説明

粉末を精密に計量する気化装置

【課題】
【解決手段】微粒子材料を気化するための装置は計量装置を備え、計量装置は、貯留室130aと;内部容積空間150と、微粒子材料を収容する第1の開口部、吐出する第2の開口部160とを有するハウジング140と;内部容積空間内に配置される回転式シャフト170であり、滑らかな表面と、貯留室からの微粒子材料を収容し、微粒子材料を吐出するための外周溝とを有する、シャフトと、微粒子材料が外周溝によって輸送され、回転式シャフトの残りの部分に沿って輸送されないように協動する、回転式シャフト及び内部容積空間と;第2の開口部160との関連で配置され、端部おいて、回転式シャフト内の溝と実質的に同じ断面を有するスクレーパであり、溝と協動して該溝の中に保持される微粒子材料を取り除き、シャフトが回転するのに応じて、計量された量の微粒子材料を第2の開口部160を通じてフラッシュ蒸発器120aに送達する、スクレーパとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化装置に供給される粉末材料を、広範な供給量にわたって計量することに関する。
【背景技術】
【0002】
少量、たとえば、1マイクログラム/秒〜9マイクログラム/秒の粉末材料を正確、且つ精密に連続して計量できることが必要とされている。エレクトロニクス産業では、直に蒸着するために、又は化学気相成長(CVD)の前駆物質を得るために、気化ゾーンへの少量の粉末材料を計量することが必要とされている。さらには、3桁大きな材料量、たとえば、1000マイクログラム/秒を正確、且つ精密に計量できることも必要とされている。多くのシステムにおいて、同じ装置で1マイクログラム〜1000マイクログラムの範囲にわたって粉末材料を計量できれば好都合であろう。たとえば、有機発光ダイオードデバイス(OLED)は発光層を有し、その層は多くの場合にホスト及びドーパントを含み、ホスト及びドーパントは2桁〜3桁だけ大きさが異なる量で堆積される。ホスト、共同ホスト及びドーパント材料に対して共通の輸送設計を用いて、OLED製造時に、気化領域への粉末有機材料を個別に、且つ連続的に計量することができれば、極めて好都合であろう。
【0003】
少量の粉末材料を精密に計量することが難しいことはよく知られている。粉末材料を輸送するのを容易にするために担体及び添加剤として付加的な材料を利用する数多くのシステム例がある。使用されてきた担体は、不活性ガス、液体及び固体を含む。いかなる種類の添加剤を使用することも材料輸送をさらに複雑にする。これは、担体又は添加剤は、対象となる実際の材料とは別に追加され、除去され、且つ処理される必要があるためである。担体を使用することは、汚染される危険性も高める。汚染は、材料を計量することが特に必要とされている製薬及びエレクトロニクス製造業界において特に有害である。
【0004】
特許文献1において、Fleischnerは、不活性担体と混合されている粉末材料を輸送するためのオーガデバイス(auger device)を記述しており、不活性担体は砂であることが好ましい。活性材料と砂との比は1:9であると報告される。実質的に不活性の担体である混合物を輸送することは、システムのコストを高め、システムを複雑にし、さらには材料供給物に汚染物を導入する危険性を高める。
【0005】
同じ譲受人に譲渡される特許文献2及び特許文献3は、従来のオーガ設計を用いて粉末を計量しており、滑らかな胴部内にパターン化されたスクリューが存在する。図1は、滑らかな胴部7内のパターン化されたオーガスクリュー5を示す典型的な従来技術のオーガ構造の断面図を示す。オーガ構造8のオーガスクリュー5をモータ(図示せず)によって回転させる。スクリュー螺旋部のねじ山間の距離及びねじ山の高さは、粉末が螺旋部の中にいっぱいに詰まり、螺旋部と共に回転するのではなく、水平に向けられるオーガ胴部7の底面にとどまり、オーガスクリュー5とオーガ胴部7との間の相対的な動きによって直線的に輸送されるようになるほど十分に大きくなるように選択される。図に示されるような水平の向きでは、粉末材料は主にオーガスクリュー5の底面に沿って、揺れ動きながら分散した形で進行する。オーガスクリュー5の終端部は、図に示されるようにねじ山がない部分9を有するように構成することができ、その部分は短い長さにわたって一定の円形の断面を有し、固められた粉末を閉じ込めて、細い環状又は管状の形状を形成する。このタイプのオーガ構造を粉末と共に用いる場合の問題のうちの1つは、吐出量が変化することである。吐出量は、オーガスクリュー5の角方向と共に周期的に変化することが観測されている。1回転する度にオーガによって吐出される材料の量は完全に再現可能であるが、1回転の中では大きく変動する。水平の向きでは、オーガ胴部の上半分よりも下半分に多くの粉末が存在するので、これが周期的な吐出をさらに顕著にする傾向がある。オーガ胴部の内部にわたって粉末が均等に分散されるように垂直な向きにおいてオーガを用いることによって、周期的な吐出を弱めることができるが、周期的変動はそのままであり、オーガ及びアジテータのための機械的な駆動構成がさらに複雑になる。
【0006】
本開示の計量デバイスは、大型の蒸着システムの1つの部品として用いることもできる。特に対象となる蒸着システムは、有機発光ダイオード(OLED)デバイスを製造するために設計されるシステムである。OLEDデバイスは基板と、アノードと、有機化合物から形成される正孔輸送層と、適切なドーパントを用いる有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードとを備える。OLEDデバイスは、駆動電圧が低く、輝度が高く、視野が広く、且つフルカラーフラット放出ディスプレイとして用いることができるために魅力的である。Tang等が、米国特許第4,769,292号明細書及び第4,885,211号明細書においてこの多層OLEDデバイスを記述した。
【0007】
真空環境における物理気相成長が、小分子OLEDデバイスにおいて用いられるような薄い有機材料薄膜を堆積する主な方法である。そのような方法は既知であり、たとえば、Barrによる米国特許第2,447,789号明細書及びTanabe等による欧州特許第0982411号明細書を参照されたい。OLEDデバイスの製造において用いられる有機材料は、多くの場合に、気化速度に応じた所望の気化温度に、又はその近くに、長期間にわたって保持されるときに分解を受ける。敏感な有機材料をさらに高い温度に曝露することによって、分子の構造が変化し、それに関連して、材料特性が変化する可能性がある。
【0008】
これらの材料の熱敏感性を克服するために、蒸発源に少量の有機材料だけを装填しており、それらの材料ができる限り加熱されないようにする。このようにして、その材料は、温度曝露しきい値に達して著しい分解が生じる前に消費される。この手法に伴う制約は、ヒータ温度の制限に起因して利用可能な気化速度が非常に低いこと、及び蒸発源内に存在する材料が少量であることに起因して蒸発源の動作時間が非常に短いことである。従来技術では、堆積チャンバに通気し、蒸発源を分解して洗浄し、蒸発源を再び満たして、堆積チャンバ内を再び真空にし、動作を再開する数時間前から、導入されたばかりの有機材料のガス抜きをすることが必要とされている。蒸発源を再充填することに関連して、堆積速度が低くなること、及びその工程を頻繁に実施し、時間がかかることが、OLED製造設備のスループットを大きく制限している。
【0009】
有機材料の装填量全体を実質的に同じ温度まで加熱することからの派生的な結果は、ドーパントの気化時の振舞い及び蒸気圧が、ホスト材料の気化時の振舞い及び蒸気圧に極めて近い場合を除いては、ドーパントのような付加的な有機材料と、ホスト材料との混合が実行不可能であることである。さらに、別個の蒸発源を標準的に使用することは、堆積された薄膜内に勾配効果を生み出し、前進している基板に最も近い蒸発源内の材料が、基板に隣接する初期薄膜において過剰に示され、一方、最後の蒸発源内の材料が最終薄膜表面において過剰に示される。この勾配共堆積は、多数の蒸発源のそれぞれから単一の材料が基板上に直に蒸着される従来技術の蒸発源では避けることはできない。堆積された薄膜内の勾配は、共同ホストが用いられるときのように、終端蒸発源のいずれかの寄与が中央蒸発源の数パーセントより高いときに特に明らかである。図2は、そのような従来技術の気化デバイス10の断面図を示しており、そのデバイスは、有機材料を気化するための3つの個別の蒸発源11、12及び13を含む。蒸気柱14は異なる蒸発源からの材料において均質であることが好ましいが、実際には、左右の組成が異なる結果として、基板15上のコーティングが不均質になる。
【0010】
