説明

第1及び第2の基板を有する素子並びにその製造方法

本発明は、第1の基板(1)と第2の基板(2)を有する素子に関している。この素子では、第1の基板(1)に少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子(4)が配設され、該オプトエレクトロニクス素子(4)は少なくとも1つの有機材料を含み、前記第1の基板(1)と第2の基板(2)は、それらの間にオプトエレクトロニクス素子(4)が設けられるように互いに相対的に配設されており、前記接続材料(3)は、第1の基板(1)と第2の基板(2)の間に設けられ、前記接続材料(3)は、オプトエレクトロニクス素子(4)を取り囲んで、前記第1の基板(1)と第2の基板(2)を相互に機械的に接続し、前記接続材料(3)は専ら20wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含み、前記接続材料(3)は当該接続材料の熱膨張係数を有利には低減させる、少なくとも1つの充填材(5)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独国特許出願第10 2009 019 518.1号及び第10 2009 036 395.5号の優先権を主張するものであり、これによってそれらの開示内容は本願に含まれるものとなる。
【背景技術】
【0002】
本願発明は、第1の基板と第2の基板を有している素子に関している。また本発明は、そのような素子の製造方法にも関している。
【0003】
2つの基板の間に配置された有機発光ダイオード(OLED)は、接着剤層を用いて密封される。この場合の接着剤層は、2つの基板の間に存在している。ここでの接着剤は、例えば紫外線ビームを用いて硬化されている。ただしこの接着剤層は、酸素や水蒸気を完全に遮断するわけではないので、これらの気体成分は月日の経過と共に接着剤層を通って誘起発光ダイオード内へ浸透する。有機発光ダイオード(OLED)は、酸素や水素に対する耐性を有していないので、これらの成分は、有機発光ダイオード(OLED)の障害を引き起こしたり、有機発光ダイオード(OLED)の寿命低下を引き起こす。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)の寿命を延ばすために、考えられることの1つに、基板の1つに空洞を形成し、この空洞内にゲッターを設けることが挙げられる。このゲッターとは、化学的な反応性材料であって、真空状態をできるだけ長く保つために用いられる。このゲッター表面においては、気体分子が、ゲッター材料の原子と直接的に化学結合され、あるいは気体分子が吸着によって引き留められる。このようにして気体分子は"捕獲"される。
【0005】
しかしながら基板の1つに設けられる空洞と、該空洞内に設けられるゲッターとによれば、そのような素子の製造に対する手間暇やコストもかかり、このことはマイナスとなる。
【0006】
例えば米国特許第6,998,776 B2号明細書からは、2つの基板を有し、それらの基板の間に有機発光ダイオード(OLED)が配置されている装置が公知である。
【0007】
本発明の課題は、オプトエレクトロニクス構成素子のための改良された薄膜カプセル化を提供することにある。この薄膜カプセル化は、特に可視光に対して良好な光学的透過性を有しているべきである。
【0008】
本発明が基礎とする課題は、周囲の影響から保護されると同時に低コストで簡単に製造のできる有機オプトエレクトロニクス素子を備えるべく改善された素子の提供にある。
【0009】
前記課題は、請求項1の特徴部分に記載された本発明による素子と、請求項13の特徴部分に記載されたその製造方法とによって解決される。本発明による素子とその製造方法の別の有利な実施形態並びに改善構成は、従属項にも記載されている。
【0010】
本発明の1つの実施形態によれば、第1の基板と第2の基板が設けられ、この場合第1の基板上に少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子が設けられ、この素子が少なくとも1つの有機材料を含んでいる。
【0011】
有利には第1の基板と第2の基板は、オプトエレクトロニクス素子が第1の基板と第2の基板の間に配設されるように、相互に相対的に配置されている。
【0012】
さらに別の実施形態によれば有利には、第1の基板と第2の基板の間に、オプトエレクトロニクス素子を取り囲み、かつ第1の基板と第2の基板を相互に機械的に接続する、接続材料が設けられる。この接続材料は、オプトエレクトロニクス素子を有利に取り囲んでいる。特に有利には、この接続材料はオプトエレクトロニクス素子を完全に取り囲む。例えば前記接続材料は、オプトエレクトロニクス素子をフレーム状に取り囲んでいてもよい。
