説明

管型白熱ヒータ、トナー定着装置

【課題】バルブの肉厚を薄くしてもシュリンクによる封止で機械的な衝撃に強くしたとともに、バルブの肉厚を薄くしたことによる立ち上がり温度の時間短縮を図ることができる。
【解決手段】石英ガラスのバルブ12内に挿入したタングステン製のフィラメント13の両端をそれぞれ溶接した一対の金属箔171,172の他端にアウターリード191,192の一端を溶接する。金属箔171,172部分のバルブ12を、減圧封止方法を用いて封止部161,162を形成し、ハロゲンランプ11を構成する。バルブ12の肉厚を7mm〜8mmの範囲とし、バルブ12の熱容量を下げつつ、シュリンクによる封止部161,162の強度も確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機の定着用等に使用される放射透過性バルブの内部に電気抵抗発熱体を備えた管型白熱ヒータおよびこのヒータを用いたトナー定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管型白熱ヒータは、管状の長尺石英ガラス製のバルブ内にフィラメントと不活性ガスを含む封入ガスを封入し、バルプ両端をピンチシールにより封止を行っている。立ち上がりの高速化、省電力化を実現するために、不活性ガスとしてアルゴンArより分子量の大きいクリプトンあるいはキセノンを主成分と使用しトナー定着の立ち上がり時間を短縮している。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−139939公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、ヒータの熱放射でガラス管での損失分を低減するためには、ガラス管の薄肉化やガラス管径を縮小する必要があるものの、ガラス管の薄肉化やガラス管径を縮小した場合、ピンチシールで形成された封止の強度は50N前後程度しか得られず、ヒータの取り扱いや実機への組み込み後に、小さな衝撃が加わった場合でも破損する虞がある、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、バルブの肉厚を薄くしても封止部の機械的な衝撃に強いとともに、バルブの肉厚を薄くしたことによる立ち上がり温度の時間短縮を実現させた管型白熱ヒータおよびこのヒータを用いたトナー定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の管型白熱ヒータは、耐熱性ガラス製の円筒状バルブと、前記バルブ内に収納したコイル状のフィラメントと、前記フィラメントの両端に電気的に接続した一対の金属箔と、前記金属箔のそれぞれの他端に接続した電力供給用に外部に導出したアウターリードと、少なくとも前記金属箔部分の前記バルブを、減圧封止方法を用いて封止した封止部と、前記バルブの肉厚は、0.7〜0.8mmとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、バルブの肉厚を薄くしてもシュリンクによる封止で機械的な衝撃に強くしたとともに、バルブの肉厚を薄くしたことによる立ち上がり温度の時間短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1〜図3は、この発明の管型白熱ヒータに関する一実施形態について説明するためのもので、図1は正面図、図2は側面図、図3は図1要部の切欠斜視図である。
【0009】
図1、図2において、11は例えば定着用等に用いられる管型白熱ヒータの一種であるハロゲンランプである。ハロゲンランプ11は、管状の長尺石英ガラス製のバルブ12内の長手方向に、タングステンを巻回して形成された複数のフィラメント13と耐熱性で導電性の非発光部14とが電気的に直列接続して収容してある。フィラメント13はバルブ12内の長手方向に配された複数のアンカー15を用いてそれぞれバルブ12内の中央部に位置するように支持される。フィラメント13と非発光部14は、同材料で形成しても構わない。
【0010】
バルブ12内には、それぞれ微量のハロゲン物質例えば臭素Brや塩素Clとの混合物とともに、アルゴンArや窒素Nなどの不活性ガスが常温25℃で0.9×10Pa程度の圧力で封入されている。バルブ12の軸方向両端部は、減圧封止法による一対の封止部161,162を形成し、これら封止部161,162内にはバルブ12と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形状の金属箔171,172をそれぞれ埋設している。
【0011】
