説明

粉体微量充填装置

【課題】微量の粉体を高精度で定量充填することができる粉体微量充填装置を提供する。
【解決手段】粉体を定量充填する粉体微量充填装置であって、前記粉体が供給される供給口12a及び排出される排出口12bを有する筒状通路12と、前記筒状通路内に配置されるスクリュー22と、前記スクリューの一端部に設けられ前記粉体が通過する複数の通過孔が形成された円板状部材26と、前記スクリューの他端部に設けられた回転軸24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の粉体を定量充填する粉体微量充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体が供給される供給口及び排出される排出口を備える筒状通路内に配置されるスクリューフィーダーにより粉体を定量供給する粉体定量供給機が存在する(例えば、特許文献1参照)。この粉体定量供給機においては、スクリューフィーダーの先端部に放射状の針部材を螺旋状に配置したブラシを設けることによりスクリューフィーダーから粉体が塊状で排出されることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−100529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、医薬品に用いる粉体の充填を行う場合には、高精度な微量充填が要求されるが、上述の粉体定量供給機を医薬品用粉体の充填に用いると、医薬品用粉体がスクリューフィーダーに詰まったり、ブラシを構成する複数の針部材の隙間に詰まったりすることがあり、粉体の排出がスムーズに行えず微量の粉体を高精度で定量充填することが困難であった。ブラシ先端部に付着した粉体がボタ落ちすることがあり、特にこの現象が充填精度を悪くしていた。
【0005】
本発明の目的は、微量の粉体を高精度で定量充填することができる粉体微量充填装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粉体微量充填装置は、粉体を定量充填する粉体微量充填装置であって、前記粉体が供給される供給口及び排出される排出口を有する筒状通路と、前記筒状通路内に配置されるスクリューと、前記スクリューの一端部に設けられ前記粉体が通過する複数の通過孔が形成された円板状部材と、前記スクリューの他端部に設けられた回転軸とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記スクリューがコイルバネ状であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記円板状部材が前記筒状通路内の前記排出口近傍に位置することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記複数の通過孔が前記円板状部材に放射状に略等間隔で形成される切欠孔であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記複数の通過孔が前記円板状部材に放射状に略等間隔で形成される略扇形状の孔であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記筒状通路の前記排出口近傍に位置する除電器を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記除電器が前記筒状通路の前記排出口に向かってイオン搬送風を供給することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記除電器に加え、さらに前記筒状通路に振動を与える手段及び/または前記筒状通路の前記排出口に向かって気流を発生させる手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の粉体微量充填装置は、前記回転軸を回転駆動する駆動部と、前記排出口から排出された粉体を計量する計量部と、前記計量部による計量値に基づいて前記駆動部の回転数を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粉体微量充填装置によれば、微量の粉体を高精度で定量充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置をスクリューの軸の側面側から視た概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る円板状部材の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置の粉体充填処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置を用いて行った試験例のデータを示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る他の円板状部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置について説明する。図1は、粉体微量充填装置を後述するスクリューの軸の側面側から視た概略図である。図1に示すように、粉体微量充填装置2は、固定具により設置台4に取付けられるプレート6の上面に設けられている。粉体微量充填装置2には、粉体を貯槽する粉体貯槽8が設けられている。粉体貯槽8の上部を覆う上蓋8aには、粉体を粉体貯槽8へ投入するための供給口10が設けられている。また、図1における右側壁部8bの下部の開口には、粉体の供給が行われる供給口12a及び排出が行われる排出口12bを有する円筒状の筒状通路12が接続されている。
【0018】
また、図1における左側壁部8cの下部には、上下2つの開口が設けられており、この開口を介して後述する撹拌軸14及び回転軸24に動力を伝達する動力伝達部16の駆動軸が粉体貯槽8内へ挿入されている。ここで、動力伝達部16は、パルス信号の入力により、回転角度または回転数を制御することが可能なステッピングモータ18を備えている。また、ステッピングモータ18は、後述する計量器32による計量値に基づいて、回転角度または回転数を制御する制御部20に接続されている。
【0019】
