説明

筒状摺動部材の気密構造

【課題】内筒と外筒との間隙の調整が簡単で、しかも気密性の保持を確実に行うことができ、しかも磨耗による粉塵等を周辺に散逸させないので、粉塵等による汚染を嫌う用途にも無理なく使用することができる筒状摺動部材の気密構造を提供しようとするものである。
【解決手段】内筒と、前記内筒上に積層した弾性筒状体とからなる台座と、該台座の外側に1対のスペーサを介して所定の間隔を有するように取り付けた外筒とを有するとともに、前記1対のスペーサを弾性筒状体の両側に配置し、その上で前記弾性筒状体と外筒との間にOリングパッキンを挟みこんで、前記台座と前記外筒とが相対的に移動するのに伴って前記Oリングパッキンが前記台座の弾性筒状体上を、該弾性筒状体の長さ方向に沿って回転しつつ移動するようにしたことを特徴とする筒状摺動部材の気密構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筒状摺動部材の気密構造に関し、詳しくは容器の開口部に取り付けて開口部を開閉可能とする筒状摺動部材の気密を保持するために使用する筒状摺動部材の気密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状摺動部材の気密を保持するために使用する筒状摺動部材の気密構造としては、内筒もしくは外筒のいずれかの対向面に周溝を形成し、該周溝にOリングパッキンを収納した構造がよく知られている。
【0003】
しかしながら、内筒と外筒との間を頻繁に摺動させるような場合には、前記周溝内に収納したOリングパッキンが磨耗して気密性が早い段階で損なわれてしまったり、磨耗による粉塵等が周辺に散逸して種々の問題を生じやすいという欠点があった。
また、内筒と外筒との間に周溝を介さないで挟んたOリングパッキンにおいては、内筒と外筒との間隙の調整を非常に精確に行うことが必要であり、間隙が大きいと気密性の保持が難しく、間隙が小さいとOリングパッキンの変形が大きくなってやはり気密性が保持できないという問題が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特にありません
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の内筒と外筒との間にOリングパッキンを介在させる筒状摺動部材の気密構造においては、内筒と外筒との間隙の調整を簡単で、しかも気密性の保持を確実に行うことができる筒状摺動部材の気密構造とすることはできなかった。
また、従来の筒状摺動部材の気密構造では、磨耗による粉塵等が周辺に散逸して種々の問題が発生し、粉塵等による汚染を嫌う用途には用いることができないという問題があった。
【0006】
そこでこの発明の目的は、内筒と外筒との間隙の調整が簡単で、しかも気密性の保持を確実に行うことができ、しかも磨耗による粉塵等を周辺に散逸させないので、粉塵等による汚染を嫌う用途にも無理なく使用することができる筒状摺動部材の気密構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記した課題を達成するために、下記の技術的手段を採用した。
請求項1の筒状摺動部材の気密構造の技術的手段は、内筒と、前記内筒上に積層した弾性筒状体とからなる台座と、該台座の外側に1対のスペーサを介して所定の間隔を有するように取り付けた外筒とを有するとともに、前記1対のスペーサを弾性筒状体の両側に配置し、その上で前記弾性筒状体と外筒との間にOリングパッキンを挟みこんで、前記台座と前記外筒とが相対的に移動するのに伴って前記Oリングパッキンが前記台座の弾性筒状体上を、該弾性筒状体の長さ方向に沿って回転しつつ移動するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の筒状摺動部材の気密構造の技術的手段は、前記内筒には逆止弁が、また前記外筒には袋状のガス漏洩防止容器がそれぞれ取り付けられていることをも特徴とするものである。
【0009】
請求項3の筒状摺動部材の気密構造の技術的手段は、前記逆止弁は、一端が開放され他端がドーム状に閉じた弾性体からなる筒状構造であり、前記ドーム部にスリットが形成されて、該スリットは内側からの圧力で開き、外側からの圧力では開かないようになっていることをも特徴とするものである。
