説明

管継手の製造方法

【課題】簡易な加工方法により低コストで工具レスの管継手を製造することができる管継手の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属管Pを接続するための係止部材30が内蔵された管継手10の製造方法において、円筒状の継手本体20内の開口部21側を縮径または開口部22側を拡径する第1成型工程と、継手本体20の開口部22側から係止部材30を挿入する係止部材挿入工程と、継手本体20の開口部21側に第1治具100、開口部22側に第2治具200を挿入する治具挿入工程と、第1治具100と第2治具200とを近接させ、継手本体20の開口部22を係止部材30の外径よりも小径に縮径する第2成型工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いずに金属管の着脱が可能な管継手の製造方法に関し、特に製造コストを低減できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、管継手は、家庭や店等に水道及びガスを供給するために使用される配管用金属管を長手方向に連結するための手段として使用されるものである。特に、流体金属管相互の連結には、気密性及び結合性が最も重要な要素とされている。
【0003】
従来の管継手は、金属管と螺合され、その結合部位にOリングのようなパッキング手段が介在された構成を有している。しかしながら、このような従来の管継手は、結合のとき、強い締め付け力が要求され、さらに別途の締め付け工具が必要なので、作業が容易でなく煩わしい。なお、管継手と金属管との結合が強固にならなければ、密閉効果が低下して気密維持の信頼性が疑われてしまうおそれがある。
【0004】
このような問題を解消するために、管継手内部に係止部材を内蔵し、配管用金属管と継手本体の連結具とをワンタッチで結合または分離するとともに、気密を効果的に維持することができる工具レス管継手が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特願2004−292582号公報
【特許文献2】特表2004−537696号公報
【特許文献3】特願2004−000573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した工具レス管継手では、次のような問題があった。すなわち、係止部材を装着するホルダの外径よりも継手端部の開口部内径を若干大きく設計する必要があり、そのため、Oリング、弾性体、ホルダ(係止部材装着済)を継手本体に挿入した後、これらの内蔵物が外れないように、スナップリングを用いて開口部の径を小さくする。または、開口部の内径を小さく設計した袋ナットを内蔵物に被せる等の作業が必要になる。
【0006】
このような継手本体は主に鋳物で作られており、継手内部の表面を滑らかにする加工や、径寸法を設計値に合わせるために、NC旋盤等による精密な切削加工が必要になる。
【0007】
また、スナップリングタイプにおいてはさらにスナップリング装着溝加工とスナップリング装着作業が必要になり、袋ナットタイプにおいては、本体以外に袋ナットの製造ならびに、本体と袋ナットへのネジ加工等に加え、さらに別途ネジ込み作業も必要となり、本体が鋳物製であることと相まって、これらの構造の継手は製造コストが高くなる。
【0008】
そこで本発明は、簡易な加工方法により低コストで工具レスの管継手を製造することができる管継手の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の管継手の製造方法は次のように構成されている。
【0010】
管を接続するための係止部材が内蔵された管継手の製造方法において、円筒状の継手本体の一方側を縮径する又は他方側を拡径する第1成型工程と、前記継手本体の他方側から前記係止部材を挿入する係止部材挿入工程と、前記継手本体の一方側を第1治具にセットし、他方側に第2治具を挿入する治具挿入工程と、前記第1治具と前記第2治具とを近接させてプレス成形し、前記継手本体の他方側の開口部を前記係止部材の外径よりも小径に縮径する第2成型工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な加工方法により低コストで工具レスの管継手を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一実施の形態に係る金属管用の管継手10を示す縦断面図、図2は同管継手10を分解して示す縦断面図である。なお、図中Pは接続の対象となる金属管を示している。
【0013】
管継手10は、円筒状の継手本体20と、この継手本体20の内部に継手本体20と同軸的に設けられた係止部材30とを備えている。継手本体20は、鋳造ではなく塑性加工により形成されたものである。
【0014】
継手本体20は、両端が開口した継手本体であり、他方の開口部22が縮径されている。
【0015】
係止部材30は、継手本体20の内周面に設けられ、後述する第1成型工程における小径側部21aの端部に係止されたOリング40と、継手本体20の内周面に取り付けられた円環状のベース部41と、このベース部41に基端部が固定された圧縮バネ(付勢部材)42と、この圧縮バネ42の先端側に設けられた抜け止め片ホルダ43とを備えている。圧縮バネ42は抜け止め片ホルダ43を他方の開口部22側に付勢している。
【0016】
抜け止め片ホルダ(円筒部)43は、円筒状に形成され、その内径は金属管Pの外径よりも大きく、かつ、縮径された継手本体20の開口部22の内径よりも大きい外径を有している。また、その円周上に外周側から内周側に貫通する切欠き部43aが複数個所に設けられている。
【0017】
切欠き部43aには、抜け止め片ホルダ43の径方向に移動可能に、かつ、金属管Pの外周面に当接するように装着された抜け止め片44が設けられている。抜け止め片44は金属管Pよりも高い硬度の金属製であって、金属管Pの外周面に食い込む鋭利な鋸歯44aを数段備えている。また、抜け止め片44の外周側は開口部22から開口部21側へ拡がるテーパ面44bが形成されている。
【0018】
なお、前述したように抜け止め片ホルダ43の外径は、継手本体20の開口部22の内径よりも大きいことから、抜け止め片ホルダ43を含む係止部材30が開口部22から抜け出ることはない。
