説明

管継手の雌型継手部材

【課題】1つの環状シール部材で内側及び外側弁座部を密封係合する。
【解決手段】
弁部材が、弁開口内に入るガイド部を有するガイド部材75と、シール部材68と、シール部材をガイド部材との間に挟着固定する筒状支持部材72とを有する。シール部材は、外側係合部68bと内側係合部68aとを有する。外側係合部68bはガイド部材75と筒状支持部材72の前端に接着され、内側係合部は非接着とされ、且つ、ガイド部より半径方向内側に延びる環状延長部68a’を有する。弁部材が閉止位置に近づくとき、外側及び内側係合部が外側及び内側弁座部に係合しながら弾性変形し、且つ、内側係合部は後方に湾曲するようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手における雌型継手部材に係り、特に、筒状の継手本体の半径方向中央部に内側弁座部を設け、該内側弁座部に対応する継手本体の内周面の位置に外側弁座部を設けると共に、同継手本体内に筒状又は環状の弁部材を設け、該弁部材が、内側及び外側弁座部に係合して当該継手本体の流路を閉じる閉止位置と、同弁座部から離れて流路を開放する開放位置との間を軸線方向で変位可能とした雌型継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手の雄型及び雌型の継手部材は、通常、筒状の継手本体の内部に流路の開閉を行うための弁手段が設けられている。弁手段には、種々の形式があるが、筒状の弁部材を継手本体の内周面と摺動可能とするとともに、該継手本体の半径方向中央位置に弁座部を設定し、該弁部材が流路閉止位置にあるときには、該弁座部に密封係合して流路を閉止するようにしたものがある。この形式の継手部材においては、Oリングなどのシール部材が、弁部材の外周面と継手本体の内周面との間に設定され、雄型及び雌型継手部材の間の隙間から流体が漏れるのを防ぐようにする(例えば、特許文献1参照)。また、シール部材を用いる代わりに、弁部材自体をゴムなどで形成してシール部材を兼ねるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、そのようなシール部材は、弁体の動きに伴う摩擦により磨耗を生じやすい。このため、筒状の継手本体の内周面に流体通路を囲むように突設された外側弁座部とこの外側弁座部に対応する半径方向内側に内側弁座部とを設け、雄型及び雌型継手部材が離されて、弁部材が流路閉止位置にあるときには、該弁部材が外側及び内側弁座部に密封係合して流体の漏れを防ぐようにすると共に、雄型及び雌型継手部材が連結されたときには、弁部材が外側及び内側弁座部から離れて開放位置となるようにしたものが開発されている。(例えば、特許文献3)。この継手部材においては、弁部材が流路閉止位置となったときには、外側及び内側弁座部と当該弁部材との間で環状の外側及び内側環状シール部材を挟着することによって流体の漏出を防ぐようになっているが、弁部材が外側及び内側シール部材を同時に押圧開始するようにすることは、製作上、難しく、このため一方のシール部材が早く押圧され、他方のシール部材が適正な密封作用を行なうのに必要な押圧がなされる前に、当該弁部材の動きが停止されてしまうということが生じやすい。
【0004】
本願発明者は、このような点に鑑み、弁部材が該閉止位置に近づくときに、弁部材に取り付けた外側環状シール部材が外側弁座部押圧されると同時に、同じく弁部材に取り付けた内側環状シールが、内側弁座部に係合しながら後方に湾曲するように弾性変形するようにして、外側環状シール部材が外側弁座部と十分に密封係合するのに、内側環状シール部材が当該弁部材の動きを妨げず、外側及び内側環状シール部材による密封係合が共に適正になるようにした雌型継手部材を開発している(特許文献4)。しかし、この雌型継手部材では、外側及び内側環状シール部材と、それが取り付けられている弁部材との間の接着が不十分である場合などにより、それらの間の隙間から流体が漏れ出す虞があることが分かった。また、外側及び内側環状シール部材を、弁部材に取り付ける作業が煩雑であり、コストが高いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,936,345号
