説明

端子用加熱装置

【課題】本発明は、回路基板に実装される他の電子部品などに熱的ダメージを与えることなく、対象となる半導体モジュールの取り外し/取り付けが容易かつ確実に行うことができる端子用加熱装置を提供する。
【解決手段】所定の回路パターンを有する回路基板20に実装されている半導体モジュール10の基板端子12を加熱するための端子用加熱装置で1あって、半導体モジュール10の基板端子が、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子13Aと、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子13Bとを有しており、主回路用端子13Aと制御用端子13Bとをそれぞれ異なる温度で同時に加熱するために、個別に温度調整可能な少なくとも複数の加熱ユニットを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置などの回路基板に実装されているパワー半導体モジュールの基板端子を加熱する端子用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置などの回路基板に実装されているパワー半導体モジュールは、制御回路の導体部に半田付けされる制御用端子(信号用端子)と、主回路(電源回路)の導体部に半田付けされる主回路用端子(電源用端子)とを有している。図7に示すように、制御用端子13Bは幅狭かつ薄肉形状で数10mAの電流容量を有し、主回路用端子13Aは幅広かつ厚肉で100Aを超える電流容量を有するものが一般的である。このようなパワー半導体モジュール10を回路基板20から取り外したり、取り付けたりするには、回路基板20のパワー半導体モジュール10の近傍に実装されている電子部品を熱劣化させずにパワー半導体モジュール10の全ての局部的に且つ一度に温めることが必要とされている。
【0003】
従来、パワー半導体モジュール10を取り外す際には、基板端子12を加熱するための加熱装置として、図7に示す半田鏝40や、図8に示す半田槽41が用いられていた。半田鏝40は、部分的に加熱することができるが、基板端子12が多数存在する場合に、多数の基板端子12を同時に加熱することができないという問題があった。また、半田槽41は、半田プール42内で多数の基板端子12を同時に加熱することが可能であるが、必要以上の広範囲の部分が同時に加熱されるため、回路基板20上でパワー半導体モジュール10の近傍に実装されている既実装部品に熱的ダメージを与えたりする問題があった。
【0004】
部分的な加熱を可能とした局所半田付け装置の一例として、特許文献1で開示されているものが知られている。特許文献1の段落番号[0025]には、「・・・溶融はんだ11を収容したはんだ槽12の内部に、複数の可動局所ノズル13が設けられたものであり、これらの各可動局所ノズル13は、それぞれ被はんだ付け物14に対しそれぞれ進退自在に設けられ、加圧された溶融はんだを被はんだ付け物14の下面に案内する」と記載されている。また、段落番号[0026]には、「各可動局所ノズル13は、それらの上端開口より溶融はんだをオーバーフローさせても良いが、オーバーフローさせずに上端開口で止めておいても良い。さらに、各可動局所ノズル13は、それらの上端開口を被はんだ付け物14に接触させても良いが、被はんだ付け物14の下面に接近させるのみで接触させなくても良い」と記載されている。また、段落番号[0027]には、「はんだ槽12および被はんだ付け物14の少なくとも一方は上下動可能に設けられ、さらに、はんだ槽12および被はんだ付け物14は、相対的に被はんだ付け物14の平面方向、すなわちX方向およびY方向に移動可能に設けられている」と記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−167661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パワー半導体モジュール10のように制御用端子13Bと主回路用端子13Aとが混在したものでは、端子によって電流容量が異なるため、電流容量の大きい主回路用端子13Aに温度設定を合わせて、多数の端子を同時に加熱すると、電流容量の小さい制御用端子13Bに熱的ダメージが与えられる恐れがあった。
【0007】
本発明は、回路基板に実装される他の電子部品などに熱的ダメージを与えることなく、対象となる半導体モジュールの取り外し/取り付けを容易かつ確実に行うことができる端子用加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、所定の回路パターンを有する回路基板に実装されている半導体モジュールの基板端子を加熱するための端子用加熱装置であって、前記半導体モジュールの前記基板端子が、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子と、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子とを有し、前記主回路用端子と前記制御用端子とをそれぞれ異なる温度で同時に加熱するために、個別に温度調整可能な複数の加熱手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の端子用加熱装置において、個々の加熱手段は、発熱体と、該発熱体の温度を調整する温度制御部と、前記主回路用端子と前記制御用端子に対応する位置に配設された加熱部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の端子用加熱装置において、前記加熱部が半田鏝の鏝先相当部又は半田槽の半田プール相当部であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の基板接続端子部用加熱装置において、前記複数の加熱手段は、前記半導体モジュールの仕様に応じて組み立て可能なユニットであり、該ユニットは前記加熱部が前記主回路用端子と前記制御用端子の位置に応じて配置されるように組み立てられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の如く、本発明によれば、個別に温度調整可能な少なくとも二つの加熱手段により、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子と、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子とをそれぞれ異なる温度で同時に加熱することができる。このため、回路基板に実装される既実装部品などに熱的ダメージを与えることなく、対象となる半導体モジュールの取り外しを容易かつ確実に行うことができる。
