説明

籾摺精米機

【課題】籾摺精米機に粗選別部を組み込んだ場合でも機高を低くして、籾の張り込みを容易にするとともに、精品を袋受する精品排出口を低くして使い勝手のよい籾摺精米機を提供する。
【解決手段】略直方体の機枠2内部に夾雑物除去部5を中間としてその上方に籾ホッパ4及び風選用の排風機3を、下方に脱ぷ部6をそれぞれ配設する一方、機枠2の内部であって排風機3の近傍に風選部8を並設するとともに、該風選部8の下方に精米部9を配置し、さらに、脱ぷ部6は、一対の脱ぷロール6a,6bを上下に架設して摺米を水平方向に投げ出す構成となし、かつ、該脱ぷ部6の摺米排出側には、摺米を風選部へ揚穀するための角度変更板31及び上方搬送管10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥処理後の籾を脱ぷする脱ぷ機能と、脱ぷ処理後の玄米を精米する精米機能とを併せ持つ籾摺精米機に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥処理後の籾を脱ぷする脱ぷ機能と、脱ぷ処理後の玄米を精米する精米機能とを併せ持つ籾摺精米機として、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。この従来の籾摺精米機を図6及び図7を参照して説明すれば、縦長の機枠104の上部にロール式脱ぷ装置105が設けられ、その下部に風選室101を設け、この風選室の一端を開口部107に連通し、下側に摺米を選別通過しうる選別網103を傾斜させて設け、この選別網103の下側には精米装置用ホッパ108を精米装置102の供給口に臨ませた構成となっており、さらに、前記脱ぷ装置105の上方に、籾ホッパ113が載置されている。
【0003】
上記構成により、籾ホッパ113に供給された籾は、脱ぷ装置105により脱ぷされ、脱ぷ処理後の摺米は、風選装置101において開口107から吸引される選別風によって風選され、籾殻や塵埃などが機外に排出される一方、二番物は二番受樋110から取り出され、玄米は下方の選別網103を漏下して精米ホッパ108に至り、精米ホッパ108からは玄米が精米機内部に供給され、除糠精白筒112と摩擦式の精米ロール111との間に形成される精米室において精米が行われることになる。
【0004】
しかし、近年の耕地の区画整備事業や、台風や大雨災害などによる水路の氾濫により、圃場内には、大小の石や大小の木片などが散乱している状況にある。また、近年の自走しながら稲を刈取り、籾の脱穀処理及び藁(わら)の裁断処理を行う自脱型コンバインにあっては、畦際の穀稈をスムーズに刈り取る機構や、圃場四隅の手刈り面積を減らす機構等も備えられ、収穫能力が格段に向上している。このため、自脱型コンバインによって収穫された穀物中に、粒径が6mm以上の小石や、長さ30mm以上のわら屑を取り込んでしまう可能性が高い。したがって、農家用の小型の穀類調製機械においてもあらかじめ原料籾から異物を除去しておくことが重要になる。
【0005】
そこで、籾摺精米機に粗選別部を組み込むことが考えられるが、脱ぷ装置105の前段に粗選別部を配設しなければ、粒径が6mm以上の小石や、長さ30mm以上のわら屑を脱ぷ装置105内に取り込んでしまい、急激な脱ぷ率低下を引き起こしたり、脱ぷロールが詰まったり、脱ぷロール間隙調節装置を損傷するなど大きな損害を与える原因となる。また、脱ぷ装置105を通過した小石などが精米機内部に混入して除糠精白筒112の網を破損させる原因にもなる。そして、上記従来の籾摺精米機はその前段に粗選別部を設置しようとすれば、籾ホッパ113と脱ぷ装置105との間に配設するほかなく、籾摺精米機の設置面からの高さが約2m以上となる。これにより、作業者は、踏み台や脚立を利用して籾袋を籾ホッパ113まで持ち上げ、籾を籾ホッパ113に投入する、といった作業を繰り返すため、張り込み作業が重労働化するという問題が生じる。
【0006】
