説明

管内計測システムおよび計測装置

【課題】外部からの電源の供給及び充電を必要とせずに管内の計測と無線通信を行う。
【解決手段】計測装置10は、当該計測装置10を駆動するための電力を供給する電池7aと、周囲環境からエネルギーを取り込み、電気的エネルギーに変換して電池7aを充電するための電力を発電する発電部7bを具備する。無線通信部12は、識別番号の順序に従って他の計測装置と無線通信を行う。計測センサ部5は管内を流れる流体の状態を、非接触で計測して計測データを得る。データパケット生成部41は、計測された計測データの種類を示すリピートマーカの後に、計測データを配列したデータパケットを生成する。無線受信部11は、他の計測装置から送られてくるデータパケットを受信する。送信制御部42は、受信したデータパケットにデータパケット生成部41が生成したデータパケットを付加し、計測装置へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、下水管の管内の監視に用いられる管内計測システムおよび計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道の監視/制御システムでは、下水道管理のために計測装置を用いて下水道管内の水位や流量などの計測を行っている。ポンプ場などの排水処理施設では、家庭や工場などからの排水と大雨による水害を防ぐため、計測データに基づいて排水の管理や処理速度の制御を行なっている。
【0003】
従来のシステムでは、管内に一定間隔でセンサを設置し、これらのセンサによる計測データを、管内に敷設した光ファイバ回線又は一般の無線通信回線を介して通信することが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、管内通信、即ち下水道管理の計測システムにおけるデータ通信に光ファイバ回線を用いる場合、光ファイバが下水管の清掃や流下物により破損してしまうことが多い。一方、管内通信に無線通信回線を利用する場合、計測装置(センサ)や無線通信装置に電源を供給しなければならない。従って、これら機器の設置場所に商用電源を供給するか、あるいは電池により給電し、定期的に充電又は電池交換を行なう必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−187682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の下水道の管内計測システムが無線通信回線による管内通信を採用する場合、計測装置及び無線通信装置に電源を供給しなければならない。このため、商用電源の供給、又は電池による給電が必要とされる。更に、電池による給電を行う場合には、定期的に充電あるいは電池交換を行なう必要がある。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、外部からの電源の供給及び充電を必要とすることなく管内の計測と無線通信が行える管内計測システム及び計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る管内計測システムは、それぞれが固有の識別番号を有し、前記識別番号の順序に従って管内にカスケード配置される複数の計測装置と、前記複数の計測装置のうち終端にある計測装置と通信を行うセンタ装置とを備える管内通信システムであって、前記計測装置のそれぞれは、前記計測装置を駆動するための電力を供給する電池と、周囲環境からエネルギーを取り込み、電気的エネルギーに変換して前記電池を充電するための電力を発電する発電手段と、前記識別番号の順序に従って他の計測装置と無線通信を行う無線通信手段と、前記管内を流れる流体の状態を、当該流体には接触せずに計測して計測データを得る計測手段と、前記計測手段によって計測された計測データの種類を示すリピートマーカの後に、前記計測データを配列した計測データパケットを生成する生成手段と、他の計測装置から送られてくる伝送パケットを、前記無線通信手段を介して受信する受信制御手段と、前記伝送パケットに前記生成手段が生成した計測データパケットを付加し、前記無線通信手段を介して次の計測装置へ送信する送信制御手段とを具備し、前記センタ装置は、前記終端にある計測装置から送られてくる伝送パケットを受信する受信手段と、前記伝送パケットに含まれるそれぞれの計測装置の計測データパケットのデータから、前記管内を流れる流体の状態を検出する検出処理手段とを具備する。