説明

筒状フィルタ

【課題】 濾過寿命が長い筒状フィルタを提供すること。
【解決手段】 本発明の筒状フィルタは、2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維から発生した2種類以上の極細繊維を含む主濾過不織布と、実質的にフィブリル化していない、繊維径20μm未満の繊維から製造されたものであり、前記繊維として、繊維径が4μm以下の極細繊維と、繊維径が8μm以上、20μm未満の接着した接着性繊維とを含み、しかも最大孔径が平均流量孔径の2倍以下、かつ前記主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい湿式不織布からなる補助濾過不織布とを含み、前記主濾過不織布と前記補助濾過不織布とが隣接して積層された状態で、多孔筒の周囲に配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体中の固形物を濾過することのできる筒状フィルタ、特には、液体中の固形物を濾過することのできる筒状フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液体中の固形物を濾過できるフィルタとして、襞折り加工された濾過材を多孔筒の周囲に配置した、いわゆるプリーツ型フィルタが知られている。このプリーツ型フィルタは濾過面積が広く、濾過寿命が長いため好適なフィルタである。このプリーツ型フィルタを構成する濾過材として、メルトブロー不織布を熱カレンダーロールにより加圧処理した不織布が知られている。この濾過材は微細な孔径を有するため所望の濾過効率を得ることができるが、流体の通過性が悪いため目詰まりが生じやすく、濾過寿命が短いという問題があった。また、メルトブロー不織布にネットを積層した濾過材が知られている。このネットを積層した濾過材はネットによって濾過材(メルトブロー不織布を加圧処理したもの)を損傷する場合があった。また、ネットはほとんど濾過に寄与しないため、濾過寿命の点において十分に満足できるものではなかった。また、ポリ4−メチルペンテン−1を第1成分とし、ポリオレフィン系重合体を第2成分とする分割型複合繊維を含む繊維シートを湿式抄造法により製造し、これに高圧水流処理を施して分割型複合繊維を分割させて極細繊維を形成させると同時に繊維同士を絡合させた不織布を濾過材として使用したものや、エチレン−ビニルアルコール共重合体を第1成分とし、ポリオレフィン系重合体を第2成分とする分割型複合繊維を含む繊維シートを湿式抄造法により製造し、これに高圧水流処理を施して分割型複合繊維を分割させて極細繊維を形成させると同時に繊維同士を絡合させた後、湿潤状態下で加熱加圧処理を施して繊維同士を接着させた不織布を濾過材として使用したものが知られている。これら濾過材をプリーツ型フィルタを構成する濾過材として使用した場合、濾過材自身の繊維間空隙のサイズ分布の範囲が狭く、濾過精度に優れるものであるが、濾過材の表面同士が密着して濾過面積を減ずる可能性があるばかりでなく、濾過材の裏面同士が密着して濾過面積を減ずる可能性があるため、濾過寿命が短くなる欠点があった。このような欠点を解消するために、スパンボンド不織布やネット状シートのような補強材とともに襞折り加工したものも知られているが、このスパンボンド不織布やネット状シートなどの補強材は、濾過面積の低減を防止できるものの、ネットによって濾過材を損傷する場合があった。また、スパンボンド不織布やネットにより補強しても、濾過寿命の点においては十分に満足できるレベルにはなかった。このような問題は、多孔筒の周囲に濾過材が平巻き状に巻回された、いわゆるデプス型フィルタの場合にも見受けられる場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、濾過寿命が長い筒状フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第2の筒状フィルタ(以下、「第2筒状フィルタ」という)は、2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維から発生した2種類以上の極細繊維を含む主濾過不織布と、実質的にフィブリル化していない、繊維径20μm未満の繊維から製造されたものであり、前記繊維として、繊維径が4μm以下の極細繊維と、繊維径が8μm以上、20μm未満の接着した接着性繊維とを含み、しかも最大孔径が平均流量孔径の2倍以下、かつ前記主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい湿式不織布からなる補助濾過不織布とを含み、前記主濾過不織布と前記補助濾過不織布とが隣接して積層された状態で、多孔筒の周囲に配置されたものである。本発明の発明者らは鋭意研究の結果、2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維から発生した2種類以上の極細繊維を含む主濾過不織布は、緻密な構造を有するにも関わらず、濾過流量が大きく、濾過精度に優れ、しかも濾過寿命も長いという特徴を有しており、このような特定の主濾過不織布に、この主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい特定の湿式不織布からなる補助濾過不織布を組み合わせると、更に濾過寿命が長くなることを見い出したのである。また、前記のような補助濾過不織布は接着性繊維により接着した強度的にも優れるものであるため、加工性(例えば、襞折り加工性、巻回性)良く筒状フィルタを製造できることも併せて見い出したのである。更に、前記のような特定の主濾過不織布と特定の補助濾過不織布とを組み合わせた筒状フィルタは、濾過面積を損なうことなく、濾過寿命が長く、濾過精度に優れていることも見い出したのである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の筒状フィルタは濾過寿命が長く、濾過性能に優れ、更には加工性(例えば、襞折り加工性、巻回性)にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の第1筒状フィルタ、第2筒状フィルタ及び第3筒状フィルタを構成する主濾過不織布はいずれも、2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維から発生した2種類以上の極細繊維を含む不織布からなる。そのため、緻密な構造を有するにも関わらず、濾過流量が大きく、濾過精度に優れ、しかも濾過寿命も長いという特徴を有している。この主濾過不織布を構成する2種類以上の極細繊維は、2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維から発生したものである。この分割性繊維は2種類以上の極細繊維を発生させることができるように、2種類以上の樹脂成分からなる。この分割性繊維を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、或いはポリオレフィン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、メチルペンテン共重合体など)などを挙げることができる。これらの中でも、耐薬品性に優れるポリオレフィン系樹脂を含んでいるのが好ましく、ポリオレフィン系樹脂のみ(例えば、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂)から構成されているのがより好ましい。この分割性繊維は外力により分割可能であるように、前述のような樹脂成分が配置しているのが好ましい。より具体的には、分割性繊維の断面形状は、例えば、図1〜図4に示すようなオレンジ型、図5に示すような多重バイメタル型などであるのが好ましい。また、分割性繊維を分割することのできる外力としては、例えば、水流などの流体流、ニードル、カレンダー、フラットプレスなどを挙げることができる。これらの中でも分割するだけでなく、繊維同士を絡合することもできる流体流であるのが好ましい。このような分割性繊維は常法の溶融紡糸法により製造することができる。
【0007】
本発明の主濾過不織布は前述のような分割性繊維から発生した2種類以上の極細繊維を含むものである。そのため、極細繊維の種類数は前述の分割性繊維を構成する樹脂成分数と一致する。この極細繊維の横断面形状は、分割性繊維を構成する樹脂成分の繊維横断面における配置状態によって異なり、分割性繊維の横断面形状が図1のようなオレンジ型である場合には、略三角形状の極細繊維のみからなり、図2のようなオレンジ型である場合には、略三角形状の極細繊維と略楕円形状の極細繊維からなり、図3のようなオレンジ型である場合には、略三角形状の極細繊維と略円形状の極細繊維からなり、図4のようなオレンジ型である場合には、略三角形状の極細繊維と略円形状の極細繊維と略楕円形状の極細繊維からなり、図5のような多重バイメタル型である場合には、アルファベットの略アイ(I)形状の極細繊維のみからなる。本発明の主濾過不織布における「極細繊維」とは、繊維径が5μm以下の繊維をいい、4μm以下であるのがより好ましい。下限は特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。本発明における「繊維径」とは、繊維横断面形状が円形である場合にはその直径をいい、繊維横断面形状が非円形である場合には円形断面に換算した時の直径をいう。
