管内挿入式超音波探傷検査装置
【課題】超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルを用いることなく、水流圧だけでスムーズに管内を移動できるようにした管内挿入式超音波探傷検査装置を提供する。
【解決手段】管内挿入式超音波探傷検査装置10は、管40の内壁に超音波を照射するとともに、超音波の反射波を受信する超音波探触子11と、超音波探触子11にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、超音波探触子11で受信される超音波の反射波のパルス信号を受信するパルス発生受信部12と、管40の径方向に対して中央に位置するように超音波探触子を保持する調芯治具14と、超音波探触子11の水流方向上流側に設けられ、水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転するウォータータービン114とを備える。
【解決手段】管内挿入式超音波探傷検査装置10は、管40の内壁に超音波を照射するとともに、超音波の反射波を受信する超音波探触子11と、超音波探触子11にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、超音波探触子11で受信される超音波の反射波のパルス信号を受信するパルス発生受信部12と、管40の径方向に対して中央に位置するように超音波探触子を保持する調芯治具14と、超音波探触子11の水流方向上流側に設けられ、水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転するウォータータービン114とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内挿入式超音波探傷検査装置に係り、特に、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルや、電源供給や信号送受のためのケーブルを用いず、水流圧で超音波探傷検査装置を移送させながら、火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管の肉厚や傷を測定できるようにした、管内挿入式超音波探傷検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管は、内部に高温、高圧の流体を通すことになるので、管体の傷や割れ、減肉等を検査する必要がある。しかしながら、こういった火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管は、設置された後では周囲に各種構築物が存在することになるため、外部からの探傷、肉厚検査等が難しい。
【0003】
そのため、こういったボイラチューブ等の管内の検査に用いる超音波探触子として、本願出願人は、例えば、一例として特許文献1に示され、図22に構成概略の一例を示したように、フレキシブルシャフト(バネコイル等の弾性材)73で連結された超音波探触子ホルダ72を有し、調芯のため、フレキシブルシャフト73の超音波探触子ホルダ72の前後に対向して配置される2つの弾性ワイヤ端部固定リング78と、そのリング78間の周囲にほぼ等間隔に配置され、周方向に第1の所定傾斜角および軸心に対し第2の所定傾斜角で両端がそれぞれ上記2つのリング78に取付けられる、複数の弾性ワイヤ(調芯治具)77とを有するねじりかご式調芯具83などを備えた管内挿型超音波探触子を種々提案した。
【0004】
なお、この図22において70は管内挿型超音波探触子であり、71は超音波探触子本体、74は管の曲がりにおいても管内挿型超音波探触子70がスムーズに通過できるよう案内する先端ガイド、75はフレキシブルシャフト73と搬送ケーブル76とを接続するためのケーブルジョイント、79はねじりかご式調芯具83の管壁への圧縮圧を略一定に保つためのコイル押バネ、80はバネ圧調節ナット、81はこの管内挿型超音波探触子70が検査する被検管、82は探傷のための超音波伝搬媒質とこの管内挿型超音波探触子70の搬送送水とを兼ねた水である。
【0005】
また、この図22に示した管内挿型超音波探触子70は、管内の移送をコイルバネ等を用いたケーブルによる押し込みで行いながら管の検査を行うもので、その装置構成が本願出願人の出願になる特許文献2に管内挿入式超音波探傷検査装置として示されている。その概略を示したのが図23であり、この図23の管内挿入式超音波探傷検査装置は、先端に挿入装置88が設けられた連結式の案内ロッド90を管寄せ85内に送り込む案内装置89、管寄せ85内に送り込まれた案内ロッド90の終端が結合され、先端に局部水浸用プローブヘッド(図22における超音波探触子本体71)が設けられたコイルバネ94を案内ロッド90内に送り込む送給装置91、およびコイルバネ94内に配設された超音波探傷用ケーブル95と、水ホース96の終端にそれぞれ接続された超音波探傷装置(Pulser/Receiver)97と、水ポンプ98とを備え、ボイラ管86を切断することなく、また大掛りな器材や大量の水を使用することなく、水ポンプ98で送り込まれる水と、送給装置91で管内に送り込まれるコイルバネ94とによって局部水浸用プローブヘッドを管内で移動させ、ボイラ管86内面の超音波探傷を可能としたものである。なお、この図23において、87は検査孔、92は回転式インレットガイド、93は支持架台である。
【0006】
また特許文献3には、信号送受のためのケーブルが接続され、管内に挿入して管壁の異常の有無を検出する超音波測定装置を水圧でスムーズに移動させるため、測定装置本体の前後に可搬性を有する接続体を介して前部調芯移勤部材と後部調芯移動部材とを取り付けると共に、前部調芯部材の前方に前部円錐形案内子を、後部調芯部材の後方に後部円錐形案内子をそれぞれ設け、かつ、前部円錐形案内子と後部円錐形案内子の円錐形底面が互に向き合うように構成して、水圧を効率良く受けて超音波測定装置を効率良く移動させることができるようにした超音波測定装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3040641号公報
【特許文献2】特開平9−145687号公報
【特許文献3】実公昭和62−45167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、熱交換器におけるボイラチューブ等の管は、例えば長さが100mを越えるものもあって非常に長いものがあるが、以上説明してきた特許文献1乃至3においては超音波探触子を、コイルバネ等を用いたケーブルと水の力とを利用して少しずつ管内へ押し込んで移動させており、そのために長いケーブルが必要となる。しかし、こういったコイルバネ等を用いたケーブルが長くなると重量が非常に大きくなると共に、このケーブルは特殊ケーブルのため高額となり、ケーブルの輸送コストも大きくなる。また、そのケーブルを巻き取るために巻取り装置が必要であるが、ケーブルが長いために装置が大型になると共にハンドリングが難しく、検査に熟練と人員を要する。
【0009】
さらに、配管のベンド部(曲がり部)が増えるとこういったコイルバネ等を用いたケーブルとの接触抵抗が増え、ケーブルの流動抵抗が大きいために押し込む水のポンプは大きな力を必要とする。そのためポンプが大型化し、その輸送コストが高くつくと共に測定にこのように種々の装置が必要であるから、設置などのハンドリングが大掛かりになる上にメンテナンスが容易でなくなり、広い機器設置スペースも必要となる。
【0010】
また、管を360度検査するため、チャンネル数を複数設定しても計測不可領域が存在するが、チャンネル数の増加は部品点数とケーブル径を増大させ、故障のリスクが高まると共に肉厚測定装置本体が大きくなり、現場での搬送・組立・調整に時間と労力を要して操作(調整)が複雑化し、最終的には搬送性に影響するためチャンネル数増加に限界が生じる。さらに、専用の高圧電源を確保する必要があるが水を併用するため感電の危険性があり、海外工事においては高額な輸送コストと長い輸送期間が必要、超音波探触子は金属製で比重が大きいためたわみ易く、その際管内面の突起部等と接触して挿入性を低下させる、などの問題がある。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルを用いることなく、水流圧だけでスムーズに管内を移動できるようにした管内挿入式超音波探傷検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る管内挿入式超音波探傷検査装置は、水ポンプにより加圧された水が送り込まれる管に挿入される管内挿入式超音波探傷検査装置であって、前記管の内壁に超音波を照射するとともに、前記超音波の反射波を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、前記超音波探触子で受信される前記超音波の反射波のパルス信号を受信するパルス発生受信部と、前記管の径方向に対して中央に位置するように前記超音波探触子を保持する調芯治具と、前記超音波探触子の水流方向上流側に設けられ、前記水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転するウォータータービンとを備えることを特徴とする。
【0013】
上記管内挿入式超音波探傷検査装置によれば、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブル、及び超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが不要となる。よって、長く高価なケーブルとケーブルの巻取り装置が不要になるとともに、ケーブルの輸送コスト、大型で大きな力のポンプ等が不要となる。また、巻取り装置、ポンプ等を設置するスペースが不要となり、コスト削減が可能となる。さらに、ハンドリングが簡単になることから、検査に対する熟練も不要となるので人員も削減でき、メンテナンスも簡単になる。
また、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが無くなることで、配管のベンド部(曲がり部)での接触抵抗が低減する。よって、管内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0014】
管内に供給される水流は、水ポンプによって加圧されて送り込まれるために流速が一定である。しかし、単に、管内挿入式超音波探傷装置を水流圧で押出すだけでは、管内挿入式超音波探傷装置の速度を安定させることが難しい。管内挿入式超音波探傷装置を用いて一定周期で探傷測定を繰り返す場合、管内を走行する管内挿入式超音波探傷装置の速度が一定でないと測定点数の粗密が発生し、探傷測定の検査結果にムラが生じてしまう。
そこで、上記管内挿入式超音波探傷検査装置は、水流を駆動力とするウォータータービンを備える。この場合、管内に供給される水流の流速が一定であるため、管内挿入式超音波探傷装置は回転数が一定のウォータータービンにより推進し、安定した速度で管内を走行することができる。また、安定した速度で管内を走行することができるので、検査結果にムラがなくなり、検査の精度を向上させることができる。
【0015】
また、前記ウォータータービンの回転数を前記ウォータータービンの移動距離に換算する換算手段を備えてもよい。
これにより、ウォータータービンの移動距離が得られるので、管内における超音波探蝕子の位置を特定することが可能である。よって、管内の傷等の位置を特定することができる。
【0016】
また、前記超音波探触子の水流方向下流側および上流側にそれぞれ設けられ、前記管の両端から発信される音波を受信する受信器と、前記受信器でそれぞれ受信される音波の受信時間の時間差から前記超音波探触子の位置を算出する算出手段とを備えてもよい。
これにより、超音波探触子の位置を算出することができるので、管内の傷等の位置を特定することができる。
【0017】
また、前記超音波探触子の水流方向上流側に浮きを備えてもよい。
