説明

筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セット

【課題】 筆跡を目視しながら形成できる利便性に加えて、筆跡を消去した後に筆跡の履歴を紫外線照射具の適用といった簡便な手段により確認することのできる筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セットを提供する。
【解決手段】 加熱により消色する着色剤として、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料と、ビヒクルとから少なくともなり、前記マイクロカプセル内及び/又はビヒクル中に蛍光増白剤を含有してなる筆記具用水性インキ組成物、前記インキ組成物を収容した筆記具、筆記具セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セットに関する。
更に詳細には、筆記の履歴を確認することのできる筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱により消色する可逆熱変色性材料を含む筆記具用インキ組成物を収容した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記可逆熱変色性材料は、発色と消色の可逆的変色を呈し、消色に要した熱の適用を取り去った後にあっても消色状態を保持する機能を備えるため、発色状態の可逆熱変色性材料を含むインキ組成物を収容した筆記具を用いて形成された筆跡を加熱により消色させ、その状態を保持できる。
また、消色した筆跡は冷却により現出させて履歴を確認することができるため、偽造防止、暗証といったセキュリティ用途、暗記や遊戯に使用することもできる。
しかしながら、冷却には冷却装置やコールドスプレー等の冷却具が必要であり、煩雑で持ち運びに難があるため、簡易に履歴を確認でき難い。
一方、筆跡の履歴を確認できる筆記具としては、蛍光増白剤を含有するインキ組成物を収容した筆記具が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
前記筆記具により形成された筆跡は昼光下では視認されず、紫外線照射具により発光するため、履歴を確認することができる。
前記筆記具は、履歴の可視化を紫外線照射具の適用といった簡便な手段により行うことができるものの、筆記時に筆記した文字や筆記箇所を確認できないため、所望の筆跡を形成でき難く、しかも、筆跡を視認可能な状態で保持することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−213361号公報
【特許文献2】特開2005−23207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、通常の使用状態において筆跡を目視することができるため、筆跡を確認しながら形成することができると共に、筆跡を消去した際、筆跡の履歴を紫外線照射具の適用といった簡便な手段により確認することのできる筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加熱により消色する着色剤として、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料と、ビヒクルとから少なくともなり、前記マイクロカプセル内及び/又はビヒクル中に蛍光増白剤を含有してなる筆記具用水性インキ組成物を要件とする。
更には、前記マイクロカプセル内に含有される蛍光増白剤が油溶性蛍光増白剤であること、前記油溶性蛍光増白剤の含有量が可逆熱変色性組成物1質量部に対して0.0001乃至0.2質量部であること、前記ビヒクル中に含有される蛍光増白剤がインキ組成物全量中0.01乃至20質量%であること、前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、両状態の保持温度域が共に常温域にある顔料であり、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度tに達すると消色し始め、温度tより高い温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度tより低い温度tに達すると着色し始め、温度tより低い温度t以下の温度域で完全に着色状態となり、前記温度tと温度tの間の温度域で着色状態と無色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度tは−50〜0℃の範囲にあり、温度tが50〜95℃の範囲にあること、前記インキ組成物中に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有してなること等を要件とする。
更には、前記前記筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具、前記筆記具用水性インキ組成物を軸筒内に収容し、前記軸筒にボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着した筆記具、前記筆記具用水性インキ組成物をインキ収容管内に収容し、前記インキ収容管にボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したボールペンレフィルを、軸筒内に収容した筆記具、キャップを備えてなる前記筆記具、前記ボールペンレフィルを、出没機構を備えた軸筒内に収容してなり、出没機構の作動によってボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する筆記具、摩擦部材を設けてなる筆記具等を要件とする。
更には、前記筆記具と、摩擦体とからなる筆記具セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、筆跡を目視しながら形成できる利便性に加えて、筆跡を消去した後に筆跡の履歴を紫外線照射具の適用といった簡便な手段により確認することのできる実用性に富む筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】本発明筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具の一実施例の説明図である。
【図3】本発明筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具の他の実施例の説明図である。
【図4】本発明筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具の他の実施例の説明図である。
【図5】本発明筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具の他の実施例の説明図である。
【図6】本発明筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具の他の実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、加熱により消色する着色剤として、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料と、ビヒクルと、蛍光増白剤とからなる筆記具用水性インキ組成物である。
前記マイクロカプセル顔料としては、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料が好適に用いられる(図1参照)。
【0009】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記tとt間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるtとtの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0010】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度tを摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち45〜95℃、好ましくは50〜95℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜80℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0011】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0012】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0013】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0015】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0016】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0017】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることもできる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0019】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0020】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18−オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0021】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0022】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0023】
前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡を摩擦体による摩擦による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)は、最大外径の平均値が、5.0μmを越える系では、インキ流出性の低下を来し、一方、最大外径の平均値が、0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難く、好ましくは、最大外径の平均値が、1〜4μmの範囲、当該マイクロカプセルの平均粒子径〔(最大外径+中央部の最小外径)/2〕が1〜3μmの範囲が好適である。
ここで、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0024】
前記ビヒクルは、水と、必要により水溶性有機溶剤、各種添加剤とからなる。
前記水溶性有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。
【0025】
前記マイクロカプセル顔料内及び/又はビヒクル中には蛍光増白剤を含有してなる。
前記マイクロカプセル顔料内に内包する場合、蛍光増白剤は油溶性蛍光増白剤であることが好ましい。それは、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる可逆熱変色性組成物が油性であるため、油溶性蛍光増白剤を用いるとマイクロカプセル顔料内で可逆熱変色性組成物と均質相溶して安定的に蛍光増白効果を発現できるからである。
なお、前記油溶性蛍光増白剤の含有量は、可逆熱変色性組成物1質量部に対して0.0001〜0.2質量部、好ましくは0.001〜0.1質量部である。
可逆熱変色性組成物1質量部に対して0.0001質量部未満では、紫外線照射具を用いて光照射した際、筆跡の履歴を確認する効果に乏しく、また、0.2質量部を超えると、可逆熱変色性組成物の消色開始温度が低温側にシフトしたり、着色開始温度が高温側にシフトする不具合を生じて、鋭敏な変色感度を損ない易くなる。また、マイクロカプセル顔料中における蛍光増白剤の比率が高くなり、相対的に可逆熱変色性組成物の比率が低くなるため、発色時の色濃度が低下し易くなる。
前記油溶性蛍光増白剤は、クマリン系、ナフタルイミド系、オキサゾール系、チオフェン系、スチルベン系、スチレンビフェニル誘導体系、ピラゾロン誘導体系蛍光増白剤を挙げることができる。
【0026】
以下に油溶性蛍光増白剤について例示する。
クマリン系蛍光増白剤としては、下記式(5)で表される7−トリアジニルアミノ−3−フェニルクマリン系誘導体、下記式(6)で表される3−フェニル−7−アリルトリアゾリルクマリン誘導体が挙げられる。
【化5】

