説明

競技用計測システムおよび、タイム計測方法

【課題】 競技者個々のタイムを適切に計測することのできる競技用計測システム等を提供する。
【解決手段】 (a)に示すように、計時ゾーンZの中央から計時ラインLがずれてしまっている場合には、(b)に示すように、無線タグが検出するトリガINとトリガOUTとの中間値から、計時ラインLがずれることになる。つまり、トリガIN,トリガOUTと計時ラインLとの位置関係は、(c)に示す関係となる。このような(c)に示すγが、計時ゾーンZ(トリガIN,トリガOUT)と計時ラインLとの位置関係を数値化したパラメータとなる。タグコンソールは、このパラメータ(γ)に基づいて、無線タグから取得した計時ゾーンZの両端における各検出タイムから、競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、競技者個々のタイムを適切に計測することのできる競技用計測システムおよび、タイム計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技等において、競技者個々のタイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のタイムを計測する計測システムも実用化されている。
それでもこの計測システムは、ゴール後に所定時間かけてバーコードの読み取りを行うため、そもそも実測よりも遅れたタイムが計測されていた。特に、大勢の競技者が同時期にゴールした場合等では、バーコードの読み取り待ちが生じてしまい、実測よりもかなり遅れたタイムが計測されてしまうという問題があった。
また、ゴールしたタイムだけでなく、各計時ポイント(中間地点等)における通過タイムの計測も行いたいという要望が高まっているが、この計測システムでは、対応できなかった。
【0003】
このような問題を解決するため、種々の計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。新たな計測システムは、より実測に近いタイムを計測するために、また、各計時ポイントにおける計測も可能とするために、非接触にて競技者個々のタイムを計測する形態が主流となっている。
具体的には、競技者が携帯する(ゼッケン等に付けられた)発信器から発せられる電波信号等によりタイムを計測したり、また、撮影した映像から競技者やゼッケン等を識別してタイムを計測する、というものである。
【0004】
中でも、競技者に発信器を携帯させる計測システムは、実用化に向けて種々の工夫がなされている。一例として、ゴールラインに沿った幅の狭い範囲内に発信器により引き金信号を発信させ、競技者と共に発信器がゴールラインに到達すると、発信器から自動的に固有番号信号を送信させるといった技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−57104号公報 (第3−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される技術は、発信器から送信された固有番号信号をレシーバが受信した時点で、スタートからの時間(タイム)を測定するものである。そして、同時期に大勢の競技者がゴールラインに到達すると、各発信器から送信される固有番号信号が重なり合って、その識別を行えない場合がある。そのため、発信器が固有番号信号を1回だけ発信するのではなく、複数回に渡って発信することで、レシーバでの固有番号の読み取り不能(取りこぼし)を回避しようとしている。
【0006】
しかしながら、測定されるタイムが、固有番号信号を受信できた時点で計時されるため、固有番号信号に重なりが生じると、レシーバが固有番号信号をとりこぼし、次の固有番号を受信してしまい、測定されるタイムが実測よりも幾分遅れてしまうという問題があった。
また、固有番号信号の受信によるタイムの計測を、そもそも制限のある範囲内(トリガ信号が送信される幅の狭い範囲内)にて、全て行わなければならないため、固有番号信号の重なりが多数であると、複数回の発信が行われたとしても、固有番号信号の取りこぼしが生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、競技者個々のタイムを適切に計測することのできる競技用計測システムおよび、タイム計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技用計測システムは、
競技者に携帯される計時機器と、計時位置を規定する計時ラインが含まれる所定の計時ゾーン内に向けてトリガ信号を発する信号発生機器と、前記計時機器から送られる検出タイムを受信するタイム受信機と、前記タイム受信機を制御するコンソールと、を含む競技用計測システムであって、
前記計時機器は、
計時の基準となる基準時刻と同期した時刻を計時する計時手段と、
前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記トリガ信号に基づいて前記計時ゾーンを判別し、判別した前記計時ゾーンの2地点にて前記計時手段が計時した時刻を、前記検出タイムとしてそれぞれ特定する特定手段と、
前記特定手段が特定した前記各検出タイムを前記タイム受信機に向けて送信する送信手段と、を備え、
前記コンソールは、
予め測定された前記計時ゾーンと前記計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶する記憶手段と、
前記タイム受信機が受信した前記各検出タイムを取得するタイム取得手段と、
前記記憶手段に記憶される前記パラメータに基づいて、前記タイム取得手段が取得した前記各検出タイムから、競技者が前記計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定するタイム算定手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、計時機器において、計時手段は、計時の基準となる基準時刻(例えば、ランニングタイムや現在時刻等)と同期した時刻を計時する。検出手段は、信号発生機器が発するトリガ信号を検出する。特定手段は、検出手段が検出したトリガ信号に基づいて計時ゾーンを判別し、判別した計時ゾーンの2地点にて計時手段が計時した時刻を、検出タイムとしてそれぞれ特定する。そして、送信手段は、特定手段が特定した各検出タイムをタイム受信機に向けて送信する。一方、コンソールにおいて、記憶手段は、予め測定された計時ゾーンと計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶する。タイム取得手段は、タイム受信機が受信した各検出タイムを取得する。そして、タイム算定手段は、記憶手段に記憶されるパラメータに基づいて、タイム取得手段が取得した各検出タイムから、競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定する。
このように、計時機器は、競技者の走行に伴って、計時ゾーンの2地点にて検出タイムをそれぞれ特定し、各検出タイムをタイム受信機に送信する。一方、コンソールは、予め測定された計時ゾーンと計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶しており、タイム受信機を介して各検出タイムを取得すると、記憶したパラメータに基づいて、各検出タイムから競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定する。
