説明

粉体用ロータリーフィーダー

【課題】ケーシングと回転するローターとその回転羽根との適正隙間が落降する粉体にて摩耗した時が交換時期である。両者の隙間の調整が可能であれば、経時的な摩耗量を予め測定し把握しておけば定期的にその限界を予測した時、隙間が広くなった分だけ調整が可能なロータリーフィーダを提供する。
【解決手段】粉体を貯留する粉体ホッパーの下部に粉体導入ケーシングを介して横円筒形のロータリーケーシングを連結し同ロータリーケーシングに回転羽根106を周設したロータリーを内設すると共に排出菅を連設した粉体用ロータリーフィーダーにおいて、上記粉体導入ケーシング内に昇降可能に隙間調整ケーシングを設け、同隙間調整ケーシングを保持しその基本位置をセットする圧縮バネ式支持機構と隙間調整ケーシングを保持しその下端縁位置を所定位置に設定保持するエアーシリンダー式間隙調整機構とを粉体導入ケーシングに取り付けたことを特徴とする粉体用ロータリーフィーダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体用ロータリーフィーダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に研摩・研削剤ともなる金属粉体を扱う粉体用ロータリーフィーダーの研削摩耗対策機構を提供するものである。
【0003】
例えば、製鐵所の製鋼転炉は、コンピュータ制御により溶鋼の定量分析をしながら、溶鋼成分調整に必要な脱酸剤(Al、Mg、Ti、Si等の金属粉体)や還元剤(CaC2、CaCO3、CaF等)を経時的に定量添加する。
この添加のために転炉の炉上などには多数の粉体ホッパーを設置するがその粉体を切り出す粉体用ロータリーフィーダーは、該成分調整上、高精度の定量切り出し機能が要求される。
【0004】
而して、この粉体用ロータリーフィーダーは、空気搬送された粉体を貯留する粉体ホッパー下部(円筒形)の粉体落降部に円形のケーシングを連接し、この中に8〜12枚の回転羽根からなるロータリー部を配置し、回転羽根の回転によりケーシングの粉体切り出し部に連接した排出管から粉体を定量排出するものである。しかし、粉体との接触が最も多いこのロータリー部の羽根とそのケーシング内壁面の研削摩耗が激しい。
【0005】
ロータリー部の各回転羽根とそれの回転軌跡に対面するケーシング内壁面が摩耗するとその対向隙間が広がりその量が増加すると隙間を流れる空気随伴の粉体量分が定量分に加わる結果、本来の定量切り出し機能つまり粉体添加量精度が著しく低下し溶鋼成分調整を困難なものとする。
【0006】
粉体用ロータリーフィーダーの摩耗抑制対策として、ロータリー部の回転羽根とケーシング内壁面に対摩耗性金属等を肉盛溶接しその後に研削加工し補強しているがケーシングの粉体落降部を通過中の回転羽根は中央部がその両側部より摩耗が大きく湾曲し、該隙間を長期に亘り0.1〜0.3mm以内に維持することは極めて困難である。
【0007】
そこで粉体用ロータリーフィーダーのロータリー部とそのケーシング部間の隙間をその使用中に測定し限界値前でロータリー部や回転羽根を交換すれば添加量精度を許容内で維持することが出来る。
しかし、従来におけるロータリー部とそのケーシング部間の隙間の測定は、月一回程度の定期的測定によるものであった。このためロータリー部やそのケーシングの交換や肉盛溶接による補修作業は短期間作業となり煩雑で多大な時間と労力を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ケーシングと回転するロータリーとその回転羽根との適正隙間が落降する粉体にて摩耗した時が交換時期である。両者の隙間の調整が可能であれば、経時的な摩耗量を予め測定し把握しておけば定期的にその限界を予測した時、隙間が広くなった分だけ調整が可能なロータリーフィーダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものでありその特徴とするところは、次の(1)〜(3)にある。
(1)、粉体を貯留する粉体ホッパーの下部に粉体導入ケーシングを介して横円筒形のロータリーケーシングを連結し同ロータリーケーシングに回転羽根を周設したロータリーを内設すると共に排出菅を連設した粉体用ロータリーフィーダーにおいて、下端縁を上記ロータリーの回転羽根先端の回転奇跡面に接近離間させる隙間調整ケーシングを上記粉体導入ケーシング内に昇降可能に設け、前記隙間調整ケーシングを保持しその基本位置をセットする圧縮バネ式支持機構と、隙間調整ケーシングを保持し前記回転羽根先端の回転奇跡面に対する下端縁位置を所定間隔位置に設定保持するエアーシリンダー式間隙調整機構とを粉体導入ケーシングに取り付けたことを特徴とする粉体用ロータリーフィーダー。
