説明

粒子ビーム顕微鏡

【課題】高い縦分解能と高い横分解能を同時に実現する。
【解決手段】粒子ビーム顕微鏡は、リング状の円錐形状を有する粒子ビームを生成する照明系を備える。選択的検出系は、対象物領域を通過した粒子の2つの粒子グループにおける一方を選択的に検出するように構成する。第1粒子グループは、散乱せずに、または小さい散乱量で散乱して対象物領域を通過した粒子を含む。第2粒子グループは、対象物領域においてより大きい散乱量で散乱した粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月8日にドイツ国で出願された、発明の名称を「粒子ビーム顕微鏡」とする特許出願第102009016861.3号の優先権を主張するものであり、参照のため本明細書にその内容を全体的に付記する。
【0002】
本発明は、粒子ビームを検査対象のサンプルに指向させ、またサンプルを通過した粒子を検出する、粒子ビーム顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
従来の粒子ビーム顕微鏡は、粒子ビームとして、電子ビーム、陽子ビーム、イオンビーム、X線ビームなどを用いる。若干の粒子ビーム顕微鏡では、粒子ビームは、サンプルにおける、あるロケーションに微細に合焦される。このような顕微鏡において、粒子ビームを合焦させるロケーションは、主粒子ビーム方向に対して相対的に、軸線方向ならびに側方(横方向)に変位させ、サンプル全体にわたりビーム焦点を走査することができる。サンプルと相互作用した粒子の信号検出を、ビームを合焦したロケーションに基づいて記録して、サンプルの二次元画像または三次元体積画像を得ることができるようにする。このような状況においては、粒子ビーム焦点の延在範囲が、顕微鏡の空間的分解能を決定する。高横分解能の観点から、焦点領域の横寸法は小さくすべきであり、また、より高い縦分解能の観点から、焦点領域の縦寸法は小さくすべきである。
【0004】
合焦した粒子ビームの粒子は、異なる方向からサンプルに入射する。通常、これら異なる方向は、主ビーム方向に対して、+α〜−αの角度をなし全体頂角が2αとなる円錐内に存在する。縦分解能は、粒子ビームの合焦に用いられる光学系の焦点深度に関連し、この焦点深度は、1/α に比例する。高縦分解能の観点から、円錐の頂角は高い値にすべきである。しかしながら、粒子ビームを合焦するのに用いられる粒子用光学レンズは、典型的には、α3に比例する球面収差を示す。頂角の値が高いと、横分解能が比較的低くなる。従来の粒子ビーム顕微鏡においては、高い横分解能と高い縦分解能とを同時に実現することが難しい。
【0005】
従来の粒子ビーム顕微鏡の例としては、特許文献1(米国特許第6548810号)に開示されている走査型透過電子顕微鏡がある。本明細書に特許文献1の全開示を参照として付記する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6548810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上述の問題を考慮してなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、サンプルに指向する粒子ビームの粒子が、選択した方向からサンプルに入射する粒子ビーム顕微鏡を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態に従う粒子ビーム顕微鏡では、粒子ビームのパラメータをフレキシブルに選択し、横分解能および縦分解能を調整することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、粒子ビーム顕微鏡は、粒子ビームをサンプルのロケーションに合焦させる照明系であって、合焦させたビーム中の粒子密度が高い領域が、主ビーム方向に対して横方向および主ビームに対して平行な縦方向の双方向において比較的小さい寸法を有するように構成した照明系を備える。
【0011】
さらに他の実施形態において、粒子ビーム顕微鏡の照明系は、粒子ビームの粒子がサンプルに選択した角度方向から入射するように、粒子ビームをサンプルに指向させるものとして構成する。この実施形態において、サンプルに入射する全てのビームの粒子は、主ビーム方向に対して、所定の第1限界角度よりも大きい入射角度を有する。特に、方向付けられた粒子ビームは、主ビーム方向に沿って伝搬する粒子を含まないものとすることもできる。
【0012】
さらに他の実施形態によれば、合焦した粒子ビームの粒子は、主ビーム方向に対して、所定の第2限界角度よりも小さい角度で指向する方向からサンプルに入射する。
【0013】
この実施形態において、粒子ビームの粒子は、第1限界角度よりも大きいまたはこれと等しい角度、かつ、第2限界角度よりも小さいかまたはこれと等しい角度で主ビーム方向に対して指向する方向からサンプルに入射する。特定の実施形態において、粒子ビームは、リング状の円錐形状を有するものとしてもよく、このとき、その円錐の内側頂角が第1限界角度に、円錐の外側頂角が第2限界角度に対応する。
【0014】
さらに他の実施形態において、粒子ビーム顕微鏡は、少なくとも1個の検出器を有し、対象物領域の下流域に配置した検出系を備え、この場合、サンプルは顕微鏡のビーム経路に配置することができる。検出系の検出器を使用して、対象物領域に指向し、また対象物領域を通過した粒子を検出する。対象物領域を通過した粒子は、2つのグループに分けることができる。第1粒子グループは、ほとんど散乱せずに対象物領域を通過した粒子のみを含む。これら粒子は、対象物領域を直線に沿って通過する、またはサンプルにおいて所定の散乱限界角度よりも小さい散乱角度で散乱する。2つの粒子グループのうち第2グループは、サンプルにおいて、相当な量で散乱し、サンプルへの元々の入射方向から偏向した粒子を含む。これら粒子は、対象物領域において、所定の散乱限界角度よりも大きい散乱角度で散乱する。
【0015】
いくつかの実施形態において、検出系は、少なくとも1個の検出器が、これら2つの粒子グループにおける一方のグループの粒子のみを検出するよう構成する。検出系は、1つのグループの粒子がこの検出器に入射し、他のグループの粒子はこの検出器に入射しないように構成するものとすることができる。
【0016】
例示的実施形態において、検出系は、顕微鏡の光軸から離間して位置する開口を有する開口プレートを備える。この開口は、第1グループの粒子のみが開口を通過でき、他の粒子は開口を通過できないように構成したリング状の開口として形成することもできる。第1検出器は、顕微鏡のビーム経路においてこの開口の下流域に配置し、開口を通過した第1グループの粒子を検出するものとすることができる。第1検出器は、サンプル上で合焦し、サンプルにおいて有意には散乱しなかった粒子ビームの粒子を検出する。第1検出器の検出信号から生成されたサンプルの顕微鏡画像は、従来の粒子ビーム方法で使われる明視野像と称することができる。
【0017】
他の例示的実施形態において、検出系は、第2グループの粒子のみが開口を通過でき、他の粒子は開口を通過できないような構成の開口プレートを備える。第2検出器は、顕微鏡のビーム経路において、この開口プレートの下流域に配置し、開口プレートを通過した第2グループの粒子を検出するものとする。第2検出器は、サンプル上で合焦し、サンプルにおいて有意に散乱した粒子ビームの粒子を検出する。第2検出器の検出信号から生成されたサンプルの顕微鏡画像は、従来の粒子ビーム方法で使われる暗視野像と称することができる。
【0018】
例示的実施形態によれば、第2グループの粒子が通過することのできる開口プレートは、顕微鏡の光軸から異なる距離に位置する2つの開口を備えるものとすることができる。この実施形態によれば、2つの開口の一方は、光軸から離間して位置する内側周端縁を有するリング状の開口として形成し、プレートの第2開口は、第1開口の内側周端縁よりも短い距離に位置する外側周端縁を有する。第2開口もまた、内側周端縁を有するリング状の開口として形成してもよく、または、半径方向に光軸まで延在する完全円形開口として形成することもできる。
【0019】
いくつかの実施形態において、検出系は、上述の第1検出器のみを備え、第2検出器を有さず、第1グループの粒子のみ検出するようにする。代替の実施形態において、検出系は第2検出器のみを備え、第1検出器を有さないようにし、第2グループの粒子のみ検出するようにする。