同じ譲受人に譲渡される特許文献4及び特許文献5は、フラッシュ蒸発ゾーンへの材料を計量することによって別個の点蒸発源を使用する短所の多くを克服する。特許文献4は、単一の粉末輸送機構においてホスト及びドーパントの混合物を計量すること、及びマニホールドを用いて、蒸気を基板に分配することを教示する。特許文献5は、マニホールド内で有機物蒸気を混合し、材料の混合物を基板表面に送達できることを開示する。しかしながら、これらの先行する教示はいずれも、ホスト材料及びドーパント材料のための個別の計量制御を有する必要があることを考慮していない。それゆえ、その輸送機構は、設計によって、個別にドーパント供給のために要求される、低速度、1マイクログラム/秒〜10マイクログラム/秒において計量することができない。
【0011】
特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9は、入口ポートから吐出ポートまで容積が増加していく内部空洞を有するハウジング内で回転する、平行に間隔を置いて配置される円板を用いて、入口ポートから吐出ポートまで粉末を移動させるための粉末供給ポンプを開示する。これらの粉末供給ポンプは、はるかに大きな粒径の粉末と共に用いることが意図されており、ミリグラム又はマイクログラム単位で粉末を計量するようになっていない。
【0012】
気化装置内に供給されるミリグラムないしマイクログラム単位の粉末材料量の計量を精密に制御することが引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,754,529号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0062918号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0177576号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0062918号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0062919号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0084700号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0157322号明細書
【特許文献8】米国特許第6,832,887号明細書
【特許文献9】米国特許第7,044,288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、本発明の目的は、気化デバイスに供給されるミリグラムないしマイクログラム単位の粉末量の計量及び送達を精密に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本目的は、微粒子材料を気化するための装置であって、
(a)計量装置であって、
(i)微粒子材料を収容するための貯留室と、
(ii)内部容積空間を有し、貯留室からの微粒子材料を収容するための第1の開口部と、微粒子材料を吐出するための第2の開口部とを有するハウジングと、
(iii)内部容積空間内に配置される回転式シャフトであって、該シャフトは滑らかな表面と、貯留室からの微粒子材料を収容するための第1の開口部、及び微粒子材料を吐出するための第2の開口部と位置合わせされる外周溝とを有する、シャフトと、
(iv)微粒子材料が外周溝によって実質的に輸送され、回転式シャフトの残りの部分に沿って輸送されないように協動する、回転式シャフト及び内部容積空間と、
(v)第2の開口部との関連で配置され、その端部おいて、回転式シャフト内の溝と実質的に同じ断面を有するスクレーパであって、該スクレーパは、溝と協動して、該溝の中に保持される微粒子材料を取り除き、シャフトが回転するのに応じて、計量された量の微粒子材料を第2の開口部を通じて送達する、スクレーパとを備える、計量装置と、
(b)計量された材料を受け取り、気化するフラッシュ蒸発器とを備える、微粒子材料を気化するための装置によって達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の利点は、これまで可能であったものよりも均一な、少量の粉末材料の調整可能な被制御計量(controlled metering)及び気化を提供できることである。本発明の微粒子材料輸送装置は、1マイクログラム/秒のような少量の粉末材料、及び最大で1000マイクログラム/秒のようなはるかに大きな量を送達できるという点で独自の特徴を有する。本発明のさらなる利点は、不活性ガス、液体又は固体のような担体を使用することなく、粉末を均一に計量できることである。本発明のさらなる利点は、有機材料の装填量を絶えず補充しながら、且つ蒸発源材料が消費されるのに応じて必要とされるヒータ温度変化を用いることなく、安定した気化速度を保持できることである。本発明のさらなる利点は、微粒子材料が材料貯留室及び輸送装置内で室温に保持され、関連する気化装置に吐出されるときにのみ加熱されることである。そのデバイスによれば、温度に非常に敏感な有機材料であっても分解のリスクを大きく低減しながら、従来技術のデバイスの場合よりも、蒸発源が、大幅に高い気化速度で長く動作できるようになる。本発明のさらなる利点は、ドーパント供給量及びホスト供給量を個別に制御するために気化システムにおいて用いることができることである。本発明のさらなる利点は、気化を迅速に開始及び停止できるようにすることである。本発明のさらなる利点は、制御された蒸気量を送達することができ、それによって、エリア堆積過程において堆積される薄膜厚を制御できることである。本発明のさらなる利点は、任意の方向において蒸気源を提供できることである。これは、従来技術のデバイスではしばしば不可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術の気化デバイスの断面図である。
【図2】従来技術の粉末供給装置の終端の断面図である。
【図3】本発明による装置の一実施形態の一部を切り取った図である。
【図4】図3の本発明の装置の一部の断面図である。
【図5】図3の本発明の装置の一部の立体断面図である。
【図6】本発明による装置の別の実施形態の立体断面図である。
【図7】本発明による装置の別の実施形態の立体断面図である。
【図8】本発明による装置の別の実施形態の断面図である。
【図9】本発明による装置の別の実施形態の一部を切り取った図である。
【図10】本発明の装置による、時間と共に蓄積される微粒子材料送達重量の測定結果を示す図である。
【図11A】本発明による、時間と共に堆積される薄膜厚の一連の測定結果を示す図である。
【図11B】図11Aからの1つの堆積サイクルの拡大図である。
【図12】本発明による装置の別の実施形態の立体断面図である。
【図13】蒸着するための基板を有する本発明の装置の断面図である。
【図14】本発明の装置によって準備することができる発光デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで図3を参照すると、本発明による装置の一実施形態の一部を切り取った図が示される。気化装置100は微粒子材料を気化するための装置である。気化装置100は計量装置を含み、その計量装置は、微粒子材料を収容するための貯留室と、内部容積空間並びに第1の開口部及び第2の開口部を有するハウジングと、内部容積空間及び外周溝の形状に対応する形状を有する、内部容積空間内に配置される回転式シャフトと、その端部において、回転シャフト内の溝と実質的に同じ断面を有するスクレーパとを備える。これらの構成要素をさらに詳細に説明する。貯留室130aは微粒子材料を収容するためのものである。微粒子材料は、単一の成分を含むことができるか、又は2つ以上の異なる材料成分を含み、それぞれが異なる気化温度を有することができる。図には示されないが、貯留室130aは、装填することができる微粒子材料の量を増やすために、大きな貯蔵室と、その上方にある供給装置とを備えることができる。そのようなコンテナ及び供給装置は、同じ譲受人に譲渡される米国特許第7,288,285号明細書においてLong等によって記述されている。貯留室130aはハウジング140内にあり、貯留室130a内の微粒子材料を流動化するアジテータ190aを含む。ハウジング140は、アルミニウムのような熱伝導性の材料から構成されることが好ましく、それは能動的に冷却することができ、貯留室130a内の微粒子材料を微粒子材料の実効的な気化温度よりも十分に低い温度に保持するための役割を果たす。回転式シャフト170の送込み部分の近くにある微粒子材料が攪拌によって流動化されるときに、供給量の均一性が改善される。これは、微粒子材料をアジテータ190aによってゆっくり攪拌することによって、又はたとえば、微粒子の液体的振舞いを引き起こすように調整されるが、気体的振舞いを生じさせるほど強力ではない圧電構造により、振動を引き起こすことによって果たすことができる。アジテータ190aは回転式の螺旋ワイヤとすることができ、それは、粉末にほとんどエネルギーを与えないように、成分が混在する粒子材料を供給することに良好に適応しており、それゆえ、サイズ又は密度によって粒子分離を引き起こす可能性はない。最良の結果を得るために、アジテータ190aは、回転式シャフト170から0.01mm〜2mmだけ離隔して配置され、シャフト170の表面に実質的に接することが望ましい。アジテータ190aの回転速度は、特定の微粒子材料の粒径及び特性に依拠して変えることができる。
