説明

筋張力増強剤

本発明は、果実より得られる筋張力増強剤に関するもので、筋力が増強し、また、骨格筋量や内蔵重量を低減させることなく、体脂肪の低減や蓄積抑制の作用を有する天然物由来の筋張力増強剤、体脂肪調整制を提供すること、さらに詳細には、果実よりポリフェノールを得て、これを筋張力増強剤又は体脂肪調整剤、或いは筋張力増強、体脂肪低減、体脂肪蓄積抑制する飲食品や医薬品を提供する。
筋張力の増強に有効な果実由来のポリフェノールを有効成分とする筋張力増強剤又は体脂肪調整剤及びそれを含む飲食品、医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実より得られる筋張力増強剤に関し、特に、筋張力の増強と体脂肪蓄積を抑制する作用とを備える筋張力増強剤、体脂肪調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年日本人の食生活は著しく欧米化し、高カロリー化が進んでいる。特に、脂質の過剰摂取により脂肪の蓄積過多が生じ、肥満が引き起こされている。肥満は高血圧、耐糖能異常、高脂血症などを合併しやすく、虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病などの危険因子と考えられており、生活習慣病予防の観点から、肥満対策は極めて重要である。また、美容の面からも好ましいとは言えない。
【0003】
これまでの肥満予防や治療の方法としては、ほとんどが食事制限やダイエット食によるものであるが、食事制限は精神的困難さを伴い、その方法を誤ると栄養障害を引き起こしたり、あるいは拒食症といった病的症状を呈する危険性がある。また、一般的に、無理なダイエットや消化酵素の阻害は、栄養成分の体内供給を減少させることであるため、体脂肪ばかりでなく骨格筋量の減少も伴うことが知られており、この骨格筋量の減少がダイエット後のリバウンドや筋力の衰退の原因となっている。特に、運動選手・アスリートには、骨格筋量が減少するような体重減少では筋肉の衰退を招いて運動パフォーマンスが低下するため好まれていない。また、柔道・ボクシングといった体重階級制の競技選手やボディービルダーは、筋力増強トレーニングに食事療法を組み合わせて体重をコントロールしながら筋肉及び筋張力の増強を図るのが一般的である。これらの種目においては、減量や体脂肪の低減と筋肉の増強という相反する課題を並行して達成しなくてはならず、栄養に対する十分な知識が必要とされる。この際、体重を減少させることばかりに気をとられていると、食事全体を制限しがちであるが、食事制限によるエネルギーや微量栄養素を始めとする栄養素不足は、体に負担をかける結果となり故障の原因ともなる。
【0004】
一方で、各種医薬品の投与も行われているが、効能と共に、例えば筋肉の衰退といったような副作用を考慮しなければならない。このように、従来の肥満の予防や改善は容易かつ簡便にできるものではなかった。近年の健康志向の風潮、運動選手のトレーニングや体重調整から、骨格筋量を減少させずに体脂肪のみを低下させる天然由来のものが望まれている。
【0005】
ここで、天然由来のものとして、果実から得られる果実ポリフェノールに多くの薬効作用があることが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2に開示の抗酸化性、AEC阻害活性、抗変異性作用、ヒアルロニダーゼ阻害活性並びにヒスタミン遊離抑制活性、GTase活性阻害作用、悪臭物質に対する消臭及び悪臭物質産生抑制作用が、特許文献3に開示の広波長に渡る紫外線吸収能力とフリーラジカル消去機能が、特許文献4に開示の生体内脂質の酸化抑制、HDL−コレステロール/総コレステロール比の改善、或いは食品中のコレステロールの体内吸収の抑制作用が、特許文献5に開示の蓄肉中のコレステロール含量を低下させる作用等が報告されている。
【0006】
また、果実以外の天然物由来のものとして、特許文献6には、プロシアニジンを有効成分とするタマリンド種皮抽出物が糖質分解酵素阻害とともに体重を減少させることが報告されている。そして、特許文献7には、ブドウより抽出したプロアントシアニジンを蛋白食品に含有させると、トレーニング刺激直後からの筋力低下が抑えられることが報告されている。
【特許文献1】特開平7−285876号公報
【特許文献2】特開2002−47196号公報