(式中Aは非水溶性基を有してもよいフェニル基であり、Xはハロゲン原子又はアミノ基、又は脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、脂環式、脂肪族複素環式及び芳香族複素環式などの第一又は第二アミン残基であり、Yはフェニル基、アミノ基又はXで定義されたアミン残基を表す。)
【化6】

(式中、Xは水素又は塩素原子、Aは2個の互いに隣接する炭素原子にトリアゾール環の窒素原子を結合した芳香族残基を表しこの芳香族残基は非水溶性基で置換されてもよい。)
ナフタルイミド系油溶性蛍光増白剤としては、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化7】

(式中、R、Rはそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
オキサゾール系蛍光増白剤としては、下記式(8)、(9)、(10)で表される化合物が挙げられる。
【化8】

(式中、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【化9】

(式中、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【化10】

(式中、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
チオフェン系蛍光増白剤としては、下記式(11)で表される化合物が挙げられる。
【化11】

(式中、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは、一方は水素、他方は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
スチルベン系蛍光増白剤としては下記式(12)で表される化合物が挙げられる。
【化12】

スチレンビフェニル誘導体系蛍光増白剤としては下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
【化13】

(式中、Rは、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基を表す。)
ピラゾロン誘導体系蛍光増白剤としては下記式(14)で表される化合物が挙げられる。
【化14】

