粒子状物質検出装置及び粒子状物質検出装置の補正方法
【課題】検出電極間に高電圧を印加して被測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集し、検出電極間の電気的特性の変化を計測して被測定ガス中に粒子状物質量を検出する粒子状物質検出装置において、不可避的に発生する個体差を補正する補正方法と、該補正方法を用いた高精度の粒子状物質検出センサを提供する。
【解決手段】予め測定した既知量の粒子状物質に対する校正用の粒子状物質検出センサの不感質量Q0REFと実測用の粒子状物質検出センサの不感質量Q0とを比較して、不感質量Q0が多く検出された場合には、検出電極11、12間に印加する印加電圧VOUTを所定の範囲(VLL≦VOUT≦VHL)を維持し、不感質量Q0が少なく検出された場合には、検出電極11、12間に印加する印加電圧VOUTを所定の範囲から外れるように増加、又は、減少させることによって、未知量の粒子状物質を検出する際の出力バラツキを小さくする。
【解決手段】予め測定した既知量の粒子状物質に対する校正用の粒子状物質検出センサの不感質量Q0REFと実測用の粒子状物質検出センサの不感質量Q0とを比較して、不感質量Q0が多く検出された場合には、検出電極11、12間に印加する印加電圧VOUTを所定の範囲(VLL≦VOUT≦VHL)を維持し、不感質量Q0が少なく検出された場合には、検出電極11、12間に印加する印加電圧VOUTを所定の範囲から外れるように増加、又は、減少させることによって、未知量の粒子状物質を検出する際の出力バラツキを小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用内燃機関の排気浄化システムに好適に利用されて、被測定ガス中に存在する粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置及び粒子状物質検出装置の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ディーゼルエンジン等において、燃焼排気に含まれる環境汚染物質、特に煤粒子(Soot)及び可溶性有機成分(SOF)を主体とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に燃焼排気を通過させて粒子状物質を捕捉する。
【0003】
DPFは、粒子状物質捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大したり、粒子状物質のすり抜けが増加したりするおそれがあり、定期的に再生処理を行って捕集能力を回復させている。再生時期は、一般的には、粒子状物質捕集量の増加により前後差圧が増大することを利用しており、このため、DPFの上流及び下流の圧力差を検出する差圧センサが設置される。再生処理は、ヒータ加熱あるいはポスト噴射等により高温の燃焼排気をDPF内に導入し、粒子状物質を燃焼除去する。
【0004】
一方、燃焼排気中の粒子状物質を直接検出可能なセンサが、例えば特許文献1、2等に提案されている。このセンサを、DPFの下流に設置した場合には、DPFをすり抜ける粒子状物質量を測定し、車載式故障診断装置(OBD;On Board Diagnosis)において、DPFの作動状態の監視、例えば亀裂や破損といった異常の検出に利用することができる。あるいはDPFの上流に設置して、DPFに流入する粒子状物質量を測定し、差圧センサに代わる再生時期の判断に利用することも検討されている。
【0005】
特許文献1には、絶縁性を有する基板の表面に、一対の櫛形電極を形成し、基板の裏面又は内部に発熱体を形成した電気抵抗式のスモークセンサが開示されている。この種のセンサは、スモーク(微粒炭素)が導電性を有することを利用したもので、検出部となる電極間に、スモークが堆積することで生じる電気抵抗値の変化を検出する。基板材料には、電気絶縁性耐熱材料が用いられ、電極材料となるPt、Ag等の貴金属粉をペースト状にして、平板状基板の表面にスクリーン印刷することにより一対の電極が形成される。基板の裏面側には、電極と相対する部分に発熱体が形成され、検出部を所望の温度(例えば、400℃〜1000℃)に加熱して、電極間抵抗を測定した後に、付着したスモークを焼き切って検出能力を回復させる。
【0006】
特許文献2には、センサ上の煤堆積を制御するため検出電極間に高電圧を印加し、電極間に電界を生じさせ、検出電極の近傍を通過するPMを電界により生じる静電気的な引力によって引き寄せることでPMの捕集を促進し、検出電極間に堆積させ、PMの堆積量によって変化する検出電極間の電気抵抗を計測することによりPMの堆積量を測定することが開示されている。
【0007】
また、被測定ガス中のPMを検出するのに用いられる電気的特性は、検出電極間に堆積するPM量に応じて変化する電気抵抗に限定されるものではなく、静電容量や、電気化学的な反応に伴う電流の変化等の様々な電気的特性が利用できる。
例えば、特許文献3には、一の面が電極間誘電体で被覆をされた板状を呈する一の電極と、その一の電極の一の面の側にPMを含む気体が流れる空間を介して配設をされ、一の電極との間に印加をされる電圧によって放電をする二の電極と、電圧の印加をする集塵用電源と、電極間誘電体の表面に対向して配設をされた一対の測定電極と、その一対の測定電極の間における電気的特性の測定をする特性測定手段と、その特性測定手段で測定をされた電気的特性の変化量に基づいて電極間誘電体の表面に集塵をされたPMの量を求める粒子状物質量算出手段とを備える粒子状物質検出装置が開示され、利用される電気的特性として抵抗、インダクタンス、静電容量、及びインピーダンスが示されている。
【0008】
一方、特許文献4には、少なくとも、プロトン伝導性の固体電解質からなるプロトン導電体と、その表面に形成した測定電極と基準電極とからなる電極対と、該電極対間に所定の電流又は電圧を印加する電源とを具備し、測定電極を被測定ガスに対向せしめ、かつ、基準電極を被測定ガスから隔離せしめた炭素量検出センサが開示されておいり、測定電極表面において被測定ガス中のPMとの電気化学反応によって流れる電流、又は、電圧の変化によってPM量を検出している。
さらに、一般的に、このようなPM検出センサや酸素センサ等のセンサ類は、ハウジングを介して被測定ガス流路に固定され、被測定ガス中に載置された検出部は、所定の開孔を有する略筒状のカバー体によって覆われて保護されている(特許文献5等参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、実際の製造工程においては、センサ素子とカバー体とをハウジングに組み付ける際に、センサ素子の検出部の向きとカバー体に設けた被測定ガス導入孔の方向とを一つずつ合わせることは困難で、センサ素子の方向とカバー体の方向とをセンサごとに合わせていたのでは、極めて作業効率が悪くなり、粒子状物質検出センサの製造コストの増大を招くことになる。
【0010】
一方、センサ素子の方向とカバー体の方向とを考慮することなく粒子状物質検出センサを組み付けた場合、作業効率は向上するが、検出部の向きとカバー体に設けた被測定ガス導入孔の方向がばらばらになるため、センサごとにカバー体内に導入される被測定ガスの流れが異なり、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の検出部への捕集性、及び、粒子状物質の堆積量に対する出力の個体差が大きくなり、センサとしての信頼性が著しく低下する虞がある。
【0011】
また、検出対象であるPMに電界を作用させて静電気的な引力で捕集する捕集用電極が一つのセンサ素子内に複数ある場合、又は、捕集用電極とは別に電気的特性を検出するための検出電極が設けられている場合において、実際の電極間の距離には、不可避的にバラツキが発生し、このような電極間距離のバラツキは、そこに発生する電界強度のバラツキとなり、検出部に捕集するPM量が変化するため、検出結果に個体差を生じることとなる。
画像処理などによって、実際に製造された電極間の距離を測定することは可能ではあるが、製造ロット内の電極間距離の分布から、個々のセンサ素子をランク分類する等して、出力結果のバラツキを小さくすることは極めて困難で、費用対効果も低い。
さらに、センサ素子に貫通孔を設けて、その上下に捕集用電極を設置して、その間に電界を発生させることで、PMを捕集させようとした場合、その電極間の距離を保証することは困難で、実際に発生する電界強度に個体差が生じ、出力結果のバラツキの原因にもなっている。
【0012】
そこで本発明は、上記実情に鑑み、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を高い精度で検出すべく、少なくとも被測定ガスに晒される一対の検出電極を有するセンサ素子と、該センサ素子を保持固定するハウジングと、センサ素子を保護するカバー体とからなる粒子状物質センサと、検出部に電界を生じさせ、静電気的引力により被測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する電界発生電源部と、検出部に堆積する粒子状物質の量によって変化する電気的特性を計測する検出部とを具備し、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出装置において粒子状物質検出センサの製造過程で不可避的に発生する個体差を補正する補正方法と、該補正方法によって得られた補正情報を検出制御に反映させる補正手段を備えた粒子状物質検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明では、電界発生用電源部と、少なくとも、上記電界発生用電源部により発生する電界による引力を利用して測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する捕集用電極と、上記捕集用電極、又は、これとは別に設けた電極を、上記検出部に捕集した粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極としたセンサ素子と、上記センサ素子を保護するカバー体と、上記検出部を被測定ガス中に載置するハウジングとからなる粒子状物質検出センサと、上記検出部に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質によって変化する電気的特性を計測する計測部とを有し、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を所定の印加電圧値に維持して、不感質量を低減させる電界強度に維持し、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を、所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、所定の印加電圧上限閾値より高くして、不感質量を増加させる電界強度に補正する印加電圧補正手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明では、上記印加電圧下限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.0kV/mmとなる電圧であり、上記印加電圧上限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.4kV/mmとなる電圧である。