【0010】
請求項4の筒状摺動部材の気密構造の技術的手段は、前記ガス漏洩防止容器はプラスチックフィルム層と金属薄膜との積層構造からなり、前記プラスチックフィルム層部分を前記外筒に融着したことをも特徴とするものである。
【0011】
請求項5の筒状摺動部材の気密構造の技術的手段は、前記外筒は、その長さ方向に複数の周溝を形成してなることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、内筒と外筒との間隙の調整が簡単で、しかも気密性の保持を確実に行うことができ、しかも磨耗による粉塵等を周辺に散逸させないので、粉塵等による汚染を嫌う用途にも無理なく使用することができる筒状摺動部材の気密構造を提供することが可能となった。
請求項2の発明によれば、前記内筒には逆止弁が、また前記外筒には袋状のガス漏洩防止容器がそれぞれ取り付けられており、水素や酸素等のガスを含有する液体用の容器の気密構造として好適に使用することができる。
請求項3の発明によれば、前記逆止弁は、一端が開放され他端がドーム状に閉じた弾性体からなる筒状構造であり、前記ドーム部にスリットが形成されて、該スリットは内側からの圧力で開き、外側からの圧力では開かないようになっており、水素や酸素等のガスを含有する液体用の容器の気密構造として好適に使用することができる。
請求項4の発明によれば、前記ガス漏洩防止容器はプラスチックフィルム層と金属薄膜との積層構造からなり、前記プラスチックフィルム層部分を前記外筒に融着することにより、より気密性の高い水素や酸素等のガスを含有する液体用の容器の気密構造を提供することができるようになった。
請求項5の発明によれば、前記外筒は、その長さ方向に複数の周溝を形成してなり、より気密性の高い水素や酸素等のガスを含有する液体用の容器の気密構造を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の筒状摺動部材の気密構造の実施の形態を示す断面図である。
【図2】外筒の拡大断面図である。
【図3】蓋部の拡大断面図である。
【図4】キャップの拡大断面図である。
【図5】インナーノズルの拡大断面図である。
【図6】押えリングの拡大断面図である。
【図7】内筒の拡大断面図である。
【図8】逆止弁の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の筒状摺動部材の気密構造の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1ないし図8において、この発明の筒状摺動部材の気密構造11は、ガス漏洩防止容器21に筒状摺動部材22を取り付けるためのものであって、該弾性筒状摺動部材22は気密を確実に保持した状態を保てるようにしたものである。
また、ガス漏洩防止容器21はプラスチックフィルム層と金属薄膜との積層構造からなる袋状容器であり、前記プラスチックフィルム層部分を前記筒状摺動部材22を構成する外筒33の外面に融着することによって、前記筒状摺動部材22を取り付けるようになっている。
【0015】
図1に示すように前記筒状摺動部材22は、アルミ素材やその他の金属、プラスチック等からなる金属製等の内筒31(図7参照)と、前記内筒31上に積層したシリコンゴム等からなる弾性筒状体32とからなる台座30とを備えている。そして、該台座30の外側に1対のスペーサを介して所定の間隔を有するようにアルミ素材やその他の金属、プラスチック等からなる金属製等の外筒33が取り付けてある。
なお、前記1対のスペーサは内筒31外周上の弾性筒状体32の外側端部に配置した外筒33のリング状の蓋部34と、弾性筒状体32の内側端部に配置した押えリング35とからなり、その上で前記弾性筒状体32と外筒33との間にOリングパッキン36を挟みこんでいる。
【0016】
以上の構成からなる前記筒状摺動部材22は、前記台座30と前記外筒33とが相対的に移動するのに伴って、前記Oリングパッキン36が前記台座30の弾性筒状体32上を、該弾性筒状体32の長さ方向に沿って回転しつつ移動するようになっている。