この結果、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【0010】
前記検出手段は、前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を捕捉することにより、競技者が前記計時ゾーンに進入する一端と、競技者が前記計時ゾーンから離脱する一端とを検出し、
前記特定手段は、前記検出手段が検出した前記計時ゾーンの両端にて前記計時手段が計時した時刻を、前記検出タイムとしてそれぞれ特定してもよい。
【0011】
前記検出手段は、所定の特性を有するアンテナを介して、前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を検出し、
前記記憶手段は、前記計時機器のアンテナの特性に応じて予め測定された前記計時ゾーンの検出位置と前記計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶してもよい。
【0012】
前記検出手段は、所定の特性を有するアンテナを介して、前記トリガ信号を検出し、
前記記憶手段は、前記計時機器のアンテナが、走行する競技者を基準として前方又は後方の指向性を有することを規定する特性情報を記憶し、
前記タイム算定手段は、前記記憶手段に記憶される前記特性情報に基づいて、前記タイム取得手段が取得した前記各検出タイムの一方を計時タイムとして算定してもよい。
【0013】
前記記憶手段は、前記計時ゾーンの一端が前記計時ラインと接していることを規定する設置情報を前記パラメータとして記憶し、
前記タイム算定手段は、前記記憶手段に記憶される前記設置情報に基づいて、前記各検出タイムの一方を前記計時タイムとして算定してもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るタイム計測方法は、
競技者に携帯される計時機器と、計時位置を規定する計時ラインが含まれる所定の計時ゾーン内に向けてトリガ信号を発する信号発生機器と、前記計時機器から送られる検出タイムを受信するタイム受信機と、前記タイム受信機を制御するコンソールと、を含むシステムにおけるタイム計測方法であって、
計時機器において、計時の基準となる基準時刻と同期した時刻を計時する計時ステップと、
計時機器において、信号発生機器が発するトリガ信号を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて検出したトリガ信号に基づいて計時ゾーンを判別し、判別した計時ゾーンの2地点において前記計時ステップにて計時した時刻を、検出タイムとしてそれぞれ特定する特定ステップと、
前記特定ステップにて特定した各検出タイムをタイム受信機に向けて送信する送信ステップと、
コンソールにおいてタイム受信機が受信した各検出タイムを取得するタイム取得ステップと、
コンソールが有する所定の記憶部に記憶される、予め測定された計時ゾーンと計時ラインとの位置関係を規定するパラメータに基づいて、前記タイム取得ステップが取得した各検出タイムから、競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定するタイム算定ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、計時ステップは、計時機器において、計時の基準となる基準時刻(例えば、ランニングタイムや現在時刻等)と同期した時刻を計時する。検出ステップは、計時機器において、信号発生機器が発するトリガ信号を検出する。特定ステップは、検出ステップにて検出したトリガ信号に基づいて計時ゾーンを判別し、判別した計時ゾーンの2地点において計時ステップにて計時した時刻を、検出タイムとしてそれぞれ特定する。送信ステップは、特定ステップにて特定した各検出タイムをタイム受信機に向けて送信する。タイム取得ステップは、コンソールにおいてタイム受信機が受信した各検出タイムを取得する。そして、タイム算定ステップは、コンソールが有する所定の記憶部に記憶される、予め測定された計時ゾーンと計時ラインとの位置関係を規定するパラメータに基づいて、前記タイム取得ステップが取得した各検出タイムから、競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定する。
このように、計時機器において、競技者の走行に伴って、計時ゾーンの2地点にて検出タイムをそれぞれ特定し、各検出タイムをタイム受信機に送信する。一方、コンソールにおいて、予め測定された計時ゾーンと計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶しており、タイム受信機を介して各検出タイムを取得すると、記憶したパラメータに基づいて、各検出タイムから競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定する。
この結果、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態にかかる競技用計測システムについて、以下図面を参照して説明する。なお、一例として、マラソン競技において複数地点にてタイムの計測等を行う競技用計測システムとして説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施の形態に適用される競技用計測システム1の構成の一例を示す模式図である。なお、以下ではタイムの計測を行う中継地点やゴール地点を、便宜的にまとめて計時地点として説明する。つまり、計時地点は、中継地点やゴール地点を示すものとする。また、ゴール地点がスタート地点と異なる場合について説明する。
【0019】
図示するように、競技用計測システム1は、スタート地点に設置されたタイマコンソール11、GPS受信機12、無線通信端末13、時刻表示装置14、ランニングタイム送信機15、タグID受信機16、及び、タグコンソール17と、計時地点(中継地点やゴール地点)に設置されたタイマコンソール11、GPS受信機12、無線通信端末13、時刻表示装置14、ランニングタイム送信機15、タグID受信機16、信号発生器機としてのトリガ信号発生装置18、タイム受信機としての検出タイム受信機19、コンソールとしてのタグコンソール20、撮影装置21、映像記録装置22、及び、データサーバ23と、各競技者RNにそれぞれ携帯される計時機器としての無線タグ30と、を含んで構成される。
【0020】
なお、スタート地点のタイマコンソール11には、スタートピストルSPが接続されており、また、計時地点のタイマコンソール11には、グリップスイッチGSが接続されている。
スタートピストルSPは、スタータの操作に応答して、スタート信号をスタート地点のタイマコンソール11に供給する。また、グリップスイッチGSは、計時役員等の操作に応答して、グリップ信号を計時地点のタイマコンソール11に供給する。
【0021】