(2)、前記隙間調整ケーシングの少なくとも下部は、金属板の内側にテフロン樹脂板を配設固定したことを特徴とする請求項1に記載の粉体用ロータリーフィーダー。
(3)、前記隙間調整ケーシングの基本位置をセットする圧縮バネ式支持機構は、粉体導入ケーシングの外壁側に設け、前記隙間調整ケーシングの下端縁位置を所定間隔位置に設定保持するエアーシリンダー式間隙調整機構は、粉体導入ケーシングの内空部中央部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の粉体用ロータリーフィーダー。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成の粉体用ロータリーフィーダーとしたので、圧縮バネ式支持機構301の調整ナット305を締め回転させて隙間調整ケーシング201を下降させ、下部のテフロン樹脂板203b下端縁をロータリーの回転羽根106先端の回転軌跡面に押し込んで自己研削し、回転羽根106回転軌跡面に沿った任意の形状にする。この後一旦調整ナット305を緩め回転して隙間調整ケーシング201を 上昇させロータリー隙間X(回転羽根106回転軌跡面とテフロン樹脂板203b下端縁との間隙)を0から5mm程度に拡張変更して、エアーシリンダー式間隙調整機構401によるロータリー隙間Xの自動微細調節の下降開始位置にしておく。次いでエアーシリンダー式間隙調整機構401により、圧縮バネ式支持機構301でセットした隙間調整ケーシング201を下降させその下端によるロータリー隙間Xを 所定の任意の管理値例えば0.1〜0.3mmに設定しこれを長期に亘って確実に維持することが出来るものである。
【0011】
これにより、製鋼転炉等の炉上のように高温度で粉塵の多い悪環境下に曝される精錬用粉体添加用に供して、ロータリー隙間Xを小さくしても、熱膨張による圧接摩耗や高温による焼付きや異常摩耗を皆無にし、ロータリー隙間Xを常に所定の管理範囲内に精度良く調整することが出来る。
このため、粉体用ロータリーフィーダーの本来の定量切り出し機能つまり粉体添加量精度を高位に安定維持し製鋼転炉などにおける溶鋼成分調整を極めて精度の良いものとする。又、煩雑で多大な時間と労力を必要とするロータリー部やそのケーシングの交換や肉盛溶接による補修作業は、長期に亘って不要となる等の優れた効果を呈するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態を図1〜図6を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1、図2において、本例の粉体用ロータリーフィーダーの基本構成部は、空気搬送された粉体を貯留する粉体ホッパー100と、粉体ホッパー100の下部に連結したレジューサー101(円錐形)と、レジューサー101下部に連結した丸角短菅102と、丸角短菅102に導入ケーシングとして角筒状の第一導入ケーシング103と第二導入ケーシング104を介して連結した横円筒形の内面硬質Crメッキしたロータリーケーシング105と、ロータリーケーシング105内に収容しAlBCを肉盛溶接し15〜30°の螺旋配置した8〜12枚の回転羽根106を周設したロータリー107と、ロータリーケーシング105の下部の排出口に連結した排出菅108とからなり、ロータリー107よる回転羽根106の回転により第二導入ケーシング104からの粉体をロータリーケーシング105内に導入し排出菅108に定量排出するものである。
【0014】
ロータリー107と、ロータリーケーシング105は、接触しても焼付かないAlBCの銅合金で肉盛られており、しかもこれが熱膨張率がSS400鋼材の1.6倍と高いため周囲を痛めずまた摩耗しても熱膨張で隙間拡大を抑制することもできる。
【0015】
この粉体用ロータリーフィーダーにおける改良部の基本構成は、ロータリー107と下端縁との隙間つまりロータリー隙間Xを調整する隙間調整ケーシング201と、隙間調整ケーシング201を上下昇降移動させその下端縁の位置を設定する圧縮バネ式支持機構301と、隙間調整ケーシング201の下端位置をロータリー隙間Xに必要な所定の位置に設定するエアーシリンダー式間隙調整機構401とからなる。