【0008】
本発明の主濾過不織布は前述のような極細繊維を含むものであるが、極細繊維以外に、極細繊維の源となった分割していない分割性繊維を含んでいることができる。このような分割性繊維を含んでいることによって、主濾過不織布に適度な強度を付与することができ、結果として、加工性に優れる主濾過不織布とすることができる。このような分割していない分割性繊維は主濾過不織布の厚さ方向において偏在しているのが好ましい。この場合、主濾過不織布が厚さ方向において緻密な領域(極細繊維を含む領域)と比較的粗い領域(分割性繊維を含む領域)とが形成されることになるため、濾過効率が良く、濾過寿命が長く、しかも濾過性能が更に優れているという効果を奏する。
【0009】
本発明の主濾過不織布は更に融着性繊維を含んでいると、融着性繊維が融着していることによって、主濾過不織布に適度な強度を付与することができ、結果として、加工性に優れる主濾過不織布とすることができる。この融着性繊維は極細繊維による濾過性能を損なうことがないように、繊維径は0.5〜25μmであるのが好ましく、1〜20μmであるのがより好ましい。なお、この融着性繊維は単一成分からなるものであっても良いが、融着後においても繊維形態を維持できるように、2種類以上の樹脂成分からなるのが好ましい。2種類以上の樹脂成分からなる場合、その繊維横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などであることができる。これらの中でも、融着に関与できる樹脂(融着成分)の多い芯鞘型、偏芯型又は海島型であるのが好ましい。この融着性繊維は極細繊維を構成する樹脂成分と同様の樹脂成分から構成することができるが、極細繊維を溶融させて、極細繊維による濾過性能を損なわないように、融着性繊維の融着成分の融点は最も低い融点を有する極細繊維の融点よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。また、融着性繊維が2種類以上の樹脂成分からなる場合には、融着性繊維を融着させる際の熱によっても融着性繊維の繊維形状を維持できるように、融着成分以外の樹脂成分(非接着成分)の融点は融着成分の融点よりも10℃以上高いのが好ましく、20℃以上高いのがより好ましい。本発明における「融点」は示差走査熱量計を用い、昇温温度10℃/分で、室温から昇温して得られる融解吸熱曲線の極大値を与える温度をいう。なお、極大値が2つ以上ある場合には、最も高温の極大値を融点とする。
【0010】
本発明の主濾過不織布は更に親水性繊維を含んでいると、主濾過不織布に親水性を付与することができ、結果として、親水性に優れる主濾過不織布とすることができる。このように主濾過不織布が親水性に優れていると、処理流体が水である場合に、主濾過不織布における通水性、すなわち濾過流量を向上させることができ、濾過寿命を向上させることができる。また、加圧ポンプによる濾過方式の場合には、加圧エネルギーの低減及び濾過材への加圧による負荷を低減することができる。この「親水性繊維」とは公定水分率が4%以上の繊維をいい、例えば、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、テンセル繊維(溶剤抽出法により得られるセルロース繊維)などを挙げることができる。
【0011】
本発明の主濾過不織布の面密度は5〜200g/m2程度であるのが好ましく、厚さは0.005〜2mm程度であるのが好ましく、見掛密度は0.05〜0.7g/cm3程度であるのが好ましい。更に、主濾過不織布の平均流量孔径は0.5〜40μm程度であるのが好ましく、0.5〜20μm程度であるのがより好ましい。本発明における「平均流量孔径」はASTM−F316に規定されている方法により得られる値をいい、例えば、ポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いて、ミーンフローポイント法により測定される値をいう。
【0012】
このような主濾過不織布は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維を用意する。必要であれば融着性繊維を用意する。次いで、分割性繊維を含む繊維ウエブを乾式法(例えば、カード法、エアレイ法、スパンボンド法、メルトブロー法など)や湿式法により形成する。なお、繊維ウエブを形成した後に異種又は同種の繊維ウエブを積層しても良い。例えば、分割性繊維の配合比率の異なる繊維ウエブを積層することにより、厚さ方向において緻密な領域と比較的粗い領域とを有する主濾過不織布を製造することができる。次いで、この繊維ウエブに対して水流などの流体流を作用させることにより、分割性繊維を分割して極細繊維を発生させると同時に極細繊維を絡合して、主濾過不織布を製造することができる。本発明で適用できる流体流による処理条件としては、例えば、ノズル径0.05〜0.3mm、ピッチ0.2〜3mmで一列又は二列以上にノズルを配置したノズルプレートから、圧力1MPa〜30MPaの流体流を噴出すれば良い。このような流体流は1回以上、繊維ウエブの片面又は両面に対して噴出する。なお、流体流で処理する際に繊維ウエブを載置するネットや多孔板などの支持体の非開孔部が太いと、得られる主濾過不織布も大きな孔を有するものとなり、濾過精度が悪くなるため、非開孔部の太さが0.25mm以下の支持体を使用するのが好ましい。なお、分割性繊維が同種の樹脂成分のみ(例えば、ポリオレフィン系樹脂のみからなる)からなり、分割しにくい場合(例えば、湿式法により繊維ウエブを形成した場合)には、分割性繊維を構成する樹脂成分を融着させた後に流体流を作用させたり、繊維ウエブ中に融着性繊維を混合しておき、融着性繊維を融着させた後に流体流を作用させたり、これらの方法を併用すると、容易に分割することができる。この場合、分割性繊維の分割作用が優先的に発生し、極細繊維の絡合はあまり発生しない。そのため、主濾過不織布に強度を付与するために、再度分割性繊維を構成する樹脂成分及び/又は融着性繊維を融着させるのが好ましい。また、前述のように分割していない分割性繊維も含む主濾過不織布は、例えば、流体流の圧力を低くしたり、流体流を作用させる回数を少なくしたり、流体流を作用させる方向を一方向としたり、流体流を作用させる前に分割性繊維を構成する樹脂成分及び/又は融着性繊維を融着して固定したり、これらの方法を併用することにより製造することができる。以上の説明は繊維ウエブに対して流体流を作用させて主濾過不織布を製造すると同時に分割性繊維を分割する方法についてであるが、(1)ニードルにより主濾過不織布を形成すると同時に分割性繊維を分割しても良いし、(2)繊維ウエブを形成する前に、流体流、ニードル、カレンダー、フラットプレスなどの少なくとも1つの外力を作用させて分割性繊維を分割した後に繊維ウエブを形成し、次いで、流体流やニードルにより絡合したり、融着性繊維を含ませておいて融着性繊維を融着させたり、バインダーにより接着しても良いし、(3)繊維ウエブを結合した後に、流体流、ニードル、カレンダー、フラットプレスの少なくとも1つの外力を作用させて分割性繊維を分割しても、本発明の主濾過不織布を製造することができる。
【0013】
本発明の第1筒状フィルタは前述のような主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい、メルトブロー繊維と熱可塑性延伸繊維とが混在する混在不織布からなる補助濾過不織布(以下、第1補助濾過不織布ということがある)を含むものである。本発明においては、この第1補助濾過不織布によって大きな固形物を濾過し、主濾過不織布の負荷を低減することにより濾過寿命を長くすることができる。また、第1補助濾過不織布によって主濾過不織布同士の密着を抑制して、主濾過不織布の濾過性能を十分に発揮させることができる。このメルトブロー繊維の平均繊維径(100点以上の箇所における繊維径の平均値)は0.1〜20μmであるのが好ましく、0.1〜10μmであるのがより好ましい。また、このようなメルトブロー繊維は第1補助濾過不織布中、5〜95mass%含まれているのが好ましく、15〜85mass%含まれているのがより好ましい。このメルトブロー繊維を製造する条件は特に限定されるものではないが、例えば、次のような条件で製造することができる。オリフィス径0.1〜0.5mm、ピッチ0.3〜1.2mmでオリフィスが配置されたノズルピースを温度220〜370℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.02〜1.5g/minの割合で樹脂を吐出し、この吐出した樹脂に対して、温度220〜400℃、かつ質量比で樹脂吐出量の5〜2,000倍量の気体を作用させて、メルトブロー繊維を製造することができる。このメルトブロー繊維を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂など1種類以上から構成することができる。これら樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂(特に、ポリプロピレン)は耐薬品性及び汎用性に優れているため好適に使用できる。なお、メルトブロー繊維を構成する樹脂成分は1種類である必要はなく、2種類以上から構成されていても良い。メルトブロー繊維が2種類以上の樹脂から構成されている場合、その繊維横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型であることができる。