【0020】
さらに他の実施形態において、検出系は、第1検出器および第2検出器の双方を備え、第1グループおよび第2グループの粒子がそれぞれ独立して検出されるようにする。
【0021】
ここで例示的実施形態によれば、第1粒子グループを検出するための検出器、および第2粒子グループを検出するための検出器は、対象物領域から異なる距離に配置する。対象物領域により近く配置した検出器は、光軸に対して制限された半径寸法の検出面を有することで、対象物領域からより遠く配置された検出器により検出されるべき粒子が、検出器をその検出面に入射することなく通過できるようにする。対象物領域により近く位置した検出器は、外側周端縁の内側に設けた検出面で粒子を検出するための外側周端縁を有する。代替的に、または付加的に、検出器は、内側周端縁の外側に延在する検出面で粒子を検出するための、中心開口を画定する内側周端縁を有する。
【0022】
対象物領域において相当大きな散乱量で散乱した第2粒子グループの粒子は、2つのサブグループに分けられる。第2グループの第1サブグループは、顕微鏡の光軸に向かって散乱した粒子ビームの粒子を含むとともに、第2グループの第2サブグループは、光軸から離れる方向に散乱した粒子を含むものとする。2つのサブグループの粒子を選択的に検出するために、別個の検出器を設けることができる。いくつかの実施形態において、2つのサブグループを選択的に検出するための検出器は、主ビーム方向に沿って対象物領域から異なる距離に配置することができ、また、開口プレートは、2つのサブグループの粒子を選択するために開口プレートを設けても良く、この開口プレートは、光軸から選択された距離を有する内側周端縁および/または外側周端縁を有する適切な開口を備えるものとしても良い。
【0023】
いくつかの実施形態において、粒子ビーム顕微鏡は、粒子ビーム経路において対象物領域の上流域に配置し、荷電粒子を対象物領域に方向付けて、粒子が、主ビーム方向に対してあらかじめ定められた内側円錐角度より大きい角度を有する方向から入射するように構成した照明系を備え、また、粒子ビーム顕微鏡は、リング状の開口を有し、対象物領域の下流域に配置した開口プレートを備える。
【0024】
この実施形態において、開口プレートのリング状の開口は、対象物領域を直線に沿って通過した、または対象物領域において、散乱限界角度よりも小さい散乱角度で散乱した第1粒子グループが、リング状開口を通過し、他方、対象物領域にて散乱限界角度よりも大きい散乱角度で散乱した第2粒子グループが開口プレートのプレートに入射するよう構成する。
【0025】
さらに他の実施形態において、粒子ビーム顕微鏡は、対象物領域が位置する対象物平面を有する粒子用光学レンズを備え、リング状の開口を有する開口プレートは、粒子用光学レンズの画像側焦点面またはこの画像側焦点面に共役な平面に配置される。
【0026】
いくつかの実施形態において、粒子ビームが合焦するサンプルのロケーションは、サンプルに対して相対的に変位させることができる。この例示的実施形態において、粒子ビーム顕微鏡は、粒子ビーム顕微鏡の照明系に対してサンプルを変位させるためのアクチュエータを有するサンプルマウント(取り付け部)を備える。アクチュエータは、顕微鏡の光軸に対して横方向、および/または光軸に沿った方向にサンプルを移動させるように構成してもよく、また、アクチュエータは、光軸に対して相対的にサンプルの向きを変化させるように構成してもよい。
【0027】
他の実施形態によれば、粒子ビーム顕微鏡の照明系は、サンプルを照明系に対して相対的に変位させること無く、ビーム焦点をサンプルに対して相対的に横方向または縦方向に変位させる、または主ビーム方向をサンプルに対して相対的に変位させることを可能とする粒子ビームマニピュレータを備える。
【0028】
この実施形態によれば、このようなビームマニピュレータは偏向子を備える。例示的な実施形態によれば、照明系は、粒子ビームが合焦するロケーションを、光軸に対して横方向に変位させるように構成した少なくとも1個の偏向子を備える。粒子ビームが合焦するロケーションを2つの独立した方向に変位させるために、2つのこのような偏向子を設けて、例えばビーム焦点のxy‐走査を行うようにすることができる。このような偏向子は、粒子用光学レンズの焦点面に配置して、粒子ビームを対象物平面に合焦させることができる。
【0029】
さらに他の実施形態によれば、偏向子は、対象物領域で合焦する粒子ビームの主ビーム方向を照明系の光軸に対して変化させるよう構成する。これにより、粒子ビームの入射の主方向が光軸に対して傾く。このような偏向を得るための偏向子は、粒子ビームを対象物平面に合焦させるための粒子用光学レンズの対象物平面に対して共役な平面に設けることができる。
【0030】
さらに他の実施形態において、粒子ビームの焦点領域を光軸に対して縦方向に変位させるためのビームマニピュレータは、照明系の粒子用光学レンズを備える。例えば、合焦レンズの屈折力を変化させることで、粒子が合焦するロケーションを光軸に沿って変位させることが可能である。
【0031】
本発明の、上述および他の有利な特徴は、添付図面に基づき以下に記載する本発明の例示的実施形態に関する詳細な説明からより明確となるであろう。本発明の可能な実施形態の全ては、必ずしも本明細書に記載した利点のそれぞれすべて、またはいくつかを示すわけではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図2】図1に示す粒子ビーム顕微鏡の開口(アパーチャ)プレートの線的説明図である。
【図3】第2実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図4】図3に示す粒子ビーム顕微鏡に用いる開口プレートの線的説明図である。
【図5】第3実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図6】図5に示す粒子ビーム顕微鏡に用いる開口プレートの線的説明図である。
【図7】第4実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図8】第5実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図9】図8に示す粒子ビーム顕微鏡に用いる開口プレートの線的説明図である。
【図10】第6実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図11】第7実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図12】粒子ビーム顕微鏡で用いることができる照明系の一部分におけるビーム経路の線的説明図である。
【図13】第8実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【図14】第9実施形態による粒子ビーム顕微鏡の線的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に記載する例示的実施形態において、機能的および構造的に類似する構成部材は、可能な限り類似の参照符号で示す。そのため、特定の実施形態における個々の構成部材の特徴を理解するには、他の実施形態の説明および発明の要約の説明を参照すべきである。
【0034】
図1は、粒子ビーム顕微鏡のビーム経路および構成部材の線的説明図である。粒子ビーム顕微鏡1は、粒子ビーム5を、対象物領域9に配置したサンプル11の、あるロケーション7にて合焦するための照明系3を有する。粒子ビーム5の粒子の少なくとも若干は、サンプル11を通過し、検出系13により検出することができる。
【0035】
照明系3は、ロケーション7に合焦される粒子ビーム5を発生する粒子を供給するよう構成した粒子ビーム源15を有する。図示の実施形態において、粒子源15は、電子源とする。粒子源15はある角度範囲に粒子を放射し、これにより、ビームの形状は、図1に参照符号17で示した円錐の外表面によって規定される。粒子ビーム顕微鏡1の粒子ビーム源および粒子ビーム顕微鏡1の他の構成部材は、光軸19に対して対称的に配置し、これにより、粒子源15が放射する粒子ビーム5の主ビーム方向は光軸19に沿って指向する。
【0036】
主平面20を有する粒子用光学レンズ21は、粒子源15が放射する粒子ビームを平面23に合焦するよう構成する。図示の、粒子ビームの粒子を電子とした実施形態において、レンズ21、ならびに顕微鏡における他の全てのレンズは電子レンズとし、電子レンズとしては、静電気レンズ、磁気レンズ、および、静電気レンズと磁気レンズとの組合せによるレンズがある。