【特許文献3】特開平9−175982号公報
【特許文献4】特開平10−330278号公報
【特許文献5】特開平11−318347号公報
【特許文献6】特開平9−291039号公報
【特許文献7】特開平11−75708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、果実から得られる果実ポリフェノールは、特許文献1〜5に開示されているように多くの薬効作用があることが知られているが、筋張力を増加させる作用や体脂肪の蓄積を抑制する効果を有することについては開示されていない。また、特許文献6に開示のプロシアニジンを有効成分とするタマリンド種皮抽出物は体重を減少させるが体脂肪のみを減少させるものではない。そして、特許文献7に開示のブドウより抽出したプロアントシアニジンは筋力低下を抑えるが、筋力を増加するものではない。
【0008】
本発明の目的は、筋力が増強し、また、骨格筋量や内臓重量を減少させないで体脂肪の低減及び/又は蓄積を抑制する作用を有する筋張力増強剤、体脂肪調整剤を開発することであり、特に天然物に由来する筋張力増強剤、体脂肪調整剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題について鋭意検討した結果、多くの天然物の中からリンゴ等の果実由来のポリフェノールが筋力を増強させ、しかも骨格筋量や内臓重量を減少させないで体脂肪の低減及び/又は蓄積を抑制する作用を有していることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1は、果実由来のポリフェノールを有効成分とする筋張力増強剤に関する。
【0011】
本発明の第2は、前記果実はリンゴである第1に記載の筋張力増強剤に関する。
【0012】
本発明の第3は、リンゴ由来のポリフェノールを有効成分とする体脂肪調整剤に関する。
【0013】
本発明の第4は、前記ポリフェノールは、プロシアニジンが高含有されるものである第1から第3いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0014】
本発明の第5は、前記ポリフェノールは、単純ポリフェノール化合物と高分子ポリフェノール化合物とが高含有されるものである第1から第4いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0015】
本発明の第6は、前記単純ポリフェノール化合物は、カフェー酸誘導体、p−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類、フラボノール類、ジヒドロカルコン類である第5に記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0016】
本発明の第7は、前記高分子ポリフェノール化合物は、縮合型タンニン類である第5に記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0017】
本発明の第8は、前記筋(筋肉)は骨格筋である第1から第7いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0018】
本発明の第9は、前記体脂肪は内臓脂肪である第3から第7いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0019】
本発明の第10は、前記体脂肪は皮下脂肪である第3から第7いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤に関する。
【0020】
本発明の第11は、第1から第10いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤を含有する飲食品に関する。
【0021】
本発明の第12は、第1から第10いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤を含有する医薬品に関する。
【0022】
本発明の第13は、果実由来のポリフェノールを筋張力増強剤の製造のために使用する方法に関する。
【0023】
本発明の第14は、リンゴ由来のポリフェノールを体脂肪調整剤の製造のために使用する方法に関する。