【0015】
請求項3の発明では、上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量は、電界強度が1.0kV/mmとなる印加電圧にて測定した値であると共に、該測定値を用いて補正を行う。
【0016】
請求項4の発明では、上記粒子状物質検出センサの製造ロットから抽出したサンプルの内、不感質量が最も多いものを上記校正用粒子状物質検出センサとする。
【0017】
請求項5の発明では、電界発生用電源部と、少なくとも、上記電界発生用電源部により発生する電界による引力を利用して測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する捕集用電極と、該捕集用電極、又は、これとは別に設けた電極を、検出部に捕集された粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極とした検出部を有するセンサ素子と、該センサ素子を保護するカバー体と、上記検出部を被測定ガス中に載置するハウジングとからなる粒子状物質検出センサと上記検出部に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質によって変化する電気的特性を計測する計測部とを有し、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置の出力を補正する補正方法であって、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電源部から上記検出部に印加する電圧を、不感質量を最少化する電界強度となる所定の印加電圧下限閾値から所定の印加電圧上限閾値までの範囲内に維持し、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電源部から上記検出電極間に印加する電圧を、上記所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、上記所定の印加電圧上限閾値より高くして、上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量に近似させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子状物質検出センサの製造過程で不可避的に発生する上記捕集用電極の電極間距離のバラツキと、上記センサ素子の方向性と上記カバー体に設けた開孔の方向性とのズレとによって重畳的に拡大されるセンサ出力の個体差に応じて上記電界発生用電源部から上記センサ素子の検出部に印加される電圧の補正によって、粒子状物質の捕集量が増減され、出力結果のバラツキを小さくすることが可能となり、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を高精度で検出可能な信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、センサ素子の概要を示す平面図、(b)は、装置全体を示す構成図。
【図2】(a)は、図1の粒子状物質検出装置に適用される昇圧回路の一例を示す回路図、(b)は、抵抗検出回路及び印加電圧補正手段の一例を示す回路図、(c)は、本発明の補正方法の一例を示すフローチャート。
【図3】(a)は、検出電極間に印加する電圧によって発生する電界強度と捕集性との関係を示す特性図、(b)は、電界強度と不感質量との関係を示す特性図。
【図4】比較例1として、従来のセンサ素子とカバー体との方向性を合わせた場合の個体差を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図5】比較例2として、従来のセンサ素子とカバー体との方向性を合わせていない場合の個体差を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図6】本発明の実施例1として、本発明のセンサ素子とカバー体との方向性を合わせたることなく、補正手段によって出力を補正した場合の個体差を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図7】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の変形例を示し、(a)は、展開斜視図、(b)は、要部断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示す展開斜視図。
【図9】図8の粒子状物質検出装置に適用される回路図の一例。
【図10】比較例3として、図8と類似の粒子状物質検出装置に本発明の補正方法を適用しなかった場合の問題点を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図11】本発明の実施例2として、図8の粒子状物質検出装置における効果を示し、(a)は、検出電極間に印加する電圧によって発生する電界強度と捕集性との関係を示す特性図、(b)は、電界強度と不感質量との関係を示す特性図。
【図12】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の変形例を示す展開斜視図。
【図13】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置を示す展開斜視図。
【図14】図13の粒子状物質検出装置に適用される回路図の一例。
【図15】比較例4として、図13と類似の粒子状物質検出装置に本発明の補正方法を適用しなかった場合の問題点を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図16】本発明の実施例3として、図13の粒子状物質検出装置における効果を示し、(a)は、検出電極間に印加する電圧によって発生する電界強度と捕集性との関係を示す特性図、(b)は、電界強度と不感質量との関係を示す特性図。
【図17】比較例と共に本発明の出力変動抑制の効果を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6について説明する。本発明の粒子状物質検出装置6は、内燃機関の排気浄化装置に適用されて、排出される粒子状物質の検出に好適に利用される。
具体的には、DPFの下流に設置されて、DPFの異常検出に利用することができる。あるいは、DPFの上流に設置されて、DPFに流入する粒子状物質を直接検出するシステムに利用される。
本実施形態における粒子状物質検出装置6は、後述する電界発生用電源部50により生じる電界による引力を利用して測定ガス中のPMを検出部13に捕集する捕集用電極を、検出部13に捕集したPMの量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極11、12としたセンサ素子1と、センサ素子1を保護するカバー体2と、検出部13を被測定ガス中に載置するハウジング3とからなる粒子状物質検出センサ4と、捕集用電極を兼ねた検出用電極11、12間に電界を発生させる電界発生用電源部50と、検出部13に堆積する被測定ガス中に含まれるPM量によって変化する電気的特性を計測する計測部51とを有し、被測定ガス中のPMを検出するものである。
【0021】
特に、図2を参照して後述する補正方法にしたがって、既知量のPMを含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値VREF以上となるまでの不感質量Q0が、基準となる校正用粒子状物質検出センサ4REF(以下、校正用センサ4REFと称する。)の不感質量Q0REFよりも多い場合には、電界発生用電源部50から印加する電圧を所定の印加電圧値VOUTに維持して(VLL≦VOUT≦VHH)、不感質量Q0を低減させる電界強度に維持し、基準となる校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも少ない場合には、電界発生用電源部50から印加する電圧VOUTを、所定の印加電圧下限閾値VLLより低く、又は、所定の印加電圧上限閾値VHHより高くして、不感質量Q0を増加させる電界強度に補正する印加電圧補正手段511を設けたことを特徴とするものである。
また、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFは、電界強度が1.0kV/mmとなる印加電圧VOUTにて測定した値であり、その測定値を用いて、後述の補正方法にしたがって補正を行う。
【0022】
本実施形態における粒子状物質検出装置6は、粒子状物質検出センサ4と検出制御部5とによって構成されている。
粒子状物質検出センサ4は、センサ素子1と、センサ素子1を保護するカバー体2と、センサ素子1を被測定ガス内に載置固定するハウジング3とによって構成されている。
検出制御部5は、電源部50と計測部51とによって構成されている。
センサ素子1は、図1(a)に示すように、少なくとも、絶縁性基体10の表面に、一定の間隙を隔てて対向する一対の検出電極11、12を形成した検出部13を具備する。絶縁性基体10は、アルミナ、チタニア、スピネル等の絶縁性耐熱材料からなり、ドクターブレード法、加圧成形法等の公知の製造方法によって略平板状に形成されている。
【0023】
検出電極11、12は、白金等の導電性材料からなり、スクリーン印刷、メッキ、蒸着等の公知の製造方法によって形成されている。
