説明

管継手保護カバー、及び管継手管理システム

【課題】管継手の埋設位置を容易に特定することができると共に、該管継手及び該管継手のためのセンサ装置を保護することができる。
【解決手段】管継手保護カバー10では、管継手12が収容されるカバー体30の内部には、予め記憶した情報(管継手12の埋設位置など)をカバー体30の外部へ無線送信可能な情報送信センサ装置80と、カバー体30の内部の状況(管継手12からの漏水の有無等)を検知するとともに、当該検知結果をカバー体30の外部へ無線送信可能な状況検知センサ装置86とが設けられている。したがって、これらのセンサ装置が送信する電波を、地上の情報端末装置で受信することにより、管継手98の埋設位置や管継手98からの漏水の有無等を確認することができる。また、各センサ装置が管継手12とともにカバー体96の内部に設けられているため、管継手12及び各センサ装置を土中における荷重の入力などから保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中に埋設される管継手を保護する管継手保護カバー、及びこの管継手保護カバーを用いた管継手管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土中に埋設された配管にセンサ装置を設置するとともに、RFID(無線周波数確認)技術を利用して該センサ装置と地上の携帯端末装置との間で電波を送受信することにより、配管の状況(漏水の有無など)を確認するようにしたセンサシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−291181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のセンサシステムでは、センサ装置が配管の表面に設置されて土中に埋設されるため、配管からの漏水がない場合でも、土中に含まれる水分によってセンサ装置が誤作動する可能性がある。また、土中に埋設された配管には、地上では有り得ないような荷重が入力される場合があるため、当該荷重によってセンサ装置が配管から脱落したり、破損したりする可能性がある。
【0005】
一方、土中に埋設される配管が管継手を介して土中で連結される場合には、土中の水分や油分などによって管継手が劣化し、当該管継手部分から漏水する可能性が高い。このため、上述の如きセンサシステムを利用する場合には、管継手の状況を検知することが好ましいが、このような場合でもセンサ装置を上述の如き誤作動や破損などから保護する必要がある。
【0006】
また、上述の如く管継手が土中に埋設される場合には、管継手のメンテナンス時などに管継手の埋設位置を特定することが困難である。このため、土中からの掘り返し時などに管継手やセンサ装置を傷つけてしまう可能性があり、これを回避する必要もある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、管継手の埋設位置を容易に特定することができると共に、該管継手及び該管継手のためのセンサ装置を保護することができる管継手保護カバー、及びこの管継手保護カバーを用いた管継手管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る管継手保護カバーは、複数の配管を連結するための管継手を内部に収容可能なカバー体と、前記カバー体に設けられ、前記配管を挿入可能な配管挿入部と、前記配管挿入部に設けられ、挿入された前記配管の外周面に密着して前記配管と前記配管挿入部との間をシールする止水部材と、前記カバー体内部の上部側に設けられ、予め記憶した情報を前記カバー体外部へ無線送信可能な情報送信センサ装置と、前記カバー体内部の下部側に設けられ、前記カバー体内部の状況を検知すると共に、当該検知結果を前記カバー体外部へ無線送信可能な状況検知センサ装置と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の管継手保護カバーでは、管継手が収容されるカバー体の内部には、予め記憶した情報をカバー体外部へ無線送信可能な情報送信センサ装置が設けられている。したがって、カバー体(管継手)が土中に埋設される前に、予め情報送信センサ装置に管継手の埋設位置情報などを記憶させておけば、この情報送信センサ装置が送信する電波を地上で受信することにより、管継手の埋設位置などを確認することができる。しかも、情報送信センサ装置がカバー体内部の上部側に設けられているため、例えば管継手からの漏水などによりカバー体内部の下部側に水が溜まった場合でも、情報送信センサ装置が浸水することを防止できる。
【0010】
