説明

端子圧着方法及び端子圧着装置

【課題】加圧圧縮されて一体化された端子及び素線の形状を単純にすることができる端子圧着方法を提供する。
【解決手段】端子圧着装置で端子5の圧着を行う場合には、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31を押し当て、ワイヤバレル51の前端部を加圧圧縮する。続いて、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31を押し当てたまま、クリンパ32を押し当てて、ワイヤバレル51の前後方向の中央部を加圧圧縮する。続いて、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31,32を押し当てたまま、ワイヤバレル51の上面にクリンパ33を押し当てて、ワイヤバレル51の後端部を加圧圧縮する。その後、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31〜33を押し当てたまま、インシュレーションバレル52の上面にクリンパ34を押し当て、芯線と共にインシュレーションバレル52を加圧圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の芯線と共に端子をクリンパで加圧圧縮して、端子を芯線に圧着接続する端子圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の端末で剥き出しにされた芯線に端子を圧着すると、端子と共に加圧圧縮された芯線が潰れて先端側に伸びる。芯線が潰れて細くなると、加圧圧縮による固着力を十分に得られず、機械的強度も弱くなる虞があった。このため、下記の特許文献1に記載のように、電線の端末で剥き出しにされた芯線を、端子が備える一対の圧着片で挟み込んで圧着接続する際に、素線の潰れを抑える方法が考えられている。
【0003】
この種の端子圧着方法には、特許文献2に記載のように端子及び芯線を複数のクリンパで加圧圧着するものがある。特許文献2に記載の方法では、電線の軸方向に並べて配置された全ての分割クリンパを同じ高さまで押し下げて、電線と芯線接続部とを全体的に均等に圧着接続した後、一部の分割クリンパを更に押し下げて芯線圧着部を局所的に更に強く押圧し、端子を電線に圧着接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−012341号公報
【特許文献2】特開2008−181695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧着接続されて一体化された端子及び素線には、接触信頼性を高めるための塗布剤の塗布等の後処理が施されるが、圧着接続された素線の先端が広がったり、端子の表面に凹凸が形成される等して圧着接続された端子及び素線の外観形状が複雑になると、後処理をむらなく行うのが難しく、また、コネクタハウジングへの装着時に突出部分がハウジングに引っ掛かる等不具合が生じやすかった。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、芯線端面の先端側への伸びや細りを抑えて芯線に端子を強く圧着接続できるものの、加圧圧縮されて素線と一体化された端子の外観形状を単純するのには不十分であった。
【0007】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決することのできる端子圧着方法及び端子圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の端子圧着方法は、電線の芯線を端子と共にクリンパで加圧圧縮して、前記端子を前記芯線に圧着接続する端子圧着方法であって、複数の前記クリンパを前記芯線の先端側から順に前記端子に押し当てて前記端子を前記芯線と共に加圧圧縮する加圧工程と、前記加圧工程で前記端子を前記芯線と共に加圧圧縮した後に、前記クリンパによる前記端子及び前記芯線の加圧圧縮を解く加圧解除工程とを備えることを特徴とする。
また、本発明の端子圧着装置は、端子を圧着する芯線の延伸方向に沿って並べて配置された複数のクリンパと、前記芯線の先端側に配置された前記クリンパから順に前記端子に押し当てて前記端子を前記芯線と共に加圧圧縮した後、前記端子に押し当てた全ての前記クリンパを前記端子から離間させて加圧を解く加圧手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯線の先端側への伸びを抑えつつ端子及び芯線を均一に加圧圧縮することで加圧面を平坦に揃え、加圧圧縮された端子及び素線の形状をコントロールして単純にすることができる。このため、後処理をむらなく行い、また、端子の装着時に生じる突出部分の引っ掛かかり等の不具合も回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の端子圧着装置を模式的に示す側面図である。