[隙間調整ケーシング201の説明]
図1、図2、図3において、隙間調整ケーシング201は、角筒状態つまり本例は四面体として隙間調整が取り易くし、その上端に保形効果のあるフランジ202を有し、角筒状本体203を前記角筒状の第二導入ケーシング104内に上下摺動可能に嵌入し、上部内に角筒パイプ103の下部を上下摺動可能に嵌入し、下端縁204をロータリーケーシング105と第二導入ケーシング104との接合部よりロータリー107側に突出させてロータリー隙間Xを所定値に維持する。
【0016】
上記フランジ202は、第一導入ケーシング103の接合フランジ103aと第二導入ケーシング104の接合フランジ104aとの接合部に形成した矩形間隙リング205内に位置する。
【0017】
角筒状本体203は、図4にも示すように、鉄板やステンレス板等の金属板203aにテフロン(商標)樹脂板203bを内張りした二重構造である。テフロン樹脂板203bは粉体付着防止効果があり耐摩耗性、耐熱性(Max180℃)、低摩擦係数μ=0.04〜0.1(因みに金属硬化面の低摩擦係数μ=0. 2〜0.4)に優れており、下端縁をロータリー107側に突出させる。
【0018】
金属板203aへのテフロン樹脂板203bの装着は、図4に示すように予め金属板203aの適所に保持用のビール栓状クラウン206をレーザー切断と3〜5°曲げ加工し、その他を接合面として硝子・カーボン繊維210を接着剤で接着し、これにテフロン樹脂板203bを配置し、スチーム加熱することにより、テフロン樹脂板203bは軟化し、ラウン部に食い込みせん断強度を保持して機械的結合し、硝子・カーボン繊維部210で強力に熱接合するものである。これで結果的に図4の(2)に示すように金属板203aにテフロン樹脂板203bは密着装着する。角筒状本体203の隅部はテフロン樹脂板203b同士の熱風溶接にしてある。
[圧縮バネ式支持機構301の説明]
図5にも示すように、隙間調整ケーシング201用の圧縮バネ式支持機構301は、隙間調整ケーシング201のフランジ202の下面に、調整ボルト302を固定接続し、調整ボルト302の下部を第二導入ケーシング104の接合フランジ104aに貫通させ且つ突出配置し、調整ボルト302の矩形間隙リング205内とスプリングケース304内に位置する外周面にスプリング303を圧縮状で配置し、調整ボルト302の接合フランジ104a突出部に調整ナット305を螺合したものである。これにより調整ナット305を回転させてフランジ202を介して、隙間調整ケーシング201を昇降させるものである。
【0019】
この圧縮バネ式支持機構301の使用例は、調整ナット305を締め回転させて隙間調整ケーシング201を下降させ、下端のテフロン樹脂板203b先端縁をロータリーに押し付けて回転羽根106の回転でスパイラル状に自己研削(カッティング)しその回転羽根106に沿った形状にする。この後一旦調整ナット305を緩め回転して隙間調整ケーシング201を 上昇させロータリー隙間Xを0から5mm程度に拡張変更して、後述のエアーシリンダー式間隙調整機構401によるロータリー隙間Xの自動微細調節の下降開始位置にしておくものである。
【0020】
又、操業中に隙間調整ケーシング201下端のテフロン樹脂板203bの先端縁位置が摩耗してロータリー隙間Xがエアーシリンダー式間隙調整機構401の対応範囲を超えないように、いつでも調整ナット305で隙間調整ケーシング201を下降させその下端のテフロン樹脂板203b先端縁をロータリーに押し付けて回転羽根106の回転で自己研削しその回転羽根106の摩耗曲線に沿った形状にすることを繰り返すことにより長期運転を有利に可能にしている。
[エアーシリンダー式間隙調整機構401の説明]
エアーシリンダー式間隙調整機構401は、圧縮バネ式支持機構301でセットした隙間調整ケーシング201を4.9mm下降させそのロータリー隙間Xを 0.1mmに自動設定し維持するものであり、竪型配置したエアーシリンダー部403の先端の粉体衝突部403aに摩耗防止のステライト♯1〜♯6の硬化肉盛したエアーシリンダー機構402と、角筒パイプ103に固定接続配置して竪型配置のエアーシリンダー機構402のシリンダー部403を支持しエアー配管404、405を埋設し且つ表層にステライト♯1〜♯6を硬化肉盛して上端45〜60°の鋭角にした十字梁406と、隙間調整ケーシング201に固定接続配置して竪型配置のエアーシリンダー機構402のピストンロッド407の先端に中央部を接続する十字支持梁409と、前記エアーシリンダー機構402へのと圧力空気給排機構から構成したものである。