タイマコンソール11は、CPU(Central Processing Unit)等の制御部、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部、ランニングタイムを計時するタイマ、及び、キーボード等の操作部を含んで構成される。
タイマコンソール11は、競技のスタート前までに時刻同期の処理を実行し、GPS受信機12が受信した標準時刻に同期した現在時刻の計時を始める。
【0022】
そして、スタート地点のタイマコンソール11は、競技のスタートに伴って、スタートピストルSPからスタート信号が入力されると、その時刻をスタート時刻(時刻情報)として自己のメモリに保持すると共に、無線通信端末13を制御して、スタート時刻を計時地点のタイマコンソール11に向けて送信する。
一方、計時地点のタイマコンソール11は、スタート地点の無線通信端末13から送られたスタート時刻を無線通信端末13にて受信すると、そのスタート時刻を無線通信端末13から取得して自己のメモリに保持する。
タイマコンソール11は、このようにしてスタート時刻を自己のメモリに保持した後に、自己のタイマが計時する現在時刻と保持しているスタート時刻との差に基づいて、ランニングタイムを順次生成し、タイム情報として時刻表示装置14に供給する。
また、計時地点のタイマコンソール11は、グリップスイッチGSからグリップ信号が入力されると、その時刻をグリップ時刻(時刻情報)として映像記録装置22等に供給する。
【0023】
GPS(Global Positioning System)受信機12は、GPS衛星から送信される標準時刻(GPS時刻)を受信し、受信した標準時刻をタイマコンソール11に供給する。
【0024】
無線通信端末13は、公衆回線(移動体通信網等)を介して他の無線通信端末13との間でデータ通信が可能な携帯電話等からなる。
そして、スタート地点の無線通信端末13は、タイマコンソール11から供給されたスタート時刻を含む通信データを、計時地点の無線通信端末13に送信する。
一方、計時地点の無線通信端末13は、スタート地点の無線通信端末13から送られたスタート時刻を受信し、受信したスタート時刻をタイマコンソール11に供給する。
【0025】
時刻表示装置14は、電光掲示板等からなり、タイマコンソール11から順次供給されるタイム情報に従って、ランニングタイム等を表示する。
【0026】
ランニングタイム送信機15は、各競技者RN(各無線タグ30)に向けて、タイマコンソール11が計時しているランニングタイム等を送信して、無線タグ30が計時する時刻を適宜補正(又は設定)させる。
具体的にスタート地点のランニングタイム送信機15は、スタート直後に全ての無線タグ30に向けて、ブロードキャストにて一斉にランニングタイム、関門ID及び、しきい値nを含む情報を送信する。この関門IDとは、ランニングタイム送信機15(スタート地点や計時地点)に固有の識別情報であり、また、しきい値nとは、送信されたランニングタイムの正確さを無線タグ30にて判別するために使用される値である。
なお、スタート地点のランニングタイム送信機15は、無線タグ30に最初に時刻を設定させるため、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡り、ランニングタイム等を送信する。
一方、計時地点のランニングタイム送信機15は、走行する競技者RNからみて計測ポイント(後述する計時ラインL)より手前に配置されており、近傍に位置する競技者RNの無線タグ30に向けて、ランニングタイム及び、関門IDを含む情報を送信する。
なお、スタート地点のランニングタイム送信機15は、スタート前に、動作確認のために現在時刻等のテストデータを各無線タグ30に向けて送信する。
【0027】
タグID受信機16は、ランニングタイム送信機15が送信したランニングタイムに応答して無線タグ30から返信されるタグID(無線タグ30に固有の識別情報)を受信する。そして、受信したタグIDをタグコンソール17に供給する。
なお、計時地点のタグID受信機16も、ランニングタイム送信機15と同様に、走行する競技者RNからみて計測ポイントより手前に配置されており、競技者RNが後述する計時ゾーンZに到達する前に、無線タグ30から返信されるタグIDを受信する。
また、スタート地点のタグID受信機16は、スタート前に、動作確認のためのテストデータ(現在時刻等)に応答して無線タグ30から返信されるタグIDも受信する。
【0028】
タグコンソール17は、CPU等の制御部、RAM等のメモリ、LCD等の表示部、及び、キーボード等の操作部を含んで構成され、無線タグ30から送信されるタグID等を管理する。
具体的にタグコンソール17は、スタート後に取得した各タグIDから、各競技者RNの競技スタートを確認する。なお、スタート前にテストデータに対するタグIDが取得されない場合に、そのタグIDを送信するはずの無線タグ30が故障や電池切れの可能性があるため、適宜交換等が行われる。
【0029】
トリガ信号発生装置18は、例えば、走行路の沿道から計時ラインL(計時位置を規定する判定ライン)に向けて設置され、計時ラインLを含む所定範囲の計時ゾーンZ内において、トリガ信号を発する。
一例として、トリガ信号発生装置18は、24GHzのマイクロ波を発生させ、図2(a)に示すように、所定のパラボラアンテナにより計時ゾーンZ内に向けてトリガ信号を送信する。
この他にも、トリガ信号発生装置18は、図2(b)に示すように、ループコイル(ループアンテナ)を用いて、計時ゾーンZ内に長波帯のトリガ信号を発生させてもよい。
【0030】
このような計時ゾーンZ内に競技者RNが進入すると、無線タグ30によりトリガ信号が検出される。なお、詳細については後述するが、無線タグ30は、計時ゾーンZへの進入時にトリガ信号を検出し(トリガIN)、その時点で計時される検出タイムを特定する。そして、競技者RNが走行して(移動して)計時ゾーンZからの離脱時に、無線タグ30は、トリガ信号の検出を終え(トリガOUT)、その時点で計時される検出タイムを特定する。つまり、無線タグ30は、計時ゾーンZの両端(2地点)にて、検出タイムをそれぞれ特定する。
【0031】
検出タイム受信機19は、タグコンソール20に制御され、近傍に位置する(計時ゾーンZを通過した後の)競技者RNの無線タグ30からポーリングにて検出タイム等を受信する。
具体的に検出タイム受信機19は、タグコンソール20の後述するポーリングリストの順番に従って、各無線タグ30に検出タイムの送信を要求し、応答して無線タグ30から送信される検出タイム等(後述するように、タグID、2地点の検出タイム、関門ID、及び、補正値α)を受信する。
なお、無線タグ30側から後述するようにポーリング要求が送信された場合に、検出タイム受信機19は、その無線タグ30に検出タイムの送信を要求して検出タイム等を受信する。
【0032】
タグコンソール20は、検出タイム受信機19を制御し、無線タグ30から送信される検出タイム等を取得する。
具体的にタグコンソール18は、図3に示すように、タグID取得部20aと、リスト記憶部20bと、タイム取得手段としての検出タイム取得部20cと、記憶手段としての記憶部20dと、タイム算定手段としての制御部20eと、表示部20fと、操作部20gと、通信部20hと、を含んで構成される。
【0033】