【0024】
本発明で言う果実由来のポリフェノール(以下、果実ポリフェノールと称する。)は、例えば、果実を搾汁後清澄化し、スチレンジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂へ通液してポリフェノール成分を吸着させ、これを水洗浄し、糖類や有機酸類を完全除去するようにしてから、含水エタノールによって溶出することにより得られる。このようにして得られた果実ポリフェノールは、筋張力増強剤としての作用を有し、筋肉の減衰の予防や増強、あるいは筋肉減衰の治療剤として飲食品に添加されたり、医薬品として製剤される。また、体脂肪の低減及び/又は体脂肪蓄積を抑制する作用も備えているので、筋肉の減衰の予防や増強の他に、体重の減少、肥満に起因する病気予防や健康維持等の効果も有する。
【0025】
果実ポリフェノールは果実、特にリンゴの未熟果に多く含まれていることから、果実ポリフェノールを得るためにはリンゴ未熟果を使用することが好ましい。ここで「未熟果」というのは、商品として店頭に陳列される以前の果実のことを意味し、このような未熟果はそれ自体としては商品価値を有さずに捨てられていたものであることから、資源の有効利用にもつながる。
【0026】
本発明で得られる果実ポリフェノールの組成としては、単純ポリフェノール化合物としてカフェー酸誘導体、p−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類(カテキン類)、フラボノール類(ケルセチン配糖体類)、ジヒドロカルコン類(フロレチン配糖体類)など、また高分子ポリフェノール化合物として縮合型タンニン(カテキン体が2〜4個重合した高分子プロシアニジン)類など、により大部分が占められることを本発明者は確認している。
【0027】
本発明でいう「筋張力増強」とは、筋量が増加したり又は筋張力(筋肉が発揮する力)が大きくなることをいう。従って、本発明の筋張力増強剤とは、筋張力の増強や筋量すなわち筋肉の増加する作用を有するものを包含する。また、「筋肉減衰」とは、筋量が減少したり又は筋の張力が小さくなることをいい、筋萎縮、筋量減少及び筋疲労を包含する。具体的疾患としては、高齢者における筋萎縮、整形外科的疾患又は事故や病気の場合における安静加療時の不活動による筋萎縮、宇宙のような無重力下において生じた筋萎縮及び海底のような特殊な圧力下の環境において生じた筋疲労などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の筋張力増強剤が適用し得るのは、あらゆる種類の筋肉(骨格筋、平滑筋、心筋)に対してであるが、特に骨格筋に適用するのが好ましい。「骨格筋」とは、顔面筋、咀嚼筋、頚筋、胸筋、腹筋、背筋、上肢の筋肉及び下肢の筋肉などが包含される。
【0029】
本発明の筋張力増強剤は、体脂肪の低減及び蓄積を抑制する作用を備えているので、体脂肪、特に内臓脂肪が低減され、肥満、血液の高脂血化等の症状が改善予防される。このため、肥満に起因する病気予防や健康維持に有益である。
【0030】
ここで、「体脂肪調整剤」とは、過剰なエネルギーの吸収によって生じるエネルギーの体脂肪としての蓄積を抑制し、これらのエネルギーを筋肉、内臓などの活性エネルギーに変換すること、及び過剰に蓄積されている体脂肪を減少することで体脂肪の量を調整して増加を抑える作用として働くもののことを言う。従って、この体脂肪調整は必要以上にエネルギーの吸収を抑制したり、体脂肪を低減させて痩せさせるような危険な作用を意味するものではなく、体脂肪の蓄積を防ぐものである。これは後記実施例に示されるように、本発明の体脂肪調整剤を投与した群が高栄養食で飼育した場合、非投与群と平均体重は変わらないにも係わらず、体脂肪としての脂肪が減少していること、一方、骨格筋量や内臓重量は低減されていないことからも明らかである。従って、本発明の体脂肪調整剤は、太りつつある状況に於いて投与すれば、脂肪蓄積を抑制し肥満の予防に働き、既に肥満した状況下に於いて投与すれば、脂肪の筋肉などのタンパク質への変換を促し肥満の改善に働く。
【0031】
本発明の筋張力増強剤は、一般的に使用される担体、助剤、添加剤等とともに製剤化することができ、常法に従って経口等の製品にして医薬品として用いることができ、又は食品素材と混合して飲食品とすることができる。
【0032】