また、籾ホッパ113近傍に籾袋の載置台を設けて、作業者がいったん籾袋を載置台に載せた後、袋の排出口を開けて籾を籾ホッパ113に供給することも考えられるが、籾袋を載置台まで持ち上げる作業が負担となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭53−163279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点にかんがみ、籾摺精米機に粗選別部を組み込んだ場合でも機高を低くして、籾の張り込みを容易にするとともに、精品を袋受する精品排出口を低くして作業性を向上させる籾摺精米機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、原料籾を受ける籾ホッパと、原料籾中に混入する籾よりも大きい夾雑物を除去する夾雑物除去部と、籾を脱ぷする脱ぷ部と、該脱ぷ部で脱ぷされた摺米を風選する風選部と、該風選部で風選された玄米を受けて精米する精米部とを備えた籾摺精米機において、略直方体の機枠内部に前記夾雑物除去部を中間としてその上方に前記籾ホッパ及び風選用の排風機を、下方に前記脱ぷ部をそれぞれ配設する一方、前記機枠の内部であって前記排風機の近傍に前記風選部を並設するとともに、該風選部の下方に前記精米部を配置し、さらに、前記脱ぷ部は、一対の脱ぷロールを上下に架設して摺米を水平方向に投げ出す構成となし、かつ、該脱ぷ部の摺米排出側には、摺米を風選部へ揚穀するための角度変更板及び上方搬送管を設ける、という技術的手段を講じた。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記夾雑物除去部と前記脱ぷ部との間に、夾雑物除去部から落下した籾を受ける籾受樋、該籾受樋に連絡した流下シュート、及び流下シュートからの籾を水平方向に移送させて脱ぷ部に供給する湾曲状流下シュートを設ける、という技術的手段を講じた。
【0011】
さらに、請求項3記載の発明は、前記脱ぷ部として、固定軸が機枠に軸支され、該固定軸回りに回転可能に支持する下側の脱ぷロールを固定ロールとする一方、前記固定軸と上下方向に平行移動可能な可動軸が機枠に軸支され、該可動軸回りに回転可能に支持する上側の脱ぷロールを移動ロールとなし、前記下側の脱ぷロールと前記上側の脱ぷロールとの間隙の距離を調節可能な構成とすることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項4記載の発明は、前記角度変更板は断面く字状に屈曲した形状となすとともに、前記上方搬送管は垂直に立設することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、籾ホッパを漏斗状に形成するとともに、前記機枠の前面壁から前方へ突設された形状とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、略直方体の機枠内部に前記夾雑物除去部を中間としてその上方に前記籾ホッパ及び風選用の排風機を、下方に前記脱ぷ部をそれぞれ配設する一方、前記機枠の内部であって前記排風機の近傍に前記風選部を並設するとともに、該風選部の下方に前記精米部を配置し、さらに、前記脱ぷ部は、一対の脱ぷロールを上下に架設して摺米を水平方向に投げ出す構成となし、かつ、該脱ぷ部の摺米排出側には、摺米を風選部へ揚穀するための角度変更板及び上方搬送管を設けたので、各部を略直方体の機枠内に収容されるように立体的に配置することが可能であり、また、スロワなどの揚穀装置を不要として装置全体をコンパクトな箱型形状とし、設備面積の縮小、原料籾の張込み位置の低位置化、及び精品を袋受する精品排出口の低位置化を実現し、作業性の改善された籾摺精米機を提供することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、前記夾雑物除去部と前記脱ぷ部との間に、夾雑物除去部から落下した籾を受ける籾受樋、該籾受樋に連絡した流下シュート、及び流下シュートからの籾を水平方向に移送させて脱ぷ部に供給する湾曲状流下シュートを設けたものであるから、籾受樋、流下シュート及び湾曲状流下シュートを併せた高さが約0.4mとなり、夾雑物除去部から脱ぷ部までの高さを可及的に低くする一方、湾曲状流下シュートにより籾を垂直方向から水平方向に移送させ、一定の投げ出し速度で一対の脱ぷロールに供給し、籾を停滞させることなく薄い層で帯状に脱ぷ部に供給し、脱ぷ処理能力も低下させることがない。