粉体貯槽8内には、水平方向に撹拌軸14が設けられ、撹拌軸14の一端部は動力伝達部16の駆動軸に接続されている。ここで撹拌軸14には、粉体を撹拌するためのプレート状の撹拌羽根14aが軸方向の複数の位置に設けられている。また撹拌軸14の下部には、所定のピッチ幅のコイルバネ状のスクリュー22が配置されている。スクリュー22の一端部は、筒状通路12内に挿入され排出口12bの近傍まで延設されている。このスクリュー22の一端部には、溶接により後述する円板状部材26が接合されている。ここで円板状部材26は、筒状通路12の内径よりも若干小さい直径を有し筒状通路12内の排出口12b近傍に位置している。なお、円板状部材26の直径は、筒状通路12の内径と同じでもよいし、若干大きくてもよい。また、スクリュー22の他端部には、回転軸24の一端部が接続されており、回転軸24の他端部は、動力伝達部16の駆動軸に接続されている。
【0020】
筒状通路12の排出口12bの下部には、排出口12bから排出される粉体を容器28に確実に充填させるための漏斗状部材30が設けられている。漏斗状部材30の上方には、イオン搬送風を筒状通路12の排出口12bに向けて供給する除電器34が設けられている。また漏斗状部材30の下部の設置台4上には、計量器32が設けられており、計量器32上に載置された容器28に充填された粉体の重量を計量する。なお、計量器32及び除電器34は制御部20に接続されている。
【0021】
図2は、円板状部材26をスクリュー22側から視た正面図である。円板状部材26は所定の厚さを有する円板状の部材であって、図2に示すように粉体が通過する複数の所定の大きさの切欠孔26aが放射状に等間隔で形成されている。本実施の形態では、円板状部材26には、放射角αが22.5°の切欠孔26aが16個形成されている。また、円板状部材26の中心には、スクリュー22の一端部が挿入され溶接される溶接孔26bが形成されている。
【0022】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置2の粉体充填処理について説明する。操作者により粉体微量充填装置2の運転開始を指示する図示しない運転開始ボタンが押下されると、制御部20は、除電器34により筒状通路12の排出口12bに向かって所定の流量を有するイオン搬送風を供給し、筒状通路12の排出口12bの近傍の除電を行う(ステップS10)。そして制御部20は、大投入モードに対応する所定の回転数でステッピングモータ18を駆動させる(ステップS11)。例えば、大投入モードにおけるスクリュー22の所定の回転数を25rpmとする。ここで、ステッピングモータ18からの回転動力が動力伝達部16の駆動軸を介して撹拌軸14に伝達される。これにより撹拌軸14が所定の回転数で駆動され粉体貯槽8内の粉体の密度を調整する。また、ステッピングモータ18からの回転動力が動力伝達部16の駆動軸を介して回転軸24に伝達される。これにより回転軸24が所定の回転数で駆動され、スクリュー22により粉体貯槽8内の粉体が筒状通路12の供給口12aから排出口12bへ送給される。そして、円板状部材26の切欠孔26aを介して排出口12bから粉体が所定量づつ排出される。
【0023】
制御部20は、計量器32から粉体の計量値の入力を受けると(ステップS12)、容器に充填された粉体が大投入モードに対応する所定の計量値を超えたか否かを判別する(ステップS13)。例えば、容器に充填する粉体の重量の目標値を100mgとした場合、大投入モードにより充填する粉体の重量を60mgまでとして、計量値が60mgを超えたか否かを判別する。計量値が60mgを超えた場合には(ステップS13、Yes)、ステッピングモータ18の回転数を中投入モードに対応する所定の回転数に変更する(ステップS14)。例えば、中投入モードにおけるスクリュー22の所定の回転数を12.5rpmとする。一方、計量値が60mgを超えていない場合には(ステップS13、No)、ステップS12に戻り粉体の充填を継続して行う。
【0024】
次に中投入モードで粉体の充填を行いながら、計量器32から計量値の入力を受け(ステップS15)、計量値が中投入モードに対応する所定の計量値を超えたか否かを判別する(ステップS16)。例えば、中投入モードにより充填する粉体の重量を90mgまでとして、計量値が90mgを超えたか否かを判別する。計量値が90mgを超えた場合には(ステップS16、Yes)、ステッピングモータ18の回転数を小投入モードに対応する所定の回転数に変更する(ステップS17)。例えば、小投入モードにおけるスクリュー22の所定の回転数を5rpmとする。一方、計量値が90mgを超えていない場合には(ステップS16、No)、ステップS15に戻り粉体の充填を継続して行う。
【0025】
次に小投入モードで粉体の充填を行いながら、計量器32から計量値の入力を受け(ステップS18)、計量値が小投入モードに対応する所定の計量値を超えたか否かを判別する(ステップS19)。例えば、小投入モードにより充填する粉体の重量を97mgまでとして、計量値が97mgを超えたか否かを判別する。97mgを超えた場合には(ステップS19、Yes)、ステッピングモータ18の回転数をインチングモードに対応する所定の回転数に変更する(ステップS20)。例えば、インチングモードにおけるスクリュー22の所定の回転数を1rpmとする。一方、計量値が97mgを超えていない場合には(ステップS19、No)、ステップS18に戻り粉体の充填を継続して行う。
【0026】
次にインチングモードで粉体の充填を行いながら、計量器32から計量値の入力を受け(ステップS21)、計量された計量値が、目標値の許容範囲内か否かを判別する(ステップS22)。例えば、目標値100mgに対して、許容範囲を目標値の±0.5%とした場合には、計量値が99.5〜100.5mgの範囲内か否かを判別する。計量値が許容範囲内である場合には、粉体微量充填装置2の運転を停止する(ステップS23)。一方、計量値が許容範囲に達していない場合には、ステップS21に戻り粉体の充填を継続して行う。
【0027】
図3のフローチャートに基づき、本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置を用いて粉体の充填を実施したデータを図4に示す。ここで図4(a)は、39回行った充填試験における計測結果を示すものであり、図4(b)は、計測結果をグラフで示したものである。この図4からも分かるように、極めて高い充填精度が得られている。