【0019】
ハウジング140は、内部容積空間150も含む。回転式シャフト170は、滑らかな表面と、内部容積空間150の形状に対応する形状、例えばこの実施形態では円柱形とを有し、内部容積空間150内に配置される。回転式シャフト170は外周溝も有し、それは後の図面において明らかになる。回転式シャフト170は熱伝導性材料、たとえば、ニッケルから構成されることが好ましく、その材料は能動的に冷却することができ、且つ外周溝内の微粒子材料を微粒子材料の実効的な気化温度よりも十分に低い温度に保持するための役割を果たす。窒化チタン又はダイヤモンドライクカーボンのようなハードコーティングが内部容積空間150及び回転式シャフト170に被着されることが好都合である。モータ180が、回転式シャフト170を所定の速度で回転させる。モータ180は、アジテータ190aを回転させるために用いることもできる。ハウジング140は、第1の開口部及び第2の開口部も含み、その開口部の特性及び機能は後に明らかになる。気化装置100は、蒸発器筐体210内にフラッシュ蒸発器120aも備える。気化装置100はさらにオプションとして圧力センサ230を備えることができ、圧力センサは、材料の気化速度を監視するために用いることができる。
【0020】
ここで図4を参照すると、回転式シャフト170の外周溝の平面において、図3の本発明の装置の一部の断面図が示される。ハウジング140は第1の開口部155及び第2の開口部160を有する。回転式シャフト170内の外周溝175が、第1の開口部155及び第2の開口部160と位置合わせされる。回転式シャフト170は、ただ1つの溝を含むことが望ましい。第1の開口部155は、貯留室130aからの微粒子材料を外周溝175の中に入れる。溝175内に微粒子材料を満たし、圧縮するために貯留室130a内に配置されるデバイスを含むことが望ましい。アジテータ190aは、貯留室130a内の微粒子材料を流動化するための役割を果たし、第1の開口部155において微粒子材料を掃引して溝175の中に入れることによって、この機能を果たすこともできる。回転式シャフト170は、この実施形態では反時計回りに回転する。微粒子材料の計量された量をフラッシュ蒸発器120aに送達するために、第2の開口部160は、微粒子材料を外周溝175から吐出できるようにする。外周溝175の寸法、微粒子材料の寸法及び回転式シャフト170の回転速度によって、フラッシュ蒸発器120aへの微粒子材料を計量する速度が決まる。外周溝175は、0.01mm〜2mmの範囲の幅と、0.01mm〜5mmの深さとを有することが好ましい。シャフトが回転するのに応じて溝175と協動し、溝内に保持される微粒子材料を取り除いて、計量された量の微粒子材料をフラッシュ蒸発器120aに送達するために、第2の開口部160に関連してスクレーパ185が配置される。フラッシュ蒸発器120aは計量された材料を収容し、気化する。フラッシュ蒸発器120aは、望ましくは、同じ譲受人に譲渡される米国特許出願第11/834,039号明細書においてLong等によって記述されるような網状ガラス質炭素、又は網状ニッケル、タングステン、チタン、モリブデン若しくはタンタルである。フラッシュ蒸発器120aは、直に加熱することができる。代替的には、蒸発器筐体210を加熱することができ、それにより、スクレーパ185も加熱することができる。貯留室130a及びハウジング140は能動的に冷却することができる。外周溝175及び、その中で運ばれる微粒子材料は、能動的な冷却によって粉末材料の所望の気化温度未満の温度に保持することができる。微粒子材料のうちのわずかな部分、すなわち、第2の開口部160に達し、そこを通って落下する部分のみが、気化速度に応じた気化温度まで加熱され、一方、材料の大部分は気化温度より十分に低い温度に保持されるので、回転式シャフト120aの回転を停止及び開始することによって、気化を迅速に停止及び開始することができる。有機材料を保存し、且つ堆積チャンバの壁部のような任意の関連する装置の汚染物質を最小限に抑えるために、基板表面がコーティングされていないときに気化を停止することができ、それは後に説明する。これは、温度を用いて気化速度を制御し、迅速に気化速度を停止及び開始できないか、又は迅速に気化速度を変更できない従来技術のデバイスよりも優れている点である。ハウジングへの熱伝達を低減するために、蒸発器筐体210とハウジング140との間に断熱材220を有することも有用である。断熱材220は、Cogebi Groupによって市販されるような合成雲母、断熱セラミック材料、薄い間隙、又は単に筐体210とハウジング140との間の接触を少なくすることを含むことができる。
【0021】
高温、すなわち、気化速度に応じた気化温度に材料が滞留する時間は、数多くの従来技術のデバイス及び方法よりも数桁少なくなり(従来技術では数時間又は数日であるのに対して、数秒)、それにより、従来技術の場合よりも高い温度まで材料を加熱できるようになる。したがって、従来技術のデバイスよりも曝露時間と温度との積が著しく小さいので、このデバイス及び方法は、有機材料成分の感知できるほどの分解を引き起こすことなく、大幅に高い気化速度を達成することができる。
【0022】
ここで図5を参照すると、図3の本発明の装置の一部の立体断面図が示される。溝から微粒子材料を最もうまく取り除くために、スクレーパ185が、その端部において外周溝175と実質的に同じ断面を有することが明らかである。
【0023】
本発明の目的を果たすために、回転式シャフト170による微粒子材料の移送を外周溝175の領域に制限することが重要である。回転式シャフト170及び内部容積空間150が協動して、微粒子材料が外周溝175によって実質的に輸送され、回転式シャフト170の残りの部分に沿って輸送されないようにする。これは、外周溝175の外部にあるシャフト170の全ての部分から微粒子材料を実質的に移送させないようにするために、回転式シャフト170とハウジング140との間の間隔が微粒子材料の平均粒径よりも小さくなるように選択されることを意味する。
【0024】
第2の開口部160の大きさは、回転式シャフト170内の外周溝175と実質的に同じ幅を有するように構成され、その開口部は、蒸発器筐体210の中に入るほど大きくなる断面積を有し、スクレーパ185によって溝から取り除かれた材料を、開口部の壁面に粘着することなく蒸発器筐体210の中に落下させるようにする。ハウジング140及び蒸発器筐体210の両方の回転式シャフト170、スクレーパ185及び第2の開口部160が隣接するか、又は少しだけ接触することによって、容積式の計量構成が作り出され、それにより、重力に依存することなく、材料が溝から蒸発器筐体210の中に押し出される。
【0025】
本開示の材料供給及び気化デバイスは、図3〜図9に示されるように、溝を刻まれたシャフトが水平であるときに微粒子材料を輸送するのに有効であるが、他の向きにおいて用いることもできる。微粒子材料は溝に押し込まれ、多くの材料にとってその動作が重力に依存しなくなるほど十分にその中に保持される。この微粒子材料保持力は、スクレーパが微粒子材料を取り除くのに必要であり、微粒子材料が重力に逆らって垂直方向上向きに計量分配されるようにするのに十分である。溝を刻まれたシャフトが垂直に向けられる実施形態では、微粒子材料は、第2の開口部160から、蒸発器筐体210の次第に細くなる壁面に沿って、微粒子材料を受け取るような向きに配置されるフラッシュ蒸発器120a上に落下する。これらの特徴は、成分が混在する有機材料、及び気化する前に液化する有機材料の被制御気化を可能にするのに重要である。
【0026】
実験的には、細かい粉末ほど、大気の半分未満の部分真空において計量するのが非常に難しいことが観測されている。残留空気分子が除去されるのに応じて、粉末は凝集し、流動可能な粉末ではなく、固体に似た振舞いを示す。このような傾向があるにもかかわらず、本開示の材料供給及び気化デバイスは、粒径のばらつきが50ミクロン未満である粉末、並びに粒径のばらつきが50ミクロン〜100ミクロン及び100ミクロン〜200ミクロンであるように準備された粉末を計量分配できることを立証した。
【0027】