【特許文献2】実開昭64−49791号
【特許文献3】特許第2694299号
【特許文献4】特許第3909339号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような特許文献4に開示された継手部材の問題を解消することができる雌型継手部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
前端開口、該前端開口から後方に延びる雄型継手部材受入部、及び、該雄型継手部材受入部に受け入れた雄型継手部材の流体通路に連通される流体通路を備える筒状の継手本体と、
該継手本体内に設けられて、該流体通路間の開閉を行なう弁装置と、
を有する管継手の雌型継手部材であって、
該弁装置が、
該継手本体の内周面に該雄型継手部材受入部を囲むように突設され、該継手本体と同軸状とされた外側弁座部と、
該外側弁座部の半径方向内側位置に設けられ、該継手本体と同軸状とされた内側弁座部であって、該外側弁座部との間に環状の弁開口を画定する内側弁座部と、
該継手本体内部にその軸線方向で変位可能に設けられ弁部材と、
該弁部材を前方に向けて付勢して該弁部材が外側及び内側弁座部と密封係合する閉止位置とするとともに、該外側及び内側弁座部から後方に離れて開放位置となるのを許容するバネ部材と
を有し、
弁部材は、
該開放位置から該閉止位置に向かうときに、該弁開口内に入って、該弁部材が該継手本体と同軸状になるように案内するガイド部を有するガイド部材と、
該継手本体と同軸状にされ、該ガイド部材の後面側に取り付けられる環状の外側係合部と、該外側係合部から半径方向内側延びる環状の内側係合部とを有し、該弁部材が開放位置から前方に動き閉止位置に近づいたときに、外側及び内側係合部が対応する外側及び内側弁座部と係合して弾性変形を伴いながら該外側及び内側弁座部に密封係合するようになされた環状のシール部材と、
該シール部材の後面側に取り付けられ、該継手本体の内周面に隣接して後方に延びる筒状支持部材であって、該外側係合部を該ガイド部材との間に固定する筒状支持部材と
を有する雌型継手部材を提供する。
【0008】
この雌型継手部材においては、シール部材の外側係合部が上述のようにガイド部材と筒状支持部材との間で固定されており、外側係合部の内側に設けられた内側係合部が、ガイド部材のガイド部よりも半径方向内側に位置して、弁部材が該閉止位置に達して外側係合部が該外側弁座部と密封係合されるときに、外側係合部が外側弁座部に密封係合するのを内側係合部が妨げず且つ内側係合部が内側弁座部と密封係合状態を得ることを可能にする。更に、シール部材が単一の部材とされているので、その外側及び内側係合部で外側及び内側弁座部に密封係合した状態では、ガイド部材などの弁部材の構成要素に対する該シール部材の結合が不完全なものであったとしても、その結合部分から流体が漏出してしまうといった状態が生じることはない。
【0009】
具体的には、環状のシール部材が、内側係合部がガイド部材のガイド部よりも半径方向内側に延びる環状延長部を有し、該弁部材が該閉止位置に達して外側係合部が該外側弁座部と密封係合されたときに、該環状延長部の該内側弁座部との係合により当該内側係合部が後方に湾曲するように弾性変形されて該内側弁座部との間を密封するようにすることができる。内側係合部の環状延長部は、外側係合部が外側弁座部に密封係合するのを内側係合部が妨げず且つ当該内側係合部がそのような湾曲を伴いながら内側弁座部と密封係合して、外側及び内側弁座部における密封係合をより確実にすることを可能とする。
【0010】
外側弁座部が、該継手本体と同軸状とされ、前方に向かうに従い小径になる環状傾斜面と、該環状傾斜面の前端縁から該継手本体と同軸状に前方に延びて該弁開口を画定する円筒状のガイド面とを有し、
該弁部材のガイド部材が、該弁開口に入るガイド部の後端から後方に向かうに従って大径となる係止部分を有し、該係止部分が、該弁部材が該閉止位置とされた状態で、該外側弁座部の該環状傾斜面と略当接するようにすることができる。