管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素は、通常、水に沈降する傾向があり、重力方向に対して下側の管壁に接触し、装置の安定走行に影響を及ぼす恐れがある。しかし、超音波探触子の水流方向上流側に浮きを備えることにより、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、構成要素が水流圧で管の内壁に押しつけられることを防ぐことができ、管内挿入式超音波探傷検査装置を安定した速度で走行させることができる。
【0018】
また、前記水ポンプにより加圧された水の水流方向に沿って形成され、前記水よりも小さい比重を有するひげ状物を備えてもよい。
これにより、水流圧を受けやすくなるとともに、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、管内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0019】
また、前記管の内壁との間に、前記管の内壁との接触摩擦を低減する車輪状部材もしくはベアリングを備えてもよい。
これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置が管の内壁と接触することによって生じる接触摩擦を低減することができるので、水流圧だけでスムーズに管内を移動することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブル、及び超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが不要となる。よって、長く高価なケーブルとケーブルの巻取り装置が不要になるとともに、ケーブルの輸送コスト、大型で大きな力のポンプ等が不要となる。また、巻取り装置、ポンプ等を設置するスペースが不要となり、コスト削減が可能となる。さらに、ハンドリングが簡単になることから、検査に対する熟練も不要となるので人員も削減でき、メンテナンスも簡単になる。
また、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが無くなることで、配管のベンド部(曲がり部)での接触抵抗が低減する。よって、管内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
さらに、ウォータータービンを備えることで、管内挿入式超音波探傷装置は、安定した速度で管内を走行することができる。よって、検査結果にムラがなくなり、検査の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】ウォータータービンの一例を示す斜視図である。
【図3】実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。
【図4】実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を用いた探傷例を示す概略図である。
【図5】音波送信器が、ボイラチューブの端部に設けられた挿入ノズルを介して装着されている状態を示している。
【図6】音波情報と、受信信号情報の模式図である。
【図7】受信結果と、測定位置を示す図である。
【図8】位置情報を確認するグラフである。
【図9】実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。
【図10】実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の他の構成例を示す図である。
【図11】実施形態4に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。
【図12】実施形態5に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子に用いる帯型可塑性振動子の配置状態を説明するための図である。
【図13】実施形態6に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、浮きを付加した場合の構成図である。
【図14】実施形態7に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、ひげを付加した場合の構成図である。
【図15】実施形態8に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、超音波探触子を調芯するための治具の数を増やした場合の構成図である。
【図16】実施形態9に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の間を繋ぐ部材に円盤を取り付けた場合の構成図である。
【図17】実施形態10に係る本発明になる管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置の進行方向先頭の構成要素にパラシュート状や円盤状の受水部を取り付けた場合の構成図である。
【図18】実施形態11に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子表面に毛布のように水に剪断力を生じる部材を設けた場合の構成図である。
【図19】実施形態12に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の水流が当たる側に窪みを設け、水流圧を上昇させた場合の構成図である。
【図20】実施形態13に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に凸凹を設けて水流力を利用する場合の構成図である。
【図21】実施形態14に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に管壁との摩擦係数を低減する例えば車輪状物を設けた場合の構成図である。
【図22】ケーブルによって管内に押し込んでいた従来の管内挿入式超音波探傷検査装置を説明するための構成概略図である。
【図23】従来の管内挿入式超音波探傷検査装置を用い、火力発電プラント等の熱交換器における管の検査を行うための装置概略を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。図2は、ウォータータービンの一例を示す斜視図である。
【0024】
管内挿入式超音波探傷検査装置10は、図1に示すように、主に、超音波探触子(センサ)11と、パルス発生受信部(Pulser/Receiver)12と、調芯治具14と、ウォータータービン114と、換算装置(換算手段に相当)116とを備える。
また、管内挿入式超音波探傷検査装置10は、管40の曲がり部で引っかからないよう頭を接触させて滑らせながら走行させるための先端ガイド15と、超音波送受信装置12を駆動する電源となる電池(バッテリ)13とを含む。これらの管内挿入式超音波探傷検査装置10の構成要素は、フレキシブルシャフト16で互いに接続される。
【0025】
超音波探触子(センサ)11は、管40の内壁に超音波を照射するとともに、超音波の反射波を受信する。なお、図示しないが、超音波探触子11はパルス電圧を印加することで振動する圧電素子を有する。
【0026】
パルス発生受信部12は、超音波探触子11にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、超音波探触子11で受信される超音波の反射波のパルス信号を受信する。
【0027】
調芯治具14は、管40の径方向に対して中央に位置するように超音波探触子11を保持する。
【0028】
ウォータータービン114は、超音波探触子11の水流方向上流側に設けられ、不図示の水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転する。特に、ウォータータービン114の効果が十分に得られる観点から、ウォータータービン114は、水流方向の最上流側に設けることが好ましい。
ウォータータービン114としては、例えば、図2に示すように、軸114Aの端部に一定の間隔で翼114Bが配置された構成の羽根車が挙げられる。
【0029】
管40内に供給される水流は、水ポンプによって加圧されて送り込まれるために流速が一定である。この場合、管内挿入式超音波探傷装置10は回転数が一定のウォータータービン114により推進し、安定した速度で管内を走行することができる。
よって、上記の管内挿入式超音波探傷検査装置によれば、安定した速度で管内を走行することができるので、管内挿入式超音波探傷装置10を用いて一定周期で探傷測定を繰り返す場合、測定点数の粗密の発生を防止できる。これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置10を用いた管内の探傷検査の検査結果にムラがなくなり、検査の精度を向上させることができる。
【0030】
換算装置116は、ウォータータービン114の回転数をウォータータービン114の移動距離に換算する。
これにより、ウォータータービン114の移動距離が得られるので、管40内における超音波探蝕子11の位置を特定することが可能である。よって、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0031】
なお、図示しないが、換算装置116の代わりに、加速度センサを用いて、位置特定してもよい。一定周期で加速度をモニタリングし、公知の計算手法により加速度から超音波探蝕子11の位置を計算し、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0032】
管内挿入式超音波探傷検査装置10は、不図示の水ポンプにより加圧された水が送り込まれる管40内に挿入され、図1に示すように、水流方向42の水流圧を受けて管40内を走行する。
【0033】
このように、管内挿入式超音波探傷検査装置10は、超音波探触子11への電源供給や信号の送受のためのケーブル、及び超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが不要となる。よって、長く高価なケーブルとケーブルの巻取り装置が不要になるとともに、ケーブルの輸送コスト、大型で大きな力のポンプ等が不要となる。また、巻取り装置、ポンプ等を設置するスペースが不要となり、コスト削減が可能となる。さらに、ハンドリングが簡単になることから、検査に対する熟練も不要となるので人員も削減でき、メンテナンスも簡単になる。
また、超音波探触子11への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが無くなることで、管40のベンド部での接触抵抗が低減する。よって、管40内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置10を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0034】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置について説明する。
図3は、実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。図4は、実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を用いた探傷例を示す概略図である。図5は、音波送信器が、ボイラチューブの端部に設けられた挿入ノズルを介して装着されている状態を示している。図6は、音波情報と、受信信号情報の模式図である。図7は、受信結果と、測定位置を示す図である。図8は、位置情報を確認するグラフである。
【0035】
実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置100は、図1に示す換算装置116を用いた管40内における超音波探蝕子11の位置特定の手法が異なる点を除けば、図1で説明した管内挿入式超音波探傷検査装置10と同一の構成である。なお、図3には説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、電池13と、ウォータータービン114と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11と調芯治具14とを示した。
