説明

粉粒体の気体輸送装置

【課題】気体輸送装置に使用されるインレットバルブのディスクが摺接するシートリングが、粉粒体を噛み込んで破損することのない粉粒体の気体輸送装置を提供すること。
【解決手段】貯留槽2とトランスポータ3間にインレットバルブ10を配設し、バッチ式に粉粒体を輸送する粉粒体の気体輸送装置1において、インレットバルブ10の上流輸送管内面5aに、インレットバルブ10のシートリング11に堆積した粉粒体を吹き落とす圧縮空気ノズル20を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体輸送装置に関し、特に、粉粒体をバッチ式で輸送する気体輸送装置のインレットバルブへの粉粒体の噛み込みを防止することができる粉粒体の空気輸送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体を空気流によりバッチ式で輸送する装置としては、図5に示すように、粉粒体を貯える貯留槽2と、該貯留槽2の下流側に設けたゲートバルブ3と、該ゲートバルブ3により送り出した粉粒体を、インレットバルブ10を開放することによってトランスポータ4に一定量送り込み、インレットバルブ10を閉鎖し、エアレシーバ6内の圧縮空気をジェットノズル7を介して輸送管5内に送り、輸送管5の長さに応じて途中ブースタノズル8、8を配設することによって粉粒体を輸送先のサイロ9に搬送する粉粒体の気体輸送装置1が知られている。
【0003】
ところで、この粉粒体の気体輸送装置1に使用されるゲートバルブ3とインレットバルブ10は、図6に示すように、装置全体のコストダウンの観点から汎用のバタフライ弁を使用するもので、ゲートバルブ3は粉粒体の落下を止めるだけで気密性を有しないが、インレットバルブ10は、圧縮空気による圧送に際し、圧縮空気が下流側(サイロ9側)ではなく上流側(貯留槽2側)に漏れることを防ぐように気密性を保持する必要があることからディスク回転軸12aに対し、距離Lだけオフセットしてディスク12が取り付けられている。しかし、連続運転ではなく、一定量の粉粒体をバッチ式に輸送する場合、インレットバルブ10の開閉を繰り返すことによって、粉粒体をトランスポータ4に一定量貯留するため、図7(a)に示すように、インレットバルブ10のシール材であり、インレットバルブ10の本体14にセットリング13によって固定されているシートリング11上に堆積する粉粒体Wが、回転する金属製のディスク12によってシートリング11とディスク12との間に噛み込まれ(図7(b)の粉粒体Wa参照)、シートリング11が摩耗によって破損し、圧縮空気がトランスポータ4を通過し、当該破損箇所から上流の貯留槽2側に抜けてしまい、輸送効率が低下するといった問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭51−123923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の粉粒体の気体輸送装置の有する問題点に鑑み、粉粒体の気体輸送装置に使用されるインレットバルブのディスクが摺接するシートリングが、粉粒体を噛み込んで破損することのない粉粒体の気体輸送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の粉粒体の気体輸送装置は、貯留槽とトランスポータ間にインレットバルブを配設し、バッチ式に粉粒体を輸送する粉粒体の気体輸送装置において、インレットバルブの上流輸送管内面に、インレットバルブのシートリングに堆積した粉粒体を吹き落とす圧縮空気ノズルを配設したことを特徴とする。
【0006】
また、これらの場合において、圧縮空気ノズルを、インレットバルブのディスク回転軸軸端近傍に配設することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉粒体の気体輸送装置によれば、インレットバルブの上流輸送管内面に、インレットバルブのシートリングに堆積した粉粒体を吹き落とす圧縮空気ノズルを配設するから、シートリングに堆積した粉粒体を圧縮空気ノズルから噴出する圧縮空気によって吹き飛ばし、インレットバルブのディスクが閉鎖しても粉粒体を噛み込んで、シートリングが粉粒体との摩耗によって破損することのない粉粒体の気体輸送装置を提供することができる。
【0008】
また、圧縮空気ノズルを、インレットバルブのディスク回転軸軸端近傍に配設するときは、粉粒体が堆積しやすいシートリング上の粉粒体を集中的に吹き落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の粉粒体の気体輸送装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、従来装置と同様の構造については同一の符号、一連の符号を付し説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1〜図2に、本発明の粉粒体の気体輸送装置の第1実施例を示す。
この気体輸送装置1は、従来例と同様に貯留槽2とトランスポータ4との間にインレットバルブ10を配設し、バッチ式に粉粒体を輸送する気体輸送装置で、図1〜図2に示すように、インレットバルブ10の上流側の輸送管5の内面5aに、インレットバルブ10のシートリング11に堆積した粉粒体を吹き落とす圧縮空気ノズル20を配設するようにしている。
【0011】
圧縮空気ノズル20の配設する個数は、特に限定するものではなく、エアレシーバ6から圧縮空気の供給を受けるように構成し、例えば、図2に示すように、インレットバルブ10の上流側で輸送管5の内面5aに等間隔で(図例では8個)配設するようにしている。
そして、圧縮空気ノズル20からシートリング11に向かって圧縮空気を噴射するタイミングは、モータ等の回動機構Mによってディスク12を開放状態から閉鎖状態に回動させる際、図1に示す程度にまで閉鎖したところで吹き付けることが好ましく、圧縮空気ノズル20を開閉する電磁弁と、回動機構Mの作動を連動して行うように制御機構(図示省略)を配設するようにしている。
