説明

第1のキャップと第2のキャップとを有する医療用コネクタ

【課題】簡便にかつ繰り返し密封できる医療用コネクタを提供する。
【解決手段】医療用コネクタは、それぞれ入口を有する複数のアームを含む。この医療用コネクタは、第1のテザーによって連結される第1のキャップと第2のキャップと、第2のテザーによって第1のキャップと第2のキャップの少なくとも一方に連結される締め具とを有するカバーも含む。この締め具は、医療用コネクタの一部に固定される。第1のキャップと第2のキャップは、複数のアームのうちのそれぞれ第1のアームと第2のアームの入口の少なくとも一部を被覆する。医療用コネクタは、複数のアームのうちの第1のアームに着脱可能に連結されるスリーブを有するのが好ましい。第1のキャップは、第1のアームの端を取り囲むように構成された第1の内径を有する第1の部分と、スリーブの遠位端を取り囲むように構成された第2の内径を有する第2の部分とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用コネクタに関し、より具体的には、鼻から、物質を投与し又は患者の胃からの物質を除去するための医療法コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
患者が経口で薬や食物を受け入れることができない場合、薬や食物を胃に取り入れるために経鼻胃管を利用することができる。経鼻胃管はまた、患者の胃から物質を取り出すために使用することもできる。このような管は、軟質のプラスチック材料からなり、患者の体格や管を通過する物質の性質に応じて種々の径がある。この管は、患者の肺に挿入しないように注意しながら、患者の鼻を通り、食道を下って患者の胃へと送られる。管の一部は患者の鼻孔から延出し、鼻孔から離れた地点で終わる。
【0003】
参照として本明細書中に援用される、ロペス(Lopez)による米国特許第4,895,562号は、経鼻胃管の端に装着するための医療用コネクタを開示している。この医療用コネクタは、入口と出口を有する3本の通路を備える。止水弁が通路の集束部分に配置されることで、通路の種々の組み合わせを接続させて流体連通することができる。物質を患者の胃へと投与したり患者の胃から除去したりするために、注射器、シリンジポンプ、及び/又は回収バッグなどの種々の医療装置を医療用コネクタに装着することができる。
【0004】
例えば、米国特許第4,895,562号に開示されている1実施形態では、第1の通路が、患者の胃へと物質を投与したり患者の胃から物質を除去するためのシリンジポンプと流体連通しており、第2の通路が薬を投与するための注射器と流体連通しており、第3の通路が経鼻胃管と流体連通している。第1のバルブの位置では、物質が患者へと流れるように、第2及び第3の通路が流体連通している。第2の通路に接続されている注射器は、薬又は患者の胃から毒性のある汚染物質を洗浄するための洗浄液を含むことができる。第2の位置では、注射器への通路は遮断されて第1の通路と第3の通路が流体連通している。そうすることで、食物を患者に送り込んだり、物質を患者の胃から取り出すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような医療処置の最中に、胃洗浄システムの構成部品の1つ又はそれより多くを一時的に取り外す場合がある。こういった取り外しの際、医療用コネクタが外部の汚染源によって汚染されてしまう危険性、及び/又はコネクタの中身が漏れ出て他の装置や人間を汚染してしまう危険性が存在する。食物や薬の経鼻投与を受けている患者は特に感染しやすく、装置をできるだけ無菌の状態で患者と接触させておくように、注意する必要がある。さらに、患者の胃から除去されねばならない物質は一般に、本来危険な化学的又は生物学的特性を有し、回収した後も他人に害を及ぼす可能性がある。したがって、開口を有する胃洗浄システムの医療用コネクタであって、他の構成部品から取り外されている際に簡便に且つ繰り返し密封できる医療用コネクタに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1態様は、複数のアームとカバーを備える医療用コネクタに関する。複数のアームの各々は、通路に連結する入口を有するのが好ましい。通路は、バルブで合流するのが好ましい。このバルブは、どの通路が流体連通しているかを示すマーキングのある面を備えることができる。このマーキングは黒色であるのが好ましい。カバーは、第1と第2のキャップ、第1と第2のテザー、そして締め具を備えるのが好ましい。第1と第2のキャップは、第1のテザーによって連結されるのが好ましい。第2のテザーと締め具は、カバーと医療用コネクタとを連結するのが好ましい。