【0013】
有利には、接続材料は、0wt%乃至100wt%の割合(但し0と100は含まない)の酸化銀を含み、有利には専ら5wt%乃至80wt%、理想的には専ら10wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含む。特にこの酸化銀は不純物に由来するものではなく、意図的な成分若しくはドープ材として、当該接続材料内に注入されるものである。
【0014】
有利には、接続材料は、当該接続材料の熱膨張係数を変化させる(有利には低減させる)少なくとも1つの充填材を含んでいる。
【0015】
本発明による特に有利な実施形態によれば、当該素子が、第1の基板と第2の基板を有し、第1の基板上には少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子が配設され、該オプトエレクトロニクス素子は、少なくとも1つの有機材料を含んでいる。この第1の基板と第2の基板は、互いに相対的に配設され、それによって、オプトエレクトロニクス素子が第1の基板と第2の基板の間に配設されるものとなっている。第1の基板と第2の基板の間には、接続材料が設けられており、この接続材料は、オプトエレクトロニクス素子を取り囲み、さらに第1の基板と第2の基板を相互に機械的に接続させる。この接続材料は、専ら20wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含んでいる。さらに前記接続材料は、少なくとも1つの充填材を含んでいる。この充填材は、前記接続材料の熱膨張係数を変化させるか、有利には低減させるものである。
【0016】
本発明によれば、前記オプトエレクトロニクス素子は有利には、第1の基板と、第2の基板と、接続材料とによって完全に取り囲まれる。その際にこれらの2つの基板と接続材料は、有利には、オプトエレクトロニクス素子を含有し封止されたセルを形成する。このセルは、特に第1の基板と第2の基板の2つの基準面と、接続材料の側面とから構成され、この側面が2つの基準面を相互に接続させている。
【0017】
有利には、接続材料とオプトエレクトロニクス素子の間には、間隔が設けられる。特に有利には、前記接続材料は、第1の基板上でオプトエレクトロニクス素子に隣接して設けられ、前記接続材料は、オプトエレクトロニクス素子から横方向に離間されている。特に接続材料は、オプトエレクトロニクス素子と接触していない。
【0018】
有機オプトエレクトロニクス素子を周辺環境の影響から保護することは、特に有利には、第1の基板と第2の基板の間に設けられる接続材料によって行われる。この接続材料は、第1の基板を第2の基板の間の機械的な接続を形成している。
【0019】
周辺環境の影響とは、特に空気及び/又は湿気の当該素子内への侵入と理解されたい。そのような空気及び/又は湿気の当該素子内への侵入は、有機オプトエレクトロニクス素子を損なわせるか又は機能不全を引き起こすものである。
【0020】
そのような水蒸気、酸素、湿気をよせつけない構造によって、結果的に当該オプトエレクトロニクス素子の寿命も延びることになる。さらに、有利には、ゲッターの分量が低減され、場合によってはこのゲッター自体が完全に省かれる。それによって、簡単に製造でき、しかも低コストで製造できる有利な素子が得られるようになる。
【0021】
気密な封止は有利には接続材料を用いて行われる。この接続材料は、0wt%乃至100wt%(但し0と100は含まない)、有利には専ら5wt%乃至80wt%、理想的には専ら10wt%乃至70wt%の割合の酸化銀と、当該接続材料の熱膨張係数を変化させる、有利には低減させる少なくとも1つの充填材6とを含んでいる。
【0022】
20wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含んだガラスろう材並びにその製造方法は、例えば独国特許出願公開第4 128 804号明細書、及び独国特許出願公開第2 222 771号明細書に記載されており、これらの開示内容は、これによって本願明細書においても参照され得る。
【0023】
有利な実施形態によれば、前記接続材料は、0wt%乃至100wt%(但し0と100は含まない)の割合の酸化銀、有利には専ら5wt%乃至80wt%の割合の酸化銀、理想的には専ら10wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含んでいる。
【0024】
さらに別の有利な実施形態によれば、前記接続材料は、無鉛ガラスを含んでいる。このような無鉛ガラスを含んでいる接続材料は特に有利となる。