また、カバー体の内部には、カバー体内部の状況を検知すると共に、当該検知結果をカバー体外部へ無線送信可能な状況検知センサ装置が設けられている。したがって、状況検知センサ装置が送信する電波を地上で受信することにより、土中に埋設されたカバー体内部の状況を確認することができる。例えば、状況検知センサ装置が水分センサを有する場合には、管継手からの漏水の有無などを確認することができる。しかもこの場合、状況検知センサ装置がカバー体内部の下部側に設けられているため、カバー体内部の下部側に流下する水を状況検知センサ装置によって迅速に検知することができる。
【0011】
さらに、上述の如く管継手、情報送信センサ装置及び状況検知センサ装置がカバー体の内部に設けられているため、管継手及び各センサ装置を土中における荷重の入力などから保護することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る管継手保護カバーは、請求項1に記載の管継手保護カバーにおいて、前記状況検知センサ装置は、前記カバー体内部の水分を検知する水分センサ、前記カバー体内部の湿度を検知する湿度センサ、及び前記カバー体内部の温度を検知する温度センサのうち少なくとも1つを有することを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の管継手保護カバーでは、水分センサ、湿度センサ及び温度センサのうち少なくとも1つによって、カバー体内部の水分、湿度及び温度のうち少なくとも1つを検知することができ、当該検知結果をカバー体外部に無線送信させることができる。したがって、管継手のメンテナンスの要否などを地上において容易に判断することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る管継手保護カバーは、請求項1又は請求項2に記載の管継手保護カバーにおいて、前記カバー体の表裏両面には、蛇腹状の凸凹が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の管継手保護カバーでは、カバー体の表裏両面に蛇腹状の凹凸が設けられているため、カバー体が荷重を受けた際に、カバー体を柔軟に撓らせることができる。しかも、蛇腹状の凸凹によってカバー体を撓らせる構成であるため、カバー体の肉厚を充分に確保した場合でもカバー体の可撓性を確保することができる。したがって、カバー体の剛性の確保と可撓性の確保とを両立させることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る管継手保護カバーは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の管継手保護カバーにおいて、前記カバー体は、分割可能に連結される複数の分割体によって構成されていることを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の管継手保護カバーでは、カバー体を複数の分割体に分割することができる。このため、複数の分割体を互いに連結させてカバー体を組み立てる際に、カバー体内部に管継手を収容させることができる。これにより、サイズが大きい管継手であってもカバー体内部に収容させることが可能になる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る管継手保護カバーは、請求項4に記載の管継手保護カバーにおいて、前記複数の分割体の連結部には、当該連結部をシールする止水手段が設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の管継手保護カバーでは、止水手段によって複数の分割体の連結部がシールされるため、当該連結部を介してカバー体内部に液体(水、油など)が侵入することを防止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係る管継手管理システムは、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の管継手保護カバーと、当該管継手保護カバーに設けられた前記情報送信センサ装置及び前記状況検知センサ装置との間で無線通信可能な情報端末装置と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の管継手管理システムでは、土中に埋設された管継手保護カバーの情報送信センサ装置が送信する電波を、地上の情報端末装置で受信することにより、管継手の埋設位置などを確認することができる。また、この管継手保護カバーの状況検知センサ装置が送信する電波を、地上の情報端末装置で受信することにより、カバー体内部の状況を確認することができる。しかも、管継手、情報送信センサ装置及び状況検知センサ装置がカバー体の内部に設けられているため、管継手及び各センサ装置を土中における荷重の入力などから保護することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る管継手保護カバー及び管継手管理システムでは、管継手の埋設位置を容易に特定することができると共に、該管継手及び該管継手のためのセンサ装置を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る管継手保護カバーの構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される管継手保護カバーの縦断面である。