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る計測装置は、それぞれが固有の識別番号を有し、前記識別番号の順序に従って管内にカスケード配置される複数の計測装置と、前記複数の計測装置のうち終端にある計測装置と通信を行うセンタ装置とを備える管内通信システムにおいて用いられる計測装置であって、当該計測装置を駆動するための電力を供給する電池と、周囲環境からエネルギーを取り込み、電気的エネルギーに変換して前記電池を充電するための電力を発電する発電手段と、前記識別番号の順序に従って他の計測装置と無線通信を行う無線通信手段と、前記管内を流れる流体の状態を、当該流体には接触せずに計測して計測データを得る計測手段と、前記計測手段によって計測された計測データの種類を示すリピートマーカの後に、前記計測データを配列した計測データパケットを生成する生成手段と、他の計測装置から送られてくる伝送パケットを、前記無線通信手段を介して受信する受信制御手段と、前記伝送パケットに前記生成手段が生成した計測データパケットを付加し、前記無線通信手段を介して次の計測装置へ送信する送信制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、外部からの電源の供給及び充電を必要とすることなく管内の計測と無線通信が行える管内計測システム及び計測装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係る管内通信システムの一実施形態を示す構成図。
【図2】計測装置の設置例を示す図。
【図3】計測装置の構成を示す機能ブロック図。
【図4】終端装置の構成を示す機能ブロック図。
【図5】下水管内を流れる風速と流量の関係の一例を示す図。
【図6】上り信号のデータパケットの構造の一例を示す図。
【図7】複数の計測装置の計測データが付加された上り信号のデータパケットの構造の一例を示す図。
【図8】計測データ送信処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の管内通信システムの一実施形態に係る下水管内通通信システムを示す構成図である。この管内通信システムでは、複数のブロックB1〜Bnによるネットワークが構成される。各ブロックは終端装置20を具備し、終端装置20がセンタ装置30と通信する。
【0013】
ブロックB1〜Bnのそれぞれは、1台以上の計測装置10と、終端装置20とを含んでいる。下水道管内において、計測装置10及び終端装置20のそれぞれは、マンホールの蓋の管内側に取り付けられる。計測装置10及び終端装置20は、管内の各ブロックにおいて例えば従続(カスケード)的に配列される。一例として、ブロックB1〜Bnのそれぞれは、1台の終端装置20と11台の計測装置10の合計12台の装置を含む。
【0014】
終端装置20は、各ブロックにおいて下流側の終端に配置され、上流側の計測装置10と無線通信して計測データの集計を行う。終端装置20は、管内の計測装置10との通信以外に、地上に備えられたセンタ装置30と通信する機能をも備えている。各ブロックの計測装置10には、(#1〜#11)のように上流側から下流側へ連続する識別番号(ID)が予め割り当てられている。また各計測装置10は、隣接する計測装置10のIDを予め記憶している。
【0015】
終端装置20は、センタ装置30から所定の周期で送信されるデータ要求のコマンドを受信すると、当該コマンドを上流の計測装置10(例えば、IDが#11)に向けて転送する。転送されたコマンドを受信した計測装置(#11)は、この転送をリレーするように、更に順番に隣接する計測装置10(#10)・・・(#1)に転送する。
【0016】
コマンドの転送がブロック端部において最上流の計測装置10(#1)に行き着くと、端部の計測装置10(#1)は、その応答として、自装置のID番号及び計測データを記述したデータパケットを下流側の隣接する計測装置10(#2)に送信する。以降、各計測装置10は、上流側の計測装置10から送られたデータパケットにそれぞれの計測データを付加し、下流側の計測装置10に送信する。上流から順に計測データが付加されたデータパケットは、終端装置20まで送られ、終端装置20からブロック毎の計測データがセンタ装置30に送られる。
【0017】
図2は、下水管内における計測装置の設置例を示したものである。図2(b)に示すように、計測装置10は下水道管のマンホールの蓋Qに設置される。計測装置10は、下水道管内を無線通信空間としてリレー伝送方式での通信を行う。各計測装置10は、例えば、無線通信が可能な最大距離の半分程度の間隔で管内に設置される。以下に述べる様に非接触センサ手段と自己給電可能な電源部7とを備えることにより、外部へケーブル接続をされることなくマンホールの蓋Qと一体化して脱着可能であるため、メンテナンス性にも優れる特徴を備える。