【0025】
別の実施形態によれば、前記接続材料は、低融点のガラスを含んでいる。このような融点の低いガラスを含んだ接続材料も特に有利となる。
【0026】
本発明によれば特に有利には、前記接続材料が無鉛でかつ低融点のガラスを含んでいる。
【0027】
低融点のガラスとは、特にその溶融の始まる温度が600℃以下、有利には500℃以下、特に有利には400℃以下、理想的には350℃以下の非常に低いものである。
【0028】
本発明の別の有利な実施形態によれば、前記接続材料がガラスフリットである。このガラスフリットは溶融ガラスの製造時に得られる中間生産物である。このガラスフリットは、ガラス粉末表面の溶融によって生じる。その際にはガラス粒子も一緒に溶け出す。このようなガラスフリットは、特に多孔性の材料から生成される。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、前記接続材料はガラスろうである。素子のカプセル化のためのガラスろうは例えば米国特許第6,936,963号明細書から公知であり、これによって、その開示内容も本願明細書において参照される。
【0030】
本願発明による素子のさらに別の実施形態によれば、充填材が負の熱膨張係数を有している。例えばこれに適した充填材は、例えば公知文献"Festkoerper mit negativer thermischer Ausdehnung, von George, Ch. und Kern, H..; Technische Universitaet Ilmenau, Institut fuer Werkstofftechnik"から公知であり、これによって、その開示内容も本願明細書において参照される。特にこの文献において第4頁に開示されているテーブル1は明示的に参照される。
【0031】
有利な実施形態によれば、前記接続材料における充填材の割合は、50wt%以下であり、有利には30wt%以下である。
【0032】
素子の有利な実施形態によれば、前記接続材料が少なくとも1つの成分及び/又はビームを吸収するさらなる充填材を含んでいる。有利には、これらの成分及び/又はさらなる充填材は、少なくとも部分的に赤外線ビーム及び/又は紫外線ビームを吸収する。有利には前記接続材料は、そこに含まれている成分及び/又はさらなる充填材によって20%の赤外線及び/又は紫外線ビームを、有利には40%の赤外線及び/又は紫外線ビームを、特に有利には60%若しくはそれ以上の赤外線及び/又は紫外線ビームを吸収する。
【0033】
さらなる充填材、とりわけ赤外線若しくは紫外線ビームの波長領域を吸収する特性を備えたさらなる充填材を含有する接続材料は、有利には熱絶縁性の特性を有している。さらに、前述した波長領域のビームを吸収する接続材料は、有機オプトエレクトロニクス素子を太陽光の照射から保護する。
【0034】
前記さらなる充填材は、特にビーム吸収性の物質若しくは化合物であり得る。例えばそのような充填材には、酸化バナジウム、スピネル、スピネル化合物が該当する。
【0035】
スピネルは、特に化学式MgAl24で表わされる立方晶系結晶のマグネシウムアルミニウム酸化鉱物、いわゆるスピネル単結晶であってもよい。さらに前記したような吸収特性を有するさらなる充填材として、スピネル化合物も適している。このスピネル化合物は、スピネルと類似の結晶構造を有しており、とりわけ一般的なタイプとしてAP24で表わされる化学的化合物である。前記Aは二価のメタライゼーション、前記Pは三価のメタライゼーション、前記Xは、主に酸化物若しくは硫化物である。スピネル化合物の例として例えば、とりわけマグネシウムスピネル(MgAl24)、亜鉛尖晶石(ZnAl24)又はコバルトスピネル(CoAl24)が挙げられる。
【0036】
その他にも前記さらなる充填材は、例えば接続材料自体を構成している成分であってもよいし、代替的に前記さらなる充填材は後から当該接続材料に混合されたものであってもよい。
【0037】
有利な実施形態によれば、前記第1の基板及び/又は第2の基板がそれぞれガラス基板である。
【0038】
特に有利には、前記第1の基板及び/又は第2の基板2は、板ガラスからなる。
【0039】
ここでの板ガラスとは、とくに石灰分とナトリウム分を含んだガラス、例えば炭酸石灰を含んだガラスと理解されたい。その他にもこの板ガラスには、さらなる炭酸塩及び/又は酸化物並びに不純物が含まれていてもよい。そのようなガラスは、ソーダ石灰ガラスとも称される。
【0040】
ホウケイ酸ガラスに比べて前記板ガラスは低コストな材料である。それに伴って、板ガラスからなる第1の基板と第2の基板を含んだ素子は、非常に低コストで製造可能である。