【0011】
雌型継手部材内の高圧がシール部材にかけられたときに、該ガイド部材の係止部分が該外側弁座部の環状傾斜面と当接することにより、該シール部材が外側に飛び出すのを阻止することを可能とするものである。
【0012】
より具体的には、該環状のシール部材が、該外側係合部において該筒状支持部材と該ガイド部材に接着され、該内側係合部が該筒状支持部材と該ガイド部材に対して非接着とすることができる。
【0013】
以下、本発明に係る雌型継手部材の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る雌型継手部材と、該雌型継手部材に連結される雄型継手部材からなる管継手の縦断側面図である。
【図2】同管継手の縦断側面図であり、雌型継手部材が雄型継手部材と連結された状態を示している。
【図3】弁部材の分解側面図である。
【図4】弁部材を後方上部から見た分解斜視図である。
【図5】弁部材を前方上部から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示すように、本発明に係る雌型継手部材10は、雄型継手部材12とともに管継手14を構成する。
【0016】
雄型継手部材12は、筒状の継手本体16と、該継手本体16内に設定され、圧縮バネ18により付勢されて、当該雄型継手部材12の流体通路22を閉じるための閉止位置(図1)とされている弁部材20とを有する。弁部材20は、環状シール21を支持する弁本体23と、該弁本体23の後面中央に設けられた突起(ピン)25に先端がかしめられて該弁本体23に固定されたバネ受け部材27とを有する。バネ受け部材27は、金属板をプレス加工したものであり、円環状にされて圧縮バネ18を受けるバネ受け部27aと、該バネ受け部27aの周縁に設けられた筒状のバネ保持部27bとを有し、バネ受け部27aには流体を通すための孔27cが設けられている。通常の弁部材は、上記突起25に相当するものを長く形成し、その周りに圧縮コイルバネを設定するが、本発明では、圧縮コイルバネ18の支持を、上記の如きバネ受け部材27によって行うようにしたので、圧縮バネ18の径を大きく且つバネ材を太くすることができ、従って、その長さを短くすることができるので、バネ受け部材27のプレス成形によるコスト低減に加えて、当該雄型継手部材12の製作コストを低減することが可能となる。
【0017】
雌型継手部材10は、前端開口30、前端開口30から後方に延び、雄型継手部材12を受け入れるための雄型継手部材受入部32を有する継手本体36、及び、該継手本体36の後端にネジ係合され、該継手本体36内を前方に延びる流体通路管44を有する。
【0018】
継手本体36は、その内周面40に雄型継手部材受入部32を囲むように突設された外側弁座部42を備える。流体通路管44は、流体通路34を画定する内周面、継手本体36の内周面40との間に筒状の弁部材収納空間46を形成する外周面50、該流体通路34の前端を閉じて、継手本体36の外側弁座部42との間に環状の弁開口48(図2)を形成する内側弁座部52、内側弁座部52より後方位置において弁部材収納空間46と流体通路34とを連通するために設けられた連通孔54とを有する。連通孔54は、90°間隔で4つ設けられるようにされている。
【0019】
弁部材収納空間46内には、継手本体36の内周面40及び流体通路管44の外周面50に対して前後方向で変位能に設けられ、外側弁座部42及び内側弁座部52に係合して弁開口48を閉じる閉止位置(図1)と、雄型継手部材受入部32内に挿入される雄型継手部材12によって当接され、閉止位置から弁部材収納空間46内の後方に押し込まれ、外側弁座部42及び内側弁座部52から離れて弁開口48を開放した開放位置(図2)との間で変位可能とされた環状又は筒状の弁部材60、及び、弁部材60を閉止位置に向けて付勢する圧縮バネ62を有する。
【0020】