【0037】
開口(アパーチャ)プレート25を、ビーム経路の、レンズ21と平面23との間に配置する。以下、図2につき開口プレートを説明する。
【0038】
開口プレート25は、粒子が通過できるリング状の開口27を設けたプレート26を有する。リング状開口27は、光軸19の周囲に距離r1の位置に延在する内側周端縁29により画定される。リング状開口29は、光軸19の周囲に、距離r1よりも大きい距離r2の位置に延在する外側周端縁30を有する。光軸19から、r1より小さい距離またはr2より大きい距離の位置で開口プレートに入射する粒子は、プレート26に吸収される。光軸からr1より大きく、r2より小さい距離の位置で、開口プレート上に入射する粒子のみが、開口27を経て開口プレートを通過することができる。
【0039】
実用上の理由から、リング状の開口27は、理想的、すなわち、光軸19の周りを中断せずに延在するリング状開口ではない。内側周端縁29を画定するプレート26の内側部分を、外側周端縁13を画定するプレート26の外側部分に互いに結び付ける必要がある。この目的のため、プレート26の双方の部分を互いに連結する複数のリンク31を設ける。
【0040】
再び図1につき説明する。開口プレート25に入射した粒子ビームは、開口プレート25により、リング状の断面を有する粒子ビームに変形させられる。ビームの断面は、円錐形状を有する外側エンベロープ表面35により画定される。さらに、ビームは、やはり円錐形を有する内側エンベロープ表面37により画定される。ビームの粒子は、光軸19に対して、エンベロープ表面37の内側頂角よりも大きく、エンベロープ表面35の外側頂角よりも小さい角度を有する軌道に沿って伝播する。
【0041】
ビーム断面は平面23に向かって縮小し、平面23の下流域で、ビームが主平面42を有する粒子用光学レンズ41に進入するまで、連続的に延びる。レンズ41は、ビームをロケーション7に合焦するよう構成する。さらに、レンズ42は、平面23を、ビームが合焦されるロケーション7が存在する平面8に結像する。ビームは、平面8のすぐ上流域においても、リング状の断面を有する。この結果として、ロケーション7に入射する全ての粒子が、平面8の上流域において、ビームの内側頂角よりも大きく、かつビームの外側頂角よりも小さい角度で光軸19に対して指向する方向から由来するものとなる。特に、ロケーション7のすぐ上流域において、光軸19に平行な軌道に沿って伝播する粒子、または光軸19に対して、ビームの内側頂角より小さい角度で指向する粒子は、ロケーション7に入射することはない。
【0042】
サンプル11内において粒子ビームの密度が高くなる焦点領域は、高い分解能を達成するために、可能な限り小さく選択すべきである。焦点領域の寸法については、通常は、混同されることがほとんどない非混同円の半径で記述される。リング円錐形の粒子ビームに関しては、非混同円は、
δS=α2・Δα
の式で表すことができる。ここで、αは、焦点ロケーション7のすぐ上流域におけるビームの外側頂角を表し、Δαは、外側頂角と内側頂角との差を表す。
【0043】
ビーム断面が完全な円錐の形状を有しており、粒子が光軸に沿って、および光軸に対して小さな角度をなして伝播する、従来の粒子ビーム顕微鏡の場合、非混同円は、
δS=1/4α
の式で表すことができ、ここで、αは、ビームの外側頂角を表す。
【0044】
リング状の円錐形である粒子ビームを使うことで、球面収差が、完全な円錐である粒子ビームを使った場合と比べて減少することは明らかである。例示的にαの値を100mradとし、Δαを1mradとすると、分解能は、完全な円錐であり、100mradの外側円錐角度を有するビームと比較して25倍向上する。
【0045】
サンプル11に入射するビームの粒子は、サンプルを通過する間、サンプルと相互作用し得る。ここで、サンプルとの相互作用が小さければ、粒子は直線に沿ってサンプル11を通過し、またはサンプルとの相互作用が小さければ、小さな散乱角度で散乱し得る。他方、サンプルとの相互作用が有意なものである場合、粒子は有意な散乱角度で散乱し得る。このように、サンプル11を通過した粒子は、2つのグループに分けることができる。2つのグループのうち第1グループは、サンプルを直線に沿って通過する、または散乱リミット角度よりも小さな散乱角度で散乱する粒子を包含する。2つのグループのうち第2グループは、サンプルを通過する間に、散乱リミット角度よりも大きな散乱角度で散乱した粒子を包含する。
【0046】
この第2グループは、さらに2つのサブグループに分けることができる。
2つのサブグループのうち第1サブグループは、サンプルを通過する間に有意な量の、光軸へ向かう散乱を経験した粒子を包含し、2つのサブグループのうち第2サブグループは、サンプルを通過する間に、有意な量の光軸19から離れる方向へ向かう散乱を経験した粒子を包含する。
【0047】
第1グループの粒子が形成するビームは、図1中、リング状の円錐形を有するビーム束のエンベロープ線41および43で表す。第2グループの第1サブグループの粒子が形成するビームは、図1中、円錐形状のエンベロープ線54で表し、第2グループの第2サブグループの粒子が形成するビームは、図1中、それぞれリング状の円錐形の外側エンベロープ線47および内側エンベロープ線49で表す。
【0048】
対象物領域9を通過した、発散ビームは、主平面52を有するレンズ51に進入する。このレンズ51は、ビームを合焦し、この場合、そのリング状断面が、レンズ51の下流域にレンズ51からの距離が増えるにしたがって連続的に縮小するよう構成する。
【0049】
検出系13は、粒子検出器53を備える。この粒子検出器53は、粒子が対応する信号、例えば電気信号または光信号をトリガーすることにより入射粒子を検出するよう構成し、この信号を粒子が入射する際に処理することができる。粒子ビームが電子ビームである場合、検出器53は電子検出器とする。
【0050】
検出系13は、第1グループの粒子のみが検出器53に入射するよう構成し、したがって、この検出系は、第1グループの粒子のみを選択的に検出するよう構成する。この目的のため、開口プレート55は、レンズ51の焦点面54またはレンズ51の焦点面に共役な平面に設ける。開口プレート55は、半径方向内側周端縁56と半径方向外側周端縁57とにより画定されるリング状の開口を有する。開口プレート55は、開口プレート25に関して図2につき上述したのと類似する構成を持つものとしても良い。開口プレート55におけるリング状の開口の内側周端縁56および外側周端縁57は、第1グループの粒子のみがリング状の開口を通過して検出器53に入射するような寸法および配置にする。サンプル11を通過した、第2グループの第1サブグループの粒子は、光軸19から、リング状の開口内側周端縁56の半径よりも小さい距離で開口プレート54に入射し、そのため開口プレートに吸収される。同様に、サンプルを通過した、第2グループの第2サブグループの粒子は、光軸19から、リング状開口の外側周端縁57の半径よりも大きい距離で開口プレート55に入射し、そのため、これらの粒子もまた開口プレート55に吸収される。
【0051】
上述のとおり、検出系13は、サンプルに入射し、リング状円錐形の粒子ビームのうち、1つのグループの粒子のみを選択的に検出するよう構成する。この場合、図1に示す実施形態における検出器53により検出されるのは、粒子の第1グループである。このため、この検出系は、サンプルにて散乱しなかった、またはサンプルによって小さい散乱角度で散乱した粒子のみを検出するよう構成する。したがって、検出器53の検出信号から生成したサンプルの顕微鏡画像は、明視野像と称することができる。
【0052】
このような画像を記録するためには、ビームが対象物領域9で合焦されるロケーション7を、対象物領域に対して相対的に変位させ、異なる変位位置と関連付けた多くの検出信号を記録すると有利である。この目的のため、照明系3は、光軸19に沿って互いに離間させて配置した2個の偏向子63および65を有する偏向系61を備える。粒子ビームの粒子が電子である、上述の実施形態において、顕微鏡1の偏向子63,65、ならびに他の全ての偏向子は、静電気偏向子、磁気偏向子、またはこれら静電気偏向子および磁気偏向子の組合せとすることができる。
【0053】