【0041】
有利には前記オプトエレクトロニクス素子は有機発光ダイオード(OLED)である。このオプトエレクトロニクス素子は、さらに有機フォトダイオード若しくは有機ソーラセルであってもよい。
【0042】
有機素子、特にOLEDは、例えば水蒸気や酸素のような周辺環境からの影響に弱い。それ故に、接続材料を用いて水蒸気や酸素に対する素子の密封性を高めることは、有機発光ダイオードにとって非常に有利である。
【0043】
本発明による素子の別の実施形態によれば、素子が第1の基板と第2の基板を有し、第1の基板上に少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子が配設され、このオプトエレクトロニクス素子は少なくとも1つの有機材料を含んでいる。第1の基板と第2の基板は、互いに次のように相対的に配設されている。すなわち、当該のオプトエレクトロニクス素子が第1の基板と第2の基板の間に配置されるように配設されている。接続材料は、第1の基板と第2の基板の間に配設されており、前記接続材料は、オプトエレクトロニクス素子を取り囲み、さらに第1の基板と第2の基板を相互に機械的に接続している。この接続材料は、0wt%乃至100wt%(但し0と100は含まない)、有利には専ら5wt%乃至80wt%、理想的には専ら10wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含み、場合によってはさらに接続材料3の熱膨張係数を変化させる、有利には低減させる、少なくとも1つの充填材を含んでいる。また前記接続材料は、無鉛で低融点のガラスであり、さらに少なくとも1つの成分及び/又は、ビーム吸収性の特性を有するさらなる充填材、例えば酸化バナジウム、スピネル又はスピネル化合物を含み得る。場合によっては前記接続材料は、さらに付加的に、有利には負の熱膨張係数を有するさらなる充填材を含んでいてもよい。接続材料における充填材の割合は、50wt%以下、有利には30wt%以下である。
【0044】
この種の低融点で酸化銀を含有し、場合によっては膨張係数を低減させる充填材を伴う接続材料は、特に低温状態において、酸素及び水蒸気に対する素子の良好な密閉性を可能にする。このような酸素と水蒸気に対する良好な密閉性の結果として、有利には、有機オプトエレクトロニクス素子の寿命も著しく延びる。さらにその他の利点として、ゲッターなどの分量が低減されるかないしはゲッターそのものを完全に省くことができるようになる。これにより、有利には、製造コストも大幅に軽減される。
【0045】
第1の基板と、第2の基板と、オプトエレクトロニクス素子と、接続材料とを有している、本発明による素子を製造するための方法は、以下に述べる方法ステップを含んでいる。すなわち、
少なくとも1つの有機材料を含む少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子が配設されている第1の基板を準備するステップと、
第2の基板を準備するステップと、
専ら20wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含み、かつ、接続材料の熱膨張係数を変更、有利には低減させる少なくとも1つの充填材が埋込まれている、接続材料を、前記第1の基板又は前記第2の基板に配設するステップと、
前記オプトエレクトロニクス素子と前記接続材料とが第1の基板と第2の基板の間に配設され、前記接続材料によってオプトエレクトロニクス素子が取り囲まれるように、記第1の基板と第2の基板を互いに相対的に配設するステップと、
前記接続材料を溶融させ、それによって前記第1の基板と第2の基板を相互に機械的に接続させるステップとを有している。
【0046】
なお前記接続材料は、第2の基板に配設されてもよい。そのようなケースでは、それに続いて、当該接続材料により、オプトエレクトロニクス素子が取り囲まれるように、第1の基板と第2の基板が互いに相対的に配置される。
【0047】
代替的に前記接続材料は、第1の基板上に配置されてもよい。その場合にも、当該接続材料が次のように配設される。すなわちオプトエレクトロニクス素子が当該接続材料によって取り囲まれるように配設される。ここでのオプトエレクトロニクス素子は、有利には接続材料の後で第1の基板に被着される。続いてこのケースでは、オプトエレクトロニクス素子と接続材料とが第1の基板と第2の基板の間に配置されるように、第2の基板が第1の基板に対して相対的に配設される。
【0048】
本発明による方法の別の実施形態は、当該素子の有利な実施形態に類似して行われてもよいし、逆に行われてもよい。本発明の方法を用いれば、特にこれまでに記載してきた前記素子が製造可能である。このことは、前記素子と結び付けて開示されてきた様々な特徴が当該方法においても開示されていることを意味する。