継手本体36の内周面40及び流体通路管44の外周面50には、それぞれ環状の連通用凹部64,66が設けられて、開放位置とされた弁部材60が閉止位置に向かって動くときに、弁部材収納空間46において弁部材60より前方の空間内にある流体が、連通用凹部64,66を通って、後方に流れるようにし、前述した従来の管継手のようにこの連通用凹部が設けられていない場合に比べて、該弁部材60の動きに対する抵抗を小さくするようにしてある。
【0021】
弁部材60は、具体的には、閉止位置にあるときに、外側弁座部52及び内側弁座部42に密封係合するゴムや樹脂などの弾性部材からなる環状のシール部材68と、シール部材68の後面に取り付けられ継手本体36の内周面40に対して近接して同軸状に配置された筒状部70を有する金属等の剛性材料からなる筒状支持部材72と、シール部材68の前面側に取り付けられ、弁部材60が開放位置から閉止位置に向かうときに、弁開口48内に入って、弁部材60が継手本体36と同軸状になるように案内するガイド部76を有する金属等の剛性材料からなるガイド部材75とを有する。筒状支持部材72及びガイド部材75とシール部材68とは接着剤などにより接続される。
【0022】
外側弁座部42は、継手本体36と同軸状とされ、前方に向かうに従い小径になる環状傾斜面42aと、該環状傾斜面42aの前端縁から継手本体36と同軸状に前方に延びて弁開口48を画定する円筒状のガイド面42bとを有する。ガイド部材75は、弁開口48に入るガイド部76から後方に向かうに従って大径となる係止部分77を有し、該係止部分77は弁部材60が閉止位置とされた状態で、外側弁座部42の環状傾斜面42aと略当接するようにされており、弁部材60が閉止位置にあるときに該弁部材60が当該雌型継手部材内の高圧を受けても、弁開口48を通して外部へ飛び出さないようにしている。図示の実施形態では、内側弁座部52は外側弁座部42に対向して、継手本体36と同軸状にされた円筒状のガイド面52aと、該ガイド面の後端縁から半径方向外側に広がる半径方向面52bとを有しており、ガイド部材75のガイド部75は、外側弁座部42及び内側弁座部52のガイド面42b、52aの間に形成される弁開口48内に入るようになされている。
【0023】
環状のシール部材68は、内側係合部68aと外側係合部68bとを有し、弁部材60が開放位置から前方に動き閉止位置に近づいたときに、外側及び内側係合部68b、68aが対応する外側側及び内側弁座部42,52と係合して弾性変形を伴いながら弁部材が閉止位置に進むようになされる。内側係合部68aは、ガイド部材75のガイド部75よりも半径方向内側に延びる環状延長部68a’を有し、弁部材60が閉止位置に達して外側係合部68aが外側弁座部42と密封係合されたときに、図2に示すように、該環状延長部68a’が内側弁座部52との係合により後方に湾曲するように弾性変形されて内側弁座部52との間を密封するようにされている。
【0024】
筒状支持部材72は、その前端部に、シール部材68の外側係合部68bの後面に当接され接着された環状の縦断面形状が逆L字状部分の環状支持部73を有し、内側係合部68aは内側弁座部42に係合されたときに、環状支持部73の半径方向内側において、後方に湾曲するようにされている。具体的には、シール部材68は、環状支持部73に接着された後面部分に略対応する前面部分においてガイド部材75に接着されており、外側係合部68bはそれら前後の接着面間に画定されて、当該弁部材60が閉止位置とされたときには、環状傾斜面42aに確実に押圧されるようにされており、内側係合部68aは該外側係合部68bから内側に延びる部分とされ、ガイド部材75には接着されずに大きな可撓性を有するようにされている。
【0025】
流体通路管44の外周面50は、環状のシール部材68の内周面68aより僅かに小さな直径を有し、弁部材60が、閉止位置と開放位置との間で変位するときに環状のシール部材68の内周面68aがほぼ摺動するようにされたシール部材近接部50aを有し、連通用凹部66は、図2に示すように、弁部材60が開放位置にあるときに、環状のシール部材68の内周面の前後にわたって延びるようにされており、弁部材60が開放位置から閉止位置に向かって動き始めるときに、弁部材収納空間46においてシール部材68より前方の空間内にある流体が、連通用凹部66を通って、後方に流れるようにされている。
