説明

端子

【課題】箱部の箱開きによる電気的接触信頼性の低下防止と、端子保持力の向上を共に図ることができる端子を提供する。
【解決手段】導電性金属のプレートの折り曲げによって端子接続部2が設けられ、端子接続部2は、内部に弾性接触部8を有する箱部3と、箱部3に設けられた係止部20とを有し、コネクタハウジング40の収容状態では、係止部20に弾性ランス43が係止される端子1であって、箱部3は、折り曲げの両端となる天壁7と弾性接触部8同士が重ね合わされ、係止部20は、弾性接触部8より延設され、天壁7の端部を挟み込み、挟み込んだ外面が係止面20aとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングに収容される端子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の端子としては、特許文献1に開示されたものがある。端子である雌端子50は、図9〜図10に示すように、所定形状の導電性金属のプレートを折り曲げ加工することによって形成されている。雌端子50は、端子接続部51を有する。端子接続部51は、箱部52とこの箱部52の内部に配置された弾性接触部58を有する。箱部52は、底壁53と、底壁53の側端より折り曲げられた一方の側壁54と、一方の側壁54の上端より折り曲げられた天壁55と、天壁55の側端より折り曲げられた他方の側壁56より構成されている。
【0003】
弾性接触部58は、他方の側壁56の側端の連結部56aを介して延設されている。弾性接触部58は、連結部56aの箇所で折り曲げられ、その支持端側が底壁53の上面に重なるように配置されている。弾性接触部58の支持端側で、且つ、他方の側壁56との連結箇所の反対側には、支持突起58aが設けられている。この支持突起58aは、一方の側壁54の支持孔54aに係止されている。このような構成によって、弾性接触部58の支持端側は、双方の側壁54,56に支持されている。
【0004】
底壁53と弾性接触部58の後端部は、係止部59として構成されている。係止部59は、底壁53と弾性接触部58の双方の後端面が係止面59aとされている。
【0005】
雌端子50がコネクタハウジング(図示せず)内に収容された状態では、コネクタハウジングのランス60が係止部59に係止する。これによって、雌端子50がコネクタハウジング内に保持(位置決め)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−123740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の雌端子50では、箱部52の底壁53と他方の側壁56が単に突き当てられた状態であるため、相手端子(図示せず)からの反力等によって箱部52が開き易い。箱部52が開くと、電気的接触信頼性が低下する恐れがある。
【0008】
又、係止部59の係止代が底壁53と弾性接触部58の合計厚み(二枚のプレート厚)であるため、係止代が十分でなく、端子保持力が小さい。箱部52が開くと、係止面59aが変位して更に係止代が減少する恐れがある。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、箱部の箱開きによる電気的接触信頼性の低下防止と、端子保持力の向上を共に図ることができる端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、導電性金属のプレートの折り曲げによって端子接続部が設けられ、前記端子接続部は、内部に弾性接触部を有する箱部と、前記箱部に設けられた係止部とを有し、コネクタハウジングの収容状態では、前記係止部にハウジング側係止部が係止される端子であって、前記箱部は、折り曲げの両端となる一方のプレート箇所と他方のプレート箇所同士が重ね合わされ、前記係止部は、他方のプレート箇所より延設され、前記一方のプレート箇所の端部を挟み込み、挟み込んだ外面が係止面とされていることを特徴とする端子である。
【0011】
折り曲げの両端となる前記一方のプレート箇所は、天壁であり、前記他方のプレート箇所は、弾性接触部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、折り曲げの両端となる一方のプレート箇所と他方のプレート箇所同士が重ね合わされ、且つ、一方のプレート箇所の端部が他方のプレート箇所より延設された係止部によって挟持されているため、相手端子からの反力等によって容易に箱部が箱開きしない。係止部の係止代は、三枚のプレート厚みとなるため、係止代が十分に確保される。その上、上記したように箱開きが防止されるため、箱開きによる係止代の減少もない。以上より、箱部の箱開きによる電気的接触信頼性の低下防止と、端子保持力の向上を共に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は雌端子の斜視図、(b)は(a)とは別の方向から見た雌端子の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、雌端子の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、雌端子の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、雌端子の前面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、(a)は図4のA−A線断面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、雌端子の展開図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、雌端子が収容されたコネクタハウジングの前面図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、(a)は図7のC−C線断面図、(b)は(a)のD部拡大図である。
【図9】従来例を示し、雌端子の斜視図である。
【図10】従来例を示し、雌端子の前面図である。
【図11】図10のE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図8は本発明の一実施形態を示す。図1〜図6に示すように、端子である雌端子1は、所定形状(図6に示す)の導電性金属のプレートを折り曲げ加工することによって形成されている。雌端子1は、端子接続部2と、この端子接続部2より後方側に絞り連結部29を介して設けられた電線接続部30とを有する。