凝縮が材料供給問題及び材料分解又は断片化(fractionalization)の主な原因であるため、粉末供給気化システムにおける凝縮を管理することが極めて重要である。蒸発器筐体210への第2の開口部160は、材料が通過して蒸発器筐体に入ることができるようにするほど十分に大きくされるが、1mm未満の直径であり、その開口部は意図的に、蒸気の逆流に対して低い伝導性を有するようになされる。第2の開口部160において、外周溝175内の材料は、圧縮された粉末の形をとり、蒸気シールとしての役割を果たし、周囲の真空レベルよりも高い圧力を有する蒸発器筐体内の気化された材料が、外周溝175にそって微粒子材料貯留室に逆流するのを防ぐ。スクレーパ185が凝縮を防ぐのに十分な温度に保持されるが、少量の蒸気が、依然として溝内にある微粒子材料の冷たい面において凝縮する。材料蒸気は、溝に直接隣接する冷却されたシャフト上でさらに凝縮する。しかしながら、このデバイス内の全ての凝縮場所は自己制限的であり、非常に小さな面積に限られる。初期の気化時間後に、単位回転当たりの材料供給は安定する。溝内の微粒子材料の冷たい面において凝縮する蒸気は、溝から材料を取り除くためにシャフトがさらに回転すると直ぐに、気化される。溝内で凝縮する任意の蒸気は、加熱されたスクレーパと接触する場所に蓄積することができ、シャフトが回転するのに応じて溝から機械的に除去される。その凝縮物は、溝寸法がスクレーパ寸法に完全に一致するまで、溝寸法を実質的に小さくする。それゆえ、凝縮物蓄積は自己制限的である。同様に、シャフト上で凝縮する蒸気は、機械的に干渉するまで蓄積することになり、第1及び第2の開口部の鋭いエッジによって除去され、同様に、安定した自己制限的寸法に達する。
【0028】
この構成は、外周溝175の温度と、スクレーパ185を備える蒸発器筐体210の温度との間の微粒子材料の達成可能な温度勾配を大幅に高める。この勾配は、成分が混在する材料の大部分の体積から、揮発性の高い成分が普通に浸出するのを防ぎ、単一の蒸発源が多数微粒子材料を共堆積できるようにする。この大きな勾配は、100℃程度の低い温度において液化する材料を利用する場合であっても、第2の開口部160に達するときに、微粒子材料を固化した粉末の形に保持するのにさらに役立つ。所望の量の材料が計量された後に、回転式シャフト170を、数度だけ逆方向に回転させて、外周溝175内の微粒子材料をスクレーパ185との接点から分離し、冷却されたハウジング140内の材料を蒸発器筐体210によって放射される放射熱から保護することができる。この動きは、全ての微粒子材料に対して大きな熱勾配を保持するのにさらに役立つ。露出した溝の空いている部分において凝縮する少量の蒸気は、回転式シャフト170が供給方向において再び回転するときに、スクレーパ185によって除去される。
【0029】
実際には、気化装置100は以下のように用いられる。微粒子材料が貯留室130a内に収容される。上記のような回転式シャフト170が、上記のようにハウジング140内に形成される内部容積空間150内で回転し、それにより、外周溝175が第1の開口部150を通じて貯留室130aから微粒子材料を受け取り、それを第2の開口部160から吐出する。スクレーパ185が外周溝175から微粒子材料をすくい取り、計量された量の微粒子材料を、第2の開口部160を通じて蒸発器筐体210及びフラッシュ蒸発器120aに送達し、そこで、計量された微粒子材料はフラッシュ蒸着される。いくつかの実施形態では、スクレーパ185の位置を調整して、第2の開口部160を通じて送達される、計量される材料の量を制御することができる。
【0030】
ここで図6を参照すると、本発明による装置の別の実施形態の一部の立体断面図が示される。この実施形態では、楔形の入口125を設け、微粒子材料が回転式シャフト170の回転方向において外周溝175に流れ込むのに応じて微粒子材料を多少圧縮するように、ハウジング140の一部が形作られる。ここで図7を参照すると、本発明による装置の別の実施形態の一部の立体断面図が示される。この実施形態では、ハウジング140は、同じく、楔形の入口135を有する。しかしながら、楔形の入口135は、回転式シャフト170の回転方向において、さらには回転に対して垂直な方向においても、微粒子材料を外周溝175の中に圧縮するように形作られる。これは、図6の楔形の入口125において起こり得る、ハウジングと回転式シャフトとの間に材料が捕らえられる可能性を小さくする。
【0031】
ここで図8を参照すると、本発明による装置の別の実施形態の断面図が示される。この実施形態では、ハウジング140に可撓性壁部145が取り付けられ、その中に回転式シャフト170が配置される内部容積空間240の周囲の少なくとも一部が配置される。この図では、その壁部は、回転式シャフト170がそこに向かって回転している内部容積空間の部分を提供し、それゆえ、外周溝175の領域の外部に捕らえられた微粒子材料に最初に接することになる内部容積空間240の部分である。回転式シャフト170及び内部容積空間240がいずれも硬質である場合には、捕らえられた微粒子材料は、シャフト170と内部容積空間240との間で粉末が押し潰されるのに応じて、回転式シャフト170と内部容積空間240との間の接触力を高める傾向がある。これは、回転式シャフト170を回転させるために必要とされるトルクを許容限界を超えて高める可能性がある。可撓性壁部145を使用することによって、そのような事象が生じても内部容積空間240に対して幾分かの可撓性を与えるので、摩擦を小さくすることができる。可撓性壁部145は、金属、たとえば、アルミニウム、ニッケル、鋼、チタンから、又はセラミック材料、たとえば、安定化ジルコニアから構成することができ、相対的に硬質であるが、計量される粒子に適合するだけの十分な変形性を有する。同様に、回転式シャフトが径方向に少しだけ撓むように設計される場合も同じ結果を達成することができる。また、図8に示される実施形態は、スクレーパエッジ260と、内部容積空間240の粉末収集空洞270の部分とを含み、それらは、回転式シャフト170と、外周溝175の外部にある内部容積空間240との間で運ばれる余分な微粒子材料を除去し、収集するための役割を果たす。このように、この実施形態では、回転式シャフト170が、内部容積空間240全体に対応する形状を有するのではなく、回転式シャフト170及び内部容積空間240が協動して、微粒子材料が外周溝によって実質的に輸送され、回転式シャフト170の残りの部分に沿って輸送されないようにする。回転式シャフト170と、外周溝175の外部にある内部容積空間240との間で運ばれる可能性がある任意の余分な微粒子材料は、第2の開口部を通じて送達されることはほとんどなく、フラッシュ蒸発器によって受け取られることも、気化されることもほとんどない。内部容積空間240又は回転式シャフト170が径方向において可撓性を有する場合、シャフト及び内部容積空間に粉末が全くないときよりも駆動トルクがさらに低いので、内部容積空間240と回転式シャフト170との間に非常に細かい微粒子材料の層を有することが好都合であることがある。
【0032】
ここで図9を参照すると、本発明による装置の別の実施形態の一部を切り取った図が示される。回転式シャフトの形状、及びその中にシャフトが配置される内部容積空間の形状は、円柱形には限定されない。それらは他の形状、たとえば球形又は円錐形を有することができ、その一実施形態が回転式シャフト195によって示される。回転式シャフト195の円錐形の形状は、シャフトの軸方向の位置を変更することによって、回転式シャフトとハウジングとの間の間隔を調整できるようになるという利点を有する。粒径に基づいて、内部容積空間に対する回転式シャフトの軸方向の位置を調整して、種々の微粒子材料に最も適合するようにし、材料の平均粒径よりも小さな間隔を選択することができる。この調整は、種々の粒径を有する異なる微粒子材料を計量するときに有用であることがある。
【0033】
ここで図10を参照すると、本発明の装置による、時間と共に蓄積される微粒子材料の送達の重量の測定結果が示される。これらの測定値を得るために用いられる実施形態は図3〜図5において示される。幅が0.5mmであり、深さが0.35mmである外周溝を有する6.35mm径の円柱形シャフトが用いられた。図10は、0.1回転/秒のシャフト回転速度の場合の、43μg/秒の速度での微粒子材料の送達に関する詳細図を提供する。その実験は、1μTorrの減圧条件下で行なわれた。デジタル電子はかりを用いて、計量分配された粉末重量を測定した。デジタルはかりは、マイクログラムではなく、ミリグラムの分解能を有する。デジタルバランスの分解能が限られることに起因して、そのトレースは打切りを示すが、そのトレースは実質的に直線を示し、その勾配は、0.1回転/秒のシャフト回転において、43μg/秒の平均材料供給量を示す。この場合、外周溝は、430マイクログラム/回転、又は1.2マイクログラム/シャフト回転角度を供給する。その材料供給試験は、同じ材料の異なる粒径範囲に関して0.1回転/秒のシャフト回転速度において繰り返され、その結果が表1に示される(以下)。細かい粒子は、溝内で粒子が充填率がより高くなることにおそらく起因して、粗い粒子の実質的に2倍の速度で供給されるのが観測された。その実験測定結果を長時間にわたって記録して、そのはかりのミリグラム桁よりも細かい分解能まで、平均実効粉末計量速度を求めた。