また、実施形態1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0036】
管内挿入式超音波探傷検査装置100は、図3に示すように、超音波探蝕子11の位置特定するものとして、受信器103−1、103−2と、記憶装置104−1、104−2と、算出部(算出手段に相当)106とを備える。
【0037】
受信器103−1、103−2は、超音波探触子11の水流方向下流側および上流側にそれぞれ設けられ、管40の両端から発信される音波101を受信する。図3では、超音波探触子11の水流方向下流側に設けられる受信器を前方側受信器103−1、超音波探触子11の水流方向上流側の受信器を後方側受信機103−2とする。
【0038】
記憶装置104−1、104−2は、前方側受信器103−1および後方側受信機103−2で音波101を受信した時間のデータ情報を記憶する。
なお、図3では、記憶装置を2台設けて、水流方向下流側の記憶装置104−1と、水流方向上流側の記憶装置104−2とで独立してその時間データを記憶するようにしているが、これに限定されることなく、記憶装置を1台として共用するようにしてもよい。
【0039】
算出部106は、前方側受信器103−1および後方側受信機103−2でそれぞれ受信される音波101の受信時間の時間差から超音波探触子11の位置を算出する。このように、超音波探触子11の位置を算出することができるので、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0040】
音波101は、図4に示すように、管40の両端の出入り口部40a、40bにそれぞれ設けられる音波送信機102−1、102−2によって発信される。
音波送信機102−2は、図5に示すように、管40の出入り口部40bに設けられた挿入ノズル109を介して装着されていてもよい。また、図示しないが音波送信機102−2と同様に、音波送信機102−1は、管40の出入り口部40aに設けられた挿入ノズル109を介して装着されていてもよい。
【0041】
音波送信機102−1、102−2から同時に発射された音波101は、前方側受信機103−1及び後方側受信機103−2で受信され、その時間情報を記憶装置104−1、104−2で記憶させる。その後、算出部を用いて、記憶装置104−1、104−2に記憶させておいた時間情報から音波探触子11の位置を算出する。
【0042】
例えば、管内挿入式超音波探傷検査装置100では、位置情報を取得するために、先ず、管40の両端に設けた音波送信装置102−1、102−2から音波101を一秒毎に発射させる。
その発射された音波は、図6に示すように、前方側受信機103−1の受信信号の情報(T1、T3・・・Tm)として記憶されるとともに、後方側受信機103−2の受信信号の情報(T2、T4・・・Tn)として記憶される。
その結果、前方側受信機103−1と後方側受信機103−2においては、図7に示すような時間信号が記憶される。
そして、図8に示すように、Δtが0になるときには、管40の長さは全長の1/2となり、Δtが最小又は最大となるときには、管40の長さの全長となることとなる。このようにして、算出部では、時間情報から管40内における音波探触子11の位置が算出される。
【0043】
よって、検査が終了した後、音波101を受信した時間のデータと、肉厚測定データとを整合させて、ボイラチューブ等の管の探傷、肉厚検査等の情報の位置を特定することができる。
【0044】
[実施形態3]
図9は、実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。図10は、実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の他の構成例を示す図である。
【0045】
実施形態1および実施形態2で述べた超音波探蝕子11の位置特定の手法の他に、例えば、図9に示すように、超音波探触子(センサ)11の先端側にエンコーダ記憶装置110を設け、管40の内壁にローラ形状の車輪状部材111を接触させることで距離を計測するようにしてもよい。ここでは、管40の内壁の凹凸に対応するように、凹凸のローラ形状の車輪状部材とすることで、管40の内壁との接触摩耗を低減するようにしている。
これにより、車輪状部材111の回転速度より距離を算出し、上述の記憶装置に記憶させることで、管40内における超音波探蝕子11の位置を特定することが可能である。よって、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0046】
また、図10に示すように、図9に示したローラ形状の車輪状部材を111A及び111Bとして二方向に装着させて、走行の安定性を向上させるようにしてもよい。ここでは、ばね112を利用することにより、管40の内壁に対して微力な圧力をかけて管40の内壁と接触させている。
図9と同様に、管40内における超音波探蝕子11の位置を特定することが可能である。
【0047】
[実施形態4]
図11は、実施形態4に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。
管内挿入式超音波探傷検査装置10は、図11に示すように、収納容器(防水構造体)20に収納してもよい。なお、管内挿入式超音波探傷検査装置10は、図1と同様に、超音波探触子(センサ)11と、パルス発生受信部(Pulser/Receiver)12と、電池13などを含む。
【0048】
収納容器(防水構造体)20は、例えば、PP樹脂などの水より比重の軽い材料により円形、または楕円形などに形成し、防水構造として内部に空気を閉じこめられるようにする。これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置10が水中に浮いた状態で搬送され、管内面に突起等があっても接触して摩擦を生じたりすることがなくなる。
【0049】
収納容器20は、超音波探触子11を収容する収納部21と、パルス発生受信部12を収容する収納部22と、電池13を収容して蓋24で塞いで一端を閉じることができるようにした収納部23と、収納部21、22、23を互いに接続するPVCなどの軟質ゴムで形成したフレキシブルシャフト16とを含む。
【0050】
それぞれの収納部21、22、23は前記したように円形、または楕円形などに形成することで管壁に接触したとき、摩擦抵抗が少なくなるような形状に構成することが好ましいが、多角柱形状に形成しても良い。
【0051】
また、収納部21、22、23を繋ぐフレキシブルシャフト16は、図11では簡略化して描いてあるが、収納部21、22、23との接続部をネジ状に形成してしっかりと結合できるようにするとともに、確実な防水構造とすることが必要である。そのため、例えば、ガスのコンセントとガス管の接合部のように、一端を凹凸状に形成してフレキシブルシャフト16を強力な押し込み力で押し込むようにしたり、防水用油などを用いたりすることで防水構造とする。また、管40のベンド部で管内挿入式超音波探傷検査装置10がスムーズに通過できるように、フレキシビリティを大きくすることが好ましい。
【0052】
[実施形態5]
図12は、実施形態5に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子に用いる帯型可塑性振動子の配置状態を説明するための図である。
【0053】
まず、超音波探触子(センサ)11の周囲360度の検査を一度で行えるような機構であるが、従来用いられていた超音波探触子は剛体であるため、その振動子により発せられる超音波のスキャンできる範囲が限られる。図12(A)に示すように、例え4チャンネル用いたとしても狭いスキャン範囲31しか得られなかった。
【0054】
これに対し、最近、例えば、曲面に配した超音波振動子が出現している。この超音波振動子を、図12(B−1)および図12(B−2)に示すように、超音波探触子11の中心部33にその曲率に合わせて4つ配し、それぞれのスキャン範囲34を90度とすることで、中心部33の周囲360度を一度でスキャンできるようにすることができる。
なお、図12(B−1)および図12(B−2)は、説明を分かり易くするために4つの帯型振動子30を2つに分けて示しているが、実際には中心部33の周囲に90度ずつ角度を異ならせて4つ配するようにする。上述の例では超音波振動子を4つ配した場合を示したが、振動子の対応角度に応じ、6つまたは8つ配するようにしてもよい。
【0055】
そして超音波探触子11から得られる管壁からのエコー信号は、パルス発生受信部12に設けた図示していないメモリに記憶し、この管内挿入式超音波探傷検査装置10がボイラチューブ等の管40から排出された後、パソコンなどにデータだけ取り出して傷や減肉などの所在を解析する。
【0056】
そのとき、管内挿入式超音波探傷検査装置10の管40内における位置が問題となるが、例えばボイラチューブ等の配管のベンド部(曲がり部)や配管の溶接部は特有なエコーが生じるから、それら特有なエコーとエコーの時間間隔を計り、間を均等割したり、管内挿入式超音波探傷検査装置10から位置情報認識のための信号を発信する発信器を設け、その信号から位置を求めるようにしてもよい。
【0057】
このようにすることにより、容易に管40を360度検査することができ、しかも従来装置のように部品点数とケーブル径の増大といった問題を招くことがない。また、故障のリスクが高まったり、肉厚測定装置本体が大きくなることがなく、現場での搬送・組立・調整、操作も容易となり、感電の危険性、高額な輸送コストと長い輸送期間なども不要となる。
【0058】
[実施形態6]
次に、管内挿入式超音波探傷検査装置10における水流圧による管内移動を容易化させる機構について説明する。
図13は、実施形態6に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、浮きを付加した場合の構成図である。
【0059】
図13に示す管内挿入式超音波探傷検査装置10は、超音波探触子11に付加した浮きを付加する点を除けば、図1で説明した管内挿入式超音波探傷検査装置10と同一の構成であるので、その図示を一部省略する。また、実施形態1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0060】
浮き41は、図13に示すように、超音波探触子11の水流方向42上流側に備えることが好ましい。
浮き41を超音波探触子11の下流側に付加した場合、超音波探触子11が水流圧で管40の内壁に押しつけられ、摩擦が増大する可能性があるのに対し、超音波探触子11の上流側に浮き41を付加すると、超音波探触子11が水流圧で管40の壁に押しつけられることがないので、管40の中を水流圧でスムーズに移動させることができる。
【0061】
また、浮き41は、比重が水より軽い樹脂などで空気を閉じこめて形成されたり、軽い木で作成される。
管内挿入式超音波探傷検査装置10の構成要素は、通常、水に沈降する傾向があり、重力方向に対して下側の管壁に接触し、装置の安定走行に影響を及ぼす恐れがある。しかし、超音波探触子11の水流方向上流側に浮き41を備えることにより、管内挿入式超音波探傷検査装置10の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、構成要素が水流圧で管40の内壁に押しつけられることを防ぐことができ、管内挿入式超音波探傷検査装置10を安定した速度で走行させることができる。
【0062】
なお、浮き41は、超音波探触子11の他に、例えば、重量の重い電池(バッテリ)13に設けてもよいし、管内挿入式超音波探傷検査装置10の全ての構成要素に設けてもよい。
【0063】
[実施形態7]
図14は、実施形態7に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、ひげを付加した場合の構成図である。