【0018】
図3は、下水道管内に配置される計測装置10の機能ブロック図の一例を示す。計測装置10は、管内無線通信部1、受信レベル測定部2、出力調整部3、制御部4、計測センサ部5、タイマ部6、電源部7及びデータ記憶部8を備える。
【0019】
管内無線通信部1は、無線信号を受信する無線受信部11と無線信号を送信する無線送信部12を備えている。通信範囲内の他の計測装置10との間でアドホックネットワークが形成され、管内無線通信部1によって無線通信が行われる。
【0020】
受信レベル測定部2は、無線受信部11が受信する受信データの電波強度(受信レベル)を測定し、この受信レベルを含む受信感度情報を送信元の計測装置10のIDと共に制御部4へ出力する。制御部4は、受信レベル測定部2から送られた送信元の計測装置10のIDと受信感度情報を互いに対応付けてデータ記憶部8に記憶する。記憶された受信感度情報は、対応するIDによって特定される計測装置10へデータを送信する際に、出力調整部3へ出力される。
【0021】
出力調整部3は、制御部4から送られた受信感度情報に従って、無線送信部12を介して送信する無線信号の出力レベルを調整する。例えば、受信感度情報が低受信レベルを示す場合、出力レベルが大きくなるよう出力電力を調整する。一方、受信感度情報が高受信レベルを示す場合、出力レベルが小さくなるよう出力電力を調整する。また、センタ装置30から自装置宛に送信出力の増加を指示するコマンドが受信された場合、出力調整部3による調整結果から更に出力レベルを増加する。これによって、本来の送信先(すなわち隣接する計測装置10)を超えて、より遠方の計測装置10と通信できるようになる。従って、管路内に電波障害が生じていても、通信を維持することが可能となる。
【0022】
制御部4は、図示しないプロセッサ、プログラムメモリ、ワークメモリを備え、計測装置10の各部の動作を制御する。プロセッサがプログラムメモリに予め記憶されたプログラムを実行することで、計測装置10の各部の機能が実現される。
【0023】
制御部4は、データパケット生成部41と、送信制御部42とを備える。データパケット生成部41は、受信したコマンドを参照し、タイマ部6から供給されるクロックに従って、計測センサ部5が生成した計測データを配列したデータパケットを生成する。なお、データパケットの詳細は後述する。送信制御部42は、他の計測装置10から受信したデータパケットに、データパケット生成部41が生成したデータパケットを付加する。データが付加されたデータパケットは、無線送信部12により下流側の計測装置にリレー伝送される。
【0024】
計測センサ部5は、例えば水位センサ5a、流速(風速)センサ5b、温度センサ5c等の複数種類のセンサ、及びセンサ制御部5Xを具備する。センサ制御部5Xは、各センサによる測定を制御し、また管内無線通信部1を介した測定データの送受信を制御する。
【0025】
水位センサ5aはマンホールから水面までの距離dを測定し、下水の水位を取得する。水位センサ5aが超音波を用いるセンサであれば、当該水位センサ5aは、超音波を発してから当該超音波の反射波が受信されるまでの時間に基づいて、計測装置10と水面との間の距離dを測定する(図2参照)。流速センサ5bは下水管内の空気の風速を計測して下水管内を流れる下水の流速を取得する。流速センサ5bは、一般にアネモメータとも呼ばれる熱式風速計である。熱式風速計は、微弱な風であっても高精度で風速を測定でき、小電力で駆動できる。また、例えば水位センサ5aとしてドップラー式水位流速計を用いれば、超音波により水位及び流速を共に非接触で測定することができる。このようなドップラー式水位流速計は、水位センサ5aと流速センサ5bの機能を兼ね備えたセンサとして利用することもできる。温度センサ5cは、下水管内を流れる空気の温度を測定する。これらの測定データは、管内無線通信部1へ送られる。測定データは、管内通信を介してセンタ装置30に集約される。センタ装置30では、計測データに基づいて洪水等の予防情報が生成される。
【0026】
タイマ部6は、制御部4を介して所定のクロックを各部に提供する。このクロックに応じて、計測センサ部5における計測タイミングや計測データの送信タイミングなどが調整される。また、タイマ部6は、所定の方法で時刻校正を行い、測定データに含まれる測定時刻を提供する内部時計として動作する。
【0027】
電源部7は、計測装置10内の各部に電力を供給する電池7aと、電池7aに電力を供給して充電する発電部7bとを備える。発電部7bは、周囲の環境からエネルギーを取得して電力に変換する機能を有するものとする。すなわち発電部7bは、下水管内の空気やマンホール上に照射される太陽光からエネルギーを取り込み、取り込んだエネルギーを電気的エネルギーに変換する。