【0014】
他方、「熱可塑性延伸繊維」はメルトブロー繊維やスパンボンド繊維のように、ノズルから押し出した繊維に対して空気を作用させるなどして延伸した繊維ではなく、ノズルから押し出した繊維を延伸機などの機械的作用によって延伸した繊維をいう。この熱可塑性延伸繊維の平均繊維径は10〜100μmであるのが好ましく、15〜80μmであるのがより好ましい。また、このような熱可塑性延伸繊維は第1補助濾過不織布中、5〜95mass%含まれているのが好ましく、15〜85mass%含まれているのがより好ましい。なお、熱可塑性延伸繊維の平均繊維径は、熱可塑性延伸繊維が長繊維である場合には、100点以上の箇所における繊維径の平均値をいい、熱可塑性延伸繊維が短繊維である場合には、100本以上の熱可塑性延伸繊維の繊維径の平均値をいう。この熱可塑性延伸繊維は前述のようなメルトブロー繊維を構成する樹脂と同様の樹脂1種類以上から構成することができる。なお、熱可塑性延伸繊維が2種類以上の樹脂成分からなる場合、その横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型であることができる。このように熱可塑性延伸繊維が2種類以上の樹脂成分からなると、接着できる樹脂成分(接着成分)を接着させたとしても、接着しない樹脂成分(非接着成分)によって繊維形状を維持して、熱可塑性延伸繊維による適度な空間を維持できるため流体の通過性に優れている。このように熱可塑性延伸繊維が2種類以上の樹脂成分からなる場合、接着成分と非接着成分との融点差は10℃以上あるのが好ましく、20℃以上あるのがより好ましい。また、熱可塑性延伸繊維の接着成分はメルトブロー繊維の融点(メルトブロー繊維が2種類以上の樹脂からなる場合には、最も低い融点を有する樹脂の融点)よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。この熱可塑性延伸繊維は長繊維であっても短繊維であっても良いが、メルトブロー繊維と均一に混合した状態で存在できるように、短繊維であるのが好ましい。短繊維である場合、繊維長は5〜160mmであるのが好ましく、メルトブロー繊維と絡みやすいように25〜110mmであるのがより好ましい。この熱可塑性延伸繊維は1種類からなる必要はなく、繊維径、組成、或いは繊維長などの点で相違する2種類以上の熱可塑性延伸繊維が混在していても良い。このような第1補助濾過不織布は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、図6に示すように、前述のような条件でメルトブロー装置1により形成されたメルトブロー繊維2の流れに対して、開繊機3により開繊された熱可塑性延伸繊維4を供給して両者を混合した後、この混合した繊維群をコンベアなどの捕集体5で捕集して第1補助濾過不織布6を形成できる。この熱可塑性延伸繊維4を供給する開繊機3としては、カード機やガーネット機などを例示でき、また図7に示すような複数の開繊シリンダ31をハウジング32内に収納した開繊機3は、メルトブロー繊維2の流れに対して勢い良く熱可塑性延伸繊維4を衝突させて、第1補助濾過不織布6の厚さ方向においてもメルトブロー繊維2と熱可塑性延伸繊維4とを均一に混在させることができるため好適である。また、開繊機3によって熱可塑性延伸繊維4を供給する場合には、熱可塑性延伸繊維4をメルトブロー繊維2と均一に混合できるように、メルトブロー繊維2の流れに対して、直角方向から熱可塑性延伸繊維4を供給するのが好ましい。例えば、メルトブロー装置1により形成されるメルトブロー繊維2の流れが水平方向である場合には、このメルトブロー繊維2の流れに対して直角方向上方から熱可塑性延伸繊維4を自然落下させて供給しても良いが、一般的にメルトブロー装置1により形成されるメルトブロー繊維2の流れ方向は重力の作用する方向と同じであるのが好ましいため、開繊機3から供給される熱可塑性延伸繊維4は重力の作用する方向に対して直角方向から供給するのが好ましい。図7の開繊機3においては、このような角度(直角)であっても熱可塑性延伸繊維4を勢い良く供給できるように、エアを供給することのできるエアノズル33を設けている。なお、メルトブロー繊維2に対して熱可塑性延伸繊維4を供給する角度を調節することによって、第1補助濾過不織布6の厚さ方向における熱可塑性延伸繊維4の存在比率を変えることもできる。このメルトブロー繊維2と熱可塑性延伸繊維4とが混合された繊維群を捕集する捕集体5はロール状のものであっても、コンベア状のものであっても良いが、これら繊維群を搬送する気流との衝突によって第1補助濾過不織布6が乱れたり、飛散することがないように、捕集体5は通気性であるのが好ましく、捕集面とは反対側に気流吸引装置を設けるのが好ましい。このようにして製造された第1補助濾過不織布6はそのまま使用しても良いが、加熱処理及び/又は加圧処理を実施して平均流量孔径を調整するのが好ましい。この加熱処理及び加圧処理は同時に実施しても良いし、加熱処理を実施した後に加圧処理を実施しても良い。加熱処理と加圧処理とを同時に実施する場合の加熱温度は、熱可塑性延伸繊維の接着成分の融点より5〜120℃低い温度であるのが好ましく、この時の線圧力は0.1〜4kN/cmであるのが好ましい。他方、加熱処理を実施した後に加圧処理を実施する場合の加熱温度は、熱可塑性延伸繊維の接着成分の融点より5〜40℃高い温度であるのが好ましく、この時の線圧力は0.1〜4kN/cmであるのが好ましい。なお、加熱処理のみを実施する場合の加熱温度は、熱可塑性延伸繊維の接着成分の融点より5〜40℃高い温度であるのが好ましい。本発明の第1補助濾過不織布の面密度は5〜200g/m2程度であるのが好ましく、厚さは0.005〜2mm程度であるのが好ましく、見掛密度は0.05〜0.7g/cm3程度であるのが好ましい。この第1筒状フィルタにおける第1補助濾過不織布の平均流量孔径は前述のような主濾過不織布の平均流量孔径よりも大きいものである。その程度は濾過する流体などによって適宜変化するため、特に限定するものではないが、主濾過不織布よりも2〜40μm程度大きいのが好ましく、2〜20μm程度大きいのがより好ましい。より具体的には、前述のように主濾過不織布の平均流量孔径が0.5〜40μm程度であるのが好ましく、0.5〜20μm程度であるのがより好ましいため、第1補助濾過不織布の平均流量孔径は2.5〜80μmであるのが好ましく、2.5〜60μmであるのがより好ましく、2.5〜40μmであるのが更に好ましい。
【0015】
本発明の第2筒状フィルタにおいては、前述のような主濾過不織布と、実質的にフィブリル化していない、繊維径20μm未満の繊維から製造されたものであり、前記繊維として、繊維径が4μm以下の極細繊維(以下、「補助極細繊維」という)と、繊維径が8μm以上、20μm未満の接着した接着性繊維とを含み、しかも最大孔径が平均流量孔径の2倍以下、かつ前記主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい湿式不織布からなる補助濾過不織布(以下、第2補助濾過不織布ということがある)とを含んでいる。この第2筒状フィルタは、この第2補助濾過不織布によって大きな固形物を濾過し、主濾過不織布の負荷を低減することにより濾過寿命を長くすることができる。また、第2補助濾過不織布によって主濾過不織布同士の密着を抑制して、主濾過不織布の濾過性能を十分に発揮させることができる。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)は繊維の均一分散性を損なうことがないように、実質的にフィブリル化していない繊維から製造される。この「フィブリル化していない繊維」とは、複数の繊維が結合していない繊維を意味し、例えば、一本の繊維から無数の繊維が枝分かれした状態の繊維(例えば、ビーターなどによって叩解した繊維、パルプなど)や、複数の繊維が既に結合してネットワーク状態にある繊維(例えば、フラッシュ紡糸法により得られる繊維)ではないことを意味する。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)は、太い繊維が混在していることによって繊維の配列が乱され、大きな開孔径を形成することがないように、繊維径が20μm未満の繊維(好ましくは、繊維径18μm以下の繊維)から製造されたものである。より具体的には、繊維径が4μm以下の補助極細繊維と、繊維径が8μm以上、20μm未満の接着した接着性繊維とを含んでいる。前者の補助極細繊維は均一に分散して均一な孔径を形成できるように、繊維径は4μm以下であり、3μm以下であるのがより好ましい。この補助極細繊維の繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.1μm以上であるのが好ましく、0.3μm以上であるのがより好ましく、0.5μm以上であるのが更に好ましく、0.75μm以上であるのが最も好ましい。前述のような補助極細繊維によって均一な孔径を形成できるように、補助極細繊維の繊維径はほぼ同じであるのが好ましい。つまり、補助極細繊維の繊維径分布の標準偏差値を、補助極細繊維の繊維径の平均値で除した値が0.2以下(好ましくは0.18以下)であるのが好ましい。なお、補助極細繊維の繊維径が全て同じである場合には標準偏差値が0になるため、補助極細繊維の繊維径分布の標準偏差値を補助極細繊維の繊維径の平均値で除した値の下限値は0である。この補助極細繊維の「繊維径の平均値」は、第2補助濾過不織布(湿式不織布)の電子顕微鏡写真を撮影し、その電子顕微鏡写真における100本以上(n本)の補助極細繊維の繊維径を計測し、その計測した繊維径を平均した値をいう。また、補助極細繊維の「標準偏差値」は計測した繊維径(χ)から、次の式により算出される値をいう。
