等価回路解析装置及び等価回路解析方法
【課題】測定対象物の周波数特性から推定した等価回路の素子定数に誤差があったときに、素子定数をどのように変化させると測定対象物をよく近似できるかということを測定者に容易に知らせることができる等価回路解析装置を提供する。
【解決手段】等価回路解析装置1は、タッチパネル10に測定対象物の周波数特性のグラフ31を表示させる測定部と、その周波数特性から等価回路の素子定数RCLを推定する推定部と、素子定数を変更させる増減ボタン14〜16と、推定部の推定した素子定数、及び増減ボタン14〜16で変更した素子定数で周波数特性を算出してグラフ32を表示させる理論特性演算部と、等価回路の周波数特性の傾向を変更させたいときに何れの素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を記憶するガイド情報記憶部と、タッチパネル10で選択されたグラフ32の部位のガイド表示35を表示させるガイド情報処理部を備える。
【解決手段】等価回路解析装置1は、タッチパネル10に測定対象物の周波数特性のグラフ31を表示させる測定部と、その周波数特性から等価回路の素子定数RCLを推定する推定部と、素子定数を変更させる増減ボタン14〜16と、推定部の推定した素子定数、及び増減ボタン14〜16で変更した素子定数で周波数特性を算出してグラフ32を表示させる理論特性演算部と、等価回路の周波数特性の傾向を変更させたいときに何れの素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を記憶するガイド情報記憶部と、タッチパネル10で選択されたグラフ32の部位のガイド表示35を表示させるガイド情報処理部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定し、この周波数特性から、電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオード、トランジスタ、一次・二次電池、太陽電池、フィルタなどの電気的な部品を測定対象物(以下、DUTともいう)として、そこに周波数を掃引させつつ測定用信号電圧を印加して、その電圧及び流れた電流から、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、測定した周波数特性を表示パネルにグラフで表示するインピーダンス測定装置が知られている。このようなインピーダンス測定装置の中には、測定した複素インピーダンスの周波数特性から、測定対象物の電気的な等価回路の素子定数を推定する機能を有しているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、モンテカルロ法により評価関数が最小になる等価回路の素子定数を演算し、この演算した素子定数を局所探索法の開始値として評価関数が極小値になる素子定数を演算して、さらにこれら演算を所定回数繰り返し行って素子定数を求める等価回路素子定数推定方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、どのような推定方法を用いたとしても、素子定数の推定結果に誤差が生じてしまう場合がある。そのため、推定結果に誤差があるか否かを測定者が判断可能なように、推定した素子定数で等価回路の理論的な周波数特性を算出し、得られた理論的な周波数特性のグラフを、DUTの測定結果のグラフと共に表示パネルに表示させることが考えられる。測定者は、両グラフを比較して、両グラフ間にほとんど差が無ければ推定した素子定数はDUTを正しく(よく近似して)表しており、一部でも大きな差があれば素子定数はDUTを正しく表していないと判断する。測定者は、両グラフ間に一部でも差がある場合、推定した素子定数の値を手動で適宜変更(調整)して、装置に等価回路の理論的な周波数特性のグラフを再度表示させ、測定結果のグラフと一致させるようにすることで、正しい素子定数を得ることができる。
【0005】
しかしながら、DUTの等価回路は、各々1つ又は複数の抵抗、コンデンサ、コイルといった素子が組み合わされて構成されている。そのため、測定者は、何れの素子定数の値をどのように変更すればよいか判断することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−249749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性から推定した等価回路の素子定数に誤差があったときに、いずれの素子定数をどのように変化させると測定対象物をよく近似できるかということを、測定者に容易に理解させることができる等価回路解析装置及び等価回路解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された等価回路解析装置は、画像を表示可能な表示部と、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、該表示部にグラフで表示させる測定部と、該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、該素子定数を該表示部に表示させると共に、該各素子定数を個々に変更設定可能な素子定数変更部と、該推定部の推定した該各素子定数、及び、該素子定数変更部によって変更設定された該各素子定数で、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該表示部にグラフで表示させる理論特性演算部と、いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部と、該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択するための選択部と、該選択部によって選択された該部位に対応するガイド情報を該ガイド情報記憶部から読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記選択部が、前記表示部となるタッチパネル、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を演算して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択する選択用演算部であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された等価回路解析装置は、請求項1又は2に記載されたもので、前記素子定数変更部が、前記各々の素子定数を個別に、一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段を有しており、該増減手段が操作されるたびに増減設定された該素子定数で、前記理論特性演算部が、該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された等価回路解析装置は、請求項1から3のいずれかに記載されたもので、前記各素子定数の各々の上限許容値及び下限許容値を予め記憶する許容値記憶部と、該上限許容値及び該下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させる比較部とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載された等価回路解析方法は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、表示部にグラフで表示させる測定ステップと、該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、表示部にグラフで表示させる理論特性演算ステップと、該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択する選択ステップと、いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部から、該選択ステップによって選択された該部位に対応する該ガイド情報を読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載された等価回路解析方法は、請求項5に記載されたもので、前記選択ステップで、前記表示部となるタッチパネルが操作されて前記部位が選択され、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を算出して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された等価回路解析方法は、請求項5又は6に記載されたもので、前記各々の素子定数を個別に一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段が操作されるたびに、前記理論特性演算ステップを実行して、増減設定された該素子定数で該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載された等価回路解析方法は、請求項5から7のいずれかに記載されたもので、上限許容値及び下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させる比較ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の等価回路解析装置及び等価回路解析方法によれば、等価回路の周波数特性を、測定した測定対象物の周波数特性に一致させるようにするために、いずれの素子定数をどのように変化させればよいかというガイド情報を表示部に表示可能であるので、測定者は、ガイド情報に従って素子定数を変更することで、測定対象物を良く近似した誤差の少ない正確な素子定数を、少ない操作回数で短時間に得ることができる。
【0017】
測定結果や等価回路の周波数特性のグラフをタッチパネル上に表示させる場合、ガイド表示を表示させたいグラフの部位を指等で直接触って選択することができるので、操作性に優れ、目的とする部位のガイド情報を直ちに表示させることができる。また、測定した周波数特性と等価回路の周波数特性との差が所定差よりも大きい領域を演算により求め、その領域に対応するガイド表示を自動的に表示させることで、より短時間に誤差の少ない素子定数を得ることができる。さらにこの場合、ガイド表示を自動的に表示させることで、素子定数の誤差が大きいということを測定者に知らせることができ、素子定数を確実に調整させることができる。
【0018】
各素子定数を一操作で増加又は減少させる増減手段が操作されるたびに、等価回路の周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを表示部に再描画する場合、測定者は、測定結果と等価回路との周波数特性を一致させるためにどのぐらい素子定数を変化させればよいかを直感的に理解することができるので、迅速に正確な素子定数を得ることができる。また、例えば、テンキーと確定キーとを操作して確定キーが押されたときにグラフを再描画するような場合よりも、迅速に素子定数を設定することができる。
【0019】
各素子定数が予め設定された上限許容値及び下限許容値の範囲内に素子定数が入っているか否かを判定して、その判定結果を表示する場合、素子定数の妥当性が判るので、例えば、素子定数の調整(変更)の必要性などが判る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する等価回路解析装置のブロック図である。
