説明

管型ヒータ装置、トナー定着装置

【課題】リフレクタ用のスペースを必要とせず、リフレクタを簡単に回動させ、温度調整を図る。
【解決手段】石英ガラス製で形成させたバルブ11内に挿入したタングステン製のフィラメント12の両端に、金属箔141,142のそれぞれの一端を接続し、他端には外部導入線を介して電力が供給される。金属箔141,142の位置の封止部131,132でバルブ11の封止を行い白熱ランプ100を構成する。白熱ランプ100の長手方向には所定の角度で反射膜18を形成するとともに、封止部131,132の開放端側を絶縁性のベース部材151,152にそれぞれ収容する。ベース部材151,152の外周には白熱ランプ100を回動させるためのギア171,172を形成する。これにより、白熱ランプ100が発生する光の方向を制御することで、発生する温度を制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機やプリンタのトナーを定着させるためのヒータとして用いられる管型ヒータ装置およびこれを用いたトナー定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管型ランプを定着用のヒータとして用いた従来の管型ヒータは、定着性や応答性の向上を図るために、回転駆動される加熱ローラ内に加熱ローラの回転には無関係に支持された管型ランプおよびこの管型ランプと加熱ローラとの間にリフレクタが設けられている。さらにリフレクタは、定着させる被加熱体の違いや条件に基づき可動させるようにしている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2004−264785公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、リフレクタを管型ランプと加熱ローラとの間に配置し、必要に応じてリフレクタを可動させていることから、リフレクタを配置するスペースに加え可動させるスペースが必要となり、加熱ローラの径が大きなものとなってしまう。また、管型ランプと加熱ローラとの距離が長くなってしまい、リフレクタによる定着性や応答性を向上させるには、管型ランプに電力を増やしてやる必要があり、電力効率の悪化を招いてしまう、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、リフレクタ用のスペースを必要としない管型ヒータ装置およびこの管型ヒータ装置を用いたトナー定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の管型ヒータ装置は、両端に封止部が形成されたガラスバルブ内に、該バルブの長手方向に局部的に発光部および非発光部を有するフィラメントおよび不活性ガスを封入し、前記封止部から前記フィラメントに接続した外部導入線が導出された白熱ランプと、前記バルブの長手方向に形成した反射膜と、前記外部導入線と電力供給用ケーブルが接続された状態で収容した絶縁性のベース部材と、前記ベース部材の少なくとも一方の外周面に、前記白熱ランプの軸を中心に回動させるために形成された駆動ギアと、を具備したことを特徴とする。
【0006】
この発明のトナー定着装置は、上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1または2記載の管型ヒータ装置と、予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
また、この発明のトナー定着装置は、上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1または2記載の管型ヒータ装置と、予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備し、加熱される側の前記第1または第2のローラの特定位置からの温度センサーの温度情報に基づき、前記管型ヒータを回動させる回動手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、リフレクタ用のスペースを必要としないばかりか、リフレクタを簡単に回動させ、温度調整を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1〜図4は、この発明の管型ヒータ装置に関する一実施形態について説明するためのものであり、図1は一部を切欠して示した斜視図、図2は図1の正面図、図3は図2の側面図、図4は図3のIa−Ib線断面図である。
【0011】
図1〜図3において、100はヒータの役目を果たす直管型の白熱ランプである。白熱ランプ100は、石英ガラスよりなるバルブ11内にコイル状の長尺フィラメント12が収容される。