標準偏差={(nΣχ2−(Σχ)2)/n(n−1)}1/2
ここでnは測定した補助極細繊維の本数を意味し、χはそれぞれの補助極細繊維の繊維径を意味する。なお、繊維径が4μm以下の補助極細繊維が2種類以上存在する場合には、各々の補助極細繊維について、上記の関係が成立するのが好ましい。また、補助極細繊維は均一な孔径を有する第2補助濾過不織布(湿式不織布)を形成できるように、補助極細繊維の繊維軸方向において実質的に同じ直径を有しているのが好ましい。このようなほぼ同じ繊維径を有する補助極細繊維、或いは繊維軸方向において実質的に同じ直径を有している補助極細繊維は、例えば、紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押し出して複合する複合紡糸法で得た海島型繊維の海成分を除去することにより得ることができる。なお、一般的に混合紡糸法といわれる、島成分を構成する樹脂と海成分を構成する樹脂とを混合した後に紡糸する方法によって得た海島型繊維の海成分を除去することによっては、ほぼ同じ繊維径を有する補助極細繊維や繊維軸方向において実質的に同じ直径を有している補助極細繊維を得ることは困難である。この補助極細繊維を構成する樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン系共重合体などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート系共重合体などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、オレフィン系共重合体などのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル重合体などの合成樹脂1種類以上から構成することができる。なお、補助極細繊維が接着に関与できる樹脂成分(以下、「接着成分」ということがある)を含み、この接着成分により接着していると、確実に補助極細繊維を固定することができ、補助極細繊維が脱落したり、毛羽立つことがないため好適な実施態様である。この補助極細繊維を接着させる場合、補助極細繊維は前述のような樹脂からなる接着成分のみから構成することもできるし、接着成分とこの接着成分の融点よりも高い融点を有する樹脂成分(以下、「非接着成分」ということがある)の2種類以上の樹脂成分から構成することもできる。後者のように補助極細繊維が接着成分と非接着成分を含む2種類以上の樹脂成分から構成されていると、補助極細繊維を接着させても繊維形態を維持して、補助極細繊維本来の働きである、均一な孔径の形成を妨げにくい。補助極細繊維が2種類以上の樹脂成分から構成されている場合、接着成分は接着に関与できるように、補助極細繊維表面の少なくとも1部を占めている(補助極細繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などである)のが好ましく、補助極細繊維表面全体(補助極細繊維の横断面形状が芯鞘型、偏芯型、海島型などである)を接着成分が占めているのがより好ましい。他方、非接着成分は繊維形状を維持できるように、接着成分の融点よりも10℃以上高い融点を有するのが好ましく、20℃以上高い融点を有するのがより好ましい。なお、後述の接着性繊維を接着する際の熱によっても繊維形状を維持できるように、非接着成分は後述の接着性繊維の接着成分の融点よりも10℃以上高い融点を有するのが好ましく、20℃以上高い融点を有するのがより好ましい。この好適である接着成分と非接着成分とを含む2種類以上の樹脂成分からなる補助極細繊維は、常法の複合紡糸法により紡糸する際に、島成分を押し出す口金として、前述のような横断面形状(例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型など)を形成できるものを使用して海島型繊維を紡糸し、海成分を除去することにより得ることができる。なお、補助極細繊維は前述のような接着性を有する以外に、巻縮発現性、分割性などの性能を有するものであっても良い。前者の巻縮発現性を有する補助極細繊維として、補助極細繊維の横断面形状が偏芯型又はサイドバイサイド型であるように、2種類以上の樹脂成分が配置した繊維を使用でき、後者の分割性を有する補助極細繊維として、補助極細繊維の横断面形状が海島型、オレンジ型或いは多重バイメタル型であるように、2種類以上の樹脂成分が配置した繊維を使用できる。なお、後述のように、補助極細繊維は均一分散しやすいように、自由度の高い短繊維(繊維長が30mm以下)であるのが好ましいが、補助極細繊維又は海島型繊維を裁断する際に補助極細繊維同士又は島成分同士が圧着してしまうと、フィブリル化した繊維と同様の状態となるため、裁断する際に補助極細繊維同士又は島成分同士が圧着しにくい補助極細繊維又は海島型繊維を使用するのが好ましい。このような圧着しにくい補助極細繊維又は海島型繊維としては、例えば、結晶性の高い補助極細繊維(海島型繊維の場合には島成分)がある。より具体的には、補助極細繊維(海島型繊維の場合には島成分)がポリメチルペンテンやシンジオタクチックポリスチレンを含んでいたり、ポリプロピレンを含んでいる場合には、そのポリプロピレンの融点が166℃以上(好ましくは168℃以上)であると圧着しにくい。
【0016】
他方、接着性繊維は補助極細繊維を接着して補助極細繊維を固定するとともに、第2補助濾過不織布(湿式不織布)に強度を付与できるように、補助極細繊維よりも太く、繊維径が8μm以上である。また、接着性繊維によって補助極細繊維の配列が乱されて大きな開孔径を形成することがないように、繊維径が20μm未満である。接着性繊維のより好ましい繊維径は8μm以上、18μm以下である。この接着性繊維は単一成分からなるものであっても良いが、接着後においても繊維形態を維持して強度的に優れるように、2種類以上の樹脂成分からなるのが好ましい。この2種類以上の樹脂成分の配置状態としては、例えば、繊維横断面形状が芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などであることができる。これらの中でも、接着に関与できる樹脂(接着成分)の多い芯鞘型、偏芯型又は海島型であるのが好ましい。この接着性繊維は補助極細繊維と同様の樹脂から構成することができるが、補助極細繊維を接着させない場合には、接着性繊維を接着させる際の熱によって補助極細繊維までも溶融させることがないように、接着性繊維の接着成分の融点は補助極細繊維のいずれの樹脂成分の融点よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。他方、補助極細繊維の接着成分も接着させる場合には、接着性繊維の接着成分の接着と補助極細繊維の接着成分の接着とを同時に実施できるように、接着性繊維の接着成分と補助極細繊維の接着成分との融点差は35℃以内であるのが好ましく、30℃以内であるのがより好ましい。なお、接着性繊維の接着成分の融点と補助極細繊維の接着成分の融点(複数種類の補助極細繊維が存在する場合には、接着性繊維の接着成分の融点に最も近い融点を有する樹脂成分の融点)との差が10℃以上、35℃以内である場合には、補助極細繊維の接着成分を接着させることもできるし、補助極細繊維の接着成分を接着させないこともできる。また、補助極細繊維が接着成分と非接着成分とを含む場合には、補助極細繊維が繊維形状を維持できるように、接着性繊維の接着成分の融点は補助極細繊維の非接着成分の融点よりも10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。更に、接着性繊維が2種類以上の樹脂成分からなる場合には、接着性繊維を接着させる際の熱によっても接着性繊維が繊維形状を維持できるように、接着成分以外の樹脂成分(非接着成分)の融点は接着成分の融点よりも10℃以上高いのが好ましく、20℃以上高いのがより好ましい。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)は前述のような補助極細繊維及び接着性繊維を含んでおり、これらの繊維の質量比率は第2筒状フィルタの具体的用途や要求物性などによって適宜変化するが、(補助極細繊維):(接着性繊維)=30〜70:70〜30であるのが好ましい。補助極細繊維量が30mass%以上であれば、孔径分布の狭い第2補助濾過不織布(湿式不織布)を得ることができ、他方、接着性繊維量が30mass%以上であれば、十分に補助極細繊維を固定することができるため補助極細繊維の脱落が生じにくく、しかも第2補助濾過不織布(湿式不織布)に強度を付与することができる。より好ましい質量比率は(補助極細繊維):(接着性繊維)=35〜65:65〜35である。なお、これらの質量比率は第2補助濾過不織布(湿式不織布)の質量全体に対する比率をいう。