【図2】本発明を適用する等価回路解析方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明を適用する等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【図4】図3のタッチパネルの使用状態を説明するための概要図である。
【図5】図3のタッチパネルの使用状態を説明するための概要図である。
【図6】測定対象物の等価回路の例である。
【図7】図6に示す各等価回路のインピーダンス特性及び位相特性の例である。
【図8】等価回路aにおける素子定数の推定を説明するための実効抵抗の周波数特性データ(グラフ)である。
【図9】等価回路dにおける素子定数の推定を説明するためのコンダクタンスの周波数特性データ(グラフ)である。
【図10】ガイド情報記憶部に記憶させる参照テーブルの例である。
【図11】本発明を適用する他の等価回路解析装置のブロック図である。
【図12】図11の等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【図13】本発明を適用するさらに他の等価回路解析装置の一部を示すブロック図である。
【図14】図13の等価回路解析装置に用いるタッチパネルの上限許容値、下限許容値を設定するための設定画面の表示例を示す概要図である。
【図15】図13の等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明を適用する等価回路解析装置1は、図1に機能的ブロックで示すように、タッチパネル10、測定部2、推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、ガイド表示処理部6、及びガイド情報記憶部7を備え、測定対象物(DUT)90の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、その周波数特性から等価回路の各素子定数を推定部3が推定することが可能になっている。なお、同図に示す推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、及びガイド表示処理部6等は、一例として、本装置1の動作を統括的に制御する1つ又は複数のCPU(不図示)がメモリ(不図示)に予め記憶されたソフトウエアに従って動作して演算処理することで実現されている。また、等価回路解析装置1は、後述する図2のフローチャートに対応するプログラムがメモリに予め記憶されていて、そのフローチャートに従って動作可能に構成されている。
【0023】
タッチパネル10は、画像を表示可能な液晶パネルやCRTなどの表示装置と、タッチパッドなどの位置入力装置を組み合わせたもので、画像を表示可能であると共に、指や専用ペン等が画面に触れたときに、その触れた画面上の位置情報を出力するものである。タッチパネル10は、等価回路解析装置1の表示部及び操作部として用いられる。タッチパネル10に換えて、液晶パネル等の表示部と、キーボードやマウス等の操作部とを備えていてもよい。
【0024】
等価回路解析装置1の動作について、図1〜図5を用いて、図2のフローチャートに沿って説明する。図2のフローチャートが本発明の等価回路解析方法を示している。
【0025】
測定ステップS1では、測定部2が、不図示の交流信号源からプローブ21a,21bを介して、周波数を開始周波数から終了周波数まで掃引させて測定用信号電圧を測定対象物(DUT)90に印加し、2端子法又は4端子法などの公知の測定方法で電圧と電流とを測定し、その電圧及び電流から複素インピーダンスの周波数特性を測定する。また、測定部2は、図3に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、測定部2の測定した複素インピーダンスの周波数特性のグラフ31を表示する。複素インピーダンスの周波数特性として、測定部2は、一例として、複素インピーダンスの絶対値の周波数特性(インピーダンス周波数特性)、及び/又は位相の周波数特性(位相周波数特性)をグラフで表示する。グラフ表示領域11に、インピーダンス周波数特性を表示するか、位相周波数特性で表示するか、又は両特性を表示するかの切り替えは、測定者がタッチパネル10を操作することで、自由に切り換えることができる。同図の例では、グラフ31は位相周波数特性θを表している。なお、タッチパネル10にグラフ表示させる複素インピーダンスの周波数特性の表現方法は、コンダクタンス(G)−サセプタンス(B)特性、実効抵抗(Rs)−リアクタンス(X)特性、動アドミタンス円、又は動インピーダンス円などのように、公知の種々の表現方法で表現させることができる。
【0026】
次に、推定ステップS2では、推定部3が、測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する。また、推定部3は、推定した素子定数を、素子定数変更部4を介してタッチパネル10に表示させる。
【0027】
等価回路を構成する電気素子は、抵抗、コンデンサ、コイルである。等価回路は、抵抗、コンデンサ、コイルのうちの少なくとも2つを接続して構成する。等価回路に用いる電気素子の数は、特に限定がなく、同種の電気素子が複数用いられていてもよい。素子定数表示領域12に表示させる素子定数の数は、等価回路に用いられている電気素子の数だけ表示させる。
【0028】
等価回路の例を、図6の等価回路a〜dに示す。主として、等価回路aはコイルや抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路bは損失が大きなコイルを測定する場合に用いられ、等価回路cは高抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路dはコンデンサを測定する場合に用いられる。図7に、等価回路a〜dのインピーダンス特性Z及び位相特性θの周波数特性の例を図示する。同図中には、後述する並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωmの位置を示している。
【0029】
このような複数の等価回路を予め設定しておき、測定者がタッチパネル10を操作して、1つの等価回路を選択できるようにすることが好ましい。推定部3は、等価回路a〜dの各素子定数の推定が可能になっている。なお、推定部3が、測定された複素インピーダンスの周波数特性の特徴を判別して、最も特徴が近くなる等価回路を自動的に選択するようにしてもよい。
【0030】
推定部3が各素子定数を推定する例として、等価回路aが選択されている場合について説明する。等価回路aのときには、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素インピーダンスの実効抵抗(レジスタンス)Rsを算出し、その実効抵抗Rsから各素子定数を推定する。なお、複素インピーダンスを、実効抵抗Rs及びリアクタンスXで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図8のグラフ25に示す実効抵抗Rsの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ25(測定データ)の中の極大値Pを求める。この極大値Pのときの周波数が、並列共振周波数ωpである。次に、推定部3は、グラフ25が、極大値Pの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωp/(ω2−ω1)
【0031】
次に、推定部3は、等価回路aのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=Q/(ωp×P)
【0032】
次に、推定部3は、等価回路aのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=(2×Q2)/(ωp2×C×(2×Q2−1))
【0033】
次に、推定部3は、等価回路aの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=L/(C×P)
【0034】
以上で、等価回路aの素子定数が推定される。
【0035】
また、等価回路dのように直列共振回路の場合には、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素アドミタンス(複素インピーダンスの別の表現方法)のコンダクタンスGを算出し、そのコンダクタンスGから各素子定数を推定する。なお、複素アドミタンスを、コンダクタンスG及びサセプタンスBで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図9のグラフ26に示すコンダクタンスGの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ26(測定データ)の中の極大値Mを求める。この極大値Mのときの周波数が、直列共振周波数ωmである。次に、推定部3は、グラフ26が、極大値Mの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωm/(ω2−ω1)
【0036】
次に、推定部3は、等価回路dのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=Q/(ωm×M)
【0037】
次に、推定部3は、等価回路dのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=(2×Q2)/(ωm2×L×(2×Q2−1))
【0038】
次に、推定部3は、等価回路dの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=(L×M)/C
【0039】
以上で、等価回路dの素子定数が推定される。
【0040】
他の等価回路の場合であっても、並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωm、2つの象限周波数ω1,ω2、共振の鋭さQに基づいて、R,C,Lの各素子定数を推定することができる。なお、公知の他の推定方法で等価回路の各素子定数を推定してもよい。
【0041】
素子定数変更部4は、図3に示すように、推定部3の推定した等価回路の各素子定数R,C,Lをタッチパネル10の素子定数表示領域12a,12b,12cに表示させると共に、増減ボタン14,15,16をタッチパネル10に表示させて、各素子定数R,C,Lを個々に変更設定する操作を可能にする。各増減ボタン14,15,16は、同図に示すように、値を増加させる増加ボタン14a,15a,16a、及び値を減少させる減少ボタン14a,15a,16aを組にして構成されている。この増減ボタン14〜16が本発明における、各々の素子定数を個別に一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段に相当する。なお、増減ボタン14〜16に換えて、回転により値を増減させるジョグダイヤルのような回転ダイヤル(増減手段の他の一例)を表示させてもよい。このように、一回の操作で値を増加又は減少させて変更できる増減手段の他に、二回以上の操作で値を変更できる例えばテン(10)キーと確定キーとを有するキーボード(素子定数変更部の他の例)を、素子定数を変更するために表示させたり備えたりしてもよい。
【0042】