上述した例において、偏向子63は、平面23に配置し、ビーム5を偏向させる。また、平面23は、レンズ41により対象物平面8に結像される平面である。他の実施形態によれば、偏向子は、平面23とは異なる平面に配置することもできる。図1に偏向ビームの一例を破線で示し、同じ参照符号の実線で示すのは、偏向されていないビームである。ここで偏向ビームの参照符号にはアポストロフィを付して示す。偏向子63を付勢することで、主ビーム方向が光軸19に対して角度αに指向するようビームを偏向させることができる。偏向されたビームは、そのリング状の断面を維持し、偏向子63によって変化しない。偏向されたビームは、外側円錐エンベロープ表面35′および内側円錐エンベロープ表面37′によって画定される。
【0054】
偏向子65は、偏向子63の偏向方向と反対方向にビームを偏向させ、偏向されたビームが、レンズ41のフロント焦点面67を、偏向されないビームと同一のリング状断面で通過するようにする。結果として、偏向されたビーム35′,37′は対象物平面8上でロケーション7′に合焦され、このロケーション7′は、偏向されないビームが合焦するロケーション7から離間して位置する。偏向子63および65を操作することで、ビームが合焦されるサンプル内のロケーション7を、光軸に対して横方向に変位させることができる。偏向子63および65を操作することによるロケーション7の変位は、対象物領域を系統的に走査することにより行うことができ、例えば、平面8におけるX方向をメイン走査方向とし、X方向に直交するY方向をサブ走査方向とする。
【0055】
さらに、粒子用光学レンズ41のパワー(屈折力)を変化させて、粒子ビームが対象物領域9内で合焦されるロケーション7を、光軸19に平行な方向に変化させることもできる。したがって、偏向系61を操作し、またレンズ41の屈折力を変化させることで、対象物領域9の体積を系統的に走査(スキャン)することができ、ここでは、例えば、光軸9に沿う方向は、走査プロセスのZ方向またはサブ−サブ走査方向を表す。検出器53が生成する検出信号は、サンプル11の走査された領域の記録した粒子光学画像の立体画素またはボクセルを表す画像信号に変換することができる。
【0056】
図3は、図1および図2につき説明した粒子ビーム顕微鏡に類似した構成を有する粒子ビーム顕微鏡の、構成部材およびビーム経路を示す線的説明図である。図1および図2に示す顕微鏡に対する粒子ビーム顕微鏡1aの主な相違点は、検出系13aに、図1に示す粒子ビーム顕微鏡の開口プレート55とは異なる機能を有する開口プレート101を設けた点である。図4に示すのは、開口プレート101の線的正面図である。開口プレート101は、粒子ビーム顕微鏡1aの光軸19aに対して半径方向距離に互いに離間するように配置した2個の開口105および107を有するプレート103を備える。半径方向内方の開口107は、光軸19aから距離r1に位置する外側周端縁106に画定される円形開口である。開口105は、光軸19aから、距離r1より大きい距離r2に位置する内側周端縁109と、光軸19aから、r2よりも大きい距離r3に位置する外側周端縁107と、により画定されるリング状の開口である。プレート103は、開口107の外側周端縁106と、開口105の内側周端縁109との間に延在するリング111を生じ、このリング111は、プレート103のリンク31aにより担持する。
【0057】
開口プレート101は、顕微鏡1aのビーム経路において、対象物領域9aの下領域で、レンズ51aの焦点面54aに配置し、実質的に散乱せずに対象物領域9aを通過した第1グループの粒子が、リング111に入射してプレート103に吸収されるような寸法の開口105および107を有する。対象物領域9aにおいて散乱プロセスを受け、散乱限界角度より大きい散乱角度で散乱した第2グループの粒子のみが、開口プレート101を、開口105および107のいずれかを通じて通過する。光軸19aに向かって散乱した、第2グループの第1サブグループの粒子は、開口プレート101を、開口107を経て通過し、光軸から離れる方向に散乱した、第2グループの第2サブグループの粒子は、開口プレート101を、開口105を経て通過する。開口プレート101を通過した第2グループの粒子を検出するための検出器113は、ビーム経路において開口プレート101の下流域に配置する。検出器113の検出信号から生成された粒子光学画像は、サンプル11aにおいて有意な散乱を受ける粒子による検出事象から生成されているため、暗視野像と称することができる。
【0058】
さらに他の実施形態における粒子ビーム顕微鏡1bを図5に示す。粒子ビーム顕微鏡1bは、図1〜4につき説明した粒子ビーム顕微鏡に類似の構成を有するが、その検出系13bの構成および機能において、主に相違する。検出系13bは、ビーム経路において、対象物領域9bの下流域に配置し、第1グループの粒子を検出するよう構成した検出器53bを備える。検出系13bは、さらに、ビーム経路において検出器53bの下流域に配置し、第2グループの粒子を検出するよう構成した第2検出器111bを備える。検出系13bは、さらに、画像平面8bがレンズ51bによって結像される平面132に配置した開口プレート163を備える。開口プレート163は、第2グループの第2サブグループの粒子が、開口プレート163によって吸収されるとともに、第2グループの第1サブグループの粒子が開口165を通過するような寸法の中心開口165を有する。このようにして、検出器111bは、第2グループの第1サブグループの粒子を検出する。
【0059】
開口55bおよび検出器53bの正面図を図6に示す。検出器53bは、リング状の検出面121を備え、この検出面121は、その半径方向において、光軸19bから距離r1に位置する、中央開口125の外側周端縁123によって画定する。第2グループの第1サブグループの粒子は、検出器53をその開口125から通過して、検出器111bに入射することができる。
【0060】
ビーム経路において検出器53bの上方に配置した開口プレート55bは、光軸19bから距離r2に位置する外側周端縁57bによって画定される中心開口を有するプレート26bを備える。第2グループの第2サブグループの粒子は、全てプレート26bに入射し、プレート26bに吸収される一方で、第1グループの粒子は、開口プレート55bを、その開口57bから通過し、検出器53bの検出面121に入射して、この検出器53bによって検出することができる。
【0061】
このようにして、粒子ビーム顕微鏡1bは、検出器53bの検出信号から明視野画像を生成し、検出器111bの検出信号から暗視野像を生成するよう構成する。
【0062】
図7に示すのは、さらに他の実施形態における粒子ビーム顕微鏡1cであって、図1〜6につき説明した粒子顕微鏡と類似点を有するが、これらの顕微鏡とは検出系13cの構成および機能において異なる。
【0063】
検出系13cは、第1グループの粒子を検出するように構成した検出器53cと、第2グループの第1サブグループの粒子を検出するよう構成した検出器111c1と、第2グループの第2サブグループの粒子を検出するように構成した検出器111c2とを備える。
【0064】
主平面52cを有する粒子用光学レンズ51cはビーム経路において対物領域9cの下流域に配置し、レンズ51cの対象物平面8cが対象物領域9cに位置するよう配置する。検出器111c2はビーム経路においてレンズ51cの下方に配置し、検出器111c2の検出面112cが、レンズ51cの後側焦点面54cに位置するよう配置する。検出器111c2は中心開口を備え、検出面112cが中心開口の外側周端縁107cによって画定されるようにする。開口の外側周端縁107cは、第2グループの第2サブグループの粒子のみが、検出面112cに入射して検出器111c2によって検出されるような寸法を有する。検出器111c2は、サンプル11cを通過する間に、光軸から離れる方向に散乱した粒子を検出する。他の粒子は、検出器111c2の開口および第2粒子用光学レンズ131を通過する。レンズ131は、対象物平面8cが、粒子用光学レンズ131の主平面132に結像されるように配置した主平面132を有する。レンズ131は、レンズ51cの後側焦点面54cを平面133に結像し、一方で、検出器53cの検出面もまた、画像平面133に位置する。検出器53cは中心開口を有し、検出器53cの検出面はその中心開口の外側周端縁123cによって画定し、中心開口の寸法は、第1グループの粒子が、検出器53cの検出面に入射するように決める。第2グループの第2サブグループの粒子は、検出器53cを、その中心開口を経て通過し、検出器111c1に入射して検出される。