そして、医薬品としての投与は、減衰した筋肉の筋張力を増強するための治療となり、また、飲食品としての摂取は、健康食品、機能性食品として筋張力の増強と、肥満に起因する病気予防や健康維持に用いられる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の筋張力増強剤は、天然物由来の果実ポリフェノールを有効成分とするものであるので、副作用が少なく生体にとって安全性が高い。また、筋張力を増加させる作用や骨格筋量や内臓重量を減少させることなく、蓄積された体脂肪を低減する作用或いは過剰なエネルギーを体脂肪の形で蓄積することを抑制する作用に優れるので、体脂肪を低減して体重を減少させながら筋力を増加することができる。従って、これを配合した飲食品や製剤した医薬品等は長期に使用しても安全性が高く筋肉減衰の予防や改善、肥満の予防や改善、更には、運動選手・アスリートのトレーニングにおける筋力増強に対して大変有益である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】飼育期間と体重を示した図である。
【図2】飼育日数とその飼育日までに摂取したトータルの摂取量を示した図である。
【図3】飼料摂取前と摂取3週間後とのラットの腓腹筋の筋張力を示した図である。
【図4】摂取3週間後のラットの腓腹筋重量当たりの筋張力を示した図である。
【図5】摂取3週間後のラットの腓腹筋の筋張力を時間経過で示した図である。
【図6】摂取3週間後のラットの下肢骨格筋、内臓器の組織重量を示した図である。
【図7】摂取3週間後のラットの内臓脂肪量を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の原料となる果実とは、バラ科に属する果実であるが、具体的には例えば、リンゴ、ナシ、モモ等が挙げられ、特にリンゴが好ましい。また、果実としては成熟果実、未熟果実ともに用いることができるが、より多くのポリフェノール化合物を含有すること、及び広範な生理作用を有する各種活性成分を多量に含むことから、未熟果実が特に好ましい。
【0036】
果実からの搾汁方法としては原料を洗浄し、そのまま、又は亜硫酸を添加しながら破砕、圧搾により搾汁果汁を得、好ましくはペクチン分解酵素を添加する。次いで遠心分離、濾過等の手段により清澄果汁を得る方法を挙げることができる。また抽出方法としては、洗浄した原料をアルコール(エタノール、メタノール等)と混合して破砕し、そのまま浸漬及び圧搾、又は加熱還流しながら抽出し、次いで減圧濃縮によりアルコールを留去した後、遠心分離及び濾過、又は有機溶媒(ヘキサン、クロロホルム等)による分配及び濾過を行ない、清澄抽出液を得る方法を挙げることができる。
【0037】
また、得られた清澄果汁や清澄抽出液の精製方法としては、ポリフェノール類を選択的に吸着且つ溶離できる吸着剤、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂、陰イオン交換樹脂、オクタデシル基化学結合型シリカゲル(ODS)等を充填したカラムに、上記の清澄果汁又は清澄抽出液を通すことによりポリフェノール画分を吸着させる。次いで、蒸留水を通すことにより洗浄した後、20〜100%含水アルコール(例えばエタノール)溶液、好ましくは約50%含水アルコール溶液をカラムに通すことによりポリフェノール画分が溶出、回収できる。得られたポリフェノール溶液を減圧濃縮することによりアルコールを留去し、果実ポリフェノール濃縮液を得ることができる。さらに、この濃縮液をそのまま、もしくはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥又は凍結乾燥を行ない、果実ポリフェノール粉末製剤を得ることができる。
【0038】
本発明で得られる果実ポリフェノールの組成としては、単純ポリフェノール化合物としてカフェー酸誘導体、p−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類(カテキン類)、フラボノール類(ケルセチン配糖体類)、ジヒドロカルコン類(フロレチン配糖体類)など、また高分子ポリフェノール化合物として縮合型タンニン(カテキン体が2〜4個重合した高分子プロシアニジン)類など、により大部分が占められており、これら成分は筋張力増強、及び体脂肪の低減や蓄積の抑制に有効である。