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、前記脱ぷ部を、固定軸が機枠に軸支され、該固定軸回りに回転可能に支持する下側の脱ぷロールを固定ロールとする一方、前記固定軸と上下方向に平行移動可能な可動軸が機枠に軸支され、該可動軸回りに回転可能に支持する上側の脱ぷロールを移動ロールとなし、前記下側の脱ぷロールと前記上側の脱ぷロールとの間隙の距離を調節可能な構成としてあるから、前記湾曲状流下シュートによる籾の水平方向への投げ出し位置に、下側の脱ぷロールが固定ロールとして位置合わせされることになり、籾の水平方向への投げ出し位置を上下方向に変動させることなく、脱ぷロールの間隙の距離を調節することが可能となる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、前記角度変更板を断面く字状に屈曲した形状となすとともに、前記上方搬送管を垂直に立設してあるから、脱ぷロールから摺米が水平方向に投げ出され、断面く字状に屈曲した角度変更板に衝突し、その速度を利用して上方搬送管により摺米が垂直方向に揚穀することができる。このとき、脱ぷロールから摺米が水平方向に投げ出される初速度は、摩擦損失などを考慮しても7〜9m/s程度を維持できるものであり、長さ1m程度の上方搬送管に対して十分な揚穀能力を備えるものとなる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、籾ホッパを漏斗状に形成するとともに、前記機枠の前面壁から前方へ突設された形状としてあるから、機枠上部に籾ホッパを配置するよりも張込み位置を低位置化することができ、作業者の張込み作業の労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る籾摺精米機の正面側を右斜め上方から見た概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る籾摺精米機の背面側を右斜め上方から見た概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る籾摺精米機の縦断面図である。
【図4】夾雑物除去部の概略斜視図である。
【図5】脱ぷ部の概略斜視図である。
【図6】従来の籾摺精米機の概略側断面図である。
【図7】従来の籾摺精米機の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る籾摺精米機の正面側を右斜め上方から見た概略斜視図であり、図2は本発明の実施形態に係る籾摺精米機の背面側を右斜め上方から見た縦断面図であり、図3は概略縦断面図である。
【0021】
<概要>
図1乃至図3において、本発明の実施の形態に係る籾摺精米機1は、略直方体状の機枠2を形成する前面壁2a,後面壁2b,左側壁2c、右側壁2d及び上面壁2eにより覆われている。この機枠2は、幅が500mm(前面壁2a及び後面壁2bの幅方向長さ)、奥行948mm(右側壁2c及び左側壁2dの幅方向長さ)、高さ1571mmに形成されている。そして、機枠2内部の前面壁2a寄りに夾雑物除去部5を中間としてその上方に籾ホッパ4及び吸引排風機3を、下方に脱ぷ部6をそれぞれ立体的に配設する(図3参照)。一方、前記機枠2内部の前記吸引排風機3の近傍(後面壁2b寄りの上部)に一時貯留タンク7及び風選室8を並設するとともに、該風選室8の下方に精米部9をそれぞれ立体的に配設する。そして、機枠2内部中央には、前記脱ぷ部6から一時貯留タンク7に向けて摺米を揚穀するための上方搬送管10が立設される。前記原料籾を張り込むための籾ホッパ4は、漏斗状に形成されるとともに、前面壁2aから前方へ突設された形状である。これにより、機枠2上面壁2eと同じ高さに籾ホッパを配置して、従来よりも張込み位置を低位置化することができ、作業者の張込み作業の労力を軽減することができる。そして、籾ホッパ4の開口部4aには、径が100mm以上の粗大異物の流入を阻止するための粗選別格子11がフック12により吊り下げ支持され、原料籾に粗大異物が混入していた場合に異物の流入が阻止される。
【0022】
<夾雑物除去部の構成>