また、ビヒクル中に配合する蛍光増白剤は、ビヒクル組成に対して少なくとも0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%添加される。
0.01質量%未満では、紫外線照射具を用いて光照射した際、筆跡の履歴を確認する効果に乏しく、20重量%を超える量を添加しても紫外線照射具を用いて光照射した際に筆跡の履歴を確認する効果をより向上することはできないと共に、ビヒクル中で析出し易く、筆記不良の要因となる。
前記ビヒクル中に配合される蛍光増白剤は特に限定されるものではないが、前記クマリン系、ナフタルイミド系、オキサゾール系、チオフェン系、スチルベン系、スチレンビフェニル誘導体系、ピラゾロン誘導体系蛍光増白剤にスルホン基、カルボキシル基、アミド基、水酸基等の水溶性の極性基を付加した水溶性蛍光増白剤、油溶性蛍光増白剤を樹脂に加温溶解して得られる微粒子を水媒体中に分散させた水分散型蛍光増白剤等が挙げられる。
前記ビヒクル中に含有される蛍光増白剤は、インキ組成物全量中0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
なお、前記マイクロカプセル顔料内とビヒクル中にはいずれか一方に蛍光増白剤を含有させる他、マイクロカプセル顔料内とビヒクル中に併用して蛍光増白剤を含有させることもできる。
【0027】
前記マイクロカプセル顔料と、ビヒクルと、蛍光増白剤を含む筆記具用水性インキ組成物としては、剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキや、水溶性高分子凝集剤を含有させてマイクロカプセル顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキを挙げることができる。
【0028】
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、マイクロカプセル顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0029】
前記水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
本発明の筆記具用インキ組成物においては、マイクロカプセル顔料粒子間のゆるい橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも水溶性セルロース誘導体が有効に機能する。
【0030】
前記水溶性高分子凝集剤と共に、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤及び有機窒素硫黄化合物を併用することにより、前記高分子凝集剤によるマイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性を向上させることができる。
前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、前記化合物として日本ルーブリゾール社製の商品名:ソルスパース43000を例示できる。
【0031】
前記有機窒素硫黄化合物は、インキ組成物を筆記具に充填して実用に供する際、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降をいっそう抑制する。
これは、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
前記有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物として具体的には、2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−(チオシアネートメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール(TCMTB)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物としては、(株)パーマケム・アジア製、商品名:トップサイド88、同133、同170、同220、同288、同300、同400、同500、同600、同700Z、同800、同950、北興産業(株)製、商品名:ホクスターHP、同E50A、ホクサイドP200、同6500、同7400、同MC、同369、同R−150を例示できる。
なお、前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物の質量比率は1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:5であり、前記範囲を満たすことにより、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性、及び、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降抑制を十分に発現させることができる。
【0032】
また、水溶性樹脂を添加すると紙面への固着性や粘性を付与することができる。なお、前述の側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物を含むインキ中に添加する場合、櫛型高分子分散剤と有機窒素硫黄化合物の安定性を高める機能を付与できる。
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
更に、前記ポリビニルアルコールは、けん化度が70〜89モル%の部分けん化度型ポリビニルアルコールがインキが酸性域でも可溶性に富むため、より好適に用いられる。
前記水溶性樹脂の添加量としては、インキ中に0.3〜3.0質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲で添加される。
【0033】
また、本発明のインキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
更に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有させることにより、インキのpHが酸性或いはアルカリ領域であっても、一度凍結したインキが再度解凍された後に生じるマイクロカプセル顔料の分散不良や凝集を抑制でき、インキ粘度の上昇やそれに伴う筆跡カスレや淡色化を防止することができると共に、ボールペンに用いる場合はボールの腐食を防止することもできる。
また、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0034】
前記インキは、マーキングペンチップやボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン等の筆記具に充填して実用に供される。
【0035】
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
【0036】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3〜3.0mm、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mm径程度のものが適用できる。
【0037】
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
前記のようにして得られるボールペンは、キャップを備えたボールペンの他、出没式ボールペンであってもよく、その形状は特に限定されるものではない。
出没式ボールペンは、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧にすることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
【0038】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0039】
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、前記増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0040】
また、マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるペン先を直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とペン先が連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、ペン先の押圧により開放する弁体を介してペン先とインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
【0041】
前記ペン先は、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体はポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