【0019】
このように構成された管継手10には、次のようにして金属管Pが着脱される。すなわち、金属管Pを継手本体20の開口部22から挿入し、その外周面がOリング40の内周面に接触するまで移動させる。これにより、Oリング40が金属管Pに圧縮されて止水される。ここで、抜け止め機構の作用について説明する。抜け止めホルダ43、抜け止め片44は、抜け止めホルダ43と金属管Pとの摩擦により圧縮バネ42の弾性に抗して一方の開口部21側へ僅かに移動する。また、抜け止め片44は径方向に僅かに移動することで、金属管Pの移動を阻害せず、円滑に挿入することができる。
【0020】
一方、金属管Pの挿入が完了すると、圧縮バネ42の付勢により抜け止めホルダ43を介して抜け止め片44を開口部22側に押圧される。このとき、抜け止め片44のテーパ面44bが縮径部22aの内周面に当接し、抜け止め片44が径方向内側に移動する。これにより、抜け止め片44の鋸歯44aは金属管Pの外周面に強く押し付けられ、金属管Pは強固に接続され、管継手10から抜けて外れることがない。
【0021】
次に、このように構成された管継手10の組立て方法について説明する。図2に示すように、内径が均一のパイプ材からなる継手本体20の一方の開口部21を縮径する(縮径工程)。または開口部22を拡径する(拡径工程)。この後、熱処理を行い、残留応力の除去を行っても良い。次に、図3に示すように、継手本体20の他方の開口部22から係止部材30を挿入する(係止部材挿入工程)。次に、図4に示すように、継手本体20の開口部21側を第1治具100にセットし、開口部22側を第2治具200を挿入する(治具挿入工程)。
【0022】
第1治具100は、金属材から形成され、凹部110が形成されている。凹部110は、継手本体20の開口部21側の外周面を支持する形状に形成されている。また、第2治具200は、金属材から形成され、凹部210と、この凹部210から第1治具100側に突出する凸部220が形成されている。凹部210は、継手本体20の開口部22側の外周面を支持する形状に形成されている。
【0023】
次に図5に示すように、第1治具100と第2治具200とを近接させてプレス成形を行い、凸部220が係止部材30の抜け止め片ホルダ43を圧縮バネ42の付勢力に抗して継手本体20の開口部21側に押圧する(押圧工程)。さらに押圧を続けると、継手本体20の縮径部22aが凹部210に押圧され、係止部材30の外径よりも小径に縮径する(縮径工程)。
【0024】
上述したように、本実施の形態に係る管継手10の製造方法によれば、継手本体20を塑性加工により形成することができるので、継手本体20内部の表面を滑らかにする加工や、径寸法を設計値に合わせるために、NC旋盤等による精密な切削加工は不要であり、作業工程を簡略化することができる。また、係止部材30の挿入及び脱落防止のための縮径を簡易な方法により行うことができる。このため、低コストで工具レスの管継手を製造することができる。
【0025】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、係止部材として抜け止め片を用いたものを説明したが、継手本体の開口部よりも大径の係止部材であれば他の機構を用いてもよい。また、材質も上述したものに限られない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係る管継手の製造方法によって製造される管継手を示す縦断面図。
【図2】同管継手の製造方法の工程を示す縦断面図。
【図3】同管継手の製造方法の工程を示す縦断面図。
【図4】同管継手の製造方法の工程を示す縦断面図。
【図5】同管継手の製造方法の工程を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0027】
10…管継手、20…継手本体、21…開口部、22…開口部、21a…第1成型工程における小径側部、22a…縮径部、30…係止部材、40…Oリング、41…ベース部、42…圧縮バネ(付勢部材)、43…抜け止め片ホルダ(円筒部)、43a…切欠き部、44…抜け止め片、44a…鋸歯、44b…テーパ面、P…金属管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管を接続するための係止部材が内蔵された管継手の製造方法において、
円筒状の継手本体の一方側を縮径する又は他方側を拡径する第1成型工程と、
前記継手本体の他方側から前記係止部材を挿入する係止部材挿入工程と、
前記継手本体の一方側を第1治具にセットし、他方側に第2治具を挿入する治具挿入工程と、
前記第1治具と前記第2治具とを近接させてプレス成形し、前記継手本体の他方側の開口部を前記係止部材の外径よりも小径に縮径する第2成型工程とを備えていることを特徴とする管継手の製造方法。
【請求項2】
前記係止部材は、前記管の外径よりも大きい内径を有し、かつ、前記成型された前記継手本体の前記第1成型工程における小径側よりも大きい外径を有する円筒部を具備し、その円周上に外周側から内周側に貫通する切欠き部が設けられた抜け止め片ホルダと、
この抜け止め片ホルダの前記切欠き部に配置され、前記抜け止め片ホルダの径方向に移動可能に、かつ、前記管の外周面に当接するように装着された抜け止め片と、
前記継手本体の内周面に固定された円環状のベース部材と、
このベース部材と前記抜け止め片ホルダとの間に配置され、前記抜け止め片ホルダを前記継手本体の他方側に付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の管継手の製造方法。
【請求項3】
前記第2成型工程は、前記係止部材の前記抜け止め片ホルダを前記付勢部材の付勢力に抗して前記継手本体の一方側に押圧する押圧工程を有することを特徴とする請求項2に記載の管継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−270606(P2009−270606A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120499(P2008−120499)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(302000793)株式会社ベネックス (8)
【Fターム(参考)】