説明

管ライニング材及び管ライニング工法

【課題】管ライニング工事をより簡単に短時間で行なえ、工事費を低減できるとともに、管ライニングの仕上がりを向上させる。
【解決手段】管ライニング材1は、液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材101と該管状樹脂吸収材を被覆し管状樹脂吸収材から取り除くことが可能なチューブ102とからなる。管ライニング材を既設管10の内周面に押圧した状態で管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂を硬化させ、管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂が硬化した後、管ライニング材の管状樹脂吸収材を被覆するチューブを該管状樹脂吸収材から取り除き、硬化した樹脂を含む管状樹脂吸収材101の面を更生された既設管の内周面とする。既設管の内周面は、硬化した堅固な樹脂面となっているので、内周面が粗くなることを防止でき、更生された既設管の内周面の粗度係数を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した上水道、下水管、農業用水管などの既設管を更生するための管ライニング材及びこの管ライニング材を用いた管ライニング工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地中に埋設された既設管が老朽化した場合に、既設管を掘り出すことなく更生するために、既設管を管ライニング材でライニングする管ライニング工法が知られている(例えば特許文献1)。管ライニング材は、既設管の形状に対応した管状の柔軟な不織布からなる管状樹脂吸収材に未硬化の液状硬化性樹脂(例えば熱硬化性樹脂)を含浸させたものである。管状樹脂吸収材の外周面には、これを被覆する気密性の高いポリエチレンなどからなるプラスチックフィルムがコーティングされている。これは管ライニング材の防水と、液状硬化性樹脂の染み出し防止のためである。ライニング工事では、管ライニング材を流体圧により既設管内に表裏(内外周)を反転させて挿入し、既設管の内周面に押圧した状態で、管ライニング材に含浸された液状硬化性樹脂を加熱などの方法で硬化させることにより、ライニングを行っている。
【0003】
また、上記工法は、既設管として本管を想定しているが、本管から分岐する枝管のような既設管に対しても適用することができ、たとえば、その工法が特許文献2に記載されている。この枝管ライニング工法では、圧力バッグに内装された枝管ライニング材の一端に形成されたつばが本管内に導入された作業用ロボットのセットノズル上にセットされ、圧縮エアーが圧力バッグ内に供給される。枝管ライニング材は圧縮エアーの圧力を受けて反転しながら枝管内を本管から地上に向かって順次挿入される。枝管ライニング材を枝管の内周面に押圧したまま、加温してこれに含浸された熱硬化性樹脂を硬化させることにより、枝管の内周面がライニングされる。この枝管用の管ライニング材も、本管用の管ライニング材と同様に、管状の柔軟な不織布からなる管状樹脂吸収材に未硬化の液状硬化性樹脂(例えば熱硬化性樹脂)を含浸させたものであり、管状樹脂吸収材の外周面には、これを被覆する気密性の高いポリエチレンなどからなるプラスチックフィルムがコーティングされている。
【特許文献1】特開平6−114939号公報
【特許文献2】特開平4−355115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の管ライニング材は、本管用のものであれ、枝管用のものであれ、管状樹脂吸収材にコーティングされるポリエチレンなどのプラスチックフィルムの耐久性(耐磨耗性、耐酸性など)が管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂(不飽和ポリエステル、ビニルエステルなど)より劣る。このため、管ライニング材の硬化性樹脂の硬化後に、管ライニング材の管状樹脂吸収材の内周面に貼り付けられているプラスチックフィルムをそのままにしてライニング工事を終了し、既設管の使用を再開すると、時間が経過するにつれてプラスチックフィルムが剥がれ、管路内の下水などの流れを妨げてしまう。
【0005】
このため、ライニング工事では、管ライニング材の硬化性樹脂の硬化後に、管ライニング材の管状樹脂吸収材の内周面に貼り付けられているプラスチックフィルムを引き剥がす作業を行っており、その手間がかかり施工時間が延びて費用がかかってしまうという問題があった。
【0006】