【0007】
第1のキャップは、第1のアームの入口の少なくとも一部を被覆するように構成され、第2のキャップは、第2のアームの入口の少なくとも一部を被覆するように構成される。キャップの少なくとも1つは、医療用コネクタのアームの端を取り囲むように構成された第1の内径を有する第1の部分と、アームの端に隣接する領域を取り囲むように構成された第2の内径を有する第2の部分とを備えるのが好ましい。或いは、スリーブをアームの端に連結し、スリーブの開口端を被覆するようにキャップを構成することもできる。
【0008】
医療用コネクタの使用方法は、(1)チューブを患者の鼻孔を通して挿入するステップ、(2)本発明の1実施形態にしたがって形成した医療用コネクタをチューブに連結するステップ、(3)第1のキャップ及び/又は第2のキャップを第1のアーム及び第2のアームから取り外すステップ、(4)第1の医療装置を第1のアームに接続し、且つ/又は第2の医療装置を第2のアームに接続するステップ、(5)物質が胃と第1の医療装置との間を流れるように、医療用コネクタのバルブを調節するステップ、そして(6)医療装置の片方又は両方を取り外し、片方又は両方のキャップを医療用コネクタのアームに再装着するステップ、を含むのが好ましい。
【0009】
本発明の上記の特徴、態様、そして利点を、本発明の限定ではなく例示を意図した好適な実施形態の図面を参照して、説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好適な実施形態の以下の詳細な説明は添付図面を参照するが、本発明は本明細書中に開示したどの特定の実施形態(単数又は複数)にも限定されない。本発明の範囲は添付の請求の範囲の参照によってのみ定められることを、意図している。
【0011】
図1〜4に概略的に示されているような幾つかの実施形態では、医療用コネクタ10は、複数のアーム(例えば、第1のアーム15、第2のアーム20、そして第3のアーム25)とカバー30を備える。複数のアーム15、20、25はそれぞれ対応する入口40、45、50(図2)を有し、これらの入口はそれぞれ対応する通路70、75、80(図4)に連結している。
【0012】
カバー30は、第1のキャップ90、第2のキャップ95、第1のテザー100、第2のテザー105、そして留め具110を備えるのが好ましい。第1のキャップ90と第2のキャップ95は共に、第1のテザー100によって連結されるのが好ましい。留め具110は医療用コネクタの一部に固定されており、好ましくは第2のテザー105によって、第1のキャップ90と第2のキャップ95の少なくとも一方に連結される。第1のキャップ90は、第1のアーム15の第1の入口40の少なくとも一部、好ましくは全てを被覆するように構成されており、第2のキャップ95は、第2のアーム20の第2の入口45の少なくとも一部、好ましくは全てを被覆するように構成されている。
【0013】
本明細書中で使用するように、「入口」という用語を医療用コネクタ10のアーム15、20、25に適用する場合は、各アームの端にある、周囲環境に連通する開口を意味している。アームの入口は一般に、チューブ、注射器、又は医療用コネクタ10の外部にある他の構成部品が、コネクタ10と流体連通するように配置される場所である。「入口」という用語は、ある物質が必ず医療用コネクタ10を通って特定の方向に流れなければならない、ということを暗示してはいない。
【0014】
図2に示すように、複数のアーム15、20、25の少なくとも1つは、種々の径のチューブを受けるように構成されている、種々のサイズにテーパ付けられた一連のフランジ120を備えるのが好ましい。入口40、50付近のフランジ120はより小さな径を有し、その一方で入口40、50から離れているフランジ120はより大きな径を有する。こういったフランジの間にあるフランジは、その径がそれぞれの端から徐々に増大している。径が徐々に増大するフランジによって、アームの端とチューブのような別の構成部品との間に強固な締まりばめが形成される。
【0015】