【0028】
本発明の実施の形態に係る粉体微量充填装置によれば、粉体が通過する複数の通過孔が形成された円板状部材をスクリューの一端部に設け、この円板状部材により塊状の粉体の通過を防止するため微量の粉体を高精度で微量充填することができる。また、筒状通路の排出口の近傍に除電器を設け排出口の近傍の除電を行うため排出口の周辺部における粉体の付着を防止することができ、粉体の充填量を高精度に制御することができる。ここでインチングモードで微量の粉体の充填を行う場合には、排出口の近傍に付着した粉体の落下が高精度な粉体の微量充填に極めて大きな影響を与えることになるが、上述の実施の形態における粉体微量充填装置によれば排出口の近傍の除電により、排出口の周辺部における粉体の付着が確実に防止されているため、微量の粉体を高精度で充填することができる。さらには、バイブレーターを用いて筒状通路に振動を与えたり、ブロワにより筒状通路排出口の周辺部に排出口に向かって気流を発生させたりして、粉体の落下を助勢してもよい。
【0029】
またスクリューの一端部に粉体が通過する複数の通過孔が形成された円板状部材を設けているため、筒状通路からスクリューを取外すことが容易であり、またスクリューの洗浄、特に複数の通過孔が形成された円板状部材の洗浄を容易かつ確実に行うことができる。
【0030】
なお、上述の実施の形態においては、塊状の粉体の通過を防止し粉体を微量充填するために円板状部材26を用いているが、図5に示す円板状部材36を用いてもよい。ここで、図5は、円板状部材36をスクリュー22側から視た正面図である。図5に示すように、円板状部材36には、粉体が通過する複数の所定の大きさを有する略扇形状の孔36aが、16個等間隔に形成されている。また、円板状部材36の中心には、スクリュー22の一端部に溶接される溶接孔36bが形成されている。この円板状部材36をスクリューの一端部に取付けた場合においても塊状の粉体の通過を防止し粉体を高精度で定量充填することができる。また、この円板状部材36は、円周状部36cを有するため上述の円板状部材26よりも高い強度を有する。
【0031】
また、上述の実施の形態においては、除電器34が筒状通路12の排出口12bに向かってイオン搬送風を供給しているが、筒状通路12の排出口12bに対して軟X線を照射してもよい。これにより、軟X線が照射された排出口12b近傍が除電されるため排出口12bの周辺部に粉体が付着することを防止することができる。
【0032】
また、上述の実施の形態においては、所定のピッチ幅のコイルバネ状のスクリュー22を用いているが、円板状部材26側のピッチを密及び回転軸24側のピッチを疎とするピッチ幅のコイルバネ状のスクリューを用いてもよい。
【0033】
また、上述の実施の形態においては、円板状部材26に切欠孔26aが16個形成され、円板状部材36に略扇形状の孔36aが16個形成されているが、その数及び大きさは適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0034】
2…粉体微量充填装置、12…筒状通路、12a…供給口、12b…排出口、16…動力伝達部、18…ステッピングモータ、20…制御部、22…スクリュー、24…回転軸、26…円板状部材、26a…切欠孔、32…計量器、34…除電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を定量充填する粉体微量充填装置であって、
前記粉体が供給される供給口及び排出される排出口を有する筒状通路と、
前記筒状通路内に配置されるスクリューと、
前記スクリューの一端部に設けられ前記粉体が通過する複数の通過孔が形成された円板状部材と、
前記スクリューの他端部に設けられた回転軸と
を備えることを特徴とする粉体微量充填装置。
【請求項2】
前記スクリューがコイルバネ状であることを特徴とする請求項1に記載の粉体微量充填装置。
【請求項3】
前記円板状部材は、前記筒状通路内の前記排出口近傍に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の粉体微量充填装置。
【請求項4】
前記複数の通過孔は、前記円板状部材に放射状に略等間隔で形成される切欠孔であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の粉体微量充填装置。
【請求項5】
前記複数の通過孔は、前記円板状部材に放射状に略等間隔で形成される略扇形状の孔であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の粉体微量充填装置。
【請求項6】
前記筒状通路の前記排出口近傍に位置する除電器を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の粉体微量充填装置。
【請求項7】
前記除電器は、前記筒状通路の前記排出口に向かってイオン搬送風を供給することを特徴とする請求項6に記載の粉体微量充填装置。
【請求項8】
前記除電器に加え、さらに前記筒状通路に振動を与える手段及び/または前記筒状通路の前記排出口に向かって気流を発生させる手段を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の粉体微量充填装置。
【請求項9】
前記回転軸を回転駆動する駆動部と、
前記排出口から排出された粉体を計量する計量部と、
前記計量部による計量値に基づいて前記駆動部の回転数を制御する制御部と
を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の粉体微量充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173626(P2011−173626A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39620(P2010−39620)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000226954)日清エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】