次に、籾ホッパ4下方に配設した夾雑物除去部5について詳述する。図3及び図4に示すように夾雑物除去部5は、長孔13が多数穿設された底部14aを有する選別網板14を、ある支点を中心に円弧を描くように揺れ動かすことにより、籾を長孔13から落下させる一方、わら屑や小石など夾雑物は選別網板14上を滑流させて分離を行うものである。符号15は除去された夾雑物を機外に排出するために前記右側壁2dに開口した開口部であり、符号16は該開口部15に設けた夾雑物排出樋である。
【0023】
前記選別網板14は、底部14aの2つの側辺縁に側壁14b,14cが立設されるとともに、底部14aの後辺縁に後壁14dが立設される。該側壁14b,14c及び後壁14dには、選別網板14を機枠2に吊下支持するための支持杆17a,17b,18が固着され、さらに、前記選別網板14を揺動させるための揺動機構19が設けられている。
【0024】
底部14aに設けられる長孔13は、一例として、短径が6mm、長径が29.5mmのものが挙げられる。選別網板14は幅約350mm、長さ約300mmの矩形状であり、水平方向に対して5°傾斜して機枠2に吊下支持される。すなわち、側壁14b,14cはその傾斜下方側に一対の支持杆17a,17bをそれぞれ固着して取付部材20a,20bを介して機枠2の前面壁2a,後面壁2bにそれぞれ吊下支持する一方、傾斜上方側の後壁14dはその幅方向中央の支持杆18を介して支持部材21に支持し、前記選別網板14を3つの支持杆17a,17b,18により3点支持させる構成とするとよい。そして、前記支持杆17a,17b,18は、選別網板14が揺動可能となるよう、弾性体を用いるのがよく、例えば、硬質ウレタンゴムや板ばねなどを採用することができる。前記支持部材21は、籾ホッパ4に接続されており、後壁14dが実質的に機枠2に吊下支持されることになる。なお、前記支持杆17a,17bの長さを約100mmとし、前記支持杆15の長さを約20mmとして、長さを異ならせることで前記選別網板14を水平方向に対し5°傾斜して吊下支持させることができる。
【0025】
<揺動機構の構成>
選別網板14を揺動させる揺動機構19は、前記機枠2前面壁2a及び後面壁2bに設けた軸受22a,22b間に、前記選別網板14の後壁14dと平行となるように回転自在に横架した回転軸23と、該回転軸23に取り付けた偏心輪24と、この偏心輪24に取り付けた偏心ブラケット25と、該偏心ブラケット25と前記選別網板14の後壁14dとの間に揺動可能に接続した連結杆26とによって構成される。前記回転軸23端部には揺動プーリ27が軸着され(図2参照)、後述の駆動モータの回転力がベルトにより伝達されて回転軸23が回転する。これにより、回転軸23の回転に伴って偏心輪24が回転され、図3の矢印の範囲で揺動されることになる。すなわち、偏心輪24が回転されると偏心ブラケット25を介して連結杆26が往復運動し、選別網板14の後壁14dに設けた支持杆18(図4参照)が回動の支点となり、選別網板14の傾斜下方側が前記支点を中心に円弧を描くように振れて揺動されることになる。
【0026】
<脱ぷ部の構成>
次に、夾雑物除去部5下方に配設した脱ぷ部6について詳述する。前記夾雑物除去部7下方には(図3参照)、夾雑物除去部5から落下した籾を受ける籾受樋28、該籾受樋28に連絡した流下シュート29、及び流下シュート29からの籾を水平方向に移送させ、かつ、脱ぷ部に一定の投げ出し速度で供給する湾曲状流下シュート30を介して脱ぷ部6が配置される。脱ぷ部6は一対の脱ぷロール6a,6bが上下に架設されており、摺米が水平方向に投げ出される構成である。そして、該脱ぷ部6の摺米排出側近傍には、脱ぷ速度を利用して摺米を垂直方向へ揚穀するために断面く字状に屈曲した角度変更板31と、前述の上方搬送管10とが設けられる。前記角度変更板31と上方搬送管10との間には、揚穀しきれなかった摺米を回収するための所定幅の隙間Sが設けられ、さらに、角度変更板31下方にはこの揚穀しきれなかった摺米を受ける流穀板32と、流穀板32から受けた摺米を機外に排出する排出口33及び残留排出樋34が設置されている。
【0027】