前記のようにして得られるボールペンは、キャップを備えたマーキングペンの他、出没式マーキングペンであってもよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0042】
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のペン先を装着させたり、相異なる色調のインキを導出させるペン先を装着させた複合筆記具(両頭式やペン先繰り出し式等)であってもよい。
【0043】
前記インキ組成物を収容した筆記具より形成される筆跡は、指による摩擦や摩擦体の適用により変色させることができる。
前記摩擦体としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような摩擦体が用いられる。
前記摩擦体の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)が好適に用いられるが、シリコーン樹脂は摩擦により消去した部分に樹脂が付着し易く、繰り返し筆記した際に筆跡がはじかれる傾向にあるため、SEBS樹脂がより好適に用いられる。
前記摩擦体は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材(摩擦体)固着させることにより、携帯性に優れる。
前記摩擦部材を固着する箇所は、特に限定されるものではないが、キャップを備えるボールペンの場合、キャップ先端部(頂部)、或いは、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に設けることができ、出没式のボールペンの場合は、軸筒先端部、或いは、軸筒後端部に設けることができる。
更に、キャップの一部、或いは軸筒の一部に任意形象の小突部を設けて摩擦部材とすることもできる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具、筆記具セットについて説明する。なお、実施例中の配合は質量部を示す。
実施例1
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として、7−〔1′,3′,5′−トリアジン−4′−クロロ−6′−(3′′−ジエチルアミノプロピルアミノ)−2′−イル−アミノ〕−3−フェニルクマリン0.5部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.8μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0045】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料12.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水65.4部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0046】
筆記具の作製(図2参照)
前記インキ2(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させたもの)をポリプロピレン樹脂からなるパイプ(インキ収容管3)に吸引充填し、樹脂製中継部材4(ホルダー)を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップ5と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体6(液栓)を充填し、更に尾栓7をパイプの後部に嵌合させてレフィル8とした。更に、前記レフィルを軸筒9(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップ10を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記後軸筒後部には摩擦部材11としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0047】
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、青色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦すると青色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0048】
実施例2
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.8μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0049】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料12.5部、クマリン系水溶性蛍光増白剤(商品名:Hakkal ANP、ハッコールケミカル株式会社製)0.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水64.9部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0050】
筆記具の作製(図2参照)
前記インキ2(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させたもの)をポリプロピレン樹脂からなるパイプ(インキ収容管3)に吸引充填し、樹脂製中継部材4(ホルダー)を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップ5と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体6(液栓)を充填し、更に尾栓7をパイプの後部に嵌合させてレフィル8とした。更に、前記レフィルを軸筒9(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップ10を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記後軸筒後部には摩擦部材11としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0051】
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、青色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦すると青色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0052】
実施例3
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として2,2′−(1,2−エチレンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾオキサゾール0.2部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.8μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0053】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料12.5部、4,4′ジスアミノスチルベンジスルホン酸誘導体(商品名:Hakkal RN、ハッコールケミカル株式会社製)0.01部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水65.4部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0054】
筆記具の作製(図2参照)
前記インキ2(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させたもの)をポリプロピレン樹脂からなるパイプ(インキ収容管3)に吸引充填し、樹脂製中継部材4(ホルダー)を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップ5と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体6(液栓)を充填し、更に尾栓7をパイプの後部に嵌合させてレフィル8とした。更に、前記レフィルを軸筒9(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップ10を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記後軸筒後部には摩擦部材11としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0055】