【0021】
圧力空気給排機構は、図6に示す用に、エアーフィルター409aとレギュレター409bと圧力超精密コントロール用の電磁弁409cとからなり、隙間調整ケーシング201の下端縁位置によるロータリー隙間Xを例えば0.1〜0.3mmに保持されるエアーシリンダー部403内のピストン部408位置を一定に精度良く保持するものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、製鋼転炉等の炉上のように高温度で粉塵の多い悪環境下に曝される精錬用粉体添加用に供して、ロータリー隙間Xを小さくしても、熱膨張による圧接摩耗や高温による焼付きや異常摩耗を皆無にし、ロータリーと隙間調整ケーシング201下端縁とのロータリー隙間Xを常に所定の管理範囲内に精度良く調整することが出来る。
このため、粉体用ロータリーフィーダーの本来の定量切り出し機能つまり粉体添加量精度を高位に安定維持し製鋼転炉などにおける溶鋼成分調整を極めて精度の良いものとする。又、煩雑で多大な時間と労力を必要とするロータリー部やそのケーシングの交換や肉盛溶接による補修作業は、長期に亘って不要となる等の優れた効果を呈するものであり、各種粉体を取り扱う粉体用ロータリーフィーダー使用の製造業、搬送業界等においての利用可能性は多大なものがある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の1実施形態を示す正面からの縦断面説明図である。
【図2】図1の側面からの縦断面説明図である。
【図3】図1の隙間調整ケーシングの平面説明図である。
【図4】図1の角筒状本体の製作説明図である。
【図5】図1の圧縮バネ式支持機構の拡大詳細説明図である。
【図6】図1のエアーシリンダー機構への圧力空気供排機構を示す概念図である。
【符号の説明】
【0024】
100 粉体ホッパー
101 レジューサー
102 丸角短菅
103 第一導入ケーシング
104 第二導入ケーシング
105 メッキしたロータリーケーシング
106 回転羽根
107 ロータリー
108 排出菅
X ロータリー隙間
201 隙間調整ケーシング
301 圧縮バネ式支持機構
401 エアーシリンダー式間隙調整機構
202 フランジ
205 矩形間隙リング
203 角筒状本体
203a 金属板
203b テフロン(商標)樹脂板
206 ビール栓状クラウン
210 硝子・カーボン繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を貯留する粉体ホッパーの下部に粉体導入ケーシングを介して横円筒形のロータリーケーシングを連結し同ロータリーケーシングに回転羽根を周設したロータリーを内設すると共に排出菅を連設した粉体用ロータリーフィーダーにおいて、下端縁を上記ロータリーの回転羽根先端の回転奇跡面に接近離間させる隙間調整ケーシングを上記粉体導入ケーシング内に昇降可能に設け、前記隙間調整ケーシングを保持しその基本位置をセットする圧縮バネ式支持機構と、隙間調整ケーシングを保持し前記回転羽根先端の回転奇跡面に対する下端縁位置を所定間隔位置に設定保持するエアーシリンダー式間隙調整機構とを粉体導入ケーシングに取り付けたことを特徴とする粉体用ロータリーフィーダー。
【請求項2】
前記隙間調整ケーシングの少なくとも下部は、金属板の内側にテフロン樹脂板を配設固定したことを特徴とする請求項1に記載の粉体用ロータリーフィーダー。
【請求項3】
前記隙間調整ケーシングの基本位置をセットする圧縮バネ式支持機構は、粉体導入ケーシングの外壁側に設け、前記隙間調整ケーシングの下端縁位置を所定間隔位置に設定保持するエアーシリンダー式間隙調整機構は、粉体導入ケーシングの内空部中央部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の粉体用ロータリーフィーダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−137776(P2008−137776A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326002(P2006−326002)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】