前記脱ぷ部6は、固定軸35が機枠2に軸支され、該固定軸35回りに回転可能に支持する下側の脱ぷロール6bを固定ロールとする一方、前記固定軸35と上下方向に平行移動可能な可動軸36が機枠2に軸支され、該可動軸36回りに回転可能に支持する上側の脱ぷロール6aを移動ロールとなし、脱ぷロール6a及び脱ぷロール6bの間隙の距離を調節可能な構成となっている。図5は一対の脱ぷロール6a,6bが上下に架設された概略斜視図であるが、脱ぷロール6a及び脱ぷロール6bの間隙の距離を調節するロール間隙調節装置37が設けられる。該ロール間隙調節装置37は、例えば、移動ロールとなる脱ぷロール6aの上下方向への移動(開閉)の支点となる可動支点軸38から軸受39を隔てた対向側に配置したネジ部材40に、上端にネジ部を刻設した上下方向のネジ棒(図示せず)を螺合し、ネジ棒を回転して長短調節することにより、固定ロール側の脱ぷロール6bに対して移動ロール側の脱ぷロール6aが近づいたり、遠ざかったりしてロール間隙が調節されるものである。また、図1に図示するハンドル41の回転操作によりロール間隙調節装置37のネジ棒が長短調節可能な構成にすれば、機枠2の外部からロール間隙調節が可能となって便利である。
【0028】
前記脱ぷロール6a,6bは、機枠2外に設けられた駆動源(モータ)42(図2参照)の駆動力が駆動源42と精米駆動プーリ43との間で掛け回された駆動ベルト44、精米駆動プーリ43と中継プーリ45との間で掛け回された中継ベルト46、及び中継プーリ45と脱ぷロール6a用プーリ47と脱ぷロール6b用プーリ48との間で掛け回された駆動ベルト49を介して伝達されることにより、互いに逆方向に異なる周速度で回転されることになる。すなわち、固定ロール側の脱ぷロール6bはプーリ47の径が小さく周速度が大きくなり、移動ロール側の脱ぷロール6aはプーリ48の径が大きく周速度が小さくなるのである。
【0029】
<一時貯留タンク及び風選室の構成>
図3に示すように、略直方体の機枠2に対して脱ぷ部6は機枠2下部に配置されるが、該脱ぷ部6から機枠2上部に向けて摺米を揚穀するための上方搬送管10が機枠2中央に配置される。機枠2内部の左側壁2d寄り上方には(図3参照)、摺米を一時貯留する一時貯留タンク7が配置され、揚穀された摺米が上方搬送管10上端から矢印A方向に投げ出されて一時貯留タンク7に貯留される構成となっている。一時貯留タンク7内には、第1棚板50,第2棚板51が斜設され、該棚板50,51下方に風選室8が設けられている。該風選室8には、風路の傾斜上方側に吸引排風機3の吸引口3aが接続される一方、該吸引排塵埃ファン3と対向する側の左側壁2cには外気取入口52が設けられる。
【0030】
そして、風選室8には、外気取入口52から吸引排風機3側に向けて順に玄米を落下選別するための玄米受樋53と、粃(しいな)や未熟粒などの二番物を落下選別するための二番物受樋54と、該二番物受樋54への排出量を調整する二番物調節板55とが設けられている。符号56は二番物受樋54に連通する二番物排出樋であり、符号3aは吸引排塵埃ファン3の吸引口であり、符号3bは排風口を任意の角度に変更可能な排風管である。
【0031】
<精米部の構成>
次に、風選室8下方に配設した精米部9について詳述する。精米部9は回転軸に軸装された精白転子57が横軸回りに回転する横型精米機により構成され、該精白転子57の外周部に除糠精白筒58が設けられる。該除糠精白筒58の一端側に玄米供給筒63が連絡されるとともに、除糠精白筒58の他端側に精白米の排出口が設けられ、さらに、該排出口を塞いで搗精度を調節する抵抗蓋59が設けられる。前記精白米の排出口には精米排出樋60が連設されるとともに、前記除糠精白筒58下方には糠排出樋61を斜架させて設けられ、機枠2の左側壁2cに穿設した糠排出口62から機外に排出できる構成となっている。
【0032】
前記精白転子57には複数の噴風孔(図示せず)が穿設してあり、前記回転軸は中空状に形成されており、図2に示す圧送ファン67からの風が回転軸の中空部内に圧送され、この風が複数の噴風孔から精白室17内に噴風される構成となっている。これにより、精白中の米粒表面に付着した糠を吹き払い、前記精白米の排出口から排出される精米の糠切れをよくするとともに、精白中の米温上昇を抑制する作用も奏する。
【0033】
前記精米部9は、機枠2外に設けられた駆動源(モータ)42(図2参照)の駆動力が駆動源42と精米駆動プーリ43との間で掛け回された駆動ベルト44を介して回転軸に伝達されることにより、精白転子57が回転されて搗精が行われることになる。
【0034】
<作用>