【図3】図1に示される管継手保護カバーの連結部のねじ構造を示す断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図1に示される管継手保護カバーの構成部材である情報送信センサ装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示される管継手保護カバーの構成部材である状況検知センサ装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る管継手管理システムの概要を説明するための図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る管継手保護カバーの構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示される管継手保護カバーの縦断面である。
【図11】第1実施形態及び第2実施形態に係る管継手保護カバーの連結部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図8を参照して本発明に係る管継手保護カバー、及びこの管継手保護カバーを用いた管継手管理システムの第1の実施形態について詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る管継手保護カバー10を用いて保護する管継手12、及びこの管継手12によって連結される配管について詳細に説明する。なお、本実施形態に係る管継手管理システムは、管継手保護カバー10及び図8に示されるリーダ/ライタ78(携帯型の情報端末装置)によって構成されている。
(管継手、配管)
図1には、管継手保護カバー10に覆われて保護された管継手12が破線にて示されている。この管継手12は、一方の配管P1と他方の配管P2とを連結する、ストレート型の継手である。本実施形態では、配管P1を塩ビ管、配管P2をポリブテン管に設定しているため、管継手12は異径管継手となっている。これは、塩ビ管及びポリブテン管は、呼び径が同じでも、外径及び内径が夫々異なるためである。また、配管P1及び配管P2は土中に埋設されるため、夫々可撓性を有する蛇腹状の配管保護カバー21、22によって覆われている。なお、本実施形態では、配管P1を塩ビ管、配管P2をポリブテン管としているが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、配管P1及び配管P2は、従来公知の材質のものを使用することができる。また、本実施形態では、管継手12を呼び径が同じ塩ビ管及びポリブテン管を連結する構成としたが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、同種、同呼び径の配管同士を連結する構成としてもよく、同種だが呼び径が異なる配管同士を連結する構成としてもよい。つまり、複数の配管を連結することができれば、従来公知の何れの継手を用いてもよい。
【0025】
(管継手保護カバー)
図1及び図2に示されるように、管継手保護カバー10は、3つの分割体を連結して構成(形成)されたカバー体30を備えている。このカバー体30は、内部に管継手12を収容できるように大きさが設定されている。なお、本実施形態では、カバー体30を構成する3つの分割体のうち、中央に位置する略円筒状の分割体を中央分割パーツ32、中央分割パーツ32の配管P1側に連結される略円筒状の分割体を第1分割パーツ34、中央分割パーツ32の配管P2側に連結される略円筒状の分割体を第2分割パーツ36としている。これらの分割パーツは、夫々雄ねじと雌ねじとの螺合によって連結されている。この雄ねじと雌ねじによる連結は、本実施形態では、図3に示されるように、中央分割パーツ32の軸方向の両端部に設けられた雄ねじ32Aに、第1分割パーツ34の軸方向の中央分割パーツ32側の端部に設けられた雌ねじ34A及び、第2分割パーツ36の軸方向の中央分割パーツ32側の端部に設けられた雌ねじ36Aが夫々螺合されることでなされている。なお、その他の実施形態では、中央分割パーツ32に雌ねじが形成され、第1分割パーツ34及び第2分割パーツ36に雄ねじが形成されて各分割パーツが連結される構成にしてもよく、中央分割パーツ32に雄ねじと雌ねじとが形成され、第1分割パーツ34及び第2分割パーツには中央分割パーツに形成された雄ねじ又は雌ねじに対応した雌ねじ又は雄ねじが形成されて各分割パーツが連結される構成にしてもよい。
【0026】