続いて、理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、推定部3の推定した各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する。ここで、等価回路の理論的な複素インピーダンスとは、抵抗の複素インピーダンスがR、コンデンサの複素インピーダンスは1/(jωC)、コイルの複素インピーダンスはjωLであるので、これらを等価回路の接続に対応させて合成したものである。複素インピーダンスの合成については、周知な事項であるので説明は省略する。合成した複素インピーダンスの周波数を開始周波数から終了周波数まで可変させることで、理論特性演算部5は、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性(例えばインピーダンス周波数特性、位相周波数特性)を算出する。なお、計算にはアドミタンスを用いてもよい。
【0043】
又、理論特性演算部5は、図3に示すように、算出した等価回路の周波数特性のグラフ32をタッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。グラフ32は、DUT90のグラフ31と同様の種類で表現する。両グラフ31,32の差異が目視でよく判るように、測定した周波数特性のグラフ31を実線で表示させると共に等価回路の周波数特性のグラフ32を破線で表示させ、又は両グラフ31,32を色分けして表示させるようにして各々を識別可能に、かつ両グラフを同じ軸上に重ねて表示することが好ましい。このタッチパネル10のグラフ表示領域11が、グラフ31、及び/又はグラフ32の部位を選択するための選択部に相当する。
【0044】
同図に示すように、測定した位相周波数特性のグラフ31、及び推定した素子定数における等価回路の位相周波数特性のグラフ32がタッチパネル10に表示されている場合、測定者は、目視により、両グラフ31,32の差の大きな領域を判別する。この例では、低周波領域(図の左端側)で両グラフ31,32の差が大きくなっている。なお、このような誤差は、例えばQ値が非常に高いDUT90の場合、インピーダンス特性が非常に鋭い山型又は谷型になるため、測定時の周波数分解能が比較的粗いと共振周波数の判定に誤差が生じてしまい、それにより発生することがある。
【0045】
このように、両グラフ31,32の差がある場合、図4に示すように、測定者が、差が大きくなっているグラフ32の部位を指50で触れる(選択ステップS4)。これにより、タッチパネル10がその部位の位置情報をガイド表示処理部6(図1参照)に出力する。なお、キーボードやマウスを備える場合、選択ステップS4の別の例として、画面上のカーソルをキーボードの矢印キーやマウス操作で動かして、両グラフ31,32の差の大きな部分のグラフ32を選択するようにしてもよい。
【0046】
次に、図2のガイド情報処理ステップS5で、ガイド表示処理部6が、その位置情報から、グラフ32の選択された部位を判別する。グラフ32に直接触れられていないときには、触れられた位置に最も近いグラフ32の部位が選択されたものと判別することが好ましい。ガイド表示処理部6は、選択された部位がガイド情報記憶部7(図1参照)に記録されている所定領域に該当するときに、対応するガイド情報をガイド情報記憶部7から読み出して、図4に示すように、ガイド表示(ガイド情報)35をタッチパネル10に表示する。
【0047】
具体的には、図1に示すガイド情報記憶部7は、例えば不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROMやフラッシュROM)で構成されており、図6の等価回路a〜dにおける複素インピーダンスの周波数特性の所定領域の傾向を変更させたいときに、等価回路中のいずれの素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶している。ここで、「周波数特性の所定領域」は、例えば、並列又は直列共振周波数よりも低周波側、共振周波数よりも高周波側、共振周波数の所定範囲内(共振周波数付近)、共振周波数の1/2の周波数以下などのように、共振周波数に対する相対的な領域で規定したり、複雑な等価回路であれば、低周波側から3つ目の直列共振周波数、などのように共振周波数の順番や種類で規定したり、位相が90度以下、位相が90度以上のように位相の値で規定したりする。なお、周波数特性のうちの特定の領域を規定できればどのように規定してもよい。「所定領域の傾向を変更」とは、例えば、所定領域の値を大きく(小さく)させる、傾きを大きく(小さく)させる、Qを鋭く(鈍く)させる、周波数を高く(低く)させるなどのように、周波数特性の特徴を変更させることをいう。ガイド情報記憶部7には、例えば、図10に示すように、等価回路の種類(a〜d)、グラフの種類(例えば、インピーダンス周波数特性Zか、位相周波数特性θか)、所定領域、ガイド情報を参照テーブル形式で記憶させておく。なお、同図には図示しないが、例えば実効抵抗Rs、リアクタンスX、コンダクタンスG、サセプタンスBのグラフのように、表示可能な他のグラフの種類があれば、他のグラフの種類に対応させてガイド情報を記録させてもよい。ガイド表示処理部6は、ガイド情報記憶部7の参照テーブル(図10参照)から、等価回路の種類及びグラフ32の種類に対応する、選択された部位のガイド情報を読み込んでガイド表示35を表示する。なお、図10の参照テーブルでは、等価回路dにおいて、同じ領域に2つのガイド情報が記されているが、この場合、2つの吹き出し形状を表示させて、各吹き出し形状に別個に2つガイド表示を表示させてもよいし、1つにまとめて表示させてもよい。
【0048】
ガイド表示35は、タッチパネル10のどの位置に表示させてもよいが、指50で選択されたグラフ32の部位に近い位置に表示させたほうが、測定者にとって視認性が向上するため好ましい。また、選択されたグラフ32の部位とガイド表示35とを関連付けるように表示させることが好ましい。具体的には、同図に示すように選択されたグラフ32の部位から吹出した形に囲ってガイド表示35を表示させたり、グラフ35の部位とガイド表示35とを矢印(不図示)で繋いで表示させたりする。なお、文字だけを表示させるようにしてもよい。また、ガイド表示35は、グラフ31,32と重ならないように表示させることが好ましい。
【0049】
ガイド表示35は、指が触れている間だけ表示するようにしてもよいし、指が離れてからも例えば1〜5秒間のように所定時間、表示を継続させてもよいし、増減ボタン14〜16などタッチパネル10が操作されるまで表示し続けるようにしてもよい。
【0050】
測定者は、ガイド表示35を読むことで、いずれの素子定数を増減させればよいかが判り、適切な増減ボタン14〜16を操作することができる。この場合には、図5に示すように、測定者は、抵抗の素子定数Rを増加させる増加ボタン14aを押す操作をする。これにより、図2の素子定数変更ステップS6で、素子定数変更部4が、変更された素子定数を、タッチパネル10に表示させると共に理論特性演算部5に出力して、理論特性演算ステップS3に戻る。
【0051】
理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、増減ボタン14〜16によっていずれかの素子定数が変更された後の各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を再演算して算出する。それにより、図5に示すように、グラフ32がグラフ32aのように変更して、グラフ31に一層近い形になる。従って、等価回路の各素子定数が、DUT90を良く近似した値となる。
【0052】
図1に示す理論特性演算部7は、増減ボタン14〜16が1回押される(操作される)たびに、その操作で変更された素子定数で等価回路の複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算し、再演算後のグラフ32aをタッチパネル10に表示(再描画)させることが好ましい。この場合、測定者が、増加ボタン14aを1回押すと、素子定数Rが例えば1Ω増加して、その素子定数Rでグラフ32aが直ちに再描画され、もう1回押すと、さらに素子定数Rが1Ω増加して、増加後の素子定数Rでグラフ32aが再描画される。このように、増加ボタン14aを1回押すたびにグラフ32aが再描画されてグラフ31に近づいていくので、測定者は、グラフ31,32aを一致させるために、どのぐらい素子定数を変化させればよいかを直感的に理解することができる。また、増減ボタン14〜16を操作するごとにグラフ32aが再描画されていくので、例えば、テンキーと確定キーとを操作して、確定キーが押されたときに再描画する場合よりも、格段に早く素子定数を設定することができる。
【0053】
次に、本発明を適用する他の等価回路解析装置1aについて説明する。
【0054】
図11に示す等価回路解析装置1aは、既に説明した等価回路解析装置1に、選択用演算部8を追加したものであり、他の構成は同様である。選択用演算部8は、本装置の動作を統括的に制御するCPUが演算処理することで実現されている。
【0055】
選択用演算部8は、タッチパネル10に表示された等価回路の理論的な周波数特性のグラフ32の部位を選択するための選択部の他の一例である。この選択用演算部8には、測定部2が測定した測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性データが入力されると共に、理論特性演算部5が演算した等価回路の複素インピーダンスの周波数特性データが入力される。選択用演算部8は、各周波数において、測定対象物の周波数特性データと、等価回路の周波数特性データとの差を演算して、その差が所定差よりも大きな等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択する(前述した選択ステップS4の他の一例)。この所定差は、素子定数の誤差が大きく、素子定数の調整が必要となる場合の値(差)に予め設定しておく。
【0056】
具体的には、例えば、図12に示すグラフ31,32(図3と同様)の場合、選択用演算部8は、グラフ31のデータとグラフ32のデータとの差を、開始周波数から終了周波数まで周波数を可変させつつ算出して、その差が所定差Sよりも大きくなる、グラフ32の領域38の部位を選択する。ガイド表示処理部6は、選択された領域38に対するガイド情報を、ガイド情報記憶部7から読み込んで、タッチパネル10にガイド表示35を表示させる。このように選択用演算部8を備えることで、測定者が、グラフ31,32の差の大きな部分を触らなくても、自動的にタッチパネル10にガイド表示35が表示される。従って、測定者は、一層確実に等価回路の素子情報を調整することができる。
【0057】
タッチパネル10及び選択用演算部8の両方でグラフ32の部位を選択できるようにしてもよいし、いずれか一方だけで選択できるようにしてもよい。
【0058】
なお、等価回路解析装置1,1aで、選択部(タッチパネル10や選択用演算部8)が等価回路のグラフ32を選択する例について説明したが、測定したDUT90のグラフ31の部位を選択するようにしてもよい。この場合、グラフ31の部位が選択されると、ガイド表示処理部6は、選択されたグラフ31の部位の周波数を識別し、その周波数のグラフ32の部位に対応するガイド情報をガイド情報記憶部7から読み出して、ガイド表示35をタッチパネル10に表示させる。その場合、ガイド表示35の吹き出し形状は、グラフ31の選択された部位から吹き出すように表示させてもよいし、対応するグラフ32から吹き出すように表示させてもよいが、グラフ32を変更させる目的があるのでグラフ32から吹き出すように表示させることが好ましい。選択部でグラフ32だけを選択可能にしてもよいし、グラフ31だけを選択可能にしてもよいし、両グラフ31,32を選択可能にしてもよい。また、何れの部位が選択されたか判るように、選択された部位を識別可能に、その部位の色や線種などを通常のグラフ31,32の表示と変えて表示させてもよい。