なお、本実施形態においては、検出電極11、12は、櫛状に形成され、互いに異なる極性の電極が一定間隔で交互に並んで対向するように形成された、いわゆる櫛状電極を構成している。
また、センサ素子1には、検出電極11、12と外部に設けた制御部4とを接続するための検出電極リード部111、121、検出電極端子部112、122が形成されている。
なお、本実施形態においては、検出電極11、12が、被測定ガス中のPMに電界を作用させ、静電気的な引力によって検出部13にPMを捕集する捕集用電極を兼ねており、電源部50は、検出電極11、12間に堆積したPM量に応じて変化する抵抗値等の電気的特性を計測するための計測用電源部と、PMを捕集するために検出電極11、12間に電界を発生させる電界発生用電源部とを兼ねている。
また、捕集用電極は、少なくとも電界発生用電源部50により発生する電界による静電気力などの引力を利用してPMを捕集するものであり、摩擦力、慣性力などの他の引力を同時に利用している場合も含む。
【0024】
センサ素子1は、図1(b)に示すように、センサ素子1の被測定ガスに晒される検出部13が略有底筒状に形成したカバー体2によって覆われて、略筒状に形成したハウジング基体30の内側にインシュレータ31を介して絶縁保持固定され、ハウジング3を介して被測定ガス80の流れる被測定ガス流路8に固定されている。
【0025】
本実施形態においては、カバー体2は、有底筒状に形成された内筒20と外筒21とが重ね合わされた二重筒構造となっており、内筒20、外筒21のそれぞれに設けたカバー開孔201、202、211、212を介して、被測定ガスの流速を抑制しながらセンサ素子1の検出部13に誘導することによって、被測定ガスと共に検出部13に誘導される粒子状物質の粒径が一定以下の範囲となるように流路構成してある。
センサ素子1の検出電極端子部112、122は一対の信号線113、123を介して制御部5に接続されている。
制御部5は、少なくとも、センサ素子1の検出電極11、12間に高電圧を印加する電源部50と検出部13に堆積する粒子状物質の量によって変化する電気的特性を計測する計測部51とを有している。
【0026】
さらに、電源部50は、例えば、図2(a)に示すような電源電圧+Bを所定の電圧に昇圧するDC−DCコンバータ等の昇圧回路500を含んでいる。
本発明において、昇圧回路500の具体的な構成を限定するものではないが、本実施形態では、IGBT、MOSFET等の半導体スイッチング素子Trを駆動回路DRVからの駆動信号によって開閉して、チョークコイルLに蓄えたエネルギをコンデンサCに重畳的に放出し、電源電圧+Bよりも高い出力電圧VOUTに昇圧して検出電極11、12間に印加する構成となっている。
このとき、駆動回路DRVから発振され、スイッチング素子Trを開閉する駆動信号として、周波数を一定としパルス幅の変調によりデューティ比を調整して出力電圧VOUTを制御するPWM制御や、パルス幅を一定としパルス周期の変調により出力電圧VOUTを制御するPFM制御等によって、検出電極11、12間に印加する電圧を増減できる。
【0027】
図1(b)に示すように、計測部51は、検出電極11、12間に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性として検出抵抗RSENを計測する検出抵抗計測手段510と、既知の粒子状物質の量に対して検出抵抗計測手段510によって計測された検出抵抗RSENと、既知の粒子状物質の量に対する標準的な基準検出抵抗RREFとを比較して基準検出抵抗RREFとのずれから、補正方法を決定する印加電圧補正手段511とによって構成されている。
【0028】
より具体的な検出抵抗計測手段510は、図2(b)に示すように、例えば、検出抵抗RSENに対して直列に配設された分圧抵抗R1、R2と、検出抵抗RSENの両端の電位差ΔVを計測する差動増幅回路素子によって構成することができる。
印加電圧VOUTを分圧抵抗R1、R2と検出抵抗RSENとで案分し、検出抵抗RSENの両端の電位差ΔV=VIN−VREF1を差動増幅回路素子等によって計測することにより、検出抵抗RSENを特定することができる。
【0029】
予め既知量の粒子状物質を模した微粒子状カーボンを含む校正用被測定ガスに対する検出抵抗RSENの変化を計測し、未知量の粒子状物質を含む被測定ガスを検出したときに検出抵抗RSENと粒子状物質量との関係から検出電極11、12間に堆積した粒子状物質量を算出することができる。
【0030】
本実施形態の粒子状物質センサ4において、検出電極11、12間は、粒子状物質が堆積していない状態では、絶縁状態となっているので、検出電極11、12間の電気抵抗が極めて大きく、検出電極11、12間に一定量の粒子状物質が堆積する迄は、センサ出力の検出が困難となる不感期間が存在する。
検出電極11、12間に一定量以上の粒子状物質が堆積し、センサ出力が所定の閾値VREFを超え出力の検出が可能となるまでに堆積する粒子状物質量を不感質量Q0とする。
【0031】
印加電圧補正手段511は、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスを用い検出抵抗測定手段510によって検出された検出抵抗RSENが所定の閾値以上となる不感質量Q0と、外部補正手段7として、校正用被測定ガスに対する校正用センサ4REFの不感質量Q0REFとの比較を行い、それらが一致するように、電源部50から印加される電圧(以下、印加電圧VOUTと称する。)を増減させる。
【0032】
例えば、図2(c)に示すように、ステップS100の不感質量判定行程において、既知量の粒子状物質に対する不感質量Q0を校正用センサ4REFの不感質量Q0REFと比較し、補正対象となった粒子状物質検出センサ4の不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも少ない場合には、ステップS110の印加電圧増減行程に進み、印加電圧VOUTを所定の基準電圧の範囲から外れるように、印加電圧下限閾値VLLよりも低く(例えば−5%)設定し、又は、印加電圧上限閾値VHLよりも高く(例えば+5%)設定することによって、校正用センサ4REFの出力結果に近づけることができる。
【0033】
一方、ステップ100において、補正対象となった粒子状物質検出センサ4の不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも多い場合には、ステップS120の印加電圧維持行程に進み、印加電圧VOUTを、印加電圧下限閾値VLL以上、印加電圧上限閾値VHL以下の範囲を維持することによって、校正用センサ4REFの出力結果から大きくずれないように維持することができる。
また、製造ロット内から抽出したサンプルの内、最も不感質量Q0の多い粒子状物質検出センサ4を校正用センサ4REFとすれば、不感質量Q0の少ないものの感度を低下させるように校正用センサ4REFの出力に近似させることになるので、製造ロット内の出力バラツキを極めて容易に小さくすることができる。
【0034】
本発明の補正方法によって補正することによって、製造過程で不可避的に形成される粒子状物質検出センサ4の個体差を小さくすることが可能となる。
なお、上記実施形態においては、不感質量Q0を基準として、センサ出力を補正する方法を示したが、既知の粒子状物質量の変化に対するセンサ出力の変化(傾き)を基準として補正することもできる。
【0035】
また、上記実施形態においては、校正用センサ4REFの出力結果と補正対象となる粒子状物質検出センサ4の出力結果との違いを予め測定し、それを補正情報としてメモリ等に記憶させ、個々の印加電圧VOUTの調整に利用する構成を示したが、昇圧回路500に印加電圧VOUTの出力を調整するボリューム抵抗VRを設けて、粒子状物質検出装置6毎に調整するようにしても良い。
さらに、被測定ガス中の粒子状物質量が安定する条件下において、粒子状物質検出センサ4の出力結果(例えば、同一条件下での単位時間当たりの検出抵抗RSENの上昇率等)を学習し、粒子状物質検出センサ4の経年劣化に対して、印加電圧VOUTを調整して、同一条件に対する出力結果が一定となるように補正する学習機能を設けても良い。
【0036】
ここで、図3を参照して、本発明の粒子状物質検出センサ4の印加電圧VOUTの変化に対するセンサ出力の変化に与える影響及び、印加電圧下限閾値VLL、印加電圧上限閾値VHLの決定方法について説明する。
図3(a)は、本発明に用いられるセンサ素子1の検出電極11、12間距離を、例えば、50μmに設定したときに、一定間隔で対向する検出電極11、12間の印加電圧VOUTの単位距離当たりの電圧の変化、即ち、電界強度E(kV/mm)の変化に対する捕集性の変化を示す特性図である。
【0037】
本図に示すように、電界強度Eと捕集性能との関係は、最大値を有する上に凸となる略二次曲線状を呈し、検出部13に粒子状物質を捕集する付着力F(N)は、電界強度Eを高くすると徐々に向上し、電界強度Eを一定以上高くすると却って、付着力F(N)が低下することが判明した。
なお、本図(a)は、既知量の粒子状物質を含む被測定ガス中にガスセンサ4の検出部13を配設し、一定時間内に検出部13に捕集される粒子状物質の付着力F(N)を電源部4からセンサ素子1に印加する電圧VOUTを変化させて計測した結果を捕集性能として表したものである。
また、図3(b)は、50μmの電極間距離を設けて検出電極11、12を対向させ、検出電極11、12間に印加する電圧を変化させながら、センサ出力が一定の閾値以上となる不感質量Q0を計測した結果である。
【0038】
本図(b)に示すように、電界強度E(kV/mm)の変化に対して、不感質量Q0(mg)は、下に向かって凸となる曲線を描くように変化し、電界強度E(kV/mm)が一定の範囲(本実施例では、1.0kV/mm〜1.4kV/mmの範囲)で、不感質量Q0を最少化し、かつ、ほぼ一定とすることができ、電界強度Eが1.0kV/mmより低い場合には、電界強度Eが低いほど不感質量Q0が多くなり、電界強度Eが1.4kV/mmよりも高い場合には、電界強度Eが高いほど不感質量Q0が多くなる。
【0039】
本実施例においては、電極間距離を50μmに設定しているので、印加電圧下限閾値VLLとして、50V、印加電圧上限閾値VHLとして70Vを設定することができる。