【図2】図1に示す端子圧着装置を用いた端子圧着方法を示す図であり、複数のクリンパで端子を順に加圧圧縮していく様子を示している。
【図3】1つのクリンパで一度に端子を加圧圧縮する従来の方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の端子圧着装置1を模式的に示す側面図である。図2は、端子圧着装置1を用いた端子圧着方法を示す側面図であり、クリンパ31〜34で端子5を順に加圧圧縮していく様子を示している。図3は、1つのクリンパ20で一度に端子5を加圧圧縮する方法を示す側面図である。なお、以下の説明で用いる上下及び前後の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0012】
図1に示すように、端子圧着装置1は、支持部21に支持されたクリンパ31〜34と、クリンパ31〜34を端子5に押し当てて端子5を加圧する加圧手段7とを備えている。クリンパ31〜34は、載置部22に載置された端子5の延伸方向に沿って並んで、支持部21に支持されている。加圧手段7は、端子5の前端側に配置されたクリンパ31から順に、図1に太矢印で示すように端子5に押し当て、端子5を芯線61と共に加圧圧縮した後、端子5に押し当てた全てのクリンパ31〜34を端子5から離間させて端子5の加圧を解く。
【0013】
クリンパ31〜34で加圧される端子5は、ワイヤバレル51の後端にインシュレーションバレル52を備えて構成されている。図示しないが、ワイヤバレル51の前方には、相手側端子に接続される端子箱が備えられている。端子5は、電線6の被覆62を剥がされて剥き出しにされた芯線61を内側に収納した状態で、芯線61に圧着接続される。
【0014】
次に、端子圧着装置1を用いて電線6の芯線61に端子5を圧着接続する端子圧着方法について、図2を参照して説明する。
【0015】
端子圧着装置1で端子5の圧着を行う場合には、まず、図2(a)に示すように、載置部22に載置されて電線6を収納したワイヤバレル51の上面にクリンパ31を押し当て、電線6の芯線61と共にワイヤバレル51の前端部を加圧圧縮する。このとき、端子5は、図2(a)に太矢印で示すように、芯線61と共に前後方向に伸びる。
【0016】
続いて、図2(b)に示すように、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31を押し当てたまま、クリンパ31の押当位置よりも後方に位置するワイヤバレル51の上面にクリンパ32を押し当て、ワイヤバレル51の前後方向の中央部を芯線61と共に加圧圧縮する。このとき、端子5及び芯線61は、クリンパ31で既に加圧圧縮されている前端側への変形を規制されて、図2(b)に太矢印で示すように後方向に伸びる。
【0017】
続いて、図2(c)に示すように、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31,32を押し当てたまま、クリンパ32の押当位置よりも後方に位置するワイヤバレル51の上面にクリンパ33を押し当て、ワイヤバレル51の後端部を芯線61と共に加圧圧縮する。このとき、端子5及び芯線61は、クリンパ31,32で既に加圧圧縮されている前端側への変形を規制されて、図2(c)に太矢印で示すように後方向に伸びる。
【0018】
ワイヤバレル51の上面に前端側からクリンパ31〜33がこの順で押し当てられることで、電線6の芯線61と共に端子5が加圧圧縮されて、芯線61が加締められる。
【0019】
その後、同じく図2(c)に示すように、ワイヤバレル51の上面にクリンパ31〜33を押し当てたまま、インシュレーションバレル52の上面にクリンパ34を押し当てて、芯線61と共にインシュレーションバレル52を加圧圧縮し、芯線61を加締める。
【0020】
クリンパ31〜34による加圧圧縮が済んだら、クリンパ31〜34を上昇させて、ワイヤバレル51の上面からクリンパ31〜33を、インシュレーションバレル52の上面からクリンパ34をそれぞれ離間させて、端子5に対する加圧を解く。
【0021】
このように、芯線61の先端が収納されるワイヤバレル51の前端側から後端側にかけて、クリンパ31〜34を順に押し当てて加圧圧縮を行うことで、ワイヤバレル51に加締めらられた芯線61とワイヤバレル51とが既に加圧圧縮されている前端側に変形するのを抑えることができる。