幾つかの実施形態では、複数の通路70、75、80のうちの少なくとも1つがテーパ付けされる。例えば図4に示す実施形態では、第2のアーム20は、注射器のルアーのテーパにほぼ適合するように、通路75が内側にテーパ付けされた側壁123を有するように、構成されている。内側にテーパ付けされた側壁123は、ルアーが通路75内にぴったりと嵌るように構成されている。他の実施形態では、内側にテーパ付けされた側壁123は、これに合うシリンジポンプの取り付け部を確実に受けるように構成されていてもよい。また別の実施形態では、第2のアーム20は、ルアーロックを使用して注射器などの医療器具としっかりと接続するように構成されていてもよい。このような実施形態では、第2のアームの端は、ねじ、ラビットエンド又はあらゆる他の適切な固定手段を含むのが好ましい。第2のアーム20におけるこのような嵌め合いや接続手段の説明は例示のためのもので、他のアーム15、25の1つ又はそれより多くがこのような種々の嵌め合い及び/又は接続手段のうちの任意の1つを含むことができることが理解されるであろう。
【0016】
図1〜4に示す医療用コネクタ10は3つのアーム15、20、25を備えるが、他の実施形態はより多くの又はより少ないアームを有することもできる。カバー30は、必要に応じて、第1のキャップ90及び第2のキャップ95に類似する、より少ない数のキャップ又は追加のキャップを有するように、また好ましくはこういったキャップを単一のカバー30に連結させるためのより少ない数のテザー又は追加のテザーを有するように、構成されていてもよい。
【0017】
図3に示すように、医療用コネクタ10は、第1のアーム15に着脱可能に連結されるスリーブ160をさらに備えることができる。このスリーブ160は近位端164と遠位端165を有し、種々の径のチューブを受けるユニバーサルアダプタとなるように構成されることができる。例えばスリーブ160の内側は、拡張して注射器やシリンジポンプなどの医療装置に付いている種々の径のカニューレを収容できる、シリコンゴムなどの弾性物質から作ることができる。スリーブ160の内径は、スリーブ160が受け取ってしっかりと保持するチューブ径の範囲を広くするように、1つ又はそれより多くのテーパ状の輪郭を含むことができる。
【0018】
スリーブ160の長さは、幾つかの設計上の目的を達成するように選択される。スリーブ160が長すぎると、スリーブ160の遠位端165が医療用コネクタ10を使用する医療処置の妨げとなったり、患者に不快感を与えたりする虞がある。スリーブ160の長さは、約0.5インチ〜約3インチであるのが好ましく、より好ましくは約1インチ〜約2.5インチ、もっとも好ましくは約1.5インチであるが、こういった範囲外の長さのスリーブもまた、医療用コネクタ10とカバー30の実施形態と合致している。
【0019】
図5〜8を参照すると、カバー30は第1のキャップ90と第2のキャップ95を備えるのが好ましく、これらのキャップは共に第1のテザー100に連結されるのが好ましい。第1のキャップ90は、第1のアーム15の少なくとも一部を被覆するように構成されており、第2のキャップは、第2のアーム20の少なくとも一部を被覆するように構成されている。留め具110は、第2のテザー105によって、第1のキャップ90及び/若しくは第2のキャップ95の少なくとも一方、又は第1のテザー100に連結されるのが好ましい。
【0020】
幾つかの実施形態では、第1のキャップ90は、スリーブ160の遠位端165(図3)か、又はスリーブ160が第1のアーム15に装着されていない場合はアーム15の端(図2)のいずれかを被覆するために使用することができる。
【0021】
図7に示すように、第1のキャップ90は、第1のアーム15の端を取り囲むように構成されている、第1の内径dsmallによって特徴付けられる第1の部分と、スリーブ160の遠位端155を取り囲むように構成されている、第2の内径dlargeを有する第2の部分を備えるのが好ましい。より小さな径部分はキャップの端にあるのが好ましく(例えば、図2を参照のこと)、より大きな径部分の上にドーム状の構造を形成する。
【0022】
2つの径dsmall、dlargeを有するキャップの使用によって、多くの利点が与えられる。例えば、より大きな径のスリーブ160が第1のアームに装着されているか否かにかかわらず、キャップ90などの単一のキャップを使用することができる。スリーブ160を被覆するための別個の第3のキャップや何らかの別の手段を設ける必要がなくなる。また、第1のキャップ90の2つの径によって、単一のキャップを、種々の径を有する医療用コネクタ10の多数のアームに嵌めることもできる。カバー30は、(径dsmallを使用して)第1のアーム15と、(径dlargeを使用して)第2のアーム20との両方に嵌る単一のキャップ90を備えることができる。或いは、図5及び6に示すカバー30は、3つより多いアームを有する医療用コネクタ10で使用することもできる。キャップはまた、アーム及び/又はスリーブのより広範囲の径に適応するように、種々の径のセクションを3つ又はそれより多く有するように構成されることもできる。