【0013】
個々の加熱手段に備わる発熱体の温度を温度制御部により調整することにより、主回路用端子と制御用端子とをそれぞれ異なる温度で同時に加熱することができる。
【0014】
加熱部が半田鏝の鏝先相当部である場合には、鏝先相当部を主回路用端子と制御用端子に接触させることにより、主回路用端子と制御用端子をそれぞれ異なる温度に同時に加熱することができる。また、加熱部が半田槽の半田プール相当部である場合には、主回路用端子と制御用端子の先端を半田プール相当部に入れることにより、主回路用端子と制御用端子をそれぞれ異なる温度に同時に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。本発明に係る端子用加熱装置の第1の実施形態が図1に示されている。本実施形態の端子用加熱装置1は、モータ駆動装置の回路基板に実装されているパワー半導体モジュール10の基板端子12を加熱して、回路基板20からパワー半導体モジュール10を外したり、回路基板20にパワー半導体モジュール10を半田付けしたりするために用いることができる。
【0016】
パワー半導体モジュール10は、主回路やパワー半導体を駆動するための制御回路や保護回路(電圧・電流・温度)を備えた半導体デバイスであり、モータ駆動装置の回路基板20に多数の基板端子12を介して電気的に接続するようになっている。基板端子12は、回路基板20に半田接続されるようになっている。基板端子12は、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子13Aと、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子13B(図7参照)とを有している。電流容量の大きい主回路用端子13Aは、厚肉で幅広に形成されている。電流容量の小さい制御用端子13Bは、薄肉で幅狭に形成されている。図1や図7に示すように、多数の主回路用端子13A及び制御用端子13Bは、所定のピッチで配列されている。
【0017】
端子用加熱装置1は、独立に温度制御可能な2つのヒータ5(図3参照)を有する装置本体2と、装置本体2の上面に突設され、ヒータ(発熱体)5で加熱されてパワー半導体モジュール10の基板端子12を加熱する2つの鏝先部(加熱部)6とを備えている。装置本体2は、箱状の筐体と、共用電源と、共用電源に接続する2つのヒータ5と、個々のヒータ5の温度を調整する2つの温度制御部7とを備えている。個々のヒータ5と、温度制御部7と、鏝先部6とはユニット化され、加熱ユニットを構成している。すなわち、本実施形態の端子用加熱装置1は、鏝先部6を個々に温度調節可能な2つの加熱ユニットを有するものであるが、2つの加熱ユニットがパワー半導体モジュール10の基板端子12の位置に応じて、固定的に配置されている。
【0018】
加熱方式は特定の方法に限定されるものではないが、例えば、ヒータ5としての抵抗線に電流を流して加熱し、発生した熱を輻射などによって鏝先部6に伝達する方法や、ヒータ5を鏝先部6に挿入して熱を直接に鏝先部6に伝達する方法を適用することができる。また、高周波電源によって高周波コイルに電流を流し、鏝先部6に挿入されるヒータとしての加熱チップの表面に形成された磁性体層との間でジュール熱を発生させて、鏝先部6を加熱することも可能である。高周波誘導加熱方法は、熱伝達率が良く、小型化が可能である利点がある。
【0019】
温度制御部7は、内部にヒータ5の温度を制御する制御回路を有している。制御回路は、図示しないセンサからの検出信号に基づいて電源の電圧又は電流を調整し、ヒータ5の温度を制御する。センサには、例えば、コンスタンス線と鏝先部6の表面に形成された鉄めっきとから構成される熱電対を適用することができる。
【0020】
鏝先部6は、銅合金を構成材料とし、パワー半導体モジュール10の基板端子列の長さに対応する寸法に形成されている。鏝先部6の先端側は、熱を部分に集中させるために、先端側に向かって先細形状に形成されている。パワー半導体モジュール10の多数の基板端子12は、図7に示すように、一列の主回路端子13Aと、L字状の制御用端子列13Bとがコの字状に配列されているため、一体化されている2つの加熱ユニットの鏝先部8a,8bは、組み合わされてコの字状に配置されている。
【0021】
個々の鏝先部8a,8bの温度は、温度制御部7によりそれぞれ独立に制御されるようになっているため、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子13Aと、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子13Bとをそれぞれ異なる温度で同時に加熱することができる。これにより、対象となる半導体モジュール10の取り外しを容易かつ確実に行うことができる。
【0022】
図2には、第一の実施形態の端子用加熱装置の変形例が示されている。この変形例の端子用加熱装置1Aは、3つの加熱ユニット3が分割可能に連結されている点で、図1に示す一体化された端子用加熱装置1と異なっている。図3に示すように、個々の加熱ユニット3は、ユニット本体4と、電源と、電源に接続するヒータ5と、ヒータ5の温度を調整する温度制御部7と、パワー半導体モジュール10の基板端子12を加熱する鏝先部9とを備えている。鏝先部9は、基部側の鏝取付部9aを介してユニット本体4に固定されている。ヒータ5は、鏝取付部9aの周囲に設けられている。個々の加熱ユニット3の配置は任意であるが、パワー半導体モジュール10の基板端子12に対応する位置に配置される。この変形例では、加熱ユニット3の配置される位置が固定的でないため、パワー半導体モジュール10の仕様に柔軟に対応することができる。
【0023】