【0026】
シール部材68の外周面は、筒状支持部材72の筒状部70と略同じ外径を有している。継手本体36の内周面40は、開放位置にあるときの弁部材60のシール部材68の外周面に略接する位置から後方に延びるガイド部40aと該ガイド部40aの前端から前方に延びる上記の連通用凹部64とを有する。ガイド部40aは、支持部材72の筒状部70の外周面70aと略接するようにされており、開放位置と閉止位置との間で変位する弁部材60が傾かないように案内する。連通用凹部64は、弁部材60が前後に動くときに、その前後の空間の間で両体が流れやすくするものであるが、特に、弁部材60が開放位置から閉止位置に向かって動くときに、弁部材60の前方から後方に流体が流れやすくし、弁部材60の動きに対する抵抗を小さくする。
【0027】
図示の例では、筒状支持部材72の筒状部70に周方向で間隔をあけて設けられた連通孔74が設けられており、連通用凹部64を介して弁部材60のシール部材68の後方に流れた流体が、該連通孔74を介して、当該弁部材60の後方空間に流れるのを容易にしている。
【0028】
図示の例では、継手本体36は、半径に延びる施錠孔内に設定された球状の施錠子80と、継手本体36の外周面上に前後方向で変位可能とされた操作スリーブ82と、該操作スリーブ82を図示のように施錠子80を半径方向外側から内向きに押圧する施錠位置に付勢する圧縮バネ84とを有している。雄型継手部材12を雌型継手部材10内に連結する場合には、作業者が操作スリーブ82を、図で見て、左方に変位させ、該操作スリーブ82の内周面の大径とされた施錠子開放部86が施錠子80の半径方向外側位置となるようにして、雄型継手部材12を挿入し、挿入した段階で、作業者が操作スリーブ82を離すことによって、圧縮バネ84により操作スリーブ82が図示の位置に変位され、それにより施錠子80を雄型継手部材12の外周面に設けた施錠子受入溝90に嵌合させて、雄型継手部材12及び雌型継手部材10を連結固定する。
【0029】
図2に示すように雌型継手部材10に連結されていた雄型継手部材12を、操作スリーブ82を左方に変位させて施錠子開放位置とし、雌型継手部材10から右方に引き抜くと、圧縮バネ62のバネ力により弁部材60が雄型継手部材12に追従するように右方に変位する。
【0030】
このとき、弁部材収納空間46における弁部材60の後方の空間は容積が大きくなり流体の充填が必要になり、一方、弁部材収納空間46における弁部材60の前方の空間では容積が小さくなり流体が弁体の後方空間内に流れるようにすることが必要となる。本願発明に係る雌型継手部材10では、弁部材60の特に動き始めの段階では、流体通路管44の外周面50に設けた連通用凹部66がシール部材68の前後にわたって延びるようにされているので、この連通用凹部66を介して流体が弁部材60の後方空間内に充填されるようになり、当該弁部材60が円滑に変位することを可能としている。また、継手本体36の内周面40に設けた連通用凹部64は、弁部材60が動き始めて間もなく、シール部材68が連通用凹部64のある位置となり、該シール部材68の前方位置にある流体が該連通用凹部64を介して後方に流れ、筒状部70に形成された連通孔74を介して、当該弁部材60の後方空間内に流れやすくなる。このようにしていることにより、雄型継手部材12が急に引き抜かれても、弁部材60が速やかに閉止位置に戻り、流体が当該雌型継手部材10から漏出するのをできるだけ少なくするようにすることができる。
【0031】
弁部材60が変位するときになるべく傾きがないようにすることが好ましく、継手本体36の内周面40のガイド部40aは長くすることが好ましく、図示の例では、弁部材60が閉止位置にあるときに、その筒状部70の後端がガイド部40aの前端と重なるようにして、弁部材60が開放位置に動き始めたときから該ガイド部40aが該弁部材60を案内できるようにしている。
【0032】
以上、本発明に係る雌型継手部材の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