【0012】
フィラメント12は、タングステン素線を巻回したコイル状の複数の発光部121、これら発光部121間に粗巻き状や直線状の非発光部122や両端にレグ部123,124を備え、複数のサポート部材125により支持される。これによりフィラメント12は局所的に発光される。
【0013】
バルブ11の軸方向の両端は、減圧封止(シュリンクシール)による封止部131,132が形成される。封止部は、封止部は、相対する方向から金型で押し潰して成形された圧潰封止(ピンチシール)でも構わない。
【0014】
封止部131,132には、モリブデン箔などの金属箔141,142がそれぞれ気密に封止される。金属箔141の一端側にはフィラメント12の一端のレグ部123と接続され、他端側には白熱ランプ100外に導出させた図示しない外部導入線の一端と接続し、ステアタイトなどのセラミックスからなる絶縁性のベース部材151内で電力供給用のケーブル161と接続される。
【0015】
金属箔142の一端側にはフィラメント12の他端のレグ部124と接続され、他端側には白熱ランプ100外に導出させた図示しない外部導入線の一端と接続し、外部導入線の他端はステアタイトなどのセラミックスからなる直方体形状の絶縁性のベース部材152内で電力供給用のケーブル162と接続される。ベース部材151,152の外周のそれぞれには、白熱ランプ100を所定の角度で回動させるためのギア171,172が形成されている。
【0016】
バルブ11の外表面の長手方向の図中上側には、図3の切断面線Ia−Ibから見た状態を示す図4のように、白熱ランプ100の発光部121から発せられた光を図中下側に照射させるための熱膨張率の小さい例えばアルミナ、シリカ等を主材とする反射膜18が形成されている。
【0017】
反射膜18は、ギア171,172を介して白熱ランプ100を回動させることによって、図5(a)〜(c)に示すように、照射方向を白熱ランプ100の軸の回転方向に変更させることができる。
【0018】
バルブ11,12内には、それぞれ微量のハロゲン物質たとえば臭素Brと塩素Clとの混合物とともに、アルゴンArや窒素Nなどの不活性ガスが、常温25℃で約0.9×10Pa(パスカル)の圧力封入してある。
【0019】
このように構成された白熱ランプ100のケーブル161,162に電力を供給されると、図6に示すように、発光部121から発せられた実線で示す直接光はバルブ11を介して直接外部へ照射され、反射膜18により反射された波線で示す反射光もバルブ11の外部に照射される。
【0020】
図6(a)は、白熱ランプ100の照射角(範囲)aを、図6(b)は、白熱ランプ100を回動させた場合の照射角(範囲)bを、図6(c)は、白熱ランプ100の軸中心に反時計方向に回動させた場合の最大の回動角とそのときの照射角cを、図6(d)は白熱ランプ100の軸中心に反時計方向に回動させた場合の最大の回動角とそのときの照射角dを、それぞれ示している。
【0021】
白熱ランプ100は、反時計方向には照射角cまで、時計方向には照射角dの位置まで回動させることで、必要に応じて最大の照射角bの範囲を照射させることが可能となる。これにより、被加熱体に対する白熱ランプ100の長手方向の温度分布の調整が可能となる。
【0022】
この実施形態では、バルブ11の外表面上に直接、リフレクタの役目を果たす反射膜18を形成したことにより、リフレクタのスペースを必要としないことから、反射膜18を回動させたとしても被加熱体に対する距離を長くする必要がなく加熱効率の低下させることがない。
【0023】
図7〜図9は、この発明の管型ヒータ装置に関する他の実施形態について説明するためのものであり、図7は正面図、図8は図7のIIa−IIb線断面図、図9は図7のIIIa−IIIb線断面図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0024】
この実施形態は、例えばハガキサイズに相当する領域t1の範囲では反射膜181を、図8に示すように照射角が広くなるようにし、領域t1の両端の領域t2とt3の範囲では反射膜181を、図9に示すように照射角を狭くなるようにしている。領域t2とt3は、領域t1とを合わせて例えばA4サイズの用紙を加熱できる幅に相当する領域t4となる。
【0025】
フィラメント12の光が同条件である場合の反射膜181は広い照射範囲であることから、狭い照射範囲の反射膜181に比べて加熱温度がやや低い。このため、周辺の構成物に熱が奪われやすい白熱ランプ100の長手方向両端側の温度の中央部に対して高く設定することができる。
【0026】
このように構成された白熱ランプ100は、必要に応じて白熱ランプ100の軸方向に所定角回動させることが可能となる。これにより、白熱ランプ100による被加熱体に対する加熱制御を実現することができるばかりか、長手方向両端の温度低下に対する対応も実現することができる。