また、図3に示されるように、第1分割パーツ34の中央分割パーツ32側の端部には、嵌挿溝70が形成されており、この嵌挿溝70には止水手段を構成する環状のOリング72が嵌挿されている。このOリング72は、第1分割パーツ34が中央分割パーツ32に連結された状態(図3図示状態)で、中央分割パーツ32の第1分割パーツ34側の端部に密着する。これにより、第1分割パーツ34と中央分割パーツ32との連結部がシールされる。また同様に、第2分割パーツ36の中央分割パーツ32側の端部には、嵌挿溝74が形成されており、この嵌挿溝74には止水手段を構成する環状のOリング72が嵌挿されている。このOリング72は、第2分割パーツ36が中央分割パーツ32に連結された状態で、第2分割パーツ36の中央分割パーツ32側の端部に密着する。これにより、中央分割パーツ32と第2分割パーツ36との連結部がシールされる。なお、その他の実施形態では、各分割パーツの雄ねじ部又は雌ねじ部にゴム材がコーティングされること等によって、各分割パーツの連結部がシールされる構成にしてもよい。
【0027】
一方、図1、図2、図4及び図5に示されるように、第1分割パーツ34の雌ねじ34Aと軸方向反対側の端部は、配管P1を挿入可能な配管挿入部44とされている。この配管挿入部44の内周面には環状の嵌挿溝45が設けられ、この嵌挿溝45には、止水部材としての環状のOリング54が嵌挿されている。このOリング54の内径は、配管P1の外径よりも小さく設定されており、配管P1がOリング54の内側を挿通すると、Oリング54の内周面が配管P1の外周面に密着して、配管挿入部44と配管P1との間がシールされる。
【0028】
同様に、第2分割パーツ36の雌ねじ36Aと軸方向反対側の端部は、配管P2を挿入可能な配管挿入部46とされている。この配管挿入部46の内周面には環状の嵌挿溝47が設けられ、この嵌挿溝47には、止水部材としての環状のOリング56が嵌挿されている。このOリング56の内径は、配管P2の外径よりも小さく設定されており、配管P2がOリング56の内側を挿通すると、Oリング56の内周面が配管P2の外周面に密着して、配管挿入部46と配管P2との間がシールされる。
【0029】
また、図1、図2及び図4に示されるように、中央分割パーツ32には、軸方向と直交する方向に配管P2を挿入可能な筒状の配管挿入部42が形成されている。この配管挿入部42の内周面には環状の嵌挿溝43が設けられ、この嵌挿溝43には、止水部材としての環状のOリング52が嵌挿されている。このOリング52の内径は、配管P2の外径よりも小さく設定されており、配管P2がOリング52の内側を挿通すると、Oリング52の内周面が配管P2の外周面に密着して、配管挿入部46と配管P2との間がシールされる。なお、本実施形態では、ストレート型の管継手12を用いるため、中央分割パーツ32の配管挿入部42は、不要とされ、蓋体としてのキャップ50によって閉塞されている。このキャップ50は、弾性変形可能なゴムで形成され、配管挿入部42に挿入される部分の外周面が配管挿入部42の内周面に密着する大きさに設定されている。なお、キャップ50のその他の構成としては、配管挿入部42に挿入される部分にOリングを設け、Oリングの外周面と配管挿入部42の内周面とを密着させて配管挿入部42を閉塞する構成でもよく、配管挿入部42に挿入される部分に雄ねじ又は雌ねじを形成し、配管挿入部42の内周面に雌ねじ又は雄ねじを形成し、これらを螺合させることで配管挿入部42を閉塞する構成でもよい。また、キャップ50を円柱状体として、外周面をOリング52に密着させて配管挿入部42を閉塞させる構成としてもよい。
【0030】
また、各配管挿入部の外周面には、各配管挿入部の周方向に間隔を開けて係止部としての突起62,64,66が夫々設けられている。図2に示されるように、配管挿入部44に設けられた突起64は、配管P1の蛇腹状配管保護カバー21の内側の凹部に嵌め込める(引掛けられる)ようになっている。同様に、配管挿入部46に設けられた突起66は、配管P2の蛇腹状配管保護カバー22の内側の凹部に嵌め込める(引掛けられる)ようになっている。なお、本実施形態ではキャップ50によって閉塞される配管挿入部42にも突起62が設けられており、この突起62は、配管P2の蛇腹状配管保護カバー22の内側の凹部に嵌め込める(引掛けられる)ようになっている。
【0031】
一方、図1、図2、図4に示されるように、カバー体30の内部の上部には、情報送信センサ装置80(本実施形態ではICタグ)が設けられている。情報送信センサ装置80は、配管挿入部42の側方に配置されており、例えば接着剤、両面粘着テープ等により中央分割パーツ32の上部の内周面に固定されている。この情報送信センサ装置80は、リーダ/ライタ78(図8参照)とともにRFID(Radio Frequency Identification)システムを構成しており、図6に示されるように、通信用素子としてのICチップ82と、該ICチップ82が特定周波数の電波で無線通信を行うためのアンテナ84とを主要部として構成されている。ICチップ82の不揮発性メモリ(EEPROM)には、カバー体30の内部に収容される管継手12に関する各種の情報(埋設位置、埋設深さ、周辺配管情報、IDなど)が記憶される。