【0059】
次に、本発明を適用する他の等価回路解析装置1bについて説明する。
【0060】
図13に示す等価回路解析装置1bは、既に説明した等価回路解析装置1,1aに、許容値記憶部41、比較部42、及び外部インタフェース回路43を追加したものであり、他の構成は同様である。なお、同図では、追加した各部に関連する構成だけを図示して他の構成の図示を省略している。許容値記憶部41は、書き換え可能な揮発メモリ(例えばSRAM、FRAM)で構成されている。比較部42は、本装置の動作を統括的に制御するCPUが演算処理することで実現されている。
【0061】
許容値記憶部41は、各素子定数の各々の上限許容値及び下限許容値を予め記憶する。比較部42は、上限許容値及び下限許容値の範囲内に対応する素子定数が入っているか否かを比較し、その比較結果をタッチパネル10に表示させる。
【0062】
図14に、許容値設定モードを起動させて、タッチパネル10に各素子定数の許容値の設定画面45を表示させた例を図示する。同図中の比較機能を「ON」に設定すると、比較部42が動作して素子定数と各許容値との比較を行い、「OFF」に設定するとこの比較を行わない。同図中の等価回路を設定すると、その等価回路に用いられる各電気素子の数及び種類に対応させて、各上限許容値、下限許容値の設定欄が表示される。同図中の上限許容値欄や下限許容値欄を指で触れると数値入力用のテンキー画面(不図示)が表示されて数値入力が可能になる。設定された各許容値は、許容値記憶部41に記憶される。なお、中央値を入力して、上限許容値を中央値の+10%、下限許容値を中央値の−10%というように、中央値に対する割合で設定してもよい。また、例えば基準となるDUT90で推定した結果の素子定数を中央値とし、上限許容値を中央値の+10%、下限許容値を中央値の−10%というように設定してもよい。このように設定された各上限許容値、下限許容値が許容値記憶部41に記憶される。
【0063】
比較部42は、図15に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、比較結果表示19を表示する。比較部42は、一例として、素子定数が下限許容値から上限許容値の許容範囲内に入っているときには比較結果表示19に「IN」と表示させ、素子定数が許容範囲よりも大きいときには「HI」と表示させ、素子定数が許容範囲よりも小さいときには「LO」と表示させる。なお、この比較結果表示19を、素子定数表示領域12a,12b,12cに表示させてもよい。
【0064】
比較部42は、推定部3が素子定数を推定したときにこの比較を行ってその比較結果表示19を表示させる。また、増減ボタン14〜16で素子定数が変更される度に比較を行ってその比較結果表示19を表示させる。
【0065】
例えば、DUT90の等価回路の素子定数が、予め所定範囲内であることが判っている場合に、このような比較機能を用いることで、等価回路の素子定数を、増減ボタン14〜16を操作して調整する必要があるか否かを判定することができる。また、増減ボタン14〜16で、どこまで調整すればよいかも判る。すなわち、グラフ31,32が概ね一致して、全ての素子定数が許容範囲内に入っていれば、その素子定数を採用することができる。素子定数の調整を行うときには、前述したガイド表示35が役立つ。
【0066】
また、推定部3が高い精度で素子定数を推定できるときには、比較結果からDUT90の良否を判定することができる。この場合、比較結果が許容範囲内に入っていなければDUT90を不良と判定するが、不良と判定されていてもグラフ31,32に差があるときは、測定者が操作ガイド35に従って素子定数を調整し、グラフ31,32を近似させ、調整後の素子定数の比較結果から、再度、DUT90の良否を判定することができる。
【0067】
また、比較部42は、外部インタフェース回路43を介して、比較結果を例えば装置外のコンピュータに出力する。さらに、外部インタフェース回路43は、ガイド表示35(図4、9参照)が表示されたときに、その情報を外部に出力してもよい。外部インタフェース回路43は、データの出力先に対応させて、例えばGP−IB規格やLAN規格に準拠させた有線で出力する回路であってもよいし、例えば無線LAN規格に準拠させた無線で出力する回路であってもよい。なお、外部インタフェース回路43は必要性に応じて備えなくてもよい。また、外部インタフェース回路43から、測定したデータや推定した素子定数、等価回路の周波数特性など、他の情報を出力させてもよい。
【0068】
外部インタフェース回路43から比較結果を出力させることで、例えば、本装置1bを部品の製造検査ラインで用いて、部品の良否を管理することができる。また、外部インタフェース回路43からガイド情報を出力させることで、素子定数の調整が必要になった頻度などを管理できる。このため、周波数分解能が粗すぎないか、などの測定用の設定の妥当性や、DUT90の特性の偏りなどを確認することができる。
【0069】
なお、等価回路解析装置1・1a・1bを、従来のインピーダンス測定装置とコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)とを組み合わせて構成してもよい。この場合、インピーダンス測定装置が測定部2となり、インピーダンス測定装置からDUT90の周波数特性の測定結果をコンピュータに出力する。コンピュータを本発明に対応させたプログラムで動作させることで、コンピュータが、推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、ガイド表示処理部6、ガイド情報記憶部7、選択用演算部8、タッチパネル10(又は表示部としてのディスプレイ、及び操作部としてのキーボードやマウス)、許容値記憶部41、比較部42となる。
【符号の説明】
【0070】
1・1a・1bは等価回路解析装置、2は測定部、3は推定部、4は素子定数変更部、5は理論特性演算部、6はガイド表示処理部、7はガイド情報記憶部、8は選択用演算部、10はタッチパネル、11はグラフ表示領域、12・12a・12b・12cは素子定数表示領域、14・15・16は増減ボタン、14a・15a・16aは増加ボタン、14b・15b・16bは減少ボタン、21a・21bはプローブ、25は実効抵抗Rsの周波数特性のグラフ(データ)、26はコンダクタンスGの周波数特性のグラフ(データ)、31は測定部2の測定した複素インピーダンスの周波数特性のグラフ、32は理論特性演算部5が演算した等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性のグラフ、32aは素子定数変更後の等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性のグラフ、35はガイド表示、38は領域、41は許容値記憶部、42は比較部、43は外部インタフェース回路、45は各素子定数の許容値の設定画面、50は測定者の指、90は測定対象物、a・b・c・dは等価回路、Cはコンデンサの素子定数、Lはコイルの素子定数、Rは抵抗の素子定数、Rsは実効抵抗、Gはコンダクタンス、P・Mは極大値、Sは所定差、Zはインピーダンス周波数特性、θは位相周波数特性、ω1,ω2は象限周波数、ωpは並列共振周波数、ωmは直列共振周波数である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定し、この周波数特性から、電気的な等価回路の素子定数を推定する等価回路解析装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオード、トランジスタ、一次・二次電池、太陽電池、フィルタなどの電気的な部品を測定対象物(以下、DUTともいう)として、そこに周波数を掃引させつつ測定用信号電圧を印加して、その電圧及び流れた電流から、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、測定した周波数特性を表示パネルにグラフで表示するインピーダンス測定装置が知られている。このようなインピーダンス測定装置の中には、測定した複素インピーダンスの周波数特性から、測定対象物の電気的な等価回路の素子定数を推定する機能を有しているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、モンテカルロ法により評価関数が最小になる等価回路の素子定数を演算し、この演算した素子定数を局所探索法の開始値として評価関数が極小値になる素子定数を演算して、さらにこれら演算を所定回数繰り返し行って素子定数を求める等価回路素子定数推定方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、どのような推定方法を用いたとしても、素子定数の推定結果に誤差が生じてしまう場合がある。そのため、推定結果に誤差があるか否かを測定者が判断可能なように、推定した素子定数で等価回路の理論的な周波数特性を算出し、得られた理論的な周波数特性のグラフを、DUTの測定結果のグラフと共に表示パネルに表示させることが考えられる。測定者は、両グラフを比較して、両グラフ間にほとんど差が無ければ推定した素子定数はDUTを正しく(よく近似して)表しており、一部でも大きな差があれば素子定数はDUTを正しく表していないと判断する。測定者は、両グラフ間に一部でも差がある場合、推定した素子定数の値を手動で適宜変更(調整)して、装置に等価回路の理論的な周波数特性のグラフを再度表示させ、測定結果のグラフと一致させるようにすることで、正しい素子定数を得ることができる。
【0005】