次に、上記構成における作用を説明する。機枠2外に設けられた駆動源(モータ)42(図2参照)を駆動すると、駆動源42と精米駆動プーリ43との間で掛け回された駆動ベルト44、精米駆動プーリ43と中継プーリ45との間で掛け回された中継ベルト46、及び中継プーリ45からは脱ぷ部の駆動プーリ47,48、夾雑物除去部5の揺動プーリ27、吸引排風機3用のファンプーリ66、及び圧送ファン67用のファンプーリ68に回転力が伝達されて、籾摺精米機1が起動する。そして、各回転部を回転させた状態で籾ホッパ4から原料籾を投入する。このとき、籾ホッパ4の開口部4aには、径が100mm以上の粗大異物の流入を阻止するための粗選別格子11がフック12に吊り下げ支持されており、原料籾に粗大異物が混入していた場合に異物の流入が阻止される。
【0035】
粗大異物が除去された原料籾は、流量調整弁64により供給量が適宜に調整された後、夾雑物除去部5に供給される。供給量を変更する場合には、調整ねじ(図示せず)を用いて軸回りに流量調整弁64を回動させることにより傾斜角を変更して、落下口65の間隙の大きさを変更するとよい。夾雑物除去部5では、揺動機構19内の回転軸23が回転することにより、偏心輪24が回転して偏心ブラケット25を介して連結杆26が往復運動し、選別網板14の後壁14dに設けた支持杆18が回動の支点となり、選別網板14の傾斜下方側が前記支点を中心に円弧を描くように振れ、図4の矢印の範囲で揺動されることになる。
【0036】
原料籾はこの揺動作用により、選別網板14上においてほぐし作用が生じ、原料籾の塊から籾に混入する大きなわら屑や小石や稲麹籾((いなこうじもみ)籾の全表面又は一部にカビが付着したもの。)等が露出することになる。具体的には、粒径が6mm以上の小石や稲麹籾、長さが30mm以上のわら屑は選別網板14を滑流して夾雑物排出樋16から機外に排出される一方、籾は長孔13から漏出して夾雑物除去部5下方の籾受樋28及び流下シュート29に落下することになる。夾雑物除去部5の揺動作用により発生した軽い塵埃などは、図3の太字矢印で示すように風選室8を経由して吸引排風機3により吸引されて機外に排出されることになる。
【0037】
籾受樋28及び流下シュート29上に落下した籾は、湾曲状流下シュート30に至り、上下に架設された脱ぷロール6a,6bからなる脱ぷ部6に供給されて脱ぷが行われる。このとき、異物として粒径が6mm以上の小石や、長さ30mm以上のわら屑などを含んでいないため、脱ぷロール6a,6bの詰まりや、脱ぷ率の低下や、脱ぷ部の損傷を防止することができる。
【0038】
上下に架設した脱ぷロール6a,6bからは、摺米が水平方向に投げ出されて断面く字状に屈曲した角度変更板31に衝突し、その速度を利用して上方搬送管10により摺米が垂直方向に揚穀される。揚穀しきれなかった摺米は隙間Sに落下し、さらに、流穀板32により受け止められて残留排出樋34から機外に排出される。
【0039】
上方搬送管10により揚穀された摺米は一時貯留タンク7に貯留され、第1棚板50,第2棚板51を順次流下して風選室8に至る。該風選室8では、外気取入口52から吸入される外気に伴って(図3の太字矢印参照)、軽い籾殻が吸引排風機3により吸引されて機外に排出されるとともに、重い玄米は落下選別されて玄米受樋53に至り、さらに、粃や未熟粒などの二番物は落下選別されて二番物受樋54に至る。
【0040】
玄米受樋53に溜まった玄米は、玄米供給筒63を介して精米部9に至り、除糠精白筒58内で回転する精白転子57により精米が行われる。そして、抵抗蓋59に抗して流出した精白米は精米排出樋60から機外に排出され、除糠精白筒58から漏出した糠は糠排出樋61から機外に排出される。一方、二番物受樋54に溜まった二番物は、二番物排出樋56から直接機外に排出させるか、又は前述の間隙S、流穀板32及び残留排出樋34を介して機外に排出させることが選択できる。
【0041】
以上のように、略直方体の機枠2内部に夾雑物除去部5を中間としてその上方に籾ホッパ4及び風選用の排風機3を、下方に脱ぷ部6をそれぞれ立体的に配設する一方、機枠2の内部であって排風機3の近傍に風選部8を並設するとともに、風選部8の下方に精米部9を配置し、さらに、脱ぷ部6は、一対の脱ぷロール6a,6bを上下に架設して摺米を水平方向に投げ出す構成となし、かつ、脱ぷ部6の摺米排出側には、摺米を風選部8へ揚穀するための角度変更板31及び上方搬送管10を設けた構成であり、これにより、各部を略直方体の機枠2内に収容されるように立体的に配置することが可能となり、また、スロワなどの揚穀装置を不要として装置全体をコンパクトな箱型形状とし、設備面積の縮小、原料籾の張込み位置の低位置化、及び精品を袋受する精品排出口の低位置化を実現し、作業性が改善された籾摺精米機を提供することができる。