【0028】
例えば、下水道内には、水量の大小による変動はあるが、空気が流れることによって風が生じている。発電部7bに小型のプロペラやモータを備えることで、この風を利用して小型の風力発電機を実現することができる。この風力発電機は、例えば羽根径が数cm程度の小型モータであってもよい。これによって発生した電力により電池7aを充電し無線通信、計測に必要な電力を賄う。上述の流速センサ5bが発電部7bの構成を兼ね備えていてもよい。
【0029】
発電部7bは、この他、マンホール表面に接地された太陽電池を具備していてもよい。太陽電池によって光エネルギーを電気的エネルギーに変換し、電池7aを充電することが出来る。この太陽電池を用いる方法では、水量の測定を、超音波ドップラー式の水位流量計を用いて安定して行うことができる。
【0030】
データ記憶部8は、例えばハードディスク装置やフラッシュメモリ等の記憶装置であり、計測センサ部5による測定データを蓄積し、隣接する計測装置10のIDに対応する受信感度情報を格納する。
【0031】
図4は、下水道管内に配置される終端装置20の機能ブロック図の一例を示す。終端装置20は、図3に示す計測装置10の構成に加え、地上無線通信部9を備えている。また終端装置20の制御部4には、データ集計部43が設けられている。図4において、上記図3の計測装置10と同一部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
データ集計部43は、ブロック内の上流側の計測装置10から順次付加、転送されてきた計測データを、装置IDに基づいて集計する機能を有する。地上無線通信部9は、地上のセンタ装置30との間で無線通信によりデータの送受信を行う。データ集計部43によって集計された計測データは、地上無線通信部9を介してセンタ装置30に送られる。終端装置20のその他の構成は、図3に示す計測装置10と同様であり、終端装置20は、計測装置10と同様の機能も果たす。
【0032】
次に、下水管を流れる下水及び空気の定量的な関係を説明する。
【0033】
図2(a)に示すように、下水管内において、マンホールの蓋Qに取り付けられた計測装置10(あるいは終端装置20)の直下での水位Hは、水位センサ5aが測定するマンホールと水面との間の距離dから算出することができる。水位Hは、既知の下水管の半径Rと、計測装置10(すなわち水位センサ5a)のオフセットh(下水管の内面を形成する円周部から水位センサ5aが突き出ている長さ)より、H=2R―d−hで与えられる。下水管の中心Oと水面との距離xは、x=d−R+hで与えられる。水面と下水管との接点をPとし、線分OPと点Oから水面に下ろした垂線がなす角をθとすると、cosθ=x/Rの関係が成り立つ。そして、マンホール下を通過する下水の断面は、三日月形状(図2の斜線部)を取る。その断面積BS(単位:平方メートル)は、中心角が2θの扇形の面積FSから、中心角が2θの二等辺三角形の面積TSを減算して得られる(BS=FS−TS)。
【0034】
また、下水管の様な閉鎖空間に流体(下水)が流れると、その液体により周囲の空気が引き寄せられ、空気にも流れが生じる(風が発生する)。下水の流速vf(単位:メートル/秒)は、空気の流速、即ち風速vaの関数としてvf=F(va)によって表される。従って、空気の流速vaが測定できれば、下水の流速vfを算出することができる。
【0035】
このため、下水管内の空気の風速vaが測定できれば、風速vaから下水の流速vfを算出することが出来る。流速センサ5bとしては、上述のドップラー式水位流速計に限らず、流速を直接測定することなく風速から下水の流速を測定するセンサが採用されても良い。
【0036】
以上のように、マンホール下の下水の断面積BS及び下水の流速vfが分かれば、マンホール下の流量V(立方メートル/秒)を求めることができる。
【0037】
なお、ここでは円形形状の下水管の例を説明した。しかしながら、底面が平らな凹状の下水管であっても、形状から断面積と流速が求められれば、同様に流量を求めることが出来るのは言うまでもない。
【0038】
図5は、マンホール下での風速と下水の流速の関係の例を示す図である。図5に示すように、水量が増すと、すなわち水位が高くなると、風速は、例えば水位の指数関数的に急激に早くなる傾向がある。水位が高くなって水量が増すと、単に下水の流速が増えて風速が増すだけでなく、空気が通過できる管路の断面積も少なくなる。このため、流量が増加すると、連続の定理に従って早い風速で空気が流れるようになり、風速が急激に大きくなる。また、下流では水量が増えるよりも前に圧送風が発生することにより、風速が上がることが知られている。