これは、電界強度が高くなるにつれて、粒子状物質に作用する静電引力が高くなり、捕集性が向上するが、電界強度が一定以上を超えると、粒子状物質の表面に帯電する電荷が多くなり、粒子状物質同士が互いに反発する作用が大きくなり、捕集が困難となるためと推察される。
また、付着力F(N)を最も大きくする電界強度E(kV/mm)の範囲と、不感質量Q0を最も少なくする電界強度E(kV/mm)の範囲は、一致していることが判明した。
【0040】
既知の粒子状物質を含む被測定ガスを検出したときの不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも少ない場合には、検出電極11、12間の距離が短いか、センサ素子1とカバー体2との関係において、被測定ガスが検出部13へ導入され易くなっているものと推察され、このような場合には、印加電圧VOUTを印加電圧下限閾値VLLよりも低く、又は、印加電圧上限閾値VHLよりも高くすることによって、捕集性能を低下させ、不感質量Q0を、校正用の不感質量Q0REFに近づけることができる。
【0041】
一方、既知の粒子状物質を含む被測定ガスを検出したときの不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも多い場合には、検出電極11、12間の距離が長いか、センサ素子1とカバー体2との関係において、被測定ガスが検出部13へ導入され難くなっているものと推察され、このような場合には、印加電圧VOUTを印加電圧下限閾値VLLから印加電圧上限閾値VHLまでの基準電圧の範囲内を維持することによって、捕集性能を最大限に発揮させ、不感質量Q0がそれ以上、校正用の不感質量Q0REFからかけ離れた値とならないようにすることができる。
このとき、どの程度印加電圧VOUTを増減するかを、粒子状物質検出センサ4の完成検査において、実測によって決定し、計測部41内にメモリを設けてその結果を補正情報として記憶させ、それを電源部40にフィードバックさせて、実際に被測定ガス中に含まれる未知量の粒子状物質を検出する際に、印加電圧VOUTの決定に用いることができる。
【0042】
また、昇圧回路40に出力電圧VOUTを可変抵抗VRと固定抵抗Rとで案分して印加する構成とし、予め測定した不感質量Q0から、可変抵抗VRの調整により、印加電圧VOUTを増減できるようにしても良い。
【0043】
図4、図5、図6を参照して、本発明の第1の実施形態における効果について説明する。図4(a)は、比較例1として、従来の粒子状物質検出センサにおいて、製造過程で、センサ素子の方向とカバー体の開孔方向とを一致させた状態で完成させた粒子状物質検出センサを複数(5水準)用いて、既知量の粒子状物質を含む被測定ガスを測定したときのセンサ出力の変化を示し、図4(b)は、それぞれのセンサ出力が所定の閾値VREF以上になるまでの不感質量Q0を計測した結果を示す。
なお、閾値VREFは、ノイズとの区別ができる程度に安定した出力として検出部50によって検出可能となる値であって、検出部50の感度に応じて適宜設定する。
【0044】
図5(a)は、比較例2として、従来の粒子状物質検出センサにおいて、製造過程で、センサ素子の方向とカバー体の開孔方向とを考慮することなく、ランダムな方向で組み付けて完成させた粒子状物質検出センサを複数(5水準)用いて、既知量の粒子状物質を含む被測定ガスを測定ときのセンサ出力の変化を示し、図5(b)は、それぞれのセンサ出力が所定の閾値以上になるまでの不感質量Q0を計測した結果を示す。
【0045】
図6(a)は、本発明の実施例として、製造過程で、センサ素子の方向とカバー体の開孔方向とを考慮せず完成させた粒子状物質検出センサを複数(5水準)用い、本発明の補正方法によって出力補正をした場合のセンサ出力の変化を示し、図6(b)は、それぞれのセンサ出力が所定の閾値以上になるまでの不感質量Q0を計測した結果を示す。
【0046】
なお、本実施形態においては、図1(a)に示すように、検出電極11、12を、櫛状に形成して、極性の異なる電極が一定間隔で交互に並ぶように配設し検出電極11、12間に堆積するPM量に応じて変化する抵抗値を検出するように構成した例を示したが、本発明において、検出電極11、12の形状を櫛状に限定するものではなく、また、検出対象となる電気的特性として、検出部に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出するものであれば、抵抗値以外にも、インダクタンス、静電容量、及び、インピーダンス等を用いることもできる。
例えば、多孔質電極によって検出電極を形成し、多孔質電極の表面に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する抵抗値を検出するものや、検出電極の表面を誘電層又は絶縁層によって覆って、その表面に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する静電容量を検出するものでも良い。
さらに、センサ素子1は、通電により発熱する発熱体を有し、検出電極11、12間に堆積した粒子状物質を加熱除去する発熱部を具備する構成としても良い。
【0047】
図4に示すように、比較例1の粒子状物質検出センサにおいては、不感質量Q0に、変動係数CVとして3.3%のバラツキが生じているのが分かる。
比較例1においては、カバー体2の開孔位置のズレ等の影響を廃除するために、センサ素子1とカバー体2の方向性を揃えて組み付けていることから、このようなバラツキは、主に、検出電極間の距離のバラツキによって、センサ出力が所定の閾値以上になるまでに堆積する粒子状物質量に差が生じているためと思料される。
【0048】
図5に示すように、比較例2の粒子状物質検出センサにおいては、不感質量Q0に、変動係数CVとして11.7%のバラツキが生じているのが分かる。
比較例2においては、カバー体の開孔の方向性を考慮せずに組み付けており、検出電極間の距離のバラツキに加えて、カバー体の開孔の位置ズレによりカバー体内に導入される粒子状物質量にバラツキが生じているためと思料される。
【0049】
一方、図6に示すように、本発明の実施例1においては、比較例1に比べると平均値μは僅かに高くなっているが、標準偏差σが小さくなり、変動係数CVが1.7%と大幅に低減されている。
したがって、本発明の粒子状物質検出装置6を用いれば、極めて信頼性の高い粒子状物質検出が可能となる。
【0050】
図7に本実施形態の変形例として示す粒子状物質検出装置6aについて説明する。なお、以下の説明において上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付したので説明を省略し、特徴的な部分についてのみ説明する。なお、以下の実施形態、及び、比較例において、カバー体2、及び、ハウジング3は、特に限定するものではなく、第1の実施形態と同じ構成としている。
上記実施形態においては、センサ素子1の検出電極11、12が捕集用電極を兼ねており、検出電極11、12間に高電圧を印加して、PMを検出部13に捕集する構成について説明したが、本変形例のセンサ素子1aでは、検出電極11、12とは別に、一対の捕集用電極15a、15bを設けて、電界発生用電源50aから捕集用電極15a、15b間に高電圧を印加することによって、捕集用電極15a、15b間に設けた捕集空間160内に電界を発生させ、静電気的な引力により検出部13aにPMを捕集するようにした点が相違する。
【0051】
本実施形態においては、電気的特性として上記実施形態と同様、検出電極11、12間に堆積したPM量によって変化する抵抗値を検出対象としている。
捕集用電極15a、15bは、両面を平板状の絶縁体10又は、絶縁体100に挟さまれて絶縁状態となっている。
捕集用電極15a、15bは、検出部13aを間に挟んで対向している。
さらに、本変形例においては、検出部13を覆うように、絶縁体からなる捕集空間形成層16が形成され、検出部13の一部が、両側面が開口する捕集空間160に露出するようにした点が相違する。
捕集用電極15a、15bは、それぞれ、電界発生部150a、150bとリード部151、151bとによって構成され、電界発生用電源部50aに接続されている。
【0052】
さらに、本変形例においては、通電により発熱する発熱部14が設けられ、検出部13に堆積したPMを加熱除去する構成となっている。
発熱部14は、絶縁体10及び、絶縁体100に挟まれた発熱体140、リード部141、142によって構成され、検出部13に積層して設けられ、発熱体通電制御装置53に接続されている。
本変形例においても、上記実施形態と同様、印加電圧補正手段511が、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスを用い検出抵抗測定手段510によって検出された検出抵抗RSENが所定の閾値以上となる不感質量Q0と、外部補正手段7として、校正用被測定ガスに対する校正センサ4REFの不感質量Q0REFとの比較を行い、それらが一致するように、電界発生用電源部50aから印加される電圧を増減させることで、上記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0053】
加えて、本変形例においては、検出電極11、12と捕集用電極15a、15bとが別に設けられているので、抵抗値検出のための印加電圧とPMを捕集するための印加電圧とを独立して設定できるので検出精度がさらに向上できる。
さらに、本変形例においては、上記実施形態と同様の効果に加えて、捕集用電極15a、15b間に発生させた電界による引力によって、センサ素子1aの先端側の両側面方向に向かって開口する捕集用空間160内にPMを吸引する構成となっているので、カバー体2の組み付け方向のバラツキによるカバー体2内における被測定ガスの流速の違いの影響を少なくすることもできる。
なお、絶縁体10と同様、絶縁体100には、アルミナ等の公知のセラミック絶縁材料が用いられている。
【0054】
図8、図9、図10、図11を参照して本発明の第2の実施形態として、検出部に堆積するPM量を静電容量Cによって計測するように構成した、粒子状物質検出装置6bについて説明する。
上記実施形態においては、検出電極11、12間に堆積するPM量に応じて変化する検出電極11、12間の抵抗値変化によって、PM量を検出する構成を示したが、本実施形態においては、検出電極11b、12bを絶縁体100によって覆い、PM捕集空間160に捕集されたPM量によって変化する電気的特性として、静電容量Cを検出するようにした点が相違する。