【0039】
リンゴ等の果実から抽出されたポリフェノールは、一般に使用される担体、助剤、添加剤等とともに製剤化することができ、常法に従って経口等の製品にして医薬品として用いることができ、また食品素材と混合して飲食品とすることができる。
【0040】
医薬品は経口剤として錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤等がある。これらの製品を医薬品として人体に投与するときは、製剤の種類、加工状況、被投与者の症状、体調、身長、体重等により異なるが、1回当たり0.01〜1,000mg/kg体重の量、好ましくは0.1〜80mg/kg体重の量を1日に1ないしは数回投与し、十分にその効果を奏し得るものである。
【0041】
本発明の体脂肪調整を備えた筋張力増強剤を含有した医薬品は、通常の方法で、不活性な、無毒性で薬学的に適当な賦形剤、又は溶剤を用いて、通常の配合例、例えば錠剤、カプセル、糖衣剤、丸薬、タブレット、細粒剤、エアロゾル、シロップ、乳化液、懸濁剤及び液剤にすることができる。治療に有効な化合物は、それぞれの場合、配合剤全体に対して約0.5ないし90重量%の濃度、すなわち上述した効果を達成するのに十分な量を含むよう存在することができる。配合剤は、例えば活性化合物を溶媒及び/又は賦形剤で、もし適当ならば乳化剤及び/又は懸濁剤を用いて増量して製造される。希釈剤として水を使用する場合は、もし適当ならば、補助溶剤として有機溶剤を使用することもできる。補助剤として、例えば水、非毒性有機溶剤、例えばパラフィン(例えば石油溜分)、植物油(例えば落花生油、胡麻油)及びアルコール類(例えばエタノール及びグリセリン)、賦形剤、例えば粉末にした天然鉱物(例えばクレー、アルミナ、タルク及びチョーク)、粉末状合成鉱物(例えば高度分散性シリカ及び硅酸塩)、糖類(例えばショ糖、ラクトース及びデキストロース)、乳化剤(例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩)、懸濁剤(例えばリグニン亜硫酸廃棄液、メチルセルロース、澱粉及びポリビニールピロリドン)及び滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸及びラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。
【0042】
投与は通常の方法、好ましくは経口で用いられるか、又は非経口的にも投与される。その特別な場合、経舌的に又は静脈内に行うこともできる。注射用媒体としては、特に水を使用し、これは注射溶液で常用の安定化剤、溶解補助剤及び/又は緩衝液を含有する。このような添加剤は、例えば酒石酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、エタノール、ジメチルスルホキシド、錯化剤(例えばエチレンジアミンテトラ酢酸)、粘度調整のための高分子ポリマー(例えば液状ポリエチレンオキシド)、又は水素化ソルビタンのポリエチレン誘導体である。経口投与の場合、特に水性懸濁剤の場合、矯味矯臭剤あるいは着色剤を先に挙げた補助剤とともに活性化合物に添加することができる。
【0043】
本発明の体脂肪調整を備えた筋張力増強剤を含有した飲食品は、上記製剤の形態でもよいが、固形食品、半流動食品、ゲル状食品、飲料などあらゆる食品形態にすることが可能であり、例えば、常用されている任意の基材を用いて清涼飲料、お茶類、コーヒー、スープ、リキュール、発泡酒、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料、ゼリー飲料、飴(キャンディー)、チューインガム、チョコレート、グミ、ヨーグルト、アイスクリーム、せんべい、クッキーなどとすることができる。これらの食品形態でそれぞれの食品原料に所要量を加えて、一般の製造法により加工製造することもできる。この際の好ましい配合量は特に限定されないが、各種飲食品の特性、嗜好性、摂取量、安全性、経済性等を考慮すれば、0.01〜50重量%であり、好ましくは0.1〜10重量%配合するのがよく、目的に応じて適当な製造工程の段階で適宜配合すればよい。
【0044】
