説明

管内検査カメラ装置

【課題】作業性に優れた、信頼性の高いカメラヘッドの滑動部被嵌構造を有する管内検査カメラ装置を提供する。
【解決手段】円筒状胴体部11の外周面に係合用溝部12を設けたカメラヘッド10と、胴体部11の先端側からカメラヘッド10に脱着可能に被嵌され、内周面に螺合部22bを有する後部スキッド部材22と、胴体部11の先端側からカメラヘッド10に脱着可能に被嵌され、係合用溝部12に係合する爪部21cを有するとともに、後部スキッド部材22の螺合部22bに螺合する螺合部21bを有し、螺合部21b,22b相互を螺着することにより、爪部21cを溝部12に係止させて、後部スキッド部材22と結合するスキッド部材21と、前部スキッド部材21および後部スキッド部材22の外周面に設けられ、拡径方向に膨出する滑動部fa,fbとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管、下水管、ガス管などの検査に適用して好適な管内検査カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管、下水管、ガス管などを検査対象とする管内検査カメラ装置として、弾発性を有するハードケーブルの先端にカメラヘッドを取り付けて、ハードケーブルにより、カメラヘッドを検査対象管内へ挿入し、カメラヘッドにより管内を撮影する、ハードケーブルカメラと称される押し込み型管内検査カメラ装置が存在する。
【0003】
この種、押し込み型管内検査カメラ装置においては、カメラヘッドが検査対象管内の管底を摺動しながら内周壁を撮影する。従って、検査対象となる配管の内径とカメラヘッドの外径との径差が大きい程、カメラのレンズ中心と内周壁の上壁面と下壁面との距離差が大きくなり、管内を全周壁に亘って検査する際に、全周壁に亘る鮮明な映像を取得することができないという問題が生じる。この問題は検査対象となる配管の内径に応じてカメラヘッドを使い分けることにより解消されるが、検査対象となる配管の内径が多岐に亘るとき、外径を異にする複数のカメラヘッドを用意する必要がある。上記問題を解消する他の方法として、カメラヘッドの胴体に筒状の滑り部材を被嵌して、カメラのレンズ中心を管径の中心に近づける方法が考えられる。この場合、曲所を含む配管内で、剛性をもつハードケーブルにより押し込み、引き出し操作されるカメラヘッドに被嵌される滑り部材には、a.管径サイズに合せて着脱可能なこと、b.着脱作業は、作業者が簡単に行なえること、c.検査中、不用意に外れないこと、d.単純な形状で、壊れ難い堅牢な構造であること、e.押込み性を考慮し、軽量で、曲管内を含め滑らかに摺動操作できること、g.カメラヘッドの後端にハードケーブルが接続されているため、カメラヘッドの先端側からのみ、着脱(交換)が可能であること、などの条件が要求される。従来では、これらの条件を満たす、作業性に優れた、信頼性の高いカメラヘッドの滑動部被嵌構造が存在しなかった。この種、カメラヘッドに対する外周部材の被嵌技術として、従来では、医療用内視鏡において、挿入補助具(70)の先端部(75)を連結部(77)によって覆う構造が存在した。
【特許文献1】特願2007−330467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、水道管、下水管、ガス管などの管内検査に適用される管内検査カメラ装置において、従来では、作業性に優れた、信頼性の高いカメラヘッドの滑動部被嵌構造を有する管内検査カメラ装置が存在しなかった。
【0005】
この発明は、作業性に優れた、信頼性の高いカメラヘッドの滑動部被嵌構造を有する管内検査カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、円筒状胴体部の外周面に係合用溝部を設けたカメラヘッドと、前記胴体部の先端側から前記カメラヘッドに脱着可能に被嵌され、内周面に螺合部を有する後部スキッド部材と、前記胴体部の先端側から前記カメラヘッドに脱着可能に被嵌され、前記係合用溝部に係合する爪部を有するとともに、前記後部スキッド部材の螺合部に螺合する螺合部を有し、前記螺合部相互を螺着することにより、前記爪部を前記溝部に係止させて、前記後部スキッド部材と結合する前部スキッド部材と、前記後部スキッド部材および前記前部スキッド部材の外周面に設けられ、拡径方向に膨出する滑動部とを具備した管内検査カメラ装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業性に優れた、信頼性の高いカメラヘッドの滑動部被嵌構造を有する管内検査カメラ装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置のカメラヘッド部の要部の構成要素を示す側面図、図2は同実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の要部の構成要素を示す斜視図、図3および図4は同実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置の滑動部被嵌構造の取付手順および取付状態を示す側面図である。
【0009】