次に、端子用加熱装置の第二の実施形態について説明する。図4に示すように、本実施形態の端子用加熱装置30は、第1の実施形態の端子用加熱装置1の鏝先部6に代えて半田プール36を備えたものである。すなわち、本実施形態の端子用加熱装置30は、独立に温度制御可能な2つのヒータ35を有する装置本体32と、装置本体32の上面に設けられた二つの半田プール(加熱部)36を備えている。また、端子用加熱装置30は、半田プール36を個々に温度調節可能な2つの加熱ユニットを有しており、2つの加熱ユニットはパワー半導体モジュール10の基板端子12の位置に応じて、固定的に配置されている。ヒータ35は、半田プール36内に設けられており(図6参照)、溶融半田が直接に加熱されるようになっている。その他の端子用加熱装置30の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0024】
半田プール36は、溶融半田を収容するために樋状を成しており、装置本体32の上面でパワー半導体モジュール10の基板端子12に対応する位置に配置されている。L字状の半田プール38aは、パワー半導体モジュール10の制御用端子13Bに対応する位置に配置され、I字状の半田プール38bはパワー半導体モジュール10の主回路用端子13Aに対応する位置に配置されている。L字状とI字状の二つの半田プール38a,38bは、それぞれが異なるヒータ35で所定の温度に加熱されるようになっている。回路基板20からパワー半導体モジュール10を取り外す場合は、半田プール36の中で制御用端子13B及び主回路用端子13Aをそれぞれ異なる温度に加熱することにより、制御用端子13B及び主回路用端子13Aの半田を同時に溶かすことができ、周囲の既実装部品を熱劣化させることなく、回路基板20からパワー半導体モジュール10を取り外すことができる。
【0025】
図5は、第二の実施形態の端子用加熱装置の変形例が示されている。この変形例の端子用加熱装置30Aは、第一の実施形態の端子用加熱装置1と同様にして、パワー半導体モジュール10の仕様に柔軟に対応することができるように、3つの加熱ユニット33が分割可能に連結されている。図6に示すように、個々の加熱ユニット33は、ユニット本体34と、電源と、電源に接続するヒータ35と、ヒータ35の温度を調整する温度制御部37と、パワー半導体モジュール10の基板端子12を加熱する半田プール39とを備えている。個々の加熱ユニット33は、パワー半導体モジュール10の基板端子12に対応する位置に配置され、連結されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0026】
以上のように本発明によれば、個別に温度調整可能な複数の加熱ユニットにより、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子と、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子とをそれぞれ異なる温度で同時に加熱することができるから、対象となる半導体モジュールの基板端子だけを加熱して、半田を溶かすことができ、半導体モジュールの取り外しを容易かつ確実に行うことができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。第1,2の実施形態では、回路基板20からパワー半導体モジュール10を外す例が示されているが、回路基板20にパワー半導体モジュール10を半田付けするために用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る端子用加熱装置の第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態の端子用加熱装置の変形例を示す斜視図である。
【図3】図3に示す加熱ユニットの拡大斜視図である。
【図4】本発明に係る端子用加熱装置の第二の実施形態を示す斜視図である。
【図5】第二の実施形態の端子用加熱装置の変形例を示す斜視図である。
【図6】図5に示す加熱ユニットの拡大斜視図である。
【図7】端子用加熱装置の従来の一例を示す斜視図である。
【図8】端子用加熱装置の従来の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1,1A,30,30A 端子用加熱装置
3,33 加熱ユニット
5 ヒータ
6,8a,8b,9 鏝先部
10 半導体モジュール
13A 主回路用端子
13B 制御用端子
30 回路基板
36,38a,38b 半田プール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回路パターンを有する回路基板に実装されている半導体モジュールの基板端子を加熱するための端子用加熱装置であって、
前記半導体モジュールの前記基板端子が、主回路に接続する電流容量の大きい主回路用端子と、制御回路に接続する電流容量の小さい制御用端子とを有しており、前記主回路用端子と前記制御用端子とをそれぞれ異なる温度で同時に加熱するために、個別に温度調整可能な複数の加熱手段を備えた、端子用加熱装置。
【請求項2】
個々の加熱手段は、発熱体と、該発熱体の温度を調整する温度制御部と、前記主回路用端子と前記制御用端子に対応する位置に配設された加熱部とを備えている、請求項1に記載の端子用加熱装置。
【請求項3】
前記加熱部が半田鏝の鏝先相当部又は半田槽の半田プール相当部である、請求項2に記載の端子用加熱装置。
【請求項4】
前記複数の加熱手段は、前記半導体モジュールの仕様に応じて組み立て可能なユニットであり、該ユニットは前記加熱部が前記主回路用端子と前記制御用端子の位置に応じて配置されるように組み立てられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の端子用加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−200170(P2009−200170A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39139(P2008−39139)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】