タグID取得部20aは、タグID受信機16が無線タグ30から送られるタグIDを受信した際に、そのタグIDをタグID受信機16から取得する。
リスト記憶部20bは、図4に示すようなポーリングリストを記憶する。このポーリングリストは、制御部20eにより適宜生成される。
【0034】
検出タイム取得部20cは、検出タイム受信機19が無線タグ30から送られた2地点の検出タイム等を受信した際に、その各検出タイム等を検出タイム受信機19から取得する。具体的には、検出タイム受信機19が受信したタグID、2地点の検出タイム、関門ID、及び、補正値αを含む情報を取得する。
この補正値αは、無線タグ30にてランニングタイムを受信する度に補正した時刻(時差)を累積した累積時差βから求められた値である。
【0035】
記憶部20dは、計時ゾーンZと計時ラインLとの位置関係を数値化したパラメータを記憶する。
このパラメータは、2地点の検出タイムから、競技者RNが計時ラインLを通過した時刻(計時タイム)を求めるために使用されるものである。
一般的には、トリガ信号発生装置18を配置する際に、図5(a)に示すように、中央に計時ラインLが位置するように計時ゾーンZを形成する。この場合、図5(b)に示すように、トリガINの検出タイムとトリガOUTの検出タイムとの中間の値が、計時タイムになる(ゴール地点における例外については、後述する)。
しかしながら、実際には、計時ゾーンZの中央に計時ラインLが位置するようにトリガ信号発生装置18を配置できない場合がある。
例えば、設置場所の条件(温湿度、材質など)により、図6(a)に示すように、計時ゾーンZの中央から計時ラインLがずれてしまっている場合には、図6(b)に示すように、無線タグ30が検出するトリガINとトリガOUTとの中間値から、計時ラインLがずれることになる。つまり、トリガIN,トリガOUTと計時ラインLとの位置関係は、図6(c)に示す関係となる。
【0036】
また、計時ゾーンZの中央に計時ラインLが位置するようにトリガ信号発生装置18を配置できたとしても、無線タグ30のアンテナ(後述するトリガアンテナ35)の特性等により、実質的に計時ゾーンZの中央から計時ラインLがずれてしまう場合もある。
例えば、図7(a)に示すように、計時ゾーンZの中央に計時ラインLが位置していても、無線タグ30のアンテナの特性(指向性等)により、図7(b)に示すように、実質的に無線タグ30が検出できるトリガINとトリガOUTとの中間値から、計時ラインLがずれることになる。つまり、トリガIN,トリガOUTと計時ラインLとの位置関係は、図7(c)に示す関係となる。
【0037】
このような、図6(c),図7(c)に示すγが、計時ゾーンZ(トリガIN,トリガOUT)と計時ラインLとの位置関係を数値化したパラメータとなる。このようなパラメータ(γ)を、競技役員等は、トリガ信号発生装置18が実際に設置された後に、所定の計測装置等を用いて事前に求めておく。そして、求めたパラメータ(γ)を、競技のスタート前までに記憶部20dに記憶させる。
【0038】
制御部20eは、リスト記憶部20bに上述の図4に示すようなポーリングリストを適宜生成し、検出タイム受信機19を制御して無線タグ30から検出タイム等を受信させる。
具体的に制御部20eは、タグID取得部20aにてタグIDを取得すると、ポーリングリストにそのタグIDを登録する。なお、タグIDが取得できなかった(タグID受信機16がタグIDを受信できなかった)場合に、制御部20eは、操作部20gからの入力に従って、対象となるタグIDをポーリングリストに登録する。
このように生成したポーリングリストに従って、制御部20eは、検出タイム受信機19を制御し、無線タグ30から送られたタグID、各検出タイム、関門ID、及び、補正値αを含む情報を取得する。
なお、関門IDがその計時地点におけるランニングタイム送信機15の関門IDと異なっている場合(以前に通過した計時地点やスタート地点のランニングタイム送信機15の関門IDである場合)に、制御部20eは、各検出タイムと共に取得した補正値αを使用して、各検出タイムを適宜補正する。
【0039】
そして、制御部20eは、記憶部20dに記憶されるパラメータに基づいて、各検出タイムから、競技者RNが計時ラインLを通過した時点の計時タイムを算定する。
具体的に制御部20eは、記憶部20dに記憶されるパラメータ(γ)と、2地点の検出タイムとを、以下の数式1,2の何れかに代入して、競技者RNが計時ラインLを通過した時点の計時タイムを求める。
【0040】
(数1)
T = Tin +(Tot − Tin)× γ
T:計時タイム
Tin:トリガINの検出タイム
Tot:トリガOUTの検出タイム
γ:パラメータ
【0041】
(数2)
T = Tot −(Tot − Tin)× γ
T:計時タイム
Tin:トリガINの検出タイム
Tot:トリガOUTの検出タイム
γ:パラメータ
【0042】
これにより、計時ゾーンZの中央に計時ラインLが位置するようにトリガ信号発生装置18を配置できない場合や、無線タグ30のアンテナに特性(指向性等)がある場合でも、競技者の計時タイムを求めることができる。
そして、制御部20eは、計時タイムを算定すると、通信部20hを介して、タグIDと共にデータサーバ23に送信する。計時タイム等をデータサーバ23に送信後、制御部20eは、対応するタグIDをポーリングリストから削除する。なお、一定時間が経過してもポーリングリストから削除されずに残っているタグIDがある場合、制御部20eは、そのタグIDを含む未通過者情報を生成し、通信部20hを介して、映像記録装置22に送信する。
【0043】
表示部20fは、タグコンソール20の動作状況を示す情報等を表示する。例えば、リスト記憶部20bに記憶されたポーリングリスト等を表示する。
操作部20gは、競技役員等の操作に応じた指示情報等を制御部20e等に供給する。例えば、ポーリングリストに追加するタグID等が入力されると、そのタグIDを制御部20e等に供給する。
【0044】
通信部20hは、制御部20eにより算定された計時タイムを、タグIDと共にデータサーバ23に送信する。
【0045】
撮影装置21は、例えば、ビデオカメラ等からなり、計時ラインLを通過する競技者RNの映像を撮影する。
具体的に撮影装置20は、走行する競技者RNからみてトリガ信号発生装置18よりも遠方に配置され、競技者RNのゼッケン番号や顔等が分かるように、競技者RNの正面(前面)の映像を撮影する。そして、撮影した映像(映像信号)を映像記録装置22に供給する。
【0046】
映像記録装置22は、映像記録機器等からなり、撮影装置21から供給される映像(映像信号)に、タイマコンソール11から供給されるグリップ時刻やランニングタイム等のタイムデータを合成して(同期させて)、記録する。
そして、タグコンソール20から未通過者情報が送信されると、記録した映像を適宜検索し、未通過者のタイムを特定する。
【0047】
データサーバ23は、タグコンソール20から適宜データを取得し、公式タイムや着順等の判定を行う。
また、競技のスタートに先立って、データサーバ23は、所定の操作部から、競技者RNの選手情報や使用される無線タグ30のタグID等が入力されると、これらの情報を関連付けて記憶し、タイマコンソール11、タグコンソール20、及び、映像記録装置22に適宜供給する。
【0048】