そして、前記Oリングパッキン36を前記弾性筒状体32よりもやや硬いものとしておくことにより、前記Oリングパッキン36はほとんど変形することなく前記弾性筒状体32の長さ方向に沿って回転しつつ移動する。
したがって、前記台座30と前記外筒33との間の気密性が確実に保持され、しかも磨耗による粉塵等を周辺に散逸させないので、粉塵等による汚染を嫌う用途にも無理なく使用することができる。
【0017】
前記筒状摺動部材22の前記外筒33は、図2に示すようにその長さ方向に複数の周溝37が形成してある。図では3本の周溝37が形成されている。
この周溝37の深さと幅の関係は約1:3の関係となっており、前記ガス漏洩防止容器21の前記プラスチックフィルム層部分を前記筒状摺動部材22を構成する外筒33の外面に融着する際、この周溝37内にプラスチックフィルム層と金属薄膜との積層構造からなるガス漏洩防止容器21が屈曲した状態で入り込みながら融着される。
したがって、前記ガス漏洩防止容器21の前記プラスチックフィルム層部分が前記筒状摺動部材22を構成する外筒33の外面に強固に融着されて連結される。
【0018】
前記外筒33のリング状の蓋部34は、図3に示すように黒色のポリプロピレン製の成形品からなる段差41を備えた筒状構造を備え、その内側には内筒31がはめ込まれており、また前記段差41の小径部分には外筒33がはめ込まれている。42は段差41の大径部分に形成した中空部分で、外筒33へ弾性を持って取りつけることができ、かつ軽量化を図ることができるようにしたものである。
【0019】
前記内筒31の端部には、図4に示すようにつまみ52を備えた望ましくはポリエチレン等のプラスチック製キャップ51が取り付けられている。
前記キャップ51は、つまみ52よりも小径の棒状本体53を有し、その外周にはリング状の凹溝54を長さ方向に一対設けてそれぞれの凹溝54にはOリング55が収納してある。
前記キャップ51は、前記内筒31の先端部内周に取り付けたインナーノズル56に前記棒状本体53をはめ込まれ、前記Oリング55はインナーノズル56の内面と接しながらスライドして気密性を保持するようになっている。
【0020】
前記インナーノズル56は図5に示すように、望ましくはポリエチレン等のプラスチック製であり、その内周面が先端側に向けてやや拡がるテーパ状に形成され、前記キャップ51の棒状本体53を無理なくはめ込むことができるとともに、前記Oリング55との間で確実に気密性を保持することができるように構成されている。
【0021】
前記弾性筒状体32の内側端部に配置した前記押えリング35は、図6に示すように内周面に前記内筒31の後端部内周側に段差を設けて小径部57となし、この小径部57の段差部分に前記内筒31の後端部が突き当たるようになっている。
なお、前記小径部57の段差部分と前記内筒31の後端部との突き当たる部分には、後述の逆止弁61のフランジ部62が介装され、該逆止弁61を確実に保持するようになっている。
【0022】
前記内筒31内に取り付けた逆止弁61は、図8に示すように一端が開放され他端がドーム状に閉じた弾性体からなる筒状本体63を備え、かつ前記ドーム部64にはスリット65が形成されている。
そして、該スリット65は内側からの圧力で開き、外側からの圧力では開かないようになっている。
【0023】
したがって、前記ガス漏洩防止容器21はこの逆止弁61で気密性を保持されることはもちろん、前記ガス漏洩防止容器21内に水素や酸素等のガスを含有する液体を充填するために前記内筒31を外筒33から着脱する必要があっても、本発明の筒状摺動部材の気密構造11によって気密性が損なわれることが無く、水素や酸素等のガスを含有する液体用の容器に好適に適用することができる筒状摺動部材の気密構造を提供することが可能となった。
【0024】
本発明の筒状摺動部材の気密構造の利用に際しては、前記内筒31を外筒33から取外し、その開口部分から前記ガス漏洩防止容器21内に水素や酸素等のガスを含有する液体を充填する。その後前記内筒31を外筒33に装着すれば組み付けが完了する。
その状態においては、前記ガス漏洩防止容器21内に充填した水素や酸素等のガスを含有する液体は、逆止弁61によって気密性を保持されるばかりか、前記筒状摺動部材22によっても気密性が保持されており、前記ガス漏洩防止容器21から水素や酸素等のガスが漏洩することがない。