【0027】
この発明の管型ヒータ装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、ベース部材151,152の外周には、白熱ランプ100を所定の角度で回動させるためのギア171,172をそれぞれに形成したが、何れか一方に形成し、ギアのある側を可動させる構成であっても構わない。この場合でも両ベース部材にギア付きのものを使用しても何ら問題なく、むしろ左右の区別を必要しないばかりか、異なる部品を用意する必要もなくなる。
【0028】
図10、図11は、図1〜図4で説明した白熱ランプを用いたこの発明の加熱装置の一実施形態について説明するための、図10は概略的な構成図、図11は図10の切断面線IVa−IVbから見た断面図である。
【0029】
図10、図11において、300は加熱装置である。301はアルミニウムや鉄等の金属からなる円筒状の加熱ローラであり、加熱ローラ301の外周面には耐熱性の樹脂による被覆材302が被覆されている。加熱ローラ301の内部には、発熱源である白熱ランプ100がベース部材151,152を介して、シャーシ等の支持された図示しない支持部材を用いてそれぞれ支持される。
【0030】
白熱ランプ100を加熱ローラ301に収容させる場合は、作業性の効率を考えベース部材151,152を予め取り付けた状態でベース部材151,152の何れか一方から挿入される。
【0031】
303は、加熱ローラ301と圧接して下方に対向配置されたアルミニウムや鉄等の金属からなる円筒状の加圧ローラである。加圧ローラ303の外周面には、例えばシリコンゴムによる弾性体層304が被覆されている。この弾性体層304の表面には、通過する紙が定着後に加圧ローラ303から離れやすくなるように、表面を平滑にする樹脂コーティングを形成してもよい。
【0032】
加圧ローラ303は、軸305を支持手段306を用いて回転自在に支持されている。また、加熱ローラ301の両端には回転ギア307が取り付けられ、これら回転ギア307とモータの回転軸に取り付けた回転ギアを噛み合わせて、図示しないモータを回転させることで、加熱ローラ301と加圧ローラ303を図11の矢印A,B方向にそれぞれ回転させることができる。
【0033】
加熱ローラ301の白熱ランプ100がケーブル161と162を介して通電されると、加熱ローラ301が発熱してヒートアップ(昇温)する。そこで、図11の矢印A,B方向に加熱ローラ301と加圧ローラ303を回転させ、図示しない転写ドラムなどからトナーTが所定分布状態に転写された複写紙Pが、ヒートアップされた加熱ローラ301と加圧ローラ303間に送り込ませることで、複写紙Pおよび前の工程で塗布されたトナーT1が上下から加熱され、加熱されたトナーT2が溶融後複写紙P上に定着し、所定の文字や図柄などとして描かれる。
【0034】
加熱ローラ301上に非接触状態で配置されたS1,S2は、温度センサーである。温度センサーS1,S2は、加熱ローラ301の長手方向の中間部と両端部にそれぞれ配置される。温度センサーS1,S2の出力は、例えばマイコンで構成される制御部101に供給される。制御部101の出力は、モータMに供給し、モータMの回転軸に取り付けられたギア102をベース部材152のギア172に噛み合わせている。モータMを所定の範囲内で正転、逆転に制御することにより白熱ランプ100の軸を回動させることが可能となる。
【0035】
モータM、ベース部材152のギア172それにギア102は、白熱ランプ100を回動させるための回動手段を構成している。
【0036】
例えば、センサーS1またはS2の少なくともいずれか一方が所定値以上の温度を感知した場合は、この情報を制御部101に供給する。制御部101が白熱ランプ100を回動させる必要があると予め設定された温度値以上にあると判断した場合は、モータMを正転/逆転させて白熱ランプ100を回動させることで、白熱ランプ100がニップ部Nの温度の最適化を図ることが可能となる。
【0037】
この実施形態では、加熱ローラの温度情報に基づき、白熱ランプに形成された反射膜の角度を調整することにより、ニップ部の温度の調整が可能となり、被加熱体への定着性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
なお、上記の説明では、温度センサーは加熱ローラ301の両端にそれぞれ設けたが、中央部にも設置し、この部分の温度状態により白熱ランプ100を回動させることも考えられる。さらに、制御部101は、温度センサーからの温度情報に基づき、白熱ランプ100を回動させる角度や速度を制御することも考えられる。