【0039】
風速は、下水路全体の構造や下水管それぞれの位置や形状に応じて異なるため、マンホール、即ち測定地点毎にも異なる。測定地点毎に、風速と下水の流速及び流量の関係を調べ、実験式等を予め求めておけば、風速から流速及び流量を測定することができる。
【0040】
これらの測定データ(水位データ、流速データ等)は、管内の無線通信によって上流側の計測装置10から順次データパケットに付加され、下流の終端装置20からセンタ装置30へ送られる。センタ装置30では、測定データに基づいて図示されない演算装置等により流量計算が行われる。計測装置10において流量を算出しなくても、測定データをセンタ装置30で集約することで、センタ装置30では、受信した測定データから下水の流量を算出することが可能である。このため、計測装置10の構成は簡単なもので済む。
【0041】
なお、水位センサ5aが計測した水位Hが水位データとして計測装置10からセンタ装置30に送られ、下水の断面積BSはセンタ装置30で算出されてもよいが、計測装置10において断面積BSが算出され、水位データとしてセンタ装置30に送られてもよい。
【0042】
また、計測した風速vaから流速(風速)センサ5bにおいて流速vfが算出され、流速データとしてセンタ装置30に送られてもよいが、風速vaが流速データとしてセンタ装置30に送られ、センタ装置30において流速vfが算出されてもよい。
【0043】
次に、本実施形態に係る管内計測システムによる、省電力動作について説明する。
【0044】
下水道では、急な集中豪雨、台風等により水量が急激に増加する場合を除き、概ね流力の変化は穏やかである。従って、流量変化が見られない場合、計測装置10からの流量監視データの送信は、1時間に1回程度で充分であり、所要時間も数秒程度の通信で済む。それ以外の時間では、計測装置10の管内無線通信部1及び計測センサ部5は、スリープ、又はスタンバイモードで電池7aの電源により動作し、消費電力を低減させる。
【0045】
通常の計測を行う場合、センタ装置30は、例えば1時間に1〜数回程度の一定周期でデータ要求のポーリングコマンドを送出する。ポーリングコマンドには、送信元であるセンタ装置30に割り当てられた装置ID(例えば#00)が付加される。センタ装置30は、計測タイミング情報として、ポーリングコマンドの送信時刻を保持する(あるいは、コマンドに送信番号などを付して、送信タイミングを識別できるようにする)。コマンドは、下流のデータ終端装置20から上流側の計測装置10まで順次伝達される。
【0046】
1ブロックにおいて最上流の計測装置10(ID:#1)は、ポーリングコマンドに応じて、測定データを含むデータパケットを隣接する計測装置10(ID:#2)に送信する。計測装置10(ID:#2)は、送られてきたデータパケットに自身の測定データを追記して、下流側の計測装置10に送信する。以降、上流から順に計測データが付加されたデータパケットが、終端装置20まで送られ、終端装置20のデータ集計部43で終端装置20の測定データと共に集計される。集計されたデータは、センタ装置30に送られる。センタ装置30が上述の計測タイミング情報と比較照合できるように、各計測装置10は、計測データを自装置から送信する時刻もデータパケットに記載して返送する。
【0047】
ここで、本管内通信システムで伝送されるデータパケットの構成について説明する。
【0048】
図6は、単独の計測装置10の計測データを含む上り信号のデータパケット構造の一例を示したものである。図7は、複数の計測装置10の計測データが付加された上り信号のデータパケット構造の一例を示す。
【0049】
図6に示すように、上り信号のデータパケットは、その先頭に同期コードとヘッダ部を有し、その後にデータ部の各情報フィールドが続く。同期コードは、例えば、「10101010」の様に予め定められた固定パターンのコードであり、上り信号である(計測データを送信する)事を示す。同期コードはパケットの開始場所を示しており、各計測装置10においてこのパターンが検出されると、制御部4が下流側の計測装置10へデータをリレー送信するための処理を開始する。図7に示すように、データパケットに複数の計測装置10の計測データが付加される場合、各計測装置の計測データの先頭に同期コードが付加される。
【0050】
データパケットの末端には、エラー検出/訂正のチエックサムとして、例えば、ヘッダ部からデータ部の情報フィールドに適用される巡回冗長検査符号(CRC:cyclic redundancy check)が付加される。