【0017】
この第2補助濾過不織布(湿式不織布)は前述のような補助極細繊維及び接着性繊維以外に、繊維径が4μmを越え、8μm未満の繊維(以下、「中間繊維径繊維」ということがある)を含んでいることもできる。この中間繊維径繊維の含有量は補助極細繊維及び接着性繊維との関係から、40mass%以下であるのが好ましく、30mass%以下であるのがより好ましい。つまり、(補助極細繊維):(接着性繊維):(中間繊維径繊維)=30〜70:70〜30:0〜40であるのが好ましく、(補助極細繊維):(接着性繊維):(中間繊維径繊維)=35〜65:65〜35:0〜30であるのがより好ましい。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)を構成する繊維(例えば、補助極細繊維、接着性繊維、中間繊維径繊維など)は未延伸状態であることもできるが、強度的に優れているように、ノズルから押し出した繊維を延伸機などの機械的作用によって延伸した繊維であるのが好ましい。また、第2補助濾過不織布(湿式不織布)を構成する繊維(例えば、補助極細繊維、接着性繊維、中間繊維径繊維など)の繊維長は特に限定するものではないが、繊維長が短いほど繊維の自由度が高く、均一に分散させることが可能であるため、第2補助濾過不織布(湿式不織布)を構成する繊維の繊維長は0.5〜30mmであるのが好ましい。好ましくは、第2補助濾過不織布(湿式不織布)を構成する繊維(例えば、補助極細繊維、接着性繊維、中間繊維径繊維など)は繊維長が0.5〜30mmに切断されている。なお、繊維長はJIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さをいう。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)は前述のような繊維から構成された、最大孔径が平均流量孔径の2倍以下(より好ましくは1.9倍以下)の、孔径分布の狭いものである。なお、理想的には最大孔径が平均流量孔径の1倍、つまり全孔径が同じ大きさである。この「最大孔径」はポロメータ(Polometer、コールター(Coulter)社製)を用いてバブルポイント法により測定される値をいう。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)を構成する繊維(例えば、補助極細繊維、接着性繊維、中間繊維径繊維など)が実質的に二次元的に配置していると、繊維の配置が規則的であることによって、より一層孔径分布を狭くすることができるため好適な態様である。なお、「繊維が実質的に二次元的に配置している」とは、不織布の厚さ方向に向いた繊維が実質的に配置していない状態をいい、例えば、湿式法により形成した繊維ウエブに対して、水流などの流体流を作用させることなく、接着のみによって結合した場合に得ることのできる状態である。
【0018】
この第2筒状フィルタの第2補助濾過不織布の面密度は5〜200g/m2程度であるのが好ましく、厚さは0.005〜2mm程度であるのが好ましく、見掛密度は0.05〜0.7g/cm3程度であるのが好ましい。この第2筒状フィルタにおける第2補助濾過不織布の平均流量孔径は、前述のような主濾過不織布の平均流量孔径よりも大きいものである。その程度は濾過する流体などによって適宜変化するため、特に限定するものではないが、主濾過不織布よりも2〜40μm程度大きいのが好ましく、2〜20μm程度大きいのがより好ましい。より具体的には、前述のように主濾過不織布の平均流量孔径が0.5〜40μm程度であるのが好ましく、0.5〜20μm程度であるのがより好ましいため、第2補助濾過不織布の平均流量孔径は2.5〜80μmであるのが好ましく、2.5〜60μmであるのがより好ましく、2.5〜40μmであるのが更に好ましい。
【0019】
このような第2補助濾過不織布(湿式不織布)は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、実質的にフィブリル化していない、少なくとも補助極細繊維と接着性繊維とを用意する。この補助極細繊維として、繊維径がほぼ同じもの、つまり、補助極細繊維の繊維径分布の標準偏差値を、補助極細繊維の繊維径の平均値で除した値が0.2以下(好ましくは0.18以下、0以上)の補助極細繊維を使用することにより、孔径分布が狭い第2補助濾過不織布(湿式不織布)を製造しやすくなる。なお、補助極細繊維や接着性繊維などの繊維長は0.5〜30mmであるのが好ましい。また、切断する際に圧着しにくい繊維(例えば、補助極細繊維など)を使用すると、繊維の分散性が向上して、孔径分布の狭い第2補助濾過不織布(湿式不織布)を製造しやすくなる。次いで、これらの繊維を使用して、常法の湿式法により繊維ウエブを形成する。使用する繊維は実質的にフィブリル化していないため、分散浴である水中に繊維を均一に分散させることができ、また繊維を抄き上げるワイヤーに繊維が絡みつくということもないため、地合いの優れる所望の第2補助濾過不織布(湿式不織布)を製造することができる。この繊維ウエブを形成する際、繊維の均一な分散状態を維持するために増粘剤を加えたり、水と繊維との親和性を高めるために界面活性剤を加えたり(特に、水との親和性の低い樹脂成分からなる繊維を用いる場合)、攪拌等によって生じる気泡を取り除くために消泡剤を加えると、繊維の分散性が向上して、孔径分布の狭い第2補助濾過不織布(湿式不織布)を製造しやすくなる。次いで、この繊維ウエブを乾燥すると同時、又は乾燥した後に、接着性繊維の接着成分が接着可能(場合により補助極細繊維の接着成分も接着可能)な熱(必要により圧力も)を作用させることにより、接着性繊維の接着成分(場合により補助極細繊維の接着成分も)を接着して、第2補助濾過不織布(湿式不織布)を得ることができる。このように繊維ウエブに水流などの流体流を作用させることなく、接着性繊維の接着成分(場合により補助極細繊維の接着成分)を接着させて第2補助濾過不織布(湿式不織布)を製造すると、繊維が二次元的に配置した状態にあるため、孔径分布の狭い第2補助濾過不織布(湿式不織布)を製造しやすくなる。
【0020】
本発明の第3筒状フィルタは前述のような主濾過不織布と、この主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きいメルトブロー不織布からなる補助濾過不織布(以下、第3補助濾過不織布ということがある)とを含んでいる。この第3補助濾過不織布は強い延伸作用を受けていないメルトブロー繊維から構成されているため、加熱処理及び加圧処理を実施することによって、平均流量孔径の調整を容易に実施することができ、各種濾過性能を有する第3筒状フィルタを容易に製造することができる。この第3筒状フィルタの第3補助濾過不織布の面密度は5〜200g/m2程度であるのが好ましく、厚さは0.005〜2mm程度であるのが好ましく、見掛密度は0.05〜0.7g/cm3程度であるのが好ましい。この第3筒状フィルタにおける第3補助濾過不織布の平均流量孔径は前述のような主濾過不織布の平均流量孔径よりも大きいものである。その程度は濾過する流体などによって適宜変化するため、特に限定するものではないが、主濾過不織布よりも2〜40μm程度大きいのが好ましく、2〜20μm程度大きいのがより好ましい。より具体的には、前述のように主濾過不織布の平均流量孔径が0.5〜40μm程度であるのが好ましく、0.5〜20μm程度であるのがより好ましいため、第3補助濾過不織布の平均流量孔径は2.5〜80μmであるのが好ましく、2.5〜60μmであるのがより好ましく、2.5〜40μmであるのが更に好ましい。この「メルトブロー不織布」はメルトブロー法により得られる不織布をいい、例えば、オリフィス径0.1〜0.5mm、ピッチ0.3〜1.2mmでオリフィスが配置されたノズルピースを温度220〜370℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.02〜1.5g/minの割合で樹脂を吐出し、この吐出した樹脂に対して、温度220〜400℃、かつ質量比で樹脂吐出量の5〜2,000倍量の気体を作用させてメルトブロー繊維を形成した後、ロールやコンベアなどの捕集体により捕集して製造することができる。なお、このメルトブロー不織布の厚さ方向と直交する方向において、メルトブロー繊維の多い部分と少ない部分とが混在していると、濾過精度を損なうことなく濾過流量を増加させることができるため好適である。この好適であるメルトブロー繊維の多い部分と少ない部分とが混在しているメルトブロー不織布は、例えば、メルトブロー繊維を吐出するノズルピースとメルトブロー繊維を捕集する捕集体(例えば、コンベア、ロールなど)との距離を長くしたり、メルトブロー繊維を一対のロール(捕集体)間(特に、ロール間の距離が変化する一対のロール、ロール間の相対速度が変化する一対のロール、少なくとも一方が偏心ロールである一対のロール)で捕集したり、吐出した樹脂に対して作用させる気体の流量をオリフィスごとに変えたり、或いは吐出した樹脂に対して作用させる気体の流量を経時的に変化させて、製造することができる。なお、メルトブロー繊維は前述のような混在不織布を構成するメルトブロー繊維と同様の樹脂成分1種類以上から構成することができる。メルトブロー繊維が2種類以上の樹脂成分からなる場合、その横断面形状は、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、或いは多重バイメタル型であることができる。このメルトブロー不織布はメルトブロー繊維を捕集体で捕集して集積したものをそのまま使用しても良いし、平均流量孔径を調節するために、加熱処理及び/又は加圧処理を実施したものを使用しても良い。加熱処理及び加圧処理を実施する場合、加熱処理と加圧処理とを同時に実施しても良いし、加熱処理を実施した後に加圧処理を実施しても良い。加熱温度はいずれの場合も、メルトブロー繊維(メルトブロー繊維が融点の異なる2種類以上の樹脂成分からなる場合には、最も低い融点を有する樹脂)の融点より5〜120℃低い温度であるのが好ましく、加圧処理はいずれの場合も線圧力が0.1〜4kN/cmの条件下で実施するのが好ましい。