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、青色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦すると青色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0056】
実施例4
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として3−フェニル−7−フタリドトリアジニルクマリン0.5部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.3μm、完全消色温度は58℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
【0057】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料12.5部、ピラロゾン誘導体(商品名:Hakkal WG、ハッコールケミカル株式会社製)0.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水64.9部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0058】
筆記具の作製(図3参照)
前記インキ2(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料をピンク色に発色させたもの)を先端にボールペンチップ5を中継部材4(ホルダー)を介して固着したポリプロピレン製軸筒9に充填し、次いで、インキ逆流防止体6を充填し、尾栓7を嵌合させた。
更に、先端に摩擦部材11としてSEBS樹脂を装着したキャップ10を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記ボールペンチップは、金属材料をドリルによる切削加工により形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0059】
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、ピンク色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦するとピンク色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0060】
実施例5
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン3.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として、7−〔1′,3′,5′−トリアジン−4′−クロロ−6′−(3′′−ジエチルアミノプロピルアミノ)−2′−イル−アミノ〕−3−フェニルクマリン0.5部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.0μm、完全消色温度は60℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により橙色から無色に変色する。
【0061】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却して橙色に発色させたもの)20.0部、水分散型蛍光増白剤(商品名:Shigenox OWPL、ハッコールケミカル株式会社製)1.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水51.78部を混合して筆記具用インキ組成物を得た。
【0062】
筆記具の作製(図4参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体12内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒9内に収容し、中継部材4(ホルダー)を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ5(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップ10を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記キャップには頂部に摩擦部材11としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0063】
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、橙色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦すると橙色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0064】
実施例6
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン3.0部、(ロ)成分として、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン10.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として3−フェニル−7−フタリドトリアジニルクマリン0.5部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は2.5μm、完全消色温度は59℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により黄色から無色に変色する。
【0065】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却して黄色に発色させたもの)20.0部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、クマリン誘導体(商品名:Hakkal W、ハッコールケミカル株式会社製)0.1部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水52.68部を混合して筆記具用インキ組成物を得た。
【0066】
筆記具の作製(図5参照)
前記インキ2(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黄色に発色させた後、室温下で放置したもの)と、撹拌体13(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒9内に内蔵し、中継部材4(ホルダー)を介して先端部にマーキングペンチップ5[チゼル型繊維ペン体(気孔率約53%)]を取り付け、キャップ10を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構14を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記軸筒後端部には摩擦部材11としてSEBS樹脂を装着してなる。
【0067】
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、黄色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦すると黄色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0068】
実施例7
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として、7−〔1′,3′,5′−トリアジン−4′−クロロ−6′−(3′′−ジエチルアミノプロピルアミノ)−2′−イル−アミノ〕−3−フェニルクマリン0.5部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.8μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0069】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料12.5部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのナトリウム塩3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水62.4部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0070】
筆記具の作製
