚芽を摘出する。胚芽及び大きく割砕された胚乳は穀粒排出部に至り、抵抗調節装置に抗して流出した後、落下樋を経て集糠室底部に落下する。集糠室底部に溜まった胚乳や胚芽は、過度の粒々摩擦を受けていないために、小さく破砕されず、できるだけ原形をとどめたまま回収することが可能となる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、集糠室底部に落下した外皮、胚芽及び胚乳からなる混合物を、複数の糠掻き出し羽根によって間欠的に掃塵し、機外に排出することが可能となる。これにより、外皮、胚芽及び胚乳をできるだけ原形をとどめたまま回収可能となり、後工程に設けられるアスピレータ、シフター等の設置を最小限にとどめて、胚乳の取り分けに係る精選効率を向上させることが可能となる。さらに、原形をととどめた胚芽は、胚芽に含まれる有用成分を破壊することがなく、付加価値の高い胚芽を提供するために有利となる。
【0018】
さらに、請求項3記載の発明は、前記集糠室底部と連通する排糠ダクトの下流側に、さらに精品アスピレータを接続しているので、吸引式の気流によって外皮が選別/除去されて純化され、精品排出シュートから落下する胚芽及び大きく割砕された胚乳などの精品穀粒を取り出すことが可能となり、別途にアスピレータなどの純化設備を設ける必要がない。
【0019】
また、請求項4記載の発明は、精品アスピレータが略四角筒状の本体と、該本体の下部に接続される漏斗状のホッパー部とから構成され、前記本体の一側壁には、前記排糠ダクトと接続する供給口を穿設するとともに、前記本体上部の角部には、前記本体内を負圧に保つ吸引機と連通するための吸引口を穿設し、さらに、前記本体内部には、前記供給口から供給される精品穀粒の落下衝撃を緩和するための緩衝板を設けているから、外皮、糠などの比重が軽い微細な粉塵は吸引ファンなどの吸引力によって吸引口に取り込まれ、胚芽及び大きく割砕された胚乳などの比重の重い精品穀粒は緩衝板に衝突した後、自重により沈降して精品排出シュートから取り出され、外皮、糠などの比重が軽い微細な粉塵が選別/除去され、簡易的な装置によって純化が可能となる。
【0020】
請求項5記載の発明は、前記多角形状の除糠精穀網に穿設される多数の円形の打ち抜き孔を、その径の大きさを6〜10mmに設定したものであり、従来技術のように、網目がスリット状の除糠筒と比較して精白室内が高圧となることがなく、動力の消費を低減しながら容易にとうもろこし粒の外皮を剥離することができる。また、とうもろこし粒が小さく破砕されることがなく、胚乳及び胚芽をできるだけ原形をとどめたまま回収することが可能となる。
【0021】
請求項6記載の発明は、前記攪拌ロール表面に固着される多数の抵抗角柱を、一辺が約16mm、高さが約10mmの矩形柱に形成したものであり、高速に回転する攪拌転子の表面に固着した多数の抵抗角柱による打ち付け衝撃により、とうもろこし粒表面の外皮が容易に剥離されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の竪型精穀機の全体の構成を示す斜視図であり、図2は図1の矢視A方向から見た竪型精穀機の正面図であり、図3は図1の矢視B−B’方向で破断したときの内部構成を示す概略縦断面図である。
【0023】
図1乃至図3で示すように、竪型精穀機1は、台座2上に立設した穀粒の供給部となる円筒状機枠3と、該円筒状機枠3に連設した搗精部となる円筒型ケーシング4とにより形成され、全体的な外観がほぼ円筒状の様相となっている。前記円筒状機枠3及び円筒型ケーシング4内には、下部軸受5、上部軸受6及び下端に軸着したプーリ33により回転可能に回転軸7を立設し、該回転軸7の中間部には、穀粒を上送するための上送螺旋8を軸着するとともに、該回転軸7の上部に攪拌転子9をそれぞれ軸着する。そして、攪拌転子9の外周を同心状に包囲する除糠筒10を立設し、該除糠筒10と攪拌転子9との間隙(げき)を精白室11に形成してある。
【0024】
前記攪拌転子9の形状は、図4に示すように、鉄製のロール本体9aの外周面に該ロール本体9aとほぼ同じ長さ(高さ)の棒状抵抗部材9b…を複数本固着するとともに、一辺が約16mm、高さが約10mmの矩形柱からなる多数の抵抗角柱9c…を前記ロール本体9a表面に千鳥状に配置し、ロール本体の内側からボルトによって固着したものである。前記多数の抵抗角柱9c…は連結部材9dによってゲタ状に5個一組に形成し、ロール本体9aの長さ(高さ)方向に列状に固着すると、抵抗角柱9c…のボルトによる取り付け作業や交換作業の作業時間が短縮されるとともに、抵抗角柱9c…の取り付け後のボルトの緩みも少なく、また、抵抗角柱9c…の回転方向側が磨耗した場合に、取り付け方向を逆にすれば、耐久時間が延びるといった作用・効果が期待できる。
