説明

端子金具及び端子金具の電線への接続方法

【課題】端子金具のベントアップの発生を防止する。
【解決手段】端子金具10は、電線90の端末にて露出された芯線部93に圧着されるワイヤバレル13を備える。ワイヤバレル13は、芯線部93に対してその表側からかしめ付けられる表側かしめ片21とその裏側からかしめ付けられる裏側かしめ片22とを有し、芯線部93への圧着前のオープン状態において軸方向と直交する断面形状がS字状に形成されている。表側かしめ片21及び裏側かしめ片22の曲げ動作に伴う圧縮力がワイヤバレル13の表裏両側に均等に付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具及び端子金具の電線への接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の端子金具が開示されている。これは、前後方向に細長く延びて電線を支持する基板部と、基板部の前側に位置して相手側接続部と電気的に接続される箱型の接続部と、基板部の後側に位置して電線の端末にて露出された芯線に圧着されるワイヤバレルとを備えている。ワイヤバレルは基板部から同じ側へ対向状に突出する一対のかしめ片を有している。
【特許文献1】特開2003−217784公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワイヤバレルの芯線への圧着に際し、アンビル(下金型)とクリンパ(上金型)との間にワイヤバレルをセットして、アンビルとクリンパとを互いに接近させることにより、両かしめ片の曲げ動作を伴いながらワイヤバレルをかしめる加工が行われる。しかるにこの場合、両かしめ片の曲げ動作は専らクリンパ側で行われ、基板部の両面のうち、クリンパ側を向く表面側には圧縮力が作用する一方、アンビル側を向く裏面側には引張力が作用するため、基板部が前後方向に伸びつつ反り変形するベントアップが発生することがある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具のベントアップの発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、前記電線の端末にて露出された芯線に圧着されるワイヤバレルを備えた端子金具であって、前記ワイヤバレルは、前記芯線に対してその表側からかしめ付けられる表側かしめ片とその裏側からかしめ付けられる裏側かしめ片とを有し、前記芯線への圧着前のオープン状態において軸方向と直交する断面形状がS字状に形成されている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記表側かしめ片と前記裏側かしめ片とは、前記芯線の表裏方向と直交する横方向に並んで配置されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の端子金具の電線への接続方法であって、互いに対向する一対の可動型の間に、オープン状態の前記ワイヤバレルを配置し、次いで前記両可動型を移動して互いに接近させることにより、前記芯線に対する前記表側かしめ片及び前記裏側かしめ片のかしめ動作をほぼ同時に進行させるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
ワイヤバレルは、芯線に対してその表側からかしめ付けられる表側かしめ片とその裏側からかしめ付けられる裏側かしめ片とを有し、芯線への圧着前のオープン状態において軸方向と直交する断面形状がS字状に形成されているから、表側かしめ片及び裏側かしめ片の曲げ動作に伴う圧縮力が表裏両側に付与されることとなり、裏側に引張力が作用するのが回避される結果、端子金具のベントアップの発生が防止される。
【0009】
<請求項2の発明>
表側かしめ片と裏側かしめ片とは芯線の表裏方向と直交する横方向に並んで配置されているから、芯線の表裏方向と平行する縦方向に並んで配置されている場合に比べ、芯線へのかしめ動作の円滑性が確保される。
【0010】
<請求項3の発明>
両可動型が接近することで、芯線に対する表側かしめ片及び裏側かしめ片のかしめ動作がほぼ同時に進行するから、両可動型からワイヤバレルの表裏両側に均等な圧縮力が付与されることとなり、端子金具のベントアップの発生がより確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。本実施形態に係る端子金具10は、銅又は銅を多く含む銅合金からなる導電性の金属板を曲げ加工などして一体に形成され、電線90の端末に接続されている。電線90は、アルミニウム又はアルミニウムを多く含むアルミニウム合金からなるアルミニウム素線を撚り合せた芯線91と、芯線91の周りを覆う樹脂製の絶縁被覆92とで構成されている。電線90の端末には、絶縁被覆92の皮剥ぎによって露出された芯線部93が形成されている。
【0012】
そして、端子金具10は、図1に示すように、軸方向(前後方向)に細長く延びる帯板状の基板部11と、基板部11の前端側に位置して図示しない相手側端子金具の雄タブを受ける筒状の本体部12と、基板部11の中央よりやや後方に位置して電線90の端末にて露出された芯線部93に圧着されるワイヤバレル13と、基板部11の後端側に位置して電線90の絶縁被覆92に圧着されるインシュレーションバレル14とを備えて構成されている。
【0013】
基板部11は、本体部12、ワイヤバレル13及びインシュレーションバレル14の底部を構成しており、その表面は電線90を前後方向に沿って支持する支持面15とされている。本体部12内には相手側端子金具と弾性的に接触可能な弾性接触片(図示せず)が設けられている。
【0014】
インシュレーションバレル14は、基板部11の幅方向両端から突出する一対の圧着片16を有している。両圧着片16はいずれも基板部11の表側に突出する形態とされている。インシュレーションバレル14は、絶縁被覆92への圧着前のオープン状態において、軸方向と直交する断面形状がU字状に形成されている。
【0015】