【0051】
ヘッダ部は、各同期コードの直後に付加される。ヘッダには、送信元を特定する装置IDと計測タイミング情報を示すフレームF1、データサイズを示すフレームF2、及びモード情報と異常情報を示すフレームF3を含む。
【0052】
データサイズのフレームF2には、計測装置毎の計測データのデータサイズがビット又はバイト単位で表されている。モード情報と異常情報フレームF3には、計測モードの情報及びセンサ異常等の情報が含まれている。
【0053】
モード情報は、計測データの値または外部からの信号により変更され得る。モード情報は、例えば、通常モード、注意モード及び危険モードの3段階で表される。異常情報は、計測センサ部5や電源部7の異常を表す。具体的には、水位センサ異常、流速センサ異常、温度センサ異常、ヒータ異常、傾斜値異常、バッテリーLOやウェイクアップ等を表すものとする。
【0054】
ヘッダ部に続くデータ部は、各計測装置の計測センサ部5によって計測された計測データを記述する複数のフレーム(水位データのフレームF4,流速データのフレームF5,温度データのフレームF6,傾斜データのフレームF7)で構成される。
【0055】
ヘッダ部及びデータ部内の各フレームの間には、フレームの境界を示す情報として、リピートマーカ(RM)が挿入される。リピートマーカは、例えばアルファベット(1byte)で表される。リピートマーカは、後に続くフレームに記述されたデータの種別も表す。例えば、リピートマーカRM1の後にはデータサイズを表すフレームF2が続く。
【0056】
具体的には、図6及び図7に示すように、ヘッダ部では、フレームF1とフレームF2の間にリピートマーカRM1が、フレームF2とフレームF3の間にリピートマーカRM2が挿入される。またデータ部は、リピートマーカRM3から始まり、RM3の後に水位データが記述されたフレームF4が続く。水位データのフレームF4と流速データのフレームF5の間にはリピートマーカRM4が、流速データのフレームF5と温度データのフレームF6の間にはリピートマーカRM5が、温度データのフレームF6と傾斜データのフレームF7の間にはリピートマーカRM6がそれぞれ挿入される。なお、重要な計測データほどパケットの先頭に近い方へ配置するように予めデータ(センサの種別)のプライオリティが設定されている。図6及び図7では、データパケットに温度データと傾斜データも記載されている例を示すが、計測センサ部5が温度センサや傾斜センサを備えていない場合は、これらのデータが記載されたフレーム及びリピートマーカRM5とRM6はデータパケットに含まれなくてもよい。
【0057】
また計測センサ部5がガスセンサ等の他のセンサを備える場合、当該他のセンサの計測データは、対応するリピートマーカ(例えばRM7)の後に記載する。リピートマーカによって後に続くフレームに記載されたデータの種別を区別することで、1つのデータパケットに、異なる構成(例えば、ガスセンサ等)の計測装置10の計測データを混在させることが可能になる。これにより、違う計測目的の装置も同じ通信網を使用することができる。
【0058】
(計測データの送信処理)
センタ装置30から各計測装置10に向けては、所定の周期でポーリングコマンドが送信される。センタ装置30では、ポーリング毎にデータ収集を行う。
【0059】
図8は、各計測装置において実行される計測データの送信処理の手順を示すフローチャートである。計測装置10の送信制御部42は、リレー伝送による計測データ送信を行うタイミングになると、計測センサ部5の各種計測データと前回の計測データとを比較する(ステップS1a)。
【0060】
送信制御部42は、計測センサ部5の計測データと前回の計測データとの間に一定値以上の変動があるか否かを判定し(ステップS2a)、変動がある計測データについては(ステップS2aでYES)、図6あるいは図7に示すようなデータパケットにおいて対応するリピートマーカの直後に計測データを付加する(ステップS3a)。
【0061】
一方、前回の計測データとの間に一定値以上の変動がない計測データについては(ステップS2aでNO)、データパケットにおいて、対応するリピートマーカのみを付加する(ステップS4a)。すなわち、前回の計測データとの間で変動が小さい計測データについては、対応するリピートマーカのみを送信し、計測データ自体は送信しない。
【0062】
送信制御部42は、全ての計測データ(例えば、水位データ,流速データ,温度データ,傾斜データ)について上述の比較が終了したかを判定する(ステップS5a)。比較が完了していない計測データがある場合(ステップS5aでNo)、処理はステップS1aに戻り、残りの計測データについても前回の計測データとの比較を行う。