【0065】
図7中の破線はリング円錐状ビームのビーム経路を示し、このビームは、対象物平面8cにおいて、光軸9cからある距離に位置するロケーション7c′に合焦される。合焦ロケーション7cの位置を光軸19cから変位するのは、対象物平面8cの上流域に配置した、図示しない偏向系により行う。図7中、破線で示すビーム経路は、粒子用光学レンズ131の機能を示す。レンズの機能により、入射ビームが合焦するロケーション7cに関わりなく、ほとんど散乱せずにサンプルを通過した第1グループの粒子を検出することができる。同様に、検出器111c1は、対象物平面8cで入射ビームが合焦するロケーション7c′に関わりなく、第2グループの第1サブグループの粒子も検出する。
【0066】
図7に示す実施形態の粒子ビーム顕微鏡によれば、検出器53cおよび111c1を、異なる2つの平面にではなく、同じ平面に配置することが可能である。検出器53cおよび111c1が配置される同じ平面は、この場合、レンズ51cの後側焦点面54cが、レンズ131により結像される図7中の平面133とすることができる。このような検出器53cおよび111c1の構成は、セグメント化したリング部分を有するセグメント化した検出器により達成でき、このとき、検出器の中央部分を検出器111c1とし、検出器の外側リング部分を検出器53cとする。同様に、平面133に検出素子またはピクセルの二次元アレイを有する検出器を設けることも可能であり、この場合、中央グループのピクセルの検出信号を組み合わせて、検出器111c1の検出信号に対応する検出信号を供給し、外側リング状のグループにおけるピクセルの検出信号を組み合わせて、検出器53cの検出信号に対応する検出信号を供給する。
【0067】
図8に示すのはさらに他の実施形態における粒子ビーム顕微鏡1dの一部分の線的説明図である。粒子ビーム顕微鏡1dは、透過型電子顕微鏡であり、照明系3dが、サンプル11dを配置できる対象物平面8dの拡張した領域を照らす。平面8dの照らされた領域は、開口プレート25dにより画定し、この開口プレート25dは、粒子用光学レンズ41dによって対象物平面8dに結像される平面23dに配置する。開口プレート141は、レンズ41dの前側焦点面67dに配置する。開口プレート141は、内側周端縁147および外側周端縁145により画定されるリング状の開口43dを有する。リング状の開口43dは、図8に示す例示的なロケーション7dおよび7d′の双方が、開口プレート141により形成されたリング円錐形状の粒子ビームにより照らされるという効果を有し、この場合、ロケーション7dおよびロケーション7d′に入射するビームは、同一の内側頂角および同一の外側頂角を有し、また、内側頂角は内側周端縁147により規定され、外側頂角は外側周端縁145により規定される。
【0068】
ビーム経路において対象物平面8dの下流域に配置した検出系13dは、対象物平面8dを画像平面100dに結像するための、主平面52dを有する粒子用光学レンズ51dを備える。検出器53dは、画像平面100dに配置する。対象物平面8dにおいて互いに離間するロケーション7dおよび7d′は、それぞれ画像平面100dのロケーション10dおよび10d′に結像されて、サンプル11dの空間的に解像された画像を、位置検出器53dで検出することができる。
【0069】
開口プレート101dは、レンズ51dの後側焦点面54dに配置する。図9に示すのは開口プレート101dの正面図である。リング状の開口107dの外側周端縁106は、サンプル11dを、ほとんど散乱せずに通過する粒子が、開口107dを通過できるような寸法を有する。これら粒子の軌道は、図8中の線41dの半径方向内方、かつ、図8中の線43dの半径方向外方に延在する。開口プレート101dの外側周端縁106および内側周端縁151は、さらに、散乱しなかった粒子41d,43dとは別に、サンプル11dにて有意な散乱角度で散乱した粒子も、開口107を通過し得るよう構成する。これら粒子の軌道は、図8中の線41d′で示し、開口107dの外側周端縁106によって画定される外側円錐表面の半径方向内側にて延在し、図8中の線43d′で示した、リング状の開口107dの内側周端縁151に画定される内側円錐表面の半径方向外方に位置する。
【0070】
検出器53dの検出信号は、ほとんど散乱せずにサンプル11dを通過した粒子、または、散乱限界角度よりも小さい角度で散乱した、サンプル11dを通過した粒子を示す。このような検出信号で生成した画像は、比較的大きいコントラストを有する。このコントラストは、位相変化素子152をリング状の開口107dの内に設けることでさらに改善される。位相変化素子152は、ほとんど散乱せずにサンプル11dを通過した粒子の位相を、サンプル11dにて一定の角度で散乱した粒子に対して相対的にシフトさせる。位相変化に適した位相変化素子の実施形態例は、例えば、参照として本明細書に付記する米国特許出願公開第2003/0132383号に開示されている。
【0071】
図10に示すのは、さらに他の粒子ビーム顕微鏡1eにおける一部の線的説明図である。粒子ビーム顕微鏡1eは、図1〜9ににつき説明した顕微鏡と類似した構成を有する。また、粒子ビーム顕微鏡1eは、リング状の断面を有する粒子ビームを、サンプル11eのロケーション7eにて合焦させるよう構成した照明系(図10には示さない)を備える。サンプル11eで散乱した、またはほとんど散乱せずにサンプル11eを通過する粒子を、粒子用光学レンズ51eによって、平面132eにて合焦させる。小さい開口を有する開口163eは、平面132eに配置する。開口プレート163eは、合焦した領域7eの外側でサンプルにおいて散乱した粒子を吸収する。したがって、開口プレート163eは、焦点領域7eからの粒子のみが開口165eを通過させることができる。開口プレート163eを通過する粒子は、その後、検出することができる。
【0072】
走査補償(デスキャン)系167を、ビーム経路において、レンズ51eと平面132eとの間に配置する。この走査補償系167は、ビーム経路に沿って2個の互いに離間する偏向素子169および171を備え、これらは、平面8e上でロケーション7eを変位させるのに用いられる照明系の走査系(図10に示さない)と同時に付勢する。照明系の走査系は、図1につき説明したのと同じ構成を備えるものとすることができる。走査補償系167を使用して、合焦したロケーション7eの走査を平面8eで補償して、合焦したロケーション7eが、走査系による、合焦ロケーション7eの走査位置に関わりなく、開口プレート63eの開口165eに結像されるようにする。
【0073】
1個または複数の粒子用光学レンズを備える投射系171は、顕微鏡1eのビーム経路において、開口プレート163eの下流域に配置する。投射系171は、レンズ51eの後側焦点面54eをエネルギー損失スペクトロメータ(分光計)179の入射面173に結像する。リング状の開口177を有する開口プレート175は、平面173に配置する。リング状の開口177の位置決めおよび寸法決めは、ほとんど散乱せずにサンプル11eを通過した、またはサンプル11eにおいて、散乱限界角度よりも小さい散乱角度で散乱した粒子が通過できるように行う。これら粒子は、開口プレート175の下流域で検出し、やはり明視野画像信号と称することができる画像信号に寄与する。
【0074】
図10に示す、粒子ビーム顕微鏡1eの例示的実施形態によれば、開口プレート175は、リング状の開口177を有する粒子検出器の機能を達成するように構成することができる。ほとんど散乱せずにサンプル11eを通過した、またはサンプル11eにおいて散乱限界角度よりも小さい散乱角度で散乱した粒子は、検出器のリング状の開口177を通過し、エネルギー損失スペクトロメータ179を通過した後に検出器53eで検出される。サンプルにおいて散乱リミット角度よりも大きい散乱角度で散乱した粒子は、平面173に配置した検出器の検出面に入射し、暗視野信号と称することができる画像信号に寄与する。
【0075】