本発明の実施形態に係る押し込み型管内検査カメラ装置は、図1および図2に示すように、円筒状胴体部11の外周面に係合用溝部12を設けたカメラヘッド10と、上記胴体部11の先端側から上記カメラヘッド10に脱着可能に被嵌され、内周面に螺合部22bを有する後部スキッド部材22と、上記胴体部11の先端側から上記カメラヘッド10に脱着可能に被嵌され、上記係合用溝部12に係合する爪部21cを有するとともに、上記後部スキッド部材22の螺合部22bに螺合する螺合部21bを有し、上記螺合部21b,22b相互を螺着することにより、上記爪部21cを上記溝部12に係止させて、上記後部スキッド部材22と結合する前部スキッド部材21と、上記前部スキッド部材21および上記後部スキッド部材22の外周面に設けられ、拡径方向に膨出する滑動部fa,fbとを具備して構成されている。上記互いに結合された前部スキッド部材21および後部スキッド部材22はカメラスキッド20を構成し、上記滑動部fa,fbにより摺動面部20f(図4、図6参照)を構成している。
【0010】
カメラヘッド10は、例えばφ20mm程度の小型サイズカメラであり、押し込み型管内検査カメラのカメラヘッドを構成している。このカメラヘッド10の先端部には、レンズフードを含むレンズ組立13が設けられ、上記カメラヘッド10の内部には、そのレンズ光軸(C)上にイメージセンサ(図示せず)が設けられている。また上記カメラヘッド10の後端には、このカメラヘッド10を検査対象となる配管内で押し込み、引き出し操作する、上記イメージセンサから出力される映像信号の伝送線路およびカメラ電源の伝送線路を内包した、弾発性を有するハードケーブル1が接続されている。このハードケーブル1は、ケーブル収納機構(図示せず)に、例えばドラムに巻装した状態で収納され、検査時にケーブル収納機構からカメラヘッド10とともに引き出して使用される。
【0011】
カメラヘッド10の胴体部11には、その外周面に、図1および図2に示すように、円環状に切欠した係合用溝部12が設けられ、この係合用溝部12が、管内検査時においてカメラスキッド20がカメラヘッド10から外れないよう、カメラスキッド20をカメラヘッド10に一体に取着する抜け止め用の係止部として作用する。
【0012】
前部スキッド部材21は、図2および図3に示すように、前部に開口部21aを有し、円筒状外周面に螺合部21bを有し、この螺合部21bから突出して爪部21cを有し、円筒状外周面に滑動部faを形成している。後部スキッド部材22は、図2および図3に示すように、円筒状内周面に押圧部22aと螺合部22bを有し、円筒状外周面に滑動部fbを形成している。なお、螺合部21bと螺合部22bは同一ピッチのねじ山とねじ溝の螺刻により形成される。
【0013】
図2および図3に示す、前部スキッド部材21の外周面に形成された滑動部faと、後部スキッド部材22の外周面に形成された滑動部fbは、それぞれ合成樹脂により形成され、前部スキッド部材21と後部スキッド部材22を螺合部21b,22bにより一体に結合したとき、その外周面に、図4に示すように、連続する球面形状の摺動面部20f(図4、図6参照)を形成する。この球面形状の摺動面部20fによって、カメラヘッド10を配管内で押し込み、引き出し操作したとき、カメラヘッド10を曲管(エルボ管)を含む配管内でスムーズに移動(摺動)できる。
【0014】
爪部21cは、図2に示すように、スキッド部材21の後端に突出して設けられている。爪部21cは、図3および図4に拡大して示すように、前部スキッド部材21の径方向に弾性を有し、前部スキッド部材21と後部スキッド部材22を結合したとき、後部スキッド部材22の内壁に形成された押圧部22aに押圧され、溝部12と係合した状態を保持される。
【0015】
上記カメラスキッド20をカメラヘッド10に取着していない場合と、カメラスキッド20をカメラヘッド10に一体に取着した場合とにおける、カメラヘッド10の光軸位置と管中心位置との関係を図5および図6に示している。ここでは、検査対象となる配管2の管径(内径)がカメラヘッド10の外径の略2倍である場合を例に、断面図(a)および側面図(b)を示している。カメラスキッド20をカメラヘッド10に取着していない場合の光軸(C)と管中心(2c)との位置関係を図5(a)および(b)に示し、管径に合わせてカメラスキッド20をカメラヘッド10に取着した場合の光軸(C)と管中心(2c)との位置関係を図6(a)および(b)に示している。なお、図5および図6(b)に示す矢印は、配管2内におけるカメラヘッド10の押し込み、引き出し方向を示している。図5に示す例は、光軸(C)に対して管中心(2c)が上方に位置し、管底面と管天井面との距離差が大きいことから、カメラヘッド10で撮影した映像には、配管2内の全周壁に対し、管底面と管天井面とで照明の不均一およびフォーカスのずれが生じ、全周壁に亘る鮮明な映像が取得できない。これに対して、図6に示す例は、光軸(C)の近傍に管中心(2c)が位置することから、配管2内を全周壁に亘り均等に照明できるとともに、全周壁に亘りフォーカスのずれが殆どなく、高精細の鮮明な映像が取得できる。
【0016】
上記したカメラスキッド20の取付並びに交換作業は、作業者の簡単な作業で迅速かつ確実に行うことができる。カメラヘッド10にカメラスキッド20を取り付ける際は、図1に示す、係合用溝部12を有するカメラヘッド10の胴体部11に、図2および図3に示す後部スキッド部材22を、カメラヘッド10の先端側から被嵌する(カメラヘッド10の後端側にはハードケーブル1が接続されているため)。この際、螺合部22bがカメラヘッド10の前方側に向くように、挿入方向を確認して、後部スキッド部材22をカメラヘッド10に被嵌する。
【0017】
続いて、カメラヘッド10の胴体部11に、前部スキッド部材21、カメラヘッド10の先端側から被嵌し、爪部21cを係合用溝部12に嵌合して、螺合部21b,22b相互を螺着し、前部スキッド部材21と後部スキッド部材22を一体に結合する。
