説明

筋萎縮性側索硬化症および関連する運動ニューロン疾患の診断、処置および予防のための、FUS/TLSベースの化合物および方法

本発明は、1または2以上の遺伝子マーカー(例えば一ヌクレオチド多型)を含む新規のFUS/TLSの核酸およびタンパク質、ならびに、変異型FUS/TLS配列の存在の利点によりALSまたは他の関連する運動ニューロン疾患の診断に関する方法を含む、その使用の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年7月22日に出願された米国仮出願第61/135,689号の35U.S.C.119(e)に基づく利益を主張し、該仮出願は、本明細書においてその全体が参照として組み込まれる。
【0002】
政府の出資
本発明は、国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke:NINDS)からの助成金第R01 NS050557-01号に基づく政府の支持によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、運動ニューロン疾患、特に筋萎縮性側索硬化症の診断および処置に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、進行性の、致死性の神経変性障害である。その発症率は、0.6〜2.6/100,000であると報告されており(Roman, J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1996. 61(2):131-7)、やや男性優位である。疾患の発症率のピークは60歳代においてであり(Nelson, Clin. Neurosci. 3, 327 (1995))、生存は典型的には2〜5年である。ALSは、機械的人工呼吸の不在下において、呼吸麻痺からの死を回避不能にもたらす。家族性の症例がALSの10%を占め、細胞質の銅−亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)における変異がこれらの家族性症例の20〜25%を占めることが示されている(Rosen, Nature 364, 362 (1993))。小胞結合膜タンパク質結合タンパク質(VAPB)における変異は、少数のブラジルの家族において古典的ALSまたは非定型運動ニューロン疾患のいずれかを引き起こすことが示されている。少数の遺伝子が、上位運動ニューロン優性ALS2(alsin)、若年性ALS(senataxin)および下位運動ニューロン疾患(lower motor neuropathy)(DCTN1)を含む、非定型運動ニューロン疾患に関連付けられている。若年性遺伝性ALS(この場合は劣性)の第2の形態は、染色体15qに関連付けられる(Hentati et al., Neurogenetics 2, 55 (1998))。しかし、家族性の古典的ALSの症例の大多数においては、原因遺伝子は未知である。染色体16および18への連鎖を有する高浸透率の古典的ALSの系統が報告されているが、一方で、染色体9への連鎖を有する前頭側頭型認知症を伴うかまたは伴わないALSを有する家系が報告されている。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
本発明者らは、ヒトFUS/TLS遺伝子における変異が、ヒト筋萎縮性側索硬化症(ALS)および関連する運動ニューロン疾患に関連することを発見した。ここで、本発明者らは、優性な古典的ALSと見かけ上劣性で非定型のALSとの両方に関連する、染色体16上のFUS/TLS遺伝子における変異を報告する。したがって、本発明は、筋萎縮性側索硬化症および他の運動ニューロン疾患の診断および処置のための方法を提供する。方法は、FUS/TLS活性の変化および/またはFUS/TLSの物理的特性の変化の結果である家族性筋萎縮性側索硬化症および筋萎縮性側索硬化症ならびに他の運動ニューロン疾患を処置するために提供される。さらに、FUS/TLSの生化学的経路の変化により引き起こされる疾患のための治療が提供される。
【0006】
一側面において、本発明は、対象においてALSまたは関連する運動ニューロン疾患を診断するための方法を提供し、該方法は、個体から得られた試料において、FUS/TLSの核酸またはそのフラグメントにおける1または2以上の遺伝子マーカーを検出することを含み、ここで、前記1または2以上の遺伝子マーカーは、C1551G、C1561G、G1542T、G1543T、C1561T、G1562A、A1564GまたはG1572Cからなる群より選択され、ここで、前記1または2以上のマーカーの存在は、前記個体がALSもしくは関連する運動ニューロン疾患を有するか、またはALSもしくは関連する運動ニューロン疾患に対する遺伝的素因または易罹患性を有することを示す。
【0007】
一態様において、変異は、FUS/TLSのエクソン15におけるものである。一態様において、遺伝子マーカーの1または2以上は、(野生型と比較して)FUS/TLSタンパク質中のアミノ酸の変化をコードする。一態様において、アミノ酸の変化は、H517Q、R521G、R514S、G515C、R521C、R521H、R522GまたはR524Sにおけるものである。一態様において、方法は、全ての8個のマーカーを含むハプロタイプを検出することを含む。一態様において、核酸は、DNA、ゲノムDNA、RNA、cDNA、hnRNAまたはmRNAである。一態様において、検出は、シークエンシング、ハイブリダイゼーション、制限酵素断片分析、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイまたは対立遺伝子特異的PCRにより達成される。一態様において、1または2以上の遺伝子マーカーは、変異体FUS/TLSタンパク質に選択的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて同定される。
【0008】
別の側面において、本発明は、本明細書において記載される遺伝子マーカーのうちの少なくとも1つを同定するためのプローブの少なくとも1つの組み合わせを含む、診断用キットおよび/または研究用キットを提供する。
【0009】
別の側面において、本発明は、ALSまたは関連する運動ニューロン疾患の処置または予防の方法を提供し、該方法は、上記または本明細書において他に記載される診断方法を実施して、ALSもしくは関連する運動ニューロン疾患を有するかまたはALSもしくは関連する運動ニューロン疾患に対する遺伝的素因または易罹患性を有する個体を同定すること、および、該個体に、該個体においてALSまたは関連する運動ニューロン疾患を遅延させるか、低減するかまたは予防するために好適な組成物の治療有効量を投与すること、および/あるいは、該個体を治療により処置することを含む。
【0010】
一態様において、組成物は、変異型FUS/TLSの活性のモジュレーターを含む。別の態様において、モジュレーターは、変異型FUS/TLSの発現を減少させるsiRNA分子である。別の態様において、モジュレーターは、野生型FUS/TLSの発現を増大させる発現ベクターである。
【0011】
別の側面において、本発明は、FUS/TLS遺伝子においてC1551G、C1561G、G1542T、G1543T、C1561T、G1562A、A1564GもしくはG1572Cからなる群より選択される1または2以上の遺伝子マーカー、またはFUS/TLSタンパク質においてH517Q、R521G、R514S、G515C、R521C、R521H、R522GもしくはR524Sからなる群より選択される1または2以上の遺伝子マーカーを含む、遺伝子改変生物を提供する。
【0012】
一態様において、遺伝子マーカーは、FUS/TLS中のエクソン15におけるものである。別の態様において、生物はマウスである。
なお別の側面において、本発明は、変異体FUS/TLSのタンパク質または核酸に選択的に結合する分子についてスクリーニングするための方法を提供し、該方法は、野生型および変異型FUS/TLSの核酸またはタンパク質を候補分子と接触させること、ならびに、候補分子の野生型および変異型FUS/TLSの核酸またはタンパク質への結合を測定することを含み、ここで、変異型FUS/TLSへの結合のレベルが野生型FUS/TLSへの結合のレベルよりも5倍大きいことが、変異型FUS/TLSに選択的に結合する分子の指標である。
【0013】
本発明は、さらに、患者において細胞死疾患を発症する可能性が高いことを診断する方法を特徴とする。方法は、患者のDNAを分析して該DNAがFUS/TLSコード配列中に変異を含むか否かを決定することを含み、かかる変異は、当該患者が細胞死疾患を発症する可能性が高いことの指標である。方法は、細胞死疾患、特に神経変性疾患、とりわけ筋萎縮性側索硬化症(ALS)を診断するために用いることができる。
ALSは、家族性、孤発性の定型または非定型の性質であってよい。
【0014】
本明細書において記載される方法はまた、限定されないが、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、ハラーホルデン・スパッツ病、オリーブ橋小脳萎縮症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、びまん性レビー小体病、皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性ミオクローヌスてんかん、線条体黒質変性症(strionigral degeneration)、捻転ジストニア、家族性振戦、ジル・ドゥ・ラ・トゥーレット症候群、およびハラーホルデン・スパッツ病などの、別の神経変性状態を発症する可能性を決定するために用いることができる。
【0015】
方法は、患者のFUS/TLSをコードする遺伝子を増幅すること、および増幅された遺伝子を分析することを含む。DNAを、ヌクレオチドシークエンシング、SSCP分析、RFMP、ヘテロ二本鎖分析またはRFLP分析により分析することができる。増幅は、PCR反応により、逆転写PCRにより、または十分な量のDNAを得るために利用可能な任意の他の方法により行うことができる。
【0016】
本発明の変異核酸によりコードされるタンパク質またはペプチドを認識する(およびしたがって結合する)が野生型(非SNP変異含有核酸)によりコードされるタンパク質またはペプチドを認識しない(およびしたがって結合しない)抗体は、家族性ALSを含む筋萎縮性側索硬化症の診断のために用いることができる。
【0017】
本発明の別の側面によれば、診断用キットおよび/または研究用キットが提供される。キットは、本明細書において記載される変異の少なくとも1つを検出するためのプローブの少なくとも1つの組み合わせを含む。
【0018】
本発明はさらに、患者におけるALSなどの細胞死疾患の診断のためのキットを提供する。キットは、1もしくは2以上のFUS/TLS遺伝子特異的PCRプライマーまたはFUS/TLS変異タンパク質もしくはペプチドを認識する抗体を含んでもよい。PCRプライマーは、正常または変異(例えばFUS/TLS配列中のSNP変異の結果として本発明により提供されるもののような)のいずれであるかに拘わらず、FUS特異的核酸配列、TLS特異的核酸配列および/またはFUS/TLS特異的核酸配列を含んでもよい。これらのキットを、上述の疾患のいずれを診断するために用いてもよい。
【0019】