図10に示す、粒子ビーム顕微鏡1eのさらに他の実施形態によれば、検出器を平面54eに配置することも可能であり、この場合、この検出器は中心開口を有し、ほとんど散乱せずにサンプル11eを通過した、または光軸19cに向かって散乱した粒子がこの中心開口を通過することで、この検出器は、サンプル11eを通過する際に光軸19eから離れる方向に散乱した粒子を検出することができる。平面54eに配置するこのような検出器の構成例は、図6中、検出器111c2として示す。平面54eに配置される検出器の利点は、図10に示す実施形態と比べると、開口プレート163の開口165の径を縮小することができる点にある。開口165eの径を縮小することで、開口の下流域における粒子検出の選択性が向上するという利点が得られる。さらに、中心円形検出面を有する検出器は、平面173に配置することができ、この場合、このような検出面の外側周端縁は、開口プレート175の開口177における半径方向内方の端縁となる。この検出器は、サンプル11eで光軸19eに向かって、散乱限界角度より大きく散乱した粒子を有する第2グループの第1サブグループの粒子を検出する。
【0076】
図10に示す粒子ビーム顕微鏡1eの平面173におけるリング状の開口177を通過した粒子は、平面173の下流域に配置したエネルギー損失スペクトロメータ179を通過し、またエネルギー損失スペクトロメータ179の出力平面183に配置した検出器53eに入射する。エネルギー損失スペクトロメータ179の分散に起因して、平面183において、ラインフォーカス(線状焦点)が形成される。換言すると、異なる運動エネルギーを有する粒子は、検出器53e上のラインフォーカスにおける異なるロケーションに入射する。検出器53eは、サンプル11eを通過した粒子のエネルギー損失スペクトラムを検出する位置検出器とする。この場合、ラインフォーカスが形成される平面183を、このとき検出器53eを位置決めする後続の平面に結像するための、さらに他の結像系を使うことができる。このような結像は、検出のエネルギー分解能を向上させるために拡大結像とすることができる。
【0077】
図10に示す粒子ビーム顕微鏡1eの一実施形態によれば、スリット状の開口を有する開口プレートを平面183に配置することも可能であり、この場合、サンプル11eで非弾性散乱プロセスを受けた粒子がプレートに吸収され、サンプルで弾性散乱を受けた粒子が、開口を通過して、後続の検出器により検出することができる。このような検出器は、弾性明視野信号と称することができる検出信号を生成する。
【0078】
図11に示すのは、図1〜10につき説明した粒子ビーム顕微鏡と類似した構成および機能を有する粒子ビーム顕微鏡1fの線的説明図である。また、粒子ビーム顕微鏡1fは、リング状の断面を有する粒子ビームをサンプル11fのロケーション7fに合焦させるように構成した照明系3fを有する。しかしながら、粒子ビーム顕微鏡1fは、ロケーション7fに合焦されたビームの主ビーム方向171を、粒子ビーム顕微鏡1fの光軸19fに対して傾けるように構成する。この目的のため、照明系3fには、粒子源15f、集光レンズ21f、および集光レンズ21fの下流域に配置した、リング状の開口27fを有する開口プレート25fを備え、この場合、この開口プレート25fは、リング状の断面を有し、平面23fに合焦されるビームのみが通過することができる。
【0079】
粒子用光学レンズ41fは、平面23fを、ロケーション7fがサンプル11f内に位置する対象物平面8fに結像する。2個の偏向子63fおよび65fは、ビーム経路において、開口プレート25fとレンズ41fとの間に配置する。偏向子63fおよび65fは、ビームが合焦するロケーション7fを平面8f内で変位できるよう、また、主ビーム方向171を、電子ビーム顕微鏡1fの光軸19fに対して相対的に傾けることができるように構成し、コントローラにより付勢するよう構成する。このようにして、主ビーム方向171の異なる傾き角度における、サンプル11fの粒子顕微鏡画像を得ることが可能である。主ビーム方向をこのように傾けることで、以下のような利点が達成される。
【0080】
図11には、対象物平面8fの外側に配置し、粒子ビームの粒子を高い吸収率で吸収する例示的な構造を参照符号173で示す。サンプル11f内に埋設した構造173は、リング円錐形であって、その主ビーム方向171が光軸19fに平行に指向する粒子ビームの内に位置することは明らかである。しかしながら、図11に示す状況において、主ビーム方向171は光軸19fに相対的に傾けられているため、吸収構造173は、リング状の粒子ビームの外側に位置しており、ビームが合焦するロケーション7fに対応する検出信号を妨害しない。このため、サンプル11fにて同じロケーション7fと関連付けられているが、主ビーム方向の171傾きによって変化する、検出される粒子の強度の違いを検出することが可能である。このような違いに基づいて、サンプル11f内ではあるが対象物平面8fの外側に位置する粒子173に起因する検出信号の外乱を除去することが可能である。
【0081】
粒子ビーム顕微鏡1fの検出系13fは、対物レンズ51fを備え、対象物平面8fを画像平面132fに結像し、これはさらに、粒子用光学レンズ181によって画像平面182に結像される。第1グループの粒子を検出するための検出器53f、および第2グループの粒子を検出するための検出器111fを、ビーム経路において、レンズ181の下流域に配置する。偏向子184は、画像平面132fに配置し、光軸19fに対し相対的に傾けられたビームを偏向して、偏向子184fの下流域において、再び粒子ビーム顕微鏡1fの光軸19fに平行になるようにする。コントローラは、偏向子184を、照明系3fが備える偏向系61fの偏向子63fおよび65fに同期させて付勢するよう構成し、これにより、偏向系61fにより生ずる、サンプル11fに入射するビームの主ビーム方向の傾きが、サンプル11fの下流域、かつ、検出器53fおよび111f、またはサンプル11fを通過した粒子を検出するために使用することのできる他のいかなる検出器の上流域に配置した偏向子18によって補償する。
【0082】
図1〜11に示すのは、サンプルに指向させられた照射ビームがリング状の断面を有する粒子ビーム顕微鏡の例であり、このような照射ビームは、リング状の開口を有する開口プレートを用いて生成する。以下、図12につき、リング状の断面を有するビームを生成するためのさらに他の選択肢を説明する。この選択肢は、本願明細書にて開示する電子ビーム顕微鏡の全ての実施例において使用することができる。図12に示す照明系3gは、粒子ビーム17gを発する粒子源15gを備え、この粒子ビーム17gは、レンズ21gにより合焦される。レンズ21gは、図12から見て取れるように、比較的高い球面収差を有し、平面201を光軸19gから異なる距離で通過する粒子の例示的な軌道203gは、光軸と、その光軸19g上の異なる位置205で交差する。円形開口209を有する開口プレート207を、平面201に配置し、開口204を有する開口プレート213を、平面201の下流域において平面211に配置する。開口プレート213の開口204は、軌道203の一部のみを通過させることができる。開口204を通過できるこれらの軌道は、開口プレート213の下流域においてリング状のビームを形成し、このリング状のビームは、合焦レンズ41gにより、サンプル内のロケーション7gに合焦することができる。開口プレート213の開口204の径は、例えば10μm程度の小さい直径とすることができ、光軸19gに対して精密に調整しなければならない。
【0083】
図13に示すのは、粒子ビーム顕微鏡1hの詳細を表した線的説明図であり、この粒子ビーム顕微鏡1hは、リング状の断面を有する粒子ビームをサンプル11hのロケーション7hに合焦させるよう構成した照明系を備える。ロケーション7hに合焦されるビームは、円錐形の内側エンベロープ表面37hと円錐形の外側エンベロープ表面35hとを有する。粒子用光学レンズ51hは、ビーム経路においてサンプル11hの下流域に配置し、リング状の開口を有する開口プレート101を配置する後側焦平面54hを備える。リング状の開口は、半径方向内側端縁151h、および半径方向外側端縁106hにより画定される。合焦ロケーション7hにおいて散乱しなかった、または合焦ロケーション7hにおいて散乱限界角度よりも小さい散乱角度で散乱した粒子は、開口プレート101hのリング状の開口を経て通過できる。これら粒子は、ビーム経路において開口プレート101hの下流域に配置した検出器53hにより検出する。
【0084】