【0021】
本発明の筒状フィルタを構成する補助濾過不織布(第1補助濾過不織布、第2補助濾過不織布、第3補助濾過不織布、以下同様)は前述のような構成からなるが、本発明の補助濾過不織布にスパンボンド不織布が複合されたものを補助濾過不織布として使用しても良い。
【0022】
本発明の筒状フィルタ(第1筒状フィルタ、第2筒状フィルタ、第3筒状フィルタ、以下同様)は前述のような主濾過不織布と前述のような各種の補助濾過不織布とが隣接して積層された状態にある。この補助濾過不織布は主濾過不織布の片面のみに隣接していても良いし、両面に隣接していても良い。例えば、いわゆるデプス型筒状フィルタの場合には、主濾過不織布の片面のみに対して補助濾過不織布が隣接していれば十分であり、いわゆるプリーツ型筒状フィルタの場合には、主濾過不織布の両面に補助濾過不織布が隣接しているのが好ましい。なお、補助濾過不織布が主濾過不織布の両面に隣接している場合には、平均流量孔径の点において同じ補助濾過不織布が隣接していても良いし、平均流量孔径の点において異なる補助濾過不織布が隣接していても良い。なお、主濾過不織布と補助濾過不織布とは結合した状態にあっても、結合していない状態にあっても良い。前者のように結合した状態としては、例えば、主濾過不織布と補助濾過不織布とを積層した後に加熱処理、又は加熱処理及び加圧処理により接着一体化した状態、超音波処理により一体化した状態、ニードルや流体流(好ましくは水流)により絡合一体化した状態、接着剤により接着一体化した状態などがある。また、主濾過不織布に隣接して積層されている補助濾過不織布は1種類である必要はなく、2種類以上の補助濾過不織布が積層されていても良い。このように2種類以上の補助濾過不織布が積層されている場合、流体の流入側から流体の流出側へ順に平均流量孔径の小さい補助濾過不織布となるように積層されているのが好ましい。なお、2種類以上の補助濾過不織布が積層されている場合、これら補助濾過不織布は結合した状態にあっても、結合していない状態にあっても良い。前者のように結合した状態としては、例えば、加熱処理、又は加熱処理及び加圧処理により接着一体化した状態、超音波処理により一体化した状態、ニードルや流体流(好ましくは水流)により絡合一体化した状態、接着剤により接着一体化した状態などがある。
【0023】
本発明の筒状フィルタは前述のような主濾過不織布と補助濾過不織布とが隣接して積層された状態で、多孔筒の周囲に配置されたものである。この配置状態としては、例えば、主濾過不織布と補助濾過不織布とが多孔筒の周囲に巻回された状態(いわゆるデプス型)や、主濾過不織布と補助濾過不織布とが襞折り加工された状態で多孔筒の周囲に配置された状態(いわゆるプリーツ型)、或いはこれら両方の状態を有する場合、などがある。
【0024】
前者のデプス型筒状フィルタにおいては、主濾過不織布と補助濾過不織布とが多孔筒の周囲に巻回されているが、その巻回数は特に限定されるものではない。なお、主濾過不織布と補助濾過不織布の巻回数は同じであっても異なっていても良い。つまり、主濾過不織布と補助濾過不織布とが全周にわたって隣接している必要はなく、一部の領域においてのみ隣接している状態にあっても良い。主濾過不織布と補助濾過不織布とが一部の領域においてのみ隣接している場合には、処理流体の流出側において主濾過不織布と補助濾過不織布とが隣接しているのが好ましい。つまり、処理流体が筒状フィルタの外側から流入して内側へと流出する場合には、筒状フィルタの内側の層において主濾過不織布と補助濾過不織布とが隣接して巻回されているのが好ましく、逆に、処理流体が筒状フィルタの内側から流入して外側へと流出する場合には、筒状フィルタの外側の層において主濾過不織布と補助濾過不織布とが隣接して巻回されているのが好ましい。この主濾過不織布及び/又は補助濾過不織布はどのように巻回されていても良く、平巻き状に巻回されていても良いし、螺旋状に巻回されていても良い。また、デプス型の場合、主濾過不織布に隣接して積層されている補助濾過不織布は1種類である必要はなく、平均流量孔径の点で相違する2種類以上の補助濾過不織布が、主濾過不織布から流体流入側へ順に平均流量孔径の大きい補助濾過不織布となるように積層されているのが好ましい。このように積層されていることによって、更に濾過寿命が長くなる。より具体的には、主濾過不織布よりも平均流量孔径が2〜40μm程度大きい補助濾過不織布が主濾過不織布から流体流入側へ順に積層されているのが好ましい。なお、主濾過不織布と補助濾過不織布とが隣接して巻回されている領域とは異なる領域に、前記補助濾過不織布よりも平均流量孔径が2〜40μm程度大きい粗濾過繊維シートが巻回されていたり、襞折り加工したものが配置されていても良い。このような粗濾過繊維シートを配置されていることにより、更に濾過寿命が長くなる。この粗濾過繊維シートは補助濾過不織布と結合した状態にあっても、結合していない状態にあっても良い。前者のように結合した状態としては、例えば、少なくとも加熱処理する(好ましくは加熱処理及び加圧処理する)ことにより接着一体化した状態、超音波シールにより一体化した状態、ニードルや流体流(好ましくは水流)により絡合一体化した状態、接着剤により接着一体化した状態、などがある。この粗濾過繊維シートは補助濾過不織布(2種類以上ある場合には、最も平均流量孔径の大きい補助濾過不織布)よりも平均流量孔径の大きい(2〜40μm程度)ものであれば良く、例えば、第2補助濾過不織布と同様にして製造した湿式不織布、第3補助濾過不織布と同様にして製造したメルトブロー不織布、スパンボンド不織布、第1補助濾過不織布と同様にして製造した混在不織布、或いは主濾過不織布と同様にして製造した不織布などを使用することができる。また、主濾過不織布と補助濾過不織布とが巻回された領域以外に、主濾過不織布及び/又は補助濾過不織布が襞折り加工された状態で配置された領域を有していても良い。
【0025】
本発明の別の筒状フィルタは、主濾過不織布と補助濾過不織布とが襞折り加工された状態で多孔筒の周囲に配置されたプリーツ型筒状フィルタである。このプリーツ型筒状フィルタの襞折り数は用途や必要物性によって適宜設定すれば良く、特に限定されるものではない。プリーツ型筒状フィルタにおいては、主濾過不織布と補助濾過不織布とが襞折り加工されていると、主濾過不織布の表面同士が密着して濾過面積を減ずる可能性があるばかりでなく、裏面同士が密着して濾過面積を減ずる可能性があるため、主濾過不織布の両面に補助濾過不織布が積層されているのが好ましい。このように主濾過不織布の両面に補助濾過不織布が積層されている場合、同じ平均流量孔径を有する補助濾過不織布が主濾過不織布の表裏面に積層されていても良いし、異なる平均流量孔径を有する補助濾過不織布が主濾過不織布の表裏面に積層されていても良い。また、プリーツ型筒状フィルタの場合も、主濾過不織布に隣接して積層されている補助濾過不織布は1種類である必要はなく、平均流量孔径の点で相違する2種類以上の補助濾過不織布が主濾過不織布から流体流入側へ順に平均流量孔径の大きい補助濾過不織布となるように積層されていても良い。このように補助濾過不織布が積層されていると、更に濾過寿命が長くなる。より具体的には、主濾過不織布から流体流入側へ順に平均流量孔径が2〜40μm程度づつ大きい補助濾過不織布が積層されているのが好ましい。このように2種類以上の補助濾過不織布が積層されている場合、主濾過不織布の両面に積層されていても良いし、片面のみに積層されていても良いが、主濾過不織布の片面にのみ2種類以上の補助濾過不織布が積層されている場合であっても、主濾過不織布の他面には主濾過不織布同士の密着を抑制できるように、補助濾過不織布が1枚積層されているのが好ましい。なお、主濾過不織布の片面のみに2種類以上の補助濾過不織布が積層されている場合、2種類以上の補助濾過不織布が積層された側が処理流体の流入側となるように配置されているのが好ましい。なお、主濾過不織布と補助濾過不織布とが襞折り加工された状態で配置されている領域とは異なる領域に、前記補助濾過不織布よりも平均流量孔径が2〜40μm程度大きい粗濾過繊維シートが巻回された領域を有していても良い。このような粗濾過繊維シートが巻回されていると、濾過寿命が更に長くなる。この粗濾過繊維シートは補助濾過不織布と結合した状態にあっても、結合していない状態にあっても良い。前者のように結合した状態としては、例えば、少なくとも加熱処理する(好ましくは加熱処理及び加圧処理する)ことにより接着一体化した状態、超音波シールにより一体化した状態、ニードルや流体流(好ましくは水流)により絡合一体化した状態、接着剤により接着一体化した状態、などがある。この粗濾過繊維シートは補助濾過不織布(2種類以上ある場合には、最も平均流量孔径の大きい補助濾過不織布)よりも平均流量孔径の大きい(2〜40μm程度)ものであれば良く、例えば、第2補助濾過不織布と同様にして製造した湿式不織布、第3補助濾過不織布と同様にして製造したメルトブロー不織布、スパンボンド不織布、第1補助濾過不織布と同様にして製造した混在不織布、或いは主濾過不織布と同様にして製造した不織布などを使用することができる。また、主濾過不織布と補助濾過不織布とが襞折り加工された状態で配置されている領域以外に、主濾過不織布及び/又は補助濾過不織布が巻回された領域を有していても良い。なお、襞折り加工は襞折り加工機により実施することができ、その山高さ、山間隔などは使用用途や所望物性などによって適宜設定することができる。