【0018】
この結合により、爪部21cが係合用溝部12に係合した状態で後部スキッド部材22の内壁に形成された押圧部22aに押圧され、爪部21cが、溝部12から外れないよう、抜け止めされた状態に保持される。
【0019】
これにより、カメラスキッド20が、配管2内での押し込み、引き出し方向に対して、カメラヘッド10から外れる虞なく、カメラヘッド10に一体に結合され、検査中にカメラスキッド20が不用意に外れる不祥事を確実に回避することができる。
【0020】
また、前部スキッド部材21と後部スキッド部材22の結合により、前部スキッド部材21と後部スキッド部材22の外周面に、図4および図6に示すように、連続する球面形状の摺動面部20fが形成される。この球面形状の摺動面部20fによって、カメラヘッド10を配管内で押し込み、引き出し操作したとき、カメラヘッド10を曲管(エルボ管)を含む配管2内でスムーズに移動(摺動)でき、配管2内の通過性能を向上させて、管内検査を円滑に効率よく実施できる。また上記球面形状の摺動面部20fは、合成樹脂による軽量かつ簡単な構造であることから、摺動操作に対して堅牢であるとともに、より作業性を向上できる。
【0021】
カメラスキッド20をカメラヘッド10から取り外す際は、上記した螺合部21b,22bの螺合を解除する。この螺合解除により、爪部21cの係合用溝部12への嵌合状態が解かれ、カメラスキッド20をカメラヘッド10から簡単に取り外すことができる。従ってカメラスキッド20の交換作業も簡単かつ迅速に行うことができる。
【0022】
上記したように、本発明の実施形態によれば、作業性に優れた、信頼性の高いカメラヘッドの滑動部被嵌構造を有する管内検査カメラ装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る管内検査カメラ装置のカメラヘッドの要部の構成を示す側面図。
【図2】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置の要部の構成を示す斜視図。
【図3】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置の滑動部被嵌構造の取付手順および取付状態を示す側面図。
【図4】上記実施形態に係る管内検査カメラ装置の滑動部被嵌構造の取付手順および取付状態を示す側面図。
【図5】上記実施形態においてカメラスキッドをカメラヘッドに取着していない場合におけるカメラヘッドの光軸位置と管中心位置との関係を示す図。
【図6】上記実施形態においてカメラスキッドをカメラヘッドに取着した場合におけるカメラヘッドの光軸位置と管中心位置との関係を示す図。
【符号の説明】
【0024】
1…ハードケーブル、2…配管、10…カメラヘッド、11…胴体部、12…係合用溝部、13…レンズ組立、20…カメラスキッド、20f…摺動面部、21…前部スキッド部材、21a…開口部、21b…螺合部、21c…爪部、fa…滑動部、22…後部スキッド部材、22a…押圧部、22b…螺合部、fb…滑動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状胴体部の外周面に係合用溝部を設けたカメラヘッドと、
前記胴体部の先端側から前記カメラヘッドに脱着可能に被嵌され、内周面に螺合部を有する後部スキッド部材と、
前記胴体部の先端側から前記カメラヘッドに脱着可能に被嵌され、前記係合用溝部に係合する爪部を有するとともに、前記後部スキッド部材の螺合部に螺合する螺合部を有し、前記螺合部相互を螺着することにより、前記爪部を前記溝部に係止させて、前記後部スキッド部材と結合する前部スキッド部材と、
前記後部スキッド部材および前記前部スキッド部材の外周面に設けられ、拡径方向に膨出する滑動部と
を具備したことを特徴とする管内検査カメラ装置。
【請求項2】
前記滑動部は、前記後部スキッド部材と前記前部スキッド部材とを結合したとき、その外周面に連続する球面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項3】
前記爪部は、前記前部スキッド部材の径方向に弾性を有し、前記後部スキッド部材と前記前部スキッド部材とを結合したとき、前記後部スキッド部材の内壁によって前記溝部と係合状態を保持されることを特徴とする請求項2に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項4】
前記後部スキッド部材は、内壁に、前記爪部を前記溝部に押圧する押圧部を有することを特徴とする請求項3に記載の管内検査カメラ装置。
【請求項5】
前記胴体部の後端側は、前記カメラヘッドを検査対象管内で、押し込み、引き出し操作する、前記カメラヘッドで撮影した映像信号の伝送線路を内包したハードケーブルに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の押し込み型管内検査カメラ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−102244(P2010−102244A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275562(P2008−275562)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】