このような構成とすることにより、電気的特性として、検出部13における静電容量Cを測定する場合においても、上記実施形態と同様、個体差を校正用センサ4REFとの比較に基づいて決定した電界発生用電源部からの印加電圧の増減によって上記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0055】
また、上記実施形態においては、検出部13の一方の側に積層して発熱部14を設けた変形例を示したが、本実施形態においては、捕集用電極15a、15bのさらに外側に積層して、発熱部14a、14bを設けて、検出部13bの両面から加熱するようにしている。
このような構成とすることにより、捕集空間160を区画する絶縁体10、161、162、100の内周表面に堆積したPMを確実に除去することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態におけるセンサ素子1bは、図9に示すように、検出電極11b、12b間に堆積するPM量によって変化する静電容量CPM、抵抗値RPMと、リード部111b、121b等に寄生する寄生容量C1、C2、内部抵抗R1、R2を接続した等価回路で表すことができ、電気特性計測部510bの入力端子間のインピーダンスZxをいわゆるI−V法等の公知のインピーダンス計測方法によって検出することができる。
具体的には、所定の周波数特性を有する発振器RFから印加した電圧V1と既知の抵抗値RSの両端で検出される電位差V2とを用い、ZX=V1/I=(V1/V2)・RSによって算出される。
さらに、本実施形態においては、図8の粒子状物質検出センサ4bと同様の構成の校正用センサ4bREFを用いて、既知量のPMを含有する校正用ガスに対する検出インピーダンスZXREFと検出インピーダンスZxとの比較によって、電界発生用電源部50bの印加電圧VOUTを増減すべく、可変抵抗r1の抵抗値を設定し、分圧抵抗値r2との比によって増幅器OPの増幅率を増減する構成となっている。
このような構成とすることによって、校正用ガスに対する出力を校正用センサ4bREFの出力に近似させるように電界発生用電源部50bの印加電圧VOUTを任意に補正することが可能となる。
【0057】
比較例3として、図8に示した粒子状物質検出装置6bを用い、本発明の補正方法を適用しない場合について、上記実施形態と同様の試験を行った。
図10に示すように、静電容量(インピーダンスZx)によってPM量を検出した場合でも、本発明の補正方法を適用しない場合には、不感質量Q0に大きなバラツキ(変動係数CV=19.5%)があることがわかる。
一方、図11に実施例2として示すように、本実施形態においても、不感質量Q0のバラツキを小さく(変動係数CV=1.4%)できることが判明した。
【0058】
図12を参照して、本発明の第2の実施形態における変形例について説明する。
図8に示した構成では、検出電極11b、12bと捕集用電極15a、15bとを別に設けた構成を示したが、図12に示すように、検出電極11c、12cを、捕集用電極として用いるように構成しても良い。
本実施形態において、検出電極11b、12bは、平板状に広がる検出電極平板部110c、120cとリード部111c、121cとによって構成されている。
また、検出電極11c、12cの表面は、それぞれ、平板状の絶縁体101c、100cによって覆われている。
このような構成とすることによって、検出電極平板部110c、120cの面積に比例し、互いに対向する検出電極平板部110c、120cの距離に反比例する静電容量Cの並行平板を構成し、PMの捕集量の変化に伴い、検出電極平板部110c、120c間の誘電率が変化し必然的に検出電極11c、12c間の静電容量Cが変化し、これを検出することで、捕集空間160内に堆積するPM量を算出できる。
本実施形態においても、検出電極平板部110c、120cの面積のバラツキや、電極間距離のバラツキ等があっても、上記実施形態と同様に印加電圧補正手段511が、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスを用い検出抵抗測定手段510によって検出された検出抵抗RSENが所定の閾値以上となる不感質量Q0と、外部補正手段7として、校正用被測定ガスに対する校正センサ4cREFの不感質量Q0REFとの比較を行い、それらが一致するように、電界発生用電源部50aから印加される電圧を増減させることで、上記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0059】
図13、図14を参照して、本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置6dについて説明する。
上記実施形態においては、検出部13に堆積するPM量に応じて変化する抵抗値、静電容量等の電気的特性を直接計測する例を示したが、本実施形態においては、検出部13dに捕集したPMを電気化学反応によって酸化除去すると共に、その際に流れる電流を検出部51dで検出するようにした点が相違する。
【0060】
本実施形態では、検出電極11d、12dが、多孔質電極からなり、平板状に形成した検出電極平板部110d、120dとリード部111d、121dによって構成され、酸素イオンやプロトン等の特定のイオンに対して伝導性を有する固体電解質材料からなり、平板状に形成した固体電界層10dの対向する表面に形成され、一方の検出電極平板部110dを捕集空間160に対向させ、他方の検出電極平板部120dを、排出層17の排出空間170に対向させてある。
具体的な固体電解質材料としては、酸素イオン伝導性を有するイットリア安定化ジルコニアやプロトン伝導性を有する一部を遷移金属等で置換したMP2O7型ピロリン酸塩等の公知の固体電解質材料を用いることができる。
排出空間170は、アルミナ等の絶縁材料からなり、略コ字形に形成された排出空間形成層171と、平板状に形成された絶縁体100とによって区画されている。
排出層17に積層して、発熱部14dが形成されている。発熱部14dは、絶縁体100によって覆われ、発熱体140dと一対のリード部141d、142dによって構成されている。
【0061】
上記実施形態において、発熱部14は、検出部13に堆積したPMを燃焼除去するために設けられているが、本実施形態においては、PMの燃焼除去は、検出電極110d上で、PM量を検出する際の電気化学反応によってもたらされ、発熱部14は、固体電解質体10dを加熱し、活性化するために用いられる。
【0062】
図14に示すように、本実施形態においては、固体電解質体10dの一方の表面に形成された検出電極11dと捕集用電極15dとの間に電界発生用電源部50dから高電圧を印加して、電界を形成し、電界による引力によって検出電極11dの表面にPMを捕集し、さらに、検出電極11d、12d間に電気化学反応用電源513dから電気化学反応によって検出電極11の表面に堆積したPMを酸化除去したときに発生するプロトンH+、又は、電子が固体電解質体10dを移動する際に検出抵抗Rsの両端に発生する電位差を電気特性計測部510dによって計測し、PM量を算出することができる。
【0063】
比較例4として、図12に示した粒子状物質検出装置6dを用い、本発明の補正方法を適用しない場合について、上記実施形態と同様の試験を行った。
図15に示すように、電気化学反応によってPMを酸化除去したときに流れる電流からPM量を検出した場合でも、本発明の補正を行わない場合には、不感質量Q0に大きなバラツキ(変動係数CV=9.3%)があることがわかる。
一方、図16に実施例3として示すように、本実施形態においても、予め、校正用センサ4dREFの不感質量Q0REFとの比較した結果に応じて、電界強度を補正した場合には、不感質量Q0のバラツキを小さく(変動係数CV=1.3%)できることが判明した。
【0064】
図17は、比較例1〜4、実施例1〜3について、上述の如く、複数の粒子状物質検出センサの不感質量Q0の平均μ及び標準偏差σを求め、個体差を示す指標として平均位置μを標準偏差σで割った変動係数CV(=100×標準偏差σ/平均値μ(%))を算出し、それを並べたものである。
【0065】
以上より、本発明のいずれの実施形態においても、粒子状物質検出センサの製造過程で不可避的に発生する電極間距離のバラツキと、センサ素子1、1a〜1dの方向性とカバー体2に設けた開孔の方向性とのズレとによって重畳的に拡大されるセンサ出力の個体差に応じて電界発生用電源部50、50aからセンサ素子1、1a〜1dの検出部に印加される電圧の補正によって、粒子状51、51d物質の捕集量が増減され、出力結果のバラツキを小さくできることが判明した。
【符号の説明】
【0066】
1 センサ素子
10 絶縁性基体
11、12 検出電極
111、121 検出電極リード部
112、122 検出電極端子部
2 カバー体
20 カバー内筒
21 カバー外筒
201、202、211、212 カバー開孔
3 ハウジング
4 粒子状物質検出センサ
5 検出制御部
50 電界発生用電源部
500 昇圧回路
51 計測部
510 電気特性計測部
511 補正手段
512 検出電圧決定手段
6 粒子状物質検出装置
7 外部補正手段
8 被側手ガス流路
80 被測定ガス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開昭59−197847号公報
【特許文献2】特表2008−502892号公報
【特許文献3】特開2010−32488号公報
【特許文献4】特開2010−54432号公報
【特許文献5】特開2009−97868号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用内燃機関の排気浄化システムに好適に利用されて、被測定ガス中に存在する粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置及び粒子状物質検出装置の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ディーゼルエンジン等において、燃焼排気に含まれる環境汚染物質、特に煤粒子(Soot)及び可溶性有機成分(SOF)を主体とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に燃焼排気を通過させて粒子状物質を捕捉する。