本発明の筋張力増強剤を含有する飲食品は、筋張力増強、病気予防、健康維持等に用いられ、その摂取量は、特に限定するものでないが、1日当たりの量として0.1〜1,000g、好ましくは1〜100gを含む加工品として摂取される。
【0045】
これらの飲食品に体脂肪調整を備えた筋張力増強剤を添加する際には、体脂肪調整を備えた筋張力増強剤を粉末のまま添加してもよいが、好ましくは体脂肪調整を備えた筋張力増強剤を1〜2%の水溶液又はアルコール水溶液の溶液あるいはアルコール溶液として添加することが望ましい。
【0046】
また、本発明の筋張力増強剤を含有した飲食品は、その食品形態に応じて種々の成分を配合することができる。
【0047】
ここで言う種々の成分とは、澱粉、コーンスターチ、デキストリン、シュークロース、グルコース、フラクトース、マルトース、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、カルシウム塩類、ビタミンB群、アスパルテーム、キシリトール、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、L−アスコルビン酸、α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸、りんご酸、コハク酸、乳酸、アラビアガム、カラギナン、ペクチン、アミノ酸類、酵母エキス、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン、プロピレングリコール、カゼイン、ゼラチン、寒天、色素、香料、保存料等を意味する。
【0048】
本発明の体脂肪調整を備えた筋張力増強剤を含有する医薬品及び飲食品は、筋張力を増強する作用と体脂肪の増加を抑制する効果を有するので、特に骨格筋の筋張力を増強し、内臓脂肪を減少させるため、骨格筋量や内臓重量を減少させることなく、肥満の予防及び治療上有効なものであり、また、運動選手・アスリートのトレーニングにおける筋力増強に対して大変有益である。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例を挙げて更に詳しく本発明について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1](果実からの筋張力増強剤の調製)
リンゴ幼果(摘果)1,000kgを洗浄後、酸化防止剤としてメタ重亜硫酸カリウムを600ppmとなるように添加しながら、破砕機(ハンマークラッシャー又はハンマーミル)を用いて破砕した。破砕した果実を圧搾機(ベルトプレス)で搾汁した。続いて、該搾汁800Lにペクチン分解酵素(ペクチナーゼ)を48,000(単位)(1L当たり60単位)添加し、40〜50℃で一晩放置して、清澄化させた果汁を得た。こうして得た果汁を遠心分離して固形分を除き、さらに清澄度を向上させた。
【0051】
次いで、該果汁を、スチレン・ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂カラム(商品名:Sepabeads SP−850、三菱化学社製)に通液、負荷した。果汁通液が終了後、カラムを洗浄するために脱イオン水を1〜2カラム容量通液して洗浄し、続いて50〜65容量%エタノールを1〜2カラム容量通液し、樹脂に吸着した果実ポリフェノール類を溶出した。得られた果実ポリフェノール溶液を、減圧濃縮機で濃縮した後、脱アルコール処理を行い、固形分含量が20(w/v)%の果実ポリフェノール濃縮液24Lを得た。この濃縮液をスプレードライヤーで噴霧乾燥を行い、果実ポリフェノール製剤3.4kgを得た。
【0052】
[試験例1](筋張力の増強効果)
実施例1で得られた筋張力増強剤について、Wistar系雄ラット(11週齢)を用いて、筋張力の増強効果を調べた。
【0053】
<対象、餌料、飼育方法>
雄性Wistar系ラット(11週齢)24匹を1週間予備飼育し、異常のないラットを体重が各群間で同じになるように2群に群分けを行い、第一の群のラットに実験動物用飼料(オリエンタル酵母工業社製)に対して実施例1で得られた筋張力増強剤を5重量%添加してよく混練した飼料を自由摂食及び自由摂水させて3週間飼育し、経時的にラットの体重を測定した。これと並行してコントロール群として、第二の群のラットには、前記の実験動物用飼料のみで同様にして3週間飼育し、同じく経時的にラットの体重を測定した。スタート時、1週間後、2週間後及び3週間後のラットの体重をコントロール群と対比して図1に示した。また、夫々の群のラットが飼育期間に摂取した摂餌量を図2に示した。尚、実験動物用飼料(オリエンタル酵母工業社製)の飼料組成は表1に示す米国国立栄養研究所(AIN)から発表されている標準精製飼料AIN−93Mをベースとした。