しかしながら、DUTの等価回路は、各々1つ又は複数の抵抗、コンデンサ、コイルといった素子が組み合わされて構成されている。そのため、測定者は、何れの素子定数の値をどのように変更すればよいか判断することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−249749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性から推定した等価回路の素子定数に誤差があったときに、いずれの素子定数をどのように変化させると測定対象物をよく近似できるかということを、測定者に容易に理解させることができる等価回路解析装置及び等価回路解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された等価回路解析装置は、画像を表示可能な表示部と、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、該表示部にグラフで表示させる測定部と、該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、該素子定数を該表示部に表示させると共に、該各素子定数を個々に変更設定可能な素子定数変更部と、該推定部の推定した該各素子定数、及び、該素子定数変更部によって変更設定された該各素子定数で、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該表示部にグラフで表示させる理論特性演算部と、いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部と、該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択するための選択部と、該選択部によって選択された該部位に対応するガイド情報を該ガイド情報記憶部から読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された等価回路解析装置は、請求項1に記載されたもので、前記選択部が、前記表示部となるタッチパネル、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を演算して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択する選択用演算部であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された等価回路解析装置は、請求項1又は2に記載されたもので、前記素子定数変更部が、前記各々の素子定数を個別に、一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段を有しており、該増減手段が操作されるたびに増減設定された該素子定数で、前記理論特性演算部が、該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された等価回路解析装置は、請求項1から3のいずれかに記載されたもので、前記各素子定数の各々の上限許容値及び下限許容値を予め記憶する許容値記憶部と、該上限許容値及び該下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させる比較部とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載された等価回路解析方法は、測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、表示部にグラフで表示させる測定ステップと、該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、表示部にグラフで表示させる理論特性演算ステップと、該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択する選択ステップと、いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部から、該選択ステップによって選択された該部位に対応する該ガイド情報を読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載された等価回路解析方法は、請求項5に記載されたもので、前記選択ステップで、前記表示部となるタッチパネルが操作されて前記部位が選択され、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を算出して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載された等価回路解析方法は、請求項5又は6に記載されたもので、前記各々の素子定数を個別に一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段が操作されるたびに、前記理論特性演算ステップを実行して、増減設定された該素子定数で該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載された等価回路解析方法は、請求項5から7のいずれかに記載されたもので、上限許容値及び下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させる比較ステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の等価回路解析装置及び等価回路解析方法によれば、等価回路の周波数特性を、測定した測定対象物の周波数特性に一致させるようにするために、いずれの素子定数をどのように変化させればよいかというガイド情報を表示部に表示可能であるので、測定者は、ガイド情報に従って素子定数を変更することで、測定対象物を良く近似した誤差の少ない正確な素子定数を、少ない操作回数で短時間に得ることができる。
【0017】
測定結果や等価回路の周波数特性のグラフをタッチパネル上に表示させる場合、ガイド表示を表示させたいグラフの部位を指等で直接触って選択することができるので、操作性に優れ、目的とする部位のガイド情報を直ちに表示させることができる。また、測定した周波数特性と等価回路の周波数特性との差が所定差よりも大きい領域を演算により求め、その領域に対応するガイド表示を自動的に表示させることで、より短時間に誤差の少ない素子定数を得ることができる。さらにこの場合、ガイド表示を自動的に表示させることで、素子定数の誤差が大きいということを測定者に知らせることができ、素子定数を確実に調整させることができる。
【0018】
各素子定数を一操作で増加又は減少させる増減手段が操作されるたびに、等価回路の周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを表示部に再描画する場合、測定者は、測定結果と等価回路との周波数特性を一致させるためにどのぐらい素子定数を変化させればよいかを直感的に理解することができるので、迅速に正確な素子定数を得ることができる。また、例えば、テンキーと確定キーとを操作して確定キーが押されたときにグラフを再描画するような場合よりも、迅速に素子定数を設定することができる。
【0019】
各素子定数が予め設定された上限許容値及び下限許容値の範囲内に素子定数が入っているか否かを判定して、その判定結果を表示する場合、素子定数の妥当性が判るので、例えば、素子定数の調整(変更)の必要性などが判る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する等価回路解析装置のブロック図である。
【図2】本発明を適用する等価回路解析方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明を適用する等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【図4】図3のタッチパネルの使用状態を説明するための概要図である。
【図5】図3のタッチパネルの使用状態を説明するための概要図である。
【図6】測定対象物の等価回路の例である。
【図7】図6に示す各等価回路のインピーダンス特性及び位相特性の例である。
【図8】等価回路aにおける素子定数の推定を説明するための実効抵抗の周波数特性データ(グラフ)である。
【図9】等価回路dにおける素子定数の推定を説明するためのコンダクタンスの周波数特性データ(グラフ)である。
【図10】ガイド情報記憶部に記憶させる参照テーブルの例である。
【図11】本発明を適用する他の等価回路解析装置のブロック図である。
【図12】図11の等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【図13】本発明を適用するさらに他の等価回路解析装置の一部を示すブロック図である。
【図14】図13の等価回路解析装置に用いるタッチパネルの上限許容値、下限許容値を設定するための設定画面の表示例を示す概要図である。
【図15】図13の等価回路解析装置に用いるタッチパネルの表示例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明を適用する等価回路解析装置1は、図1に機能的ブロックで示すように、タッチパネル10、測定部2、推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、ガイド表示処理部6、及びガイド情報記憶部7を備え、測定対象物(DUT)90の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、その周波数特性から等価回路の各素子定数を推定部3が推定することが可能になっている。なお、同図に示す推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、及びガイド表示処理部6等は、一例として、本装置1の動作を統括的に制御する1つ又は複数のCPU(不図示)がメモリ(不図示)に予め記憶されたソフトウエアに従って動作して演算処理することで実現されている。また、等価回路解析装置1は、後述する図2のフローチャートに対応するプログラムがメモリに予め記憶されていて、そのフローチャートに従って動作可能に構成されている。
【0023】
タッチパネル10は、画像を表示可能な液晶パネルやCRTなどの表示装置と、タッチパッドなどの位置入力装置を組み合わせたもので、画像を表示可能であると共に、指や専用ペン等が画面に触れたときに、その触れた画面上の位置情報を出力するものである。タッチパネル10は、等価回路解析装置1の表示部及び操作部として用いられる。タッチパネル10に換えて、液晶パネル等の表示部と、キーボードやマウス等の操作部とを備えていてもよい。
【0024】
等価回路解析装置1の動作について、図1〜図5を用いて、図2のフローチャートに沿って説明する。図2のフローチャートが本発明の等価回路解析方法を示している。
【0025】
測定ステップS1では、測定部2が、不図示の交流信号源からプローブ21a,21bを介して、周波数を開始周波数から終了周波数まで掃引させて測定用信号電圧を測定対象物(DUT)90に印加し、2端子法又は4端子法などの公知の測定方法で電圧と電流とを測定し、その電圧及び電流から複素インピーダンスの周波数特性を測定する。また、測定部2は、図3に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、測定部2の測定した複素インピーダンスの周波数特性のグラフ31を表示する。複素インピーダンスの周波数特性として、測定部2は、一例として、複素インピーダンスの絶対値の周波数特性(インピーダンス周波数特性)、及び/又は位相の周波数特性(位相周波数特性)をグラフで表示する。グラフ表示領域11に、インピーダンス周波数特性を表示するか、位相周波数特性で表示するか、又は両特性を表示するかの切り替えは、測定者がタッチパネル10を操作することで、自由に切り換えることができる。同図の例では、グラフ31は位相周波数特性θを表している。なお、タッチパネル10にグラフ表示させる複素インピーダンスの周波数特性の表現方法は、コンダクタンス(G)−サセプタンス(B)特性、実効抵抗(Rs)−リアクタンス(X)特性、動アドミタンス円、又は動インピーダンス円などのように、公知の種々の表現方法で表現させることができる。
【0026】
次に、推定ステップS2では、推定部3が、測定部2の測定したDUT90の複素インピーダンスの周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する。また、推定部3は、推定した素子定数を、素子定数変更部4を介してタッチパネル10に表示させる。
【0027】