前記インキ(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させたもの)をポリプロピレン樹脂からなるパイプ(インキ収容管)に吸引充填し、樹脂製中継部材(ホルダー)を介して0.4mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてレフィルとした。更に、前記レフィルを軸筒(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップを嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具(ボールペン)を得た。
【0071】
筆記具セットの作製
前記筆記具と、一辺が30mmの立方体形状のSEBS樹脂製摩擦体を組み合わせて筆記具セットを得た。
前記筆記具を用いて筆記用紙に筆記したところ、青色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡を摩擦体で摩擦すると青色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【0072】
実施例8
マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部、油溶性蛍光増白剤として2,2′−(1,2−エチレンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾオキサゾール0.2部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離した。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.8μm、完全消色温度は55℃、完全発色温度は−20℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0073】
筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料12.5部、4,4′ジスアミノスチルベンジスルホン酸誘導体(商品名:Hakkal RN、ハッコールケミカル株式会社製)0.01部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10部、グリセリン10部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水65.4部からなる筆記具用インキ組成物を調製した。
【0074】
ボールペンレフィルの作製
前記インキ2(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させたもの)をポリプロピレン樹脂からなるパイプ(インキ収容管3)に吸引充填し、樹脂製中継部材4(ホルダー)を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップ5と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体6(液栓)を充填し、更に尾栓7をパイプの後部に嵌合させてレフィルとした。
前記レフィルを、軸筒9内に組み込み、筆記具1(出没式ボールペン)を得た(図6参照)。
なお、前記軸筒の先端部には、摩擦部材11としてSEBS樹脂を設けてなる。
前記出没式ボールペンは、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後端部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部から筆記先端部が突出する構造である。
前記筆記具の出没機構を作動させて軸筒前端開口部からボールペンチップを突出させた状態で筆記用紙に筆記したところ、青色の筆跡を形成することができると共に、前記筆跡は室温(25℃)下で保持された。
次いで、出没機構を作動させてボールペンチップを軸筒内に収容した状態で前記筆跡を筆記具に設けた摩擦体で摩擦すると青色の筆跡は消色し、この状態は室温(25℃)下で保持された。
前記筆跡の存在していた箇所に紫外線照射具を用いて光照射したところ、消色した筆跡が発光して視認され、履歴を確認することができた。
【符号の説明】
【0075】
可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全発色温度
可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の発色開始温度
可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の消色開始温度
可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 筆記具
2 インキ
3 インキ収容管
4 中継部材
5 チップ
6 インキ逆流防止体
7 尾栓
8 レフィル
9 軸筒
10 キャップ
11 摩擦部材
12 インキ吸蔵体
13 攪拌体
14 弁機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により消色する着色剤として、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料と、ビヒクルとから少なくともなり、前記マイクロカプセル内及び/又はビヒクル中に蛍光増白剤を含有してなる筆記具用水性インキ組成物。
【請求項2】
前記マイクロカプセル内に含有される蛍光増白剤が油溶性蛍光増白剤である請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記油溶性蛍光増白剤の含有量が可逆熱変色性組成物1質量部に対して0.0001乃至0.2質量部である請求項2記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項4】
前記ビヒクル中に含有される蛍光増白剤がインキ組成物全量中0.01乃至20質量%である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項5】
前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、両状態の保持温度域が共に常温域にある顔料であり、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度tに達すると消色し始め、温度tより高い温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度tより低い温度tに達すると着色し始め、温度tより低い温度t以下の温度域で完全に着色状態となり、前記温度tと温度tの間の温度域で着色状態と無色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度tは−50〜0℃の範囲にあり、温度tが50〜95℃の範囲にある請求項1乃至4のいずれか一項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項6】
前記インキ組成物中に2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有してなる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具。
【請求項8】
前記筆記具用水性インキ組成物を軸筒内に収容し、前記軸筒にボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着した請求項7記載の筆記具。
【請求項9】
前記筆記具用水性インキ組成物をインキ収容管内に収容し、前記インキ収容管にボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したボールペンレフィルを、軸筒内に収容した請求項7記載の筆記具。
【請求項10】
キャップを備えてなる請求項7乃至9のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項11】
前記ボールペンレフィルを、出没機構を備えた軸筒内に収容してなり、出没機構の作動によってボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する請求項9記載の筆記具。
【請求項12】
摩擦部材を設けてなる請求項7乃至11のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項13】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載の筆記具と、摩擦体とからなる筆記具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196035(P2010−196035A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269767(P2009−269767)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】