【0023】
第2のキャップ95を第1のキャップ90と同様に構成することができ、そうすることで第2のキャップ95も、より小さな径とより大きな径によって特徴付けられる部分を有する。或いは、第2のキャップ95の第1の径及び/又は第2の径が、第1のキャップ90で使用するものと異なっていてもよい。
【0024】
他の実施形態では、カバー30は2つの径dsmall、dlargeを有する単一のキャップ90を備えることができる。このような実施形態では、キャップ90を医療用コネクタ10につながないように構成することができ、その場合、第1のキャップ90が医療用コネクタ10から取り外されたときは、適切な場所に置かれるか又は保管される。或いはカバー30は、単一のキャップ90、留め具110、そしてキャップ90と留め具110を連結するためのテザー100を備えることもできる。留め具は、医療用コネクタの一部、好ましくはアームに連結される。単一のキャップ90が留め具110に装着されているか否かに応じて、キャップ90のより小さな径を使用して医療用コネクタ10のアームの端を被覆したり、より大きな径を使用して医療用コネクタ10の別のアームの端又は装着されているならばスリーブ160の端を被覆したりすることができる。
【0025】
2つ又はそれより多くのカバーを単一の医療用コネクタ10に用いることができ、各カバーは、医療用コネクタ10の別々のアームの入口を被覆するために1つ又はそれより多くのキャップを有する。1つ又はそれより多くのカバーは状況に応じて、カバーを医療用コネクタ10に固定するための留め具110などの、自身の留め具を備えることができる。或いは単一の留め具110が複数のテザーに連結され、このテザーが医療用コネクタ10で使用する各キャップに接続されることもできる。
【0026】
医療用コネクタ10の使用前や第1のアーム15と第2のアーム20が医療装置から取り外されているときに入口40、45を被覆するために、カバー30のキャップ90、95を使用することができる。キャップ90、95は、医学上不活性のプラスチックなどの軟質材料からなることが好ましく、そうすることによって、アーム15、20への装着時に伸張して入口40、45周りの密封をもたらす。或いは、第1のキャップ90、第2のキャップ95又はその両方を、硬質プラスチックや金属などの硬質材料から形成することもできる。この場合キャップ90、95は、入口40、45周りの密封を形成するために、第1のアーム15及び第2のアーム20の端にぱちんと嵌るか又はねじ留めされるように構成されるのが好ましい。
【0027】
幾つかの実施形態では、第1のキャップ90だけがアーム15にしっかりと固定される一方で、第2のキャップ95は第2のアーム20の端をよりゆるく取り囲む。このような実施形態では、第1のキャップ90の装着時に第1のテザーが伸張し、テザーの張力によって、第2のキャップ95を第2のアーム20の端の上の定位置に保持する。第1のキャップ90が第1のアーム15から取り外されると、第2のキャップも簡単に取り外され、そうすることで入口40、45の両方の覆いをすぐに取り外し、使用可能にすることができる。
【0028】
第2のテザー105は、第2のキャップ95のエッジ125に取り付けられるのが好ましく、そうすることで、第2のキャップ95と第2のテザー105は、カバー30を平らに置いたときにカバー30の下側130と実質的に共通の平面に配置される。第2のテザー105の別の装着場所や装着方向も使用できる。例えば、第2のテザー105を第1のキャップ90、第1のテザー100、又は別の場所に固定することもできる。或いは第2のテザー105を別の角度で固定したり、アームへの装着がしやすいようにキャップの別の部分に固定したりすることもできる。
【0029】
