第14族元素を含有する新規な材料
本発明は、ジントル相としても知られる三成分相の熱分解によって、またはその酸化溶媒との反応によって、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法に関する。本発明はまた、この方法によって得ることができる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料、および該材料の主として電気化学分野における使用、特に電池のための使用にも関する。材料は、とりわけ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類イオン型、より詳細にはリチウムイオン型の電池の分野に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジントル相としても知られている三成分相の熱分解によって、または前記相の酸化溶媒との反応によって、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、この方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料、および該材料の主として電気化学分野における使用、特に電池への使用にも関する。前記材料は、より詳細には、アルカリ金属および/またはアルカリ土類イオン型電池、とりわけリチウムイオン型電池の分野に適している。
【0003】
更に、本発明は定義された材料から製造されたアノードに関する。
本発明の方法は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を、可逆的な方法で、蓄積および放出することができる最適な質量容量を備えた材料を得ることを可能にする。これにより、そのような材料は電気化学の分野における使用に特に適したものとなる。
【0004】
本発明の方法によって得られる材料は、さらに光起電力技術および熱電気の分野における使用に適合され得る。
【背景技術】
【0005】
リチウムイオン型充電式電池は、多数の電子装置に大いに用いられている。これらの電池のほとんどは、グラファイトから形成された材料から構成されたアノードを備える。これらの材料は、電池の充電の間に、挿入機構によってリチウムを取り込むことができる。グラファイト製のアノードは、一般に、良好なサイクル性能(cyclabilite)および良好なクーロン効率を有している。しかしながら、グラファイト製の材料の質量単位当たり組み込まれるリチウムの量は、比較的低く、約300〜400mAh/gである。
【0006】
アノードの構成に用いられる別の種類の材料は、電池の充電の間に合金の形成を伴う機構(転化機構)によってリチウムを取り込むことができる金属を含有する。この種のアノードは、グラファイト製のアノードと比較して、質量単位当たりのリチウムのより高い取り込み可能にするが、これらのアノードのサイクル性能およびクーロン効率は低い。
【0007】
さらに、上述したアノードは、リチウム化および脱リチウム化の過程の間に、体積の重大な変化を受ける傾向を有している。この体積の変化は、アノードを構成する材料の能動要素の間、すなわち希釈導体(例えば炭素)の粒子と結合剤との間における機械的および電気的接触の低下に結びつき得る。電気的機械的接触の低下は、活性アノードの材料におけるリチウムの部分的または全体的な挿入能力(質量単位当たり挿入され得るリチウムの量)およびそのサイクル性能を低下させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、最適な質量容量と良好なサイクル性能とを同時に有する材料を得ることを可能にする方法を開発する必要がある。
さらに、重大な体積の変化を伴うことなく、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を可逆的な方法で蓄積および放出できる材料を得ることを可能にする方法を有する必要がある。
【0009】
更に、電池および特にリチウムイオン電池のアノードにおける反復使用に適合した材料を調製することを可能にする方法を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、比較的簡単かつ低コストの方法によって、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、特にリチウムの挿入の間に非常に良好な可逆的な質量容量を有し、かつ電気化学的処理を伴わない材料を得ることを可能にする。該方法は、他の後合成工程なしで用いることができる材料を与える。実際に、合成された材料は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、より詳細にはリチウム、の挿入の間における機械的疲労、および体積の激しい変動による疲労を克服することを可能にする。
【0011】
実際には、本発明は、まさに、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法を提供することにより、従来技術の要求および不都合に応えることを目指す。該方法は、下記の工程、すなわち、式(I):
AxGyMz
の材料からであって、前記式中
Aは、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される、少なくとも1つのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を表わし;
xは、1〜20、とりわけ2〜15、より詳細には3〜12、またはさらには4〜10の整数を表わし;
Gは、特にケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの元素の周期的分類の第14族元素を表わし;
yは、1〜17、とりわけ1〜10、特に1〜6、さらには1〜4の整数を表わし;
Mは、特にアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される、少なくとも貴金属または半貴金属を表わし;
zは、0または1〜5、特に1〜3、さらには1〜2の整数を表すことと;
その出発化合物から、真空下での熱分解によって、または酸化溶媒との反応によって、Aを少なくとも部分的に引き抜く工程と、真空下での熱分解である場合には、zは0とは異なることと;
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と
を有する。
【0012】
本発明の枠組の中では、貴金属または半貴金属とは、より詳細には元素の周期的分類の第9族、10族、11族、12族および13族から選択される遷移金属またはポスト遷移金属であると理解されるべきである。
【0013】
式(I)の材料AxGyMzは、三成分相またはジントル相と名付けられ得る。
特定の実施形態によれば、式(I)の材料において、Gは、元素の周期的分類のうちの2つの第14族元素の混合物であり得る。この実施形態において、Gはケイ素とスズとの混合物であってもよい。さらに、この実施形態によれば、特に興味深い材料は、Aがリチウムであり、Gがケイ素とスズとの混合物である材料であり得る。
【0014】
収集した材料がAを有さない場合には、それは本発明の方法が出発物質中に存在するすべてのAの引き抜きを可能にしたことを意味するであろう。
前記材料がAに乏しい場合には、前記材料は式(IV):
Ax’GyMz
の材料であると理解されるべきである。前記式中;
A、GおよびMは先に定義した通りであり;
yおよびとzは先に定義した通りであり;
x’はy/10未満の数である。
収集した材料は、有利にはナノ微粒子の形態で存在し得る。前記粒子は、球状もしくは長尺状の形状を有するか、または球状および長尺状が混ざったものを有し得る。球状の形状については、粒子の径は2〜100nmであり得る。長尺状の形状については、粒子の径は2〜20nmであり、それらの長さは5〜10000nmであり得る。
【0015】
「長尺状の形状」により、径より長い長さを有する、非球形の幾何学的な形、とりわけ、フィラリア形タイプまたは顕著なフィラリアが理解されるべきである。粒子の形状および寸法は、電子顕微鏡法による直接観察から推定することができる。
【0016】
本発明の第1実施形態によれば、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法は、少なくとも、式(II):
AxGyMz
の材料の真空下における熱分解の工程を含み、前記式中;
Aは、とりわけリチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択されるアルカリ金属を表わし;
xは、1〜20、とりわけ2〜15、より詳細には3〜12、またはさらには4〜10の整数を表わし;
Gは、ケイ素を表わし;
yは、1〜10、特に1〜6、さらには1〜4の整数を表わし;
Mは、特にアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも貴金属または半貴金属を表わし;
zは、1〜5、特に1〜3、さらには1〜2の整数を表す。
【0017】
この方法は「熱分解法」または「固体法」と呼ぶことができる。
この実施形態では、収集した材料がAを有さないことがある。換言すると、本発明の方法は式(II)の材料中に存在するすべてのAの引き抜きを可能にした。
【0018】
前記材料はまた、Aが乏しいこともある。前記材料は式(IV):
Ax’GyMz
を有し、前記式中;
A、GおよびMは先に定義した通りであり;
yおよびとzは先に定義した通りであり;
x’はy/10未満の数である。
この方法は、良好な質量容量を有する、ケイ素と少なくとも貴金属または半貴金属とを含有する相を得ることを可能にする。
【0019】
質量容量は、質量単位当たりに蓄積され得る電子の量を意味する。本発明の意味において、良好な質量容量は、グラファイトより大きな質量容量であり、とりわけ400mAh/gより大きい、さらには500mAh/gより大きい質量容量である。
【0020】
述べたように、熱分解法は、出発三成分相からアルカリ金属またはアルカリ土類金属を完全にまたは部分的に引き抜くことを可能にし得る。収集した材料に対するX線回折解析により該材料中におけるGおよびMの元素の二相の存在を確認することができ、バンドの幅によって200nmより小さいナノ粒子サイズを定義することができる。化学分析に結び付けられた電子顕微鏡(走査型および/または透過型)観察により、該方法に特有である構造、すなわち、M粒子がG粒子のマトリックス中に均一に分散している構造を特徴付けることが可能となる。ナノメートルの大きさを有するG粒子およびM粒子は、とりわけ1〜200nm、とりわけ2〜100nm、とりわけ2〜80nmである。
【0021】
熱分解を進めるために、出発三成分相は粉末形態であってよく、とりわけ大きさが小さい粒子の形態にあってよい。この粉末は、より詳細には、三成分相を乳鉢中ですり潰すことによって得ることができる。
【0022】
本発明に従った方法では、熱分解は、高温、特に500℃以上、とりわけ600℃以上、さらには650℃以上の温度で行われ得る。熱分解は、好ましくは500°〜750℃の温度、より好ましくは650℃で行うことができる。Aがリチウムである場合には、前記温度は有利には650℃以上である。
【0023】
この熱分解は、数時間、とりわけ10〜30時間、とりわけ15〜25時間、とりわけ18〜24時間にわたって行われ得る。
前記熱分解法は、「真空下」、つまり、減圧下において行うことができ、とりわけ10−2Pa以下、とりわけ10−3Pa以下、より詳細には10−4Pa以下の圧力下で実施され得る。好ましくは、前記熱分解は、10−6〜10−2Pa、より好ましくは10−5〜10−3Paの圧力下で行われ得る。