図13には、サンプル11hの、合焦ロケーション7hから離れて位置するロケーション7h′において散乱した粒子の、2通りの例示的軌道156を示す。しかしながら、ロケーション7h′は、リング状の合焦した入射ビームの中に位置する、すなわち、ロケーション7h′は、エンベロープ表面37hおよび35hの間に位置する。このため、入射粒子は、ロケーション7h′で散乱し、例示的に示した軌道156に沿って伝播することができる。これら粒子は、開口プレート101hに入射し、開口プレート101hに吸収され、典型的には開口プレート101hをそのリング状の開口を経て通過することはできない。合焦ロケーション7hから離れて散乱した入射粒子の大多数は、検出器53hに到達することはなく、したがって、検出器53hに記録される検出信号に寄与することはない。レンズ51hの後側焦点面54hに位置するリング状の開口は、合焦ロケーション7hからある距離離れて散乱した粒子に起因して生じ得る攪乱信号を低減するのに適している。
【0085】
図13からさらに見て取れるように、合焦ロケーション7hの右側に位置するロケーション7h′における散乱構造は、ビームの粒子を散乱させて、これらが開口プレート101hにおいて光軸19hの左側に入射するようにする。光軸19からある距離離れて位置する散乱構造において散乱するビームの粒子は、開口プレート101hに対して光軸19hの周囲に一様でない強度分布となって入射する。図7に示す実施形態によれば、検出器、例えば図7中の検出器111c2は、光軸19hの周囲に分布させた、複数の検出素子を備える。このような検出器は、一様でない強度分布を検出するために、後側焦点面54hに配置することができる。このような検出器は、合焦ロケーション7hから離れたロケーションにおいて散乱したビームの粒子を検出するのに使用することができる。他方、合焦ロケーション7hにおいて散乱した粒子もまた検出器に入射する。しかし、これら粒子は、光軸19hの周囲において、一様な強度分布を生成する。上記の、光軸19h周りに分布させた複数の検出セグメントを備え、後側焦点面54hに配置し、セグメント化した検出器を用いることで、合焦ロケーション7hから離れて位置する散乱構造に起因する散乱事象を、合焦ロケーション7hに位置する構造に起因する散乱事象から識別することができる。
【0086】
図14は、さらに他の実施形態における粒子ビーム顕微鏡1iの線的説明図である。顕微鏡は、リング状の断面を有し、サンプル11iのロケーション7iで合焦する粒子ビームを生成する照明系3iを備える。粒子ビーム顕微鏡1iは、図1〜13につき説明した粒子ビーム顕微鏡とは以下の点で異なる、すなわち、検出系13iが、少なくとも1個の検出器を備え、この検出器をサンプルの下流域に配置し、サンプル11iと少なくとも1個の検出器との間に粒子用光学レンズを設けていない、という点において相違する。照明系3iは、1個の偏向子または2個の偏向子63i,65i、もしくはさらに多くの偏向子を有する偏向系61fを備え、サンプル11iにおいてビームが合焦するロケーション7iを、顕微鏡1iの光軸19iに通過する方向に変位させるよう構成する。図14中の破線は、ビームが光軸19iから離れたロケーション7i′で合焦する例示的状況におけるビーム経路である。開口プレートの内側周端縁57iに画定される円形開口を有する開口プレート55iを、ビーム経路において、サンプル11iの下流域に配置する。円形開口の直径は、ほとんど散乱せずにサンプル11iを通過した粒子が、開口プレート55iに入射するように選択する。これら粒子は、開口55iを通過することはできない。同様に、サンプルで光軸19iから離れる方向に散乱した粒子も、開口プレート55iを通過することができない。他方、サンプル11iにて大きな散乱角度で光軸19iに向かって散乱した粒子は、開口プレート55iを、その円形開口を経て通過することができ、検出器113iに入射する。このため、検出器113iで、暗視野信号を検出することが可能である。
【0087】
上述の、リング状の断面を有する合焦した粒子ビームを生成するための選択肢には、ビームを、常に、粒子がビームのリング状の全断面内に存在するように生成することがある。しかしまた、小さい全断面を有するビームを順次に偏向する、すなわち、偏向子を用いて順次に走査し、リング状の断面を有するビームに対応する全ての方向に偏向させることで、リング状の断面を有するビームの効果を達成することもすることも可能である。断面が小さいビームは、異なる方向から異なる時点に合焦ロケーションに入射する。このような走査されたビームの粒子から検出される検出信号は、角度走査を行うのに必要な持続時間にわたり平均をとることができ、平均化した検出信号が、入射ビームが完全リング状の断面を有する上述の例における検出器により生成される検出信号に対応するようになる。このような、リング状の断面を有するビームの生成は、入射ビームの大部分を吸収するリング状の開口が必要でなく、また、粒子ビーム源の生成する粒子の大部分がサンプルに入射するのに用いられ得るという点で、上述の例よりも利点がある。
【0088】
上述の例において、さらに、円錐合焦ビームの頂角を変化させ、ビームの異なる頂角における測定結果を記録することが可能である。このような測定結果のそれぞれが、サンプルの、ビームが合焦するロケーションから離れたロケーションにて散乱した入射粒子に起因する信号成分を含む。したがって、信号成分は、頂角に従って変化する。他方、合焦ロケーションにおいて散乱した粒子に由来する信号成分は、全ての測定結果において同じ強度で存在する。このため、頂角を変化させることを使用して、合焦ロケーションから離れたロケーションでの散乱イベントに起因する攪乱信号を除去することができる。
【0089】
同様に、図11につき上述したのと同じ目的で、入射ビームの主ビーム方向を変化させることもできる。この場合、やはり、主ビーム方向を変えて複数の測定を行うことができ、このような測定結果の比較を使用して、合焦ロケーションから離れたロケーションにおける散乱事象に起因する攪乱信号を除去することができる。したがって、このような主ビーム方向や頂角の変化から得られる粒子顕微鏡画像は、高い画像コントラストを有する。
【0090】
上述の例において、対象物領域は、リング状の断面を有する粒子ビームで照射する。このようなビームの円錐内側エンベロープの頂角は、その値を例えば、30mrad、60mrad、および90mradとする。
【0091】
ビームの、円錐内側エンベロープの頂角と、円錐外側エンベロープの頂角との角度差は、例えば、0.1mrad、0.5mradとすることができ、また他の値にすることもできる。このような、リング状の断面を有する粒子ビームを用いることで、比較的小さい寸法の焦点領域を得ることが可能となる。
【0092】
上述の実施形態は粒子用光学レンズを使用して、粒子ビームを対象物領域にて合焦させ、対象物領域から検出器に向かって発射される粒子を方向付け、また、検出器および/または開口を有する開口プレートを配置することのできる結像平面および焦点面を得る。粒子用光学レンズは、静電場、磁場、および請電場と磁場との組合せを生じて、レンズを通過する粒子に合焦レンズパワーを与えるものとすることができる。この場合、上述の実施例において単レンズであり、しばしば楕円形状を有するものとして示す全ての個別レンズは、実施に際しては、複数の個別レンズにより設けることができる。このため、上記の例に示す各レンズは、実施に際しては、複数のレンズで置き換えることも可能である。同様に、上記の例における2つの隣接する各レンズは、実施に際して1つの単レンズとすることもできる。例えば、図1に示す2つのレンズ41および51の機能は、適切な構成を有する1つの単レンズによって得ることが良く知られている。
【0093】
さらに、球面収差および粒子ビームの合焦に際して発生する色収差を低減するために補正レンズ系を使用することも可能である。このようなレンズ系は、国際公開第02/067286号パンフレット、欧州特許出願公開第0530640号明細書、および欧州特許出願公開第0451370号明細書から既知であり、これら文献を、本明細書に参照用として付記する。
【0094】
以上、本発明をその特定の実施形態に基づき説明してきたが、当業者には、様々な代替、変更、改変があり得ることは明らかであろう。したがって、本明細書において説明した本発明の例示的実施形態は、説明のためのものであり、いかなる態様にも限定する意図を持つものではない。以下に添付する請求の範囲に規定される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物領域を通過するビーム経路を生ずる粒子ビーム顕微鏡であって、前記粒子ビーム顕微鏡は、