テザー100、105の主な利点は、キャップが入口40、45を被覆していないときに(例えば、医療装置をアームに接続できるようにキャップが取り外されているときに)、第1のキャップ90と第2のキャップ95をそれぞれ第1のアーム15と第2のアーム20に近接させておけることである。こうすることで、キャップ90、95が紛失したり、キャップが汚染されたり、汚染された物質を放出したりしないようにできる。キャップ90、95を医療用コネクタ10に近接させておくことで、医療装置を取り外した際の逆流や汚染の問題を回避するために入口40、45をすぐに被覆するように、キャップ90、95をすぐに利用することもできる。また、テザーによって通路を片手で開閉できる。テザーのないキャップでは、医療用コネクタ10を保持するのに片方の手を、キャップを取り外したり再装着したり、また保持するのにもう片方の手を必要とする。医師は、医療処置の最中に多数の器具を保持しなければならないことがよくあるため、キャップを片手で装着除去できることは、重要な利点である。
【0030】
第1のキャップ90を取り外したとき、医療用バルブ10に近接させておくことが望ましい場合がある。第1のキャップ90を入口40付近にごく自然に配置することによって、カバー30が実行中の医療処置の妨げとならないような一助となり、またキャップ90が医療用コネクタ10から離れてぶら下がっていることで患者が体験する不快感が減少する。
【0031】
図9はカバー30の1実施形態を示し、そこでは第1のキャップ90が医療用バルブ10の比較的付近にある。このような実施形態では、第1のテザー100と第2のテザー105のうちの少なくとも一方を、第1のキャップ90を第1のアーム15から取り外したときに、この第1のキャップ90が第1のアーム15の中心を通る中心線CL付近に配置されるように、構成する。
【0032】
図8は、第1のキャップ90のこのように自然な配置を行うための、第1のテザー100と第2のテザー105の1つの構造を示し、そこでは第1のテザー100と第2のテザー105のうちの少なくとも一方がほぼu字形の断面を有する。テザー100、105のu字形の断面によって、テザーが入口40に向かって内側に自然に曲がるようにバイアス付加状態を形成することができる。
【0033】
留め具110は、複数のアーム15、20、25のうちの1つに固定されるのが好ましい。図2に例示する実施形態に示すように、留め具110は第3のアーム25に固定されているが、留め具110を、第2のアーム20などの医療用コネクタ10の別のアームや医療用コネクタ10のどこか別の部分に固定することもできる。
【0034】
図6に示すように、留め具110は内径dのリング140を備えるのが好ましい。留め具110を装着するアームは、本体部分145とネック部分150を備え、ネック部分150は外径dattachを有する(図4を参照のこと)。幾つかの実施形態では、留め具110の内径dはネック径dattachにほぼ等しい。別の実施形態では、リング140の内径dは径dattachよりも大きいため、カバー30がネック部分150に対して自由に回転しこれに沿ってスライドすることができる。例えば1実施形態では、ネック部分150が約1/4インチの径dattachを有し、内径dが径dattachよりも約1/32〜1/16インチ大きい。
【0035】
また、留め具110は弾性材料からなってもよく、留め具110の内径dは、留め具110の装着前は、ネック径dattachよりも小さい。このような実施形態では、複数のアーム15、20、25の1つに対してリング140は押しつけられ又は伸ばされる。
【0036】
或いは留め具は、非円形であるため単一の径dによって特徴付けられない空隙を備えることもできる。例えばその空隙は、好ましい製造上の特徴を有する五角形又は六角形状からなる。医療用コネクタとテザーのうちの1つ又はそれより多くが一体形成される場合は、留め具(単数又は複数)は、このようなテザー(単数又は複数)と医療用コネクタの本体との間の連結手段(単数又は複数)となる。
【0037】
製造を簡単にするために、幾つかの実施形態では、第1のテザー100と第2のテザー105、第1のキャップ90と第2のキャップ95、そして留め具110を共通の金型を使用して一体形成することができる。別の実施形態では、カバー30のこういった構成部品の1つ又はそれより多くを別個に形成し、そして残りの構成部品に装着する。例えば留め具110を、カバー30の他の構成部品とは別に、より耐久性のある材料から形成する。留め具110がより耐久性のある材料から形成されると、医療用コネクタ10の使用時のより高い応力負荷に適応することができる。使用時にそれほど応力を受けないカバー30の残りの構成部品は、より低コストであったりより弾性があったり、といった他の所望の特徴を有する材料から形成される。
【0038】