【0024】
無論、これらのパラメーターは、当業者によって、とりわけ出発三成分相に応じて、とりわけ元素Aの性質および/または例えばリチウムイオン電池用のような目的とする用途に応じて、最適化され得る。
【0025】
例えば黒色粉末およびシルバーメタリックの塊を示す式(IV)の材料に一致する式および化学量論を有する銀、ケイ素およびリチウムから形成された材料の顕微鏡検査、および50nmを超える大きさを有するナノ粒子の存在を示す銀に対応する細いバンドを示すX線回折解析により、当業者は、熱分解の条件が、例えば、期間、圧力および/または温度の点において、激烈過ぎたと推定することができる。同じように、X線回折解析は、収集した材料中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の残余を示すことができ、それにより、当業者は、とりわけ期間、圧力および/または温度の点において、条件が穏やか過ぎると推定することができる。
【0026】
前記熱分解は、酸化溶媒(solvant oxydant)の存在下で行うことができる。この方法では、前記溶媒は、出発三成分相のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を完全にまたは部分的に引き抜くことを可能にし得る。
【0027】
第2実施形態によれば、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法は、少なくとも下記工程、すなわち
酸化溶媒を式(III):
AxGyMz
の材料と接触させる工程であって、前記式中;
Aは、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される、少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし;
xは、1〜12、とりわけ1〜10、特に1〜8の整数を表わし;
Gは、特にケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの第14族元素を表わし;
yは、1〜17、とりわけ1〜15、特に1〜13、さらには1〜10の整数を表わしl
zは0を表わす、工程と;
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と、を有する。
【0028】
前述したように、収集した材料がAを有さない場合には、それは本発明の方法が出発物質中に存在するすべてのAの引き抜きを可能にしたことを意味する。
この第2の特定実施形態では、Aが乏しい材料は式(IV)
Ax’GyMz
の材料であり、前記式中;
AおよびGは先に定義した通りであり;
yは先に定義した通りであり;
zは0であり;
x’はy/10未満の数である。
この調製法はまた「液体法」と呼ぶこともできる。
【0029】
前記酸化溶媒は2つの以下の特徴、すなわち:
少なくとも1つの酸化官能基を有すること、つまり、アルカリまたはアルカリ土類、とりわけナトリウム(Na)またはカリウム(K)の類と反応することにより、H2を発生させ、この官能基は、特にアルコール、アミン、チオール、カルボニル、カルボン酸およびホスホン酸から選択され得ることと;
少なくともアルキル基、アリール基またはアラルキル基を含むことと、を有する。
前記アルキル基、アリール基またはアラルキル基は、とりわけ:
エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ノナデシルのような直鎖状、分岐鎖状、または環式のアルキルラジカル、および
1つ以上の様々な置換基、特にアルキルの類によって任意に置換されたアリールラジカルおよびアラルキルラジカルであって、アルキルは任意で置換されており、かつ/または、その鎖は1つ以上のヘテロ原子、とりわけO、SおよびNの類によって割り込まれていてもよい、アリールラジカルおよびアラルキルラジカルから選択することができる。
【0030】
前記アリールラジカルまたはアラルキルラジカルは、特に置換または未置換の芳香族ラジカル、とりわけ、少なくともハロゲン原子、アルキル、アルコール、チオール、アミン、酸、エーテル、エステル、アミド、酸、チオエーテル、チオエステルから選択される基、並びに複数のハロゲン原子によって置換された芳香族ラジカルから選択される。さらに、特に、前記芳香族ラジカルは、フェニル、ベンジル、メトキシフェニル、メトキシベンジル、ハロフェニル、ハロベンジルおよびトリルから選択することができる。
【0031】
酸化溶媒(ベンジル型アルコール)のなかでは、とりわけ、例えば一つまたはいくつかのアルキルラジカルによって、一置換または多置換されたベンジルアルコールが挙げられる。
【0032】
より詳細には、前記アルキル基、アリール基およびアラルキル基は、ナノ粒子の安定化を可能にするために十分に嵩高い。
この第2実施形態では、収集した材料は、次に熱処理またはアニーリング工程に供され得る。本発明の意味において、「アニーリング」は、前記材料が調製された温度より概ね低い温度で行われる熱処理を意味する。この熱処理工程は、特に結晶化度の改善を可能にし得る。これは、特にX線回折によって観察され得る。
【0033】
熱処理は、高温で、特に300℃以上、詳細には400℃以上、またはさらには500℃以上の温度で、行われ得る。熱処理の温度は、有利には、200〜500℃、250〜400℃、より有利には300〜350℃である。
【0034】
熱処理の継続時間は、30分〜10時間、特に1時間〜5時間、より詳細には1時間半〜3時間であり得る。
熱処理工程は、不活性雰囲気下、特に真空下、アルゴン下または窒素下において行なうことができる。この特定の場合において、「真空下」は、10−6Pa〜1Pa、より詳細には10−3Pa〜1Paの圧力であると解釈される。
【0035】
出発三成分相の合成は、特にシュースター(Schuster)およびケヴォルコフ(Kevorkov)による文献に記載された方法によって実現することができる。シュースターの論文(エイチ.ユー.シュースター(H.U.Schuster)、ダブリュ.シーレンタグ(W.Seelentag)、Zeitschriff fur naturforschung,Teil B:anorganische chemie,organische chemie,30B(1975)804)は、三成分のLi8Ag3Si5系を記載している。ケヴォルコフ(ディ.ジー.ケヴォルコフ(D.G.Kevorkov)、ブイ.ブイ.パブリュク(V.V.Pavlyuk)、オー.アイ.ボダク(O.I.Bodak)、Polish Journal of Chemistry、71(6)(1997)712)については、Li8Ag3Si5、Li3Ag2Si3およびLi2AgSi2が記載されている。
【0036】
ポーリー相については、構造の解明はなされていない(相は単に挙げられている)。シュースターは、Li8Ag3Ge5の等構造(isostructurale)としてLi8Ag3Si5を記載している。ケヴォルコフの化合物については、構造は、粉末からリートフェルト法(格子+結晶構造のパラメーター)を用いて解明されている。合成は真空下で石英ボート上において200℃で400hにわたって行われた。
【0037】
三成相は、より詳細には、特にエイチ.ポーリー(H.Pauly)、エイ.ワイス(A.Weiss)、エイチ.ヴィッテ(H.Witte)、ゼット.メタルクド(Z.Metallkde)、59(1)(1968)47によって文献に記載されているように、熱処理によって調製され得る。
【0038】
式(II)の材料、すなわち三成分相の調製は、少なくとも粉末の混合物を加熱する工程を備える。前記粉末の混合物は:
とりわけリチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択される少なくともアルカリ金属と;
ケイ素と;
特にアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも1種の貴金属または半貴金属と、を含有する。
【0039】
これらの元素は、重量で95%以上、とりわけ98%以上、より詳細には99%以上、さらにより詳細には99.5%以上の純度を有し得る。
各元素の量は、最終的な三成分混合物におけるその含有量に対して決定され得る。詳細には、前記量は化学量論的方法で見積もられる。より正確には、最初のアプローチでは、前記量を、検討する化合物の化学量論について見積もり、任意でアルカリ化合物を過剰にし、次に、これらの割合を「試行錯誤」型の試験により改良する。
【0040】
詳細には20±10℃である室温から加熱工程における温度への、温度の上昇は、20〜500℃/h、特に50〜500℃/h、さらには80〜150℃/hにわたる速度で行うことができ、より詳細には、前記速度は100℃/hであり得る。
【0041】
元素の緊密な混合を可能にするために、加熱は高温で行われる。前記温度は、蒸発による元素Aの損失の危険性と、Aは液体形態で存在すべきであるという必要性とを考慮に入れて決定される。よって、前記温度は、元素Aの融点と沸点との間で調節され得、特にAがリチウムである場合には、前記温度は、とりわけ600℃以上、特に750℃以上、より詳細には850℃以上であり得る。
【0042】
この加熱の継続時間は、数時間、とりわけ1〜10時間、特に2〜8時間、さらには4〜6時間であり得る。
より詳細には、前記混合物は加熱工程中に撹拌される。詳細には、前記混合物は、この段階の間に、1〜20時間にわたって撹拌される。
【0043】
前記混合物は、特に加熱工程に続いて、アニーリング工程を受け得る。この工程は加熱工程における温度よりも低い温度で行なわれ得る。アニーリング工程の温度は、加熱温度よりも100〜400℃低い、特に150〜350℃低い、特に200〜300℃低いことがある。
【0044】
アニーリング工程の温度は、500〜840℃、特に550〜800℃、特に600〜750℃であり得る。
アニーリング工程は、数時間、特に3〜30時間、特に5〜25時間、さらには7〜20時間、より詳細には8〜12時間にわたって継続し得る。
【0045】
温度が、特に加熱工程とアニーリング工程との間、および/またはアニーリング工程と20±10℃である室温との間において低下する場合、この温度の降下は、1〜20℃/h、特に4〜16℃/h、8〜12℃/hの速度で生じ得る。
【0046】
得られた材料は、不活性雰囲気下において、管を開放することによって収集することができ、その粉末は熱分解工程の反応装置に移される。
前記材料は、さらなる処理を有することなく、そのようなものとして本発明の調製法に用いることができる。
【0047】
本発明による少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法は、得られる材料の大きさおよび/または結晶化度、特にナノ粒子のファセットの結晶面の性質を制御することを可能にする。前記ナノ粒子の大きさおよび/または結晶化度は、興味深い性質を備えた材料を得ることを可能にする。
【0048】
有利なことに、得られた材料は、不定形ナノ粒子の形態にある。これは、特に前記ナノ粒子中へのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の良好な挿入を可能にし得る。
本発明はまた、本発明による方法によって得られる材料にも関する。
本発明は、少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属類の元素の少なくとも部分的に可逆的な挿入を可能にする本発明による方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料にも関する。
【0049】