【0016】
電線接続部30は、ワイヤバレル部31とインシュレーションバレル部32を有する。ワイヤバレル部31とインシュレーションバレル部32は、底壁31a,32aと、この底壁31a,32aの両側端より突設された一対の舌片部31b,32bをそれぞれ有する。底壁31a,32aは、内側に向かって緩く円弧状に折り曲げられている。ワイヤバレル部31には、電線(図示せず)の端部が外皮が取り除かれた状態で、つまり、導体のみが加締め固定される。インシュレーションバレル部32には、電線(図示せず)の端部が外皮を含めて加締め固定される。
【0017】
端子接続部2は、相手端子である雄端子(図示せず)が挿入される箱部3と、この箱部3に設けられた係止部20とを有する。箱部3は、底壁4と、この底壁4の左右の側端よりそれぞれ上方側に垂直方向に折り曲げられた一対の側壁5,6と、一方の側壁5の上端より内側に水平方向に折り曲げられた天壁7と、他方の側壁6の上端より内側に水平方向に折り曲げられた弾性接触部8の支持端側とから構成されている。箱部3内には、相手端子である雄端子(図示せず)が挿入される。
【0018】
弾性接触部8の支持端側は、箱部3の一部プレートを兼用している。箱部3は、折り曲げの両端となる一方のプレート箇所である天壁7と他方のプレート箇所となる弾性接触部8同士が重ね合わされている。
【0019】
他方の側壁6の上端の一部には、スタビライザ9が延設されている。このスタビライザ9は、他方の側壁6に対して天壁7のようには折り曲げられず、上方に突出している。
【0020】
弾性接触部8は、その一方の支持端側が他方の側壁6の側端より延設されている。弾性接触部8の支持端側は、上記したように箱部3の一部を兼用し、天壁7の下面に重なるように配置されている。弾性接触部8の他方の支持端側には、支持突起8aが一体に設けられている。この支持突起8aは、一方の側壁5と天壁7の連結箇所の支持孔10に係止されている。このような構成によって、弾性接触部8の支持端は、その両側で箱部3に支持されている。弾性接触部8は、箱部3内に配置され、その先端側が箱部3の前方に向かって延びている。弾性接触部8の最先端部は、相手端子である雄端子(図示せず)の先端との突き当たりを回避するために湾曲状になっている。弾性接触部8の支持端側と先端側の中間箇所には、天壁7の下方より突出する屈曲支点部7aが当接している。弾性接触部8、屈曲支点部7aを支点として撓み変形する。
【0021】
係止部20は、弾性接触部8の支持端より端子後方に向かって延設されている。係止部20は、天壁7の後端部を挟み込み、挟み込んだ外面が係止面20aとされている。つまり、係止部20は、他方のプレート箇所である弾性接触部8より延設され、一方のプレート箇所である天壁7の後端部を挟み込んでいる。
【0022】
このように構成された雌端子1は、図6及び図7に示すように、コネクタハウジング40に収容される。つまり、コネクタハウジング40内には、端子収容室41が設けられている。各端子収容室41は、その前端側に相手端子挿入孔41aが開口し、後端側に電線引出孔41bが開口している。コネクタハウジング40には、端子収容室41に臨むようにハウジング側係止部である弾性ランス43が設けられている。
【0023】
次に、雌端子1の収容作業を説明する。雌端子1を端子収容室41の後方側の電線引出孔41bより挿入する。すると、雌端子1の箱部3の前端が弾性ランス43に干渉するが、弾性ランス43が撓み変形して雌端子1の挿入が許容される。雌端子1を挿入完了位置まで挿入すると、図8に詳しく示すように、弾性ランス43が復帰変形して係止部20に係止される。これにより、雌端子1が端子収容室41に保持(位置決め)されている。
【0024】
以上説明したように、箱部3の折り曲げの両端となる天壁7と弾性接触部8同士が重ね合わされ、且つ、天壁7の端部が弾性接触部8より延設された係止部20によって挟持されているため、相手端子である雄端子(図示せず)からの反力等によって容易に箱部3が箱開きしない。係止部20の係止代は、三枚のプレート箇所(天壁7の板厚と係止部20の2枚の板厚)の厚み寸法D(図8に示す)となるため、係止代が十分に確保される。その上、上記したように箱開きが防止されるため、箱開きによる係止代の減少もない。以上より、箱部3の箱開きによる電気的接触信頼性の低下防止と、端子保持力の向上を共に図ることができる。
【0025】
この実施形態では、箱部3の折り曲げの両端となる一方のプレート箇所は、天壁7であり、他方のプレート箇所は、弾性接触部8である。従って、弾性接触部8が箱部3の一部を兼用するため、構成要素の簡略化になる。弾性接触部8は、係止部20を介して箱部3に支持されるため、弾性接触部8の支持端が強固に支持され、弾性接触部8の変形等による接触圧減少を極力防止できる。
【符号の説明】
【0026】
1 雌端子(端子)
2 端子接続部
3 箱部
8 弾性接触部
20 係止部
20a 係止面
30 電線接続部
40 コネクタハウジング
43 弾性ランス(ハウジング側係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属のプレートの折り曲げによって端子接続部が設けられ、前記端子接続部は、内部に弾性接触部を有する箱部と、前記箱部に設けられた係止部とを有し、コネクタハウジングの収容状態では、前記係止部にハウジング側係止部が係止される端子であって、
前記箱部は、折り曲げの両端となる一方のプレート箇所と他方のプレート箇所同士が重ね合わされ、
前記係止部は、他方のプレート箇所より延設され、前記一方のプレート箇所の端部を挟み込み、挟み込んだ外面が係止面とされていることを特徴とする端子。
【請求項2】
請求項1記載の端子であって、
折り曲げの両端となる前記一方のプレート箇所は、天壁であり、前記他方のプレート箇所は、弾性接触部であることを特徴とする端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93165(P2013−93165A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233820(P2011−233820)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】