説明

簡単に取り外しできる耐力壁。

【課題】 従来の耐震補強工事では一部の壁を解体したり、引き戸をなくして耐力壁を新設したりと、大きな工事になり、その結果工事費も多額になるうえ工事期間も永く、工事中の生活の不便、使い勝手が悪くなるなどで、なかなか耐震補強工事に踏み切れず普及が進まなかった。
【解決手段】
本発明は作業場で耐力壁を製作して、既存の引き戸と交換すれば工事が早く、工事費用も安くなると考えて、外した引き戸にあわせて分厚い合板を加工し、鴨居溝と敷居溝を利用して嵌め込み、耐力壁と鴨居溝の間にクサビを打ち込んで固定するようにした。
このようにすれば二間続きで使いたい場合にはクサビを抜けば簡単に耐力壁を取り外すことが出来るので耐震補強工事に踏み切りやすく普及率の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木造の在来軸組み工法で建築された家屋の耐震補強工事に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の耐震補強工事では一部の壁を解体したり、引き戸をなくして耐力壁を新設したりと、大きな工事になり、その結果工事費も多額になるうえ工事期間も永く、工事中の生活の不便、使い勝手が悪くなるなどで、なかなか耐震補強工事に踏み切れず普及が進まなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−228548号公報
【特許文献2】特開2008−95430号公報
【特許文献3】特開2009−30382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
在来軸組み工法で建築された木造家屋に対する耐震補強工事の主流となっているのは、耐力壁の比率を上げることと、耐力壁をバランスよく配置することとなっている。
そのために既存の弱い壁を解体して筋交いを入れたり、合板で補強したり、引き戸の一部を犠牲にして耐力壁を増やしたりしている。
【0005】
けれども古い木造家屋(特に1981年の建築基準法改正前)の木造家屋の耐震補強工事の普及を進めるために、政府や各自治体が補助金制度などで後押ししていますが、このような家屋の多くは1階部分に引き戸が多用され、壁の内部にも筋交いを入れてないものも多く耐力壁のバランスもわるい
【0006】
上記のような家屋の耐震補強工事を施すには、既存の壁を解体して筋交いを入れるか、構造用合板で下地を造り仕上げに塗り壁やクロス等を施す必要があり、大工事になる場合が多い。
【0007】
それでも耐力壁が足りなくて、4枚引き戸の両側を犠牲にして耐力壁を新設したりして耐力壁を増やしたりバランスの改善を図ったりしている。
【0008】
このように耐震補強工事には多額の自己負担金が必要なうえ、工事の長期化による生活の不便、引き戸の減数によっての使い勝手の悪さ、特に座敷を2間続きで使えなくことへのこだわり、等を考えればいつ発生するかわからない地震に対してそこまでして耐震補強工事をやりたくないと考える人が多く、大きな地震での家屋の倒壊や大規模半壊などで多くの人的被害や物的被害が出てしまっています。
【0009】
被害が出てしまってからでは家屋の解体や修復に多額の工事費が必要となり、個人あるいは自治体や政府の大きな負担となっています。
【0010】
耐震補強工事の普及を進めるために求められているのは、使い勝手が悪くならず、生活の不便も少なく、工事期間が短い、ひいては工事費の安い耐震補強工事方法です。
【課題を解決するための手段】
【0011】
既存の4枚あるいは2枚の引き戸の一部を取り外して、引き戸の大きさにあわせて厚さ24ミリ〜30ミリの合板を切断し、上部を鴨居溝に、下部を敷居溝に嵌るように戸首状に加工して、上部両端をクサビを打ち込めるよう斜めに切断する。
【0012】
そのうえで合板の一部を人が出入りできる大きさに開口して、地震のときの脱出口となるようにしたものも考えられる。
開口部の形状は四角形や丸型や楕円形が考えられるが、楕円形のほうが耐震壁としての耐震力の低下が少ない。大きさは楕円形の長手方向で人の肩幅が入るような大きさにする。
【0013】
上記の形状のほかに耐震力を損なわない程度に多数の小窓を開けて明り取りとしたものも考えられる。
【0014】
耐力壁の表面に襖紙やクロス、塗装等で仕上げれば周囲との違和感もなくなる。
【0015】
このように加工した取り外しできる耐力壁を鴨居溝と敷居溝に嵌め込んで、上部両側の斜めの切断部にクサビを打ち込んで固定する。
【発明の効果】
【0016】
このように耐力壁を接置すれば、いざ地震のときには家屋が歪もうとするときの斜め上からの力を耐力壁が受け止めて家屋の倒壊や大規模な半壊を防ぐことが出来るので人的被害も小さく後の修復が簡単になり工事費も安くて済む。
【0017】
またこのように設置した耐震壁は2間続きで使用するようなときはクサビを取り外せば簡単に取り外すことが出来るので工事に対して迷いがなく耐震補強工事の普及を進めやすい。
【0018】
なお2枚戸あるいは4枚戸の場合は、出入りする場所の耐力壁はクサビを打ち込まないで引き戸としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】取り外しできる耐力壁を設置した状態の正面図
【図2】切断線A―Bで切断した耐力壁の設置断面図。
【図3】取り外した耐力壁の斜視図、
【符号の説明】
【0020】
1 合板を加工した耐力壁
2 打ち込んだクサビ
3 耐力壁上部のクサビを打ち込むための切断面
4 鴨居
5 地震のときに脱出口となる開口部
6 敷居
7 戸首状に加工した耐力壁の上部
8 戸首状に加工した耐力壁の下部
9 鴨居溝
10敷居溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分厚い合板の上部と下部を、引き戸の戸首状に形成し、上部両端にクサビを打ち込めるような斜めの切断部を設けた、耐震補強工事用の簡単に取り外しできる耐力壁。
【請求項2】
請求項1の耐力壁の一部に、人間が出いり出来る大きさの開口部を設けて,地震のときの脱出口とした、簡単に取り外しできる耐力壁。
【請求項3】
請求項1や、請求項2の耐力壁を、工事対象部分の引き戸を取り外した、鴨居溝と敷居溝へ嵌め込み、上部の斜めの切断部へクサビを打ち込んで固定することを特徴とする、簡単に取り外しできる耐力壁の設置工事方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−184926(P2011−184926A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50489(P2010−50489)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(303010337)
【Fターム(参考)】