より詳細には、この材料は、800mA.h.g−1以上、特に1000mA.h.g−1以上、特に1200mA.h.g−1以上、さらには1400mA.h.g−1以上の質量容量を示す。以前に示したように、質量容量は、質量単位当たりに蓄積される電子の量を意味する。
【0050】
電気化学サイクル中において、材料の電気伝導性およびイオン伝導性を改善する、リチウム、典型的にはLiAgから形成された材料の存在にも言及する。
より詳細には、前記熱分解法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料は少なくとも二相を有し、各々は、その元素状態にある元素または純物質としての元素、特に少なくとも遷移またはポスト遷移金属、およびケイ素に対応し得る。
【0051】
本発明の方法により得られた材料は、より詳細には、とりわけ図6に示すように、純粋なGおよび/またはMのナノ粒子の形態で存在する。
本発明の文脈においては、「純粋なナノ粒子」とは、ナノ粒子中に、重量で、少なくとも98%、特に少なくとも99%、とりわけ少なくとも99.9%のその化合物を含むナノ粒子を意味する。
【0052】
この材料は、GまたはMナノ粒子の分散物の形で存在することができ、前記GまたはMナノ粒子は、特に、均一な大きさであり、MまたはGマトリックス中に分散されており、より詳細には、Gマトリックス中にMナノ粒子が分散されているか、またはMマトリックス中にGナノ粒子が分散されている。
【0053】
より詳細には、この材料は、ナノ結晶マトリックスの形で存在することができ、前記ナノ結晶マトリックス、特に2〜100nmに及ぶ大きさを有するG粒子を有し、とりわけケイ素を有する。特に、Gは熱力学的に安定な形態に結晶化しており、かつ/またはM金属は、特に2〜50nmの大きさを有するナノ粒子の形態にある。
【0054】
粉砕またはメカノ合成(mecanosynthese)によって得られた材料と比較して、本発明の方法によって得られた材料では、Gマトリックス中、とりわけケイ素中におけるMナノ粒子の分散の非常に良好な均質性が観察される。
【0055】
より詳細には、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含む材料は、電池、とりわけリチウムイオン型のものに用いることができる。特に、アノードの構成要素として、単独でまたは他の構成要素と組み合わされて用いられる。
【0056】
ナノ粒子の形態にある材料の場合には、アノードは、プレスまたはSPS(「放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering))」の類の技術によるこれらのナノ粒子の単純な堆積または圧縮によって製造することができる。
【0057】
本発明の方法により得られる材料は、特に真空下での熱分解によって得られる場合には、2つのナノ結晶相(GおよびM)の構造、詳細には、図6によって示すように、二相間に大きな界面を有して密接に重なり合った構造を示し得る。
【0058】
本発明の方法により得られた材料は、特に酸化溶媒との反応によって得られた場合には、非酸化表面を有するナノ粒子の形態にあることがある。前記非酸化表面とは、典型的な表面分析技術によって、この表面が目立って酸化されていないか、または完全に酸化されていないことを意味する。
【0059】
双方の場合において、ナノ粒子は、とりわけ5nm以下、特に4nm以下、より詳細には3nm以下、さらには2.5nm以下の結晶コヒーレンスの長さ(結晶子サイズ)を有する。
【0060】
これらのナノ粒子は顕著な結晶化度を有し得る。顕著な結晶化度は、観察されたX線回折サイズが、透過電子顕微鏡によって観察されたサイズにかなり一致するという事実によって明らかにされ得る。「かなり」とは、より詳細には、25%以下、とりわけ15%以下、特に10%以下、より詳細には7.5%以下、さらには5%以下の差異を意味する。
【0061】
これらのナノ粒子の形状を制御することができるという事実はまた、電子的特性を調節することを可能にする。
本発明は、同じく、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料の電気化学分野における使用に関する。
【0062】
他の態様の1つによれば、本発明の目的はまた、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を含む電池である。
本発明は、さらに、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料から形成されるアノードに関する。
【0063】
それらの態様の別のものによれば、本発明の別の目的は、可逆的な方法で、少なくともアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を蓄積および放出するための、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料の使用である。この少なくとも1つのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の可逆的な蓄積および/または放出は、部分的であってもよいし、または全体的であってもよい。前記アルカリ金属は有利にはリチウムである。
【0064】
添付図面によって示される以下の実施例を読むと、当業者には他の効果がさらに明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】三成分相を調製する方法の熱プロフィールの例を表わす図。
【図2】リートフェルトの方法によって改良された化合物Li13Ag5Si6のX線回折図を表わす図。
【図3】熱分解を行うための真空ランプに固定された実験のセットアップの例を表わす図(1…ランプの分岐、2…バルブ、3…Oリングジョイント、4…冷却器、5…アルミナ管、6…ステンレス計数管、7…シリカ管)。
【図4】実施例1の表1に示された様々な分解のX線粉末回折図の漸進的変化を表わす図。
【図5】AgおよびSiによって指数付けされたLi13Ag5Si6の真空下での熱分解後に得られた生成物のX線粉末回折図を表わす図。
【図6】Li13Ag5Si6の分解生成物のMET顕微鏡写真および電子回折像を表わす図。
【図7】Li/LixAgSi電池の定電流モードでのサイクリングを表わす図。
【図8】図7で明らかにされたサイクリングに関連したサイクル性能曲線を表わす図。
【図9】Li/LixAgSi電池の動電位モードでのサイクリング−第1サイクルを表す図。
【図10】Li/LixAgSi電池の動電位モードでのサイクリング−第2サイクルを表す図。
【図11】ベンジルアルコールの作用によって20℃で得られたゲルマニウムのナノ粒子のMET顕微鏡写真を表わす図。
【図12】K4Ge9化合物に対するベンジルアルコールの作用によって20℃で得られたゲルマニウムのナノ粒子のX線回折を表わす図(上:合成後、下:アニーリング後)。
【図13】エチレンジアミン処理後にK4Ge9化合物に対する1−ブタノールの作用によって20℃で得られたゲルマニウムナノ結晶を表わす図。
【図14】K12Si17化合物に対するベンジル型アルコールの作用によって得られた、オニオン(oignons)中のケイ素のナノストランドを表わす図。
【図15】図14におけるのと同一の方法によって得られたケイ素の自己組織化ナノストランドを表わす図。
【図16】図12に示したゲルマニウム電池のLi/ナノ粒子の定電流モードでのサイクリングを表わす図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0066】
実施例1:Li13Ag5Si6合金の調製
0.117gのリチウム(塊状物、純度99.54%、コゲマ(Cogema))、0.913gの銀(針状物、純度99.999%、ストレム ケミカルズ(Strem Chemicals))および0.237gのシリカ(粉末、純度99.998%、グッドフェロー(Goodfellow))の混合物をアーク溶接によって密閉されたタンタル反応装置内に挿入した。前記タンタル反応装置自体は、シリコン管内に挿入され、次いで真空下で密閉されている。次に、この反応装置を炉に入れて、温度を室温から950℃までは100℃/hで上昇させ、次に950℃で4時間、10℃/hにて700℃まで冷却し、700℃で10時間にわたって加熱し、次に10℃/hの速度で室温まで冷却した。この熱プロフィールを図1に示す。
【0067】
前記調製から単離された結晶のマイクロプローブ(MEB)による元素半定量分析および原子吸光分析は、Li13Ag5Si6化学量論の化合物を呈する。
この化合物を粉末X線回折および単結晶X線回折によって調査した。粉末の回折図を図2に表わす。すべてのピークは、パラメーターa=0.4376nmおよびc=4.2293nm(六方晶軸)を有する菱面体晶(Rhomboedric)R−3m格子に完全に指数付けされる。
【0068】
実施例2:活性物質の調製
リチウムのより良好な引き抜きを可能にするために、合成後に得られたLi13Ag5Si6材料をめのう乳鉢中ですり潰す。
【0069】
この粉末を小さなアルミナ管内に入れ、そのアルミナ管自体をステンレス管中に配置し、全体をバルブによってロックされたシリカ管に挿入する。前記ステンレス管はリチウムガスの攻撃からシリカを保護する。よって装置は、3つの管、すなわち、粉末を収容している小さなアルミナ管、ステンレス鋼計数管、およびシリカ管から構成されている。そのような装置を図3に示す。
【0070】
次に、前記装置を真空ランプ上に直接組み立てる。主たる真空は先ず油ポンプを用いて形成され、次に、二次的な真空は耐久性を有する拡散ポンプによって生成される。シリカ管によって得られる真空は約10−7のmbar(10−7hPa)である。次に真空ランプ上にセットした管を横型管状炉に滑り入れる。アルミナ管の出口におけるリチウムの凝結を可能にするために、ステンレス管の出口には冷却器を設置する。
【0071】
新たな真空条件は、試料に含有されているすべてのリチウムの引き抜きを可能にするために、様々な試験を要した。550℃〜650℃の間で変化する温度、並びに15〜30時間の引き抜き時間について試験した。
【0072】
異なる温度および時間条件による4つの分解の結果を、以下の表1にまとめた。
【0073】
【表1】
第1の分解は550℃で15時間にわたって行われた。得られた生成物のX線粉末回折による分析は、主な相は出発Li13Ag5Si6相であることを示しており、それほど重大でない量の銀および不純物が観察された。よって、この化合物の550℃における熱分解は、リチウムの引き抜きを可能にしないと考えられる。
【0074】
650℃で15時間にわたって第2の試験を行なった。生成物のX線分析は、出発化合物は銀およびケイ素の単純な純物質に分解されているが、出発相の残留物が残っていることを示している。
【0075】
リチウムをすべて引き抜くために、分解時間を24時間まで延長することを決定した。この試験は決定的なものであり、存在する相は銀およびケイ素である。
これらの試験を完了するために、分解温度を650℃で維持し、引き抜き時間を30時間に延長した。生成物の顕微鏡検査は、黒色粉末と銀色金属様の塊とを示しており、30時間の分解は長過ぎであり、銀の凝集を引き起こすものと推定することができる。
【0076】
Li13Ag5Si6化合物に対する10−6mbar(10−6hPa)真空下における最適な熱分解条件は、24時間、650℃の温度である。
様々な分解のX線粉末回折図の漸進的変化を図4に示す。図4において、「deg1、2、3および4」は表1に示した分解条件1、2、3および4を意味する。
【0077】
この図では、合成されたLi13Ag5Si6相の漸進的な消失が見られ、前記相は分解3において完全に消失している。第1の分解から出現する銀のピークと、分解2からようやく出現するケイ素のピークとが見られる。今度は、分解生成物の粉末回折図をより詳細に検討すること、および得られた銀およびシリコン微粒子の形態を知ることを目的とする。