【0042】
また、夾雑物除去部5と脱ぷ部6との間に、夾雑物除去部5から落下した籾を受ける籾受樋28、該籾受樋28に連絡した流下シュート29、及び流下シュート29からの籾を水平方向に移送させて脱ぷ部6に供給する湾曲状流下シュート30を設けたものであるから、籾受樋28、流下シュート29及び湾曲状流下シュート30を併せた高さが約0.4mとなり、夾雑物除去部5から脱ぷ部6までの高さを可及的に低くする一方、湾曲状流下シュート30により籾を垂直方向から水平方向に移送させ、一定の投げ出し速度で一対の脱ぷロール6a,6bに供給し、籾を停滞させることなく薄い層で帯状に脱ぷ部6に供給し、脱ぷ処理能力も低下させることがない。
【0043】
さらに、脱ぷ部6は、固定軸35が機枠2に軸支され、固定軸35回りに回転可能に支持する下側の脱ぷロール6bを固定ロールとする一方、固定軸35と上下方向に平行移動可能な可動軸36が機枠2に軸支され、可動軸36回りに回転可能に支持する上側の脱ぷロール6aを移動ロールとなし、下側の脱ぷロール6bと上側の脱ぷロール6aとの間隙の距離を調節可能な構成としてあるから、湾曲状流下シュート30による籾の水平方向への投げ出し位置に、下側の脱ぷロール6bが固定ロールとして位置合わせされることになり、籾の水平方向への投げ出し位置を上下方向に変動させることなく、脱ぷロール6a,6bの間隙を調節することが可能となる。
【0044】
そして、角度変更板31を断面く字状に屈曲した形状となすとともに、上方搬送管10を垂直に立設してあるから、脱ぷロール6a,6bから摺米が水平方向に投げ出され、断面く字状に屈曲した角度変更板31に衝突し、その速度を利用して上方搬送管10により摺米が垂直方向に揚穀することができる。このとき、脱ぷロール6a,6bから摺米が水平方向に投げ出される初速度は、摩擦損失などを考慮しても7〜9m/s程度を維持できるものであり、長さ1m程度の上方搬送管10に対して十分な揚穀能力を備えるものとなる。
【0045】
また、籾ホッパ4を漏斗状に形成するとともに、機枠2の前面壁2aから前方へ突設された形状としてあるから、機枠2上部に籾ホッパ4を配置するよりも張込み位置を低位置化することができ、作業者の張込み作業の労力を軽減することができる。
【0046】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。例えば、本実施形態における脱ぷ部6は一対の脱ぷロール6a,6bが上下に架設されていて、摺米が水平方向に投げ出される構成であるが、一対の脱ぷロール6a,6bを上下に架設するとともに、摺米が傾斜上方に投げ出されるよう脱ぷロール6a,6bを傾斜配置することも可能である。これにより、角度変更板を省略することが可能となるが、上方搬送管10を傾斜配置させなければならず、機枠2が大型化する問題が生じる。
【実施例1】
【0047】
前記一対の脱ぷロール6a,6bとして、鋳鉄製の鉄芯にゴムを環状に固着した、直径が222mmの10インチゴムロールを使用した。固定軸35(高速側)の回転数を1264rpm、周速度を14.6m/sとし、可動軸36(低速側)の回転数を881rpm、周速度を10.2m/sとすれば、新品のゴムロールの場合に周速度差率30.3%が得られた。これは、一般的な籾すり機で採用される約23%に比べて差率が大きく、脱ぷ率の向上が期待できる。また、脱ぷロール6a,6bから摺米が水平方向に投げ出される初速度は、摩擦損失などを考慮しても7〜9m/s程度を維持できるものであり、この程度の初速度であれば長さ1m程度の上方搬送管10に対して十分な揚穀能力を備えるものである。
【0048】