【0054】
【表1】

【0055】
<筋張力検査>
次に、飼育3週間後の試験群及びコントロール群のラットについて、下記の足関節等尺性発揮トルクを測定する方法で、ラットの腓腹筋の発揮する力を測定した。その結果をコントロ−ル群と対比して図3に示した。また3週間後の腓腹筋重量当たりの筋張力を図4に示した。
【0056】
その結果、腓腹筋の発揮する筋張力は、図3に示すように3週間の飼育後で増加傾向にあり、特に筋張力増強剤を飼育餌料に混ぜて摂取させた試験群は、筋張力が大幅に増強されている。また、図4に示すように腓腹筋重量当たりの筋張力もコントロール群に比べ約2割程度増強されている。従って、果実由来のポリフェノールを含有する筋張力増強剤は筋力を増強させる作用が大きいことが判る。
【0057】
(足関節等尺性発揮トルクの測定方法)
ラットを腹臥位にて胴部を固定台に固定する。その際、股関節・膝関節ともに伸展位の状態で下肢が水平位となるように調節し、足関節は自由になるようにした。その後、ペダル状のトルクメーターの回転中心とラット足関節の回転中心とを一致させ、且つ足底部はペダルに接した状態にして被検動物のラット及び測定器を完全に固定した。尚、使用したトルクメーターは0.1mNm〜100mNmの範囲にて線形性があることを確認している。
【0058】
このようにして、ラットを固定台及び測定装置に固定後、皮膚電極(日本光電製「ビトロード」)を腓腹筋内側の遠位部直上の皮膚に貼り付けて、電気刺激装置(日本光電製「SEN−3301」)にて100HZ,15Vの電気刺激を加えて強縮をおこさせた。尚、電気刺激の周波数及び電圧は最大発揮筋力が得られる条件とした。また、発揮トルクは高速データ収集装置(ADInstruments社製「PowerLab」)にてパーソナルコンピュータに取り込んだ。
【0059】
また、飼育3週間後の試験群及びコントロール群のラットについて、下記の測定方法で電気刺激を1秒間隔で与えて2分間120回断続的に腓腹筋の単収縮を行わせ、その際の発揮トルクを測定し、その結果を筋張力の発揮特性の形でコントロ−ル群と対比して図5に示した。
【0060】
その結果、図5に示すように、試験群の筋張力は、コントロール群のそれに比較して強く、特に30秒〜90秒の間では、有意差が認められた。
【0061】
(ラット足関節等尺性発揮トルクの時間変化の測定方法)
上記等尺性発揮トルクの測定と同様の方法でラットを固定し、皮膚電極を貼り付けた。そして、電気刺激装置(日本光電製「SEN−3301」)にて1HZ,15Vの電気刺激を1秒間隔で断続的に2分間(120回)加えて単収縮をおこさせた。発揮トルクは高速データ収集装置(ADInstruments社製「PowerLab」)にてパーソナルコンピュータに取り組んだ。
【0062】
[試験例2](体脂肪蓄積の抑制効果)
<組織重量検査>
試験例1で飼育した飼育3週間後の試験群、コントロール群のラットについて、心臓、肝臓、腎臓、内蔵、ひらめ筋(soleus)、足底筋(plantaris)、腓腹筋(gastrocnemius)を摘出し、それぞれの重量を測定した。その結果をコントロ−ル群と対比して表2及び図6に示した。尚、表2、図6、図7に示した組織重量、内臓脂肪重量は解剖後の体重で補正したものを表す。また、内臓脂肪の重量を表2及び図7に示した。
【0063】
【表2】

【0064】
その結果、図1及び図2に示すように、体重変化及び摂餌量は試験群とコントロール群との間で差異は認められなかった。また、解剖後の体重で補正した各組織重量は、表2、図6及び図7に示すように、下肢骨格筋(ひらめ筋、足底筋、腓腹筋)、肝臓、心臓、肝臓いずれも臓器の重量は試験群とコントロール群との間で差異は認められなかったが、内蔵脂肪量は試験群の方が約30%程度低減されていた(図7参照)。これによって、果実由来のポリフェノールを含有する筋張力増強剤は、骨格筋量や臓器重量を減少させないで体脂肪の蓄積を抑制していることが判る。すなわち、エネルギーの蓄積形態を脂肪以外の筋肉などの形にする作用を有していることが判る。