【0049】
この種の方法によれば、次のような素子を製造できる。すなわち、有機オプトエレクトロニクス素子を含み、当該有機オプトエレクトロニクス素子が当該素子の優れた密封性によって、周辺環境からの影響、例えば湿気または空気などの悪影響から保護されるような素子である。この素子のさらなる利点は、低コストで製造できることである。なぜなら、接続材料を用いた特異的な協働によって、特に、酸化銀と膨張係数を低減する充填材の高い割合によって、必要とされるゲッターの量を低減し、特に有利にはゲッター自体を完全に省くことができるようになる。
【0050】
前記接続材料は、前記基板のうちの1つに被着させるために、有利には、ペースト状の性質を有し、そのため前記接続材料はある一点からスタートして、有利には中断されることなく、1つの完全に閉じられたフレームが形成されるように被着させることが可能である。この接続材料の被着の後では、当該接続材料が有利には自身が被着されている基板と一緒に焼結処理を施される。
【0051】
また代替的に前記接続材料は、粉末状の特性を有するものであってもよい。その場合にはそのような粉末状の接続材料が当該基板の1つに振りまかれるようにして設けられる。
【0052】
有利には、前記接続材料の溶融のために、400℃よりも低い温度が用いられる。特にこの温度は、400℃以下の温度で溶融し得る接続材料成分のために用いられる。有利には前記接続材料は、例えば330℃の燃焼温度のもとで生成され、それ以下では良好な粘着性を伴っている。これにより、有利には、この種の燃焼温度のもとで、既に酸素及び水蒸気に対する良好な密閉性が得られるようになる。
【0053】
本発明の有利な実施形態によれば、接続材料の溶融が局所的に、回転するビーム照射源、例えばレーザービームによって行われる。それに対しては、レーザービームを用いて前記接続材料が一時的にかつ局所的に軟化され、それに続いて冷却によって硬化される。
【0054】
本発明による素子及びその製造方法のさらなる特徴、利点、有利な実施形態、改善形態は、以下の明細書で図1から図4に基づいて詳細に説明する実施例からも得られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による素子の各実施例を概略的に示した図
【図2】本発明による素子の各実施例を概略的に示した図
【図3】本発明による素子の各実施例を概略的に示した図
【図4】誘起発光ダイオード(OLED)の概略的に示した断面図
【0056】
実施例
本発明による各実施例とそれらを描写した各図面において、同じ構成要素又は機能の同じ構成要素には、それぞれ同じ符号が用いられている。なお図示された各構成要素とそのサイズについては必ずしも縮尺通りではない。
【0057】
図1には、本発明による素子の平面図が示されており、図2には、本発明による素子の概略的な断面図、例えば図1による素子の概略的断面図が示されている。この素子は、第1の基板1と第2の基板2を有している。第1の基板1と第2の基板2の間には、オプトエレクトロニクス素子4が配設されている。このオプトエレクトロニクス素子4は、少なくとも1つの有機材料を含んでいる。
【0058】
有利には、前記オプトエレクトロニクス素子4は、ビーム発光性の素子であり、特に有利には、誘起発光ダイオード(OLED)である。この誘起発光ダイオードは、当該誘起発光ダイオードを形成している少なくとも1つの層に有機材料が含まれているという顕著な特徴を備えている。誘起発光ダイオード(OLDE)は、例えば、特に図4に描写されているような以下の連続した層構造を有している。すなわち、
カソード47,電子注入46,電子伝導層45,発光層44,正孔伝導層43,正孔注入層42,及びアノード41である。
【0059】
これらの層の1つ、有利にはカソードとアノードを除いた全ての層が、有機材料を含んでいる。
【0060】
第1の基板1と第2の基板2の間には、接続材料3が設けられている。有利にはこの接続材料3は、オプトエレクトロニクス素子4をフレーム状に取り囲む。さらにこの接続材料3は、第1の基板1と第2の基板2を相互に機械的に接続させている。
【0061】
前記接続材料3は、有利にはオプトエレクトロニクス素子4を完全に取り囲んでいる。
【0062】
有利には前記接続材料3は酸化銀であってもよく、その割合は0wt%乃至100wt%の間(但し0と100は含まない)、有利には専ら5wt%乃至80wt%の間、理想的には専ら10wt&乃至70wt%の間の値である。特に有利には前記接続材料3は、専ら50wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含んでいる。