また、プラスチックフィルムの全体をきれいに剥がすことができず、管ライニング材の内周面を損傷してしまう場合がある。この場合、美観が悪くなると共に、管ライニング材内周面の粗度係数が大きくなり、既設管内の流量が減少してしまう。さらに、引き剥がしたプラスチックフィルムを処分するために費用がかかってしまうという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、管ライニング工事をより簡単に短時間で行なえ、工事費を低減できるとともに、管ライニングの仕上がりを良くすることができる管ライニング材及びこの管ライニング材を用いた管ライニング工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、
既設管内に挿入されて既設管の内周面を更生するための管ライニング材であって、
液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材と、該管状樹脂吸収材の外周面あるいは内周面を被覆し管状樹脂吸収材から取り除くことが可能なチューブとからなり、
管状樹脂吸収材が外側、チューブが内側にくるように既設管内に挿入されて、既設管の内周面に押圧された状態で管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂が硬化された後、前記チューブが管状樹脂吸収材から取り除かれ、硬化した樹脂を含む管状樹脂吸収材の面が更生された既設管の内周面となることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、
管ライニング材を用いて既設管の内周面を更生する管ライニング工法であって、
液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材と該管状樹脂吸収材の外周面あるいは内周面を被覆し管状樹脂吸収材から取り除くことが可能なチューブとからなる管ライニング材を、管状樹脂吸収材が外側、チューブが内側にくるように既設管内に挿入し、
管ライニング材を既設管の内周面に押圧した状態で管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂を硬化させ、
管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂が硬化した後、管状樹脂吸収材を被覆するチューブを該管状樹脂吸収材から取り除き、硬化した樹脂を含む管状樹脂吸収材の面を更生された既設管の内周面とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、管ライニング材が既設管内に挿入されて既設管の内周面が硬化した管状樹脂吸収材によりライニングされたあと、管状樹脂吸収材の外周面あるいは内周面を被覆していたチューブが取り除かれるので、ライニング後の更生された既設管の内周面は、管状樹脂吸収材の硬化した堅固な樹脂面となっている。従って、この樹脂面を被覆するコーティング層はないので、更生された既設管の内周面からコーティング層が徐々に剥がれて落ちてしまい、その内周面が粗くなることを防止でき、更生された既設管の内周面の粗度係数を小さくして既設管に流れる水量を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付した図を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここでは、既設管として上水道あるいは下水道の本管並びにこの本管と分岐する枝管のライニングを説明する。しかしながら、本発明は、これらの上水道や下水道だけでなく、農業用水管などの既設管をライニングする場合にも適用できるものである。
【実施例1】
【0012】
図1は、既設管として下水道の本管の内周面をライニングするための本管用の管ライニング材(以下本管ライニング材という)1を示す。
【0013】
本管ライニング材1は、可撓性の管状樹脂吸収材101の外周面(反転後は内周面となる)をポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックフィルムからなる柔軟なチューブ102で被覆した可撓性の管状ライニング材である。管状樹脂吸収材101は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなり、管状樹脂吸収材101には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などの液状の未硬化の熱硬化性樹脂が含浸される。
【0014】