等価回路を構成する電気素子は、抵抗、コンデンサ、コイルである。等価回路は、抵抗、コンデンサ、コイルのうちの少なくとも2つを接続して構成する。等価回路に用いる電気素子の数は、特に限定がなく、同種の電気素子が複数用いられていてもよい。素子定数表示領域12に表示させる素子定数の数は、等価回路に用いられている電気素子の数だけ表示させる。
【0028】
等価回路の例を、図6の等価回路a〜dに示す。主として、等価回路aはコイルや抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路bは損失が大きなコイルを測定する場合に用いられ、等価回路cは高抵抗を測定する場合に用いられ、等価回路dはコンデンサを測定する場合に用いられる。図7に、等価回路a〜dのインピーダンス特性Z及び位相特性θの周波数特性の例を図示する。同図中には、後述する並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωmの位置を示している。
【0029】
このような複数の等価回路を予め設定しておき、測定者がタッチパネル10を操作して、1つの等価回路を選択できるようにすることが好ましい。推定部3は、等価回路a〜dの各素子定数の推定が可能になっている。なお、推定部3が、測定された複素インピーダンスの周波数特性の特徴を判別して、最も特徴が近くなる等価回路を自動的に選択するようにしてもよい。
【0030】
推定部3が各素子定数を推定する例として、等価回路aが選択されている場合について説明する。等価回路aのときには、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素インピーダンスの実効抵抗(レジスタンス)Rsを算出し、その実効抵抗Rsから各素子定数を推定する。なお、複素インピーダンスを、実効抵抗Rs及びリアクタンスXで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図8のグラフ25に示す実効抵抗Rsの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ25(測定データ)の中の極大値Pを求める。この極大値Pのときの周波数が、並列共振周波数ωpである。次に、推定部3は、グラフ25が、極大値Pの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωp/(ω2−ω1)
【0031】
次に、推定部3は、等価回路aのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=Q/(ωp×P)
【0032】
次に、推定部3は、等価回路aのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=(2×Q2)/(ωp2×C×(2×Q2−1))
【0033】
次に、推定部3は、等価回路aの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=L/(C×P)
【0034】
以上で、等価回路aの素子定数が推定される。
【0035】
また、等価回路dのように直列共振回路の場合には、推定部3は、測定部2の測定データから各周波数における複素アドミタンス(複素インピーダンスの別の表現方法)のコンダクタンスGを算出し、そのコンダクタンスGから各素子定数を推定する。なお、複素アドミタンスを、コンダクタンスG及びサセプタンスBで表現できることは周知な事項であるのでその算出法等について説明は省略する。測定部2によって、図9のグラフ26に示すコンダクタンスGの周波数特性が測定された場合、推定部3は、先ず、グラフ26(測定データ)の中の極大値Mを求める。この極大値Mのときの周波数が、直列共振周波数ωmである。次に、推定部3は、グラフ26が、極大値Mの1/2になる2つの周波数(象限周波数)ω1,ω2を求める。次に、推定部3は、共振の鋭さQを次式で算出する。
Q=ωm/(ω2−ω1)
【0036】
次に、推定部3は、等価回路dのコイルの素子定数Lを次式で算出する。
L=Q/(ωm×M)
【0037】
次に、推定部3は、等価回路dのコンデンサの素子定数Cを次式で算出する。
C=(2×Q2)/(ωm2×L×(2×Q2−1))
【0038】
次に、推定部3は、等価回路dの抵抗の素子定数Rを次式で算出する。
R=(L×M)/C
【0039】
以上で、等価回路dの素子定数が推定される。
【0040】
他の等価回路の場合であっても、並列共振周波数ωp、直列共振周波数ωm、2つの象限周波数ω1,ω2、共振の鋭さQに基づいて、R,C,Lの各素子定数を推定することができる。なお、公知の他の推定方法で等価回路の各素子定数を推定してもよい。
【0041】
素子定数変更部4は、図3に示すように、推定部3の推定した等価回路の各素子定数R,C,Lをタッチパネル10の素子定数表示領域12a,12b,12cに表示させると共に、増減ボタン14,15,16をタッチパネル10に表示させて、各素子定数R,C,Lを個々に変更設定する操作を可能にする。各増減ボタン14,15,16は、同図に示すように、値を増加させる増加ボタン14a,15a,16a、及び値を減少させる減少ボタン14a,15a,16aを組にして構成されている。この増減ボタン14〜16が本発明における、各々の素子定数を個別に一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段に相当する。なお、増減ボタン14〜16に換えて、回転により値を増減させるジョグダイヤルのような回転ダイヤル(増減手段の他の一例)を表示させてもよい。このように、一回の操作で値を増加又は減少させて変更できる増減手段の他に、二回以上の操作で値を変更できる例えばテン(10)キーと確定キーとを有するキーボード(素子定数変更部の他の例)を、素子定数を変更するために表示させたり備えたりしてもよい。
【0042】
続いて、理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、推定部3の推定した各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出する。ここで、等価回路の理論的な複素インピーダンスとは、抵抗の複素インピーダンスがR、コンデンサの複素インピーダンスは1/(jωC)、コイルの複素インピーダンスはjωLであるので、これらを等価回路の接続に対応させて合成したものである。複素インピーダンスの合成については、周知な事項であるので説明は省略する。合成した複素インピーダンスの周波数を開始周波数から終了周波数まで可変させることで、理論特性演算部5は、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性(例えばインピーダンス周波数特性、位相周波数特性)を算出する。なお、計算にはアドミタンスを用いてもよい。
【0043】
又、理論特性演算部5は、図3に示すように、算出した等価回路の周波数特性のグラフ32をタッチパネル10のグラフ表示領域11に表示させる。グラフ32は、DUT90のグラフ31と同様の種類で表現する。両グラフ31,32の差異が目視でよく判るように、測定した周波数特性のグラフ31を実線で表示させると共に等価回路の周波数特性のグラフ32を破線で表示させ、又は両グラフ31,32を色分けして表示させるようにして各々を識別可能に、かつ両グラフを同じ軸上に重ねて表示することが好ましい。このタッチパネル10のグラフ表示領域11が、グラフ31、及び/又はグラフ32の部位を選択するための選択部に相当する。
【0044】
同図に示すように、測定した位相周波数特性のグラフ31、及び推定した素子定数における等価回路の位相周波数特性のグラフ32がタッチパネル10に表示されている場合、測定者は、目視により、両グラフ31,32の差の大きな領域を判別する。この例では、低周波領域(図の左端側)で両グラフ31,32の差が大きくなっている。なお、このような誤差は、例えばQ値が非常に高いDUT90の場合、インピーダンス特性が非常に鋭い山型又は谷型になるため、測定時の周波数分解能が比較的粗いと共振周波数の判定に誤差が生じてしまい、それにより発生することがある。
【0045】
このように、両グラフ31,32の差がある場合、図4に示すように、測定者が、差が大きくなっているグラフ32の部位を指50で触れる(選択ステップS4)。これにより、タッチパネル10がその部位の位置情報をガイド表示処理部6(図1参照)に出力する。なお、キーボードやマウスを備える場合、選択ステップS4の別の例として、画面上のカーソルをキーボードの矢印キーやマウス操作で動かして、両グラフ31,32の差の大きな部分のグラフ32を選択するようにしてもよい。
【0046】
次に、図2のガイド情報処理ステップS5で、ガイド表示処理部6が、その位置情報から、グラフ32の選択された部位を判別する。グラフ32に直接触れられていないときには、触れられた位置に最も近いグラフ32の部位が選択されたものと判別することが好ましい。ガイド表示処理部6は、選択された部位がガイド情報記憶部7(図1参照)に記録されている所定領域に該当するときに、対応するガイド情報をガイド情報記憶部7から読み出して、図4に示すように、ガイド表示(ガイド情報)35をタッチパネル10に表示する。
【0047】
具体的には、図1に示すガイド情報記憶部7は、例えば不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROMやフラッシュROM)で構成されており、図6の等価回路a〜dにおける複素インピーダンスの周波数特性の所定領域の傾向を変更させたいときに、等価回路中のいずれの素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶している。ここで、「周波数特性の所定領域」は、例えば、並列又は直列共振周波数よりも低周波側、共振周波数よりも高周波側、共振周波数の所定範囲内(共振周波数付近)、共振周波数の1/2の周波数以下などのように、共振周波数に対する相対的な領域で規定したり、複雑な等価回路であれば、低周波側から3つ目の直列共振周波数、などのように共振周波数の順番や種類で規定したり、位相が90度以下、位相が90度以上のように位相の値で規定したりする。なお、周波数特性のうちの特定の領域を規定できればどのように規定してもよい。「所定領域の傾向を変更」とは、例えば、所定領域の値を大きく(小さく)させる、傾きを大きく(小さく)させる、Qを鋭く(鈍く)させる、周波数を高く(低く)させるなどのように、周波数特性の特徴を変更させることをいう。ガイド情報記憶部7には、例えば、図10に示すように、等価回路の種類(a〜d)、グラフの種類(例えば、インピーダンス周波数特性Zか、位相周波数特性θか)、所定領域、ガイド情報を参照テーブル形式で記憶させておく。なお、同図には図示しないが、例えば実効抵抗Rs、リアクタンスX、コンダクタンスG、サセプタンスBのグラフのように、表示可能な他のグラフの種類があれば、他のグラフの種類に対応させてガイド情報を記録させてもよい。ガイド表示処理部6は、ガイド情報記憶部7の参照テーブル(図10参照)から、等価回路の種類及びグラフ32の種類に対応する、選択された部位のガイド情報を読み込んでガイド表示35を表示する。なお、図10の参照テーブルでは、等価回路dにおいて、同じ領域に2つのガイド情報が記されているが、この場合、2つの吹き出し形状を表示させて、各吹き出し形状に別個に2つガイド表示を表示させてもよいし、1つにまとめて表示させてもよい。
【0048】