【0012】
しかして、粉粒体の輸送に際しては、従来例と同様図5に示すゲートバルブ3とインレットバルブ10を開放し、貯留槽2から一定量の粉粒体をトランスポータ4に落とし、トランスポータ4内に一定量の粉粒体が溜まった時点でセンサー等によってゲートバルブ3を閉鎖し、次いでインレットバルブ10の閉鎖を開始する。そして、インレットバルブ10が閉鎖する直前に圧縮空気ノズル20から、圧縮空気をシートリング11に向かって吹き付け、シートリング11上に堆積する粉粒体をトランスポータ4に落とすようにする。
【0013】
なお、圧縮空気を噴射するタイミングは、ディスク12が全開状態から吹き付けてもよく、閉鎖時にシートリング11上に粉粒体が堆積していない状態にすれば足り、トランスポータ4内に落とすことなくゲートバルブ3とインレットバルブ10との間の空間に浮遊する状態にしておくだけでも構わない。また、圧縮空気ノズル20の向きは、全ノズル又は一部のノズルを斜め下向き方向にしておくことによって噴出空気のシートリングに対して作用する領域を拡大することができ、それにより圧縮空気ノズル20の個数を減らすことができる。
【実施例2】
【0014】
図3に、本発明の粉粒体の気体輸送装置の第2実施例を示す。
この気体輸送装置は、圧縮空気ノズル20を、インレットバルブ10のディスク回転軸12aの軸端近傍に配設するようにしている。
【0015】
インレットバルブ10は、円盤状のディスク12がディスク回転軸12aにLだけオフセットされて取り付けられ、ディスク12の略直径に位置するディスク回転軸12aを回動軸として約90度の揺動を繰り返すように構成されており、ディスク回転軸12aの軸端近傍では、ディスク12とシートリング11間の離間量が少なく、シートリング11に粉粒体が残りやすいが、当該付近を集中的に圧縮空気によって堆積する粉粒体を吹き落とすことによってシートリング11の破損を大幅に低減することができるものである。
【0016】
図3に示す例では、ディスク回転軸12aの両軸端近傍に5個ずつの圧縮空気ノズル20を配設した例を示すが、発明者等の実験によれば、片側3個ずつの圧縮空気ノズル20を配設することによって十分な効果を発揮した。
上記実施例では、シートリングに11に堆積する粉粒体をシートリング11の周方向に配置した複数個の圧縮空気ノズル20で吹き払うようにした例を示したが、図4に示すように、インレットバルブ10のディスク回転軸12aの両端の近傍に、反対側の回転軸端側に向けて斜め下向きに圧縮空気ノズル20A、20Bを配置することもできる。
この例ではインレットバルブ10が閉塞途中(12’’参照)に、一方のノズル20Aから噴出された空気がディスク12の表面側を通って反対の回転軸端側のシートリング11に集中的に吹き付けられて堆積している粉粒体が吹き払われ、また、他方のノズル20Bから噴出された空気がディスク12の裏面側を通って反対の回転軸端側のシートリング11に集中的に吹き付けられて堆積している粉粒体が吹き払われるのでシートリング11の破損を大幅に低減することができる。なお、図例ディスク12のうち、12’は全開位置を、12’’は回転途中を、12’’’は全閉時の状態をそれぞれ示すものである。
【0017】
以上、本発明の粉粒体の気体輸送装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の粉粒体の気体輸送装置は、インレットバルブの上流輸送管内面に、圧縮空気ノズルを配設することによって、インレットバルブのシートリングに堆積した粉粒体を吹き落とし、シートリングが粉粒体による摩耗を防止することができるという特性を有していることから、新規設備に用いることができるほか、例えば、既設設備においてもインレットバルブの上流輸送管内面に、圧縮空気ノズルを配設するだけでシートリングの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の粉粒体の気体輸送装置のインレットバルブを示す一部切り欠きの断面正面図である。
【図2】図1におけるX−Xの断面平面図である。
【図3】本発明の粉粒体の気体輸送装置の別の実施例を示す断面平面図である。
【図4】本発明の粉粒体の気体輸送装置の別の実施例を示し、(a)は、一部切り欠きの断面平面図、(b)は、(a)のY−Yから見た一部切り欠きの断面側面図である。
【図5】気体輸送装置の概略を示す説明図である。
【図6】従来の気体輸送装置のインレットバルブを示す一部切り欠きの断面正面図である。
【図7】従来の気体輸送装置のインレットバルブによる粉粒体の噛み込みの説明図で、(a)は、ディスクの閉鎖直前の状態を、(b)は、ディスクによって閉鎖した状態を示す。
【符号の説明】
【0020】
1 気体輸送装置
2 貯留槽
4 トランスポータ
10 インレットバルブ
11 シートリング
12 ディスク
12a ディスク回転軸
20 圧縮空気ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽とトランスポータ間にインレットバルブを配設し、バッチ式に粉粒体を輸送する粉粒体の気体輸送装置において、インレットバルブの上流輸送管内面に、インレットバルブのシートリングに堆積した粉粒体を吹き落とす圧縮空気ノズルを配設したことを特徴とする粉粒体の気体輸送装置。
【請求項2】
圧縮空気ノズルを、インレットバルブのディスク回転軸軸端近傍に配設したことを特徴とする請求項1記載の粉粒体の気体輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−210724(P2007−210724A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30515(P2006−30515)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】