【0065】
[実施例2](錠剤、カプセル剤)
実施例1で得られた筋張力増強剤55.5g、結晶セルロース41.0g、微粒二酸化ケイ素2.0g、ショ糖脂肪酸エステル1.5gの合計100.0g上記の各重量部を均一に混合し、常法に従って錠剤、カプセル剤とした。
【0066】
[実施例3](散剤、顆粒剤)
実施例1で得られた筋張力増強剤20.0g、澱粉30.0g、乳糖50.0gの合計100.0g上記の各重量部を均一に混合し、常法に従って散剤、顆粒剤とした。
【0067】
[実施例4](飲料)
実施例1で得られた筋張力増強剤0.45g、りんご透明濃縮果汁15.0g、果糖5.0g、クエン酸0.2g、香料2.0g、色素0.15g、アスコルビン酸ナトリウム0.05g、水77.15ml、上記の各成分の組成により飲料を製造した。
【0068】
[実施例5](飴)
ショ糖20.0g、水飴(75%固形分)70.0g、水9.5g、着色料0.45g、香料0.04g、実施例1で得られた筋張力増強剤0.01gの合計100.0g上記の各重量部の各成分を用い、常法に従って飴とした。
【0069】
[実施例6](クッキー)
薄力粉32.0g、全卵16.0g、バター19.0g、砂糖25.0g、水7.2g、ベーキングパウダー0.2g、実施例1で得られた筋張力増強剤0.6gの合計100.0g上記の各重量部の各成分を用い、常法に従ってクッキーとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実由来のポリフェノールを有効成分とする筋張力増強剤。
【請求項2】
前記果実はリンゴである請求項1に記載の筋張力増強剤。
【請求項3】
リンゴ由来のポリフェノールを有効成分とする体脂肪調整剤。
【請求項4】
前記ポリフェノールは、プロシアニジンが高含有されるものである請求項1から3いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項5】
前記ポリフェノールは、単純ポリフェノール化合物と高分子ポリフェノール化合物とが高含有されるものである請求項1から4いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項6】
前記単純ポリフェノール化合物は、カフェー酸誘導体、p−クマル酸誘導体、フラバン−3−オール類、フラボノール類、ジヒドロカルコン類である請求項5に記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項7】
前記高分子ポリフェノール化合物は、縮合型タンニン類である請求項5に記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項8】
前記筋(筋肉)は骨格筋である請求項1から7いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項9】
前記体脂肪は内臓脂肪である請求項3から7いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項10】
前記体脂肪は皮下脂肪である請求項3から7いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤。
【請求項11】
請求項1から10いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤を含有する飲食品。
【請求項12】
請求項1から10いずれか記載の筋張力増強剤又は体脂肪調整剤を含有する医薬品。
【請求項13】
果実由来のポリフェノールを筋張力増強剤の製造のために使用する方法。
【請求項14】
リンゴ由来のポリフェノールを体脂肪調整剤の製造のために使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/074962
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517801(P2005−517801)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001884
【国際出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】