ガイド表示35は、タッチパネル10のどの位置に表示させてもよいが、指50で選択されたグラフ32の部位に近い位置に表示させたほうが、測定者にとって視認性が向上するため好ましい。また、選択されたグラフ32の部位とガイド表示35とを関連付けるように表示させることが好ましい。具体的には、同図に示すように選択されたグラフ32の部位から吹出した形に囲ってガイド表示35を表示させたり、グラフ35の部位とガイド表示35とを矢印(不図示)で繋いで表示させたりする。なお、文字だけを表示させるようにしてもよい。また、ガイド表示35は、グラフ31,32と重ならないように表示させることが好ましい。
【0049】
ガイド表示35は、指が触れている間だけ表示するようにしてもよいし、指が離れてからも例えば1〜5秒間のように所定時間、表示を継続させてもよいし、増減ボタン14〜16などタッチパネル10が操作されるまで表示し続けるようにしてもよい。
【0050】
測定者は、ガイド表示35を読むことで、いずれの素子定数を増減させればよいかが判り、適切な増減ボタン14〜16を操作することができる。この場合には、図5に示すように、測定者は、抵抗の素子定数Rを増加させる増加ボタン14aを押す操作をする。これにより、図2の素子定数変更ステップS6で、素子定数変更部4が、変更された素子定数を、タッチパネル10に表示させると共に理論特性演算部5に出力して、理論特性演算ステップS3に戻る。
【0051】
理論特性演算ステップS3では、理論特性演算部5が、増減ボタン14〜16によっていずれかの素子定数が変更された後の各素子定数で、等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を再演算して算出する。それにより、図5に示すように、グラフ32がグラフ32aのように変更して、グラフ31に一層近い形になる。従って、等価回路の各素子定数が、DUT90を良く近似した値となる。
【0052】
図1に示す理論特性演算部7は、増減ボタン14〜16が1回押される(操作される)たびに、その操作で変更された素子定数で等価回路の複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算し、再演算後のグラフ32aをタッチパネル10に表示(再描画)させることが好ましい。この場合、測定者が、増加ボタン14aを1回押すと、素子定数Rが例えば1Ω増加して、その素子定数Rでグラフ32aが直ちに再描画され、もう1回押すと、さらに素子定数Rが1Ω増加して、増加後の素子定数Rでグラフ32aが再描画される。このように、増加ボタン14aを1回押すたびにグラフ32aが再描画されてグラフ31に近づいていくので、測定者は、グラフ31,32aを一致させるために、どのぐらい素子定数を変化させればよいかを直感的に理解することができる。また、増減ボタン14〜16を操作するごとにグラフ32aが再描画されていくので、例えば、テンキーと確定キーとを操作して、確定キーが押されたときに再描画する場合よりも、格段に早く素子定数を設定することができる。
【0053】
次に、本発明を適用する他の等価回路解析装置1aについて説明する。
【0054】
図11に示す等価回路解析装置1aは、既に説明した等価回路解析装置1に、選択用演算部8を追加したものであり、他の構成は同様である。選択用演算部8は、本装置の動作を統括的に制御するCPUが演算処理することで実現されている。
【0055】
選択用演算部8は、タッチパネル10に表示された等価回路の理論的な周波数特性のグラフ32の部位を選択するための選択部の他の一例である。この選択用演算部8には、測定部2が測定した測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性データが入力されると共に、理論特性演算部5が演算した等価回路の複素インピーダンスの周波数特性データが入力される。選択用演算部8は、各周波数において、測定対象物の周波数特性データと、等価回路の周波数特性データとの差を演算して、その差が所定差よりも大きな等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択する(前述した選択ステップS4の他の一例)。この所定差は、素子定数の誤差が大きく、素子定数の調整が必要となる場合の値(差)に予め設定しておく。
【0056】
具体的には、例えば、図12に示すグラフ31,32(図3と同様)の場合、選択用演算部8は、グラフ31のデータとグラフ32のデータとの差を、開始周波数から終了周波数まで周波数を可変させつつ算出して、その差が所定差Sよりも大きくなる、グラフ32の領域38の部位を選択する。ガイド表示処理部6は、選択された領域38に対するガイド情報を、ガイド情報記憶部7から読み込んで、タッチパネル10にガイド表示35を表示させる。このように選択用演算部8を備えることで、測定者が、グラフ31,32の差の大きな部分を触らなくても、自動的にタッチパネル10にガイド表示35が表示される。従って、測定者は、一層確実に等価回路の素子情報を調整することができる。
【0057】
タッチパネル10及び選択用演算部8の両方でグラフ32の部位を選択できるようにしてもよいし、いずれか一方だけで選択できるようにしてもよい。
【0058】
なお、等価回路解析装置1,1aで、選択部(タッチパネル10や選択用演算部8)が等価回路のグラフ32を選択する例について説明したが、測定したDUT90のグラフ31の部位を選択するようにしてもよい。この場合、グラフ31の部位が選択されると、ガイド表示処理部6は、選択されたグラフ31の部位の周波数を識別し、その周波数のグラフ32の部位に対応するガイド情報をガイド情報記憶部7から読み出して、ガイド表示35をタッチパネル10に表示させる。その場合、ガイド表示35の吹き出し形状は、グラフ31の選択された部位から吹き出すように表示させてもよいし、対応するグラフ32から吹き出すように表示させてもよいが、グラフ32を変更させる目的があるのでグラフ32から吹き出すように表示させることが好ましい。選択部でグラフ32だけを選択可能にしてもよいし、グラフ31だけを選択可能にしてもよいし、両グラフ31,32を選択可能にしてもよい。また、何れの部位が選択されたか判るように、選択された部位を識別可能に、その部位の色や線種などを通常のグラフ31,32の表示と変えて表示させてもよい。
【0059】
次に、本発明を適用する他の等価回路解析装置1bについて説明する。
【0060】
図13に示す等価回路解析装置1bは、既に説明した等価回路解析装置1,1aに、許容値記憶部41、比較部42、及び外部インタフェース回路43を追加したものであり、他の構成は同様である。なお、同図では、追加した各部に関連する構成だけを図示して他の構成の図示を省略している。許容値記憶部41は、書き換え可能な揮発メモリ(例えばSRAM、FRAM)で構成されている。比較部42は、本装置の動作を統括的に制御するCPUが演算処理することで実現されている。
【0061】
許容値記憶部41は、各素子定数の各々の上限許容値及び下限許容値を予め記憶する。比較部42は、上限許容値及び下限許容値の範囲内に対応する素子定数が入っているか否かを比較し、その比較結果をタッチパネル10に表示させる。
【0062】
図14に、許容値設定モードを起動させて、タッチパネル10に各素子定数の許容値の設定画面45を表示させた例を図示する。同図中の比較機能を「ON」に設定すると、比較部42が動作して素子定数と各許容値との比較を行い、「OFF」に設定するとこの比較を行わない。同図中の等価回路を設定すると、その等価回路に用いられる各電気素子の数及び種類に対応させて、各上限許容値、下限許容値の設定欄が表示される。同図中の上限許容値欄や下限許容値欄を指で触れると数値入力用のテンキー画面(不図示)が表示されて数値入力が可能になる。設定された各許容値は、許容値記憶部41に記憶される。なお、中央値を入力して、上限許容値を中央値の+10%、下限許容値を中央値の−10%というように、中央値に対する割合で設定してもよい。また、例えば基準となるDUT90で推定した結果の素子定数を中央値とし、上限許容値を中央値の+10%、下限許容値を中央値の−10%というように設定してもよい。このように設定された各上限許容値、下限許容値が許容値記憶部41に記憶される。
【0063】
比較部42は、図15に示すように、タッチパネル10のグラフ表示領域11に、比較結果表示19を表示する。比較部42は、一例として、素子定数が下限許容値から上限許容値の許容範囲内に入っているときには比較結果表示19に「IN」と表示させ、素子定数が許容範囲よりも大きいときには「HI」と表示させ、素子定数が許容範囲よりも小さいときには「LO」と表示させる。なお、この比較結果表示19を、素子定数表示領域12a,12b,12cに表示させてもよい。
【0064】
比較部42は、推定部3が素子定数を推定したときにこの比較を行ってその比較結果表示19を表示させる。また、増減ボタン14〜16で素子定数が変更される度に比較を行ってその比較結果表示19を表示させる。
【0065】
例えば、DUT90の等価回路の素子定数が、予め所定範囲内であることが判っている場合に、このような比較機能を用いることで、等価回路の素子定数を、増減ボタン14〜16を操作して調整する必要があるか否かを判定することができる。また、増減ボタン14〜16で、どこまで調整すればよいかも判る。すなわち、グラフ31,32が概ね一致して、全ての素子定数が許容範囲内に入っていれば、その素子定数を採用することができる。素子定数の調整を行うときには、前述したガイド表示35が役立つ。
【0066】
また、推定部3が高い精度で素子定数を推定できるときには、比較結果からDUT90の良否を判定することができる。この場合、比較結果が許容範囲内に入っていなければDUT90を不良と判定するが、不良と判定されていてもグラフ31,32に差があるときは、測定者が操作ガイド35に従って素子定数を調整し、グラフ31,32を近似させ、調整後の素子定数の比較結果から、再度、DUT90の良否を判定することができる。
【0067】
また、比較部42は、外部インタフェース回路43を介して、比較結果を例えば装置外のコンピュータに出力する。さらに、外部インタフェース回路43は、ガイド表示35(図4、9参照)が表示されたときに、その情報を外部に出力してもよい。外部インタフェース回路43は、データの出力先に対応させて、例えばGP−IB規格やLAN規格に準拠させた有線で出力する回路であってもよいし、例えば無線LAN規格に準拠させた無線で出力する回路であってもよい。なお、外部インタフェース回路43は必要性に応じて備えなくてもよい。また、外部インタフェース回路43から、測定したデータや推定した素子定数、等価回路の周波数特性など、他の情報を出力させてもよい。
【0068】
外部インタフェース回路43から比較結果を出力させることで、例えば、本装置1bを部品の製造検査ラインで用いて、部品の良否を管理することができる。また、外部インタフェース回路43からガイド情報を出力させることで、素子定数の調整が必要になった頻度などを管理できる。このため、周波数分解能が粗すぎないか、などの測定用の設定の妥当性や、DUT90の特性の偏りなどを確認することができる。
【0069】
なお、等価回路解析装置1・1a・1bを、従来のインピーダンス測定装置とコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)とを組み合わせて構成してもよい。この場合、インピーダンス測定装置が測定部2となり、インピーダンス測定装置からDUT90の周波数特性の測定結果をコンピュータに出力する。コンピュータを本発明に対応させたプログラムで動作させることで、コンピュータが、推定部3、素子定数変更部4、理論特性演算部5、ガイド表示処理部6、ガイド情報記憶部7、選択用演算部8、タッチパネル10(又は表示部としてのディスプレイ、及び操作部としてのキーボードやマウス)、許容値記憶部41、比較部42となる。