【0063】
一方、全ての計測データについて比較が終了していれば(ステップS5aでYes)、処理を完了する。
【0064】
各計測装置10は下水道管内でカスケードに設置されるため、平常時には各計測ポイントで計測データに大きな変動が生じない。図8に示すデータ送信処理では、平常時の変動の小ささを利用して、データパケットのデータ量を削減することが可能である。
【0065】
(再送要求処理)
上述のように、各計測装置10から送信されるデータのフレームは、リピートマーカで分離されている。計測データに変動が無くてもリピートマーカは必ず付される。従ってセンタ装置30は、どの計測装置のどの計測データが受信したデータパケットに含まれているか、あるいはどの計測装置のどの計測データが受信したデータパケットに含まれていないかを、リピートマーカを判読または推定することにより容易に判断することができる。
【0066】
また、データ異常やデータの欠落等によって、必要な計測データがデータパケットには含まれていないことがありうる。このような計測データがあれば、センタ装置30は当該計測データを再送するよう、対応する計測装置10に再送要求信号を送信する。
【0067】
センタ装置30は、再送要求が必要な計測装置10のIDと、異常が生じているデータあるいは欠落しているデータ(センサ種別)に対応するリピートマーカ(複数データの再送を要求する場合は複数のリピータマーカ)を要求データのフレームに記入する。
【0068】
再送要求を受けた計測装置10は、送信が失敗した計測データのみをリピートマーカを付して返信する。これによって、必要最小限のデータだけを送信することができ、再送時間の短縮が可能となる。
【0069】
以上の処理により、緊急性を要しない状態の計測ポイント以外は計測データを追加しないので、センタ装置30へ速やかにデータパケットが転送されるようになる。
【0070】
本発明の実施例の計測装置10は、マンホールに取り付けられた非接触センサによって下水の流量を測定し、無線通信によりセンタ装置30へデータを送信するもので、ケーブルや配線を用いることなく自立して設置、動作する特徴がある。
【0071】
以上述べたように、上記実施形態では、計測データを伝送するための上り信号のデータパケットに計測データの種類別のリピートマーカを用いる。これによって伝送されるデータ量の削減が可能となり、その結果消費電力を低減して計測データを効率よく伝達可能な管内通信を実現することができる。また、エラーによる再送でも必要最小限のデータだけを通信すればよい。また、計測センサの変更や増設にも容易に対応することができる。
【0072】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…計測装置、20…終端装置、30…センタ装置、B1〜Bn…ブロック、1…管内無線通信部、2…受信レベル測定部、3…出力調整部、4…制御部、5…計測センサ部、5a…水位センサ、5b…流速センサ、5c…温度センサ、5X…線さ制御部、6…タイマ部、7…電源部、7a…電池、7b…発電部、8データ記憶部、9…地上無線通信部、11…無線受信部、12…無線送信部、41…データパケット生成部、42…送信制御部、43…データ集計部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが固有の識別番号を有し、前記識別番号の順序に従って管内にカスケード配置される複数の計測装置と、前記複数の計測装置のうち終端にある計測装置と通信を行うセンタ装置とを備える管内通信システムであって、
前記計測装置のそれぞれは、
前記計測装置を駆動するための電力を供給する電池と、
周囲環境からエネルギーを取り込み、電気的エネルギーに変換して前記電池を充電するための電力を発電する発電手段と、
前記識別番号の順序に従って他の計測装置と無線通信を行う無線通信手段と、
前記管内を流れる流体の状態を、当該流体には接触せずに計測して計測データを得る計測手段と、
前記計測手段によって計測された計測データの種類を示すリピートマーカの後に、前記計測データを配列した計測データパケットを生成する生成手段と、
他の計測装置から送られてくる伝送パケットを、前記無線通信手段を介して受信する受信制御手段と、
前記伝送パケットに前記生成手段が生成した計測データパケットを付加し、前記無線通信手段を介して次の計測装置へ送信する送信制御手段と
を具備し、
前記センタ装置は、
前記終端にある計測装置から送られてくる伝送パケットを受信する受信手段と、