【0003】
DPFは、粒子状物質捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大したり、粒子状物質のすり抜けが増加したりするおそれがあり、定期的に再生処理を行って捕集能力を回復させている。再生時期は、一般的には、粒子状物質捕集量の増加により前後差圧が増大することを利用しており、このため、DPFの上流及び下流の圧力差を検出する差圧センサが設置される。再生処理は、ヒータ加熱あるいはポスト噴射等により高温の燃焼排気をDPF内に導入し、粒子状物質を燃焼除去する。
【0004】
一方、燃焼排気中の粒子状物質を直接検出可能なセンサが、例えば特許文献1、2等に提案されている。このセンサを、DPFの下流に設置した場合には、DPFをすり抜ける粒子状物質量を測定し、車載式故障診断装置(OBD;On Board Diagnosis)において、DPFの作動状態の監視、例えば亀裂や破損といった異常の検出に利用することができる。あるいはDPFの上流に設置して、DPFに流入する粒子状物質量を測定し、差圧センサに代わる再生時期の判断に利用することも検討されている。
【0005】
特許文献1には、絶縁性を有する基板の表面に、一対の櫛形電極を形成し、基板の裏面又は内部に発熱体を形成した電気抵抗式のスモークセンサが開示されている。この種のセンサは、スモーク(微粒炭素)が導電性を有することを利用したもので、検出部となる電極間に、スモークが堆積することで生じる電気抵抗値の変化を検出する。基板材料には、電気絶縁性耐熱材料が用いられ、電極材料となるPt、Ag等の貴金属粉をペースト状にして、平板状基板の表面にスクリーン印刷することにより一対の電極が形成される。基板の裏面側には、電極と相対する部分に発熱体が形成され、検出部を所望の温度(例えば、400℃〜1000℃)に加熱して、電極間抵抗を測定した後に、付着したスモークを焼き切って検出能力を回復させる。
【0006】
特許文献2には、センサ上の煤堆積を制御するため検出電極間に高電圧を印加し、電極間に電界を生じさせ、検出電極の近傍を通過するPMを電界により生じる静電気的な引力によって引き寄せることでPMの捕集を促進し、検出電極間に堆積させ、PMの堆積量によって変化する検出電極間の電気抵抗を計測することによりPMの堆積量を測定することが開示されている。
【0007】
また、被測定ガス中のPMを検出するのに用いられる電気的特性は、検出電極間に堆積するPM量に応じて変化する電気抵抗に限定されるものではなく、静電容量や、電気化学的な反応に伴う電流の変化等の様々な電気的特性が利用できる。
例えば、特許文献3には、一の面が電極間誘電体で被覆をされた板状を呈する一の電極と、その一の電極の一の面の側にPMを含む気体が流れる空間を介して配設をされ、一の電極との間に印加をされる電圧によって放電をする二の電極と、電圧の印加をする集塵用電源と、電極間誘電体の表面に対向して配設をされた一対の測定電極と、その一対の測定電極の間における電気的特性の測定をする特性測定手段と、その特性測定手段で測定をされた電気的特性の変化量に基づいて電極間誘電体の表面に集塵をされたPMの量を求める粒子状物質量算出手段とを備える粒子状物質検出装置が開示され、利用される電気的特性として抵抗、インダクタンス、静電容量、及びインピーダンスが示されている。
【0008】
一方、特許文献4には、少なくとも、プロトン伝導性の固体電解質からなるプロトン導電体と、その表面に形成した測定電極と基準電極とからなる電極対と、該電極対間に所定の電流又は電圧を印加する電源とを具備し、測定電極を被測定ガスに対向せしめ、かつ、基準電極を被測定ガスから隔離せしめた炭素量検出センサが開示されておいり、測定電極表面において被測定ガス中のPMとの電気化学反応によって流れる電流、又は、電圧の変化によってPM量を検出している。
さらに、一般的に、このようなPM検出センサや酸素センサ等のセンサ類は、ハウジングを介して被測定ガス流路に固定され、被測定ガス中に載置された検出部は、所定の開孔を有する略筒状のカバー体によって覆われて保護されている(特許文献5等参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、実際の製造工程においては、センサ素子とカバー体とをハウジングに組み付ける際に、センサ素子の検出部の向きとカバー体に設けた被測定ガス導入孔の方向とを一つずつ合わせることは困難で、センサ素子の方向とカバー体の方向とをセンサごとに合わせていたのでは、極めて作業効率が悪くなり、粒子状物質検出センサの製造コストの増大を招くことになる。
【0010】
一方、センサ素子の方向とカバー体の方向とを考慮することなく粒子状物質検出センサを組み付けた場合、作業効率は向上するが、検出部の向きとカバー体に設けた被測定ガス導入孔の方向がばらばらになるため、センサごとにカバー体内に導入される被測定ガスの流れが異なり、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の検出部への捕集性、及び、粒子状物質の堆積量に対する出力の個体差が大きくなり、センサとしての信頼性が著しく低下する虞がある。
【0011】
また、検出対象であるPMに電界を作用させて静電気的な引力で捕集する捕集用電極が一つのセンサ素子内に複数ある場合、又は、捕集用電極とは別に電気的特性を検出するための検出電極が設けられている場合において、実際の電極間の距離には、不可避的にバラツキが発生し、このような電極間距離のバラツキは、そこに発生する電界強度のバラツキとなり、検出部に捕集するPM量が変化するため、検出結果に個体差を生じることとなる。
画像処理などによって、実際に製造された電極間の距離を測定することは可能ではあるが、製造ロット内の電極間距離の分布から、個々のセンサ素子をランク分類する等して、出力結果のバラツキを小さくすることは極めて困難で、費用対効果も低い。
さらに、センサ素子に貫通孔を設けて、その上下に捕集用電極を設置して、その間に電界を発生させることで、PMを捕集させようとした場合、その電極間の距離を保証することは困難で、実際に発生する電界強度に個体差が生じ、出力結果のバラツキの原因にもなっている。
【0012】
そこで本発明は、上記実情に鑑み、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を高い精度で検出すべく、少なくとも被測定ガスに晒される一対の検出電極を有するセンサ素子と、該センサ素子を保持固定するハウジングと、センサ素子を保護するカバー体とからなる粒子状物質センサと、検出部に電界を生じさせ、静電気的引力により被測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する電界発生電源部と、検出部に堆積する粒子状物質の量によって変化する電気的特性を計測する検出部とを具備し、被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量を検出する粒子状物質検出装置において粒子状物質検出センサの製造過程で不可避的に発生する個体差を補正する補正方法と、該補正方法によって得られた補正情報を検出制御に反映させる補正手段を備えた粒子状物質検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明では、電界発生用電源部と、少なくとも、上記電界発生用電源部により発生する電界による引力を利用して測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する捕集用電極と、上記捕集用電極、又は、これとは別に設けた電極を、上記検出部に捕集した粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極としたセンサ素子と、上記センサ素子を保護するカバー体と、上記検出部を被測定ガス中に載置するハウジングとからなる粒子状物質検出センサと、上記検出部に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質によって変化する電気的特性を計測する計測部とを有し、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を所定の印加電圧値に維持して、不感質量を低減させる電界強度に維持し、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を、所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、所定の印加電圧上限閾値より高くして、不感質量を増加させる電界強度に補正する印加電圧補正手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明では、上記印加電圧下限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.0kV/mmとなる電圧であり、上記印加電圧上限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.4kV/mmとなる電圧である。
【0015】
請求項3の発明では、上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量は、電界強度が1.0kV/mmとなる印加電圧にて測定した値であると共に、該測定値を用いて補正を行う。
【0016】
請求項4の発明では、上記粒子状物質検出センサの製造ロットから抽出したサンプルの内、不感質量が最も多いものを上記校正用粒子状物質検出センサとする。
【0017】