図14に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0064】
超音波探触子11は、図14に示すように、不図示の水ポンプにより加圧された水の水流方向42に沿って形成され、水よりも小さい比重を有するひげ状物43を備えてもよい。
【0065】
ひげ状物43は、比重が水より軽い例えば樹脂または炭素繊維であることが好ましく、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素である超音波探触子11に植立しても接着してもよい。また、ひげ状物43のその長さは、水流に対する抗力を増やせる長さであれば特に限定する必要はないが、管40の管壁に接触して超音波探触子11を中心に位置させるようにしたり、管40に接触しないようにして摩擦抵抗が生じないようにしたりしてもよい。
なお、図14では、ひげ状物43を超音波探触子11に付加する例について説明したが、ひげ状物43を付加する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0066】
これにより、水流42に対する抗力を増やして水流圧を受けやすくなるとともに、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、管40内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0067】
[実施形態8]
図15は、実施形態8に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、超音波探触子を調芯するための治具の数を増やした場合の構成図である。
図15に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11、調芯治具14と、フレキシブルシャフト16を示した。
【0068】
調芯治具14は、図15に示すように、複数の弾性ワイヤを有して形成される。このようにして形成される調芯治具14を用いると、それぞれの調芯治具14が受ける水流圧の合計が大きくなって水流42に対する抗力が増加する。
よって、水流42から受ける水流圧が増加するために、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。また、超音波探触子11を管40の略中心に位置させる力も大きくなるので、精度が向上する。
【0069】
[実施形態9]
図16は、実施形態9に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の間を繋ぐ部材に円盤を取り付けた場合の構成図である。
図16に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0070】
フレキシブルシャフト16は、図16に示すように、円盤48を複数有している。
円盤48は調芯治具14とは異なり、管40におけるベンド部を通過可能な径以下の直径とする必要があり、必然的に水流圧を受ける面積は小さくなるが、この円盤を複数設けることで水流42に対する抗力を増やすことができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。
【0071】
[実施形態10]
図17は、実施形態10に係る本発明になる管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置の進行方向先頭の構成要素にパラシュート状や円盤状の受水部を取り付けた場合の構成図である。
【0072】
図17に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0073】
図17に示すように、超音波探触子11は水流方向42下流側に、軽量のワイヤ52などで接続されるパラシュート状物50または円盤51を備える。
パラシュート状物50または円盤51は、例えば、アルミやプラスチックなど、軽比重の材料で型持ちするようにして形成される。
【0074】
パラシュート状物50または円盤51は、上述する実施形態9と同様に調芯治具14とは異なり、管40におけるベンド部を通過可能な径以下の直径とする必要があるが、パラシュート状物50は水流42を大きく受け止めて巻き込みが多くなり、水流42に対する抗力を増やすことができる。また、円盤51は、実施形態9と同様に複数設けることで、水流42に対する抗力を増やすことができる。
よって、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。
【0075】
[実施形態11]
図18は、実施形態11に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子表面に毛布のように水に剪断力を生じる部材を設けた場合の構成図である。
【0076】
図18に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0077】
超音波探触子11の表面には、図18に示すように、水流に対して突出する複数の凸部55が設けられている。複数の凸部55は、例えば、表面がざらざらしたものであれば、毛布でもよいし、布状のものに植毛した服ブラシのようなものでもよく、毛布や服ブラシなどを超音波探触子11の表面に貼り付けることによって形成される。
【0078】
これにより、水流42を擾乱させることで、水流42は超音波探触子11近傍で一部が取り込まれ、それが水流42に対する抗力となる。この抗力によって管内挿入式超音波探傷検査装置10が押されるので、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。
なお、図18では、複数の凸部55を超音波探触子11に形成する例について説明したが、複数の凸部55を形成する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0079】
[実施形態12]
図19は、実施形態12に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の水流が当たる側に窪みを設け、水流圧を上昇させた場合の構成図である。
【0080】
図19に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0081】
超音波探触子11は、水流42が当たる側に窪み61が設けられている。
このような窪み61を設けることにより、水流42の巻き込みが多くなり、圧力差が大きくなって水流圧を増やすことができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置10の管40内における移動がスムーズになる。
【0082】
なお、図19では、窪み61を超音波探触子11に形成する例について説明したが、窪み61を形成する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0083】
[実施形態13]
図20は、実施形態13に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に凸凹を設けて水流力を利用する場合の構成図である。
【0084】
図20に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0085】
超音波探触子11は、図20に示すように、水流方向に添った面に凹凸63が設けられている。
凹凸63は、水流42を巻き込み、流体力を発生させるものであれば特に限定されず、図20に示すような円盤状のものであってもよいし、構成要素自体に設けた凹凸であってもよい。
【0086】
このような凹凸63を設けることにより、水流42の巻き込みが多くなり、圧力差が大きくなって水流圧を増やすことができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置10の管40内における移動がスムーズになる。
【0087】
なお、図20では、凹凸63を超音波探触子11に形成する例について説明したが、凹凸63を形成する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0088】
[実施形態14]
図21は、実施形態14に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に管壁との摩擦係数を低減する例えば車輪状物を設けた場合の構成図である。
【0089】
図21に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0090】
図21に示すように、超音波探触子11と管40の内壁との間に、管40の内壁との接触摩擦を低減する車輪状部材もしくはベアリング65を備えてもよい。
ここでは、管40の内壁との接触摩擦を低減するものとして、車輪状部材もしくはベアリングが用いられているが、超音波探触子11が管壁に当接したときに生じる摩擦を小さくするものであれば特に限定されず、フッ素樹脂などの摩擦係数の小さい部材を用いてもよい。
これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置が管40の内壁と接触することによって生じる接触摩擦を低減することができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置は、水流圧だけでスムーズに管内を移動することができる。
【0091】
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってよいのはいうまでもない。
例えば、実施形態1、実施形態2と、実施形態3〜14とを適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、従来は熟練を要した火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管の検査を簡単に行うことができ、火力発電プラント等の熱交換器の管理を精度良く行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0093】
10 管内挿入式超音波探傷検査装置
11 超音波探触子(センサ)
12 パルス発生受信部(Pulser/Receiver)
13 電池(バッテリ)
14 調芯治具
15 先端ガイド
16 フレキシブルシャフト
20 収納容器(防水構造体)
40 管
114 ウォータータービン
116 換算装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内挿入式超音波探傷検査装置に係り、特に、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルや、電源供給や信号送受のためのケーブルを用いず、水流圧で超音波探傷検査装置を移送させながら、火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管の肉厚や傷を測定できるようにした、管内挿入式超音波探傷検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管は、内部に高温、高圧の流体を通すことになるので、管体の傷や割れ、減肉等を検査する必要がある。しかしながら、こういった火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管は、設置された後では周囲に各種構築物が存在することになるため、外部からの探傷、肉厚検査等が難しい。
【0003】
そのため、こういったボイラチューブ等の管内の検査に用いる超音波探触子として、本願出願人は、例えば、一例として特許文献1に示され、図22に構成概略の一例を示したように、フレキシブルシャフト(バネコイル等の弾性材)73で連結された超音波探触子ホルダ72を有し、調芯のため、フレキシブルシャフト73の超音波探触子ホルダ72の前後に対向して配置される2つの弾性ワイヤ端部固定リング78と、そのリング78間の周囲にほぼ等間隔に配置され、周方向に第1の所定傾斜角および軸心に対し第2の所定傾斜角で両端がそれぞれ上記2つのリング78に取付けられる、複数の弾性ワイヤ(調芯治具)77とを有するねじりかご式調芯具83などを備えた管内挿型超音波探触子を種々提案した。