【0078】
Li13Ag5Si6化合物の真空下における熱分解後に得られた生成物のX線粉末回折図は、二つの相の存在を示している。それらは、実際には元素状態にある2つの元素、すなわち、銀およびケイ素である。このディフラクトグラムを図5に示す。
【0079】
分解生成物のMET顕微鏡写真を図6に示す。
実施例3:電気化学における使用
次に実施例2の分解によって分解された生成物をスウェージロック型セル内において電気化学について試験した。負荷速度は、10時間で1個のリチウムであり、また、電位窓は0.01V〜2Vに含まれる。
【0080】
AgSiマトリックス中におけるリチウムの挿入は、第1チャージ後には、Li8AgSi化学量論に到達することを可能にし、最高6原子のリチウムが引き抜かれて、Li2AgSi化学量論に到達する。前記容量は、続くサイクルの間に漸減する(図7)。
【0081】
サイクル性能曲線(図8)は、第1サイクル中に得られる容量が非常に高いこと(1500、1200mA.h.g−1)を示している。
機構を理解するために、図9および図10に動電位モードにおけるサイクリング試験を表わした。
【0082】
第1サイクルについて、第1放電の間には、定電流モードにおける曲線の平坦域に対応する0.02Vにおいて強いピークが観察され(相の変化)、次に0.25Vおよび0.78Vに2つの小さなピークが存在する(非晶質炭素中へのLiの挿入)。第1充電の間には、3つのピーク、すなわち、0.1Vおよび0.28Vにおける小さな2つのピークと、0.45Vにおける広く強いピーク(単相現象)とが観察される。
【0083】
第2サイクル中、前記現象は再現可能であり、前記ピークはより強大である。
実施例4:K4Ge9合金の調製
前記合金をグローブボックス内において化学量論量に秤量した元素から調製する。カリウム(アルドリッチ(Aldrich) 99.5%、ロッド、m=0.630g)およびゲルマニウム(ストレム(Strem)、粉末、99.999%)を、一端が密閉されたタンタル管内に配置し、次に、そのタンタル管のもう一方の端をアルゴン下で密閉する。前記タンタル管を真空下で密閉されたシリカ計数管によって保護する。全体を730℃で24時間にわたって加熱し、次に930℃で24時間にわたって加熱する。
【0084】
得られた合金は均質であり、赤色反射光を有する黒色を有している。該合金をX線粉末回折(アルゴンベルジャー内のセル)によって特徴付け、グローブボックス内に保存する。K4Ge9は、多面体の第14族原子の配置を示す(三冠三角柱(trigonal tricapated prism)の形態にあるGe94−)。
【0085】
実施例5:ゲルマニウムナノ粒子を合成する方法
上記に記載した方法によって調製されたK4Ge9合金(100mg)を、グローブボックス内に置いて、ロタフロ(rotaflo)型の出口を有するガラス反応装置に入れる。分子ふるい上で予め乾燥させて、アルゴンで脱気した10mlのベンジルアルコールをカニューレによって真空ランプに加える。その混合物を室温で2時間撹拌する。次に、黒色着色溶液を遠心分離管に入れる。4000回転/分で20分間にわたって遠心分離することによって、黒色着色粉体を得ることができる。X線回折および透過型電子顕微鏡を用いた特性評価により、平均径2.0+/−が0.2nmを有するゲルマニウムナノ粒子(巨大なゲルマニウムのダイヤモンド構造)の存在を決定することが可能となる。これらのナノ粒子を図11に示し、これらの粒子のX線回折を図12に表わす。
【0086】
実施例6:リチウムイオン電池におけるアノードとしてのゲルマニウムナノ粒子の使用
ゲルマニウムナノ粒子粉末(8.5mg)をグローブボックス内で1.5mgのグラファイトとともに圧縮して、ペレットを形成する。アノードは、定電流モードで、0.01〜2.5Vの間において、C/10の速度(10時間で1つのリチウムイオンが挿入される)で試験される。電気化学的放電/充電曲線を図16に示す。サイクリング中に、一定の弱い分極(充電と放電との差)が見られる。ゲルマニウムは、ほぼ3つのリチウムイオンを挿入する。図が示すように、いったん第1の放電が起こると、サイクルは単純にシフトされる。しかしながら、第1サイクルでは、360mAh.g−1の容量の不可逆的損失が観察される。サイクリングの間に進行する容量の損失は、比較的重大である(約100mAh.g−1)が、各サイクル間では減少している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジントル相としても知られている三成分相の熱分解によって、または前記相の酸化溶媒との反応によって、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、この方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料、および該材料の主として電気化学分野における使用、特に電池への使用にも関する。前記材料は、より詳細には、アルカリ金属および/またはアルカリ土類イオン型電池、とりわけリチウムイオン型電池の分野に適している。
【0003】
更に、本発明は定義された材料から製造されたアノードに関する。
本発明の方法は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を、可逆的な方法で、蓄積および放出することができる最適な質量容量を備えた材料を得ることを可能にする。これにより、そのような材料は電気化学の分野における使用に特に適したものとなる。
【0004】
本発明の方法によって得られる材料は、さらに光起電力技術および熱電気の分野における使用に適合され得る。
【背景技術】
【0005】
リチウムイオン型充電式電池は、多数の電子装置に大いに用いられている。これらの電池のほとんどは、グラファイトから形成された材料から構成されたアノードを備える。これらの材料は、電池の充電の間に、挿入機構によってリチウムを取り込むことができる。グラファイト製のアノードは、一般に、良好なサイクル性能(cyclabilite)および良好なクーロン効率を有している。しかしながら、グラファイト製の材料の質量単位当たり組み込まれるリチウムの量は、比較的低く、約300〜400mAh/gである。
【0006】
アノードの構成に用いられる別の種類の材料は、電池の充電の間に合金の形成を伴う機構(転化機構)によってリチウムを取り込むことができる金属を含有する。この種のアノードは、グラファイト製のアノードと比較して、質量単位当たりのリチウムのより高い取り込み可能にするが、これらのアノードのサイクル性能およびクーロン効率は低い。
【0007】
さらに、上述したアノードは、リチウム化および脱リチウム化の過程の間に、体積の重大な変化を受ける傾向を有している。この体積の変化は、アノードを構成する材料の能動要素の間、すなわち希釈導体(例えば炭素)の粒子と結合剤との間における機械的および電気的接触の低下に結びつき得る。電気的機械的接触の低下は、活性アノードの材料におけるリチウムの部分的または全体的な挿入能力(質量単位当たり挿入され得るリチウムの量)およびそのサイクル性能を低下させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、最適な質量容量と良好なサイクル性能とを同時に有する材料を得ることを可能にする方法を開発する必要がある。
さらに、重大な体積の変化を伴うことなく、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を可逆的な方法で蓄積および放出できる材料を得ることを可能にする方法を有する必要がある。
【0009】
更に、電池および特にリチウムイオン電池のアノードにおける反復使用に適合した材料を調製することを可能にする方法を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、比較的簡単かつ低コストの方法によって、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、特にリチウムの挿入の間に非常に良好な可逆的な質量容量を有し、かつ電気化学的処理を伴わない材料を得ることを可能にする。該方法は、他の後合成工程なしで用いることができる材料を与える。実際に、合成された材料は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、より詳細にはリチウム、の挿入の間における機械的疲労、および体積の激しい変動による疲労を克服することを可能にする。
【0011】
実際には、本発明は、まさに、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法を提供することにより、従来技術の要求および不都合に応えることを目指す。該方法は、下記の工程、すなわち、式(I):
AxGyMz
の材料からであって、前記式中
Aは、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される、少なくとも1つのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を表わし;
xは、1〜20、とりわけ2〜15、より詳細には3〜12、またはさらには4〜10の整数を表わし;
Gは、特にケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの元素の周期的分類の第14族元素を表わし;
yは、1〜17、とりわけ1〜10、特に1〜6、さらには1〜4の整数を表わし;
Mは、特にアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される、少なくとも貴金属または半貴金属を表わし;
zは、0または1〜5、特に1〜3、さらには1〜2の整数を表すことと;
その出発化合物から、真空下での熱分解によって、または酸化溶媒との反応によって、Aを少なくとも部分的に引き抜く工程と、真空下での熱分解である場合には、zは0とは異なることと;
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と
を有する。
【0012】
本発明の枠組の中では、貴金属または半貴金属とは、より詳細には元素の周期的分類の第9族、10族、11族、12族および13族から選択される遷移金属またはポスト遷移金属であると理解されるべきである。
【0013】
式(I)の材料AxGyMzは、三成分相またはジントル相と名付けられ得る。
特定の実施形態によれば、式(I)の材料において、Gは、元素の周期的分類のうちの2つの第14族元素の混合物であり得る。この実施形態において、Gはケイ素とスズとの混合物であってもよい。さらに、この実施形態によれば、特に興味深い材料は、Aがリチウムであり、Gがケイ素とスズとの混合物である材料であり得る。
【0014】
収集した材料がAを有さない場合には、それは本発明の方法が出発物質中に存在するすべてのAの引き抜きを可能にしたことを意味するであろう。
前記材料がAに乏しい場合には、前記材料は式(IV):
Ax’GyMz
の材料であると理解されるべきである。前記式中;
A、GおよびMは先に定義した通りであり;
yおよびとzは先に定義した通りであり;
x’はy/10未満の数である。
収集した材料は、有利にはナノ微粒子の形態で存在し得る。前記粒子は、球状もしくは長尺状の形状を有するか、または球状および長尺状が混ざったものを有し得る。球状の形状については、粒子の径は2〜100nmであり得る。長尺状の形状については、粒子の径は2〜20nmであり、それらの長さは5〜10000nmであり得る。
【0015】