【0034】
【表1】

【0035】
数多くの応用例において、この精密な計量能力は制御システムを簡単にすることができ、計量された量の材料の重さを実際に測定することを必要とせずに、モータ速度又はモータ回転数だけで、材料供給量の十分に正確な指標が与えられるようにする。
【0036】
ここで図11Aを参照すると、断続供給モードにおいて動作するときの、本発明による、堆積された薄膜厚対時間の測定結果が示される。これは、気化が迅速に開始されること、及び最終的な堆積厚がサイクル毎に再現可能であることを示す。図11Bは、図11Aからの1つの堆積サイクルの拡大図である。この図では、回転式シャフトは、時間T=1.5秒において開始して2秒間、微粒子材料を計量し、その後、時間T=3.5秒において停止された。計量が停止された後に、約15秒間、堆積が続けられ、結果として、全17秒間に、38nmの厚みを有する薄膜が堆積された。
【0037】
ここで図12を参照すると、本発明による装置の別の実施形態の立体断面図が示される。気化装置200は、複数の微粒子材料を気化するための装置である。気化装置200は、2つの別個の計量装置を含み、それぞれ微粒子材料を収容するための貯留室と、内部容積空間並びに第1及び第2の開口部を有するハウジングと、内部容積空間内に配置され、内部容積空間及び外周溝の形状に対応する形状を有する回転式シャフトと、その端部おいて、回転シャフト内の溝と実質的に同じ断面を有するスクレーパとを備える。これらの構成要素をさらに詳細に記述する。その装置は、異なる微粒子材料をそれぞれ収容するための2つの貯留室130b及び130cを含む。図には示されないが、貯留室130b及び130cは、装填することができる微粒子材料の量を増やすために、それらの上方にある大きな貯蔵室及び供給装置を備えることができる。各貯留室はハウジング205内にあり、微粒子材料を流動化するアジテータ(たとえば、190b及び190c)を備える。また、ハウジング205は内部容積空間215も含む。回転式シャフト225は、滑らかな表面と、内部容積空間215の形状に対応する形状とを有し、内部容積空間215内に配置される。また、回転式シャフト225は、各貯留室に対応する外周溝も有する。各外周溝の容積は同じにすることができるか、又は各異なる微粒子材料、たとえば、ホスト及びドーパント材料の異なる量を気化毎に異なる容積にすることができる。また、ハウジング205は第1及び第2の開口部と、各外周溝に対応して、第2の各開口部内にある上記のようなスクレーパとを含む。したがって、回転式シャフト225は、各計量装置に共通である。また、気化装置200は、共通の蒸発器筐体235内に2つの別個のフラッシュ蒸発器(たとえば、120b及び120cb)を含む。各フラッシュ蒸発器は、その対応する計量装置から、計量された材料を受け取り、気化するように配置される。1つの代替の実施形態では、その気化装置は、単一のフラッシュ蒸発器を含むことができ、それは、両方の計量装置から計量された材料を受け取り、気化するように配置される。気化装置200はさらに、オプションで圧力センサ230を含むことができ、そのセンサを用いて、材料気化速度を監視することができる。
【0038】
多数の計量装置を用いて気化する他の実施形態も可能である。たとえば、図3において示されるような気化装置100等の2つの並置される気化装置を利用することができ、それゆえ、計量装置毎に別個の回転式シャフトを含むことになる。この実施形態では、各外周溝は同じ容積か、又は異なる容積を有することができ、それにより、各異なる成分の相対的な量に対する総量制御を提供する。各シャフトは異なる速度で回転することができ、それにより、異なる成分の相対的な量の細かい制御も提供する。
【0039】
ここで図13を参照すると、蒸着するための基板と、基板を取り囲む堆積チャンバとを有する、本発明の装置の断面図が示される。堆積チャンバ280は、マニホールド250から移送される有機材料でOLED基板285をコーティングできるようにする閉鎖型装置である。上記のように、マニホールド250は、フラッシュ蒸発器120aを介して有機材料を供給される。上記の気化装置の他の部分は、明確に図示するために省略されている。堆積チャンバ280は、制御された条件、たとえば、真空源300によって与えられる1torr以下の圧力に保持される。堆積チャンバ280は、ロードロック275を備えており、ロードロックを用いて、未コーティングのOLED基板285を装填し、コーティング済みのOLED基板を取り出すことができる。OLED基板285は、並進/支持装置295によって保持されることができ、マニホールド250が気化された材料の均等なコーティングを提供し、OLED基板285の表面全体にわたって1つの層が凝縮され、形成されるようにする。マニホールドを有する気化装置が、堆積チャンバ280によって部分的に包囲されるように示されるが、微粒子材料を保持するための1つ又は複数の任意のコンテナを含む、気化装置全体が堆積チャンバ280によって完全に包囲される構成を含む、他の構成も可能であることは理解されよう。
【0040】
ここで図14を参照すると、本発明の装置を用いて部分的に準備することができる発光OLEDデバイス310のピクセルの断面図が示される。OLEDデバイス310は、少なくとも、基板320と、カソード390と、カソード390から離隔して配置されるアノード330と、発光層350とを含む。また、OLEDデバイス300は、正孔注入層335と、正孔輸送層340と、電子輸送層355と、電子注入層360と、当業者に既知の他の層とを含む場合がある。正孔注入層335、正孔輸送層340、発光層350、電子輸送層355、及び電子注入層360は、アノード330とカソード390との間に配置される一連の有機物層370を含む。有機物層370は、本発明の装置によって堆積されることが最も望ましい有機材料層である。これらの構成要素をさらに詳細に説明する。
【0041】
基板320は、有機物固体、無機物固体、又は有機物及び無機物固体の組み合わせとすることができる。基板320は、硬質又は可撓性を有することができ、シート又はウェーハのような別個の単品として、又は連続したロールとして処理することができる。典型的な基板材料は、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、半導体酸化物、半導体窒化物、又はその組み合わせを含む。基板320は、複数の材料から成る均質な混合物、複数の材料から成る複合材、又は複数の材料から成る多層とすることができる。基板320はOLED基板とすることができ、すなわち、OLEDデバイスを準備するために一般的に用いられる基板、たとえば、アクティブマトリックス低温ポリシリコン又はアモルファスシリコンTFT基板とすることができる。基板320は、意図した光放射方向に応じて、光透過性又は不透過性のいずれかにすることができる。基板を通じてEL放射を視認する場合、光透過性が望ましい。そのような場合には、透明なガラス又はプラスチックが一般的に用いられる。上側電極を通じてEL放射が視認される応用例では、下側支持体の透過性は重要ではなく、それゆえ、光透過性、光吸収性又は光反射性にすることができる。この場合に用いるための基板は、限定はしないが、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミック、及び回路基板材料、又はパッシブマトリックスデバイス若しくはアクティブマトリックスデバイスのいずれかとすることができるOLEDデバイスを形成する際に一般的に用いられる任意の他の材料を含む。
【0042】
基板320上には電極が形成され、最も一般的にはアノード330として構成される。EL放射が基板320を通じて視認されるとき、アノード330は対象となる放射に対して透過性又は実質的に透過性でなければならない。本発明において有用である一般的な透過性アノード材料は、酸化インジウムスズ及び酸化スズであるが、限定はしないが、アルミニウム又はインジウムドープ酸化亜鉛、マグネシウム−インジウム酸化物、及びニッケル−タングステン酸化物を含む、他の金属酸化物も良好に機能することができる。これらの酸化物に加えて、窒化ガリウムのような金属窒化物、セレン化亜鉛のような金属セレン化物、及び硫化亜鉛のような金属硫化物もアノード材料として用いることができる。EL放射が上側電極を通じて視認される応用例では、アノード材料の透過性は重要ではなく、透過性、不透過性又は反射性の任意の導電性材料を用いることができる。この応用例の場合の導体例は、限定はしないが、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム及びプラチナを含む。透過性であろうとなかろうと、好ましいアノード材料は、4.1eV以上の仕事関数を有する。望ましいアノード材料は、蒸着、スパッタリング、化学気相成長、又は電気化学的工程のような任意の適切な方法によって堆積することができる。アノード材料は、既知のフォトリソグラフィ工程を用いてパターニングすることができる。