本発明は、本明細書において記載される診断方法を実施してALSまたは他の関連する運動ニューロン疾患に対する遺伝的素因または易罹患性を有する個体を同定し、該個体に、該個体においてALSまたは関連する運動ニューロン疾患を遅延させるか、低減するかまたは予防するために好適な組成物の治療有効量を投与し、および/あるいは、該個体を治療により処置するための方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、変異型FUS/TLS遺伝子に関連する疾患を有する患者を処置するための方法を提供する。この方法は、第1に、患者のDNA中の変異型FUS/TLS遺伝子を同定すること、および第2に、患者にFUS/TLS変異タンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスRNAホモログの治療有効量を投与することを含む。
【0021】
また含まれるのは、変異型FUS/TLS遺伝子に関連する疾患を有する患者を処置するための方法であって、ここで、DNA中の変異型FUS/TLS遺伝子を患者において同定し、野生型FUS/TLSホモログをコードする導入遺伝子の治療有効量を投与する。
【0022】
また本発明の一部は、変異体FUS/TLSタンパク質を部分的に不活化するために十分な抗体を患者に投与することにより、FUS/TLS遺伝子に関連する疾患を有する患者を処置する方法である。
【0023】
本発明の診断方法はまた、スクリーニングの結果としてALSまたは他の関連する運動ニューロン疾患を有することが疑われる個体を処置しない場合を決定するためにも用いることができる。
【0024】
本発明はさらに、本発明のSNPを含むFUS/TLSの核酸、かかる核酸によりコードされるタンパク質またはペプチド、該核酸またはタンパク質に特異的に結合する結合パートナー、かかる核酸を含むベクターおよび細胞(例えば細菌のものまたは哺乳動物のもの)、ならびにこれらの使用の方法を提供する。
本発明のこれらのおよび他の側面、ならびにその多様な態様は、本発明の図面および詳細な説明を参照することによりより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】図1:AおよびB。FUS/TLSのALSのインデックス系統および遺伝子情報。
【図1B】図1:AおよびB。FUS/TLSのALSのインデックス系統および遺伝子情報。
【図1C】C:FUS/TLSの進化上保存。ALS患者において観察される変異を、赤で、ヒト配列の上に示す。「(SC)」は、1個体における2つの連続したミスセンス変異(R514SおよびG515C)を引き起こす2pbの変異(cisにおけるもの)を指す。
【0026】
【図2A】図2:FUS/TLSの組織および細胞染色ならびにRNA結合。A.F55のALS患者対対照の、抗NeuN/gfpおよび抗リポフスチン/Cy3抗体により染色された脳(皮質)、マージされた画像(左)、または抗FUS/TLS抗体+DAB二次抗体により染色された脳(皮質)。
【図2B】B.F55のALS患者対対照の、抗NeuN/Cy3および抗FUS/TLS抗体ならびにDAPIにより染色された脊髄、およびマージされた画像。C.変異体(R521GまたはH517Q)組み換えFUS/TLSおよび24塩基のRNAオリゴマーを用いたゲルシフトアッセイ。
【0027】
【図3A】図3:トランスフェクションおよび細胞分画研究。A.野生型または変異型(F55=R521GまたはF577=H517Q)組み換えFUS/TLS−gfp融合タンパク質をトランスフェクトされたSK−NAS(上)またはN2A(下)細胞、DAPIによりカウンター染色されたもの、マージされた画像。有意な核対細胞質のFUS/TLS染色が観察された細胞のパーセンテージを、右に示す。
【図3B】B.細胞分画研究。野生型または変異型(F55=R521GまたはF577=H517Q)組み換えFUS/TLS−gfp融合タンパク質をトランスフェクトされたSK−NAS細胞を、24時間後に収集して分画した。ウェスタンブロットに供し、抗gfp抗体/ELCで染色した。ラミンおよびGAPDHローディング対照染色を下に、密度測定比を右に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明者らは、ヒトALS患者(優性および劣性遺伝する家族性ALSを含む)におけるFUS/TLS遺伝子における変異を同定した。この遺伝子配列中の変異の知識、およびFUS/TLS変異を保有する患者についての臨床情報を用いて、徴候性の個体および危険性がある個体においてALSを診断および予測することができる。さらに、ALSおよび運動ニューロンの生物学を研究するために、実験動物および培養細胞においてFUS/TLS遺伝子中に変異を導入することができる。かかる動物および細胞は、ALSおよび関連疾患を有するヒト患者における使用のために、治療的介入(薬物、siRNA、ならびに遺伝子およびタンパク質治療を含む)を開発して試験するために用いることができる。
【0029】
FUS遺伝子の公式な完全名称は、「fusion (involved in t(12;16) in malignant liposarcoma)」である。この遺伝子はまた、FUS、TLS;FUS/TLS;CHOP;FUS1;FUS−CHOP;TLS/CHOP;およびhnRNP−P2としても知られている。この遺伝子は、15個のエクソンおよび長さ2,002ヌクレオチドの転写物を有する。FUS/TLS遺伝子は、75kDaのDNAと対形成する核タンパク質をコードし、これは一本鎖および二本鎖DNAの両方と結合し、相補的な一本鎖DNAのATP非依存的アニーリング、および高次らせん二本鎖DNAにおけるDループ形成を促進する。タンパク質の長さは526アミノ酸残基である。FUS/TLS配列は、本明細書において以下のように提供され、本明細書に添付され本明細書において組み込まれる配列表中に含まれる:
配列番号1は遺伝子配列であり;
配列番号2はcDNA配列であり;
配列番号3はタンパク質コード配列であり;および
配列番号4は前記タンパク質のアミノ酸配列である。
【0030】
FUS/TLSは、ハンチントン病のモデルにおいて、主要な核凝集体相互作用タンパク質であることが見出されている。凝集体における貯留(sequestration)によるFUS/TLSの枯渇は、ポリグルタミン伸長に媒介される疾患における神経細胞死の原因であり得る。運動ニューロン疾患の劣性症例におけるFUS/TLSの機能の喪失は、この病態を模倣する場合がある(注:FUS/TLSの1結合パートナーであるCBPもまた、ポリグルタミン経路を含む)。
【0031】
予想外に、ALS患者(家族性ALSおよび孤発性ALSの両方)におけるFUS/TLS遺伝子の配列中に幾つかの変異を発見した。配列の番号付けは、開始コドンのAを塩基1として始め、イントロンの塩基は、最も近いエクソンに相対的にプラスまたはマイナスとした。
【0032】
【表1】

【0033】
家系577は、偽優性形質としてALSを分離する多世代の系統であり、劣性であると考えられる[家系は少なくとも1つの近親ループを含む];患者における家系固有(identity-by-descent)の最も重要な領域は、染色体16上にある。患者は、非延髄性(したがって非致死性)の下位〜上位運動ニューロン疾患の形態を有する。
【0034】
家系55は、優性形質としてALSを分離する多世代の系統である(染色体16に連鎖する:本発明者らのグループにより報告される)。
一つの家系が、X連鎖する球脊髄性筋萎縮症およびFUS/TLS媒介性運動ニューロン疾患の両方を分離する場合がある。
【0035】
用語「対立遺伝子」とは、本明細書において用いられる場合、ヌクレオチド配列のバリアントを指す。二対立遺伝子多型は、2つの形態を有する。代表的には、第1に同定された対立遺伝子がオリジナルの対立遺伝子(original allele)として命名され、一方他の対立遺伝子は代替的な対立遺伝子(alternative allele)として命名される。二倍体生物は、ある対立遺伝子の形態について、ホモ接合またはヘテロ接合である。
【0036】
用語「遺伝子型」は、本明細書において用いられる場合、個体または試料中に存在する対立遺伝子のアイデンティティーを指す。用語、試料または個体をある対立遺伝子マーカーについて「遺伝子型同定する(genotyping)」ことは、ある対立遺伝子マーカーにおいて、個体により保有される特定の対立遺伝子または特定のヌクレオチドを決定することからなる。
用語「ハプロタイプ」とは、個体または試料中に存在する対立遺伝子の組み合わせを指す。
【0037】
本明細書において記載される方法は、SNPマーカーの検出に関する。本明細書において用いられる場合、用語「SNP」は、全ての一塩基バリアントを包含し、また、一ヌクレオチド置換(例えばA−>G)に加えて、一ヌクレオチドの挿入および欠失を包含する。一ヌクレオチド多型は、一ヌクレオチドにより占有される多型部位において発生し、これは対立遺伝子配列間のバリエーションの部位である。SNPが観察される代表的な頻度は、1000塩基対毎に約1つである(Li and Sadler, Genetics, 129:513-523, 1991; Wang et al., Science, 280:1077-1082, 1998; Harding et al., Am. J. Human Genet., 60:772-789, 1997; Taillon-Miller et al., Genome Res., 8:748-754, 1998)。
【0038】
代表的には、異なるゲノムの間で、または異なる個体の間で、多型部位は2つの異なるヌクレオチドにより占有される。SNPは、ゲノム内の規定の部位において発生し、遺伝子のマッピング、集団の構造の定義づけ、および機能的研究の実施のために用いることができる。SNPは、マーカーとして有用である。なぜならば、多数の既知の遺伝子疾患が点変異および挿入/欠失により引き起こされるからである。核酸分子の高次構造は、一般的に、ゲル電気泳動により測定される電気泳動移動性、キャピラリー電気泳動および/またはエンドヌクレアーゼ消化に対する感受性などの当該分野において公知の方法を用いて検出可能であり、同定可能であり、および/または区別可能である。
【0039】
「連鎖」は、遺伝子、対立遺伝子、遺伝子座または遺伝子マーカーが、同一染色体上のそれらの位置の結果として、一緒に遺伝する傾向を表わし、2つの遺伝子、対立遺伝子、遺伝子座または遺伝子マーカーの組み換えのパーセンテージとして測定することができる。互いに50センチモルガン内に生じる遺伝子座は、連鎖する。幾つかの連鎖したマーカーは、同じ遺伝子または遺伝子クラスター内に生じる。
【0040】
「連鎖不均衡」または「対立遺伝子相関(allelic association)」とは、特定の対立遺伝子または遺伝子マーカーの、近傍の染色体位置における特定の対立遺伝子または遺伝子マーカーとの、当該集団における任意の特定の対立遺伝子頻度について偶然により予測されるより高い頻度での優先的な相関を意味する。連鎖不均衡は、特定の対立遺伝子の組み合わせの天然の選択の結果として生じるか、または対立遺伝子が最近になって導入されたために連鎖する対立遺伝子との平衡状態に達していないことにより生じ得る。
【0041】
「遺伝子バリアント」または「バリアント」とは、集団中の少なくとも1の個体における特定の遺伝子座に存在する特定の遺伝子バリアントであって参照配列と異なるものを意味する。