「長尺状の形状」により、径より長い長さを有する、非球形の幾何学的な形、とりわけ、フィラリア形タイプまたは顕著なフィラリアが理解されるべきである。粒子の形状および寸法は、電子顕微鏡法による直接観察から推定することができる。
【0016】
本発明の第1実施形態によれば、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法は、少なくとも、式(II):
AxGyMz
の材料の真空下における熱分解の工程を含み、前記式中;
Aは、とりわけリチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択されるアルカリ金属を表わし;
xは、1〜20、とりわけ2〜15、より詳細には3〜12、またはさらには4〜10の整数を表わし;
Gは、ケイ素を表わし;
yは、1〜10、特に1〜6、さらには1〜4の整数を表わし;
Mは、特にアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも貴金属または半貴金属を表わし;
zは、1〜5、特に1〜3、さらには1〜2の整数を表す。
【0017】
この方法は「熱分解法」または「固体法」と呼ぶことができる。
この実施形態では、収集した材料がAを有さないことがある。換言すると、本発明の方法は式(II)の材料中に存在するすべてのAの引き抜きを可能にした。
【0018】
前記材料はまた、Aが乏しいこともある。前記材料は式(IV):
Ax’GyMz
を有し、前記式中;
A、GおよびMは先に定義した通りであり;
yおよびとzは先に定義した通りであり;
x’はy/10未満の数である。
この方法は、良好な質量容量を有する、ケイ素と少なくとも貴金属または半貴金属とを含有する相を得ることを可能にする。
【0019】
質量容量は、質量単位当たりに蓄積され得る電子の量を意味する。本発明の意味において、良好な質量容量は、グラファイトより大きな質量容量であり、とりわけ400mAh/gより大きい、さらには500mAh/gより大きい質量容量である。
【0020】
述べたように、熱分解法は、出発三成分相からアルカリ金属またはアルカリ土類金属を完全にまたは部分的に引き抜くことを可能にし得る。収集した材料に対するX線回折解析により該材料中におけるGおよびMの元素の二相の存在を確認することができ、バンドの幅によって200nmより小さいナノ粒子サイズを定義することができる。化学分析に結び付けられた電子顕微鏡(走査型および/または透過型)観察により、該方法に特有である構造、すなわち、M粒子がG粒子のマトリックス中に均一に分散している構造を特徴付けることが可能となる。ナノメートルの大きさを有するG粒子およびM粒子は、とりわけ1〜200nm、とりわけ2〜100nm、とりわけ2〜80nmである。
【0021】
熱分解を進めるために、出発三成分相は粉末形態であってよく、とりわけ大きさが小さい粒子の形態にあってよい。この粉末は、より詳細には、三成分相を乳鉢中ですり潰すことによって得ることができる。
【0022】
本発明に従った方法では、熱分解は、高温、特に500℃以上、とりわけ600℃以上、さらには650℃以上の温度で行われ得る。熱分解は、好ましくは500°〜750℃の温度、より好ましくは650℃で行うことができる。Aがリチウムである場合には、前記温度は有利には650℃以上である。
【0023】
この熱分解は、数時間、とりわけ10〜30時間、とりわけ15〜25時間、とりわけ18〜24時間にわたって行われ得る。
前記熱分解法は、「真空下」、つまり、減圧下において行うことができ、とりわけ10−2Pa以下、とりわけ10−3Pa以下、より詳細には10−4Pa以下の圧力下で実施され得る。好ましくは、前記熱分解は、10−6〜10−2Pa、より好ましくは10−5〜10−3Paの圧力下で行われ得る。
【0024】
無論、これらのパラメーターは、当業者によって、とりわけ出発三成分相に応じて、とりわけ元素Aの性質および/または例えばリチウムイオン電池用のような目的とする用途に応じて、最適化され得る。
【0025】
例えば黒色粉末およびシルバーメタリックの塊を示す式(IV)の材料に一致する式および化学量論を有する銀、ケイ素およびリチウムから形成された材料の顕微鏡検査、および50nmを超える大きさを有するナノ粒子の存在を示す銀に対応する細いバンドを示すX線回折解析により、当業者は、熱分解の条件が、例えば、期間、圧力および/または温度の点において、激烈過ぎたと推定することができる。同じように、X線回折解析は、収集した材料中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の残余を示すことができ、それにより、当業者は、とりわけ期間、圧力および/または温度の点において、条件が穏やか過ぎると推定することができる。
【0026】
前記熱分解は、酸化溶媒(solvant oxydant)の存在下で行うことができる。この方法では、前記溶媒は、出発三成分相のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を完全にまたは部分的に引き抜くことを可能にし得る。
【0027】
第2実施形態によれば、少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法は、少なくとも下記工程、すなわち
酸化溶媒を式(III):
AxGyMz
の材料と接触させる工程であって、前記式中;
Aは、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される、少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし;
xは、1〜12、とりわけ1〜10、特に1〜8の整数を表わし;
Gは、特にケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの第14族元素を表わし;
yは、1〜17、とりわけ1〜15、特に1〜13、さらには1〜10の整数を表わしl
zは0を表わす、工程と;
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と、を有する。
【0028】
前述したように、収集した材料がAを有さない場合には、それは本発明の方法が出発物質中に存在するすべてのAの引き抜きを可能にしたことを意味する。
この第2の特定実施形態では、Aが乏しい材料は式(IV)
Ax’GyMz
の材料であり、前記式中;
AおよびGは先に定義した通りであり;
yは先に定義した通りであり;
zは0であり;
x’はy/10未満の数である。
この調製法はまた「液体法」と呼ぶこともできる。
【0029】
前記酸化溶媒は2つの以下の特徴、すなわち:
少なくとも1つの酸化官能基を有すること、つまり、アルカリまたはアルカリ土類、とりわけナトリウム(Na)またはカリウム(K)の類と反応することにより、H2を発生させ、この官能基は、特にアルコール、アミン、チオール、カルボニル、カルボン酸およびホスホン酸から選択され得ることと;
少なくともアルキル基、アリール基またはアラルキル基を含むことと、を有する。
前記アルキル基、アリール基またはアラルキル基は、とりわけ:
エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ノナデシルのような直鎖状、分岐鎖状、または環式のアルキルラジカル、および
1つ以上の様々な置換基、特にアルキルの類によって任意に置換されたアリールラジカルおよびアラルキルラジカルであって、アルキルは任意で置換されており、かつ/または、その鎖は1つ以上のヘテロ原子、とりわけO、SおよびNの類によって割り込まれていてもよい、アリールラジカルおよびアラルキルラジカルから選択することができる。
【0030】
前記アリールラジカルまたはアラルキルラジカルは、特に置換または未置換の芳香族ラジカル、とりわけ、少なくともハロゲン原子、アルキル、アルコール、チオール、アミン、酸、エーテル、エステル、アミド、酸、チオエーテル、チオエステルから選択される基、並びに複数のハロゲン原子によって置換された芳香族ラジカルから選択される。さらに、特に、前記芳香族ラジカルは、フェニル、ベンジル、メトキシフェニル、メトキシベンジル、ハロフェニル、ハロベンジルおよびトリルから選択することができる。
【0031】
酸化溶媒(ベンジル型アルコール)のなかでは、とりわけ、例えば一つまたはいくつかのアルキルラジカルによって、一置換または多置換されたベンジルアルコールが挙げられる。
【0032】
より詳細には、前記アルキル基、アリール基およびアラルキル基は、ナノ粒子の安定化を可能にするために十分に嵩高い。
この第2実施形態では、収集した材料は、次に熱処理またはアニーリング工程に供され得る。本発明の意味において、「アニーリング」は、前記材料が調製された温度より概ね低い温度で行われる熱処理を意味する。この熱処理工程は、特に結晶化度の改善を可能にし得る。これは、特にX線回折によって観察され得る。
【0033】
熱処理は、高温で、特に300℃以上、詳細には400℃以上、またはさらには500℃以上の温度で、行われ得る。熱処理の温度は、有利には、200〜500℃、250〜400℃、より有利には300〜350℃である。
【0034】
熱処理の継続時間は、30分〜10時間、特に1時間〜5時間、より詳細には1時間半〜3時間であり得る。
熱処理工程は、不活性雰囲気下、特に真空下、アルゴン下または窒素下において行なうことができる。この特定の場合において、「真空下」は、10−6Pa〜1Pa、より詳細には10−3Pa〜1Paの圧力であると解釈される。
【0035】
出発三成分相の合成は、特にシュースター(Schuster)およびケヴォルコフ(Kevorkov)による文献に記載された方法によって実現することができる。シュースターの論文(エイチ.ユー.シュースター(H.U.Schuster)、ダブリュ.シーレンタグ(W.Seelentag)、Zeitschriff fur naturforschung,Teil B:anorganische chemie,organische chemie,30B(1975)804)は、三成分のLi8Ag3Si5系を記載している。ケヴォルコフ(ディ.ジー.ケヴォルコフ(D.G.Kevorkov)、ブイ.ブイ.パブリュク(V.V.Pavlyuk)、オー.アイ.ボダク(O.I.Bodak)、Polish Journal of Chemistry、71(6)(1997)712)については、Li8Ag3Si5、Li3Ag2Si3およびLi2AgSi2が記載されている。
【0036】
ポーリー相については、構造の解明はなされていない(相は単に挙げられている)。シュースターは、Li8Ag3Ge5の等構造(isostructurale)としてLi8Ag3Si5を記載している。ケヴォルコフの化合物については、構造は、粉末からリートフェルト法(格子+結晶構造のパラメーター)を用いて解明されている。合成は真空下で石英ボート上において200℃で400hにわたって行われた。
【0037】
三成相は、より詳細には、特にエイチ.ポーリー(H.Pauly)、エイ.ワイス(A.Weiss)、エイチ.ヴィッテ(H.Witte)、ゼット.メタルクド(Z.Metallkde)、59(1)(1968)47によって文献に記載されているように、熱処理によって調製され得る。
【0038】
式(II)の材料、すなわち三成分相の調製は、少なくとも粉末の混合物を加熱する工程を備える。前記粉末の混合物は:
とりわけリチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択される少なくともアルカリ金属と;
ケイ素と;
特にアルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも1種の貴金属または半貴金属と、を含有する。