【0025】
前記ガス漏洩防止容器21内に充填した水素や酸素等のガスを含有する液体を使用する場合には、前記キャップ51のつまみ52を引いて前記インナーノズル56からキャップ51を抜き取り、前記ガス漏洩防止容器21の外側から圧を加えるだけである。
そうすることによって、前記逆止弁61のドーム部64に形成したスリット65が自動的に開き、前記ガス漏洩防止容器21内に充填した水素や酸素等のガスを含有する液体は前記インナーノズル56から難なく放出することができる。
【0026】
前記ガス漏洩防止容器21の外側から圧が加えられなくなった際には、前記逆止弁61のドーム部64に形成したスリット65は自動的に閉じるので、前記ガス漏洩防止容器21内に外気が入るおそれはない。
使用が終れば、前記キャップ51を前記インナーノズル56内に装着すればよい。もちろん、前記キャップ51の棒状本体53の外周にはOリング55が取り付けてあるので、水素や酸素等のガスの漏洩は防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の筒状摺動部材の気密構造は、水素や酸素等のガスを含有する液体用の袋状のガス漏洩防止容器のための気密構造として好適に適用することができる。
また、水素や酸素等のガスを含有する液体用の袋状のガス漏洩防止容器以外の、気密性の保持を求められる各種の物品のための、多岐にわたる用途の筒状摺動部材の気密構造として用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
11 筒状摺動部材の気密構造
21 ガス漏洩防止容器
22 筒状摺動部材
30 台座
31 内筒
32 弾性筒状体
33 外筒
34 蓋部
35 押えリング
36 Oリングパッキン
37 周溝
41 段差
42 中空部分
51 キャップ
52 つまみ
53 棒状本体
54 凹溝
55 Oリング
56 インナーノズル
57 小径部
61 逆止弁
62 フランジ部
63 筒状本体
64 ドーム部
65 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、前記内筒上に積層した弾性筒状体とからなる台座と、該台座の外側に1対のスペーサを介して所定の間隔を有するように取り付けた外筒とを有するとともに、前記1対のスペーサを弾性筒状体の両側に配置し、その上で前記弾性筒状体と外筒との間にOリングパッキンを挟みこんで、前記台座と前記外筒とが相対的に移動するのに伴って前記Oリングパッキンが前記台座の弾性筒状体上を、該弾性筒状体の長さ方向に沿って回転しつつ移動するようにしたことを特徴とする筒状摺動部材の気密構造。
【請求項2】
前記内筒には逆止弁が、また前記外筒には袋状のガス漏洩防止容器がそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の筒状摺動部材の気密構造。
【請求項3】
前記逆止弁は、一端が開放され他端がドーム状に閉じた弾性体からなる筒状構造であり、前記ドーム部にスリットが形成されて、該スリットは内側からの圧力で開き、外側からの圧力では開かないようになっていることを特徴とする請求項2に記載の筒状摺動部材の気密構造。
【請求項4】
前記ガス漏洩防止容器はプラスチックフィルム層と金属薄膜との積層構造からなり、前記プラスチックフィルム層部分を前記外筒に融着したことを特徴とする請求項2に記載の筒状摺動部材の気密構造。
【請求項5】
前記外筒は、その長さ方向に複数の周溝を形成してなることを特徴とする請求項4に記載の筒状摺動部材の気密構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−220439(P2011−220439A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89897(P2010−89897)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(502163845)ハジー技研株式会社 (1)
【Fターム(参考)】