【0063】
さらに前記接続材料3は、少なくとも1つの充填材5を含んでいる。この充填材5は、接続材料3の熱膨張係数を変化せしめる材料、有利には低減させる材料である。前記充填材5は、有利には、負の熱膨張係数を有していてもよい。有利には前記接続材料3における充填材5の割合いは、50wt%よりも少なく、特に有利には30wt%よりも少ない。充填剤5によって特に接続材料3の熱膨張係数の利点が次のように整合され得る。すなわち、酸素及び水蒸気に対する密閉性がより改善された有機オプトエレクトロニクス素子4の遮蔽性が得られるように整合される。特にそのような永続的に密閉される素子の遮蔽性は重要である。
【0064】
この種の接続材料3の組成比と、当該接続材料3を用いたオプトエレクトロニクス素子4の完全な取り囲みとによって、接続材料3は、有利には、周辺環境の影響からオプトエレクトロニクス素子4を保護する。この場合周辺環境の影響とは、特に空気又は湿気の当該素子内部への浸透と理解されたい。特に少なくとも1つの有機層を備えているオプトエレクトロニクス素子の場合、空気や湿気との接触は、不所望な障害に結び付き、特に有機オプトエレクトロニクス素子4の機能不全に陥りかねない。このようなことは有利には、接続材料3の特定の組成比によって避けられる。
【0065】
このような接続材料3による構成素子の気密な遮蔽性は、有利には、当該有機オプトエレクトロニクス素子4の寿命を顕著に延ばす。
【0066】
さらに当該素子の製造も容易となる。なぜなら、基板1,2の1つの空洞内に設けられるゲッター材料が必ずしも接続材料3の特定の組成を必要とはしないからである。それにより、所要のゲッターにおける分量が低減され、あるいはそれが完全に省かれる。さらに基板の1つの処理、特に空胴の形成とゲッターの設置が有利には、必ずしも必要とされないことである。有利にはこの種の構成素子の低コストの製造が実現可能になる。
【0067】
第1の基板1及び/又は第2の基板2のそれぞれは有利にはガラス基板である。特に有利には、第1の基板1及び/又は第2の基板2は、板ガラスであってもよい。この板ガラスは、ホウケイ酸ガラスのような他のガラス材料に比べて、材料費が低コストで済む。従って、板ガラスからなる第1の基板1と第2の基板2を含む構成要素は有利には低コストで製造可能である。
【0068】
有利には、前記接続材料3は、ガラスフリットを含んでいる。また代替的に前記接続材料3は、ガラスろう材を含んでいてもよい。特に有利には、前記接続材料3は、無鉛及び/又は低融点ガラスであってもよい。
【0069】
有利には前記第1の基板1は、図1の平面図にも示されているように第2の基板2から、当該第2の基板を越えて横方向に突出している。このことは、第1の基板1と第2の基板2の基準面がそれぞれ異なったサイズであることを意味する。ここでは特に第1の基板1の基準面の方が第2の基板の基準面よりも大である。
【0070】
有機オプトエレクトロニクス素子4への給電は、有利には、当該オプトエレクトロニクス素子4に面している側の第1の基板表面上で給電線路8,9を用いて行われている。その際、これらの給電線路8,9の1つが、第1の基板1とは反対側のオプトエレクトロニクス素子4の上にあるコンタクト接点から、オプトエレクトロニクス素子4側面を介して第1の基板1まで案内されている。このオプトエレクトロニクス素子4の側面に沿って案内されている部分は、絶縁層10によってオプトエレクトロニクス素子4の層から電気的に絶縁されている。
【0071】
オプトエレクトロニクス素子4の電気的なコンタクト形成については特に図2においてその概略が示されている。
【0072】
第1の基板1が第2の基板2よりも広い基準面を有していることによって、オプトエレクトロニクス素子4の給電線路8,9は、接続材料3から有利に引き出すことが可能であり、さらに当該引き出し箇所においても電気的な特性を損なうことなく封止が可能である。オプトエレクトロニクス素子4の給電線路8,9は、特に横方向で第2の基板2から突出しており、そのため、給電線路8,9の電気的な接続が問題無く達成可能である。
【0073】
図3に示されている構成素子は、図2に示されている構成素子とは次の点で異なっている。すなわち、第1の基板1と第2の基板2の間に、複数の有機オプトエレクトロニクス素子4が設けられている点で異なっている。つまり、本願の構成素子は、1つの有機オプトエレクトロニクス素子4の適用に限定されるものではない。従って有機オプトエレクトロニクス素子4の使用数は、構成素子の使用目的に応じて変更が可能である。
【0074】