【0039】
これらの元素は、重量で95%以上、とりわけ98%以上、より詳細には99%以上、さらにより詳細には99.5%以上の純度を有し得る。
各元素の量は、最終的な三成分混合物におけるその含有量に対して決定され得る。詳細には、前記量は化学量論的方法で見積もられる。より正確には、最初のアプローチでは、前記量を、検討する化合物の化学量論について見積もり、任意でアルカリ化合物を過剰にし、次に、これらの割合を「試行錯誤」型の試験により改良する。
【0040】
詳細には20±10℃である室温から加熱工程における温度への、温度の上昇は、20〜500℃/h、特に50〜500℃/h、さらには80〜150℃/hにわたる速度で行うことができ、より詳細には、前記速度は100℃/hであり得る。
【0041】
元素の緊密な混合を可能にするために、加熱は高温で行われる。前記温度は、蒸発による元素Aの損失の危険性と、Aは液体形態で存在すべきであるという必要性とを考慮に入れて決定される。よって、前記温度は、元素Aの融点と沸点との間で調節され得、特にAがリチウムである場合には、前記温度は、とりわけ600℃以上、特に750℃以上、より詳細には850℃以上であり得る。
【0042】
この加熱の継続時間は、数時間、とりわけ1〜10時間、特に2〜8時間、さらには4〜6時間であり得る。
より詳細には、前記混合物は加熱工程中に撹拌される。詳細には、前記混合物は、この段階の間に、1〜20時間にわたって撹拌される。
【0043】
前記混合物は、特に加熱工程に続いて、アニーリング工程を受け得る。この工程は加熱工程における温度よりも低い温度で行なわれ得る。アニーリング工程の温度は、加熱温度よりも100〜400℃低い、特に150〜350℃低い、特に200〜300℃低いことがある。
【0044】
アニーリング工程の温度は、500〜840℃、特に550〜800℃、特に600〜750℃であり得る。
アニーリング工程は、数時間、特に3〜30時間、特に5〜25時間、さらには7〜20時間、より詳細には8〜12時間にわたって継続し得る。
【0045】
温度が、特に加熱工程とアニーリング工程との間、および/またはアニーリング工程と20±10℃である室温との間において低下する場合、この温度の降下は、1〜20℃/h、特に4〜16℃/h、8〜12℃/hの速度で生じ得る。
【0046】
得られた材料は、不活性雰囲気下において、管を開放することによって収集することができ、その粉末は熱分解工程の反応装置に移される。
前記材料は、さらなる処理を有することなく、そのようなものとして本発明の調製法に用いることができる。
【0047】
本発明による少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法は、得られる材料の大きさおよび/または結晶化度、特にナノ粒子のファセットの結晶面の性質を制御することを可能にする。前記ナノ粒子の大きさおよび/または結晶化度は、興味深い性質を備えた材料を得ることを可能にする。
【0048】
有利なことに、得られた材料は、不定形ナノ粒子の形態にある。これは、特に前記ナノ粒子中へのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の良好な挿入を可能にし得る。
本発明はまた、本発明による方法によって得られる材料にも関する。
本発明は、少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属類の元素の少なくとも部分的に可逆的な挿入を可能にする本発明による方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料にも関する。
【0049】
より詳細には、この材料は、800mA.h.g−1以上、特に1000mA.h.g−1以上、特に1200mA.h.g−1以上、さらには1400mA.h.g−1以上の質量容量を示す。以前に示したように、質量容量は、質量単位当たりに蓄積される電子の量を意味する。
【0050】
電気化学サイクル中において、材料の電気伝導性およびイオン伝導性を改善する、リチウム、典型的にはLiAgから形成された材料の存在にも言及する。
より詳細には、前記熱分解法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料は少なくとも二相を有し、各々は、その元素状態にある元素または純物質としての元素、特に少なくとも遷移またはポスト遷移金属、およびケイ素に対応し得る。
【0051】
本発明の方法により得られた材料は、より詳細には、とりわけ図6に示すように、純粋なGおよび/またはMのナノ粒子の形態で存在する。
本発明の文脈においては、「純粋なナノ粒子」とは、ナノ粒子中に、重量で、少なくとも98%、特に少なくとも99%、とりわけ少なくとも99.9%のその化合物を含むナノ粒子を意味する。
【0052】
この材料は、GまたはMナノ粒子の分散物の形で存在することができ、前記GまたはMナノ粒子は、特に、均一な大きさであり、MまたはGマトリックス中に分散されており、より詳細には、Gマトリックス中にMナノ粒子が分散されているか、またはMマトリックス中にGナノ粒子が分散されている。
【0053】
より詳細には、この材料は、ナノ結晶マトリックスの形で存在することができ、前記ナノ結晶マトリックス、特に2〜100nmに及ぶ大きさを有するG粒子を有し、とりわけケイ素を有する。特に、Gは熱力学的に安定な形態に結晶化しており、かつ/またはM金属は、特に2〜50nmの大きさを有するナノ粒子の形態にある。
【0054】
粉砕またはメカノ合成(mecanosynthese)によって得られた材料と比較して、本発明の方法によって得られた材料では、Gマトリックス中、とりわけケイ素中におけるMナノ粒子の分散の非常に良好な均質性が観察される。
【0055】
より詳細には、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含む材料は、電池、とりわけリチウムイオン型のものに用いることができる。特に、アノードの構成要素として、単独でまたは他の構成要素と組み合わされて用いられる。
【0056】
ナノ粒子の形態にある材料の場合には、アノードは、プレスまたはSPS(「放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering))」の類の技術によるこれらのナノ粒子の単純な堆積または圧縮によって製造することができる。
【0057】
本発明の方法により得られる材料は、特に真空下での熱分解によって得られる場合には、2つのナノ結晶相(GおよびM)の構造、詳細には、図6によって示すように、二相間に大きな界面を有して密接に重なり合った構造を示し得る。
【0058】
本発明の方法により得られた材料は、特に酸化溶媒との反応によって得られた場合には、非酸化表面を有するナノ粒子の形態にあることがある。前記非酸化表面とは、典型的な表面分析技術によって、この表面が目立って酸化されていないか、または完全に酸化されていないことを意味する。
【0059】
双方の場合において、ナノ粒子は、とりわけ5nm以下、特に4nm以下、より詳細には3nm以下、さらには2.5nm以下の結晶コヒーレンスの長さ(結晶子サイズ)を有する。
【0060】
これらのナノ粒子は顕著な結晶化度を有し得る。顕著な結晶化度は、観察されたX線回折サイズが、透過電子顕微鏡によって観察されたサイズにかなり一致するという事実によって明らかにされ得る。「かなり」とは、より詳細には、25%以下、とりわけ15%以下、特に10%以下、より詳細には7.5%以下、さらには5%以下の差異を意味する。
【0061】
これらのナノ粒子の形状を制御することができるという事実はまた、電子的特性を調節することを可能にする。
本発明は、同じく、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料の電気化学分野における使用に関する。
【0062】
他の態様の1つによれば、本発明の目的はまた、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を含む電池である。
本発明は、さらに、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料から形成されるアノードに関する。
【0063】
それらの態様の別のものによれば、本発明の別の目的は、可逆的な方法で、少なくともアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を蓄積および放出するための、本発明の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料の使用である。この少なくとも1つのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の可逆的な蓄積および/または放出は、部分的であってもよいし、または全体的であってもよい。前記アルカリ金属は有利にはリチウムである。
【0064】
添付図面によって示される以下の実施例を読むと、当業者には他の効果がさらに明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】三成分相を調製する方法の熱プロフィールの例を表わす図。
【図2】リートフェルトの方法によって改良された化合物Li13Ag5Si6のX線回折図を表わす図。
【図3】熱分解を行うための真空ランプに固定された実験のセットアップの例を表わす図(1…ランプの分岐、2…バルブ、3…Oリングジョイント、4…冷却器、5…アルミナ管、6…ステンレス計数管、7…シリカ管)。
【図4】実施例1の表1に示された様々な分解のX線粉末回折図の漸進的変化を表わす図。
【図5】AgおよびSiによって指数付けされたLi13Ag5Si6の真空下での熱分解後に得られた生成物のX線粉末回折図を表わす図。
【図6】Li13Ag5Si6の分解生成物のMET顕微鏡写真および電子回折像を表わす図。
【図7】Li/LixAgSi電池の定電流モードでのサイクリングを表わす図。
【図8】図7で明らかにされたサイクリングに関連したサイクル性能曲線を表わす図。
【図9】Li/LixAgSi電池の動電位モードでのサイクリング−第1サイクルを表す図。
【図10】Li/LixAgSi電池の動電位モードでのサイクリング−第2サイクルを表す図。
【図11】ベンジルアルコールの作用によって20℃で得られたゲルマニウムのナノ粒子のMET顕微鏡写真を表わす図。
【図12】K4Ge9化合物に対するベンジルアルコールの作用によって20℃で得られたゲルマニウムのナノ粒子のX線回折を表わす図(上:合成後、下:アニーリング後)。
【図13】エチレンジアミン処理後にK4Ge9化合物に対する1−ブタノールの作用によって20℃で得られたゲルマニウムナノ結晶を表わす図。
【図14】K12Si17化合物に対するベンジル型アルコールの作用によって得られた、オニオン(oignons)中のケイ素のナノストランドを表わす図。
【図15】図14におけるのと同一の方法によって得られたケイ素の自己組織化ナノストランドを表わす図。
【図16】図12に示したゲルマニウム電池のLi/ナノ粒子の定電流モードでのサイクリングを表わす図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0066】
実施例1:Li13Ag5Si6合金の調製