【0004】
なお、この図22において70は管内挿型超音波探触子であり、71は超音波探触子本体、74は管の曲がりにおいても管内挿型超音波探触子70がスムーズに通過できるよう案内する先端ガイド、75はフレキシブルシャフト73と搬送ケーブル76とを接続するためのケーブルジョイント、79はねじりかご式調芯具83の管壁への圧縮圧を略一定に保つためのコイル押バネ、80はバネ圧調節ナット、81はこの管内挿型超音波探触子70が検査する被検管、82は探傷のための超音波伝搬媒質とこの管内挿型超音波探触子70の搬送送水とを兼ねた水である。
【0005】
また、この図22に示した管内挿型超音波探触子70は、管内の移送をコイルバネ等を用いたケーブルによる押し込みで行いながら管の検査を行うもので、その装置構成が本願出願人の出願になる特許文献2に管内挿入式超音波探傷検査装置として示されている。その概略を示したのが図23であり、この図23の管内挿入式超音波探傷検査装置は、先端に挿入装置88が設けられた連結式の案内ロッド90を管寄せ85内に送り込む案内装置89、管寄せ85内に送り込まれた案内ロッド90の終端が結合され、先端に局部水浸用プローブヘッド(図22における超音波探触子本体71)が設けられたコイルバネ94を案内ロッド90内に送り込む送給装置91、およびコイルバネ94内に配設された超音波探傷用ケーブル95と、水ホース96の終端にそれぞれ接続された超音波探傷装置(Pulser/Receiver)97と、水ポンプ98とを備え、ボイラ管86を切断することなく、また大掛りな器材や大量の水を使用することなく、水ポンプ98で送り込まれる水と、送給装置91で管内に送り込まれるコイルバネ94とによって局部水浸用プローブヘッドを管内で移動させ、ボイラ管86内面の超音波探傷を可能としたものである。なお、この図23において、87は検査孔、92は回転式インレットガイド、93は支持架台である。
【0006】
また特許文献3には、信号送受のためのケーブルが接続され、管内に挿入して管壁の異常の有無を検出する超音波測定装置を水圧でスムーズに移動させるため、測定装置本体の前後に可搬性を有する接続体を介して前部調芯移勤部材と後部調芯移動部材とを取り付けると共に、前部調芯部材の前方に前部円錐形案内子を、後部調芯部材の後方に後部円錐形案内子をそれぞれ設け、かつ、前部円錐形案内子と後部円錐形案内子の円錐形底面が互に向き合うように構成して、水圧を効率良く受けて超音波測定装置を効率良く移動させることができるようにした超音波測定装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3040641号公報
【特許文献2】特開平9−145687号公報
【特許文献3】実公昭和62−45167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、熱交換器におけるボイラチューブ等の管は、例えば長さが100mを越えるものもあって非常に長いものがあるが、以上説明してきた特許文献1乃至3においては超音波探触子を、コイルバネ等を用いたケーブルと水の力とを利用して少しずつ管内へ押し込んで移動させており、そのために長いケーブルが必要となる。しかし、こういったコイルバネ等を用いたケーブルが長くなると重量が非常に大きくなると共に、このケーブルは特殊ケーブルのため高額となり、ケーブルの輸送コストも大きくなる。また、そのケーブルを巻き取るために巻取り装置が必要であるが、ケーブルが長いために装置が大型になると共にハンドリングが難しく、検査に熟練と人員を要する。
【0009】
さらに、配管のベンド部(曲がり部)が増えるとこういったコイルバネ等を用いたケーブルとの接触抵抗が増え、ケーブルの流動抵抗が大きいために押し込む水のポンプは大きな力を必要とする。そのためポンプが大型化し、その輸送コストが高くつくと共に測定にこのように種々の装置が必要であるから、設置などのハンドリングが大掛かりになる上にメンテナンスが容易でなくなり、広い機器設置スペースも必要となる。
【0010】
また、管を360度検査するため、チャンネル数を複数設定しても計測不可領域が存在するが、チャンネル数の増加は部品点数とケーブル径を増大させ、故障のリスクが高まると共に肉厚測定装置本体が大きくなり、現場での搬送・組立・調整に時間と労力を要して操作(調整)が複雑化し、最終的には搬送性に影響するためチャンネル数増加に限界が生じる。さらに、専用の高圧電源を確保する必要があるが水を併用するため感電の危険性があり、海外工事においては高額な輸送コストと長い輸送期間が必要、超音波探触子は金属製で比重が大きいためたわみ易く、その際管内面の突起部等と接触して挿入性を低下させる、などの問題がある。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルを用いることなく、水流圧だけでスムーズに管内を移動できるようにした管内挿入式超音波探傷検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る管内挿入式超音波探傷検査装置は、水ポンプにより加圧された水が送り込まれる管に挿入される管内挿入式超音波探傷検査装置であって、前記管の内壁に超音波を照射するとともに、前記超音波の反射波を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、前記超音波探触子で受信される前記超音波の反射波のパルス信号を受信するパルス発生受信部と、前記管の径方向に対して中央に位置するように前記超音波探触子を保持する調芯治具と、前記超音波探触子の水流方向上流側に設けられ、前記水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転するウォータータービンとを備えることを特徴とする。
【0013】
上記管内挿入式超音波探傷検査装置によれば、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブル、及び超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが不要となる。よって、長く高価なケーブルとケーブルの巻取り装置が不要になるとともに、ケーブルの輸送コスト、大型で大きな力のポンプ等が不要となる。また、巻取り装置、ポンプ等を設置するスペースが不要となり、コスト削減が可能となる。さらに、ハンドリングが簡単になることから、検査に対する熟練も不要となるので人員も削減でき、メンテナンスも簡単になる。
また、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが無くなることで、配管のベンド部(曲がり部)での接触抵抗が低減する。よって、管内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0014】
管内に供給される水流は、水ポンプによって加圧されて送り込まれるために流速が一定である。しかし、単に、管内挿入式超音波探傷装置を水流圧で押出すだけでは、管内挿入式超音波探傷装置の速度を安定させることが難しい。管内挿入式超音波探傷装置を用いて一定周期で探傷測定を繰り返す場合、管内を走行する管内挿入式超音波探傷装置の速度が一定でないと測定点数の粗密が発生し、探傷測定の検査結果にムラが生じてしまう。
そこで、上記管内挿入式超音波探傷検査装置は、水流を駆動力とするウォータータービンを備える。この場合、管内に供給される水流の流速が一定であるため、管内挿入式超音波探傷装置は回転数が一定のウォータータービンにより推進し、安定した速度で管内を走行することができる。また、安定した速度で管内を走行することができるので、検査結果にムラがなくなり、検査の精度を向上させることができる。
【0015】
また、前記ウォータータービンの回転数を前記ウォータータービンの移動距離に換算する換算手段を備えてもよい。
これにより、ウォータータービンの移動距離が得られるので、管内における超音波探蝕子の位置を特定することが可能である。よって、管内の傷等の位置を特定することができる。
【0016】
また、前記超音波探触子の水流方向下流側および上流側にそれぞれ設けられ、前記管の両端から発信される音波を受信する受信器と、前記受信器でそれぞれ受信される音波の受信時間の時間差から前記超音波探触子の位置を算出する算出手段とを備えてもよい。
これにより、超音波探触子の位置を算出することができるので、管内の傷等の位置を特定することができる。
【0017】
また、前記超音波探触子の水流方向上流側に浮きを備えてもよい。
管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素は、通常、水に沈降する傾向があり、重力方向に対して下側の管壁に接触し、装置の安定走行に影響を及ぼす恐れがある。しかし、超音波探触子の水流方向上流側に浮きを備えることにより、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、構成要素が水流圧で管の内壁に押しつけられることを防ぐことができ、管内挿入式超音波探傷検査装置を安定した速度で走行させることができる。
【0018】
また、前記水ポンプにより加圧された水の水流方向に沿って形成され、前記水よりも小さい比重を有するひげ状物を備えてもよい。
これにより、水流圧を受けやすくなるとともに、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、管内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0019】
また、前記管の内壁との間に、前記管の内壁との接触摩擦を低減する車輪状部材もしくはベアリングを備えてもよい。
これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置が管の内壁と接触することによって生じる接触摩擦を低減することができるので、水流圧だけでスムーズに管内を移動することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブル、及び超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが不要となる。よって、長く高価なケーブルとケーブルの巻取り装置が不要になるとともに、ケーブルの輸送コスト、大型で大きな力のポンプ等が不要となる。また、巻取り装置、ポンプ等を設置するスペースが不要となり、コスト削減が可能となる。さらに、ハンドリングが簡単になることから、検査に対する熟練も不要となるので人員も削減でき、メンテナンスも簡単になる。
また、超音波探触子への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが無くなることで、配管のベンド部(曲がり部)での接触抵抗が低減する。よって、管内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
さらに、ウォータータービンを備えることで、管内挿入式超音波探傷装置は、安定した速度で管内を走行することができる。よって、検査結果にムラがなくなり、検査の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】ウォータータービンの一例を示す斜視図である。
【図3】実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。
【図4】実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を用いた探傷例を示す概略図である。
【図5】音波送信器が、ボイラチューブの端部に設けられた挿入ノズルを介して装着されている状態を示している。
【図6】音波情報と、受信信号情報の模式図である。