【0022】
例えば、図3(a)に太矢印で示すように、端子5の上面に1つのクリンパ20を押し当てて、端子5を芯線61と共に加圧圧縮する場合には、端子5の前端から後端にかけてが同時に芯線61と共に潰れて変形することから、図3(b)に示すように、端子5及び芯線61が前端側及び後端側に変形することとなる。この結果、芯線61が端子5の前端側から突出して先端を広げた状態となる。
【0023】
これに対して、端子5の前端側から順にクリンパ31〜34を押し当てて加圧圧縮を行う本実施形態での端子圧着方法では、クリンパ31〜33による加圧圧縮が既に済んでいる前端側への端子5及び芯線61の変形が妨げられることから、端子5及び芯線61は主に後端側に変形することとなる。このため、端子5の前端側からの芯線61の突出を抑えることができる。
【0024】
しかも、降下位置を等しくしてクリンパ31〜34で端子5及び芯線61を加圧できることから、クリンパ31〜34による加圧面を平坦にして芯線61に圧着接続された端子5の表面に生じる凹凸を抑えることができる。この結果、圧着接続された端子5及び芯線61の外観形状をコントロールして単純化することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、クリンパ31〜34を芯線61の先端側から順に端子5に押し当てて端子5を芯線61と共に加圧圧縮した後に、クリンパ31〜34による加圧圧縮を解くことで、芯線61の先端側への伸びを抑えつつ端子5の加圧面を平坦にすることができる。このため、加圧圧縮されて一体化された端子5及び素線61の形状を単純にして、後処理の手間を軽減し、端子の装着時に生じる突出部分の引っ掛かかり等の不具合も防止することが可能となる。
【0026】
上記実施形態では、クリンパ31〜34で端子5を前端側から順に芯線61と共に加圧圧縮した場合について説明した。しかしながら、端子5の加圧圧縮に用いるクリンパの数量は、少なくとも端子5の前端側と後端側とを別個に加圧圧縮できるのであれば任意である。
【0027】
例えば、上記実施形態では、クリンパ33でワイヤバレル51の後端部を加圧圧縮した後にクリンパ34でインシュレーションバレル52を加圧圧縮した場合について説明したが、ワイヤバレル51の後端部だけでなくインシュレーションバレル52も一緒にクリンパ33で加圧圧縮してもよい。また、クリンパ33による加圧圧縮とクリンパ34による加圧圧縮とは同時に行ってもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、載置部22に設置された端子5を上面側からクリンパ31〜34で加圧圧縮した場合について説明したが、端子5をクリンパ31〜34で加圧圧縮する方向は任意である。例えば、上側及び下側に対になって備えられたクリンパで、端子5を上面側及び下面側から挟み込むようにして加圧圧縮しても、更に左右の両側からも加圧圧縮してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 端子圧着装置
21 支持部
22 載置部
31〜34 クリンパ
5 端子
51 ワイヤバレル
52 インシュレーションバレル
6 電線
61 芯線
62 被覆
7 加圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の芯線を端子と共にクリンパで加圧圧縮して、前記端子を前記芯線に圧着接続する端子圧着方法であって、複数の前記クリンパを前記芯線の先端側から順に前記端子に押し当てて前記端子を前記芯線と共に加圧圧縮する加圧工程と、前記加圧工程で前記端子を前記芯線と共に加圧圧縮した後に、前記クリンパによる前記端子及び前記芯線の加圧圧縮を解く加圧解除工程とを備えることを特徴とする端子圧着方法。
【請求項2】
端子を圧着する芯線の延伸方向に沿って並べて配置された複数のクリンパと、前記芯線の先端側に配置された前記クリンパから順に前記端子に押し当てて前記端子を前記芯線と共に加圧圧縮した後、前記端子に押し当てた全ての前記クリンパを前記端子から離間させて加圧を解く加圧手段とを備えることを特徴とする端子圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−40255(P2011−40255A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185802(P2009−185802)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】