前記ビーム経路内で前記対象物領域の上流域に配置し、第1粒子用光学レンズを有する照明系であって、粒子が、前記ビーム経路の主軸に対して所定の内側頂角よりも大きい角度を持って指向する方向からのみ前記対象物領域に入射するように、粒子を前記対象物領域へと方向付けるよう構成した、該照明系と、
前記ビーム経路内で前記対象物領域の下流域に配置し、前記対象物領域を通過した粒子の2つのグループにおける一方のグループのみを選択的に検出するよう構成した選択的検出系であって、前記2つの粒子グループの第1グループは、前記対象物領域を直線に沿って通過した粒子、および前記対象物領域において散乱限界角度よりも小さい散乱角度で散乱した粒子のみを含み、前記2つの粒子グループの第2グループは、前記対象物領域において散乱限界角度よりも大きい散乱角度で散乱した粒子のみを含むものとした、該選択的検出系と、
を備える粒子ビーム顕微鏡。
【請求項2】
請求項1記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、さらに、前記粒子が、前記ビーム経路の主軸に対して所定の外側頂角よりも小さい角度を持って指向する方向からのみ前記対象物領域に入射するように、粒子を前記対象物領域へと方向付けるよう構成したものである、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項3】
請求項1または2記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記内側頂角が、30mrad、60mradおよび90mradのいずれか1つよりも大きい、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記外側頂角と前記内側頂角との比が、1.1、1.02、1.005のうち、少なくとも1つよりも小さい、若しくはこれと等しい、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記外側頂角と前記内側頂角の差が、0.1mrad、0.5mradおよび5.0mradのうち、少なくとも1つよりも大きい、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記外側頂角と前記内側頂角との差が、20mrad、10mradおよび5mradのうち、少なくとも1つよりも小さい、若しくはこれと等しい、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、粒子を、前記対象物領域に配置した対象物平面における拡張した領域に方向付けるよう構成したものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項8】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、粒子を、前記対象物領域における合焦ロケーションに合焦するよう構成した粒子ビーム顕微鏡。
【請求項9】
請求項8記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、前記合焦ロケーションを、主軸に対して交差する方向に変位させるよう構成した、少なくとも1個の偏向子を備えたものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、前記ビーム経路の主軸の方向を、前記照明系の合焦レンズの光軸に対して相対的に変化させるよう構成した、少なくとも1個の偏向子を備えたものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、前記内側頂角と前記外側頂角の少なくとも一方を、0.1mradよりも大きく変化させるよう構成したものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は、前記光軸から離れて位置する半径方向内方端縁を有する少なくとも1個の開口を有する第1開口プレートを備えたものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項13】
請求項12記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記照明系は合焦レンズを備え、前記第1開口プレートは、前記粒子用光学レンズの前側焦点面、または前記粒子用光学レンズの前記前側焦点面に共役な平面のいずれか一方に配置した、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記検出系は、前記光軸から離間して位置する半径方向内方端縁および半径方向外方端縁の少なくとも一方を有する少なくとも1個の開口を有する少なくとも1個の第2開口プレートを備えるものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項15】
請求項14記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記検出系は、前記第2開口プレートの下流域に配置した第1検出器を備えるものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項16】
請求項14または15記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記第2開口プレートは、第2検出器を有するものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項17】
請求項14〜16のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記第2開口は、前記第1グループの粒子のみが通過できるような寸法を有するものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項18】
請求項14〜17のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記第2開口は、前記第2グループが有する2つの粒子サブグループのうち少なくとも一方が前記第2開口プレートに入射し、また前記第1粒子グループの少なくとも一方、および前記第2粒子グループの前記粒子サブグループの一方のみが前記第2開口を通過するような寸法を有し、前記第1粒子サブグループは、前記対象物領域において前記光軸に向かって散乱した前記第2グループの粒子のみを含み、また、前記第2サブグループの粒子は、前記対象物領域において前記光軸から離れる方向に向かって散乱した前記第2グループの粒子のみを含むものである粒子ビーム顕微鏡。
【請求項19】
請求項14〜18のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記第2開口プレートは、第1開口部分および第2開口部分を有し、前記第2開口部分の半径方向内方端縁は、前記光軸から、前記第1開口部分の半径方向外方端縁よりも大きい距離で離間して位置する、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項20】
請求項1〜19のうちいずれか一項記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記検出系は、前記対象物領域に配置した対象物平面を結像平面に結像する粒子用光学レンズを備える粒子ビーム顕微鏡。
【請求項21】
請求項20記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記第2開口プレートは、前記検出系の前記粒子用光学レンズの後側焦点面、および前記検出系の前記粒子用光学レンズの後側焦点面に共役な平面のうち一方に配置する、粒子ビーム顕微鏡。
【請求項22】
請求項20または21記載の粒子ビーム顕微鏡であって、前記検出系は、結像平面および結像平面に共役な平面のうち一方に配置する第2偏向素子を備える粒子ビーム顕微鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−245046(P2010−245046A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−89884(P2010−89884)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】