【0042】
評価されるべき遺伝子材料は、個体からの任意の有核細胞から得ることができる。本発明による方法において用いられる核酸は、DNA、ゲノムDNA、RNA、cDNA、hnRNAおよび/またはmRNAであってよい。ゲノムDNAのアッセイのために、実質的にあらゆる生物学的試料(純粋な赤血球細胞以外のもの)が好適である。例えば、便利な組織試料として、全血、精液、唾液、涙、尿、糞便材料、汗、皮膚および毛髪が挙げられる。cDNAまたはmRNAのアッセイのために、組織試料は、標的核酸が発現している器官から得なければならない。例えば、中枢神経系または脳からの細胞が、FUS/TLS遺伝子についてのcDNAを得るための好適なソースである。
【0043】
適用可能な診断技術として、限定されないが、ミニシークエンシングを含むDNAシークエンシング、プライマー伸長、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、対立遺伝子特異的プライマーを用いるPCR、ドットブロット分析、flapプローブ切断アプローチ、制限酵素断片長多型(restriction fragment length polymorphism)、キネティックPCR、およびPCR−SSCP、蛍光in situハイブリダイゼーション、パルスフィールドゲル電気泳動分析、サザンブロット分析、一本鎖高次構造分析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動、温度勾配ゲル電気泳動、変性HPLC、およびRNAse保護アッセイが挙げられ、これらの全ては、当業者に現在公知であり、当該分野において慣用的に実施されている。
【0044】
本明細書において記載される方法の多くは、標的試料からのDNAの増幅を必要とする。これは、例えばPCRにより達成することができる。一般的には、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification (H. A. Erlich編、Freeman Press, NY, N.Y., 1992);PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innisら編、Academic Press, San Diego, Calif., 1990);Mattilaら、Nucleic Acids Res. 19, 4967 (1991); Eckertら、PCR Methods and Applications 1, 17 (1991);PCR (McPhersonら編、IRL Press, Oxford);および米国特許第4,683,202号を参照。
【0045】
他の好適な増幅方法として、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace, Genomics 4, 560 (1989)、Landegren et al., Science 241, 1077 (1988)を参照)、転写増幅(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 1173 (1989))、および自家持続配列複製(Guatelli et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 87, 1874 (1990))、および核酸ベース配列増幅(nucleic acid based sequence amplification:NASBA)が挙げられる。後の2つの増幅法は、等温転写に基づく等温反応を伴い、これは、一本鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を増幅産物として、それぞれ約30または100対1の割合で生成する。
【0046】
目的の多型部位を占有するヌクレオチドは、ゲノムDNAのサザン分析;制限酵素消化による直接変異分析;RNAのノーザン分析;変性高圧液体クロマトグラフィー(DHPLC);遺伝子の単離およびシークエンシング;対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの、増幅遺伝子産物とのハイブリダイゼーション;一塩基伸長法(SBE)などの多様な方法により同定することができる。好適な手順のサンプリングは、以下に議論される。
【0047】
多型を分析するための対立遺伝子特異的プローブの設計および使用は、例えば、Saiki et al., Nature 324, 163-166 (1986);Dattagupta, EP 235,726、Saiki, WO 89/11548において記載される。対立遺伝子特異的プローブは、2個体からのそれぞれのセグメントにおける異なる多型の形態の存在に起因して、1個体からの標的DNAのセグメントにハイブリダイズするが、別の個体からの対応するセグメントにはハイブリダイズしないように、設計することができる。ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間のハイブリダイゼーション強度において有意な差異が存在するように、および好ましくはプローブが対立遺伝子の一方にのみハイブリダイズする本質的にバイナリーな応答が存在するように、十分にストリンジェントであるべきである。ハイブリダイゼーションは、通常、ストリンジェントな条件下において、例えば、1M以下の塩濃度および少なくとも25℃の温度で行われる。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mM リン酸ナトリウム、5mM EDTA、pH7.4)および25〜50℃の温度の条件、または相当する条件が、対立遺伝子特異的プローブのハイブリダイゼーションのために好適である。相当する条件は、分野において公知であるように、標的ヌクレオチド配列と用いられるプライマーまたはプローブとの間に同程度の同一性または類似性を維持しつつ、例として示されるパラメーターの1または2以上を変化させることにより決定することができる。
【0048】
いくつかのプローブは、多型部位がプローブの中心の位置(例えば、15マーにおいては7の位置;16マーにおいては8または9のいずれかの位置)とアラインメントするように、標的DNAのセグメントにハイブリダイズするように設計される。このプローブの設計は、異なる対立遺伝子形態の間のハイブリダイゼーションの良好な区別を達成する。
【0049】
対立遺伝子特異的プローブは、しばしばペアにおいて用いられ、ペアのうちの1つのメンバーは標的配列の参照形態に対して完全な一致を示し、他方のメンバーはバリアント形態に対して完全な一致を示す。したがって、同じ標的配列中の複数の多型の同時分析のために、いくつかのプローブのペアを同じ支持体上に固定してもよい。
【0050】
多型はまた、核酸アレイ(例えばマイクロアレイ)に対するハイブリダイゼーションにより同定することができ、そのいくつかの例は、WO 95/11995において記載される。WO 95/11995はまた、予め特徴づけられた多型のバリアント形態の検出のために最適化されたサブアレイを記載する。かかるサブアレイは、第1の参照配列の対立遺伝子のバリアントである第2の参照配列に対して相補的であるように設計されたプローブを含む。プローブの第2群は、当該プローブが第2の参照配列に対する相補性を示すこと以外は同じ原理により設計される。第2群(またはさらなる群)の包含は、プローブの長さに相当する短い距離のうちに複数の変異(例えば9〜21塩基中に2または3以上の変異)が生じることが予測される第1の参照配列の短い部分配列(subsequence)を分析するために、特に有用であり得る。
【0051】
対立遺伝子特異的プライマーは、標的DNA上の多型と重なる部位にハイブリダイズし、プライマーが完全な相補性を示す対立遺伝子の形態の増幅のみをプライミングする。Gibbs, Nucleic Acid Res. 17, 2427-2448 (1989)を参照。このプライマーは、離れた部位にハイブリダイズする第2のプライマーと組み合わせて用いられる。増幅は、2つのプライマーから進行し、特定の対立遺伝子の形態が存在することを示す検出可能な産物を生じる。対照は、通常、一方が多型部位において一塩基のミスマッチを示し、他方が離れた部位に対して完全な相補性を示す、第2のプライマーのペアを用いて行われる。一塩基のミスマッチは、増幅を妨げ、検出可能な産物は形成されない。この方法は、ミスマッチが、多型とアラインメントするオリゴヌクレオチドの最も3’寄りの位置において含まれる場合に最も良好に機能する。なぜならば、この位置が、プライマーからの伸長に対して最も不安定であるからである(例えばWO 93/22456を参照)。
【0052】
本発明の多型の配列の直接分析は、ジデオキシ鎖停止法(dideoxy chain termination method)またはマクサム・ギルバート法のいずれかを用いて達成してもよい(Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual(第2版、CSHP、New York、1989);Zyskindら、Recombinant DNA Laboratory Manual(Acad. Press、1988)を参照)。
【0053】
ポリメラーゼ連鎖反応を用いて生成された増幅産物は、変性剤勾配ゲル電気泳動の使用により分析することができる。異なる対立遺伝子は、溶液中のDNAの異なる配列依存性融解特性および電気泳動の移動性に基づいて同定することができる。Erlich編、PCR Technology, Principles and Applications for DNA Amplification(W. H. Freeman and Co, New York, 1992)、第7章。
【0054】
標的配列の対立遺伝子は、Orita et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86, 2766-2770 (1989)において記載されるような、一本鎖PCR産物の電気泳動の移動性における変化により塩基の差異を同定する一本鎖高次構造多型分析を用いて区別することができる。増幅されたPCR産物は、上記のとおりに生成し、加熱するか、または他の方法により変性させて、一本鎖増幅産物を形成させることができる。一本鎖核酸を、リフォールディングさせるか、または、塩基配列に部分的に依存性である2次構造を形成させてもよい。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、標的配列の対立遺伝子間の塩基配列の差異に関係する。
【0055】
多型を同定および分析するための代替的方法は、追加された塩基の標識とプライマーの標識との間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)と共役した蛍光標識プライマーの一塩基伸長(SBE)に基づく。代表的には、Chenら(本明細書において参考として組み込まれるPNAS 94:10756-61 (1997))により記載されるもののようなこの方法は、5’末端において5−カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識された遺伝子座特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いる。この標識プライマーは、その3’末端が目的の多型部位のすぐ隣となるように設計される。標識プライマーは、遺伝子座にハイブリダイズし、該標識プライマーの一塩基伸長は、蛍光標識されたジデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)を用いて、デオキシリボヌクレオチドが存在しないことを除いてはダイターミネーターシークエンシングの様式において行われる。標識プライマーの波長における励起に対する応答における追加されたddNTPの蛍光の増大は、追加されたヌクレオチドのアイデンティティーを推測するために用いられる。