【0025】
前記除糠筒10の形状は、図5に示すように、長さ(高さ)方向が約646mm、外径が約280mmの多角形に形成されており、精品排出口と連絡する切欠部12側の除糠網13aと、その対向側の除糠網13bと、該除糠網13a,13bを外側から包囲する外側挟持枠14とによって構成される。そして、外側挟持枠14によって複数の除糠網13a,13bを接合するとともに、その下端部14aを、上送螺旋8(図3参照)を包囲する供給筒部15上に固着することで、除糠筒10が立設されることになる。前記除糠網13a,13bには、径が約9mmの円形の打ち抜き孔16…が多数列状に穿設してあり、その列は、除糠網13a,13bの上端から下端まで、多角状の全ての面に設けられるが、除糠網13a,13bの接合面13cには設けられていない。打ち抜き孔の径は、9mmより小さくてもよく(例えば、7mm)、理想的には、6mm〜10mmの範囲がよい。
【0026】
除糠網13a,13bには、従来と同様、網内面の内角部に複数の抵抗バー17…が取り付けられており、図5に示す実施形態では、除糠網13bの内角部に、回転軸方向に沿って、短い抵抗バー17aと、長い抵抗バー17bとを一列に取り付けている。なお、除糠網13a,13bの下端を、符号13d,13dのように回転軸方向に対して分割可能に形成してもよく、これにより、除糠網13a,13bの特に摩耗が激しい一部の除糠網13d,13dのみを交換して、交換部品の費用を低額に抑えることができるように形成してもよい。
【0027】
さらに、図1乃至図3を参照して竪型精穀機1の全体構成について説明すると、前記精白室11上部の、除糠網13aの切欠部12には精品排出口18を形成し、該精品排出口18には、従来技術のように、精品を竪型精穀機1の機外に排出するための、傾斜状に機外まで延びる排出シュートを接続するのではなく、精品をそのまま除糠室25に落下させるための、落下樋19が設けてある。そして、前記精品排出口18及び落下樋19には、穀粒の吐出を規制して搗精度合いを調節する抵抗調節装置20を設けてある。該抵抗調節装置20は、円筒型ケーシング4上部に横架した横軸21と、該横軸21に固着した分銅レバー22と、該分銅レバー22の一端に枢着した精品排出口18に対峙する抵抗板23と、前記分銅レバー22の他端側に移動可能に装着した分銅24とから構成される。
【0028】
符号25は、円筒型ケーシング4と除糠筒10との間隙に形成される除糠室であり、該除糠室25上部には、前記除糠筒10から漏出する皮と、前記精品排出口18から抵抗板23に抗して落下する胚乳及び胚芽とを分離するための、分離板39が前記落下樋19から垂設されている。一方、前記除糠室25の下方には、前記円筒状機枠3と供給筒部15との間隙に形成される環状の集糠室26が形成される。この集糠室26には、回転軸7に固着した羽根取付筒27の外周面に複数のかき出し羽根28が設けられ、集糠室26の底面を掃塵する構成となっている。そして、前記集糠室26の一部には糠排出口29を穿設するとともに、該糠排出口29に排糠ダクト30を接続し、排糠ダクト30の終端は精品アスピレータ31の供給口に接続される。符号32は精品アスピレータ31の上部に設けられる吸引ダクトであり、符号40は精品アスピレータ31の下部に設けられる精品排出シュートである。
【0029】
符号34は、供給筒部15の底部に臨ませる穀粒供給装置であり、該穀粒供給装置34は、コンベアケース35内に横設した螺旋コンベア36によって構成され、螺旋コンベア36の軸端に軸着したプーリ37の回転によって穀粒供給口38に投入した穀粒を竪型精穀機1に供給することができる。
【0030】
次に、前記精品アスピレータ31の構造について図3及び図6を参照して説明する。精品アスピレータ31は略四角筒状の本体41と、該本体41の下部に接続される漏斗状のホッパー部42とから構成され、本体41の一側壁には、排糠ダクト30終端を接続する供給口43が穿設され、対向する他側壁には点検用開口44a及びサンプル精品を観察するための観察窓44bがそれぞれ設けられる。一方、四角筒状の本体41の角部を截断した箇所には、前記吸引ダクト32と連通する吸引口45を設け、該吸引口45下部には、外気を取り入れるニ次空気取り入れ孔46…が設けられている。そして、四角筒状の本体41内には、該本体41内を縦方向に二分するように、前記供給口43から供給される精品穀粒の落下衝撃を緩衝する緩衝板47が設けられる。
【0031】