競技者RNに携帯される計時機器としての無線タグ30は、スタート地点や計時地点のランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム等を受信して、ランニングタイムに同期した時刻を計時する。そして、計時地点のトリガ信号発生装置18から発せられるトリガ信号を検出して、計時ゾーンZの2地点における検出タイムを特定し、ポーリングに応じて検出タイム受信機19に検出タイムを送信する。
具体的に無線タグ30は、図8に示すように、アンテナ31と、受信ユニット32と、タイム補正ユニット33と、計時手段としての計時ユニット34と、トリガアンテナ35と、検出手段としてのトリガ検出ユニット36と、特定手段としてのタイム特定ユニット37と、記憶部38と、送信手段としての送信ユニット39と、から構成される。
【0049】
アンテナ31は、送受信用のアンテナである。
受信ユニット32は、アンテナ31を介して、ランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム等を受信する。
具体的に受信ユニット32は、スタート直後にスタート地点のランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム、関門ID及び、しきい値nを含む情報を受信する。なおこの際、ランニングタイム送信機15からは、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡って送信されるランニングタイム等を受信する。
また、受信ユニット32は、計時地点のランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム及び、関門IDを含む情報を受信する。
そして、受信ユニット32は、受信したランニングタイム等をタイム補正ユニット33に供給する。
この他にも受信ユニット32は、検出タイム受信機19から検出タイムの送信要求(ポーリング)を受信する。そして、受信した送信要求を送信ユニット39に供給する。
【0050】
タイム補正ユニット33は、計時地点にて受信ユニット32が受信したランニングタイムに基づいて、計時ユニット34が計時するランニングタイムを補正する。その際、タイム補正した時差(受信したランニングタイムと計時ユニット34が計時したランニングタイムとの時差)を求め、記憶部38の累積時差βに加算して記憶する。そして、累積時差βから単位時間あたりの補正値αを求め、記憶部38に記憶する(更新する)。また、タイム補正を行った計時地点を明らかにするために、ランニングタイムと共に送られる関門IDを記憶部38に記憶する(更新する)。
なお、競技スタート時点では、それまで計時ユニット34にランニングタイムが未設定であったため、タイム補正ユニット33は、スタート地点にてランニングタイム送信機15から送られるランニングタイムを、受信ユニット32が例えば、1秒間隔で3回以上受信した後に、正当なランニングタイムを計時ユニット34に設定する。
なおこの際、タイム補正ユニット33は、スタート地点のランニングタイム送信機15からランニングタイムと共に送られたしきい値nを記憶部38に記憶する。
【0051】
また、計時地点において、受信したランニングタイムと計時ユニット34にて計時したランニングタイムとの時差が、記憶部38に記憶したしきい値nよりも大きい場合に、タイム補正ユニット33は、タイム補正を行わない。これは、何らかの原因により、送信されたランニングタイム又は受信されたランニングタイムに文字化け等が生じてしまっていることが考えられるため、タイム補正ユニット33は、不正確と思われるランニングタイムをそのまま破棄する。この場合、関門IDの更新も行わない。
【0052】
計時ユニット34は、タイム補正ユニット33により適宜補正(設定)され、受信ユニット82が受信したランニングタイムに同期したランニングタイムを計時する。
計時ユニット34は、高安定水晶発振器を備えており、ランニングタイムの計時を安定して維持することが可能となっている。
【0053】
トリガアンテナ35は、トリガ信号発生装置18が発するマイクロ波や電磁波に同調し、トリガ信号を受信する。
トリガ検出ユニット36は、トリガアンテナ35を介して、トリガ信号を検出する。そして、検出結果をタイム特定ユニット37に通知する。例えば、トリガ検出ユニット36は、トリガINのタイミング(トリガ信号を検出していない状態から最初にトリガ信号を検出したタイミング)、及び、トリガOUTのタイミング(トリガ信号を検出していた状態から検出を終えたタイミング)を、タイム特定ユニット37に通知する。
【0054】
タイム特定ユニット37は、トリガ検出ユニット36が検出したトリガ信号に基づいて計時ゾーンZを判別し、計時ゾーンZの両端にて計時ユニット34が計時したランニングタイムを、検出タイムとしてそれぞれ特定する。
例えば、タイム特定ユニット37は、競技者RNが計時ゾーンZに到達し、トリガINのタイミングがトリガ検出ユニット36から通知されると、計時ユニット34が計時しているランニングタイムを1つ目の検出タイムとして特定し、記憶部38に記憶する。その後、競技者RNが計時ゾーンZを通過し、トリガOUTのタイミングがトリガ検出ユニット36から通知されると、計時ユニット34が計時しているランニングタイムを2つ目の検出タイムとして特定し、記憶部38に記憶する。
【0055】
記憶部38は、受信ユニット32が受信したしきい値nや、タイム補正ユニット33が求めた補正値α,累積時差βや、タイム補正を行った地点の関門IDや、タイム特定ユニット37が特定した各検出タイム等を記憶する。
また、記憶部38は、無線タグ30毎(競技者RN毎)に異なる固有のタグIDを予め記憶している。
【0056】
送信ユニット39は、受信ユニット32がランニングタイムを受信した際に、その応答として、記憶部38から読み出したタグIDをタグID受信機16に向けて送信する。その際、コリジョンの発生を抑えるために、無線タグ30毎に定められた、異なる応答タイミングにて、タグIDを送信する。また、複数の無線のチャンネルを使用可能とし、各無線タグ30を異なるチャンネルに割り振ることで、コリジョンの発生を抑えてもよい。
また、送信ユニット39は、受信ユニット32が検出タイムの送信要求(ポーリング)を受信した際に、記憶部38からタグID、各検出タイム、関門ID、及び、補正値αを読み出して、検出タイム受信機19に送信する。
なお、送信ユニット39は、検出タイム受信機19から検出タイムの送信要求(ポーリング)が送られない場合等に、自ら検出タイム受信機19に対してポーリング要求を送信してもよい。例えば、自己のタグIDがタグコンソール20のポーリングリストに登録されていないことも考慮して、タイム特定ユニット37が各検出タイムを記憶部38に記憶してから所定時間経過後)までに、検出タイムの送信要求を受信しなかった場合、送信ユニット39は、自発的に検出タイム受信機19に対してポーリング要求を送信する。この際、送信ユニット39は、他の無線タグ30の送信を考慮してタイミングをずらしたり、異なるチャンネルのバンドにてポーリング要求を送信してもよい。
【0057】
以下、上述した構成の競技用計測システム1の動作について、図面を参照して説明する。