【0056】
多型は、FUS/TLS遺伝子中の2または3以上の多型の群のうちの一つ、または、かかる多型との連鎖不均衡にあるものであって、ALSまたは他の関連する運動ニューロン疾患の存在、不在または重篤度の一因となるハプロタイプを形成するものであってもよい。FUS/TLS遺伝子中の他の多型、またはかかる多型との連鎖不均衡にある他の多型の評価を行い、これらの多型の患者の表現型に対する別々のおよび組み合わせた効果を評価することができる。
【0057】
特定の表現型と、特定の対立遺伝子の存在または不在との間の相関分析は、該表現型の存在または不在について既に試験されている個体の集団について行われる。相関分析は、当該分野において公知であるように、および本明細書において記載されるように、標準的な統計学的方法により行うことができ、多型の形態と表現型の特徴との間の統計学的に有意な相関を記録する。
【0058】
さらに、目的の形質と関連する遺伝子座と、該形質とは関連しないが該形質の原因である遺伝子座と物理的近位にありそれと同時分離する多型マーカーとの間の物理的連鎖を同定することが可能である場合がある。かかる分析は、ある表現型の形質と関連する遺伝子座を染色体位置にマッピングし、およびそれにより該形質の原因である遺伝子をクローニングするために有用である。Lander et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 83, 7353-7357 (1986); Lander et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 84, 2363-2367 (1987); Donis-Keller et al., Cell 51, 319-337 (1987); Lander et al., Genetics 121, 185-199 (1989)を参照。連鎖により局在化された遺伝子を、定方向クローニングとして知られているプロセスによりクローニングすることができる。Wainwright, Med. J. Australia 159, 170-174 (1993); Collins, Nature Genetics 1, 3-6 (1992)を参照。
【0059】
本発明の方法によりALSまたは他の関連する運動ニューロン疾患を有するかまたは発症する可能性が正常より高いと診断された個体を、また、FUS/TLSの機能または活性を調節する化合物により処置してもよい。モジュレーター処置は、単独で、またはALSおよび関連する運動ニューロン疾患のための他の公知の処置様式と組み合わせて提供することができる。1つの可能なモジュレーターは、siRNAまたはアンチセンス分子などの、変異型FUS/TLS(すなわち、本発明により提供される変異の1または2以上を含むFUS/TLS)の機能を阻害する、または変異型FUS/TLS(すなわち、本発明により提供される変異の1または2以上を含むFUS/TLS)の発現を減少させる阻害分子である。1つの特定の態様において、阻害剤は、変異型FUS/TLS核酸分子に選択的に結合するか、コードされた変異型FUS/TLS遺伝子産物の細胞内での発現を減少させる、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子である。
【0060】
本明細書において用いられる場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス」は、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドであって、生理学的条件下において特定の遺伝子を含むDNAまたはその遺伝子のmRNA転写物にハイブリダイズし、それによりその遺伝子の転写および/またはそのmRNAの翻訳を阻害するものを記載する。アンチセンス分子は、標的遺伝子または転写物とのハイブリダイゼーションにより標的遺伝子の転写または翻訳を妨害するように設計される。当業者は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの正確な長さおよびその標的との相補性の程度が、標的の配列およびその配列を構成する特定の塩基を含む、選択される具体的な標的に依存することを理解するであろう。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「iRNA分子」とは、相補的なセンス鎖とアンチセンス鎖とからなる二本鎖RNA分子(dsRNA)である(Tuschl, T. et al., 1999, Genes & Dev., 13:3191-3197; Elbashir, S.M. et al., 2001, EMBO J., 20:6877-6888)。一態様において、アンチセンス鎖の3’末端の最後のヌクレオチドは、任意のヌクレオチドであってよく、標的遺伝子の領域に対して相補的であることを必要とされない。siRNA分子は、一部の態様において、長さ19〜23ヌクレオチドであってよい。他の態様において、siRNAは、より長いが、長さ19〜23ヌクレオチドのヘアピン構造を形成する。なお別の態様において、siRNAは、細胞において、19〜23ヌクレオチドより長い二本鎖RNA分子の消化により形成される。siRNA分子は、好ましくは一方または両方の末端においてオーバーハング、好ましくは3’オーバーハング、より好ましくはセンス鎖において2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。別の好ましい態様において、2ヌクレオチドのオーバーハングは、チミジン−チミジン(TT)である。siRNA分子は、目的の変異型FUS/TLS遺伝子の少なくとも一部に対応する。好ましい態様において、siRNA分子の第1のヌクレオチドはプリンである。遺伝子発現のRNAi阻害のために有用なsiRNAおよび他の二本鎖RNA分子の多くのバリエーションは、当業者に公知であろう。
【0062】
siRNA分子は、プラスミドベースのものであってよい。好ましい方法において、変異型FUS/TLS遺伝子のポリペプチドをコードする配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの周知の技術を用いて増幅する。ポリペプチドをコードする配列全体の使用は必要ではない。当該分野において周知であるように、ポリペプチドをコードする配列の一部が、RNA干渉のために十分である。例えば、当業者に周知の慣用的な技術を用いて、PCRフラグメントをベクターに挿入することができる。インサートは、ハイブリダイズしてsiRNA分子を形成する2つの相補的なRNA分子が産生されるように、反対の方向を指向する2つのプロモーター間に配置することができる。あるいは、siRNA分子は、自己ハイブリダイズしてsiRNA二本鎖を形成する単一のRNA分子として合成し、これは、好ましくは、ハイブリダイズする配列との間に「ループ」を形成するハイブリダイズしない配列を有する。好ましくは、ヌクレオチドをコードする配列は、変異型FUS/TLS遺伝子のコード配列の一部である。siRNAは、細胞内に導入されたベクターから発現させてもよい。
【0063】
変異型FUS/TLS遺伝子配列を含むベクター、好ましくは哺乳動物細胞において活性なプロモーターを含むベクターが、siRNAの産生のために提供される。ベクターの非限定的な例は、pSUPER RNAiシリーズのベクターである(Brummelkamp, T.R. et al., 2002, Science, 296:550-553;OligoEngine, Inc., Seattle, WAから市販で入手可能)。一態様において、部分的に自己相補的なヌクレオチドコード配列を、制限酵素切断部位を用いて哺乳動物ベクターに挿入し、ステムループ構造を作出することができる。好ましい態様において、哺乳動物ベクターは、ポリメラーゼ−III H1−RNA遺伝子プロモーターを含む。ポリメラーゼ−III H1−RNAプロモーターは、ポリアデノシンテイルを欠失するRNA転写物を産生し、明確な転写の開始および5個のチミジン(T5)からなる終止シグナルを一列に有する。終止部位における転写物の切断は、2つ目のウリジンの後で起こり、2つの3’でオーバーハングするTまたはUヌクレオチドを含む合成siRNAの末端に類似する転写物を生じる。siRNAベクターにおいて有用な他のプロモーターは、当業者に周知であろう。
【0064】
哺乳動物細胞におけるsiRNAの発現のためのベクターシステムとして、上記のpSUPER RNAiシステムが挙げられる。他の例として、限定されないが、pSUPER.neo、pSUPER.neo+gfpおよびpSUPER.puro(OligoEngine、Inc.);BLOCK-iT T7-TOPOリンカー、pcDNA1.2/V5-GW/lacZ、pENTR/U6、pLenti6-GW/U6-laminshrnaおよびpLenti6/BLOCK-iT-DEST(Invitrogen)が挙げられる。これらのベクターおよび他のものは、市販されている。
【0065】
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子が、生理学的条件下において標的と選択的に結合するように、すなわち、標的細胞中で生理学的条件下において、実質的に、任意の他の配列よりも標的配列にハイブリダイズするように、構築され配列されることが好ましい。当業者は、本発明による使用ための多数の好適なアンチセンスまたはsiRNA分子のうちの任意のものを、容易に選択して合成することができる。阻害のために十分に選択的かつ強力であるために、かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15の、連続した、標的に対して相補的な塩基を含むべきであるが、特定の場合においては、7塩基の長さしかない修飾オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして首尾よく用いられている(Wagner et al., Nature Biotechnol. 14:840 844, 1996)。最も好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、20〜30塩基の相補配列を含む。siRNA分子については、分子が21〜23ヌクレオチドの長さであって3’に2ヌクレオチドのオーバーハングを有することが好ましいが、より短いおよびより長い、ならびにオーバーハングを有さない分子もまた、本発明により有用であると企図される。
【0066】