【0026】
本発明の円筒状フィルタを構成する多孔筒は、従来から公知の材料、例えば金属やプラスチックから構成されていることができる。また、本発明の筒状フィルタは上述のような基本構成からなるが、処理流体が散逸するのを防ぐために、筒状フィルタの両端がキャップで封鎖されていたり、筒状フィルタの形状を保持できるように、筒状フィルタの最外表面に、金属やプラスチックからなる多孔網筒が設置されているなど、従来から採られている構成が付加されていても良い。
【0027】
本発明の筒状フィルタは、例えば、食品・飲料、電子、医薬、化学、水処理、写真、塗料、メッキ、染色、機械・鉄鋼など各製造プロセスにおいて使用する液体、又は使用した液体などの流体の濾過に好適に使用することができる。
【0028】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
ポリプロピレン成分(融点:164℃)と高密度ポリエチレン成分(融点:131℃)とからなる16分割可能(横断面形状:オレンジ型)な分割性繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:45mm、横断面形状が略三角形で、繊維径が4.4μmのポリプロピレン極細繊維8本と、横断面形状が略三角形で、繊維径が4.4μmの高密度ポリエチレン極細繊維8本とに分割可能)を用意した。他方、接着性繊維として、芯成分がポリプロピレン(融点:165℃)からなり、鞘成分(接着成分)が低密度ポリエチレン(融点:106℃)からなる芯鞘型複合接着性繊維(繊維径:17.7μm、繊維長51mm)を用意した。次いで、前記分割性繊維と芯鞘型複合接着性繊維とを質量比80:20の割合で混合した後、カード機により繊維ウエブを形成した。次いで、この繊維ウエブを非開孔部の太さが0.15mmの支持体で支持した状態で、この繊維ウエブに対して、ノズル径0.13mm、ピッチ0.6mmで一列にノズルが配置されたノズルプレートから、圧力14.7MPaの水流を両面交互に2回ずつ噴出して、前記分割性繊維を分割すると同時に発生した極細繊維を絡合して、面密度60g/m2、厚さ0.34mmの分割絡合不織布を製造した。次いで、この分割絡合不織布を金属ロールと樹脂ロールとからなり、温度60℃に設定されたカレンダーロール間(線圧力:1.9kN/cm)を通過させて、面密度60g/m2、厚さ0.12mm、見掛密度0.5g/cm3、平均流量孔径2.3μmの主濾過不織布を製造した。この主濾過不織布は分割していない分割性繊維を、主濾過不織布の厚さ方向における中心部付近に含むものであった。
【0030】
他方、オリフィス径0.2mm、ピッチ0.8mmでオリフィスが配置されたノズルピースを温度320℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.06g/minの割合でポリプロピレン樹脂を吐出し、この吐出したポリプロピレン樹脂に対して、温度330℃、かつ質量比で樹脂吐出量の70倍量の空気を作用させて、重力の作用する方向と同じ方向に平均繊維径1.8μmのポリプロピレンメルトブロー繊維2(融点:160℃)の流れを形成した。このポリプロピレンメルトブロー繊維2の流れに対して直角方向から、図7に示すような2本の開繊シリンダ31をハウジング32内に収納し、しかもエアノズル33を備えた開繊機3から、芯成分がポリプロピレン樹脂(融点:160℃)からなり、鞘成分がポリエチレン樹脂(融点:135℃)からなる、繊維径21.6μm、繊維長38mmの芯鞘型熱可塑性延伸短繊維4を供給し、前記ポリプロピレンメルトブロー繊維2と混合した。なお、ポリプロピレンメルトブロー繊維2と芯鞘型熱可塑性延伸短繊維4との混合質量比率は、(ポリプロピレンメルトブロー繊維2):(芯鞘型熱可塑性延伸短繊維4)=65:35であった。このポリプロピレンメルトブロー繊維2と芯鞘型熱可塑性延伸短繊維4とが混合された繊維群を、コンベヤーベルトで捕集して混在繊維ウエブを形成した。なお、コンベヤーベルトはメッシュ体からなり、ベルトの捕集面とは反対側から気体吸引装置により吸引して、混在繊維ウエブを構成する繊維の乱れを防いだ。次いで、この混在繊維ウエブを雰囲気温度145℃のドライヤーにより3分間加熱処理を実施し、面密度50g/m2、厚さ0.33mm、見掛密度0.15g/cm3、平均流量孔径13.7μmの混在不織布(第1補助濾過不織布)を製造した。
【0031】
次いで、前記主濾過不織布を2枚の前記第1補助濾過不織布で挟んだ状態で、襞折り加工機により、折り幅14mmで襞折り加工を実施して積層濾過材を製造した。次いで、ポリプロピレン製多孔筒の周囲に、山数が100山となるように、前記積層濾過材を配置し、次いでこの積層濾過材の両端を超音波ウエルダー加工機により融着した。そして、多孔筒の長さ方向における両端面にガスケットを接着して、内径30mm、外径69mm、長さ250mmのプリーツ型筒状フィルタを製造した。
【0032】
(実施例2)
海島型繊維として、ポリ−L−乳酸(以下、「PLLA」と表記する)からなる海成分中に、ポリプロピレンからなる島成分が25個存在する、複合紡糸法により得た繊維(繊度:1.65dtex、繊維長:3mm)を用意した。次いで、この海島型繊維を、温度80℃、10mass%の水酸化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬し、海島型繊維の海成分であるPLLAを抽出除去して、ポリプロピレン補助極細繊維(平均繊維径:1.8μm、繊維径分布の標準偏差値:0.15、融点:172℃、繊維長3mmに切断されたもの、フィブリル化していない、延伸されている、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する)を得た。他方、接着性繊維として、芯成分がポリプロピレン(融点:158℃)からなり、鞘成分(接着成分)が高密度ポリエチレン(融点:131℃)からなる芯鞘型複合接着性繊維(繊維径:11.8μm、繊維長10mmに切断されたもの、フィブリル化していない、延伸されている)を用意した。次いで、前記ポリプロピレン補助極細繊維と芯鞘型複合接着性繊維とを質量比50:50の割合で水からなる分散浴に分散させ、抄紙機により抄造した後、温度140℃で乾燥すると同時に芯鞘型複合接着性繊維の接着成分のみを接着させて、面密度38g/m2、厚さ0.34mm、見掛密度0.11g/cm3、平均流量孔径12.1μmの湿式不織布(第2補助濾過不織布)を製造した。この第2補助濾過不織布(湿式不織布)を構成する繊維は二次元的に配置しており、また最大孔径は平均流量孔径の1.7倍であった。また、実施例1と全く同様にして製造した主濾過不織布を用意した。
【0033】
次いで、前記主濾過不織布を2枚の前記第2補助濾過不織布で挟んだ状態で、襞折り加工機により折り幅14mmで襞折り加工を実施して積層濾過材を製造した。次いで、ポリプロピレン製多孔筒の周囲に、山数が100山となるように前記積層濾過材を配置し、次いでこの積層濾過材の両端を超音波ウエルダー加工機により融着した。そして、多孔筒の長さ方向における両端面にガスケットを接着して、内径30mm、外径69mm、長さ250mmのプリーツ型筒状フィルタを製造した。
【0034】
(実施例3)
常法のスパンボンド法により製造した、面密度15g/m2、厚さ0.2mm、平均繊維径37μm、平均流量孔径40μmのポリプロピレン製スパンボンド不織布を用意した。他方、オリフィス径0.3mm、ピッチ0.8mmでオリフィスが配置されたノズルピースを温度330℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.33g/minの割合でポリプロピレン樹脂を吐出し、この吐出したポリプロピレン樹脂に対して、温度330℃、かつ質量比で繊維吐出量の220倍量の空気を作用させてメルトブロー繊維(融点:162℃)を形成した後、コンベア上に集積させて(ノズルピースとコンベアとの距離:49cm)、メルトブロー不織布を製造した。このメルトブロー不織布は、厚さ方向と直交する方向において、メルトブロー繊維量の多い部分と少ない部分とが混在するものであった。次いで、このメルトブロー不織布を雰囲気温度130℃のドライヤーにより加熱処理を実施した後、線圧力0.2kN/cmの条件下で加圧処理を実施して、面密度30g/m2、厚さ0.17mm、見掛密度0.18g/cm3、平均流量孔径16μmの第3補助濾過不織布を製造した。次いで、前記ポリプロピレン製スパンボンド不織布と前記第3補助濾過不織布とを超音波シールして一体化し、面密度45g/m2、厚さ0.36mm、見掛密度0.13g/cm3、平均流量孔径14μm、平均繊維径2.1μmの第3複合補助濾過不織布を製造した。また、実施例1と全く同様にして製造した主濾過不織布を用意した。