【図7】受信結果と、測定位置を示す図である。
【図8】位置情報を確認するグラフである。
【図9】実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。
【図10】実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の他の構成例を示す図である。
【図11】実施形態4に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。
【図12】実施形態5に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子に用いる帯型可塑性振動子の配置状態を説明するための図である。
【図13】実施形態6に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、浮きを付加した場合の構成図である。
【図14】実施形態7に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、ひげを付加した場合の構成図である。
【図15】実施形態8に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、超音波探触子を調芯するための治具の数を増やした場合の構成図である。
【図16】実施形態9に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の間を繋ぐ部材に円盤を取り付けた場合の構成図である。
【図17】実施形態10に係る本発明になる管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置の進行方向先頭の構成要素にパラシュート状や円盤状の受水部を取り付けた場合の構成図である。
【図18】実施形態11に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子表面に毛布のように水に剪断力を生じる部材を設けた場合の構成図である。
【図19】実施形態12に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の水流が当たる側に窪みを設け、水流圧を上昇させた場合の構成図である。
【図20】実施形態13に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に凸凹を設けて水流力を利用する場合の構成図である。
【図21】実施形態14に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に管壁との摩擦係数を低減する例えば車輪状物を設けた場合の構成図である。
【図22】ケーブルによって管内に押し込んでいた従来の管内挿入式超音波探傷検査装置を説明するための構成概略図である。
【図23】従来の管内挿入式超音波探傷検査装置を用い、火力発電プラント等の熱交換器における管の検査を行うための装置概略を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。図2は、ウォータータービンの一例を示す斜視図である。
【0024】
管内挿入式超音波探傷検査装置10は、図1に示すように、主に、超音波探触子(センサ)11と、パルス発生受信部(Pulser/Receiver)12と、調芯治具14と、ウォータータービン114と、換算装置(換算手段に相当)116とを備える。
また、管内挿入式超音波探傷検査装置10は、管40の曲がり部で引っかからないよう頭を接触させて滑らせながら走行させるための先端ガイド15と、超音波送受信装置12を駆動する電源となる電池(バッテリ)13とを含む。これらの管内挿入式超音波探傷検査装置10の構成要素は、フレキシブルシャフト16で互いに接続される。
【0025】
超音波探触子(センサ)11は、管40の内壁に超音波を照射するとともに、超音波の反射波を受信する。なお、図示しないが、超音波探触子11はパルス電圧を印加することで振動する圧電素子を有する。
【0026】
パルス発生受信部12は、超音波探触子11にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、超音波探触子11で受信される超音波の反射波のパルス信号を受信する。
【0027】
調芯治具14は、管40の径方向に対して中央に位置するように超音波探触子11を保持する。
【0028】
ウォータータービン114は、超音波探触子11の水流方向上流側に設けられ、不図示の水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転する。特に、ウォータータービン114の効果が十分に得られる観点から、ウォータータービン114は、水流方向の最上流側に設けることが好ましい。
ウォータータービン114としては、例えば、図2に示すように、軸114Aの端部に一定の間隔で翼114Bが配置された構成の羽根車が挙げられる。
【0029】
管40内に供給される水流は、水ポンプによって加圧されて送り込まれるために流速が一定である。この場合、管内挿入式超音波探傷装置10は回転数が一定のウォータータービン114により推進し、安定した速度で管内を走行することができる。
よって、上記の管内挿入式超音波探傷検査装置によれば、安定した速度で管内を走行することができるので、管内挿入式超音波探傷装置10を用いて一定周期で探傷測定を繰り返す場合、測定点数の粗密の発生を防止できる。これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置10を用いた管内の探傷検査の検査結果にムラがなくなり、検査の精度を向上させることができる。
【0030】
換算装置116は、ウォータータービン114の回転数をウォータータービン114の移動距離に換算する。
これにより、ウォータータービン114の移動距離が得られるので、管40内における超音波探蝕子11の位置を特定することが可能である。よって、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0031】
なお、図示しないが、換算装置116の代わりに、加速度センサを用いて、位置特定してもよい。一定周期で加速度をモニタリングし、公知の計算手法により加速度から超音波探蝕子11の位置を計算し、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0032】
管内挿入式超音波探傷検査装置10は、不図示の水ポンプにより加圧された水が送り込まれる管40内に挿入され、図1に示すように、水流方向42の水流圧を受けて管40内を走行する。
【0033】
このように、管内挿入式超音波探傷検査装置10は、超音波探触子11への電源供給や信号の送受のためのケーブル、及び超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが不要となる。よって、長く高価なケーブルとケーブルの巻取り装置が不要になるとともに、ケーブルの輸送コスト、大型で大きな力のポンプ等が不要となる。また、巻取り装置、ポンプ等を設置するスペースが不要となり、コスト削減が可能となる。さらに、ハンドリングが簡単になることから、検査に対する熟練も不要となるので人員も削減でき、メンテナンスも簡単になる。
また、超音波探触子11への電源供給や信号の送受のためのケーブルと、超音波探傷検査装置の管内移送のためのコイルバネ等を用いたケーブルが無くなることで、管40のベンド部での接触抵抗が低減する。よって、管40内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置10を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0034】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置について説明する。
図3は、実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。図4は、実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を用いた探傷例を示す概略図である。図5は、音波送信器が、ボイラチューブの端部に設けられた挿入ノズルを介して装着されている状態を示している。図6は、音波情報と、受信信号情報の模式図である。図7は、受信結果と、測定位置を示す図である。図8は、位置情報を確認するグラフである。
【0035】
実施形態2に係る管内挿入式超音波探傷検査装置100は、図1に示す換算装置116を用いた管40内における超音波探蝕子11の位置特定の手法が異なる点を除けば、図1で説明した管内挿入式超音波探傷検査装置10と同一の構成である。なお、図3には説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、電池13と、ウォータータービン114と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11と調芯治具14とを示した。
また、実施形態1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0036】
管内挿入式超音波探傷検査装置100は、図3に示すように、超音波探蝕子11の位置特定するものとして、受信器103−1、103−2と、記憶装置104−1、104−2と、算出部(算出手段に相当)106とを備える。
【0037】
受信器103−1、103−2は、超音波探触子11の水流方向下流側および上流側にそれぞれ設けられ、管40の両端から発信される音波101を受信する。図3では、超音波探触子11の水流方向下流側に設けられる受信器を前方側受信器103−1、超音波探触子11の水流方向上流側の受信器を後方側受信機103−2とする。
【0038】
記憶装置104−1、104−2は、前方側受信器103−1および後方側受信機103−2で音波101を受信した時間のデータ情報を記憶する。
なお、図3では、記憶装置を2台設けて、水流方向下流側の記憶装置104−1と、水流方向上流側の記憶装置104−2とで独立してその時間データを記憶するようにしているが、これに限定されることなく、記憶装置を1台として共用するようにしてもよい。
【0039】
算出部106は、前方側受信器103−1および後方側受信機103−2でそれぞれ受信される音波101の受信時間の時間差から超音波探触子11の位置を算出する。このように、超音波探触子11の位置を算出することができるので、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0040】
音波101は、図4に示すように、管40の両端の出入り口部40a、40bにそれぞれ設けられる音波送信機102−1、102−2によって発信される。
音波送信機102−2は、図5に示すように、管40の出入り口部40bに設けられた挿入ノズル109を介して装着されていてもよい。また、図示しないが音波送信機102−2と同様に、音波送信機102−1は、管40の出入り口部40aに設けられた挿入ノズル109を介して装着されていてもよい。
【0041】
音波送信機102−1、102−2から同時に発射された音波101は、前方側受信機103−1及び後方側受信機103−2で受信され、その時間情報を記憶装置104−1、104−2で記憶させる。その後、算出部を用いて、記憶装置104−1、104−2に記憶させておいた時間情報から音波探触子11の位置を算出する。
【0042】
例えば、管内挿入式超音波探傷検査装置100では、位置情報を取得するために、先ず、管40の両端に設けた音波送信装置102−1、102−2から音波101を一秒毎に発射させる。
その発射された音波は、図6に示すように、前方側受信機103−1の受信信号の情報(T1、T3・・・Tm)として記憶されるとともに、後方側受信機103−2の受信信号の情報(T2、T4・・・Tn)として記憶される。
その結果、前方側受信機103−1と後方側受信機103−2においては、図7に示すような時間信号が記憶される。