アンチセンスは、好ましくは、mRNAの二次構造が予測されない部位(例えばSainio et al., Cell Mol. Neurobiol. 14(5):439-457, 1994を参照)、およびポリペプチドが結合することが予測されない部位に対してターゲティングされる。好ましいsiRNA配列を選択するための他の方法は、当業者に公知である(例えばWhitehead Institute for Biomedical Research (2003)の「siRNA Selection Program」)。
【0067】
1セットの態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子は、「天然の」デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドまたは任意のこれらの組み合わせからなってよい。すなわち、ネイティブなヌクレオチドの5’末端および別のネイティブなヌクレオチドの3’末端が、天然の系において、ホスホジエステルヌクレオシド間結合を介して、共有結合していてもよい。これらのオリゴヌクレオチドは、当該分野において認められたマニュアルでまたは自動合成機により行われる方法により、調製することができる。これらはまた、ベクターにより組み換え的に生成されてもよく、これはin situを含む。
【0068】
しかし、好ましい態様において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNA分子はまた、「修飾された」オリゴヌクレオチドを含んでもよい。すなわち、オリゴヌクレオチドは、それらがそれらの標的とハイブリダイズすることを妨げないが、それらの安定性またはターゲティングを増強するか、またはそれらの治療有効性を増大する、多数の方法において修飾されていてもよい。
【0069】
用語「修飾オリゴヌクレオチド」とは、本明細書において記載される場合、(1)そのヌクレオチドの少なくとも2つが、合成のヌクレオシド間結合(すなわち、一方のヌクレオチドの5’末端と他方のヌクレオチドの3’末端の間でのホスホジエステル結合以外の結合)により共有結合している、および/または(2)通常は核酸と関連しない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合している、オリゴヌクレオチドを記載する。好ましい合成ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カーボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0070】
用語「修飾オリゴヌクレオチド」はまた、共有結合により修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを包含する。例えば、修飾オリゴヌクレオチドとして、3’位においてはヒドロキシル基以外、5’位においてはリン酸基以外の、低分子量の有機基に共有結合した骨格糖を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。したがって、修飾オリゴヌクレオチドは、2’−O−アルキル化リボース基を含んでもよい。さらに、修飾オリゴヌクレオチドは、リボースの替わりに、アラビノースなどの糖を含んでもよい。本発明は、したがって、変異型FUS/TLS遺伝子に相補的であって生理学的条件下においてこれにハイブリダイズする修飾アンチセンス分子を、薬学的に受容可能なキャリアと共に含む、医薬製剤を企図する。
【0071】
別の可能なモジュレーターは、FUS/TLSの活性を増大させる機能的なFUS/TLSタンパク質を発現する発現ベクターである。好適な発現ベクター、ならびにタンパク質(この場合はFUS/TLS)を発現するための組み換え発現ベクターを構築し、生成し、投与するための技術は、当該分野において周知である。
【0072】
本発明はまた、本発明によるALSおよび他の関連する運動ニューロン疾患のためのマーカーでありこれの指標であるFUS/TLSのSNPを検出するための少なくとも1つのプローブを含む、診断用キットおよび/または研究用キットに関する。キットは、本発明の方法を実施するための、酵素、緩衝化剤および/または色素などの他の化合物を含んでもよい。キットはまた、SNP分析を実施するための説明書および/または本明細書において記載されるような統計学的分析のためのソフトウェアを含んでもよい。
【0073】
好ましくは、本発明はさらに、本明細書において記載されるような少なくとも1つの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。しばしば、キットは、異なる形態の多型にハイブリダイズする対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの1または2以上のペアを含む。一部のキットにおいて、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、基質に固定されて提供される。例えば、同じ基質が、本明細書において開示される多型の任意の1または2以上を検出するための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを含んでもよい。キットの随意のさらなる成分として、例えば、制限酵素、逆転写酵素またはポリメラーゼ、基質ヌクレオシド三リン酸(substrate nucleoside triphosphate)、標識のために用いられる手段、および逆転写、PCRまたはハイブリダイゼーション反応のための好適な緩衝化剤が挙げられる。通常、キットはまた、方法を実施するための説明書を含む。
【0074】
本発明はさらに、変異型FUS/TLSの活性を低下させる剤または分子のための薬理作用剤またはリード化合物を同定する効率的な方法を提供する。一般に、スクリーニング方法は、変異型FUS/TLSの活性の量を調節する化合物についてアッセイすることを含む。当業者に理解されるように、スクリーニング方法は、当該分野において周知の方法を用いて、活性の量を直接的に測定してもよい。さらに、変異型FUS/TLSの活性の二次効果を測定するスクリーニング方法を利用してもよい。
【0075】
標識in vitroタンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、イムノアッセイ、2−ハイブリッドまたは3−ハイブリッドスクリーニングなどの細胞ベースのアッセイ、発現アッセイなどを含む、薬理作用剤のための多様なアッセイを、本発明のこの側面により用いることができる。アッセイ混合物は、候補の薬理作用剤を含む。代表的には、多様な濃度に対する異なる応答を得るために、複数のアッセイ混合物を、異なる剤の濃度で平行して実施する。代表的には、これらの濃度のうちの一つが、陰性対照として、すなわち、剤のゼロの濃度で、またはアッセイ検出の限界より低い濃度で、役立つ。
【0076】
本発明により有用な候補の剤は、多数の化合物クラスを包含するが、代表的には、これらは有機化合物である。好ましくは、候補の薬理活性剤は、低分子有機化合物、すなわち、50より大きいが約2500未満、好ましくは約1000未満、およびより好ましくは約500未満の分子量を有するものである。候補の剤は、タンパク質および/または核酸分子との構造的相互作用に必要な、官能化学基を含み、代表的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を含み、好ましくは官能化学基の少なくとも2つを含み、より好ましくは官能化学基の少なくとも3つを含む。候補の剤は、上で同定された官能基の1または2以上で置換された、環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは芳香族多環式構造を含んでもよい。候補の剤はまた、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジンなどの生体分子、上記の物の誘導体もしくは構造アナログ、またはこれらの組み合わせなどであってもよい。剤が核酸分子である場合、剤は、代表的にはDNAまたはRNA分子であるが、本明細書において規定されるような修飾核酸分子もまた企図される。
【0077】
本明細書において記載されるような細胞ベースのアッセイを、細胞試料および/または培養細胞を用いて行ってよいことが企図される。生検の細胞および組織、ならびに培養において増殖させた細胞株は、本発明の方法において有用である。
【0078】
候補の剤は、合成または天然の化合物のライブラリーを含む多様なソースから得られる。例えば、多様な有機化合物および生体分子の無作為なおよび方向づけられた合成のために、無作為なオリゴヌクレオチドの発現、合成有機コンビナトリアルライブラリー、無作為なペプチドのファージディスプレイライブラリーを含む、多様な手段が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態における、天然の化合物のライブラリーが利用可能であるかまたは容易に生成される。さらに、天然または合成で生成されたライブラリーおよび化合物を、従来の化学的、物理学的および生化学的手段により、容易に修飾することができる。さらに、既知の生理活性剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの方向づけされたまたは無作為な化学修飾に供して、剤の構造アナログを生成してもよい。
【0079】
多様な他の試薬もまた、混合物中に含めることができる。これらは、塩、緩衝化剤、中性タンパク質(例えばアルブミン)、界面活性剤などを含み、至適なタンパク質−タンパク質および/またはタンパク質−核酸結合を促進するために用いることができる。かかる試薬はまた、反応成分の非特異的またはバックグラウンドの相互作用を低減するものであってもよい。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などの、アッセイの効率を改善する他の試薬もまた用いることができる。
【0080】
成分の添加の順番、インキュベーション温度、インキュベーションの時間およびアッセイの他のパラメーターは、容易に決定することができる。かかる実験は、単にアッセイパラメーターの至適化に関するものであり、アッセイの基本的な組成ではない。インキュベーション温度は、代表的には、4℃〜40℃である。インキュベーション時間は、好ましくは、迅速なハイスループットスクリーニングを容易にするために最短化され、代表的には0.1〜10時間である。
【0081】
インキュベーションの後で、変異型FUS/TLSの活性を、ユーザーに利用可能な任意の便利な方法により検出する。細胞フリーの結合型アッセイについては、結合成分を未結合成分と分離するために、分離の工程がしばしば用いられる。分離の工程は、多様な方法において達成することができる。簡便には、成分のうちの少なくとも1つを、未結合成分をそれから容易に分離することができる固体の基質上に固定する。固体の基質は、多様な材料から作ることができ、例えばマイクロタイタープレート、マイクロビーズ、ディップスティック、樹脂粒子などの多様な形状であってよい。基質は、好ましくはシグナル対ノイズ比を最大にするよう、主にバックグラウンド結合を最少化するように、ならびに分離の容易性およびコストのために、選択される。
【0082】