ここで、減圧による封止とはシュリンクシールと呼ばれる封止方法で、封止部以外で一旦ランプを封止し、封止部を含むランプ内部を減圧にした状態で、モリブデン箔を気密封止させるものである。この封止方法は、石英ガラスの肉厚がピンチシールによる封止方法のように偏ることがないことから封止部の強度を向上させることができる。また、封止部以外で一旦封止するときにバルブの開口からハロゲンや不活性ガスを封入できることから排気管の封切跡をなくすことが可能である。
【0012】
金属箔171,172は、その内端部に、一対のインナーリード181,182を介して複数のフィラメント13と非発光部14が電気的に直列接続された軸方向両端にそれぞれ接続される一方、各外端部には、給電用の導入線である一対のアウターリード191,192がそれぞれ接続されている。アウターリード191,192は、封止部161,162から気密状態で外部へ延出している。アウターリード191,192に給電が行われると、複数のフィラメント13から光熱が放出される。
【0013】
図3に示すように、バルブ12の肉厚tは例えば0.8mmであり、バルブ12の径φは例えば6mmである。
【0014】
ここで、図4を参照し、バルブ12の肉厚の違いによる温度立ち上がり特性の比較について説明する。なお、図4の立ち上がり温度は、図5に示すようにバルブ12を加熱ローラ91内に配置した状態での加熱ローラ91が定着温度の達するまでの時間を比較したものである。
【0015】
すなわち、図4における破線の特性はバルブ12の肉厚を1.0mmとした場合の、実線の特性はバルブ12の肉厚を0.9mm,0.8mm,0.7mmとした場合の、バルブ12を加熱ローラ91内に配置した場合のそれぞれ温度立ち上がり特性を示している。
【0016】
加熱ローラ91が定着に必要な温度である例えば200℃を確保するまでに要する立ち上がり時間は、肉厚が1.0mmのバルブの場合は10秒程度要し、肉厚が0.9mmのバルブでは9秒程度を要している。これに対し、肉厚が0.8mm,0.7mmでは8秒未満であることが分かった。換言すれば、加熱ローラ91を200℃の温度にさせるためのバルブ12は、肉厚が0.8mm以下のバルブであれば、熱容量がより小さくなり良好な温度特性が得られるということができる。
【0017】
次に、図6〜図8を参照し、バルブの径と肉厚の異なるバルブ、さらに異なる封止方法により形成された封止部における封止強度の比較について説明する。
【0018】
図6は、封止部の強度を測定する条件を模式的に示したものである。封止部強度は、封止部から10mm間隔をあけた位置を支持具61で支持し、支持具61から20mm離れた位置を上方から応圧した場合を測定した。
【0019】
図7、図8は、図6の測定条件で異なる封止方法とバルブの肉厚との封止部の強度の測定結果をそれぞれ示し、図7は肉厚を1.0mmに、図8は肉厚を0.8mmにしバルブに対するバルプの径と封止方法の違いに対する封止部の強度の測定結果を表している。
【0020】
先ず、図7において、バルブの肉厚が1.0mmのピンチシールの封止強度は、φ5mmでは45Nで、φ6mmでは60N程度であった。これに対し、バルブの肉厚が1.0mmのシュリンクシールの封止強度は、φ5mmおよびφ6mmのいずれも100N以上であった。
【0021】
次に、図8において、バルブの肉厚が0.8mmのピンチシールの封止強度は、φ5mmでは30Nで、φ6mmでは45N程度であった。これに対し、バルブの肉厚が0.8mmのシュリンクシールの封止強度は、φ5mmおよびφ6mmのいずれも100N以上であった。
【0022】
図7、図8の封止強度を測定した結果をみると、シュリンクシールの場合には、バルブの肉厚が1.0mmのときはもちろんのこと、肉厚が0.8mmのときにも100N以上の強度を得ることができる。
【0023】
ところで、肉厚が1.0mmに比べて肉厚が0.8mmのときのバルブの熱容量が小さいなることから、バルブの温度上昇が早くなることについては、図4の説明の中で説明した。このことから、封止をシュリンクとし、バルブ12の肉厚が0.8mm以下である場合には、立ち上がりの早いバルブの温度特性を得ることができる。
【0024】
この実施形態では、バルブの肉厚が0.8mmでありながら、十分な封止強度を有するシュリンクシールのハロゲンランプ11を、加熱ローラ91に配置したときの加熱ローラ91の定着に必要な200℃までに上昇させるまでの時間は、8秒程度まで早めることが可能となる。
【0025】
このことは、特開2002−139939公報に記載された内容のように、高価な不活性ガスであるクリプトンあるいはキセノンを使用しなくても、トナー定着の立ち上がり時間を短縮させることができることを意味する。逆に、クリプトンあるいはキセノンを使用した場合は、さらに立ち上がり時間を早めることに寄与する。
【0026】
図9、図10は、上記で説明したハロゲンランプ11を使用したこの発明の加熱装置の一実施形態について説明するための、図9は概略的な構成図、図10は図9のx−x’断面図である。
【0027】