最初に図9を参照して、競技のスタートから、タグコンソール20がポーリングリストを生成するまでの動作について簡単に説明する。
【0058】
まず、スタート直後に、図9(a)に示すように、スタート地点のランニングタイム送信機15は、無線タグ30に向けて、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡ってランニングタイムを送信する(T1)。
【0059】
無線タグ30は、複数のランニングタイムから正当なランニングタイムを特定し、特定したランニングタイムを計時ユニット34に設定する(T2)。なお、無線タグ30は、ランニングタイムと共に送られた関門IDやしきい値nを記憶部38に記憶する。
そして、無線タグ30は、受信したランニングタイムの応答として、自己のタグIDをタグID受信機16に送信する(T3)。
【0060】
スタート地点のタグコンソール17は、タグID受信機16が受信したタグIDに基づいて、競技者RNのスタートを確認する。
【0061】
その後、競技者RNが計時地点(計時ゾーンZの手前)まで走行すると、図9(b)に示すように、計時地点のランニングタイム送信機15は、無線タグ30にランニングタイム等を送信する(T4)。
【0062】
無線タグ30は、受信したランニングタイムの正当性を判別した後、計時ユニット34の時刻を補正する(T5)。
具体的に無線タグは、ランニングタイムを受信すると、自己が計時しているランニングタイムとの時差を求める。そして、求めた時差としきい値nとを比較して、ランニングタイムが正確であるか否かを判別する。
ここで、無線タグ30は、求めた時差がしきい値nより大きくない(しきい値n以内である)場合に、自己のランニングタイムを補正する。そして、求めた時差を記憶部38の累積時差βに加算して記憶すると共に、累積時差βから単位時間あたりの補正値αを求め、記憶部38に記憶する(更新する)。また、関門IDの更新も行う。
一方、求めた時差がしきい値nより大きい場合に、無線タグ30は、不正確と思われるランニングタイムをそのまま破棄し、関門IDの更新も行わない。
そして、無線タグ30は、受信したランニングタイムの応答として、自己のタグIDをタグID受信機16に送信する(T6)。
【0063】
計時地点のタグコンソール20は、無線タグ30から送られたタグIDを受信すると、このタグIDをポーリングリストに登録する(T7)。
なお、タグコンソール20は、操作部から手動によるタグIDの入力があった場合にも、このタグIDをポーリングリストに登録する。つまり、タグコンソール20が、タグIDが取得できなかった(タグID受信機16がタグIDを受信できなかった)場合に、競技役員等は、タグコンソール20を操作して、検出できなかったタグID(対象となる競技者RNの無線タグ30に対応するタグID)を手動で入力する。
【0064】
このようにして、競技者RNが計時ゾーンZに到達する前までに、ポーリングリストが生成され、タグコンソール20に登録される。
【0065】
次に、図10を参照して、ポーリングリストを生成したタグコンソール20が行う計時タイムを算定する動作について説明する。図10は、タグコンソール20が実行する計時タイム算定処理を説明するためのフローチャートである。
【0066】
まず、タグコンソール20は、ポーリングリストから1つのタグIDを読み出す(ステップS11)。つまり、タグコンソール17は、ポーリングリストに登録されたタグIDを所定の順番に従って読み出す。
例えば、タグコンソール20は、登録時刻が早い順に従って、1つのタグIDを読み出す。なお、このステップS11が繰り返し実行され、登録時刻が最も遅いタグIDの読み出しを終えると、タグコンソール20は、以前のタグIDが残っている場合に、再度先頭から、登録時刻が早い順に再度タグIDを読み出す。
【0067】
タグコンソール20は、そのタグIDがポーリングリストに登録されてから一定時間が経過しているか否かを判別する(ステップS12)。すなわち、読み出したタグIDが、ポーリング受信が行えずに、一定時間が経過してもポーリングリストから削除されずに残っている状態であるか否かを判別する。
【0068】
タグコンソール20は、一定時間が経過していないと判別すると、検出タイム受信機19に検出タイムをポーリング受信させる(ステップS13)。つまり、タグコンソール20は、検出タイム受信機19を制御してポーリングリストから読み出したタグIDの無線タグ30に検出タイムの送信を要求し、応答してその無線タグ30から送られたタグID、各検出タイム、関門ID、及び、補正値αを含む情報を取得する。
【0069】
タグコンソール20は、関門IDが当該計時地点のものと一致しているか否かを判別する(ステップS14)。すなわち、タグコンソール20は、受信した関門IDが当該計時地点のランニングタイム送信機15の関門IDと同じであるか否かを判別する。ここで、関門IDが一致している場合には、当該計時地点にて無線タグ30のランニングタイムが補正されており、一方、関門IDが一致していない場合には、当該計時地点にて補正が行われておらず、以前の計時地点にて補正が行われていることになる。
【0070】
タグコンソール20は、関門IDが一致していると判別すると、各検出タイムの補正が不要であるため、後述するステップS16に処理を進める。
一方、関門IDが一致していないと判別した場合に、タグコンソール20は、補正値αを使用して、各検出タイムを補正する(ステップS15)。
【0071】
タグコンソール20は、計時ゾーンZと計時ラインLとの位置関係を数値化したパラメータに基づいて、各検出タイムから、計時タイムを算定する(ステップS16)。
すなわち、タグコンソール20は、記憶部20dに記憶されるパラメータ(γ)に基づいて、各検出タイムから、競技者RNが計時ラインLを通過した時点の計時タイムを算定する。より具体的には、上述した数式1,2等を用いて計時タイムを求める。
【0072】
タグコンソール20は、算定した計時タイムをデータサーバ23に送信する(ステップS17)。つまり、タグコンソール20は、パラメータ(γ)と各検出タイムとを用いて算定した計時タイムを、タグIDと共にデータサーバ23に送信する。
【0073】
タグコンソール20は、ポーリングリストから対象のタグIDを削除する(ステップS18)。すなわち、計時タイムの算定を終えて不要となった無線タグ30のタグIDをポーリングリストから削除する。
【0074】
一方、上述のステップS12にて、一定時間が経過していると判別した場合に、タグコンソール20は、そのタグIDを含む未通過者情報を生成し、映像記録装置22に供給する(ステップS19)。
【0075】
そして、タグコンソール20は、他のタグIDがポーリングリストに登録されているか否かを判別する(ステップS20)。
タグコンソール20は、他のタグIDがあると判別すると、ステップS11に処理を戻し、上述したステップS11〜S20の処理を繰り返し実行する。
一方、他のタグIDがないと判別した場合に、タグコンソール20は、計時タイム算定処理を終了する。
【0076】
このように、計時地点のタグコンソール20が行う計時タイム算定処理により、計時ゾーンZの中央に計時ラインLが位置するようにトリガ信号発生装置18を配置できない場合や、無線タグ30のトリガアンテナ35に特性(指向性等)がある場合でも、競技者の計時タイムを求めることができる。