なお、脱ぷ部6の供給部となる湾曲状流下シュート30、流下シュート29及び籾受樋28を併せたときの高さは約0.4mであり、夾雑物除去部5から一対の脱ぷロールまでの高さを可及的に低くする一方、湾曲状流下シュート30により籾を垂直方向から水平方向に移送させ、約1.0〜2.0m/sの投げ出し速度で一対の脱ぷロール6a,6bに供給することができる。これにより、籾を停滞させることなく薄層で供給して脱ぷ処理能力を低下させることがない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
脱ぷ機能と精米機能とを併せ持つ籾摺精米機に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 籾摺精米機
2 機枠
2a 前面壁
2b 後面壁
2c 左側壁
2d 右側壁
2e 上面壁
3 吸引排風機
4 籾ホッパ
5 夾雑物除去部
6 脱ぷ部
7 一時貯留タンク
8 風選室
9 精米部
10 上方搬送管
11 粗選別格子
12 フック
13 長孔
14 選別網板
15 開口部
16 夾雑物排出樋
17 支持杆
18 支持杆
19 揺動機構
20 取付部材
21 支持部材
22 軸受
23 回転軸
24 偏心輪
25 偏心ブラケット
26 連結杆
27 揺動プーリ
28 籾受樋
29 流下シュート
30 湾曲状流下シュート
31 角度変更板
32 流穀板
33 排出口
34 残留排出樋
35 固定軸
36 可動軸
37 ロール間隙調節装置
38 可動支点軸
39 軸受
40 ネジ部材
41 ハンドル
42 駆動源(モータ)
43 精米駆動プーリ
44 駆動ベルト
45 中継プーリ
46 中継ベルト
47 脱ぷロール用プーリ
48 脱ぷロール用プーリ
49 駆動ベルト
50 第1棚板
51 第2棚板
52 外気取入口
53 玄米受樋
54 二番物受樋
55 二番物調節弁
56 二番物排出樋
57 精白転子
58 除糠精白筒
59 抵抗蓋
60 精米排出樋
61 糠排出樋
62 排出口
63 玄米供給筒
64 流量調整弁
65 落下口
66 ファンプーリ
67 圧送ファン
68 ファンプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料籾を受ける籾ホッパと、原料籾中に混入する籾よりも大きい夾雑物を除去する夾雑物除去部と、籾を脱ぷする脱ぷ部と、該脱ぷ部で脱ぷされた摺米を風選する風選部と、該風選部で風選された玄米を受けて精米する精米部とを備えた籾摺精米機において、略直方体の機枠内部に前記夾雑物除去部を中間としてその上方に前記籾ホッパ及び風選用の排風機を、下方に前記脱ぷ部をそれぞれ配設する一方、前記機枠の内部であって前記排風機の近傍に前記風選部を並設するとともに、該風選部の下方に前記精米部を配置し、さらに、前記脱ぷ部は、一対の脱ぷロールを上下に架設して摺米を水平方向に投げ出す構成となし、かつ、該脱ぷ部の摺米排出側には、摺米を風選部へ揚穀するための角度変更板及び上方搬送管を設けたことを特徴とする籾摺精米機。
【請求項2】
前記夾雑物除去部と前記脱ぷ部との間には、夾雑物除去部から落下した籾を受ける籾受樋、該籾受樋に連絡した流下シュート、及び流下シュートからの籾を水平方向に移送させて脱ぷ部に供給する湾曲状流下シュートを設けてなる請求項1記載の籾摺精米機。
【請求項3】
前記脱ぷ部は、固定軸が機枠に軸支され、該固定軸回りに回転可能に支持する下側の脱ぷロールを固定ロールとする一方、前記固定軸と上下方向に平行移動可能な可動軸が機枠に軸支され、該可動軸回りに回転可能に支持する上側の脱ぷロールを移動ロールとなし、前記下側の脱ぷロールと前記上側の脱ぷロールとの間隙の距離を調節可能な構成としてなる請求項1又は2記載の籾摺精米機。
【請求項4】
前記角度変更板は断面く字状に屈曲した形状となすとともに、前記上方搬送管は垂直に立設してなる請求項1から3のいずれかに記載の籾摺精米機。
【請求項5】
前記籾ホッパを漏斗状に形成するとともに、前記機枠の前面壁から前方へ突設された形状としてなる請求項1から4のいずれかに記載の籾摺精米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−25159(P2011−25159A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173581(P2009−173581)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】