チューブ102は、本管ライニング材1の防水と、管状樹脂吸収材101に含浸された液状硬化性樹脂の染み出し防止のために管状樹脂吸収材102の外周面を剥離可能に被覆する。従来は、チューブ102は管状樹脂吸収材101の外周面全体に熱溶着されて剥離できないようになっているが、本発明では、ライニング工事終了後は、チューブ102を引き剥がして容易に取り除くことができるようにするために、チューブ102は、管状樹脂吸収材101に熱溶着されることなく、つまり管状樹脂吸収材101に固定されることなく管状樹脂吸収材101の外周面との間にわずかの隙間Sを設けて、あるいは単に接触するだけで管状樹脂吸収材101全体を被覆している。
【0015】
なお、チューブ102を管状樹脂吸収材101に全く固定しない場合には、チューブ102が管状樹脂吸収材101に対して位置ずれを起こす恐れがあるので、図1(a)に符号103で示したように、部分的にチューブ102と管状樹脂吸収材101を熱溶着してあるいは接着して仮に固定するようにしてもよい。その場合でも、後述するように、チューブ102を硬化した管状樹脂吸収材101から容易に剥離できるように、熱溶着する箇所の大きさ並びに熱溶着する箇所の数を定めるようにする。
【0016】
本管ライニング材1の一端(右側)は、図1(a)に示したように、開放しており、後述するように、圧力容器の開口部に取り付けられる。一方、本管ライニング材1の他端は、図1(b)に示すように、チューブ102が管状樹脂吸収材101より長くなっていて、その端部102aが多重に折り畳まれている。そして、チューブ102の折り畳まれた端部102aは、プラスチックでできた固定板37を介してボルト38などの固定具により金属あるいはプラスチック製の連結具36に固定される。この連結具36は、ボルト39で固定された後述する温水ホース32の端部32aにロープ35を介して連結される。
【0017】
このように、チューブ102の端部102aは、多重に折り畳まれ固定板37を介してボルト38で固定されるため、チューブ102をロープ35で引っ張っても、チューブ102は破れたりすることなく、管状樹脂吸収材101から取り除くことができる。
【0018】
図2は、上述した本管ライニング材1を用いて本管をライニングするときの工事を説明する図である。
【0019】
本管ライニング材1の先端部1a(図1(a)の右側部分)は、マンホール11内に設置された圧力容器20の下端部に形成された開口部に対して気密性をもって結合される。
【0020】
圧力容器20には、エアコンプレッサー21がパイプ22を介して接続されている。また、圧力容器20の下方部には、排水パイプ23が設けられており、この排水パイプ23には、地上に設置された排水ポンプ25に接続された排水ホース24が接続されている。排水ポンプ25はパイプ26を介して温水槽27の下部に接続され、後述するように、硬化中の本管ライニング材1の下部に滞留する温水28を温水槽27に還流させる。温水槽27は不図示のヒーターにより加熱され、温水28が所定温度の温水に維持される。温水槽27の上部にはパイプ30を介して温水ポンプ31が接続されており、この温水ポンプ31には温水ホース32が接続されている。
【0021】
温水ホース32は圧力容器20内を通って本管ライニング材1内に挿入されており、その先端部32aは、上述したように、ロープ35によって本管ライニング材1のチューブ102の先端部102aと連結具36を介して結合されている。温水ホース32は、本管ライニング材1が挿入されるにつれて本管10内に挿入される。温水ホース32には多数の噴出口32bが形成されており、その噴出口32bを介して、温水が温水ミスト34あるいは温水シャワリングとして本管ライニング材1に向けて噴出される。
【0022】
このような構成において、本管ライニング材1は、圧力容器20内に収納されて(あるいは外部から気密に圧力容器20内に供給される)、その開放端1aが圧力容器20の下端部に形成された開口部に気密に取り付けられる。圧力容器20内にエアコンプレッサー21から圧縮空気を供給すると、本管ライニング材1は反転しながら本管10内に反転されながら挿入されていく。
【0023】
本管ライニング材1が所定長さ挿入されると、温水槽27の温水28が温水ポンプ31により温水ホース32に供給される。本管ライニング材1は圧縮空気により膨張して本管10の内周面に押し付けられた状態になっており、この状態で温水ホース32の噴射口32bから温水が温水ミスト34あるいは温水シャワリングとして本管ライニング材1の内周面に吹き付けられるので、本管ライニング材1の管状樹脂吸収材101に含浸された熱硬化性樹脂が硬化し、本管10の内周面が本管ライニング材よりライニングされる。
【0024】