この結果、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【0077】
上記の実施の形態では、タグコンソール20(記憶部20d)に、計時ゾーンZと計時ラインLとの位置関係を数値化したパラメータを記憶させ、このパラメータに基づいて、各検出タイムから、計時タイムを算定する場合について説明した。
しかしながら、タグコンソール20(記憶部20d)に記憶させる情報は、このようなパラメータに限られず、他に、無線タグ30のトリガアンテナ35の特性を規定する特性情報や、トリガ信号発生装置18の設置ポイントを含めた設置環境を規定する設置情報等を記憶させてもよい。
【0078】
例えば、無線タグ30のトリガアンテナ35が、走行する競技者RNを基準として前方又は後方に指向性を有している場合に、タグコンソール20(記憶部20d)に、その指向性を規定する特性情報を記憶させる。
なお、トリガアンテナ35が、走行する競技者RNを基準として前方に指向性を有している場合に、前方からのトリガ信号は受信し易いが、後方からのトリガ信号は受信し難くなる。逆に、トリガアンテナ35が後方に指向性を有している場合に、後方からのトリガ信号は受信し易いが、前方からのトリガ信号は受信し難くなる。
このような場合を考慮すると、図11(a),(b)に示すように、計時ゾーンZの一端(端部A)が計時ラインLと接するようにトリガ信号発生装置18を配置したり、図11(c),(d)に示すように、計時ゾーンZの他の一端(端部B)が計時ラインLと接するようにトリガ信号発生装置18を配置する場合がある。
このような場合、タグコンソール20(制御部20e)は、記憶部20dに記憶される特性情報に基づいて、検出タイム取得部20cが取得した各検出タイムの一方を計時タイムとして算定する。
例えば、トリガアンテナ35が前方に指向性を有しており、図11(c),(d)に示すように計時ゾーンZの端部Bが計時ラインLと接している場合に、タグコンソール20は、トリガOUTの検出タイムを計時タイムとして算定する。
【0079】
この他にも、ゴール地点では、他の計測ポイントと異なり、計時ラインLの前後で、競技者RNの速度が大きく異なる。ゴール地点以外の中継地点では、通常、競技者RNは、計時ラインLの前後をほぼ等速で走行(通過)する。しかしながら、ゴール地点では、競技者RNは、ゴールライン(計時ラインL)を通過すると、急激に速度を落とすことになる。
そのため、2地点の検出タイムから計時タイムを正確に算定することが困難となる。
この場合も、上述の図11(a),(b)に示すように、計時ゾーンZの端部Aが計時ラインLと接するようにトリガ信号発生装置18を配置したり、図11(c),(d)に示すように、計時ゾーンZの端部Bが計時ラインLと接するようにトリガ信号発生装置18を配置する必要がある。
つまり、トリガ信号発生装置18の設置ポイントがゴール地点である場合に、タグコンソール20(記憶部20d)には、計時ゾーンの何れか一端が計時ラインと接していることを規定する設置情報を記憶させる。
そして、タグコンソール20(制御部20e)は、記憶部20dに記憶される設置情報に基づいて、検出タイム取得部20cが取得した各検出タイムの一方を計時タイムとして算定する。
これらの場合も、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【0080】
上記の実施の形態では、ランニングタイム送信機15からランニングタイムを無線タグ30に向けて送信し、無線タグ30の計時ユニット34にてランニングタイムに同期した時刻を計時する場合について説明した。
しかしながら、ランニングタイム送信機15から送信するのは、ランニングタイムに限られず、他の時刻情報を送信してもよい。例えば、タイマコンソール11にて計時されている現在時刻をランニングタイム送信機15から無線タグ30に向けて送信し、無線タグ30(計時ユニット34)にてこの現在時刻に同期した時刻を計時させるようにしてもよい。
【0081】
具体的に説明すると、スタート地点のランニングタイム送信機15は、競技がスタートする前に、全ての無線タグ30に向けて、ブロードキャストにて一斉に現在時刻、関門ID及び、しきい値nを含む情報を送信する。この際、ランニングタイム送信機15は、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡り、現在時刻等を送信する。
一方、無線タグ30は、経時的に変化するはずの複数の現在時刻を参酌して、正当な現在時刻を計時ユニット34に設定する。そして、現在時刻と共に送られたしきい値n及び、初回設定時刻を記憶部38に記憶する。
【0082】
やがて競技がスタートし、競技者RNが計時地点まで進むと、無線タグ30は、計時地点のランニングタイム送信機15から送られる現在時刻を受信する。この現在時刻を受信すると、無線タグ30(タイム補正ユニット33)は、受信した現在時刻に基づいて、計時ユニット34が計時する時刻を補正する。その際、補正した時差(受信した現在時刻と計時ユニット34が計時した時刻との時差)を求め、記憶部38の累積時差βに加算して記憶する。そして、累積時差βから単位時間あたりの補正値αを求め、記憶部38に記憶する(更新する)。また、補正を行った計時地点を明らかにするために、現在時刻と共に送られる関門IDを記憶部38に記憶する(更新する)。
なお、この場合も、計時地点で受信した現在時刻と計時ユニット34にて計時した時刻との時差が、記憶部38に記憶したしきい値nよりも大きい場合に、タイム補正ユニット33は、時刻の補正を行わない。
【0083】
そして、無線タグ30は、検出したトリガ信号に基づいて2地点で特定した各検出タイムを記憶部38に記憶した後に、ポーリングに応答して、タグID、各検出タイム、関門ID、及び、補正値αを記憶部38から読み出し、検出タイム受信機19に送信する。
一方、タグコンソール20は、検出タイム受信機19を介してこれらの情報を取得すると、関門IDがその計時地点におけるランニングタイム送信機15の関門IDと異なっている場合に、検出タイムと共に取得した補正値αを使用して、各検出タイムを適宜補正する。タグコンソール20は、パラメータ(γ)に基づいて、各検出タイムから、競技者RNが計時ラインLを通過した時点の計時タイムを算定する。タグコンソール20は、算定した計時タイムを、タグIDと共にデータサーバ23に送信する。そして、データサーバ23は、スタート時刻と計時タイムとから、各競技者RNのタイムを特定する。
【0084】
上記の実施の形態では、スタート地点とゴール地点とが異なる場合を一例として説明したが、スタート地点とゴール地点が同じ場合にも、同様に適用可能である。
【0085】
上記の実施の形態では、マラソン競技を一例として説明したが、計時対象の競技は、これに限られず任意である。
例えば、駅伝、競歩、身障者車椅子ロードレース、自転車ロードレース、トライアスロン、及び、ランニングやオリエンテーション等の山岳競技等にも適宜適用可能である。
【0086】
以上説明したように、本発明によれば、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施の形態に係る競技用計測システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a),(b)共に、トリガ信号発生装置により形成される計時ゾーンを説明するための模式図である。