分離は、例えば、ビーズまたはディップスティックを、リザーバから取り除き、マイクロタイタープレートのウェルなどのリザーバを空にするか希釈して、ビーズ、粒子、クロマトグラフィーのカラムまたはフィルターを洗浄溶液または溶媒でリンスすることにより、達成することができる。分離の工程は、好ましくは、複数回のリンスまたは洗浄を含む。例えば、固体の基質がマイクロタイタープレートである場合、ウェルを、代表的には塩、緩衝化剤、界面活性剤、非特異的タンパク質などの特異的結合に関与しないインキュベーション混合物の成分を含む洗浄溶液で、数回洗浄してもよい。固体の基質が磁性ビーズである場合、ビーズを、洗浄溶液で1回または2回以上洗浄し、磁石を用いて単離する。
【0083】
検出は、以下の例において記載されるようなレポーター遺伝子の転写などの、2ハイブリッドまたは3ハイブリッドスクリーニングなどの細胞ベースのアッセイのための任意の簡便な方法において達成することができる。細胞フリーの結合アッセイについて、成分のうちの少なくとも1つは、通常、検出可能な標識を含むか、これに共役している。直接的検出(例えば、放射活性、発光、光学密度または電子密度、エネルギー転移など)または間接的検出(例えば、FLAGまたはmycエピトープなどのエピトープタグ、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素タグ)を提供するものなどの、多様な標識を用いることができる。
【0084】
標識を検出するために、標識および他のアッセイ成分の性質に依存して、多様な方法を用いることができる。例えば、固体の基質に結合した状態で、または固体の基質からのなんらかの分離に続いて、標識を検出してもよい。標識は、光学密度もしくは電子密度、放射活性放出、非放射性エネルギー転移などを介して直接的に検出しても、または抗体抱合体、ストレプトアビジン―ビオチン抱合体などにより間接的に検出してもよい。標識を検出するための多様な方法が、当該分野において周知である。
本発明は、以下の非限定的な例において、より詳細に説明される。
【0085】

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位および下位運動ニューロンの致死性の変性障害である。ALSは、主に孤発性に発生するが、症例の10%は家族性であり、分離は典型的には常染色体優性であるが、遺伝様式が不明な多くの小さい家族クラスターが観察される。しかし、ほとんどの家族性の症例は、未だ同定されていない遺伝子に関与する。本発明者らは、常染色体優性ALSと関連するFUS/TLS遺伝子におけるいくつかの異なる変異、ならびに、希少な劣性の非致死性ALSバリアントと関連するユニークな変異を同定した。同族のタンパク質は広範に発現しており、核と細胞質との両方において見出される。FUS/TLSは、幾つかの細胞プロセス、特にmRNAのスプライシングおよび輸送に関与している。FUS/TLSの変異形態は、なおRNAに結合するが、in vitroで細胞の細胞質において凝集塊に蓄積する。患者の脳および脊髄は、同様に、細胞質のFUS/TLS貯留、ならびに核のユビキチン染色を示す。これらの結果は、ALSにおけるRNAのプロセッシングおよび/または輸送の役割を示唆する。
【0086】
材料および方法
ヘテロ接合性欠損マッピング。TGENゲノミクスコアファシリティー(TGEN genomics core facility)において、DNA試料を増幅し、250k (Sty I) SNPマイクロアレイ(Affymetrix)にハイブリダイズさせた。遺伝子型データを、autoSNPaソフトウェアを用いて分析し、IBD(identical by descent)モジュールを用いて、20-SNP-runのカットオフを用いて、3個体全てのF577患者においてホモ接合性な領域を選択し、グラフに可視化した。
【0087】
PCRおよびシークエンシング。ヒト(患者、家族のメンバー、および対照)のFUS/TLS配列を、M13フォワードおよびリバーステイルドプライマー、エクソヌクレアーゼI/エビアルカリホスファターゼ処置を用いたPCR増幅、および直接シークエンシングにより得た。DNA試料を、リンパ芽球様細胞株または全血から抽出し、後者の一部を、Genomiphiキット(GE Healthcare Lifesciences)により増幅した。候補遺伝子エクソンのスクリーニングのために、UCSCゲノムブラウザを用いて、コード配列および60bpのフランキング配列を標的として、プライマーを設計した。PCR増幅に失敗するプライマーペアを、Whitehead Institute Primer3ソフトウェアを用いて再設計した。FUS/TLS遺伝子のシークエンシングのためのプライマー配列は以下の通りであった:
【0088】
クローニング。全長ヒトFUS/TLSのcDNA、MGC-8537(InVitrogen)を得(pOTB7中)、インサートを、エントリーベクターとしてのpDONR221ならびにBPおよびLR Clonaseキット(InVitrogen)を用いて、attサイト組み換え(att site recombination)により、pcDNA3.2V5(Invitrogen)中にクローニングした。F55およびF577患者に対応する変異を、QuikChange II Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を用いて導入した。変異を、シークエンシングにより確認した。
【0089】
外来性pOTB7配列およびcDNA 5’UTR配列を、attBサイトテイルドプライマーを用いて、上記のとおりpDONR221を介したpcDEST53およびpcDEST17(InVitrogen)中へ、増幅することにより取り除いた(N末端タグの後の余分なN末端アミノ酸の付加を回避するため)。
スクリーニングにより変異を確認した。さらに、pcDEST53プラスミド配列をその全体についてシークエンシングした。
【0090】
細胞培養。ヒト神経芽細胞腫SKNAS細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)および4mMのL−グルタミンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。マウス神経芽細胞腫N2A細胞を、10%FBS、4mMのL−グルタミンおよび1mMのピルビン酸ナトリウムを含む最小必須培地(MEM)中で培養した。細胞を、加湿された10%COチャンバーにおいて37℃に保持した。全ての組織培養試薬は、Gibco(Invitrogen)から購入した。
【0091】
GFP−FUSプラスミドによる哺乳動物細胞のトランスフェクション。蛍光顕微鏡法のために、7.5×10のSKNAS細胞/ウェルまたは1.0×10のN2A細胞/ウェルを、24ウェルディッシュ中に播種し、ポリLリジンコートされたガラスカバースリップ(BD Biosciences)に約14時間接着させた。培地を、次いで、製造者(Invitrogen)の説明書に従って、800ngのプラスミドDNAおよび1.25μLのリポフェクタミン2000試薬を含むOPTI−MEMで交換した。5時間後、培地をそれぞれの血清含有培地で交換した。トランスフェクションを、全24時間にわたり進行させた。カバースリップ上で増殖した細胞を、次いで、リン酸緩衝化食塩水(PBS)でよくリンスし、3%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、DAPIを含むVectashieldハードマウント(Vectorlabs)を用いてスライドガラスに接着させた。細胞内分画実験のためのSKNAS細胞のトランスフェクションを、2.2×10個の細胞を16μgのプラスミドDNAおよび25μLのリポフェクタミン2000試薬と共に10cmディッシュ中に播種したこと以外は、上記のとおり行った。
【0092】
トランスフェクトした細胞における細胞質対核のGFP−FUS/TLSの定量。GFP−FUS(WT)、GFP−FUS(55)またはGFP−FUS(577)のいずれかによりトランスフェクトしたSKNASおよびN2A細胞を、Nikon TE300倒立蛍光顕微鏡で100×の倍率で可視化した。核コンパートメント境界(DAPI染色により同定される)の外側の緑色蛍光の検出を、細胞質GFP−FUS発現を示すものとして決定した。少なくとも2回の独立したトランスフェクション実験から調製された3枚のカバースリップ上の最少でも150個の細胞を、核にのみ局在するGFP−FUS発現を有するか、または細胞質GFP−FUS発現を有するものとして分類した(後者の分類は、核および細胞質の両方のGFP−FUS発現を有する細胞を含む)。結果を、計数された全細胞の平均パーセンテージとして示し、Holm試験統計学により分析した。
【0093】
GFP−FUS(WT)、GFP−FUS(55)またはGFP−FUS(577)のいずれかによりトランスフェクトしたSKNAS細胞を、Qproteome細胞コンパートメントキット(Qiagen)を用いて、製造者の説明書に従って、細胞内分画に供した。不溶性画分を含む各画分からの細胞ペレットを、2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および1%のトリトンX−100を含有するPBS中に再懸濁し、全ての画分からの全タンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce)により定量した。細胞質および核の画分からの3μgの全タンパク質と、1.25μgの不溶性画分からの全タンパク質とを、ウェスタンブロット分析に供した。GAPDH(1:2000;Abcam)およびラミンA/C(1:3000;BD Transduction laboratories)は、ローディング標準、ならびにそれぞれ細胞質および核コンパートメントのマーカーとして、用いられた。GFP−FUSタンパク質は、living colors A.v.モノクローナル(抗GFP)抗体JL−8(1:4000;Clontech)により検出した。細胞質/核および不溶性/核のFUSの比を、3回のウェスタンブロットの密度測定から定量し、Holm試験統計学により分析した。
【0094】
免疫組織化学。15マイクロメートルの切片を、前頭皮質から採取し、4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、PBSで3回5分間ずつ洗浄した。切片を、次いで、1時間室温でブロッキングし(20%正常ヤギ血清/0.1%トリトンX/PBS)、次いで、一次抗体と共に、一晩4℃でインキュベートした:ウサギポリクローナル抗ユビキチン(1:600、Abcam)およびマウス抗FUS/TLS(Santa Cruz Labs、1:50)またはマウスモノクローナル抗NeuN(1:1000、Chemicon)およびウサギ抗Fus(Bethyl Labs、1:500)。切片をPBSで3回5分間ずつ洗浄し、次いで、二次抗体と共に3時間室温でインキュベートした:ヤギ抗ウサギフルオレセインイソチオシアネート(Jackson Immuno、1:200)およびヤギ抗マウスシアニン3(Jackson Immuno、1:300)。切片を上記のとおり洗浄し、次いで、70%エタノール中で5分間インキュベートし、その後、自家蛍光エリミネーター試薬(Chemicon)と共に4分間インキュベートし、70%エタノール中で1分間洗浄した。切片をカウンター染色し、DAPIを含有するVectashieldハードマウントメディウム(Vector Labs)でマウントした。
【0095】
結果