図10を参照すると、医療用コネクタ10はバルブ170を備えるのが好ましく、このバルブは、アーム15、20、25の複数の通路70、75、80のうちの2つ又はそれより多くを選択的に接続するように構成されている。バルブ170は、種々の位置へと回転して種々の通路70、75、80を接続するハンドル175を有する。幾つかの実施形態では、ハンドル175は、通路70、75、80のどれが流体連通しているかを示すように構成されているマーキング185を有する面180を備える。こういったマーキング185は、3つの矢印と「OFF」という語のセットからなるのが好ましい。
【0039】
面180は、マーキング185とコントラストをなすように、白色で光を拡散する表面を有する。1実施形態では、マーキング185は赤色である。好適な実施形態では、マーキング185は黒色である。黒色のマーキングを使用することで、長期間使用した医療用コネクタ10でも、マーキング185の視認性によりよい摩耗特性がもたらされると思われる。また別の実施形態では、マーキング185は照明の暗い状況下でも視認できる蛍光塗料から形成されることもできる。
【0040】
使用前、医療用コネクタ10は、第1の入口40と第2の入口45を被覆するように第1のアーム15と第2のアーム20に第1のキャップ90と第2のキャップ95を装着した状態で、密閉された滅菌容器の中に予め包装されているのが好ましい。一旦容器から取り出されると、キャップ90、95が第1のアーム15と第2のアーム20に依然として装着されたままで、医療用コネクタ10は、図1に示すようにチューブ115に装着される。チューブ115はタイゴン(Tygon:登録商標)などの弾性材料からなり、第1のアーム15は、チューブ115の装着を助けるように、種々のサイズにテーパ付けされた一連のフランジ120を備える。
【0041】
医療用コネクタ10の1つの使用方法は、第1のキャップ90と第2のキャップ95を第1のアーム15と第2のアーム20から取り外すステップ、第1の医療装置を第1のアームに接続し、且つ/又は第2の医療装置を第2のアームに接続するステップ、物質が胃と第1の医療装置との間を流れることができるようにバルブ170を調節するステップ、そして医療装置のいずれか又は両方を取り外してキャップ90、95の一方又は両方を医療用コネクタ10のアーム15、20に装着するステップを含む。
【0042】
1つの医療装置しか医療用コネクタ10に装着されていない場合、医師はキャップ90、95の1つだけを取り外せばよい。残りのキャップは、第2の医療装置が医療用コネクタに装着される準備ができたときに、必要に応じて後で取り外すことができる。
【0043】
キャップ90、95の少なくとも一方がタブ102を備えるのが好ましい。このタブは例えば、キャップの、テザー100との接続点とは反対側に配置される。タブ102は、第1のキャップ90と第2のキャップ95の取り外しを助けるものとして使用される。同じ手で医療用コネクタを握るのと同時に、医療用コネクタ10からタブ102を親指で押して外す。幾つかの実施形態では、u字形の第1のテザー100や何らかの他の手段によって、第1のキャップ90を第1の入口40の比較的近くに留めておく。一旦第1のキャップ90を第1のアーム15から取り外してしまうと、医療装置を医療用コネクタ10に装着できるように、キャップ90を必要に応じて配置することができる。キャップ90及び/又は第1のテザー100を引っ張ることで、第2のキャップ95を続いて取り外すことができる。第1のテザー100と第2のテザー105が弾性材料からなる場合、第2のキャップ95を握って医療用コネクタ10から離れる方向に引っ張ることで、第1のキャップ90を取り外す前に代わりに第2のキャップ95を取り外すことができる。このことによって第1のテザー100と第2のテザー105は、第2のキャップ95が第2のアーム20の端より上へと引っ張られるまで、伸張させられる。
【0044】
選択したキャップ90、95を取り外した後に、第1の医療装置が第1のアームに接続され、且つ/又は第2の医療装置が第2のアームに接続される。種々の医療装置を第1のアーム15と第2のアーム20に装着することができる。例えば最初に第2のアーム20に、チューブ115を通って胃へと注入するための薬又は洗浄液を含む注射器を接続することができる。薬及び/又は洗浄液を注入してからその注射器を第2のアーム20から取り外し、代わりにシリンジポンプを装着して、薬及び/又は洗浄液を含む患者の胃の内容物を取り出す。胃の中の物質をシリンジポンプを使用して取り除いた後、バルブ170のハンドル175を図10に示す位置から反時計回りに約90°回転させて、通路70、75を流体連通させる。そしてシリンジポンプを使用して、その物質をシリンジポンプから第1のアーム15に装着されている容器へと移送する。物質を容器に移送すると、その容器を医療用バルブから取り外し、物質を取り除く。第2のアーム20に装着されているシリンジポンプを使用して注入された胃からの物質を受け取るための拡張可能なバッグなどの容器を、第1のアーム15に接続することもできる。