本管ライニング材1に噴射された温水は下方に温水28として貯留し、この温水が排水パイプ23などを介して温水槽27に戻されて再び加熱され、所定温度の温水として温水ホース32に再び供給される。従って、温水の循環システムが形成されるので、省エネルギーを可能にするライニング工事が可能となる。また、温水はミストとしてあるいはシャワリングとして噴出されるので、管状樹脂吸収材101に含浸されている樹脂を均一に硬化させることができる。
【0025】
なお、この本管ライニング材1を本管10内に反転挿入する前に、スタートライナー(不図示)を本管内に挿入して本管内に地下水や下水が漏水するのを防止し、このスタートライナー内に本管ライニング材1を反転挿入するようにしてもよい。
【0026】
本管ライニング材1の管状樹脂吸収材101に含浸された熱硬化性樹脂が硬化し、本管10の内周面にライニングが施されると、図3に示したように、温水ホース32が引き上げられ、この温水ホース32の先端に連結されているロープ35が引っ張られる。これにより、ロープ35に連結されている本管ライニング材1のチューブ102も引っ張られる。チューブ102は、管状樹脂吸収材101とは固定されていないので、あるいは管状樹脂吸収材101と部分的に固定されるだけであるので、温水ホース32あるいはロープ35を引っ張るにつれて、チューブ102は管状樹脂吸収材101から離れ、取り除かれる。チューブ102を完全に取り除いたあとは、図4に示したように、本管10からはみ出ている本管ライニング材1を切断し、ライニング工事を終了する。
【0027】
ライニング後の本管10の内周面は、本管ライニング材1の管状樹脂吸収材101からなる堅固な樹脂面となっており、従来のように樹脂面を被覆するコーティング層(チューブ102)は残存しない。従って、従来のように、更生された本管の内周面からコーティング層が徐々に剥がれて落ちてしまい、その内周面が粗くなることを防止できる。このように、本発明では、更生された本管の内周面をコーティング層のない樹脂面とすることができ該内周面の粗度係数を小さくして本管10内の下水の流量を大きくすることができる。
【0028】
なお、上述した本管ライニング材は反転して本管内に挿入されたが、引き込みにより本管内に挿入する本管ライニング材に対しても、同様な構成にすることができる。本管ライニング材を引き込みにより本管内に挿入する場合には、本管ライニング材は、管状樹脂吸収材が外側に、管状樹脂吸収材の内周面を被覆するチューブが内側にくるようにして本管内に挿入される。チューブはロープないし温水ホースにより取り除くことができるように結合されるので、管状樹脂吸収材に含浸されている樹脂が硬化したあと、上述した反転用の本管ライニング材と同様に、ロープあるいは温水ホースを引っ張ることにより、チューブを管状樹脂吸収材から容易に取り除くことができる。
【0029】
また、本管ライニング材が多層の管状樹脂吸収材で更生される場合には、本管ライニング材が既設管内に挿入された後、一番内側の本管ライニング材の管状樹脂吸収材を被覆するチューブを該管状樹脂吸収材から取り除くことができるようにする。
【実施例2】
【0030】
上述した実施例は、本管の内周面をライニングするための本管用の本管ライニング材であったが、本発明は、本管と交差する枝管の内周面をライニングする枝管用の管ライニング材(以下、枝管ライニング材という)並びにその枝管をライニングする工事にも適用することができる。
【0031】
図5(a)、(b)は、枝管ライニング材2を示す。枝管ライニング材2は、本管ライニング材1の管状樹脂吸収材101と同じ材質からなる可撓性の管状樹脂吸収材201からなり、管状樹脂吸収材201には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などの液状の未硬化の熱硬化性樹脂が含浸される。管状樹脂吸収材201の内周面(反転後は外周面となる)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニールなど気密性の高いプラスチックフィルムが熱溶着されておりコーティング層204を形成している。管状樹脂吸収材201は、その一端が折り返されてその部分の熱硬化性樹脂が硬化され堅固なつば203となっている。
【0032】
管状樹脂吸収材201は、それより長く一端がつば203に熱溶着などで固定されたチューブ(インナーチューブ)202内に反転挿入される。チューブ202は、チューブ102と同様、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニール等など気密性の高いプラスチックフィルムからなり、チューブ202のつば203と反対側部分は、図5(b)で示すように、ボルトとナットなどの固定具3によって気密に閉じられており、そこに牽引ロープ40と温水ホース41が接続されている。チューブ202は、その一端がつば203に熱溶着され仮に固定される以外、管状樹脂吸収材201に固定されることはない。また、管状樹脂吸収材201の外側には所定長さの引き剥しチューブ205が通され、引き剥しチューブ205の一端はつば203の近傍外周に引き剥し可能に接着され、他端は開放していて、後述する圧力バッグの部分に気密に結合される。尚、引き剥しチューブ205の材質にはチューブ202と同様のものが選定される。
