説明

端子金具及び端子金具群

【課題】アース端子などに用いられる端子金具において、回り止め防止機能を確保しつつ軽量化を実現する。
【解決手段】図6(a)は、打ち抜き成型された状態のアース端子10を示しており、3個のアース端子10がキャリア50に一体に形成され端子群11を構成している。つぎに、複数のアース端子10が一体に取り付いている状態の端子群11が、自動圧着機(図示せず)に投入され、図6(b)に示すように、後端係止片30の係止片端部30aがキャリア50から切り離される。つづいて、図6(c)に示すように、アース端子10の後端係止片30が下側に折り曲げられる。そして図6(d)に示すように芯線バレル25及び被覆バレル26がかしめられアース線82が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具及び端子金具群に係り、アース線などを車体のパネル等に取り付けるときに用いられる端子金具および複数の端子金具が一体に形成されている端子金具群に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は多くの電装装置を搭載しており、それに伴い信号の送受信や電力供給のために、多くのワイヤーハーネスが配設されている。そして、近年の自動車は、電気がなくしては成立しないと言えるほど電装装置に依存している。したがって、ワイヤーハーネス等のケーブルの役割は重要であり、配線の接続には万全が期される必要がある。
【0003】
配線の接続にはいくつかの種類があるが、例えば、図1に示すように、アース線82の先端に金属の端子金具200が取り付けられ、その端子金具200に備わるネジ固定(ボルト固定)用の所定の穴223を利用して、車体の金属パネル90に固定される。そして、リサイクル作業のときにケーブルの分離を容易にするために、端子金具において先端の円形の電気接触部とその電気接触部から延出する基板部との突出根元に穴部を形成し、破断しやすいように工夫した技術もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、自動車等の製造ラインにおいては、端子金具のボルト固定に、電動工具や空気圧工具等が使用されることが多い。その場合、図1の破線で示すように端子金具200にボルト80を締める際に、ボルト固定点を基点として回転モーメントが発生し、端子金具200が回転してしまい、端子金具200に取り付けられたアース線82が破断してしまうことがある。そこで、図2のアース端子100に示すように、電気接触部120は、ボルト80の締結用に挿通孔123を備えるとともに、前方の端部に前端係止片130を備える。前端係止片130は、固定対象側(金属パネル90側)に折り曲げられ、アース端子100が車体などの金属パネル90に取り付けられるときに、金属パネル90に形成されたパネル係止孔94に係止される。このアース端子100では、前端係止片130とボルト80がそれぞれパネル係止孔94とボルト孔92に固定されることから、ボルト80を締める際に、前端係止片130がストッパーとして機能し、アース端子100が回転してしまうことが防止される。また、このような回転防止機能を実現した技術がいくつか開示されている(特許文献2及び特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−47121号公報
【特許文献2】特開2000−168469号公報
【特許文献3】特開平9−35791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば自動車産業においては、軽量化やコストダウンは部品一つ一つを単位としてなされている。言い換えると、グラム単位の改良の積み上げにより、最終製品である自動車の軽量化やコストダウンがなされている。図2に示したような回転防止機能を備えるアース端子100では、ボルト固定点より5〜20mm程度先端に回り止めである前端係止片130が形成されることが多い。この場合、前端係止片130自体の設定やアース端子100の打ち抜き成型を容易にするために、部材に無駄が生じてしまうことがあり、そのような課題を解決する技術が求められていた。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、端子金具に関する。この端子金具は、導電性材料で形成され、固定用の穴を備えており、接続対象に固定される電気接触部と、前記電気接触部に延出して連続して形成され電線が取り付けられる基板部と、前記基板部の前記電気接触部と反対側の端部から延出するとともに、接続対象側に曲折可能な係止片と、を備える。
また、前記係止片は、所定の自動圧着機へ投入するための帯状のキャリアから分離されてもよい。
本発明の別の態様は、複数の前記端子金具と、所定の自動圧着機へ投入するための帯状のキャリアとが分離可能に一体で形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アース端子などに用いられる端子金具において、回り止め防止機能を確保しつつ軽量化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と言う)を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ケーブルの端部に取り付けられる端子金具に関し、アース線に取り付けられるアース端子について例示する。
【0010】
図3は、本実施形態に係るアース端子10の斜視図であり、固定対象である金属パネル90から分離した状態を示している。また、図4はアース端子10の平面図を示しており、特に図4(a)はアース線82が取り付けられた状態のアース端子10の平面図であり、図4(b)はアース線82が取り除かれた状態のアース端子10の平面図であり、図4(c)は、展開状態のアース端子10の平面図である。さらに、図5は、金属パネル90に取り付けられるときのアース端子10の側面図(金属パネル90は断面図)を示しており、図5(a)はアース端子10の後端係止片30が伸びている状態の平面図、図5(b)は後端係止片30が下側に曲がった状態の側面図、図5(c)は金属パネル90に取り付けられ後端係止片30がパネル係止孔94に係止された状態のアース端子10の側面図を示している。
【0011】