【0035】
次いで、前記主濾過不織布を2枚の前記第3複合補助濾過不織布で挟んだ状態で、襞折り加工機により折り幅14mmで襞折り加工を実施して積層濾過材を製造した。次いで、ポリプロピレン製多孔筒の周囲に、山数が100山となるように前記積層濾過材を配置し、次いでこの積層濾過材の両端を超音波ウエルダー加工機により融着した。そして、多孔筒の長さ方向における両端面にガスケットを接着して、内径30mm、外径69mm、長さ250mmのプリーツ型筒状フィルタを製造した。
【0036】
(比較例1)
常法のスパンボンド法により製造した、面密度25g/m2、厚さ0.24mm、平均繊維径37μm、平均流量孔径40μmのポリプロピレン製スパンボンド不織布を用意した。他方、実施例1と全く同様にして製造した主濾過不織布を用意した。
【0037】
次いで、前記主濾過不織布を2枚の前記ポリプロピレン製スパンボンド不織布で挟んだ状態で、襞折り加工機により折り幅14mmで襞折り加工を実施して積層濾過材を製造した。次いで、ポリプロピレン製多孔筒の周囲に、山数が100山となるように前記積層濾過材を配置し、次いでこの積層濾過材の両端を超音波ウエルダー加工機により融着した。そして、多孔筒の長さ方向における両端面にガスケットを接着して、内径30mm、外径69mm、長さ250mmのプリーツ型筒状フィルタを製造した。
【0038】
(実施例4)
実施例1と同様にして製造した主濾過不織布(60cm長)、及び実施例1と同様にして製造した混在不織布(第1補助濾過不織布、320cm長)を用意した。また、メルトブロー法により製造した、面密度が80g/m2で平均流量孔径3μmのメルトブロー不織布A(40cm長)、面密度が80g/m2で平均流量孔径5μmのメルトブロー不織布B(40cm長)、及び面密度が80g/m2で平均流量孔径10μmのメルトブロー不織布C(40cm長)をそれぞれ用意した。
【0039】
次いで、前記第1補助濾過不織布(混在不織布)の左端から120cmの所と前記主濾過不織布の左端とが一致するように、前記混在不織布の上に主濾過不織布を積層し、次いで、前記主濾過不織布の右端とメルトブロー不織布Aの左端とが一致するように、前記混在不織布の上に前記メルトブロー不織布Aを積層し、次いで、前記メルトブロー不織布Aの右端とメルトブロー不織布Bの左端とが一致するように、前記混在不織布の上に前記メルトブロー不織布Bを積層し、そして、前記メルトブロー不織布Bの右端とメルトブロー不織布Cの左端とが一致するように、前記混在不織布の上に前記メルトブロー不織布Cを積層して、濾過材積層体を製造した。
【0040】
次いで、ポリプロピレン製多孔筒の周囲に、前記濾過材積層体の主濾過不織布等を積層した側が内側となるように、前記濾過材積層体の左端から平巻き状に巻回し、内径3cm、外径6.5cm、長さ25cmのデプス型筒状フィルタを製造した。
【0041】
(比較例2)
実施例4で用いた第1補助濾過不織布に代えて、比較例1と同じポリプロピレン製スパンボンド不織布を使用したこと以外は、実施例4と全く同様にして、内径3cm、外径6.5cm、長さ25cmのデプス型カートリッジフィルタを製造した。
【0042】
実施例1〜4及び比較例1〜2の筒状フィルタの性能を、次のようにして調べた。
1.通水抵抗
各々の筒状フィルタに流量25L/分で通水した時の圧力損失を測定し、通水抵抗とした。この結果は表1に示す通りであった。
2.濾過効率
JIS11種の塵埃を水に分散させた濃度10ppmの試験液を均一に攪拌しながら、各々の筒状フィルタに所定流量で通水(プリーツ型の場合には25L/分、デプス型の場合には10L/分)して、通水1分後の濾液を採取した。この濾液及び濾過前の試験液に含まれる各粒径別の粒子数を粒度分布測定機(コールター(COULTER)社製、コールターマルチサイザーツー(COULTERMultisizerII))により測定した。次いで、それぞれの粒径における濾過効率を下記の式から算出し、100%の濾過効率が得られる粒径をその筒状フィルタの濾過精度とした。この結果は表1に示す通りであった。
濾過効率[%]={(A−B)/A}×100
A:濾過前の粒子数、B:濾過後の粒子数
3.濾過寿命
JIS11種の塵埃を水に分散させた所定濃度の試験液(プリーツ型の場合には20ppm、デプス型の場合には10ppm)を均一に攪拌しながら、各々の筒状フィルタに所定流量で通水(プリーツ型の場合には25L/分、デプス型の場合には10L/分)させた。圧力損失を各通水量に対して順次測定し、初期圧力との差圧が所定値(プリーツ型の場合には200kPa、デプス型の場合には100kPa)になるまでに処理された総通水量を濾過寿命とした。この結果は表1に示す通りであった。
【0043】
【表1】

この表1から明らかなように、本発明のプリーツ型筒状フィルタ及びデプス型筒状フィルタは、いずれも通水抵抗が低く、濾過精度及び濾過寿命の優れるものであることがわかった。また、本発明の筒状フィルタに使用した主濾過不織布及び補助濾過不織布からなる積層濾過材は主濾過不織布を損傷することなく、加工(襞折り加工、巻回加工)することができるものであった。このことは、表1の濾過精度を損なうことなく、濾過寿命が長く、優れた濾過性能を有するという点からも、加工時に主濾過不織布が損傷していないことがわかった。また、本発明の積層濾過材は襞折り加工時や巻回加工時の取り扱い作業性に優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明で使用できる分割性繊維の模式的断面図
【図2】本発明で使用できる別の分割性繊維の模式的断面図
【図3】本発明で使用できる更に別の分割性繊維の模式的断面図
【図4】本発明で使用できる更に別の分割性繊維の模式的断面図
【図5】本発明で使用できる更に別の分割性繊維の模式的断面図
【図6】第1補助濾過不織布の製造工程の一例を表す工程図
【図7】開繊機の一例の断面模式図
【符号の説明】
【0045】
1 メルトブロー装置
2 メルトブロー繊維
3 開繊機
31 開繊シリンダ
32 ハウジング
33 エアノズル
4 熱可塑性延伸繊維
5 捕集体
6 第1補助濾過不織布
A 分割性繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の樹脂成分からなり、外力により分割可能な分割性繊維から発生した2種類以上の極細繊維を含む主濾過不織布と、実質的にフィブリル化していない、繊維径20μm未満の繊維から製造されたものであり、前記繊維として、繊維径が4μm以下の極細繊維と、繊維径が8μm以上、20μm未満の接着した接着性繊維とを含み、しかも最大孔径が平均流量孔径の2倍以下、かつ前記主濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい湿式不織布からなる補助濾過不織布とを含み、前記主濾過不織布と前記補助濾過不織布とが隣接して積層された状態で、多孔筒の周囲に配置されていることを特徴とする筒状フィルタ。
【請求項2】
補助濾過不織布を構成する前記極細繊維の繊維径分布の標準偏差値を、前記極細繊維の繊維径の平均値で除した値が0.2以下であることを特徴とする、請求項に記載の筒状フィルタ。
【請求項3】
多孔筒の周囲に、前記主濾過不織布と前記補助濾過不織布とが巻回された状態で配置された領域を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の筒状フィルタ。
【請求項4】
多孔筒の周囲に、前記主濾過不織布と前記補助濾過不織布とが襞折り加工された状態で配置された領域を有することを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の筒状フィルタ。
【請求項5】
前記補助濾過不織布よりも平均流量孔径の大きい粗濾過繊維シートが配置された領域を有することを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の筒状フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−18430(P2008−18430A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227134(P2007−227134)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【分割の表示】特願2000−148980(P2000−148980)の分割
【原出願日】平成12年5月19日(2000.5.19)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】