説明

筒内検査治具と筒内検査装置

【課題】比較的簡単な構造でコストが掛からず、取り扱いも容易で、容易に正確な検査が可能な筒内検査治具と筒内検査装置を提供する。
【解決手段】円錐状に形成された円錐ミラー22を先端に備えた柱状のプローブ24と、プローブ24に沿って設けられた一対の位置決めガイド部30と、プローブ24を中心にして位置決めガイド部30を互いに平行に反対方向に等距離移動させる駆動装置26を備える。貫通孔16を有した検査対象を照らす照明44と、検査対象を撮影するカメラ46を設け、照明44を検査対象の貫通孔16内に照射するとともに、検査対象を挟んで照明44とは反対側から円錐ミラー22を検査対象の貫通孔16に挿入して、円錐ミラー22に映った検査対象の貫通孔16の内面を撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加工部品や成型品等に設けられた筒状の貫通孔や管に挿入して、内面状態を撮影し、内面を検査する筒内検査治具と筒内検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工品などに形成された円筒状の貫通孔や管の内面検査は、一般に、目視により傷や汚れの検査をしたり、円筒状のスコープの周囲に設けられた光ファイバーなどの先端から照明光を照射して、孔の内面をスコープ先端に設けられた魚眼レンズ等により撮影し、スコープ内の光学系を通して内面の映像をカメラに導く検査装置が知られている。
【0003】
また、特許文献1に開示されるように、円筒内を照明で照らし出し、端部が円錐に形成された円柱状のレンズを円筒内に挿入し、円筒内を撮影する検査装置も提案されている。
【特許文献1】特開2001−281556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術のうち目視による検査では、細かな傷や塵の見落としが生じる可能性がある上、効率も良くないものであった。また、円筒状のスコープなどの検査用治具は、光学系等の構造が複雑でコストが掛かるものであった。
【0005】
特許文献1にある検査装置も、円筒状の孔の内面状態の撮影に際して、映像光と照明光の光学系を同軸的に備えた光学部品を用いているため、コストが掛かる上、構造も複雑なものであった。また、撮影に際して円筒内での位置決めが難しく、正確な位置決めができず、画像のゆがみを十分に補正できないため、画像処理による検査の精度が十分ではなかった。
【0006】
この発明は、上記従来技術の問題に鑑みて成されたもので、比較的簡単な構造でコストが掛からず、取り扱いも容易で、容易に正確な検査が可能な筒内検査治具と筒内検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、円錐状に形成された円錐ミラーを先端に備えた柱状のプローブと、前記プローブに沿って設けられた一対の位置決めガイド部と、前記プローブを中心にして前記位置決めガイド部を互いに平行に反対方向に等距離移動させる駆動装置とを備えた筒内検査治具である。
【0008】
またこの発明は、円錐状に形成された円錐ミラーを先端に備えた柱状のプローブと、前記プローブに沿って設けられた一対の位置決めガイド部と、前記プローブを中心にして前記位置決めガイド部を互いに平行に反対方向に等距離移動させる駆動装置とから成る筒内検査治具を備え、貫通孔を有した検査対象を照らす照明と、検査対象を撮影するカメラとを設け、前記照明を検査対象の貫通孔内に照射するとともに、前記検査対象を挟んで前記照明とは反対側から前記円錐ミラーを前記検査対象の貫通孔に挿入して、前記円錐ミラー面に映った前記検査対象の貫通孔内面を撮影する筒内検査装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の筒内検査治具と筒内検査装置によれば、簡単な構成で、検査対象の貫通孔に筒内検査治具の円錐ミラーを挿入し、正確な位置決めが可能であり、取り扱いも容易で、円筒内の正確な画像を得ることできる。これにより、画像処理による検査の精度も向上させることができ、効率よく精度の高い検査が可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の筒内検査治具と筒内検査装置の一実施形態について、図1〜図3を基にして説明する。この実施形態の筒内検査治具10と筒内検査装置12は、ピストン等の加工品14に設けられた円筒状の貫通孔16の内面18の塵や傷の検査に使用するものである。この筒内検査治具10は、図1に示すように、加工品14に設けられた円筒状の貫通孔16へ挿通可能に、金属製の円柱状プローブ24を備えている。このプローブ24は、細長い円柱状の挿入部20と、挿入部20の先端部に形成され円錐形で表面が鏡面状の円錐ミラー22が、同軸且つ一体的に設けられている。プローブ24は、挿入部20の基端部が後述する駆動装置26を収容した本体部27に取り付けられている。
【0011】
このプローブ24の両側には、金属製の一対の位置決めガイド片28が長手方向に沿って平行に設けられている。位置決めガイド片28は、プローブ24を内包可能に断面が半円状に湾曲したガイド部30を各々備えている。また、位置決めガイド片28の基部は、それぞれ駆動装置26のリニアスライダ32に取り付けられ、図示しない螺子などで固定されている。このリニアスライダ32は、リニアレール34に沿って平行方向へ摺動可能に嵌合している。
【0012】