アース端子10は導電性の金属板からなり、図4(c)に示すように、略長方形のベース部22と、ベース部22の前方(図示で上方)に延出して形成された略円形の電気接触部20と、ベース部22の後方(図示で下方)に延出して形成された略長方形の後端係止片30を備える。さらにアース端子10は、ベース部22の左右にアース線82の芯線84(図4(a)参照)をかしめる芯線バレル25とアース線82の被覆をかしめる被覆バレル26とをそれぞれ左右一組で備えている。
【0012】
電気接触部20は、金属パネル90へ取り付けるために中央部分にボルト80を挿通する所定の大きさの挿通孔23が形成されている。また、電気接触部20の左右の端部には、ベース部22との境界部分から挿通孔23の下側端部に相当する位置まで規制壁24が左右一組で形成されている。これら規制壁24は、アース線82がアース端子10に取り付けられたときに芯線84(図4(a)参照)が左右外側に開いてしまうことを防止する。
【0013】
後端係止片30は、ベース部22から後方へ、より具体的には、アース線82が取り付けられたときにその配線方向に延出しており、金属パネル90に取り付けるときには、図3や図5(b)に示すように下側に折り曲げられ、図5(c)に示すように後端係止片30の係止片端部30aが金属パネル90に形成されるパネル係止孔94に挿入される。これによって、アース端子10がボルト80によって金属パネル90に取り付けられるときに、挿通孔23(ボルト固定点)を中心に回転モーメントが発生しても、パネル係止孔94に挿入された後端係止片30がパネル係止孔94に係止するため、アース端子10の回転が防止される。特に、挿通孔23から後端係止片30まで十分に距離を確保できるので、上記回転防止が適切になされる。これによって、図1で示したようなアース線82の断線が防止される。
【0014】
図6は、アース端子10の製造から使用されるまでの形状の変化を示した斜視図である。アース端子10は所定の厚さの導電性の金属板、例えば、銅板やアルミニウム板を打ち抜き成型することにより形成される。図6(a)は、打ち抜き成型された状態のアース端子10を示しており、図示のように、複数(図示では3個)のアース端子10がリボン状のキャリア(送り用リール)50に一体に形成され端子群11を構成している。より具体的には、それぞれのアース端子10の後端係止片30の係止片端部30aが、リボン状のキャリア50の長手方向に延びる一方の側面54に所定間隔で接続している。この状態において、係止片端部30aとキャリア50は分離が容易になっている。また、芯線バレル25及び被覆バレル26は、斜め上方にかつ端部に向かうにしたがって広がるように折り曲がった状態になっている。
【0015】
つぎに、複数のアース端子10が一体に取り付いている状態の端子群11が、自動圧着機(図示せず)に投入される。投入された端子群11は、図6(b)に示すように、後端係止片30の係止片端部30aがキャリア50から切り離される。つづいて、図6(c)に示すように、アース端子10の後端係止片30が下側に折り曲げられる。そして図6(d)に示すように芯線バレル25及び被覆バレル26がかしめられアース線82が取り付けられる。なお、図6(e)は、図6(d)の状態からアース線82を取り除いた状態を示している。
【0016】
図7は、本実施形態のアース端子10(図7(a))と図2に示した従来のアース端子100(図7(b))とを比較するための図である。図7(a)に示すように、図7(b)のアース端子100と比較すると、本実施形態のアース端子10においては、電気接触部20の前方の破線で示す領域Aが省かれている。したがって、この領域Aに相当する部分の部材を削減することができ、アース端子10の軽量化が実現できる。また、使用する部材の量を削減することで、コスト低減が実現できる。
【0017】
以上、本発明を実施形態を基に説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、後端係止片30は、平面視で長方形であったが、これに限る趣旨ではなく、例えば、後方を頂点とする三角形であってもよい。この場合、キャリア50とアース端子10との分離が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術に係る、一般的なアース端子の斜視図である。
【図2】従来技術に係る、回り止め防止機能を備えたアース端子の斜視図である。
【図3】実施形態に係る、アース端子の斜視図である。
【図4】実施形態に係る、アース端子の平面図である。
【図5】実施形態に係る、アース端子の側面図である。
【図6】実施形態に係る、アース端子の製造から使用されるまでの形状の変化を示した斜視図である。
【図7】実施形態に係る本実施形態のアース端子と従来のアース端子とを比較するための図である。
【符号の説明】
【0019】
10 アース端子
11 端子群
20 電気接触部
22 ベース部
23 挿通孔
24 規制壁
25 芯線バレル
26 被覆バレル
30 後端係止片
30a 係止片端部
50 キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料で形成され、固定用の穴を備えており、接続対象に固定される電気接触部と、
前記電気接触部に延出して連続して形成され電線が取り付けられる基板部と、
前記基板部の前記電気接触部と反対側の端部から延出するとともに、接続対象側に曲折可能な係止片と、
を備えることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記係止片は、所定の自動圧着機へ投入するための帯状のキャリアから分離されたことを特徴とする請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
請求項2に記載の複数の前記端子金具と、所定の自動圧着機へ投入するための帯状のキャリアとが分離可能に一体で形成されたことを特徴とする端子金具群。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−3517(P2010−3517A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160760(P2008−160760)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】