【0043】
常に必要であるとは限らないが、有機発光ディスプレイでは、アノード330上に正孔注入層335が形成されることが多くの場合に有用である。正孔注入層は、後続の有機物層の薄膜形成特性を改善し、且つ正孔を正孔輸送層の中に注入するのを容易にするための役割を果たすことができる。正孔注入層335において用いるのに適している材料は、限定はしないが、米国特許第4,720,432号明細書において記述されるようなポルフィリン系化合物、米国特許第6,208,075号明細書において記述されるようなプラズマ堆積フルオロカーボンポリマー、並びに酸化バナジウム(VOx)、酸化モリブデン(MoOx)及び酸化ニッケル(NiOx)を含む無機酸化物を含む。有機ELデバイスにおいて有用であると報告されている代替の正孔注入材料が、欧州特許出願公開第0891121号明細書及び欧州特許出願公開第1029909号明細書において記述される。
【0044】
常に必要であるとは限らないが、アノード330上に正孔輸送層340が形成され、配置されることが多くの場合に有用である。望ましい正孔輸送材料は、蒸着、スパッタリング、化学気相成長、電気化学的工程、熱転写、又はドナー材料からのレーザ熱転写のような任意の適切な方法によって堆積することができ、本明細書において記述されるデバイス及び方法によって堆積することができる。正孔輸送層340において有用な正孔輸送材料は、芳香族第三アミンのような化合物を含むことがよく知られており、芳香族第三アミンは、少なくとも1つの三価窒素原子を含み、その窒素原子は炭素原子にのみ結合され、その炭素原子のうちの少なくとも1つが芳香環の一員である化合物であると理解されたい。1つの形態では、芳香族第三アミンは、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン又はポリマーアリールアミンのようなアリールアミンとすることができる。例示的なモノマートリアリールアミンが、米国特許第3,180,730号明細書においてKlupfel等によって例示される。1つ又は複数のビニルラジカルで置換されるか、又は少なくとも1つの活性水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンが、米国特許第3,567,450号明細書及び第3,658,520号明細書においてBrantley等によって開示される。
【0045】
1つのより好ましい種類の芳香族第三アミンは、米国特許第4,720,432号明細書及び第5,061,569号明細書において記述されるような少なくとも2つの芳香族第三アミン成分を含むものである。そのような化合物は、構造式Aによって表される化合物を含む。
【0046】
【化1】

【0047】
ただし、Q1及びQ2は個別に選択された芳香族第三アミン成分であり、
Gはアリーレン、シクロアルキレン又はアルキレン基のような、炭素−炭素結合の結合基である。
【0048】
一実施形態では、Q1又はQ2のうちの少なくとも一方が多環式縮合環構造、たとえば、ナフタレンを含む。Gがアリール基であるとき、それは、便宜的には、フェニレン、ビフェニレン又はナフタレン成分である。
【0049】
構造式Aを満たし、且つ2つのトリアリールアミン成分を含む有用な種類のトリアリールアミンは、構造式Bによって表される。
【0050】
【化2】

【0051】
ただし、R1及びR2はそれぞれ個別に水素原子、アリール基又はアルキル基を表すか、又はR1及びR2は合わせて、シクロアルキル基を完成する原子を表し、
3及びR4はそれぞれ個別にアリール基を表し、それはさらに、構造式Cによって示されるような、ジアリール置換アミノ基で置換される。
【0052】
【化3】

【0053】
ただし、R5及びR6はそれぞれ個別に選択されるアリール基である。一実施形態では、R5又はR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造、たとえば、ナフタレンを含む。
【0054】
別の種類の芳香族第三アミンはテトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、アリーレン基を通じて結合される、構造式Cによって示されるような、2つのジアリールアミノ基を含む。有用なテトラアリールジアミンは構造式Dによって表されるものを含む。
【0055】
【化4】

【0056】
ただし、各Arは、フェニレン又はアントラセン成分のような、個別に選択されるアリーレン基であり、
nは1〜4の整数であり、
Ar、R7、R8及びR9は個別に選択されるアリール基である。
【0057】
典型的な実施形態では、Ar、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造、たとえば、ナフタレンである。
【0058】
上記の構造式A、B、C、Dの種々のアルキル、アルキレン、アリール及びアリーレン成分はそれぞれ、さらに置換することができる。典型的な置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、並びにフッ化物、塩化物及び臭化物のようなハロゲンを含む。種々のアルキル及びアルキレン成分は典型的には1個〜6個の炭素原子を含む。シクロアルキル成分は、3個〜10個の炭素原子を含むことができるが、典型的には、5、6又は7個の炭素原子を含み、たとえば、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロへプチル環構造を含む。アリール及びアリーレン成分は通常、フェニル及びフェニレン成分である。
【0059】
OLEDデバイス内の正孔輸送層は、単一の芳香族第三アミン化合物、又は芳香族第三アミン化合物の混合物から形成することができる。具体的には、構造式Bを満たすトリアリールアミンのようなトリアリールアミンを、構造式Dによって示されるようなテトラアリールジアミンと組み合わせて用いることができる。トリアリールアミンが、テトラアリールジアミンと組み合わせて用いられるとき、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入及び輸送層との間に介在する層として配置される。本明細書において記述されるデバイス及び方法を用いて、単成分又は多成分の層を堆積することができ、多数の層を順次に堆積することができる。
【0060】
別の種類の有用な正孔輸送材料は、欧州特許第1009041号明細書において記述されるような多環式芳香族化合物を含む。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びPEDOT/PSSとも呼ばれるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)のようなコポリマー等のポリマー正孔輸送材料を用いることもできる。
【0061】
発光層350は、正孔−電子再結合に応答して光を生成する。発光層350は一般的に正孔輸送層340上に配置される。望ましい有機発光材料は、蒸着、スパッタリング、化学気相成長、電気化学的工程、又はドナー材料からの放射熱転写のような任意の適切な方法によって堆積することができ、本明細書において記述されるデバイス及び方法によって堆積することができる。有用な有機発光材料は既知である。米国特許第4,769,292号明細書及び第5,935,721号明細書においてさらに十分に記述されるように、有機EL素子の発光層は発光材料又は蛍光材料を含み、この領域では、電子−正孔対再結合の結果として、エレクトロルミネセンスが引き起こされる。発光層は単一の材料を含むことができるが、さらに一般的には、ゲスト化合物又はドーパントをドープされたホスト材料を含み、その場合、主にドーパントから光放射が到来する。ドーパントは、特定のスペクトルを有する有色光を生成するように選択される。発光層内のホスト材料は、以下に規定されるような電子輸送材料、上記のような正孔輸送材料、又は正孔−電子再結合を支援する別の材料とすることができる。ドーパントは通常、蛍光性が高い色素から選択されるが、燐光性化合物、たとえば国際公開第98/55561号パンフレット、国際公開第00/18851号パンフレット、国際公開第00/57676号パンフレット及び国際公開第00/70655号パンフレットにおいて記述されるような遷移金属錯体も有用である。ドーパントは典型的には、ホスト材料内に、0.01重量%〜10重量%だけコーティングされる。複数の蒸発源を必要とすることなく、本明細書において記述されるデバイス及び方法を用いて、多成分ゲスト/ホスト層をコーティングすることができる。
【0062】