なお、図1、図2において、符号48は回転軸7を回転駆動する主モータであり、符号49は穀粒供給装置の螺旋コンベア36を回転駆動する供給装置用モータであり、符号50は抵抗板23に抗して落下する精品サンプルの取り出し用開閉扉である。
【0032】
次に、上記構成の作用を説明する。穀粒供給口38から投入されたとうもろこし粒は、まず、螺旋コンベア36によって供給筒部15の底部に供給され、該供給筒部15では上送螺旋8によって立設された精白室11に上送される。精白室11内では、まず、高速に回転する攪拌転子9により、棒状抵抗部材9b…,抵抗角柱9c…による打ち付け衝撃、とうもろこし粒同士の衝突による衝撃、及び除糠網13内壁に押し付けられる摩擦により、とうもろこし粒表面の外皮が剥離されることになる。剥離された外皮は糠分となり、除糠網13の打ち抜き孔16…を漏出して集糠室26底部に落下する。
【0033】
そして、外皮が剥離された胚乳は、砕けやすい性質を持っているため、高速に回転する攪拌転子9によって、過剰な搗精ではなく、大きく割砕されて胚乳部の内方中心部の胚芽が摘出されることになる。胚芽及び大きく割砕された胚乳部は精品排出口18に至り抵抗板23に抗して流出し、落下樋19を経て集糠室26底部に落下することになる。
【0034】
除糠室25には分離板39が垂設されており、除糠網13の打ち抜き孔16…から漏出する外皮などの糠分が、前記分離板39よりも内側寄りの除糠室25を通過して集糠室26底部に落下する一方、抵抗板23に抗し落下樋19から流下する胚乳及び胚芽は、前記分離板39よりも外側寄りの除糠室25を通過して集糠室26底部に落下することになる。
【0035】
集糠室26底部に落下した外皮、胚芽及び胚乳からなる混合物は、複数のかき出し羽根28によって間欠的に掃塵され、糠排出口29、排糠ダクト30を経て精品アスピレータ31の供給口43に供給される。
【0036】
精品アスピレータ31には、吸引口45に吸引ダクト32が接続され、該吸引ダクト32には、バキュームポンプ又は吸引ファンのような、マイナス又は減圧システム(図示せず)に接続するとよい。マイナス又は減圧システムとしては、精品アスピレータ31内を胚芽や胚乳など比重の重い粒状物が飛散しない程度のわずかな負圧に設定するのがよく、例えば、最大風量が15m/min程度の吸引ファンを採用するとよい。そして、精品アスピレータ31に外皮、糠などの比重が軽く微細な粉塵とともに、胚芽及び大きく割砕された胚乳などの比重の重い精品穀粒が供給されると、まず、緩衝板47に衝突し、胚芽及び胚乳などの比重の重い精品穀粒はその自重により沈降して精品排出シュート40に落下する一方、外皮、糠などの比重が軽い微細な粉塵は吸引ファンなどの吸引力により、緩衝板47下端から本体41の方向へ上昇して、ついには吸引口45に取り込まれる。このとき、ニ次空気取入孔46の開度を調節すれば、吸引力を調節することができる。
【0037】
吸引式の気流によって外皮が選別/除去されて純化され、精品排出シュート40から落下した胚芽及び大きく割砕された胚乳などの精品穀粒は、シフター(図示せず)に供給され、胚芽などの小砕粒、中砕粒及び大砕粒などの3種類に分離される。シフターをスルーした小砕粒及び中砕粒は比重選別機などに供給して胚芽と胚乳とに比重選別するとよい。以上のように、本発明の竪型選別機1の後工程に、シフターと比重選別機をそれぞれ1台ずつ設置すれば、最小限の精選工程によって容易に外皮、胚芽及び胚乳を取り分けることが可能となる。
【0038】
以上のように本発明の竪型精穀機によれば、従来の竪型精穀機と比較して精白室内が低圧となるから、過度の粒々摩擦を受けず、とうもろこし粒を小さく破砕することなく、胚乳及び胚芽をできるだけ原形をとどめたまま回収することが可能となる。
【0039】
また、本発明の竪型精穀機の集糠室26底部と連通する排糠ダクト30の下流側には、さらに精品アスピレータ31を接続しているので、吸引式の気流によって外皮が選別/除去されて純化され、別途にアスピレータなどの純化設備を設ける必要がない。
【0040】
さらに、多角形状の除糠精穀網13に穿設される多数の円形の打ち抜き孔16を、その径の大きさを6〜10mmに設定しているから、従来の網目の細かいスリット状の除糠筒と比較して精白室内が高圧となることがなく、動力の消費を低減しながら容易にとうもろこし粒の外皮を剥離することができる。また、とうもろこし粒が小さく破砕されることがなく、胚乳及び胚芽をできるだけ原形をとどめたまま回収することも可能となる。
【0041】