0.117gのリチウム(塊状物、純度99.54%、コゲマ(Cogema))、0.913gの銀(針状物、純度99.999%、ストレム ケミカルズ(Strem Chemicals))および0.237gのシリカ(粉末、純度99.998%、グッドフェロー(Goodfellow))の混合物をアーク溶接によって密閉されたタンタル反応装置内に挿入した。前記タンタル反応装置自体は、シリコン管内に挿入され、次いで真空下で密閉されている。次に、この反応装置を炉に入れて、温度を室温から950℃までは100℃/hで上昇させ、次に950℃で4時間、10℃/hにて700℃まで冷却し、700℃で10時間にわたって加熱し、次に10℃/hの速度で室温まで冷却した。この熱プロフィールを図1に示す。
【0067】
前記調製から単離された結晶のマイクロプローブ(MEB)による元素半定量分析および原子吸光分析は、Li13Ag5Si6化学量論の化合物を呈する。
この化合物を粉末X線回折および単結晶X線回折によって調査した。粉末の回折図を図2に表わす。すべてのピークは、パラメーターa=0.4376nmおよびc=4.2293nm(六方晶軸)を有する菱面体晶(Rhomboedric)R−3m格子に完全に指数付けされる。
【0068】
実施例2:活性物質の調製
リチウムのより良好な引き抜きを可能にするために、合成後に得られたLi13Ag5Si6材料をめのう乳鉢中ですり潰す。
【0069】
この粉末を小さなアルミナ管内に入れ、そのアルミナ管自体をステンレス管中に配置し、全体をバルブによってロックされたシリカ管に挿入する。前記ステンレス管はリチウムガスの攻撃からシリカを保護する。よって装置は、3つの管、すなわち、粉末を収容している小さなアルミナ管、ステンレス鋼計数管、およびシリカ管から構成されている。そのような装置を図3に示す。
【0070】
次に、前記装置を真空ランプ上に直接組み立てる。主たる真空は先ず油ポンプを用いて形成され、次に、二次的な真空は耐久性を有する拡散ポンプによって生成される。シリカ管によって得られる真空は約10−7のmbar(10−7hPa)である。次に真空ランプ上にセットした管を横型管状炉に滑り入れる。アルミナ管の出口におけるリチウムの凝結を可能にするために、ステンレス管の出口には冷却器を設置する。
【0071】
新たな真空条件は、試料に含有されているすべてのリチウムの引き抜きを可能にするために、様々な試験を要した。550℃〜650℃の間で変化する温度、並びに15〜30時間の引き抜き時間について試験した。
【0072】
異なる温度および時間条件による4つの分解の結果を、以下の表1にまとめた。
【0073】
【表1】
第1の分解は550℃で15時間にわたって行われた。得られた生成物のX線粉末回折による分析は、主な相は出発Li13Ag5Si6相であることを示しており、それほど重大でない量の銀および不純物が観察された。よって、この化合物の550℃における熱分解は、リチウムの引き抜きを可能にしないと考えられる。
【0074】
650℃で15時間にわたって第2の試験を行なった。生成物のX線分析は、出発化合物は銀およびケイ素の単純な純物質に分解されているが、出発相の残留物が残っていることを示している。
【0075】
リチウムをすべて引き抜くために、分解時間を24時間まで延長することを決定した。この試験は決定的なものであり、存在する相は銀およびケイ素である。
これらの試験を完了するために、分解温度を650℃で維持し、引き抜き時間を30時間に延長した。生成物の顕微鏡検査は、黒色粉末と銀色金属様の塊とを示しており、30時間の分解は長過ぎであり、銀の凝集を引き起こすものと推定することができる。
【0076】
Li13Ag5Si6化合物に対する10−6mbar(10−6hPa)真空下における最適な熱分解条件は、24時間、650℃の温度である。
様々な分解のX線粉末回折図の漸進的変化を図4に示す。図4において、「deg1、2、3および4」は表1に示した分解条件1、2、3および4を意味する。
【0077】
この図では、合成されたLi13Ag5Si6相の漸進的な消失が見られ、前記相は分解3において完全に消失している。第1の分解から出現する銀のピークと、分解2からようやく出現するケイ素のピークとが見られる。今度は、分解生成物の粉末回折図をより詳細に検討すること、および得られた銀およびシリコン微粒子の形態を知ることを目的とする。
【0078】
Li13Ag5Si6化合物の真空下における熱分解後に得られた生成物のX線粉末回折図は、二つの相の存在を示している。それらは、実際には元素状態にある2つの元素、すなわち、銀およびケイ素である。このディフラクトグラムを図5に示す。
【0079】
分解生成物のMET顕微鏡写真を図6に示す。
実施例3:電気化学における使用
次に実施例2の分解によって分解された生成物をスウェージロック型セル内において電気化学について試験した。負荷速度は、10時間で1個のリチウムであり、また、電位窓は0.01V〜2Vに含まれる。
【0080】
AgSiマトリックス中におけるリチウムの挿入は、第1チャージ後には、Li8AgSi化学量論に到達することを可能にし、最高6原子のリチウムが引き抜かれて、Li2AgSi化学量論に到達する。前記容量は、続くサイクルの間に漸減する(図7)。
【0081】
サイクル性能曲線(図8)は、第1サイクル中に得られる容量が非常に高いこと(1500、1200mA.h.g−1)を示している。
機構を理解するために、図9および図10に動電位モードにおけるサイクリング試験を表わした。
【0082】
第1サイクルについて、第1放電の間には、定電流モードにおける曲線の平坦域に対応する0.02Vにおいて強いピークが観察され(相の変化)、次に0.25Vおよび0.78Vに2つの小さなピークが存在する(非晶質炭素中へのLiの挿入)。第1充電の間には、3つのピーク、すなわち、0.1Vおよび0.28Vにおける小さな2つのピークと、0.45Vにおける広く強いピーク(単相現象)とが観察される。
【0083】
第2サイクル中、前記現象は再現可能であり、前記ピークはより強大である。
実施例4:K4Ge9合金の調製
前記合金をグローブボックス内において化学量論量に秤量した元素から調製する。カリウム(アルドリッチ(Aldrich) 99.5%、ロッド、m=0.630g)およびゲルマニウム(ストレム(Strem)、粉末、99.999%)を、一端が密閉されたタンタル管内に配置し、次に、そのタンタル管のもう一方の端をアルゴン下で密閉する。前記タンタル管を真空下で密閉されたシリカ計数管によって保護する。全体を730℃で24時間にわたって加熱し、次に930℃で24時間にわたって加熱する。
【0084】
得られた合金は均質であり、赤色反射光を有する黒色を有している。該合金をX線粉末回折(アルゴンベルジャー内のセル)によって特徴付け、グローブボックス内に保存する。K4Ge9は、多面体の第14族原子の配置を示す(三冠三角柱(trigonal tricapated prism)の形態にあるGe94−)。
【0085】
実施例5:ゲルマニウムナノ粒子を合成する方法
上記に記載した方法によって調製されたK4Ge9合金(100mg)を、グローブボックス内に置いて、ロタフロ(rotaflo)型の出口を有するガラス反応装置に入れる。分子ふるい上で予め乾燥させて、アルゴンで脱気した10mlのベンジルアルコールをカニューレによって真空ランプに加える。その混合物を室温で2時間撹拌する。次に、黒色着色溶液を遠心分離管に入れる。4000回転/分で20分間にわたって遠心分離することによって、黒色着色粉体を得ることができる。X線回折および透過型電子顕微鏡を用いた特性評価により、平均径2.0+/−が0.2nmを有するゲルマニウムナノ粒子(巨大なゲルマニウムのダイヤモンド構造)の存在を決定することが可能となる。これらのナノ粒子を図11に示し、これらの粒子のX線回折を図12に表わす。
【0086】
実施例6:リチウムイオン電池におけるアノードとしてのゲルマニウムナノ粒子の使用
ゲルマニウムナノ粒子粉末(8.5mg)をグローブボックス内で1.5mgのグラファイトとともに圧縮して、ペレットを形成する。アノードは、定電流モードで、0.01〜2.5Vの間において、C/10の速度(10時間で1つのリチウムイオンが挿入される)で試験される。電気化学的放電/充電曲線を図16に示す。サイクリング中に、一定の弱い分極(充電と放電との差)が見られる。ゲルマニウムは、ほぼ3つのリチウムイオンを挿入する。図が示すように、いったん第1の放電が起こると、サイクルは単純にシフトされる。しかしながら、第1サイクルでは、360mAh.g−1の容量の不可逆的損失が観察される。サイクリングの間に進行する容量の損失は、比較的重大である(約100mAh.g−1)が、各サイクル間では減少している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
AxGyMz
の材料から少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法であって、
前記式中、
Aは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし、
xは、1〜20の整数を表わし、
Gは、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの元素の周期的分類の第14族元素を表わし、
yは、1〜17の整数を表し、
Mは、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも貴金属または半貴金属を表わし、
zは0または1〜5の整数を表わし、
前記方法は、以下の工程:
その出発化合物から、真空下での熱分解によって、または酸化溶媒との反応によって、Aを少なくとも部分的に引き抜く工程と、該工程が真空下での熱分解である場合には、zは0とは異なることと、
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と、を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の材料を調製する方法において、前記式(I)の材料において、Gがケイ素とスズとの混合物であることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、前記方法は、
式(II):
AxGyMz
の化合物を真空下において熱分解する少なくとも1つの工程を含み、前記式中、
Aは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択されるアルカリ金属を表わし、
xは、1〜20の整数を表わし、
Gは、ケイ素を表わし、
yは、1〜10の整数を表し、
Mは、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも貴金属または半貴金属を表わし、
zは、1〜5の整数を表わす、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、前記Aが乏しい材料は、式(IV):
Ax’GyMz
を有し、前記式中、
A、GおよびMは先に上記で定義した通りであり、
yおよびzは先に上記で定義した通りであり、
x’はy/10未満の数である
ことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、圧力は10−2Pa以下であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、前記熱分解は500℃以上の温度で行われることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、前記熱分解は10〜30時間にわたって行われることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、該方法は、少なくとも下記の工程、すなわち、
式(III):
AxGyMz
の材料と酸化溶媒を接触させる工程と、
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と、
を有し、
前記式中、