【0039】
この場合、モータMには、制御部101からの制御情報に基づき、白熱ランプ100を回動させる角度、それに回動させる速度を、センサーS1,S2の温度情報と制御部101の記憶部に予め記憶されたプログラムデータとの比較結果に基づき制御することが可能である。
【0040】
上記した加熱装置では、加圧ローラ303も加熱ローラ301と同様の加熱ローラの構成にしても構わない。また、白熱ランプの数は、1本の例で説明したが、2本以上であっても構わない。この場合、ベース部材は共通のものを用い、その外周にギアを形成すればよい。
【0041】
なお、加熱装置の用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用し同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の管型ヒータ装置の一実施形態について説明するための一部を切欠して示した斜視図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図2の側面図。
【図4】図3のIa−Ib線断面図。
【図5】白熱ランプの回動について説明するための説明図。
【図6】白熱ランプの回動範囲と角度について説明するための説明図。
【図7】この発明の管型ヒータ装置に関する他の実施形態について説明するための正面図。
【図8】図7のIIa−IIb線断面図。
【図9】図7のIIIa−IIIb線断面図。
【図10】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための概略的な構成図。
【図11】図10の切断面線IVa−IVbから見た断面図。
【符号の説明】
【0043】
100 白熱ランプ
11 バルブ
12 フィラメント
121 発光部
122 非発光部
123,124 レグ部
125 サポート部材
131,132 封止部
141,142 金属箔
151,152 ベース部材
161,162 ケーブル
171,172,102 ギア
18,181,182 反射膜
101 制御部
300 加熱装置
301 加熱ローラ
303 加圧ローラ
M モータ
S1,S2 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に封止部が形成されたガラスバルブ内に、該バルブの長手方向に局部的に発光部および非発光部を有するフィラメントおよび不活性ガスを封入し、前記封止部から前記フィラメントに接続した外部導入線が導出された白熱ランプと、
前記バルブの長手方向に形成した反射膜と、
前記外部導入線と電力供給用ケーブルが接続された状態で収容した絶縁性のベース部材と、
前記ベース部材の少なくとも一方の外周面に、前記白熱ランプの軸を中心に回動させるために形成された駆動ギアと、を具備したことを特徴とする管型ヒータ装置。
【請求項2】
前記反射膜は、前記白熱ランプの照射角度を長手方向の中央部に対して両端部を狭くしたことを特徴とする請求項1記載の管型ヒータ装置。
【請求項3】
上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、
前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1または2記載の管型ヒータ装置と、
予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とするトナー定着装置。
【請求項4】
上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、
前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1または2記載の管型ヒータ装置と、
予めトナーが転写された複写紙が前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備し、
加熱される側の前記第1または第2のローラの特定位置からの温度センサーの温度情報に基づき、前記管型ヒータを回動させる回動手段を具備したことを特徴とするトナー定着装置。
【請求項5】
前記回動手段は、前記温度センサーの温度情報に基づき回動角度または回動速度を制御してなることを特徴とする請求項4記載のトナー定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−107720(P2010−107720A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279535(P2008−279535)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】