【0032】
リーダ/ライタ78は、アンテナ、各種回路、コントローラーなどを含んで構成されており、ICチップ82に記録されているデータの読み込み、ICチップ82へのデータの書き込みなどを非接触で行うことが可能とされている。本実施形態では、情報送信センサ装置80は、リーダ/ライタ78からの電波をエネルギー源として動作する構成(所謂パッシブタブ)とされており、リーダ/ライタ78側のアンテナから制御信号を含む電波が発信されると、情報送信センサ装置80側のアンテナ84が当該電波を受信して電磁誘導などにより起電力を発生させる。この起電力によりICチップ82が起動し、ICチップ82に記憶された情報が情報送信センサ装置80側のアンテナ84からリーダ/ライタ78に送信される。リーダ/ライタ78は、受信した情報を報知するための報知手段(本実施形態ではディスプレイ79)を備えており、受信した各種情報を当該ディスプレイ79に表示するようになっている。なお、その他の実施形態では、情報送信センサ装置として、電池を内蔵した構成のもの(所謂アクティブタグ)を採用することもできる。この場合、情報送信センサ装置が電池の電力により動作して自ら電波を発するため通信距離を長くとることができる。
【0033】
一方、図1、図2、図4に示されるように、カバー体30内部の下部には、状況検知センサ装置が設けられている。この状況検知センサ装置は、中央分割パーツ32の内周部において配管挿入部42に対向する位置に配置されており、例えば接着剤、両面粘着テープ等により中央分割パーツ32の下部の内周面に固定されている。この状況検知センサ装置は、上述したリーダ/ライタ78とともにRFID(Radio Frequency Identification)システムを構成しており、図7に示されるように、通信用素子としてのICチップ88と、ICチップ88が特定周波数の電波で無線通信を行うためのアンテナ90と、ICチップ88に接続された水分センサ92とを含んで構成されている。
【0034】
リーダ/ライタ78側のアンテナから制御信号を含む電波が発信されると、状況検知センサ装置86側のアンテナ90が当該電波を受信して電磁誘導などにより起電力を発生させる。この起電力によりICチップ88及び水分センサ92が起動し、水分センサ92がカバー体30内部の水分値を検知する。水分センサ92の検知信号はICチップ88に入力され、さらにアンテナ90を介してリーダ/ライタ78に送信される。これにより、リーダ/ライタ78のディスプレイ79にカバー体30内部の水分値が表示されるようになっている。なお、その他の実施形態では、状況検知センサ装置として、電池を内蔵した構成のもの(所謂アクティブタグ)を採用することもできる。この場合、状況検知センサ装置が電池の電力により動作して自ら電波を発するため通信距離を長くとることができる。また、その他の実施形態では、水分センサ92の代わりに、湿度センサ、又は温度センサ等を採用することもできる。この場合、カバー体30内部の湿度、温度などを検知することができる。
【0035】
(施工手順)
次に、管継手保護カバー10を用いて管継手12を覆って保護する際の施工手順について説明する。まず、カバー体30を各分割パーツに分割(分解)する。次に、土中に埋設されている配管P1を第1分割パーツ34の配管挿入部44に挿入する。これにより、Oリング54の内周面が配管P1の外周面に密着し、配管挿入部44と配管P1との間がシールされる。
【0036】
次に、配管P1を管継手12に接続する。そして、管継手12を内部に収容するように中央分割パーツ32の雄ねじ32Aを第1分割パーツ34の雌ねじ34Aに螺合させて、これらの分割パーツを連結する。これにより、中央分割パーツ32と第1分割パーツ34との連結部がOリング72によってシールされる。
【0037】
そして、土中に埋設されている、又は土中に埋設前の配管P2を第2分割パーツ36の配管挿入部46に挿入する。これにより、Oリング56の内周面が配管P2の外周面に密着し、配管挿入部46と配管P2との間がシールされる。
【0038】
次に、配管P2を管継手12に接続し、第2分割パーツ36の雌ねじ36Aを中央分割パーツ32の雄ねじ32Aに螺合させて、これらの分割パーツを連結する。これにより、中央分割パーツ32と第2分割パーツ36との連結部がOリング76によってシールされるとともに、管継手12がカバー体30の内部に収容されて保護される。なお、キャップ50は、カバー体30を組み立てる前、組み立て中、組み立て後の何れのタイミングで取り付けてもよいものとする。
【0039】