さらに接続材料3は、図2の構成素子の場合とは異なってここではさらなる充填材6も含んでおり、このさらなる充填材6は、電磁波ビームを吸収するものである。特に有利には、このさらなる充填材6によって、赤外線波長領域のビーム、及び/又は、紫外線波長領域のビームが吸収される。これにより、例えば太陽光のような、オプトエレクトロニクス素子4に悪影響を与える光線の照射が有利に避けられるようになる。
【0075】
例えば前記さらなる充填材6として、酸化バナジウム、スピネル、スピネル化合物などが挙げられる。
【0076】
図3による構成素子が図2による構成素子とさらに異なっている点は、接続材料3がさらなる物質7を含んでいることである。このさらなる物質7は、第1の基板と第2の基板相互間の、スペーサーとしての役割を果たす物質である。また代替的に、接続材料3内に設けられるスペーサーではなく、オプトエレクトロニクス素子4と接続材料3の間に設けられるようなスペーサー(図示せず)を当該構成素子内に統合してもよい。
【0077】
前記スペーサー7は、第1の基板と第2の基板2の間で所期の固定間隔を設定するために用いられる。それによって、接続材料3の軟化ないし溶融プロセス中に前記第1の基板と第2の基板がスペーサー7によって定められた間隔を下回ることが避けられるようになり、これによって、有機オプトエレクトロニクス素子4の製造過程中に、第1の基板1と第2の基板2の間の間隔が過度に狭まって当該オプトエレクトロニクス素子4自体が損なわれてしまうようなことが回避される。
【0078】
接続材料3の軟化は、有利には400℃よりも低い温度で行われる。
【0079】
例えば図1、図2、図3による構成素子の製造方法は、以下に述べるような方法ステップを有していてもよい。
【0080】
第2の基板2上に接続材料3、例えばガラスフリットを、例えばフレーム状に流して被着させ、有利には焼結処理する。さらに第1の基板1を準備して、該第1の基板1に、有機オプトエレクトロニクス素子4を被着させる。
【0081】
接続材料3は、0wt%乃至100wt%(但し0と100は含まない)、有利には専ら5wt%乃至80wt%、理想的には専ら10wt%乃至70wt%の割合の酸化銀と、接続材料3の熱膨張係数を変化させる(有利には低減させる)少なくとも1つの充填材6とを含んでいる。但しこの充填材6は、接続材料3内に直接含まれていてもよいし、後から追加して混合されてもよい。
【0082】
さらに有利には、接続材料3内に、特にビームを吸収するさらなる充填材6と、スペーサー7とが添加されてもよい。
【0083】
ここにおいて、第2の基板2に対して第1の基板1が置かれる。その際この第1の基板1は、有機オプトエレクトロニクス素子4が第1の基板1と第2の基板2の間に配設されるように第2の基板2に対して載置される。さらに第1の基板1と第2の基板2は、相互に次のように配設される。すなわち接続材料3が有機オプトエレクトロニクス素子4を例えばフレーム状に取り囲むように配設される。
【0084】
最後に、接続材料3が400℃よりも低い温度で溶融され、それによって前記第1の基板1と第2の基板2が相互に機械的に接続するように処理される。
【0085】
このような接続材料3との特別な協働によって、第1の基板1と第2の基板2の間で気密な接続が形成される。それにより有利には、酸素や水蒸気をよせつけない、有機発光ダイオードの密封性が得られ、これによって、有利には、当該構成素子の寿命も延びることになる。さらに、高コストなゲッターの追加とそれに伴う処理ステップも省くことができるようになる。このようにして簡単でかつ低コストな製造が可能な気密な構成素子が得られるようになる。
【0086】
本発明は、前述してきたような種々の実施例の記載によってこれらの実施形態に限定されるものではない。それどころか本発明は、あらゆる新たな特徴並びにそれらの特徴のあらゆる組み合わせも含有するものである。このことは特に従属請求項に記載された特徴のあらゆる組み合わせにも当てはまり、たとえそれらの特徴若しくはそれらの組み合わせ自体がこれらの従属請求項や実施例の説明に明示的に記載されていなくても覆されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(1)と第2の基板(2)を有する素子であって、
前記第1の基板(1)には少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子(4)が配設されており、該オプトエレクトロニクス素子(4)は少なくとも1つの有機材料を含んでおり、
前記第1の基板(1)と第2の基板(2)は、当該第1の基板(1)と第2の基板(2)の間にオプトエレクトロニクス素子(4)が設けられるように互いに相対して配設されており、