請求項5の発明では、電界発生用電源部と、少なくとも、上記電界発生用電源部により発生する電界による引力を利用して測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する捕集用電極と、該捕集用電極、又は、これとは別に設けた電極を、検出部に捕集された粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極とした検出部を有するセンサ素子と、該センサ素子を保護するカバー体と、上記検出部を被測定ガス中に載置するハウジングとからなる粒子状物質検出センサと上記検出部に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質によって変化する電気的特性を計測する計測部とを有し、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置の出力を補正する補正方法であって、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電源部から上記検出部に印加する電圧を、不感質量を最少化する電界強度となる所定の印加電圧下限閾値から所定の印加電圧上限閾値までの範囲内に維持し、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電源部から上記検出電極間に印加する電圧を、上記所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、上記所定の印加電圧上限閾値より高くして、上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量に近似させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子状物質検出センサの製造過程で不可避的に発生する上記捕集用電極の電極間距離のバラツキと、上記センサ素子の方向性と上記カバー体に設けた開孔の方向性とのズレとによって重畳的に拡大されるセンサ出力の個体差に応じて上記電界発生用電源部から上記センサ素子の検出部に印加される電圧の補正によって、粒子状物質の捕集量が増減され、出力結果のバラツキを小さくすることが可能となり、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を高精度で検出可能な信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、センサ素子の概要を示す平面図、(b)は、装置全体を示す構成図。
【図2】(a)は、図1の粒子状物質検出装置に適用される昇圧回路の一例を示す回路図、(b)は、抵抗検出回路及び印加電圧補正手段の一例を示す回路図、(c)は、本発明の補正方法の一例を示すフローチャート。
【図3】(a)は、検出電極間に印加する電圧によって発生する電界強度と捕集性との関係を示す特性図、(b)は、電界強度と不感質量との関係を示す特性図。
【図4】比較例1として、従来のセンサ素子とカバー体との方向性を合わせた場合の個体差を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図5】比較例2として、従来のセンサ素子とカバー体との方向性を合わせていない場合の個体差を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図6】本発明の実施例1として、本発明のセンサ素子とカバー体との方向性を合わせたることなく、補正手段によって出力を補正した場合の個体差を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図7】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の変形例を示し、(a)は、展開斜視図、(b)は、要部断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示す展開斜視図。
【図9】図8の粒子状物質検出装置に適用される回路図の一例。
【図10】比較例3として、図8と類似の粒子状物質検出装置に本発明の補正方法を適用しなかった場合の問題点を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図11】本発明の実施例2として、図8の粒子状物質検出装置における効果を示し、(a)は、検出電極間に印加する電圧によって発生する電界強度と捕集性との関係を示す特性図、(b)は、電界強度と不感質量との関係を示す特性図。
【図12】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の変形例を示す展開斜視図。
【図13】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置を示す展開斜視図。
【図14】図13の粒子状物質検出装置に適用される回路図の一例。
【図15】比較例4として、図13と類似の粒子状物質検出装置に本発明の補正方法を適用しなかった場合の問題点を示し、(a)は、既知の粒子状物質量に対する出力変化を示す特性図、(b)は、不感質量のバラツキを示す特性図。
【図16】本発明の実施例3として、図13の粒子状物質検出装置における効果を示し、(a)は、検出電極間に印加する電圧によって発生する電界強度と捕集性との関係を示す特性図、(b)は、電界強度と不感質量との関係を示す特性図。
【図17】比較例と共に本発明の出力変動抑制の効果を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6について説明する。本発明の粒子状物質検出装置6は、内燃機関の排気浄化装置に適用されて、排出される粒子状物質の検出に好適に利用される。
具体的には、DPFの下流に設置されて、DPFの異常検出に利用することができる。あるいは、DPFの上流に設置されて、DPFに流入する粒子状物質を直接検出するシステムに利用される。
本実施形態における粒子状物質検出装置6は、後述する電界発生用電源部50により生じる電界による引力を利用して測定ガス中のPMを検出部13に捕集する捕集用電極を、検出部13に捕集したPMの量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極11、12としたセンサ素子1と、センサ素子1を保護するカバー体2と、検出部13を被測定ガス中に載置するハウジング3とからなる粒子状物質検出センサ4と、捕集用電極を兼ねた検出用電極11、12間に電界を発生させる電界発生用電源部50と、検出部13に堆積する被測定ガス中に含まれるPM量によって変化する電気的特性を計測する計測部51とを有し、被測定ガス中のPMを検出するものである。
【0021】
特に、図2を参照して後述する補正方法にしたがって、既知量のPMを含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値VREF以上となるまでの不感質量Q0が、基準となる校正用粒子状物質検出センサ4REF(以下、校正用センサ4REFと称する。)の不感質量Q0REFよりも多い場合には、電界発生用電源部50から印加する電圧を所定の印加電圧値VOUTに維持して(VLL≦VOUT≦VHH)、不感質量Q0を低減させる電界強度に維持し、基準となる校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも少ない場合には、電界発生用電源部50から印加する電圧VOUTを、所定の印加電圧下限閾値VLLより低く、又は、所定の印加電圧上限閾値VHHより高くして、不感質量Q0を増加させる電界強度に補正する印加電圧補正手段511を設けたことを特徴とするものである。
また、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFは、電界強度が1.0kV/mmとなる印加電圧VOUTにて測定した値であり、その測定値を用いて、後述の補正方法にしたがって補正を行う。
【0022】
本実施形態における粒子状物質検出装置6は、粒子状物質検出センサ4と検出制御部5とによって構成されている。
粒子状物質検出センサ4は、センサ素子1と、センサ素子1を保護するカバー体2と、センサ素子1を被測定ガス内に載置固定するハウジング3とによって構成されている。
検出制御部5は、電源部50と計測部51とによって構成されている。
センサ素子1は、図1(a)に示すように、少なくとも、絶縁性基体10の表面に、一定の間隙を隔てて対向する一対の検出電極11、12を形成した検出部13を具備する。絶縁性基体10は、アルミナ、チタニア、スピネル等の絶縁性耐熱材料からなり、ドクターブレード法、加圧成形法等の公知の製造方法によって略平板状に形成されている。
【0023】
検出電極11、12は、白金等の導電性材料からなり、スクリーン印刷、メッキ、蒸着等の公知の製造方法によって形成されている。
なお、本実施形態においては、検出電極11、12は、櫛状に形成され、互いに異なる極性の電極が一定間隔で交互に並んで対向するように形成された、いわゆる櫛状電極を構成している。
また、センサ素子1には、検出電極11、12と外部に設けた制御部4とを接続するための検出電極リード部111、121、検出電極端子部112、122が形成されている。
なお、本実施形態においては、検出電極11、12が、被測定ガス中のPMに電界を作用させ、静電気的な引力によって検出部13にPMを捕集する捕集用電極を兼ねており、電源部50は、検出電極11、12間に堆積したPM量に応じて変化する抵抗値等の電気的特性を計測するための計測用電源部と、PMを捕集するために検出電極11、12間に電界を発生させる電界発生用電源部とを兼ねている。
また、捕集用電極は、少なくとも電界発生用電源部50により発生する電界による静電気力などの引力を利用してPMを捕集するものであり、摩擦力、慣性力などの他の引力を同時に利用している場合も含む。
【0024】
センサ素子1は、図1(b)に示すように、センサ素子1の被測定ガスに晒される検出部13が略有底筒状に形成したカバー体2によって覆われて、略筒状に形成したハウジング基体30の内側にインシュレータ31を介して絶縁保持固定され、ハウジング3を介して被測定ガス80の流れる被測定ガス流路8に固定されている。
【0025】
本実施形態においては、カバー体2は、有底筒状に形成された内筒20と外筒21とが重ね合わされた二重筒構造となっており、内筒20、外筒21のそれぞれに設けたカバー開孔201、202、211、212を介して、被測定ガスの流速を抑制しながらセンサ素子1の検出部13に誘導することによって、被測定ガスと共に検出部13に誘導される粒子状物質の粒径が一定以下の範囲となるように流路構成してある。
センサ素子1の検出電極端子部112、122は一対の信号線113、123を介して制御部5に接続されている。
制御部5は、少なくとも、センサ素子1の検出電極11、12間に高電圧を印加する電源部50と検出部13に堆積する粒子状物質の量によって変化する電気的特性を計測する計測部51とを有している。
【0026】