Aは、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし、
xは、1〜12の整数を表わし、
Gは、特にケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの第14族元素を表わし、
yは、1〜17の整数を表し、
zは0である、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、前記Aが乏しい材料は、式(IV):
Ax’GyMz
の材料であり、前記式中、
AおよびGは先に定義した通りであり、
yは先に定義したようなものであり、
zは0であり、
x’はy/10未満の数であることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか1項に記載の方法において、前記酸化溶媒は二つの下記の特徴、すなわち、
アルコール、アミン、チオール、カルボニル、カルボン酸およびホスホン酸から選択される少なくとも1つの酸化官能基を有することと、
少なくともアルキル基、アリール基またはアラルキル基を含むことと、
を有する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記アルキル基、アリール基またはアラルキル基は、
エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ノナデシルのような、直鎖状、分岐鎖状、または環式のアルキルラジカル、および
最終的に1つ以上のアルキルによって置換されているアリールラジカルおよびアラルキルラジカルであって、そのアルキルは任意で置換されていること及びその鎖が1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていることのうちの少なくとも一方である、アリールラジカルおよびアラルキルラジカル、
のうちから選択されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の方法において、請求項9に記載の式(IV):
Ax’GyMz
の材料が熱処理工程に供されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記熱処理の温度は300℃以上であることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られるであろう少なくとも1つの第14族元素を含有する材料。
【請求項15】
請求項14に記載の材料の電気化学分野における使用。
【請求項16】
請求項14に記載の材料の光起電力技術および熱電気の分野における使用。
【請求項17】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を含む電池。
【請求項18】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を含むアノード。
【請求項19】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料の使用であって、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの少なくとも一方を可逆的な方法で蓄積および放出するための使用。
【請求項1】
式(I):
AxGyMz
の材料から少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法であって、
前記式中、
Aは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし、
xは、1〜20の整数を表わし、
Gは、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの元素の周期的分類の第14族元素を表わし、
yは、1〜17の整数を表し、
Mは、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも貴金属または半貴金属を表わし、
zは0または1〜5の整数を表わし、
前記方法は、以下の工程:
その出発化合物から、真空下での熱分解によって、または酸化溶媒との反応によって、Aを少なくとも部分的に引き抜く工程と、該工程が真空下での熱分解である場合には、zは0とは異なることと、
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と、を有する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の材料を調製する方法において、前記式(I)の材料において、Gがケイ素とスズとの混合物であることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、前記方法は、
式(II):
AxGyMz
の化合物を真空下において熱分解する少なくとも1つの工程を含み、前記式中、
Aは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択されるアルカリ金属を表わし、
xは、1〜20の整数を表わし、
Gは、ケイ素を表わし、
yは、1〜10の整数を表し、
Mは、アルミニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛および銀から選択される少なくとも貴金属または半貴金属を表わし、
zは、1〜5の整数を表わす、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、前記Aが乏しい材料は、式(IV):
Ax’GyMz
を有し、前記式中、
A、GおよびMは先に上記で定義した通りであり、
yおよびzは先に上記で定義した通りであり、
x’はy/10未満の数である
ことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、圧力は10−2Pa以下であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、前記熱分解は500℃以上の温度で行われることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、前記熱分解は10〜30時間にわたって行われることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、該方法は、少なくとも下記の工程、すなわち、
式(III):
AxGyMz
の材料と酸化溶媒を接触させる工程と、
Aが乏しいか、またはAを有さない材料を収集する工程と、
を有し、
前記式中、
Aは、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択される少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わし、
xは、1〜12の整数を表わし、
Gは、特にケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛から選択される、少なくとも1つの第14族元素を表わし、
yは、1〜17の整数を表し、
zは0である、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を調製する方法において、前記Aが乏しい材料は、式(IV):
Ax’GyMz
の材料であり、前記式中、
AおよびGは先に定義した通りであり、
yは先に定義したようなものであり、
zは0であり、
x’はy/10未満の数であることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか1項に記載の方法において、前記酸化溶媒は二つの下記の特徴、すなわち、
アルコール、アミン、チオール、カルボニル、カルボン酸およびホスホン酸から選択される少なくとも1つの酸化官能基を有することと、
少なくともアルキル基、アリール基またはアラルキル基を含むことと、
を有する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記アルキル基、アリール基またはアラルキル基は、
エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ノナデシルのような、直鎖状、分岐鎖状、または環式のアルキルラジカル、および
最終的に1つ以上のアルキルによって置換されているアリールラジカルおよびアラルキルラジカルであって、そのアルキルは任意で置換されていること及びその鎖が1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていることのうちの少なくとも一方である、アリールラジカルおよびアラルキルラジカル、
のうちから選択されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の方法において、請求項9に記載の式(IV):
Ax’GyMz
の材料が熱処理工程に供されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記熱処理の温度は300℃以上であることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られるであろう少なくとも1つの第14族元素を含有する材料。
【請求項15】
請求項14に記載の材料の電気化学分野における使用。
【請求項16】
請求項14に記載の材料の光起電力技術および熱電気の分野における使用。
【請求項17】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を含む電池。
【請求項18】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料を含むアノード。
【請求項19】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法によって得られる少なくとも1つの第14族元素を含有する材料の使用であって、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの少なくとも一方を可逆的な方法で蓄積および放出するための使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−519411(P2010−519411A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550304(P2009−550304)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000226
【国際公開番号】WO2008/122711
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(507069634)ユニベルシテ・ドゥ・モンペリエ II (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER II
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000226
【国際公開番号】WO2008/122711
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(507069634)ユニベルシテ・ドゥ・モンペリエ II (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER II
【Fターム(参考)】
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