【0045】
1実施形態では、バルブ170を調節するステップは、ハンドル175を1つ又はそれより多くの位置へと回転させて、複数の通路70、75、80を流体連通させるステップを含む。バルブ170は、アーム15、20、25のどれがバルブ170の面180にある矢印に合わせられているかに応じて、通路70、75、80を相互接続させる。「OFF」という単語がアーム15、20、25のうちの1つに合わせられている場合、このアームに対応する通路はオフになり、残りのアームの通路から分離させられる。
【0046】
例えば図10に示す例示の実施形態では、「OFF」という単語が第2のアーム20に合わせられており、矢印のうちの2つが第1のアーム15と第3のアーム25に合わせられている。バルブ170のこの向きでは、第1のアーム15の第1の通路70と第3のアーム25の第3の通路80(図4を参照のこと)が流体連通しており、第2のアーム20の第2の通路75は孤立している。したがって薬、洗浄液、又は患者の胃の内容物などの物質は、第1のアーム15と第3のアーム25に接続されているチューブの間を流れることができる。
【0047】
バルブ170が、正面180から見て図10に示す位置から時計回りに90°回転すると、第1のアーム15の第1の通路70がオフになり、第2のアーム20の第2の通路75と第3のアーム25の第3の通路80が流体連通する。逆に、バルブ170が、正面180から見て図10に示す位置から反時計回りに90°回転すると、第3のアーム25の第3の通路80がオフになり、第1のアーム15の第1の通路70と第2のアーム20の第2の通路75が流体連通する。バルブ170が図10に示す位置から180°回転すると、3つのアーム15、20、25の3つの通路70、75、80の全てが相互接続し、流体連通する。
【0048】
幾つかの実施形態では、バルブ170が図10に示す位置から約±45°又は±135°回転すると、通路70、75、80のそれぞれが孤立し、他の通路70、75、80のどれとも流体連通しない。この位置では、原則として流体も他の物質もバルブ170を通って流れない。
【0049】
医療用コネクタ10の使用方法はまた、医療処置の最中に時々医療装置の片方又は両方を取り外すステップを含むのが好ましい。医療装置を取り外すと、キャップ90、95の片方又は両方を医療用コネクタ10のアーム15、20に再装着する。このようにして、医療用コネクタ10の通路70、75を周囲環境から分離させる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の1実施形態の医療用コネクタの概略図であり、コネクタのアームがチューブに装着されており、そのチューブの一端は患者の胃内に配置されている。
【図2】図1の医療用コネクタの拡大概略図である。
【図3】スリーブを含む、本発明の医療用コネクタの1実施形態の概略図である。
【図4】図2の医療用コネクタの断面図であり、バルブとカバーは図示されていない。
【図5】本発明のカバーの別の実施形態の側面図である。
【図6】図5に示すカバーの上面図である。
【図7】図6に示すキャップの拡大上面図である。
【図8】図6のカバーのテザーの、線B−Bに沿った断面図である。
【図9】2つのキャップのうちの1つがアームから取り外されている、本発明の1実施形態の医療用コネクタの概略図である。
【図10】本発明の医療用コネクタの1実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用コネクタであって、
各々が入口と通路を有する複数のアームと、
第1のテザーによって連結される、前記複数のアームのうち第1のアームの端を被覆するように構成された第1のキャップと前記複数のアームのうち第2のアームの端を被覆するように構成された第2のキャップと、
前記医療用コネクタの一部に固定され、第2のテザーによって前記第1のキャップ、前記第2のキャップ又は前記第1のテザーの少なくとも1つに連結される留め具と、