接続材料(3)が、前記第1の基板(1)と第2の基板(2)の間に設けられており、前記接続材料(3)は、オプトエレクトロニクス素子(4)を取り囲んで、前記第1の基板(1)と第2の基板(2)を相互に機械的に接続しており、
前記接続材料(3)は、専ら20wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含み、
前記接続材料(3)は、当該接続材料(3)の熱膨張係数を変化させる、有利には低減させる、少なくとも1つの充填材(5)を含んでいることを特徴とする素子。
【請求項2】
前記接続材料(3)は、無鉛及び/又は低融点のガラスを含んでいる、請求項1記載の素子。
【請求項3】
前記接続材料(3)は、ガラスフリット又はガラスろう材を含んでいる、請求項1または2記載の素子。
【請求項4】
前記充填材(5)は、負の熱膨張係数を有している、請求項1から3いずれか1項記載の素子。
【請求項5】
前記接続材料(3)における充填材(5)の割合は、50wt%よりも少ない、請求項1から4いずれか1項記載の素子。
【請求項6】
前記接続材料(3)における充填材(5)の割合は、30wt%よりも少ない、請求項1から5いずれか1項記載の素子。
【請求項7】
前記接続材料(3)は、少なくとも1つの成分及び/又はさらなる充填材(6)を含んでおり、前記さらなる充填材(6)は、ビーム吸収性の特性を備えている、請求項1から6いずれか1項記載の素子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの成分及び/又はさらなる充填材(6)は、酸化バナジウム、スピネル、又はスピネル化合物である、請求項7記載の素子。
【請求項9】
前記接続材料(3)は、少なくとも1つのさらなる物質(7)を含み、該少なくとも1つのさらなる物質(7)は、前記第1の基板(1)と第2の基板(2)相互のスペーサーとして用いられる、請求項1から8いずれか1項記載の素子。
【請求項10】
前記第1の基板(1)及び/又は前記第2の基板(2)は、ガラス基板である、請求項1から9いずれか1項記載の素子。
【請求項11】
前記オプトエレクトロニクス素子(4)は、有機光を発するダイオード(OLED)である、請求項1から10いずれか1項記載の素子。
【請求項12】
前記接続材料(3)が無鉛及び低融点のガラスであり、
前記充填材(5)は、負の熱膨張係数を有し、
前記接続材料(3)における充填材(5)の割合は、30wt%よりも少なく、
前記接続材料(3)は、少なくとも1つの成分及び/又はビーム吸収性のさらなる充填材(6)を含み、
前記さらなる充填材(6)は、酸化バナジウム又はスピネルである、請求項1記載の素子。
【請求項13】
素子を製造するための方法であって、
以下の方法ステップ、すなわち、
少なくとも1つの有機材料を含む少なくとも1つのオプトエレクトロニクス素子(4)が配設されている第1の基板(1)を準備するステップと、
第2の基板(2)を準備するステップと、
専ら20wt%乃至70wt%の割合の酸化銀を含み、かつ、接続材料(3)の熱膨張係数を変更、有利には低減させる少なくとも1つの充填材(5)が埋込まれている、接続材料(3)を、前記第1の基板(1)又は前記第2の基板(2)に配設するステップと、
前記オプトエレクトロニクス素子(4)と前記接続材料(3)とが第1の基板(1)と第2の基板(2)の間に配設され、前記接続材料(3)によってオプトエレクトロニクス素子(4)が取り囲まれるように、前記第1の基板(1)と第2の基板(2)とを互いに相対的に配設するステップと、
前記接続材料(3)を溶融させ、それによって前記第1の基板(1)と第2の基板(2)を相互に機械的に接続させるステップとを有していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から12いずれか1項記載の素子を製造するための、請求項13記載の方法。
【請求項15】
溶融のために、400℃よりも低い温度が用いられる、請求項13又は14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−525312(P2012−525312A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507603(P2012−507603)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000491
【国際公開番号】WO2010/124682
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】