【0033】
次に、上記枝管ライニング材2を用いて施工される枝管ライニング工法を説明する。
【0034】
図6において、12は本管10から分岐する小径の枝管であって、本管10内には、作業用ロボット42、圧力バッグ43、枝管用の枝管ライニング材2等が引き込まれている。
【0035】
作業用ロボット42は、そのヘッド44が図6で上下方向a、bに進退し、且つ、矢印cで示すように管軸を中心に回転するように構成されており、ヘッド44にはフランジ状のセットノズル45が支持されている。また、この作業用ロボット42の上部にはモニター用のTVカメラ46が設置されている。そして、作業用ロボット42の前後には牽引ロープ47,48が取り付けられており、一方の牽引ロープ47は圧力バッグ43に接続され、他方の牽引ロープ48は地上まで延設されている。
【0036】
一方、圧力バッグ43は、2つの可撓性チューブ49、50を円筒状のジョイント51で結合して構成されている。チューブ49の開口端はキャップ52によって閉塞されており、他方のチューブ50の開口端はセットノズル45の筒状部45aに取り付けられている。また、管状樹脂吸収材201の外周に取り付けられた引き剥しチューブ205の他端(開口端)は前記チューブ50と共にジョイント51の外周に気密に取り付けられている。
【0037】
枝管ライニング材2はそのつば203がセットノズル45上にセットされており、他の未反転部分はセットノズル45を通って圧力バッグ43内に収納されている。このとき、枝管ライニング材2のチューブ202に接続された牽引ロープ40はキャップ52に取り付けられ、温水ホース41はキャップ52を貫通して圧力バッグ43外へ延出し、バルブ53に導かれている。温水ホース41には、不図示の熱源により加熱される温水タンク55から温水ポンプ54により温水が供給される。また、圧力バッグ43内の温水は排水ホース56、バルブ57を介して温水タンク55に戻される。
【0038】
圧力バッグ43内には、枝管ライニング材2のチューブ202と引き剥しチューブ205で閉塞される密閉空間が形成され、該密閉空間はキャップ52に取り付けられたエアーホース59、バルブ60を介して地上に設置されたコンプレッサー61に接続されるとともに、排気ホース62、バルブ63を介して外気に通じている。排気ホース62には圧力ゲージ64が取り付けられている。
【0039】
以上において、図6に示したように、作業用ロボット42のヘッド44を矢印a方向に上動させて枝管ライニング材2のつば203を本管10の枝管開口部の周縁壁に押圧して密着させる。コンプレッサー61を駆動してエアーホース59を経て圧縮エアーを圧力バッグ43内の密閉空間に供給すると、図7に示すように、枝管ライニング材2は圧縮エアーの圧力を受けて反転しながら枝管12内を上方に向かって順次挿入されていく。
【0040】
枝管ライニング材2の枝管12内への反転挿入が終了すると、枝管ライニング材2を枝管12の内周面に押し付けた状態にして、温水を温水ホース41の先端から供給して密閉空間内に充満させる。密閉空間内の圧縮エアーは排気ホース62を経て大気中に放出され、一方、枝管ライニング材2の管状樹脂吸収材201に含浸された熱硬化性樹脂が温水で加温され硬化する。
【0041】
管状樹脂吸収材201に含浸されている樹脂が硬化すると、排水ホース56を介して密閉空間から温水を抜き、温水タンク55に戻す。図8に示すように、作業用ロボット42のヘッド44を図示矢印b方向に下動させてセットノズル45を枝管ライニング材2のつば203から引き離した後、牽引ロープ40を、矢印方向(図8の左方)に引く。すると、引き剥しチューブ205及び管状樹脂吸収材201を内部から被覆していたチューブ202が同方向に引かれ、チューブ202は管状樹脂吸収材201から取り除かれる。作業用ロボット42、圧力バッグ43などが本管10内から取り除かれ、枝管12は、図9に示したように、その内周面が管状樹脂吸収材201によりライニングされる。
【0042】
ライニングされた枝管12の内周面は、枝管ライニング材2の管状樹脂吸収材201からなるコーティング層のない堅固な樹脂面となっており、上述した実施例1の本管の内周面と同様に、更生された枝管の内周面の粗度係数を小さくして枝管内の下水の流量を大きくすることができる。