有用であることがわかっているホスト及び発光分子は、限定はしないが、米国特許第4,768,292号明細書、米国特許第5,141,671号明細書、米国特許第5,150,006号明細書、米国特許第5,151,629号明細書、米国特許第5,294,870号明細書、米国特許第5,405,709号明細書、米国特許第5,484,922号明細書、米国特許第5,593,788号明細書、米国特許第5,645,948号明細書、米国特許第5,683,823号明細書、米国特許第5,755,999号明細書、米国特許第5,928,802号明細書、米国特許第5,935,720号明細書、米国特許第5,935,721号明細書及び米国特許第6,020,078号明細書において開示されるものを含む。
【0063】
8−ヒドロキシキノリンの金属錯体及び類似の誘導体(化学式E)が、エレクトロルミネセンスを支援することができる1つの種類の有用なホスト材料を構成し、500nmよりも長い波長、たとえば、緑色、黄色、橙色及び赤色の光放射のために特に適している。
【0064】
【化5】

【0065】
ただし、Mは金属を表し、
nは1〜3の整数であり、
Zは、現れる度に個別に、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成する原子を表す。
【0066】
上記のことから、その金属は一価金属、二価金属又は三価金属とすることができることは明らかである。その金属は、たとえば、リチウム、ナトリウム若しくはカリウムのようなアルカリ金属;マグネシウム若しくはカルシウムのようなアルカリ土類金属;又はホウ素若しくはアルミニウムのような土類金属とすることができる。一般的に、有用なキレート化金属であることがわかっている任意の一価金属、二価金属又は三価金属を用いることができる。Zは、少なくとも2つの縮合芳香環を含み、そのうちの少なくとも一方がアゾール又はアジン環である複素環核を完成する。脂肪族及び芳香族の両方の環を含む、付加的な環を、必要に応じて、2つの必要とされる環と縮合させることができる。機能が改善されることなく大量の分子が追加されるのを避けるために、環原子の数は通常、18個以下に保持される。
【0067】
発光層350内のホスト材料は、9及び10の位置において炭化水素又は置換炭化水素置換基を有するアントラセン誘導体とすることができる。たとえば、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンがエレクトロルミネセンスを支援することができる1つの種類の有用なホスト材料を構成し、400nmよりも長い波長、たとえば、青色、緑色、黄色、橙色及び赤色の光放射のために特に適している。
【0068】
ベンズアゾール誘導体がエレクトロルミネセンスを支援することができる別の種類の有用なホスト材料を構成し、400nmよりも長い波長、たとえば、青色、緑色、黄色、橙色及び赤色の光放射のために特に適している。有用なベンズアゾールの一例が2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール]である。
【0069】
望ましい蛍光ドーパントは、フェニレン又はフェニレンの誘導体、アントラセンの誘導体、テトラセン、キサンテン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム及びチアピリリウム化合物、ジスチリルベンゼン又はジスチリルビフェニルの誘導体、ビス(アジニル)メタンホウ素錯化合物、及びカルボスチリル化合物を含む。
【0070】
他の有機放射材料は、同じ譲受人に譲渡される米国特許出願第6,194,119号明細書においてWolk等によって、及び該特許文献において列挙される参照文献によって教示されるような、高分子物質、たとえば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ−ポリフェニレンビニレン、ポリ−パラフェニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体とすることができる。
【0071】
常に必要であるとは限らないが、OLEDデバイス310は、発光層350上に配置される電子輸送層355を含むことが多くの場合に有用である。望ましい電子輸送層は、蒸着、スパッタリング、化学気相成長、電気化学的工程、熱転写、又はドナー材料からのレーザ熱転写のような任意の適切な方法によって堆積することができ、本明細書において記述されるデバイス及び方法によって堆積することができる。電子輸送層355において用いるのに好ましい電子輸送材料は、オキシン(一般的に、8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)そのもののキレートを含む、金属キレート化オキシノイド化合物である。そのような化合物は、電子を注入し、輸送するのを助け、共に高いレベルの性能を示し、且つ薄膜の形で容易に製造される。考えられるオキシノイド化合物の例は、上記で記述された、構造式Eを満たす化合物である。
【0072】
他の電子輸送材料は、米国特許第4,356,429号明細書において開示されるような種々のブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号明細書に記述されるような種々の複素環式蛍光増白剤を含む。構造式Gを満たすベンズアゾールも有用な電子輸送材料である。
【0073】
他の電子輸送材料は、高分子物質、たとえば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ−パラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及び「Handbook of Conductive Molecules and Polymers」(Vols. 1-4, H. S. Nalwa, ed., John Wiley and Sons, Chichester(1997))において列挙されるような他の導電性高分子有機材料とすることができる。
【0074】
電子注入層360も、カソードと電子輸送層との間に存在することができる。電子注入材料の例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、上記のLiFのようなハロゲン化アルカリ塩、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属をドープされた有機物層を含む。
【0075】
電子輸送層355上に、又は電子輸送層が用いられない場合には発光層350上に、カソード390が形成される。アノード330を通じて光が放射されるとき、カソード材料は実質的に任意の導電性材料を含むことができる。望ましい材料は、下層の有機物層との良好な接触を確保するための良好な薄膜形成特性を有し、低い電圧において電子注入を促進し、且つ良好な安定性を有する。有用なカソード材料は多くの場合に低仕事関数金属(<3.0eV)又は合金を含む。1つの好ましいカソード材料は、米国特許第4,885,221号明細書において記述されるような、Mg:Ag合金であり、銀の割合は1%〜20%の範囲にある。別の適切な種類のカソード材料は、導電性金属の厚い層で覆われる低仕事関数金属又は金属塩の薄い層を含む二重層を含む。1つのそのようなカソードは、米国特許第5,677,572号明細書において記述されるような、LiFの薄い層と、それに続くAlの厚い層とを含む。他の有用なカソード材料は、限定はしないが、米国特許第5,059,861号明細書、第5,059,862号明細書及び第6,140,763号明細書において開示される材料を含む。
【0076】
カソード390を通じて光放射が視認されるとき、それは透明又は実質的に透明でなければならない。そのような応用例の場合、金属は薄くなければならないか、又は透過性の導電性酸化物、又はこれらの材料の組み合わせを用いなければならない。光学的に透過性のカソードは、米国特許第5,776,623号明細書においてさらに詳細に記述されている。カソード材料は、蒸着、スパッタリング又は化学気相成長によって堆積することができる。必要に応じて、限定はしないが、スルーマスク堆積、米国特許第5,276,380号明細書及び欧州特許第0732868号明細書において記述されるようなインテグラルシャドーマスキング、レーザアブレーション、及び選択性化学気相成長を含む、数多くの既知の方法を通じて、パターニングを達成することができる。
【0077】
カソード材料は、蒸着、スパッタリング又は化学気相成長によって堆積することができる。必要に応じて、限定はしないが、スルーマスク堆積、米国特許第5,276,380号明細書及び欧州特許第0732868号明細書において記述されるようなインテグラルシャドーマスキング、レーザアブレーション、及び選択性化学気相成長を含む、数多くの既知の方法を通じて、パターニングを達成することができる。
【符号の説明】