そして、図8に示すように、Δtが0になるときには、管40の長さは全長の1/2となり、Δtが最小又は最大となるときには、管40の長さの全長となることとなる。このようにして、算出部では、時間情報から管40内における音波探触子11の位置が算出される。
【0043】
よって、検査が終了した後、音波101を受信した時間のデータと、肉厚測定データとを整合させて、ボイラチューブ等の管の探傷、肉厚検査等の情報の位置を特定することができる。
【0044】
[実施形態3]
図9は、実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す図である。図10は、実施形態3に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の他の構成例を示す図である。
【0045】
実施形態1および実施形態2で述べた超音波探蝕子11の位置特定の手法の他に、例えば、図9に示すように、超音波探触子(センサ)11の先端側にエンコーダ記憶装置110を設け、管40の内壁にローラ形状の車輪状部材111を接触させることで距離を計測するようにしてもよい。ここでは、管40の内壁の凹凸に対応するように、凹凸のローラ形状の車輪状部材とすることで、管40の内壁との接触摩耗を低減するようにしている。
これにより、車輪状部材111の回転速度より距離を算出し、上述の記憶装置に記憶させることで、管40内における超音波探蝕子11の位置を特定することが可能である。よって、管40内の傷等の位置を特定することができる。
【0046】
また、図10に示すように、図9に示したローラ形状の車輪状部材を111A及び111Bとして二方向に装着させて、走行の安定性を向上させるようにしてもよい。ここでは、ばね112を利用することにより、管40の内壁に対して微力な圧力をかけて管40の内壁と接触させている。
図9と同様に、管40内における超音波探蝕子11の位置を特定することが可能である。
【0047】
[実施形態4]
図11は、実施形態4に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の一例を示す概略構成図である。
管内挿入式超音波探傷検査装置10は、図11に示すように、収納容器(防水構造体)20に収納してもよい。なお、管内挿入式超音波探傷検査装置10は、図1と同様に、超音波探触子(センサ)11と、パルス発生受信部(Pulser/Receiver)12と、電池13などを含む。
【0048】
収納容器(防水構造体)20は、例えば、PP樹脂などの水より比重の軽い材料により円形、または楕円形などに形成し、防水構造として内部に空気を閉じこめられるようにする。これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置10が水中に浮いた状態で搬送され、管内面に突起等があっても接触して摩擦を生じたりすることがなくなる。
【0049】
収納容器20は、超音波探触子11を収容する収納部21と、パルス発生受信部12を収容する収納部22と、電池13を収容して蓋24で塞いで一端を閉じることができるようにした収納部23と、収納部21、22、23を互いに接続するPVCなどの軟質ゴムで形成したフレキシブルシャフト16とを含む。
【0050】
それぞれの収納部21、22、23は前記したように円形、または楕円形などに形成することで管壁に接触したとき、摩擦抵抗が少なくなるような形状に構成することが好ましいが、多角柱形状に形成しても良い。
【0051】
また、収納部21、22、23を繋ぐフレキシブルシャフト16は、図11では簡略化して描いてあるが、収納部21、22、23との接続部をネジ状に形成してしっかりと結合できるようにするとともに、確実な防水構造とすることが必要である。そのため、例えば、ガスのコンセントとガス管の接合部のように、一端を凹凸状に形成してフレキシブルシャフト16を強力な押し込み力で押し込むようにしたり、防水用油などを用いたりすることで防水構造とする。また、管40のベンド部で管内挿入式超音波探傷検査装置10がスムーズに通過できるように、フレキシビリティを大きくすることが好ましい。
【0052】
[実施形態5]
図12は、実施形態5に係る管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子に用いる帯型可塑性振動子の配置状態を説明するための図である。
【0053】
まず、超音波探触子(センサ)11の周囲360度の検査を一度で行えるような機構であるが、従来用いられていた超音波探触子は剛体であるため、その振動子により発せられる超音波のスキャンできる範囲が限られる。図12(A)に示すように、例え4チャンネル用いたとしても狭いスキャン範囲31しか得られなかった。
【0054】
これに対し、最近、例えば、曲面に配した超音波振動子が出現している。この超音波振動子を、図12(B−1)および図12(B−2)に示すように、超音波探触子11の中心部33にその曲率に合わせて4つ配し、それぞれのスキャン範囲34を90度とすることで、中心部33の周囲360度を一度でスキャンできるようにすることができる。
なお、図12(B−1)および図12(B−2)は、説明を分かり易くするために4つの帯型振動子30を2つに分けて示しているが、実際には中心部33の周囲に90度ずつ角度を異ならせて4つ配するようにする。上述の例では超音波振動子を4つ配した場合を示したが、振動子の対応角度に応じ、6つまたは8つ配するようにしてもよい。
【0055】
そして超音波探触子11から得られる管壁からのエコー信号は、パルス発生受信部12に設けた図示していないメモリに記憶し、この管内挿入式超音波探傷検査装置10がボイラチューブ等の管40から排出された後、パソコンなどにデータだけ取り出して傷や減肉などの所在を解析する。
【0056】
そのとき、管内挿入式超音波探傷検査装置10の管40内における位置が問題となるが、例えばボイラチューブ等の配管のベンド部(曲がり部)や配管の溶接部は特有なエコーが生じるから、それら特有なエコーとエコーの時間間隔を計り、間を均等割したり、管内挿入式超音波探傷検査装置10から位置情報認識のための信号を発信する発信器を設け、その信号から位置を求めるようにしてもよい。
【0057】
このようにすることにより、容易に管40を360度検査することができ、しかも従来装置のように部品点数とケーブル径の増大といった問題を招くことがない。また、故障のリスクが高まったり、肉厚測定装置本体が大きくなることがなく、現場での搬送・組立・調整、操作も容易となり、感電の危険性、高額な輸送コストと長い輸送期間なども不要となる。
【0058】
[実施形態6]
次に、管内挿入式超音波探傷検査装置10における水流圧による管内移動を容易化させる機構について説明する。
図13は、実施形態6に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、浮きを付加した場合の構成図である。
【0059】
図13に示す管内挿入式超音波探傷検査装置10は、超音波探触子11に付加した浮きを付加する点を除けば、図1で説明した管内挿入式超音波探傷検査装置10と同一の構成であるので、その図示を一部省略する。また、実施形態1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0060】
浮き41は、図13に示すように、超音波探触子11の水流方向42上流側に備えることが好ましい。
浮き41を超音波探触子11の下流側に付加した場合、超音波探触子11が水流圧で管40の内壁に押しつけられ、摩擦が増大する可能性があるのに対し、超音波探触子11の上流側に浮き41を付加すると、超音波探触子11が水流圧で管40の壁に押しつけられることがないので、管40の中を水流圧でスムーズに移動させることができる。
【0061】
また、浮き41は、比重が水より軽い樹脂などで空気を閉じこめて形成されたり、軽い木で作成される。
管内挿入式超音波探傷検査装置10の構成要素は、通常、水に沈降する傾向があり、重力方向に対して下側の管壁に接触し、装置の安定走行に影響を及ぼす恐れがある。しかし、超音波探触子11の水流方向上流側に浮き41を備えることにより、管内挿入式超音波探傷検査装置10の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、構成要素が水流圧で管40の内壁に押しつけられることを防ぐことができ、管内挿入式超音波探傷検査装置10を安定した速度で走行させることができる。
【0062】
なお、浮き41は、超音波探触子11の他に、例えば、重量の重い電池(バッテリ)13に設けてもよいし、管内挿入式超音波探傷検査装置10の全ての構成要素に設けてもよい。
【0063】
[実施形態7]
図14は、実施形態7に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動を容易にするための構成例で、ひげを付加した場合の構成図である。
図14に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0064】
超音波探触子11は、図14に示すように、不図示の水ポンプにより加圧された水の水流方向42に沿って形成され、水よりも小さい比重を有するひげ状物43を備えてもよい。
【0065】
ひげ状物43は、比重が水より軽い例えば樹脂または炭素繊維であることが好ましく、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素である超音波探触子11に植立しても接着してもよい。また、ひげ状物43のその長さは、水流に対する抗力を増やせる長さであれば特に限定する必要はないが、管40の管壁に接触して超音波探触子11を中心に位置させるようにしたり、管40に接触しないようにして摩擦抵抗が生じないようにしたりしてもよい。
なお、図14では、ひげ状物43を超音波探触子11に付加する例について説明したが、ひげ状物43を付加する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0066】
これにより、水流42に対する抗力を増やして水流圧を受けやすくなるとともに、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素の重量に起因する構成要素と管壁との接触を低減することができる。よって、管40内に挿入した管内挿入式超音波探傷検査装置を水流圧だけでスムーズに移動させることができる。
【0067】
[実施形態8]
図15は、実施形態8に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、超音波探触子を調芯するための治具の数を増やした場合の構成図である。
図15に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11、調芯治具14と、フレキシブルシャフト16を示した。
【0068】
調芯治具14は、図15に示すように、複数の弾性ワイヤを有して形成される。このようにして形成される調芯治具14を用いると、それぞれの調芯治具14が受ける水流圧の合計が大きくなって水流42に対する抗力が増加する。
よって、水流42から受ける水流圧が増加するために、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。また、超音波探触子11を管40の略中心に位置させる力も大きくなるので、精度が向上する。
【0069】
[実施形態9]
図16は、実施形態9に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の間を繋ぐ部材に円盤を取り付けた場合の構成図である。
図16に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0070】
フレキシブルシャフト16は、図16に示すように、円盤48を複数有している。