【0043】
図6〜図9に示した枝管のライニングは、枝管の途中までのライニングであったが、地上まで枝管ライニング材を伸ばして枝管全体に渡ってライニングする例が、図10、図11に示されている。図6〜図9と同一部分には、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
この実施例では、枝管ライニング材2のチューブ202の先端には、牽引ロープや温水ホースは接続されておらず、気密に閉じた状態となっている。コンプレッサー61から圧縮エアーを圧力バッグ43に供給すると、枝管ライニング材2は、図10に示したように、枝管12内に反転挿入され、地上に突出する。そこで、地上に飛び出した枝管ライニング材にアタッチメント70を気密に接続する。
【0045】
そして、バルブ60を閉めてバルブ73,76を開け、蒸気ポンプ75を駆動して蒸気タンク74から蒸気を蒸気ホース71を経て密閉空間内に供給すれば、圧縮エアーはエアー抜きホース72を経て大気中に放出される。一方、枝管ライニング材2は枝管12の内周壁に押圧された状態で加温され、管状樹脂吸収材201に含浸された熱硬化性樹脂が硬化する。
【0046】
熱硬化性樹脂が硬化した後、アタッチメント70を取り外し、図11に示したように、枝管ライニング材2のチューブ202に牽引ロープ40を結びつける。チューブ202は、管状樹脂吸収材201と固定されていないので、牽引ロープ40を引っ張ると、チューブ202は管状樹脂吸収材201から離れ、簡単に取り除くことができ、更生された枝管12の内周面を、硬化した樹脂面とすることができる。
【0047】
なお、管状樹脂吸収材2の硬化は、蒸気だけでなく、温水、温水シャワリングで行うようにすることもできる。
【0048】
また、枝管ライニング材2のチューブ202を管状樹脂吸収材201に全く固定しない場合には、チューブ202が管状樹脂吸収材201に対して位置ずれを起こす恐れがあるので、部分的にチューブ202と管状樹脂吸収材201を仮に熱溶着してあるいは接着して固定するようにしてもよい。その場合でも、チューブ202を硬化した管状樹脂吸収材201から容易に剥離できるように、熱溶着する範囲並びに熱溶着する箇所の数を定めるようにすることは、本管ライニング材1に関連して述べたのと同様である。
【0049】
また、図1に示した本管ライニング材1の管状樹脂吸収材101及び途中ライニング(図6〜図9)あるいは全体をライニングする(図10、図11)枝管ライニング材2の管状樹脂吸収材201に含浸される液状の硬化性樹脂は、蒸気あるいは温水などの熱媒による加熱により硬化する樹脂だけでなく、紫外線などの光を照射することにより硬化する樹脂、あるいは常温で硬化する樹脂、あるいは常温で硬化する樹脂とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は本管ライニング材の構成を示す斜視図、(b)は本管ライニング材の端部の拡大断面図である。
【図2】本管ライニング材を用いて本管をライニングする工事を示した断面図である。
【図3】ライニング後、本管ライニング材のチューブを取り除く工程を示した断面図である。
【図4】本管ライニング材により更生された本管を示す断面図である。
【図5】(a)は枝管ライニング材の構成を示す断面図、(b)はその枝管ライニング材の端部の拡大断面図である。
【図6】枝管ライニング材を用いて枝管をライニングする工事を示した断面図である。
【図7】枝管ライニング材を枝管に反転挿入する工程を示した断面図である。
【図8】枝管ライニング材のチューブを取り除く工程を示した断面図である。
【図9】枝管ライニング材により更生された枝管を示す断面図である。
【図10】枝管ライニング材を地上まで延ばして枝管をライニングする工事を説明した断面図である。
【図11】枝管ライニング材のチューブを取り除く工程を示した断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 本管ライニング材
2 枝管ライニング材
10 本管
11 マンホール
12 枝管
20 圧力容器
27 温水層
32 温水ホース
40 牽引ロープ
41 温水ホース
42 作業ロボット
43 圧力バッグ
55 温水層
61 コンプレッサー
70 アタッチメント
74 蒸気槽
101 管状樹脂吸収材
102 チューブ
201 管状樹脂吸収材
202 チューブ
203 つば
204 コーティング層
205 引き剥がしチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内に挿入されて既設管の内周面を更生するための管ライニング材であって、