次に、配管P1、P2を覆う配管保護カバー21、22の内側に、カバー体30の配管挿入部44、46をそれぞれ挿入する。これにより、配管保護カバー21、22の内側の凹部に突起64、66が嵌め込まれ(引っ掛かり)、配管保護カバー21、22がカバー体30に連結される(図1及び図2図示状態)。
【0040】
この状態では、管継手12がカバー体30の内部に収容されて保護されるため、掘り返し時などの衝撃で管継手12が傷付くことが防止される。また、各配管挿入部がOリング52、54、56によってシールされるとともに、各分割パーツの連結部がOリング72、76によってシールされるため、カバー体30内部への液体(水、油など)の侵入が防止される。これにより、液体の浸入による管継手12の劣化を防止することができ、結果として管継手12からの漏水を防止することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、配管の管理者などがリーダ/ライタ78を地上から地面に接近させ、所定の周波数の電波を送信すると、カバー体30の内部に設けられた情報送信センサ装置80が予め記憶した各種の情報(管継手12の埋設位置など)をリーダ/ライタ78に送信する。これにより、リーダ/ライタ78のディスプレイ79に上記各種の情報が表示されるため、管継手12を掘り返す際の埋設位置情報などを事前に把握することができる。したがって、迅速かつ安全なメンテナンスが可能になる。しかも、情報送信センサ装置80は、カバー体30内部の上部に設けられているため、管継手12からの漏水などによりカバー体30内部の下部側に水が溜まった場合でも、情報送信センサ装置80が浸水することを防止できる。
【0042】
また、本実施形態では、配管の管理者などがリーダ/ライタ78を地上から地面に接近させ、所定の周波数の電波を送信すると、カバー体30の内部に設けられた状況検知センサ装置86が、カバー体30内部の水分値を検知し、当該検知結果をリーダ/ライタ78に送信する。これにより、リーダ/ライタ78のディスプレイ79にカバー体30の内部の水分値が表示されるため、土を掘り返すことなく、管継手12からの漏水の有無やカバー体30内部への水の浸入などを確認することができる。したがって、効率的にメンテナンスを行うことが可能になる。しかも、状況検知センサ装置86は、カバー体30内部の下部、すなわちカバー体30の内周面(球面)を伝って水が集まる位置に設けられているため、状況検知センサ装置86によってカバー体30内部の水分を迅速に検知することができる。
【0043】
またさらに、本実施形態では、上述の如く情報送信センサ装置80及び状況検知センサ装置86がカバー体30の内部に設けられているため、これらのセンサ装置をカバー体30によって保護することができる。したがって、土中に含まれる水分によって各センサ装置が誤作動したり、土中における荷重の入力によって各センサ装置が破損したりすることを防止できる。
【0044】
また、本実施形態では、カバー体30を中央分割パーツ32と第1分割パーツ34と第2分割パーツ36とに分割することができる。このため、これらの分割体を互いに連結させてカバー体30を組み立てる際に、カバー体30の内部に管継手12を収容させることができる。したがって、サイズが大きい管継手であってもカバー体30の内部に容易に収容させることができ、カバー体30の組立作業や配管作業などを容易なものにすることができる。また、各分割パーツの連結が雄ねじと雌ねじの螺合によってなされるため、これによっても、カバー体30の組立作業などを容易なものにすることができる。
【0045】
なお、上記第1実施形態では、情報送信センサ装置80及び状況検知センサ装置86が送信する電波をリーダ/ライタ78(携帯型の情報端末装置)によって現場で受信する場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、情報送信センサ装置80及び状況検知センサ86が送信する電波を、配管の修理サービスセンター等で受信するようにすれば、配管の管理者等が修理サービスセンター等に居ながらにして漏水の有無等を迅速かつ的確に検知することができる。これにより、漏水が起きている現場にサービスマンを迅速に派遣することが可能になり、漏水箇所の早期修理が実現される。この点は、以下に説明する本発明の第2の実施形態においても同様である。
<第2の実施形態>
次に、図8及び図9に基づいて、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0046】