前記伝送パケットに含まれるそれぞれの計測装置の計測データパケットのデータから、前記管内を流れる流体の状態を検出する検出処理手段と
を具備することを特徴とする管内通信システム。
【請求項2】
前記計測手段は前記管内の風速を計測する風速計測手段を具備し、前記風速から前記管内を流れる流体の流速を算出することを特徴とする請求項1に記載の管内通信システム。
【請求項3】
前記計測手段は、
前記管内を流れる流体の水位を測定する水位計測手段と、
前記管内の風速を計測する風速計測手段と
を具備し、前記測定された水位、前記測定された風速、及び既知の前記管の構造に基づいて前記流体の流速を算出することを特徴とする請求項1に記載の管内通信システム。
【請求項4】
前記センタ装置の検出処理手段は、前記計測データパケットに含まれる前記水位及び前記流速から、前記管内を流れる流体の流量を算出することを特徴とする請求項3に記載の管内通信システム。
【請求項5】
前記発電手段は風力発電機を具備し、前記管内の空気からエネルギーを取り込んで発電を行うことを特徴する請求項1に記載の管内通信システム。
【請求項6】
前記発電手段は太陽電池を具備し、当該太陽電池は前記管の外部に設置され、太陽光からエネルギーを取り込んで発電を行うことを特徴とする請求項1に記載の管内通信システム。
【請求項7】
前記送信制御手段は、前記計測データと前回の計測データを比較し、データ間の変動が所定の値以下であれば、前記リピートマーカのみを前記伝送パケットに付加することを特徴とする請求項1に記載の管内通信システム。
【請求項8】
それぞれが固有の識別番号を有し、前記識別番号の順序に従って管内にカスケード配置される複数の計測装置と、前記複数の計測装置のうち終端にある計測装置と通信を行うセンタ装置とを備える管内通信システムにおいて用いられる計測装置であって、
当該計測装置を駆動するための電力を供給する電池と、
周囲環境からエネルギーを取り込み、電気的エネルギーに変換して前記電池を充電するための電力を発電する発電手段と、
前記識別番号の順序に従って他の計測装置と無線通信を行う無線通信手段と、
前記管内を流れる流体の状態を、当該流体には接触せずに計測して計測データを得る計測手段と、
前記計測手段によって計測された計測データの種類を示すリピートマーカの後に、前記計測データを配列した計測データパケットを生成する生成手段と、
他の計測装置から送られてくる伝送パケットを、前記無線通信手段を介して受信する受信制御手段と、
前記伝送パケットに前記生成手段が生成した計測データパケットを付加し、前記無線通信手段を介して次の計測装置へ送信する送信制御手段と
を具備することを特徴とする計測装置。
【請求項9】
前記計測手段は前記管内の風速を計測する風速計測手段を具備し、前記風速から前記管内を流れる流体の流速を算出することを特徴とする請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記計測手段は、
前記管内を流れる流体の水位を測定する水位計測手段と、
前記管内の風速を計測する風速計測手段と
を具備し、前記測定された水位、前記測定された風速、及び既知の前記管の構造に基づいて前記流体の流速を算出することを特徴とする請求項8に記載の計測装置。
【請求項11】
前記センタ装置は、前記計測データパケットに含まれる前記水位及び前記流速から、前記管内を流れる流体の流量を算出することを特徴とする請求項10に記載の計測装置。
【請求項12】
前記発電手段は風力発電機を具備し、前記管内の空気からエネルギーを取り込んで発電を行うことを特徴する請求項8に記載の計測装置。
【請求項13】
前記発電手段は太陽電池を具備し、当該太陽電池は前記管の外部に設置され、太陽光からエネルギーを取り込んで発電を行うことを特徴とする請求項8に記載の計測装置。
【請求項14】
前記送信制御手段は、前記計測データと前回の計測データを比較し、データ間の変動が所定の値以下であれば、前記リピートマーカのみを前記伝送パケットに付加することを特徴とする請求項8に記載の計測装置。
【請求項15】
下水道管のマンホールの蓋に一体化して脱着され、装置外部にケーブル接続されないことを特徴とする請求項8に記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−128791(P2011−128791A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285418(P2009−285418)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】