【図3】計時地点に配置されるタグコンソールの構成の一例を示すブロック図である
【図4】ポーリングリストの一例を示す模式図である。
【図5】(a),(b)共に、中央に計時ラインが位置する計時ゾーンを説明するための模式図である。
【図6】(a)〜(c)共に、計時ラインが中央からずれた計時ゾーンを説明するための模式図である。
【図7】(a)〜(c)共に、アンテナの特性により、計時ラインが実質的に中央からずれた計時ゾーンを説明するための模式図である。
【図8】無線タグの構成の一例を示すブロック図である。
【図9】(a)が競技のスタート時における無線タグ等の動作を説明するための模式図であり、(b)がポーリングリストを生成するタグコンソール等の動作を説明するための模式図である。
【図10】タグコンソールが実行する計時タイム算定処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】(a)〜(d)共に、計時ゾーンの一端に計時ラインが接する場合を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0088】
1 競技用計測システム
11 タイマコンソール
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 時刻表示装置
15 ランニングタイム送信機
16 タグID受信機
17,20 タグコンソール
18 トリガ信号発生装置
19 検出タイム受信機
21 撮影装置
22 映像記録装置
23 データサーバ
30 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者に携帯される計時機器と、計時位置を規定する計時ラインが含まれる所定の計時ゾーン内に向けてトリガ信号を発する信号発生機器と、前記計時機器から送られる検出タイムを受信するタイム受信機と、前記タイム受信機を制御するコンソールと、を含む競技用計測システムであって、
前記計時機器は、
計時の基準となる基準時刻と同期した時刻を計時する計時手段と、
前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記トリガ信号に基づいて前記計時ゾーンを判別し、判別した前記計時ゾーンの2地点にて前記計時手段が計時した時刻を、前記検出タイムとしてそれぞれ特定する特定手段と、
前記特定手段が特定した前記各検出タイムを前記タイム受信機に向けて送信する送信手段と、を備え、
前記コンソールは、
予め測定された前記計時ゾーンと前記計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶する記憶手段と、
前記タイム受信機が受信した前記各検出タイムを取得するタイム取得手段と、
前記記憶手段に記憶される前記パラメータに基づいて、前記タイム取得手段が取得した前記各検出タイムから、競技者が前記計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定するタイム算定手段と、を備える、
ことを特徴とする競技用計測システム。
【請求項2】
前記検出手段は、前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を捕捉することにより、競技者が前記計時ゾーンに進入する一端と、競技者が前記計時ゾーンから離脱する一端とを検出し、
前記特定手段は、前記検出手段が検出した前記計時ゾーンの両端にて前記計時手段が計時した時刻を、前記検出タイムとしてそれぞれ特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技用計測システム。
【請求項3】
前記検出手段は、所定の特性を有するアンテナを介して、前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を検出し、
前記記憶手段は、前記計時機器のアンテナの特性に応じて予め測定された前記計時ゾーンの検出位置と前記計時ラインとの位置関係を規定するパラメータを記憶する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技用計測システム。
【請求項4】
前記検出手段は、所定の特性を有するアンテナを介して、前記信号発生機器が発する前記トリガ信号を検出し、
前記記憶手段は、前記計時機器のアンテナが、走行する競技者を基準として前方又は後方の指向性を有することを規定する特性情報を記憶し、
前記タイム算定手段は、前記記憶手段に記憶される前記特性情報に基づいて、前記タイム取得手段が取得した前記各検出タイムの一方を計時タイムとして算定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技用計測システム。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記計時ゾーンの一端が前記計時ラインと接していることを規定する設置情報を前記パラメータとして記憶し、
前記タイム算定手段は、前記記憶手段に記憶される前記設置情報に基づいて、前記タイム取得手段が取得した前記各検出タイムの一方を前記計時タイムとして算定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技用計測システム。
【請求項6】
競技者に携帯される計時機器と、計時位置を規定する計時ラインが含まれる所定の計時ゾーン内に向けてトリガ信号を発する信号発生機器と、前記計時機器から送られる検出タイムを受信するタイム受信機と、前記タイム受信機を制御するコンソールと、を含むシステムにおけるタイム計測方法であって、
計時機器において、計時の基準となる基準時刻と同期した時刻を計時する計時ステップと、
計時機器において、信号発生機器が発するトリガ信号を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて検出したトリガ信号に基づいて計時ゾーンを判別し、判別した計時ゾーンの2地点において前記計時ステップにて計時した時刻を、検出タイムとしてそれぞれ特定する特定ステップと、
前記特定ステップにて特定した各検出タイムをタイム受信機に向けて送信する送信ステップと、
コンソールにおいてタイム受信機が受信した各検出タイムを取得するタイム取得ステップと、
コンソールが有する所定の記憶部に記憶される、予め測定された計時ゾーンと計時ラインとの位置関係を規定するパラメータに基づいて、前記タイム取得ステップが取得した各検出タイムから、競技者が計時ラインを通過した時点の計時タイムを算定するタイム算定ステップと、
を備えることを特徴とするタイム計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−61330(P2006−61330A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246106(P2004−246106)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】