この実施形態は、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態に係る管継手保護カバー94では、カバー体96を構成する中央分割パーツ32の軸方向中間部に、中央蛇腹部32Bが設けられている。この中央蛇腹部32Bは、中央分割パーツ32の表裏両面に蛇腹状の凸凹が設けられることで形成されたものであり、中央分割パーツ32の軸方向中間部に可撓性をもたせている。また、カバー体96の第1分割パーツ34の軸方向中間部には、第1蛇腹部34Bが設けられている。この第1蛇腹部34Bは、第1分割パーツ34の表裏両面に蛇腹状の凸凹が設けられることで形成されたものであり、第1分割パーツ34の軸方向中間部に可撓性をもたせている。同様に、第2分割パーツ36の軸方向中間部には、第2蛇腹部36Bが設けられている。この第2蛇腹部36Bは、第2分割パーツ36の表裏両面に蛇腹状の凸凹が設けられることで形成されたものであり、第2分割パーツ36の軸方向中間部に可撓性をもたせている。
【0047】
また、この実施形態では、カバー体96の内部にT字型の管継手98(配管P1を1本、配管P2を2本接続可能な継手)が収容されており、配管挿入部42に挿入された配管P2が管継手98に接続されている。配管挿入部42に挿入された配管P2の外周面にはOリング52が密着し、配管挿入部42と配管P2との間がシールされている。また、配管挿入部42の突起62が配管保護カバー22の内側の凹部に嵌め込まれることで、配管保護カバー22が中央分割パーツ32に連結されている。なお、上記第1実施形態に係る管継手保護カバー10においても、この実施形態と同様にT字形の管継手を保護することができる。また、この実施形態では、他の構成については前記第1実施形態と同様の構成とされている。
【0048】
この実施形態においても、土中に埋設された管継手保護カバー94の情報送信センサ装置80及び状況検知センサ装置86が送信する電波を、地上のリーダ/ライタ78で受信することにより、管継手98の埋設位置や管継手98からの漏水の有無等を確認することができる。また、各センサ装置がカバー体96の内部に設けられているため、各センサ装置を土中における荷重の入力などから保護することができる。
【0049】
さらに、この実施形態では、土中に埋設されたカバー体96に対して地上では有り得ないような荷重が入力された場合や、管継手98への配管P1、P2の接続時などにカバー体96に過大な曲げ荷重が入力された場合には、カバー体96(各分割パーツ)に設けられた中央蛇腹部32B、第1蛇腹部34B、及び第2蛇腹部36Bが変形してカバー体96を撓らせる(カバー体96をフレキシブルに変形させる)。これにより、カバー体96に過度の負荷がかかることが防止され、カバー体96の破損が防止される。また、カバー体96の変形によって管継手98や配管P1、P2への負荷も低減されるため、管継手98及び配管P1、P2の破損も防止される。
【0050】
しかも、本実施形態では、蛇腹状に形成された中央蛇腹部32B、第1蛇腹部34B、及び第2蛇腹部36Bによってカバー体96を撓らせる構成であるため、カバー体96の肉厚を充分に確保した場合でもカバー体96の撓らせることができる。したがって、掘り返し時などの衝撃に対するカバー体96の剛性を確保しつつ、カバー体96のフレキシブル性を確保することができ、相反する性能を両立させることができる。
【0051】
なお、上記各実施形態において、L字型の管継手(配管P1を1本、配管P2を1本接続可能な継手)を管継手保護カバー10、94で保護する場合には、配管挿入部46をキャップ50で閉塞し、配管P2を配管挿入部42に挿入してL字型の管継手に接続すればよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、各分割パーツが雄ねじと雌ねじとの螺合によって連結される構成にしたが、本発明はこれに限らず、各分割パーツの連結構造は適宜変更することができる。例えば、図11に示されるように嵌め込み式の連結構造にしてもよい。図11に示される構成では、中央分割パーツ32の第1分割パーツ34側の端部には、上記各実施形態に係る雄ねじ32Aの代わりに、中央分割パーツ32の径方向外側へ突出する凸部32Cが設けられている。また、第1分割パーツ34の中央分割パーツ32側の端部には、上記各実施形態に係る雌ねじ34Aの代わりに上記凸部32Cが嵌合する凹部34Cが設けられており、凸部32Cと凹部34Cとの嵌合によって中央分割パーツ32と第1分割パーツ34とが連結される構成になっている。この構成の場合でも、Oリング72によって中央分割パーツ32と第1分割パーツ34との連結部がシールされるため、当該連結部を介したカバー体30内への液体の侵入を防止することができる。なお図示はしないが、中央分割パーツ32と第2分割パーツ36との連結部に対しても同様の連結構造を採用することができる。
【0053】
また、上記各実施形態では、情報送信センサ装置80がICチップ82を含んで構成された場合について説明したが、本発明はこれに限らず、情報送信センサ装置は、予め記憶した情報をカバー体の外部へ無線送信可能なものであればよく、その構成は適宜変更することができる。
【0054】