染色体16への連鎖を有する常染色体優性の様式においてALSを分離する2つの大きな家系が、先に報告されている。これらの系統におけるハプロタイプ分析は、この遺伝子座についての40Mbの候補領域を示した。2つのさらなる家系は、この遺伝子座のテロメアのサブセットを含むより小さな領域への連鎖を示し、本発明者らが、この領域に努力の焦点を当てるよう導いた。徹底的なエクソンのシークエンシングによっても、対照においてもまた観察されない変異は明らかとならなかった。その後、さらなる個体の確認と、これらの2つの家系についてのデータの再分析により、染色体16への連鎖が除外された。
【0096】
最近になって、本発明者らは、偽常染色体様式において非定型ALSの表現型を分離する家系を観察した(図1A)。該表現型は、上肢近位部発生型の脱力と、その後の下肢への拡散からなるが、4人の患者全員において延髄性領域を残す。2人の示した発端者において、上位運動ニューロンの兆候は存在したが、最少であった。筋萎縮症は、全ての症例において存在したが、全不全麻痺に近いと予測されていたよりもはるかに軽かった。これらの発端者の母親は、延髄性の症状を発症することなく(四肢麻痺であったが)、発症から14年間生存し、心筋梗塞で死亡したと報告されている。発端者の母方の祖父母は、いとこ同士であり、さらに、当該家系はおよそ6000人の住人の小さな島に起源を有し、発端者の父親および母親もまた親戚であった可能性がある。このことは、遺伝の劣性の様式を可能にする。250k SNPチップおよびautoSNPaソフトウェアを用いたヘテロ接合欠損マッピングにより、先に報告された遺伝子座のサブセットを構成する、染色体16の動原体周囲領域における主要LOHクラスター、ならびに他の場所にあるいくつかのより小さい領域を同定した。
【0097】
最大の連続したLOHクラスターは、約4Mbを含み、315のコーディングエクソンを含む53個の遺伝子を含む。これらのエクソンの約75%のゲノムのシークエンシングを行い、ニューロンの機能の推定される重要性に従って、優先順位をつけた。両方の系統からの患者において、FUS/TLS(融合タンパク質/脂肪肉腫において転座している)遺伝子のエクソン15において、配列バリアントを発見した。家系55において、利用可能な罹患個体5人全てが、R521G置換を引き起こすC1561G変異についてヘテロ接合性であることが示された(図1B)が、家系577からの利用可能な患者3人全てが、H517Q置換をもたらすC1551G変異についてホモ接合性であることが示された(図1A)。120のさらなる家族性ALS系統からのインデックス症例の、15個のエクソン全てについてのスクリーニングから、エクソン15における7個の他のミスセンス変異が明らかとなり、293の孤発性ALS症例の、エクソン15についてのスクリーニングは、いかなる変異も明らかにしなかった。1つのサイレントコーディング変異、3つのイントロンのバリアント、および1つの3’UTRバリアントを含む、重要性が不明なさらなるバリアントが観察された。エクソン15のバリアントのいずれも、シークエンシングした795の対照個体においては観察されなかった。この領域における他の遺伝子における全ての配列バリアントは、オンラインSNPデータベースにおいて先に報告されているか、または複数の対照試料において検出された。
【0098】
家系55(F55)からの単一の患者からの生検組織が利用可能であった。慣用的な病態試験の知見は、脊髄前角における複数のレベルでの、および舌下核における、運動ニューロンの欠損、前皮質脊髄路におけるミエリンの蒼白化、ならびに運動皮質におけるベッツ細胞を置き換えるマクロファージ凝集塊を含んだ。その後、凍結脳組織を免疫組織化学により試験した。対照および患者の両方の組織が、明確な皮質性のニューロンのFUS/TLS染色を示すが、一方、対照組織においては、主として核の染色が観察され、F55患者組織(R521G変異についてヘテロ接合性)は、顕著な細胞質の染色もまた示した(図2A)。抗ユビキチン抗体によるさらなる染色により、患者の組織において散在性の核染色が明らかとなったが、対照の組織においては見られなかった(図2B)。患者のニューロンにおいて、対照のニューロンと比較して増大したリポフスチン染色が存在し、これは、ALSニューロンにおいて細胞デブリの蓄積が増大していることと一致した。
【0099】
FUS/TLS野生型、R521GおよびH517QのcDNA発現コンストラクトを、pcDNA3.2(Invitrogen−タグ化されていない)、pcDEST53(Invitrogen−N末端gfpタグ化)およびpcDEST17(Invitrogen−N末端Hisタグ化)において調製した。RNA結合実験を、E. Coliにおいて産生されたHisタグ化された精製タンパク質、およびGGUGモチーフを含みFUS/TLSに結合することが知られているRNAの24マーのオリゴを用いて行った。FUS/TLS(劣性H517Qおよび優性R521C)の変異形態はいずれも、ゲルシフトアッセイにおいて、野生型タンパク質と同様の様式において、RNAオリゴマーに結合した。SK−NAS神経細胞およびN2A神経細胞のgfpタグ化FUS/TLSコンストラクトによるトランスフェクションにより、24時間以内の変異体FUS/TLSタンパク質の細胞質蓄積を明らかにし、これは、521GについてH517QよりもR強かった(およびこれは野生型においては存在しなかった)。このことはまた、抗FUS/TLS抗体および蛍光二次抗体により可視化された(データは示さず)タグ化されていないタンパク質についても示された。
【0100】
FUS/TLSの細胞内局在を、野生型、R521GまたはH517QのFUS/TLS−GFP融合タンパク質をトランスフェクトしたSKNAS細胞のコンパートメント分画により試験した。画分のウェスタンブロットと、その後の抗GFP抗体による免疫染色により、実質的により高い細胞質:核のFUS/TLSシグナルが、両方の変異について示された(図3B)。さらに、R521G変異体について、対照より高い比の不溶性対核のFUS/TLSタンパク質が示され、一方、その比は、H517Q変異体FUS/TLSタンパク質については、わずかのみ増大していた。
【0101】
考察
FUS/TLSは、脂肪肉腫における体細胞の染色体転座により作られる融合タンパク質のN末端の半分に寄与するものとして、もともとは記載された。その後、それがDNAの修復、RNAのプロセッシングおよび輸送において役割を有することが示された。FUS/TLSノックアウトマウスは、系統のバックグラウンドに依存して、周産期死亡またはオスの不妊のいずれかおよび放射線感受性を伴う多様な表現型を示す。ニューロンの機能不全はまだ記載されていないが、マウスのニューロン機能の長期的研究はなんら公開されていない。最近の報告は、非コードRNAがFUS/TLSタンパク質に結合し、それがCREB結合タンパク質(CBP)に結合して後者のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害し、転写の阻害をもたらすことを可能にすることを示す。GGUG含有ncRNAによるこのFUS/TLS結合の活性化は、FUS/TLSのN末端領域とC末端領域との結合を防止することにより作用すると考えられる。優性遺伝性ALS患者において見られるもののようなFUS/TLSのC末端領域におけるアルギニン残基の変異が、また、この自家結合を防止して構成的に活性な転写リプレッサーをもたらすと推測することは魅力的である。また、FUS/TLSは、ハンチントン病のモデルにおいて主要な核凝集物相互作用タンパク質であることが見出されている。凝集物中における貯留によるFUS/TLSの枯渇が、ポリグルタミン伸長媒介性疾患における神経細胞死に寄与し得、運動ニューロン疾患の劣性の症例におけるFUS/TLSの機能の喪失がこの病態を模倣し得ると推測することは魅力的である(注:。FUS/TLSの1つの結合パートナーであるCBPもまた、ポリグルタミン経路を含む)。
【0102】
FUS/TLSについてのニューロンの機能は、海馬ニューロンのスライス培養において明らかにされている。タンパク質は、代謝型(mGluR1)グルタミン酸作動性刺激に応答して樹状突起の棘突起へ輸送されるRNA顆粒において見出される。これらの顆粒は、多数のタンパク質(TDP−43を含む)およびmRNA種を含み、これはアクチンおよびアクチン安定化タンパク質を含む。実際、FUS/TLS欠損ニューロンは、棘突起の分枝の減少および異常な形態を示す。
【0103】
運動ニューロン疾患と関連する2つの変異(一方は優性、一方は劣性)は、培養中の神経細胞の細胞質におけるFUS/TLSの異常な蓄積(優性の変異は、より高い程度まで)を引き起こすと考えられる。かかる貯留は、核内で利用可能なタンパク質の量の減少を介して、または細胞質における機能の有害な増大により、細胞の機能不全をもたらし得る。また、変異型FUS/TLSがRNA顆粒中に組み込まれても、樹状突起の棘突起へのmRNAの送達において正しく機能せず、それによりドミナントネガティブ効果を発揮するか、または劣性の変異の場合は機能の部分的喪失を介する可能性もある。2つのALS関連タンパク質である同じRNA顆粒中のTDP−43およびFUS/TLSの存在は、これらの下流の構造または局在における混乱が、運動ニューロン疾患の病因において、少なくともこれらの2つの遺伝子に関連する症例において、重要であり得ることを示唆する。
【0104】
【表2】

【0105】
均等物
いくつかの発明の態様が本明細書において記載され説明される一方で、当業者は、本明細書において記載される1または2以上の機能を実施するため、および/または結果および/または利点を得るための、多様な他の手段および/または構造を容易に想起することができ、かかるバリエーションおよび/または改変の各々は、本明細書において記載される発明の態様の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書において記載される全てのパラメーター、寸法、材料および配置が、例示的なものであることを意味しており、実際のパラメーター、寸法、材料および/または配置は、発明の技術が用いられる具体的な適用に依存するであろうことを理解する。当業者は、本明細書において記載される特定の発明の態様に対する多数の均等物を認識するか、または慣用的な実験のみを用いて確認することができる。したがって、前述の態様が例としてのみ提示されること、および、添付の請求の範囲およびその均等物の範囲において、発明の態様は、具体的に記載され請求されたもの以外の方法においても実施することができることが理解されるべきである。本開示の発明の態様は、本明細書において記載される各々の個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に関する。さらに、かかる特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の2または3以上の任意の組み合わせは、相互に相反するものではなく、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0106】
全ての定義は、本明細書において定義され用いられる場合、辞書による定義、参考として組み込まれる文書における定義、および/または定義される用語の通常の意味を超えて支配することが理解されるべきである。
本明細書において開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、各々が引用される主題に関して参考として組み込まれ、これは、一部の場合においては当該文書の全体を包含する。