各リニアスライダ32の底部には、駆動装置26を構成する略L形の一対の連結アーム36の一端が各々連結されている。各リニアスライダ32に連結された連結アーム36の一端は、リニアレール34に形成された移動用の透孔に揺動可能に位置している。連結アーム36は直方体に形成された本体部27内に収容され、角部軸36aを支点に回動可能に設けられている。各連結アーム36の他端は、駆動装置26を構成するエアシリンダ38の可動部に連結されている。そして、エアシリンダ38の進退動作と連動して、両連結アーム36の先端部が同時に互いに反対方向に等距離だけ開閉動作可能に形成されている。また、駆動装置26の側面には、エアホースなどを接続可能に形成された一対の接続管40が設けられ、加圧エアを導入出可能に形成されている。
【0013】
次に、この実施形態の筒内検査装置12の使用方法について説明する。ここでは、例えば図2に示すように、成型品14であるピストンピンの側面を貫通した筒状の貫通孔16を検査する。検査は、貫通孔16両端近傍の内面18に同心状に形成され、ピストンピンの抜け防止に装着するスナップリングの嵌合溝42に対して行う。
【0014】
まず、図2に示すように、ピストンに設けられた貫通孔16へ、筒内検査治具10の挿入部20を挿入する。このとき、貫通孔16端部に形成された嵌合溝42が、円錐ミラー22の反射面中央付近で撮影される位置まで挿入する。続いて、貫通孔16の内面18に各ガイド部30の外面が接触するまで、エアシリンダ38により連結アーム36を揺動させて、各位置決めガイド片28を開く。これにより、貫通孔16内でのプローブ24の心出し及び位置決めが行われ、プローブ24の中心が貫通孔16の中心に一致して、円錐ミラー22の頂点も貫通孔16の中心上に位置する。
【0015】
そして、この円錐ミラー22の対面位置から、図示しない器具に支持されたリング照明44により、照明光を貫通孔16へ照射する。同時に、リング照明44中央の開口部に、図示しない器具により支持されたカメラ46を位置させる。カメラ46は、リング照明44の開口部の中心とカメラ46のレンズ中心及び円錐ミラー中心が同軸位置となるように挿入する。
【0016】
この状態で、嵌合溝42がある貫通孔16の内面18を、円錐ミラー22を介して撮影する。撮影された画像は、図示しない装置に取り込まれて画像処理され、塵や傷の検査が行われる。画像処理は、正規画像との比較等により塵や傷の有無を判別する。例えば、このとき撮影した画像は、図3に示すように、中央の円錐ミラー22に貫通孔16の内面18が映し出され、ちょうど、円錐ミラー22の反射面の中間位置に、嵌合溝42が同心円状に映し出されている。そして、嵌合溝42に塵48がある場合、その像が映し出される。
【0017】
この実施形態の筒内検査治具10と筒内検査装置12によれば、比較的簡単な構成でコストが低く、取り扱いも容易なものである。しかも、位置決めガイド片28により円筒状の貫通孔16の心出しが容易に正確に行われるため、円錐ミラー22に反射される貫通孔16の内面18の画像にゆがみが少なく、正確に同心状の画像が得られ、内面18の状態を正確に把握することが可能であり、画像処理により簡単に正確に検査できるものである。
【0018】
なお、この発明の筒内検査治具と筒内検査装置は上記実施形態に限定されるものではなく、筒内検査治具は、位置決めガイド片により、心出し可能に形成されていればよいため、挿入部やガイド部の太さは、貫通孔の大きさに合わせて適宜設定可能なものである。また、リング照明及びカメラは、撮影する検査物に合わせて適宜選択可能なものである。さらに、各部材の形状や素材など適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態の筒内検査治具を示す上面図である。
【図2】この実施形態の筒内検査装置を示す部分破断側面図である。
【図3】この実施形態の筒内検査治具の円錐ミラーと貫通孔内面の像を示す概略図である。
【符号の説明】
【0020】
10 筒内検査治具
12 筒内検査装置
14 加工品
16 貫通孔
18 内面
20 挿入部
22 円錐ミラー
24 プローブ
26 駆動装置
28 位置決めガイド片
30 ガイド部
32 リニアスライダ
34 リニアレール
36 連結アーム
38 エアシリンダ
44 リング照明
46 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐状に形成された円錐ミラーを先端に備えた柱状のプローブと、前記プローブに沿って設けられた一対の位置決めガイド部と、前記プローブを中心にして前記位置決めガイド部を互いに平行に反対方向に等距離移動させる駆動装置とを備えたことを特徴とする筒内検査治具。
【請求項2】
円錐状に形成された円錐ミラーを先端に備えた柱状のプローブと、前記プローブに沿って設けられた一対の位置決めガイド部と、前記プローブを中心にして前記位置決めガイド部を互いに平行に反対方向に等距離移動させる駆動装置とから成る筒内検査治具を備え、貫通孔を有した検査対象を照らす照明と、検査対象を撮影するカメラとを設け、前記照明を検査対象の貫通孔内に照射するとともに、前記検査対象を挟んで前記照明とは反対側から前記円錐ミラーを前記検査対象の貫通孔に挿入して、前記円錐ミラー面に映った前記検査対象の貫通孔内面を撮影することを特徴とする筒内検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−199164(P2007−199164A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15003(P2006−15003)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(391032370)エヌアイシ・オートテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】