図9、図10において、100は加熱装置である。アルミニウムや鉄等の金属からなる円筒状の加熱ローラ91の外周面には例えばテフロン(登録商標)による被覆材92が被覆されている。加熱ローラ91の内部には発熱源であるハロゲンランプ11が図示しない支持部材で配置されている。
【0028】
93は、加熱ローラ91と圧接して下方に対向配置されたアルミニウムや鉄等の金属からなる円筒状の加圧ローラである。加圧ローラ93の外周面には例えばシリコンゴムによる弾性体層94が被覆されている。この弾性体層94の表面には、通過する紙が離れやすくなるように表面を平滑にする樹脂コーティングを形成してもよい。
【0029】
加熱ローラ91と加圧ローラ93は、支持手段951,952で回転自在に支持されている。また、加熱ローラ91と加圧ローラ93の同方向の一端にはそれぞれ図示しない回転ギアが取り付けられ、これら回転ギアとモータの回転軸に取り付けた回転ギアを噛み合わせ、モータを回転させることで、加熱ローラ91と加圧ローラ93を図23の矢印A,B方向にそれぞれ回転させることができる。
【0030】
加熱ローラ91のハロゲンランプ11が通電されると、加熱ローラ91が発熱してヒートアップ(昇温)する。そこで図10の矢印A,B方向に加熱ローラ91と加圧ローラ93を回転させ、図示しない転写ドラムなどからトナーTが所定分布状態に転写された複写紙Pが、ヒートアップされた加熱ローラ91と加圧ローラ93間に送り込ませることで、複写紙Pおよび前の工程で塗布されたトナーT1が上下から加熱され、加熱されたトナーT2が溶融後複写紙P上に定着し、所定の文字や図柄などとして描かれる。
【0031】
上記した加熱装置では、加圧ローラ93も加熱ローラ91と同様に加熱ローラにしても構わない。
【0032】
この実施形態では、バルブ12の温度上昇を早めることができることから、加熱ローラ91の温度上昇を早めることができ、結果として定着可能な時間を早くすることが可能となる。
【0033】
なお、加熱装置の用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用し同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の管型白熱ヒータに関する一実施形態の構成について説明するための正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図1要部の切欠斜視図。
【図4】バルブの肉厚の違いによる温度立ち上がり特性の比較について説明するための説明図。
【図5】バルブの肉厚に違いによる加熱ローラが定着温度の到達時間について説明するための説明図。
【図6】封止部の強度を測定する条件について説明するための模式図。
【図7】異なるバルブ肉厚と異なる封止方法による封止部の封止強度の関係について説明するための説明図。
【図8】異なるバルブ肉厚と異なる封止方法による封止部の封止強度の関係について説明するための説明図。
【図9】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための概略的な構成図。
【図10】図9のx−x’断面図。
【符号の説明】
【0035】
11 ハロゲンランプ
12 バルブ
13 フィラメント
14 非発光部
15 アンカー
161,162 封止部
171,172 金属箔
181,182 インナーリード
191,192 アウターリード
61 支持具
91 加熱ローラ
93 加圧ローラ
100 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ガラス製の円筒状バルブと、
前記バルブ内に収納したコイル状のフィラメントと、
前記フィラメントの両端に電気的に接続した一対の金属箔と、
前記金属箔のそれぞれの他端に接続した電力供給用に外部に導出したアウターリードと、
少なくとも前記金属箔部分の前記バルブを、減圧封止方法を用いて封止した封止部と、
前記バルブの肉厚は、0.7〜0.8mmとしたことを特徴とする管型白熱ヒータ。
【請求項2】
上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、
前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1記載の管型白熱ヒータと、
予めトナーが転写された複写紙が、前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−54310(P2009−54310A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217111(P2007−217111)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】