また、上記各実施形態では、状況検知センサ装置86がICチップ88を含んで構成された場合について説明したが、本発明はこれに限らず、状況検知センサはカバー体内部の状況を検知するとともに、当該検知結果をカバー体の外部へ送信可能なものであればよく、その構成は適宜変更することができる。
【0055】
また、上記各実施形態では、3つの分割パーツを連結してカバー体30を構成したが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、分割パーツの数は適宜変更することができる。例えば、中央分割パーツに対応する分割パーツが複数設けられた構成にすれば、複数に分岐する管継手(例えば、配管ヘッダーなど)にも対応させることができる。
【0056】
さらに、上記各実施形態では、管継手12、98とカバー体30、96との間が中空とされたが、本発明はこの構成に限定される必要はなく、管継手12、98とカバー体30、96との間に衝撃を吸収する衝撃吸収材(例えば、ゴム片、スポンジなどのクッション材)が配置(収容)されてもよいものとする。この場合には、掘り返し時の衝撃がカバー体30、96に加えられても、衝撃吸収材が衝撃を吸収するため、管継手12、98やカバー体30、96内の配管P1及びP2が傷付くことを防止できる。
【0057】
また、上記各実施形態において、カバー体30、96を透明又は半透明の樹脂材料にて構成してもよい。なお、このときのカバー体30、96の透明度(光透過度)は、カバー体30、96を透して管継手12、98や、配管P1、P2が視認できるレベルであることが望ましい。カバー体30、96に透明又は半透明の樹脂材料を用いた場合には、管継手12、98の状態や、管継手12、98と配管P1及び配管P2との接続状態を視認することができるため、メンテナンス性が向上する。
【0058】
以上、実施形態を挙げて本発明について説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10 管継手保護カバー
12 管継手
30 カバー体
32 中央分割パーツ(分割体)
34 第1分割パーツ(分割体)
36 第2分割パーツ(分割体)
42、44、46 配管挿入部
52、54、56 Oリング(止水部材)
72、76 Oリング(止水手段)
78 情報端末装置
80 情報送信センサ装置
86 状況検知センサ装置
92 水分センサ
94 管継手保護カバー
96 カバー体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配管を連結するための管継手を内部に収容可能なカバー体と、
前記カバー体に設けられ、前記配管を挿入可能な配管挿入部と、
前記配管挿入部に設けられ、挿入された前記配管の外周面に密着して前記配管と前記配管挿入部との間をシールする止水部材と、
前記カバー体内部の上部側に設けられ、予め記憶した情報を前記カバー体外部へ無線送信可能な情報送信センサ装置と、
前記カバー体内部の下部側に設けられ、前記カバー体内部の状況を検知すると共に、当該検知結果を前記カバー体外部へ無線送信可能な状況検知センサ装置と、
を備えた管継手保護カバー。
【請求項2】
前記状況検知センサ装置は、前記カバー体内部の水分を検知する水分センサ、前記カバー体内部の湿度を検知する湿度センサ、及び前記カバー体内部の温度を検知する温度センサのうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の管継手保護カバー。
【請求項3】
前記カバー体の表裏両面には、蛇腹状の凸凹が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管継手保護カバー。
【請求項4】
前記カバー体は、分割可能に連結される複数の分割体によって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の管継手保護カバー。
【請求項5】
前記複数の分割体の連結部には、当該連結部をシールする止水手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の管継手保護カバー。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の管継手保護カバーと、
当該管継手保護カバーに設けられた前記情報送信センサ装置及び前記状況検知センサ装置との間で無線通信可能な情報端末装置と、
を備えた管継手管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−203554(P2010−203554A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51232(P2009−51232)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】