【0078】
5 オーガスクリュー
7 滑らかな胴部
8 オーガ構造
9 ねじ山がない部分
10 気化デバイス
11 蒸発源
12 蒸発源
13 蒸発源
14 蒸気柱
15 基板
100 気化装置
120a フラッシュ蒸発器
120b フラッシュ蒸発器
120c フラッシュ蒸発器
125 楔形の入口
130a 貯留室
130b 貯留室
130c 貯留室
135 楔形の入口
140 ハウジング
145 可撓性壁部
150 内部容積空間
155 第1の開口部
160 第2の開口部
170 回転式シャフト
175 外周溝
180 モータ
185 スクレーパ
190a アジテータ
190b アジテータ
190c アジテータ
195 回転式シャフト
200 気化装置
205 ハウジング
210 蒸発器筐体
215 内部容積空間
220 断熱材
225 回転式シャフト
230 圧力センサ
235 蒸発器筐体
240 内部容積空間
250 マニホールド
260 スクレーパエッジ
270 空洞
275 ロードロック
280 堆積チャンバ
285 OLED基板
295 並進/支持装置
300 真空源
310 OLEDデバイス
320 基板
330 アノード
335 正孔注入層
340 正孔輸送層
350 発光層
355 電子輸送層
360 電子注入層
370 有機物層
390 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子材料を気化するための装置であって、
(a)計量装置であって、
(i)微粒子材料を収容するための貯留室と、
(ii)内部容積空間を有し、前記貯留室からの前記微粒子材料を収容するための第1の開口部と、前記微粒子材料を吐出するための第2の開口部とを有するハウジングと、
(iii)前記内部容積空間内に配置される回転式シャフトであって、該シャフトは滑らかな表面と、前記貯留室からの前記微粒子材料を収容するための前記第1の開口部、及び前記微粒子材料を吐出するための前記第2の開口部と位置合わせされる外周溝とを有する、シャフトと、
(iv)前記微粒子材料が前記外周溝によって実質的に輸送され、前記回転式シャフトの残りの部分に沿って輸送されないように協動する、前記回転式シャフト及び前記内部容積空間と、
(v)前記第2の開口部との関連で配置され、その端部おいて、前記回転式シャフト内の前記溝と実質的に同じ断面を有し、前記溝と協動して、該溝の中に保持される微粒子材料を取り除き、前記シャフトが回転するのに応じて、計量された量の微粒子材料を前記第2の開口部を通じて送達する、スクレーパと
を包含する、計量装置と、
(b)前記計量された材料を受け取り、気化するフラッシュ蒸発器と
を備える、微粒子材料を気化するための装置。
【請求項2】
前記溝内に前記微粒子材料を満たし、圧縮するために前記貯留室内に配置されるデバイスをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記貯留室内の前記微粒子材料を流動化し、前記微粒子材料を前記第1の開口部において溝の中に押し込むアジテータを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記スクレーパは加熱される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記貯留室及び前記ハウジングは能動的に冷却される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
単一の溝しか存在しない、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
可撓性壁部をさらに備え、前記可撓性壁部は前記内部容積空間の周囲の少なくとも一部を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記溝の幅は0.01mm〜2mmの範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記溝の深さは0.01mm〜5mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
複数の微粒子材料を気化するための装置であって、
(a)2つの別個の計量装置であって、該計量装置はそれぞれ、
(i)微粒子材料を収容するための貯留室と、
(ii)内部容積空間を有し、前記貯留室からの前記微粒子材料を収容するための第1の開口部と、前記微粒子材料を吐出するための第2の開口部とを有するハウジングと、
(iii)前記内部容積空間内に配置される回転式シャフトであって、該シャフトは滑らかな表面と、前記貯留室からの前記微粒子材料を収容するための前記第1の開口部、及び前記微粒子材料を吐出するための前記第2の開口部と位置合わせされる外周溝とを有する、シャフトと、
(iv)前記微粒子材料が前記外周溝によって実質的に輸送され、前記回転式シャフトの残りの部分に沿って輸送されないように協動する、前記回転式シャフト及び前記内部容積空間と、
(v)前記第2の開口部との関連で配置され、その端部おいて、前記回転式シャフト内の前記溝と実質的に同じ断面を有し、前記溝と協動して、該溝の中に保持される微粒子材料を取り除き、前記シャフトが回転するのに応じて、計量された量の微粒子材料を前記第2の開口部を通じて送達する、スクレーパと
を包含する、2つの別々の計量装置と、
(b)各前記計量装置から前記計量された材料を受け取り、気化するフラッシュ蒸発器手段と
を備える、複数の微粒子材料を気化するための装置。
【請求項11】
前記回転式シャフトは各前記計量装置に共通である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記フラッシュ蒸発器手段は、前記2つの計量装置からの前記計量された微粒子材料をそれぞれ受け取り、気化する2つの別個のフラッシュ蒸発器を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記2つの計量装置内の前記溝は異なる容積を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記2つの計量装置内の前記シャフトは異なる速度で回転する、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
各前記計量装置は、可撓性壁部をさらに備え、該可撓性壁部は、前記内部容積空間の周囲の少なくとも一部を提供する、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記溝の前記幅は0.01mm〜2mmの範囲にある、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記溝の前記深さは0.01mm〜5mmである、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
微粒子材料を気化するための方法であって、
(a)貯留室内に微粒子材料を収容すること、
(b)ハウジング内に内部容積空間を形成し、そのようなハウジング内に、前記貯留室からの前記微粒子材料を収容するための第1の開口部、及び前記微粒子材料を吐出するための第2の開口部を形成すること、
(c)前記内部容積空間内に配置されるシャフトであって、滑らかな表面と、前記貯留室からの微粒子材料を収容するための前記第1の開口部、及び前記微粒子材料を吐出するための前記第2の開口部と位置合わせされる外周溝とを有する、シャフトを回転させると共に、該シャフトと前記ハウジングとの間に、前記微粒子材料の平均粒径よりも小さい間隙を設けることと、
(d)前記溝から前記微粒子材料をすくい取ると共に、計量された量の微粒子材料を、前記第2の開口部を通じて送達すること、並びに
(e)前記計量された材料をフラッシュ蒸着すること
を含む、微粒子材料を気化するための方法。
【請求項19】
前記すくい取ることは、スクレーパによって提供され、該スクレーパの位置を調整して、前記第2の開口部を通じて送達される計量された材料の量を制御する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−511154(P2011−511154A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542208(P2010−542208)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/013973
【国際公開番号】WO2009/088444
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】1209 Orange Street, Wilmington, Delaware 19801, United States of America
【Fターム(参考)】