雌型継手部材10;雄型継手部材12;管継手14;継手本体16;圧縮バネ18;弁部材20;環状シール21;流体通路22;弁本体23;突起25;バネ受け部材27;バネ受け部27a;バネ保持部27b;前端開口30;雄型継手部材受入部32;継手本体36;内周面40;ガイド部40a;外側弁座部42;流体通路管44;弁部材収納空間46;弁開口48;外周面50;シール部材近接部50a:内側弁座部52:連通孔54;弁部材60;圧縮バネ62;連通用凹部64,66;シール部材68;内側係合部68a;外側係合部68b;外周面68c;内周面68d;筒状部70;支持部材72;環状支持部73;連通孔74;ガイド部材75;ガイド部76;施錠子80;操作スリーブ82;圧縮バネ84;施錠子開放部86;施錠子受入溝90

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端開口、該前端開口から後方に延びる雄型継手部材受入部、及び、該雄型継手部材受入部に受け入れた雄型継手部材の流体通路に連通される流体通路を備える筒状の継手本体と、
該継手本体内に設けられて、該流体通路間の開閉を行なう弁装置と、
を有する管継手の雌型継手部材であって、
該弁装置が、
該継手本体の内周面に該雄型継手部材受入部を囲むように突設され、該継手本体と同軸状とされた外側弁座部と、
該外側弁座部の半径方向内側位置に設けられ、該継手本体と同軸状とされた内側弁座部であって、該外側弁座部との間に環状の弁開口を画定する内側弁座部と、
該継手本体内部にその軸線方向で変位可能に設けられ弁部材と、
該弁部材を前方に向けて付勢して該弁部材が外側及び内側弁座部と密封係合する閉止位置とするとともに、該外側及び内側弁座部から後方に離れて開放位置となるのを許容するバネ部材と
を有し、
弁部材は、
該開放位置から該閉止位置に向かうときに、該弁開口内に入って、該弁部材が該継手本体と同軸状になるように案内するガイド部を有するガイド部材と、
該継手本体と同軸状にされ、該ガイド部材の後面側に取り付けられる環状の外側係合部と、該外側係合部から半径方向内側延びる環状の内側係合部とを有し、該弁部材が開放位置から前方に動き閉止位置に近づいたときに、外側及び内側係合部が対応する外側及び内側弁座部と係合して弾性変形を伴いながら該外側及び内側弁座部に密封係合するようになされた環状のシール部材と、
該シール部材の後面側に取り付けられ、該継手本体の内周面に隣接して後方に延びる筒状支持部材であって、該外側係合部を該ガイド部材との間に固定する筒状支持部材と
を有する雌型継手部材。
【請求項2】
環状のシール部材が、内側係合部がガイド部材のガイド部よりも半径方向内側に延びる環状延長部を有し、該弁部材が該閉止位置に達して外側係合部が該外側弁座部と密封係合されたときに、該環状延長部の該内側弁座部との係合により当該内側係合部が後方に湾曲するように弾性変形されて該内側弁座部との間を密封するようにされている請求項1に記載の雌型継手部材。
【請求項3】
外側弁座部が、該継手本体と同軸状とされ、前方に向かうに従い小径になる環状傾斜面と、該環状傾斜面の前端縁から該継手本体と同軸状に前方に延びて該弁開口を画定する円筒状のガイド面とを有し、
該弁部材のガイド部材が、該弁開口に入るガイド部の後端から後方に向かうに従って大径となる係止部分を有し、該係止部分が、該弁部材が該閉止位置とされた状態で、該外側弁座部の該環状傾斜面と略当接するようにされた請求項1又は2に記載の雌型継手部材。
【請求項4】
該環状のシール部材が、該外側係合部において該筒状支持部材と該ガイド部材に接着され、該内側係合部が該筒状支持部材と該ガイド部材に対して非接着とされた請求項1乃至3のいずれかに記載の雌型継手部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−75055(P2011−75055A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228434(P2009−228434)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】