【符号の説明】
【0070】
1・1a・1bは等価回路解析装置、2は測定部、3は推定部、4は素子定数変更部、5は理論特性演算部、6はガイド表示処理部、7はガイド情報記憶部、8は選択用演算部、10はタッチパネル、11はグラフ表示領域、12・12a・12b・12cは素子定数表示領域、14・15・16は増減ボタン、14a・15a・16aは増加ボタン、14b・15b・16bは減少ボタン、21a・21bはプローブ、25は実効抵抗Rsの周波数特性のグラフ(データ)、26はコンダクタンスGの周波数特性のグラフ(データ)、31は測定部2の測定した複素インピーダンスの周波数特性のグラフ、32は理論特性演算部5が演算した等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性のグラフ、32aは素子定数変更後の等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性のグラフ、35はガイド表示、38は領域、41は許容値記憶部、42は比較部、43は外部インタフェース回路、45は各素子定数の許容値の設定画面、50は測定者の指、90は測定対象物、a・b・c・dは等価回路、Cはコンデンサの素子定数、Lはコイルの素子定数、Rは抵抗の素子定数、Rsは実効抵抗、Gはコンダクタンス、P・Mは極大値、Sは所定差、Zはインピーダンス周波数特性、θは位相周波数特性、ω1,ω2は象限周波数、ωpは並列共振周波数、ωmは直列共振周波数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能な表示部と、
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、該表示部にグラフで表示させる測定部と、
該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、
該素子定数を該表示部に表示させると共に、該各素子定数を個々に変更設定可能な素子定数変更部と、
該推定部の推定した該各素子定数、及び、該素子定数変更部によって変更設定された該各素子定数で、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該表示部にグラフで表示させる理論特性演算部と、
いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部と、
該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択するための選択部と、
該選択部によって選択された該部位に対応するガイド情報を該ガイド情報記憶部から読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理部とを備えることを特徴とする等価回路解析装置。
【請求項2】
前記選択部が、前記表示部となるタッチパネル、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を演算して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択する選択用演算部であることを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
【請求項3】
前記素子定数変更部が、前記各々の素子定数を個別に、一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段を有しており、該増減手段が操作されるたびに増減設定された該素子定数で、前記理論特性演算部が、該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の等価回路解析装置。
【請求項4】
前記各素子定数の各々の上限許容値及び下限許容値を予め記憶する許容値記憶部と、該上限許容値及び該下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させる比較部とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項5】
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、表示部にグラフで表示させる測定ステップと、
該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、
該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、表示部にグラフで表示させる理論特性演算ステップと、
該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択する選択ステップと、
いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部から、該選択ステップによって選択された該部位に対応する該ガイド情報を読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理ステップとを含むことを特徴とする等価回路解析方法。
【請求項6】
前記選択ステップで、前記表示部となるタッチパネルが操作されて前記部位が選択され、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を算出して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択することを特徴とする請求項5に記載の等価回路解析方法。
【請求項7】
前記各々の素子定数を個別に一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段が操作されるたびに、前記理論特性演算ステップを実行して、増減設定された該素子定数で該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする請求項5又は6に記載の等価回路解析方法。
【請求項8】
上限許容値及び下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【請求項1】
画像を表示可能な表示部と、
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、該表示部にグラフで表示させる測定部と、
該測定部の測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定部と、
該素子定数を該表示部に表示させると共に、該各素子定数を個々に変更設定可能な素子定数変更部と、
該推定部の推定した該各素子定数、及び、該素子定数変更部によって変更設定された該各素子定数で、該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、該表示部にグラフで表示させる理論特性演算部と、
いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部と、
該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択するための選択部と、
該選択部によって選択された該部位に対応するガイド情報を該ガイド情報記憶部から読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理部とを備えることを特徴とする等価回路解析装置。
【請求項2】
前記選択部が、前記表示部となるタッチパネル、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を演算して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択する選択用演算部であることを特徴とする請求項1に記載の等価回路解析装置。
【請求項3】
前記素子定数変更部が、前記各々の素子定数を個別に、一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段を有しており、該増減手段が操作されるたびに増減設定された該素子定数で、前記理論特性演算部が、該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の等価回路解析装置。
【請求項4】
前記各素子定数の各々の上限許容値及び下限許容値を予め記憶する許容値記憶部と、該上限許容値及び該下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させる比較部とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の等価回路解析装置。
【請求項5】
測定対象物の複素インピーダンスの周波数特性を測定して、表示部にグラフで表示させる測定ステップと、
該測定ステップで測定した該測定対象物の周波数特性に基づいて、複数の電気素子を組み合わせた所定の等価回路の各素子定数を推定する推定ステップと、
該等価回路の理論的な複素インピーダンスの周波数特性を算出して、表示部にグラフで表示させる理論特性演算ステップと、
該表示部に表示された、該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの部位を選択する選択ステップと、
いずれの該素子定数の大小を変化させたらよいかを示すガイド情報を予め記憶するガイド情報記憶部から、該選択ステップによって選択された該部位に対応する該ガイド情報を読み出して、そのガイド情報を該表示部に表示させるガイド情報処理ステップとを含むことを特徴とする等価回路解析方法。
【請求項6】
前記選択ステップで、前記表示部となるタッチパネルが操作されて前記部位が選択され、及び/又は、前記測定対象物の周波数特性と前記等価回路の周波数特性との差を算出して該差が所定差よりも大きい該測定対象物及び/又は該等価回路の周波数特性のグラフの前記部位を選択することを特徴とする請求項5に記載の等価回路解析方法。
【請求項7】
前記各々の素子定数を個別に一操作で増加又は減少させて増減設定可能な増減手段が操作されるたびに、前記理論特性演算ステップを実行して、増減設定された該素子定数で該等価回路の該理論的な複素インピーダンスの周波数特性を直ちに再演算して、そのグラフを該表示部に表示させることを特徴とする請求項5又は6に記載の等価回路解析方法。
【請求項8】
上限許容値及び下限許容値の範囲内に前記素子定数が入っているか否かを判定し、その判定結果を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の等価回路解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−24697(P2013−24697A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159098(P2011−159098)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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