2つ又はそれより多くの通路を選択的に流体連通させるように構成され、前記複数の通路のうちのどれが流体連通しているかを示すように構成されたマーキングのある面を有するバルブと、を備える医療用コネクタ。
【請求項2】
前記第1のキャップは、前記第1のアームの端を取り囲むように構成された第1の内径を有する第1の部分と、前記第1のアームの端付近の領域を取り囲むように構成された第2の内径を有する第2の部分とをさらに備える、請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項3】
前記第2のキャップは、前記第2のアームの端を取り囲むように構成された第1の内径を有する第1の部分と、前記第2のアームの端付近の領域を取り囲むように構成された第2の内径を有する第2の部分とをさらに備える、請求項2記載の医療用コネクタ。
【請求項4】
前記第1のキャップは、その取り外しや前記第1のアームへの装着を容易にするように構成されたタブをさらに備える、請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
前記留め具は、前記複数のアームのうちの1つに固定される、請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項6】
前記留め具が固定されるアームが第3のアームである、請求項5記載の医療用コネクタ。
【請求項7】
前記留め具が固定される前記アームが本体部分とネック部分とを備え、
前記留め具は内径を有するリングを備え、
前記内径は前記本体部分の径よりも小さく、前記ネック部分の径にほぼ等しい、
請求項5記載の医療用コネクタ。
【請求項8】
前記マーキングが黒色である、請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項9】
前記第1のアームに着脱可能に連結されるスリーブをさらに備える、請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項10】
前記第1のキャップは、前記第1のアームの端又は前記スリーブの端のいずれかを被覆するように構成される、請求項9記載の医療用コネクタ。
【請求項11】
医療用コネクタのカバーであって、
医療用コネクタの第1のアームの少なくとも一部を被覆するように構成された第1のキャップと、医療用コネクタの第2のアームの少なくとも一部を被覆するように構成された第2のキャップとを有し、前記第1のアームと,前記第2のアームとは共に連結され,
前記第1のキャップ又は前記第2のキャップの少なくとも一方を前記医療用コネクタの一部に連結させるように構成されたテザーと、を備える医療用コネクタのカバー。
【請求項12】
前記第1のキャップと前記第2のキャップとを連結する第2のテザーをさらに備える、請求項11記載のカバー。
【請求項13】
前記第1のキャップは、前記第1のアームの端を取り囲むように構成された第1の内径を有する第1の部分と、前記第1のアームの前記端付近の領域を取り囲むように構成された第2の内径を有する第2の部分とをさらに備える、請求項11記載のカバー。
【請求項14】
前記キャップの少なくとも1つが軟性材料からなる、請求項11記載のカバー。
【請求項15】
前記キャップの少なくとも1つがタブを備える、請求項11記載のカバー。
【請求項16】
前記第1のテザーと前記第2のテザーの少なくとも一方がほぼu字形の断面を有する、請求項11記載のカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−500057(P2007−500057A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533237(P2006−533237)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/015798
【国際公開番号】WO2004/105857
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(500488317)アイシーユー メディカル インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ICU Medical,Inc.
【住所又は居所原語表記】951 Calle Amanecer,San Clemente,California 92673,United States of America
【Fターム(参考)】