円盤48は調芯治具14とは異なり、管40におけるベンド部を通過可能な径以下の直径とする必要があり、必然的に水流圧を受ける面積は小さくなるが、この円盤を複数設けることで水流42に対する抗力を増やすことができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。
【0071】
[実施形態10]
図17は、実施形態10に係る本発明になる管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置の進行方向先頭の構成要素にパラシュート状や円盤状の受水部を取り付けた場合の構成図である。
【0072】
図17に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0073】
図17に示すように、超音波探触子11は水流方向42下流側に、軽量のワイヤ52などで接続されるパラシュート状物50または円盤51を備える。
パラシュート状物50または円盤51は、例えば、アルミやプラスチックなど、軽比重の材料で型持ちするようにして形成される。
【0074】
パラシュート状物50または円盤51は、上述する実施形態9と同様に調芯治具14とは異なり、管40におけるベンド部を通過可能な径以下の直径とする必要があるが、パラシュート状物50は水流42を大きく受け止めて巻き込みが多くなり、水流42に対する抗力を増やすことができる。また、円盤51は、実施形態9と同様に複数設けることで、水流42に対する抗力を増やすことができる。
よって、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。
【0075】
[実施形態11]
図18は、実施形態11に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する超音波探触子表面に毛布のように水に剪断力を生じる部材を設けた場合の構成図である。
【0076】
図18に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0077】
超音波探触子11の表面には、図18に示すように、水流に対して突出する複数の凸部55が設けられている。複数の凸部55は、例えば、表面がざらざらしたものであれば、毛布でもよいし、布状のものに植毛した服ブラシのようなものでもよく、毛布や服ブラシなどを超音波探触子11の表面に貼り付けることによって形成される。
【0078】
これにより、水流42を擾乱させることで、水流42は超音波探触子11近傍で一部が取り込まれ、それが水流42に対する抗力となる。この抗力によって管内挿入式超音波探傷検査装置10が押されるので、管内挿入式超音波探傷検査装置の管40内における移動がスムーズになる。
なお、図18では、複数の凸部55を超音波探触子11に形成する例について説明したが、複数の凸部55を形成する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0079】
[実施形態12]
図19は、実施形態12に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素の水流が当たる側に窪みを設け、水流圧を上昇させた場合の構成図である。
【0080】
図19に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0081】
超音波探触子11は、水流42が当たる側に窪み61が設けられている。
このような窪み61を設けることにより、水流42の巻き込みが多くなり、圧力差が大きくなって水流圧を増やすことができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置10の管40内における移動がスムーズになる。
【0082】
なお、図19では、窪み61を超音波探触子11に形成する例について説明したが、窪み61を形成する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0083】
[実施形態13]
図20は、実施形態13に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に凸凹を設けて水流力を利用する場合の構成図である。
【0084】
図20に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0085】
超音波探触子11は、図20に示すように、水流方向に添った面に凹凸63が設けられている。
凹凸63は、水流42を巻き込み、流体力を発生させるものであれば特に限定されず、図20に示すような円盤状のものであってもよいし、構成要素自体に設けた凹凸であってもよい。
【0086】
このような凹凸63を設けることにより、水流42の巻き込みが多くなり、圧力差が大きくなって水流圧を増やすことができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置10の管40内における移動がスムーズになる。
【0087】
なお、図20では、凹凸63を超音波探触子11に形成する例について説明したが、凹凸63を形成する対象は、管内挿入式超音波探傷検査装置の構成要素であれば特に限定されない。
【0088】
[実施形態14]
図21は、実施形態14に係る管内挿入式超音波探傷検査装置の管内における移動力を大きくするための構成例で、管内挿入式超音波探傷検査装置を構成する要素に管壁との摩擦係数を低減する例えば車輪状物を設けた場合の構成図である。
【0089】
図21に示す管内挿入式超音波探傷検査装置は、説明を簡単にするために、パルス発生受信部12と、ウォータータービン114と、電池13と、調芯治具14と、先端ガイド15とを省略し、超音波探触子11およびフレキシブルシャフト16を示した。
【0090】
図21に示すように、超音波探触子11と管40の内壁との間に、管40の内壁との接触摩擦を低減する車輪状部材もしくはベアリング65を備えてもよい。
ここでは、管40の内壁との接触摩擦を低減するものとして、車輪状部材もしくはベアリングが用いられているが、超音波探触子11が管壁に当接したときに生じる摩擦を小さくするものであれば特に限定されず、フッ素樹脂などの摩擦係数の小さい部材を用いてもよい。
これにより、管内挿入式超音波探傷検査装置が管40の内壁と接触することによって生じる接触摩擦を低減することができる。よって、管内挿入式超音波探傷検査装置は、水流圧だけでスムーズに管内を移動することができる。
【0091】
以上、本発明の一例について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってよいのはいうまでもない。
例えば、実施形態1、実施形態2と、実施形態3〜14とを適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、従来は熟練を要した火力発電プラント等の熱交換器におけるボイラチューブ等の管の検査を簡単に行うことができ、火力発電プラント等の熱交換器の管理を精度良く行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0093】
10 管内挿入式超音波探傷検査装置
11 超音波探触子(センサ)
12 パルス発生受信部(Pulser/Receiver)
13 電池(バッテリ)
14 調芯治具
15 先端ガイド
16 フレキシブルシャフト
20 収納容器(防水構造体)
40 管
114 ウォータータービン
116 換算装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ポンプにより加圧された水が送り込まれる管に挿入される管内挿入式超音波探傷検査装置であって、
前記管の内壁に超音波を照射するとともに、前記超音波の反射波を受信する超音波探触子と、
前記超音波探触子にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、前記超音波探触子で受信される前記超音波の反射波のパルス信号を受信するパルス発生受信部と、
前記管の径方向に対して中央に位置するように前記超音波探触子を保持する調芯治具と、
前記超音波探触子の水流方向上流側に設けられ、前記水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転するウォータータービンとを備えることを特徴とする管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項2】
前記ウォータータービンの回転数を前記ウォータータービンの移動距離に換算する換算手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項3】
前記超音波探触子の水流方向下流側および上流側にそれぞれ設けられ、前記管の両端から発信される音波を受信する受信器と、
前記受信器でそれぞれ受信される音波の受信時間の時間差から前記超音波探触子の位置を算出する算出手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項4】
前記超音波探触子の水流方向上流側に浮きを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項5】
前記水ポンプにより加圧された水の水流方向に沿って形成され、前記水よりも小さい比重を有するひげ状物を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項6】
前記管の内壁との間に、前記管の内壁との接触摩擦を低減する車輪状部材もしくはベアリングを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項1】
水ポンプにより加圧された水が送り込まれる管に挿入される管内挿入式超音波探傷検査装置であって、
前記管の内壁に超音波を照射するとともに、前記超音波の反射波を受信する超音波探触子と、
前記超音波探触子にパルス電圧を印加して超音波を発生させるとともに、前記超音波探触子で受信される前記超音波の反射波のパルス信号を受信するパルス発生受信部と、
前記管の径方向に対して中央に位置するように前記超音波探触子を保持する調芯治具と、
前記超音波探触子の水流方向上流側に設けられ、前記水ポンプにより加圧された水を駆動源として回転するウォータータービンとを備えることを特徴とする管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項2】
前記ウォータータービンの回転数を前記ウォータータービンの移動距離に換算する換算手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項3】
前記超音波探触子の水流方向下流側および上流側にそれぞれ設けられ、前記管の両端から発信される音波を受信する受信器と、
前記受信器でそれぞれ受信される音波の受信時間の時間差から前記超音波探触子の位置を算出する算出手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項4】
前記超音波探触子の水流方向上流側に浮きを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項5】
前記水ポンプにより加圧された水の水流方向に沿って形成され、前記水よりも小さい比重を有するひげ状物を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【請求項6】
前記管の内壁との間に、前記管の内壁との接触摩擦を低減する車輪状部材もしくはベアリングを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の管内挿入式超音波探傷検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−75383(P2011−75383A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226598(P2009−226598)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]