そして、攪拌ロール9表面に固着される多数の抵抗角柱9c…を、一辺が約16mm、高さが約10mmの矩形柱に形成しているから、高速に回転する攪拌転子の表面に固着した多数の抵抗角柱による打ち付け衝撃により、とうもろこし粒表面の外皮が容易に剥離されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の竪型精穀機の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の矢視A方向から見た竪型精穀機の正面図である。
【図3】図1の矢視B−B’方向で破断したときの内部構成を示す概略縦断面図である。
【図4】竪型精穀機の攪拌転子を示す概略斜視図である。
【図5】竪型精穀機の除糠網などの分解斜視図である。
【図6】竪型精穀機の精品アスピレータを示す概略斜視図である。
【図7】精品アスピレータの精品流れ及び気流の流れを示す概略図である。
【図8】従来の竪型精穀機の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 竪型精穀機
2 台座
3 円筒状機枠
4 円筒型ケーシング
5 下部軸受
6 上部軸受
7 回転軸
8 上送螺旋
9 攪拌転子
10 除糠筒
11 精白室
12 切欠部
13 除糠網
14 外側挟持枠
15 供給筒部
16 打ち抜き孔
17 抵抗バー
18 精品排出口
19 落下樋
20 抵抗調節装置
21 横軸
22 分銅レバー
23 抵抗板
24 分銅
25 除糠室
26 集糠室
27 羽根取付筒
28 かき出し羽根
29 糠排出口
30 排糠ダクト
31 精品アスピレータ
32 吸引ダクト
33 プーリ
34 穀粒供給装置
35 コンベアケース
36 螺旋コンベア
37 プーリ
38 穀粒供給口
39 分離板
40 精品排出シュート
41 本体
42 ホッパー部
43 供給口
44 観察窓
45 吸引口
46 ニ次空気取入孔
47 緩衝板
48 主モータ
49 供給装置用モータ
50 開閉扉



【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設した除糠精穀筒内に回転可能に設けた主軸に、攪拌ロール及び上送式螺旋ロールを軸装するとともに、前記除糠精穀筒の下部を穀粒供給部、上部を穀粒排出部にそれぞれ形成し、さらに、前記攪拌ロールと前記除糠精穀筒との間隙を精白室、除糠精穀筒と円筒型ケーシングとの間隙を集糠室にそれぞれ形成した竪型精穀機であって、
前記攪拌ロールは、外周面に該攪拌ロールとほぼ同じ長さを有する棒状抵抗部材を複数本固着するとともに、多数の抵抗角柱をロール表面に散りばめて固着してなり、
前記除糠精穀筒は、多角形状の除糠精穀網によって形成され、該多角形状の除糠精穀網の全ての面に円形の打ち抜き孔が多数穿設してあり、
前記集糠室底部に配置される複数の糠掻き出し羽根を介して精品穀粒を機外に排出すべく、前記穀粒排出部には、精品穀粒を前記集糠室底部に落下させるための落下樋を接続する一方、該落下樋には、穀粒の吐出を規制して搗精度合いを調節する抵抗調節装置を設けたことを特徴とする竪型精穀機。
【請求項2】
前記集糠室底部には、その一部に糠排出口を穿設するとともに、該糠排出口に排糠ダクトが連通され、前記集糠室底部に配置した複数の糠掻き出し羽根の回転による掻き出しによって精品穀粒及び糠を機外に排出してなる請求項1記載の竪型精穀機。
【請求項3】
前記集糠室底部と連通する排糠ダクトの下流側には、さらに精品アスピレータを接続してなる請求項2記載の竪型精穀機。
【請求項4】
前記精品アスピレータは、略四角筒状の本体と、該本体の下部に接続される漏斗状のホッパー部とから構成され、前記本体の一側壁には、前記排糠ダクトと接続する供給口を穿設するとともに、前記本体上部の角部には、前記本体内を負圧に保つ吸引機と連通するための吸引口を穿設し、さらに、前記本体内部には、前記供給口から供給される精品穀粒の落下衝撃を緩和するための緩衝板を設けてなる請求項3記載の竪型精穀機。
【請求項5】
前記多角形状の除糠精穀網に穿設される多数の円形の打ち抜き孔は、その径の大きさを6〜10mmに設定してなる請求項1から4のいずれかに記載の竪型精穀機。
【請求項6】
前記攪拌ロール表面に固着される多数の多数の抵抗角柱は、一辺が約16mm、高さが約10mmの矩形柱に形成してなる請求項1から5のいずれかに記載の竪型精穀機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−262048(P2009−262048A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114359(P2008−114359)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】