液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材と、該管状樹脂吸収材の外周面あるいは内周面を被覆し管状樹脂吸収材から取り除くことが可能なチューブとからなり、
管状樹脂吸収材が外側、チューブが内側にくるように既設管内に挿入されて、既設管の内周面に押圧された状態で管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂が硬化された後、前記チューブが管状樹脂吸収材から取り除かれ、硬化した樹脂を含む管状樹脂吸収材の面が更生された既設管の内周面となることを特徴とする管ライニング材。
【請求項2】
管ライニング材のチューブは、管状樹脂吸収材と固定されることなく管状樹脂吸収材を被覆することを特徴とする請求項1に記載の管ライニング材。
【請求項3】
管ライニング材のチューブは、管状樹脂吸収材と部分的に剥離可能に溶着ないし接着されて管状樹脂吸収材を被覆することを特徴とする請求項1に記載の管ライニング材。
【請求項4】
管ライニング材が反転により、あるいは引き込みにより既設管内に挿入されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項5】
管ライニング材が本管あるいは本管から分岐する枝管を更生するための管ライニング材であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項6】
前記液状硬化性樹脂が、加熱あるいは光照射により硬化する樹脂又は常温で硬化する樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項7】
管ライニング材を用いて既設管の内周面を更生する管ライニング工法であって、
液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸収材と該管状樹脂吸収材の外周面あるいは内周面を被覆し管状樹脂吸収材から取り除くことが可能なチューブとからなる管ライニング材を、管状樹脂吸収材が外側、チューブが内側にくるように既設管内に挿入し、
管ライニング材を既設管の内周面に押圧した状態で管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂を硬化させ、
管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂が硬化した後、管状樹脂吸収材を被覆するチューブを該管状樹脂吸収材から取り除き、硬化した樹脂を含む管状樹脂吸収材の面を更生された既設管の内周面とすることを特徴とする管ライニング工法。
【請求項8】
管ライニング材のチューブは、管状樹脂吸収材と固定されることなく管状樹脂吸収材を被覆することを特徴とする請求項7に記載の管ライニング工法。
【請求項9】
管ライニング材のチューブは、管状樹脂吸収材と部分的に剥離可能に溶着ないし接着されて管状樹脂吸収材を被覆することを特徴とする請求項7に記載の管ライニング工法。
【請求項10】
前記管ライニング材のチューブは、管状樹脂吸収材に含浸された硬化性樹脂を硬化するための熱媒を供給するホースに結合されており、ホースが既設管内に挿入されて該ホースから供給される熱媒により硬化性樹脂が硬化された後、該ホースを既設管から取り除くのに連動して管ライニング材のチューブが管状樹脂吸収材から取り除かれることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の管ライニング工法。
【請求項11】
管ライニング材が反転により、あるいは引き込みにより既設管内に挿入されることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の管ライニング材。
【請求項12】
管ライニング材が本管あるいは本管から分岐する枝管を更生するための管ライニング材であることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の管ライニング工法。
【請求項13】
前記液状硬化性樹脂が、加熱あるいは光照射により硬化する樹脂又は常温で硬化する樹脂であることを特徴とする請求項7から12のいずれか1項に記載の管ライニング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−149285(P2010−149285A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326760(P2008−326760)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】