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、明確に逆に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0107】
句「および/または」は、本明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、そのように結合された要素、すなわち、一部の場合においては結合して存在し、他の場合においては結合しないで存在する要素の、「一方または両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」により列記された複数の要素、すなわち、そのように結合された「1または2以上」の要素は、同じ様式において解釈されるべきである。「および/または」の節により具体的に同定された要素以外の他の要素もまた、これらの具体的に同定された要素に関連するか関連しないかに拘わらず、随意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」についての言及は、「含む(comprising)」などの制約のない(open-ended)言語により結合されて用いられる場合、一態様においてはAのみ(随意にB以外の要素を含む)を;別の態様においてはBのみ(随意にA以外の要素を含む)を;さらに別の態様においてはAおよびBの両方(随意に他の要素を含む)を、指し得る。
【0108】
本明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、「または」とは、上で定義された「および/または」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、列記されたものの中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包含的なもの、すなわち、多数のまたは列記された要素および随意に列記されていない項目の、少なくとも1つの包含、なおまた1つより多くの包含、として解釈されるべきである。「1つのみ」または「正確に一方」、または請求の範囲において用いられる場合は「からなる(consisting of)」などの、明確に逆に示された用語のみが、多数のまたは列記された要素のうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、用語「または」とは、本明細書において用いられる場合、「いずれか」、「一方」、「一方のみ」、または「正確に一方」などの排他的な用語により先行される場合のみ、排他的な代替(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとして解釈されるべきである。「本質的になる(consisting essentially of)」とは、請求の範囲において用いられる場合、特許法の分野において用いられるその通常の意味を有する。
【0109】
本明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、1または2以上の要素の列記を参照する句「少なくとも1つ」とは、列記された要素のうちの任意の1または2以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも、要素の列記の中の具体的に列記された要素の一つ一つのうちの少なくとも1つを含まなくてもよく、要素の列記の中の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義はまた、句「少なくとも1つ」が参照する要素の列記のうちに具体的に同定された要素以外の要素が、これらの具体的に同定された要素に関連しているか関連していないかに拘わらず、随意に存在してもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様においては、少なくとも1つの、随意に1つより多くを含む、Aであって、Bが存在しないもの(および随意にB以外の要素を含む);別の態様においては、少なくとも1つの、随意に1つより多くを含む、Bであって、Aが存在しないもの(および随意にA以外の要素を含む);さらに別の態様においては、少なくとも1つの、随意に1つより多くを含む、A、および少なくとも1つの、随意に1つより多くを含む、B(および随意に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0110】
また、逆に明確に示されない限り、本明細書において請求される、1つより多くの工程または行動を有する任意の方法において、方法の工程または行動の順序は、必ずしも、当該方法の工程または行動が列挙された順序に限定されないことが理解されるべきである。
【0111】
請求の範囲において、ならびに上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」などの全ての移行句は、制限されない(open-ended)、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁特許審査手続便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)のセクション2111.03において記載されるように、移行句「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、それぞれ、閉鎖型(closed)または半閉鎖型(semi-closed)の移行句であるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてALSまたは関連する運動ニューロン疾患を診断するための方法であって、
個体から得た試料において、FUS/TLSの核酸またはそのフラグメント中の1または2以上の遺伝子マーカーを検出すること、
を含み、
ここで、前記1または2以上の遺伝子マーカーは、C1551G、C1561G、G1542T、G1543T、C1561T、G1562A、A1564GまたはG1572Cからなる群より選択され、および
ここで、1または2以上のマーカーの存在は、前記個体がALSもしくは関連する運動ニューロン疾患を有するか、またはALSもしくは関連する運動ニューロン疾患についての遺伝的素因または易罹患性を有することを示す、
前記方法。
【請求項2】
変異がFUS/TLSのエクソン15中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝子マーカーの1または2以上が、FUS/TLSタンパク質中の(野生型と比較しての)アミノ酸変化をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸変化が、H517Q、R521G、R514S、G515C、R521C、R521H、R522GまたはR524Sにおけるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項5】
8つ全てのマーカーを含むハプロタイプを検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
核酸が、DNA、ゲノムDNA、RNA、cDNA、hnRNAまたはmRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
検出が、シークエンシング、ハイブリダイゼーション、制限酵素断片分析、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイまたは対立遺伝子特異的PCRにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1または2以上の遺伝子マーカーが、変異体FUS/TLSタンパク質に選択的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて同定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のマーカーの少なくとも1つを検出するためのプローブの少なくとも1つの組み合わせを含む、診断用キットおよび/または研究用キット。
【請求項10】
ALSまたは関連する運動ニューロン疾患の処置または予防の方法であって、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の診断方法を実施して、ALSもしくは関連する運動ニューロン疾患を有するか、またはALSもしくは関連する運動ニューロン疾患に対する遺伝的素因または易罹患性を有する個体を同定すること、および
該個体に、該個体においてALSまたは関連する運動ニューロン疾患を遅延させるか、低減するかまたは予防するために好適な組成物の治療有効量を投与すること、および/または該個体を治療で処置すること、
を含む、前記方法。
【請求項11】
組成物が、変異型FUS/TLSの活性のモジュレーターを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
モジュレーターが、変異型FUS/TLS発現を減少させるsiRNA分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
モジュレーターが、野生型FUS/TLS発現を増大させる発現ベクターである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
FUS/TLS遺伝子中にC1551G、C1561G、G1542T、G1543T、C1561T、G1562A、A1564GもしくはG1572Cからなる群より選択される1もしくは2以上の遺伝子マーカー、またはFUS/TLSタンパク質中にH517Q、R521G、R514S、G515C、R521C、R521H、R522GもしくはR524Sからなる群より選択される1もしくは2以上の遺伝子マーカーを含む、遺伝子改変生物。
【請求項15】
遺伝子マーカーがFUS/TLSのエクソン15中にある、請求項14に記載の遺伝子改変生物。
【請求項16】
生物がマウスである、請求項14に記載の遺伝子改変生物。
【請求項17】
変異体FUS/TLSのタンパク質または核酸に選択的に結合する分子についてのスクリーニングのための方法であって、野生型および変異型FUS/TLSの核酸またはタンパク質を候補分子と接触させること、ならびに、前記候補分子の野生型および変異型FUS/TLSの核酸またはタンパク質への結合を測定すること、を含み、ここで、変異型FUS/TLSへの結合のレベルが野生型FUS/TLSへの結合のレベルよりも5倍大きいことが、変異型FUS/TLSに選択的に結合する分子の指標である、前記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2011−528903(P2011−528903A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520029(P2011−520029)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/004205
【国際公開番号】WO2010/011283
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】