ワイヤバレル13は、芯線部93に対してその表側(支持面15側)からかしめ付けられる表側かしめ片21と、芯線部93に対してその裏側(支持面15とは反対面側)からかしめ付けられる裏側かしめ片22とを有している。表側かしめ片21と裏側かしめ片22とは、水平面に対して傾斜する向きにねじられた基板部11の幅方向両端から互いに逆向きに突出することで表裏方向と直交する横方向に並んで配置され、軸中心(基板部11の幅方向中心)を中心とするほぼ点対称な形状をなしている。ワイヤバレル13は、図3に示すように、芯線部93への圧着前のオープン状態において、軸方向と直交する断面形状がS字状に形成されている。また、ワイヤバレル13は、図2に示すように、芯線部93への圧着後のクローズ状態において、表側かしめ片21が芯線部93の一側半分を内包しつつ図示左回りにほぼ円状に回曲されるとともに、裏側かしめ片22が芯線部93の他側半分を内包しつつ図示右回りにほぼ円状に回曲されることにより、軸方向と直交する断面形状が8の字状に形成されている。
【0016】
次に本実施形態に係る端子金具10の作用効果を説明する。
芯線部93にワイヤバレル13を圧着するにあたり、ワイヤバレル13を横方向に対向して配置された一対の可動型60間にセットし(図3を参照)、オープン状態の表側かしめ片21の表側に芯線部93を配置するとともに、オープン状態の裏側かしめ片22の裏側に芯線部93を配置する。両可動型60の内面は、互いに同形状をなす凹曲面状の押圧面61とされている。
【0017】
続いて、両可動型60を移動させて互いに接近させ、両可動型60の押圧面61間にワイヤバレル13をかしめる。このとき、両可動型60の移動速度はほぼ同じ速度とされ、表側かしめ片21及び裏側かしめ片22のかしめ動作がほぼ同時に進行するように設定されている。
【0018】
こうしてワイヤバレル13が正規にかしめられると、表側かしめ片21の先端がワイヤバレル13の軸中心に表側から接近するようにして芯線部93の表面側にかしめ付けられ、裏側かしめ片22の先端がワイヤバレル13の軸中心に裏側から接近するようにして芯線部93の裏面側にかしめ付けられ、ワイヤバレル13が全体として断面8の字状を呈するようになる(図2を参照)。
【0019】
以上説明したように本実施形態によれば、ワイヤバレル13が、芯線部93に対してその表側からかしめ付けられる表側かしめ片21とその裏側からかしめ付けられる裏側かしめ片22とを有し、芯線部93への圧着前のオープン状態において軸方向と直交する断面形状がS字状に形成されているから、表側かしめ片21及び裏側かしめ片22の曲げ動作に伴う圧縮力がワイヤバレル13の表裏両側に付与されることとなり、従来と違って、ワイヤバレル13の裏側に引張力が作用するのが回避される結果、端子金具10のベントアップの発生が防止される。
【0020】
また、表側かしめ片21と裏側かしめ片22とは芯線部93の表裏方向と直交する横方向に並んで配置されているから、芯線部93の表裏方向と平行する縦方向に並んで配置されている場合に比べ、芯線部93へのかしめ動作の円滑性が確保される。
【0021】
さらに、両可動型60が接近することで、芯線部93に対する表側かしめ片21及び裏側かしめ片22のかしめ動作がほぼ同時に進行するから、両可動型60からワイヤバレル13の表裏両側に均等な圧縮力が付与されることとなり、端子金具10のベントアップの発生がより確実に防止される。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)オープン状態にあるワイヤバレルが断面S字状に形成されていればよく、例えば、表側かしめ片と裏側かしめ片とは互いに異形状であっても構わない。
(2)電線は、銅又は銅を多く含む銅合金からなる銅素線を有する銅電線であってもよい。
(3)本発明は、雄タブを有する雄型端子金具や環状の本体部を有するLA端子にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る端子金具の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】一対の可動型の間にワイヤバレルをセットした状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10…端子金具
11…基板部
13…ワイヤバレル
21…表側かしめ片
22…裏側かしめ片
90…電線
92…芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記電線の端末にて露出された芯線に圧着されるワイヤバレルを備えた端子金具であって、
前記ワイヤバレルは、前記芯線に対してその表側からかしめ付けられる表側かしめ片とその裏側からかしめ付けられる裏側かしめ片とを有し、前記芯線への圧着前のオープン状態において軸方向と直交する断面形状がS字状に形成されていることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記表側かしめ片と前記裏側かしめ片とは、前記芯線の表裏方向と直交する横方向に並んで配置されている請求項1記載の端子金具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の端子金具の電線への接続方法であって、
互いに対向する一対の可動型の間に、オープン状態の前記ワイヤバレルを配置し、次いで前記両可動型を移動して互いに接近させることにより、前記芯線に対する前記表側かしめ片及び前記裏側かしめ片のかしめ動作をほぼ同時に進行させることを特徴とする端子金具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−62099(P2010−62099A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229117(P2008−229117)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】