さらに、電源部50は、例えば、図2(a)に示すような電源電圧+Bを所定の電圧に昇圧するDC−DCコンバータ等の昇圧回路500を含んでいる。
本発明において、昇圧回路500の具体的な構成を限定するものではないが、本実施形態では、IGBT、MOSFET等の半導体スイッチング素子Trを駆動回路DRVからの駆動信号によって開閉して、チョークコイルLに蓄えたエネルギをコンデンサCに重畳的に放出し、電源電圧+Bよりも高い出力電圧VOUTに昇圧して検出電極11、12間に印加する構成となっている。
このとき、駆動回路DRVから発振され、スイッチング素子Trを開閉する駆動信号として、周波数を一定としパルス幅の変調によりデューティ比を調整して出力電圧VOUTを制御するPWM制御や、パルス幅を一定としパルス周期の変調により出力電圧VOUTを制御するPFM制御等によって、検出電極11、12間に印加する電圧を増減できる。
【0027】
図1(b)に示すように、計測部51は、検出電極11、12間に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性として検出抵抗RSENを計測する検出抵抗計測手段510と、既知の粒子状物質の量に対して検出抵抗計測手段510によって計測された検出抵抗RSENと、既知の粒子状物質の量に対する標準的な基準検出抵抗RREFとを比較して基準検出抵抗RREFとのずれから、補正方法を決定する印加電圧補正手段511とによって構成されている。
【0028】
より具体的な検出抵抗計測手段510は、図2(b)に示すように、例えば、検出抵抗RSENに対して直列に配設された分圧抵抗R1、R2と、検出抵抗RSENの両端の電位差ΔVを計測する差動増幅回路素子によって構成することができる。
印加電圧VOUTを分圧抵抗R1、R2と検出抵抗RSENとで案分し、検出抵抗RSENの両端の電位差ΔV=VIN−VREF1を差動増幅回路素子等によって計測することにより、検出抵抗RSENを特定することができる。
【0029】
予め既知量の粒子状物質を模した微粒子状カーボンを含む校正用被測定ガスに対する検出抵抗RSENの変化を計測し、未知量の粒子状物質を含む被測定ガスを検出したときに検出抵抗RSENと粒子状物質量との関係から検出電極11、12間に堆積した粒子状物質量を算出することができる。
【0030】
本実施形態の粒子状物質センサ4において、検出電極11、12間は、粒子状物質が堆積していない状態では、絶縁状態となっているので、検出電極11、12間の電気抵抗が極めて大きく、検出電極11、12間に一定量の粒子状物質が堆積する迄は、センサ出力の検出が困難となる不感期間が存在する。
検出電極11、12間に一定量以上の粒子状物質が堆積し、センサ出力が所定の閾値VREFを超え出力の検出が可能となるまでに堆積する粒子状物質量を不感質量Q0とする。
【0031】
印加電圧補正手段511は、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスを用い検出抵抗測定手段510によって検出された検出抵抗RSENが所定の閾値以上となる不感質量Q0と、外部補正手段7として、校正用被測定ガスに対する校正用センサ4REFの不感質量Q0REFとの比較を行い、それらが一致するように、電源部50から印加される電圧(以下、印加電圧VOUTと称する。)を増減させる。
【0032】
例えば、図2(c)に示すように、ステップS100の不感質量判定行程において、既知量の粒子状物質に対する不感質量Q0を校正用センサ4REFの不感質量Q0REFと比較し、補正対象となった粒子状物質検出センサ4の不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも少ない場合には、ステップS110の印加電圧増減行程に進み、印加電圧VOUTを所定の基準電圧の範囲から外れるように、印加電圧下限閾値VLLよりも低く(例えば−5%)設定し、又は、印加電圧上限閾値VHLよりも高く(例えば+5%)設定することによって、校正用センサ4REFの出力結果に近づけることができる。
【0033】
一方、ステップ100において、補正対象となった粒子状物質検出センサ4の不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも多い場合には、ステップS120の印加電圧維持行程に進み、印加電圧VOUTを、印加電圧下限閾値VLL以上、印加電圧上限閾値VHL以下の範囲を維持することによって、校正用センサ4REFの出力結果から大きくずれないように維持することができる。
また、製造ロット内から抽出したサンプルの内、最も不感質量Q0の多い粒子状物質検出センサ4を校正用センサ4REFとすれば、不感質量Q0の少ないものの感度を低下させるように校正用センサ4REFの出力に近似させることになるので、製造ロット内の出力バラツキを極めて容易に小さくすることができる。
【0034】
本発明の補正方法によって補正することによって、製造過程で不可避的に形成される粒子状物質検出センサ4の個体差を小さくすることが可能となる。
なお、上記実施形態においては、不感質量Q0を基準として、センサ出力を補正する方法を示したが、既知の粒子状物質量の変化に対するセンサ出力の変化(傾き)を基準として補正することもできる。
【0035】
また、上記実施形態においては、校正用センサ4REFの出力結果と補正対象となる粒子状物質検出センサ4の出力結果との違いを予め測定し、それを補正情報としてメモリ等に記憶させ、個々の印加電圧VOUTの調整に利用する構成を示したが、昇圧回路500に印加電圧VOUTの出力を調整するボリューム抵抗VRを設けて、粒子状物質検出装置6毎に調整するようにしても良い。
さらに、被測定ガス中の粒子状物質量が安定する条件下において、粒子状物質検出センサ4の出力結果(例えば、同一条件下での単位時間当たりの検出抵抗RSENの上昇率等)を学習し、粒子状物質検出センサ4の経年劣化に対して、印加電圧VOUTを調整して、同一条件に対する出力結果が一定となるように補正する学習機能を設けても良い。
【0036】
ここで、図3を参照して、本発明の粒子状物質検出センサ4の印加電圧VOUTの変化に対するセンサ出力の変化に与える影響及び、印加電圧下限閾値VLL、印加電圧上限閾値VHLの決定方法について説明する。
図3(a)は、本発明に用いられるセンサ素子1の検出電極11、12間距離を、例えば、50μmに設定したときに、一定間隔で対向する検出電極11、12間の印加電圧VOUTの単位距離当たりの電圧の変化、即ち、電界強度E(kV/mm)の変化に対する捕集性の変化を示す特性図である。
【0037】
本図に示すように、電界強度Eと捕集性能との関係は、最大値を有する上に凸となる略二次曲線状を呈し、検出部13に粒子状物質を捕集する付着力F(N)は、電界強度Eを高くすると徐々に向上し、電界強度Eを一定以上高くすると却って、付着力F(N)が低下することが判明した。
なお、本図(a)は、既知量の粒子状物質を含む被測定ガス中にガスセンサ4の検出部13を配設し、一定時間内に検出部13に捕集される粒子状物質の付着力F(N)を電源部4からセンサ素子1に印加する電圧VOUTを変化させて計測した結果を捕集性能として表したものである。
また、図3(b)は、50μmの電極間距離を設けて検出電極11、12を対向させ、検出電極11、12間に印加する電圧を変化させながら、センサ出力が一定の閾値以上となる不感質量Q0を計測した結果である。
【0038】
本図(b)に示すように、電界強度E(kV/mm)の変化に対して、不感質量Q0(mg)は、下に向かって凸となる曲線を描くように変化し、電界強度E(kV/mm)が一定の範囲(本実施例では、1.0kV/mm〜1.4kV/mmの範囲)で、不感質量Q0を最少化し、かつ、ほぼ一定とすることができ、電界強度Eが1.0kV/mmより低い場合には、電界強度Eが低いほど不感質量Q0が多くなり、電界強度Eが1.4kV/mmよりも高い場合には、電界強度Eが高いほど不感質量Q0が多くなる。
【0039】
本実施例においては、電極間距離を50μmに設定しているので、印加電圧下限閾値VLLとして、50V、印加電圧上限閾値VHLとして70Vを設定することができる。
これは、電界強度が高くなるにつれて、粒子状物質に作用する静電引力が高くなり、捕集性が向上するが、電界強度が一定以上を超えると、粒子状物質の表面に帯電する電荷が多くなり、粒子状物質同士が互いに反発する作用が大きくなり、捕集が困難となるためと推察される。
また、付着力F(N)を最も大きくする電界強度E(kV/mm)の範囲と、不感質量Q0を最も少なくする電界強度E(kV/mm)の範囲は、一致していることが判明した。
【0040】
既知の粒子状物質を含む被測定ガスを検出したときの不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも少ない場合には、検出電極11、12間の距離が短いか、センサ素子1とカバー体2との関係において、被測定ガスが検出部13へ導入され易くなっているものと推察され、このような場合には、印加電圧VOUTを印加電圧下限閾値VLLよりも低く、又は、印加電圧上限閾値VHLよりも高くすることによって、捕集性能を低下させ、不感質量Q0を、校正用の不感質量Q0REFに近づけることができる。
【0041】
一方、既知の粒子状物質を含む被測定ガスを検出したときの不感質量Q0が、校正用センサ4REFの不感質量Q0REFよりも多い場合には、検出電極11、12間の距離が長いか、センサ素子1とカバー体2との関係において、被測定ガスが検出部13へ導入され難くなっているものと推察され、このような場合には、印加電圧VOUTを印加電圧下限閾値VLLから印加電圧上限閾値VHLまでの基準電圧の範囲内を維持することによって、捕集性能を最大限に発揮させ、不感質量Q0がそれ以上、校正用の不感質量Q0REFからかけ離れた値とならないようにすることができる。
このとき、どの程度印加電圧VOUTを増減するかを、粒子状物質検出センサ4の完成検査において、実測によって決定し、計測部41内にメモリを設けてその結果を補正情報として記憶させ、それを電源部40にフィードバックさせて、実際に被測定ガス中に含まれる未知量の粒子状物質を検出する際に、印加電圧VOUTの決定に用いることができる。
【0042】
また、昇圧回路40に出力電圧VOUTを可変抵抗VRと固定抵抗Rとで案分して印加する構成とし、予め測定した不感質量Q0から、可変抵抗VRの調整により、印加電圧VOUTを増減できるようにしても良い。
【0043】
図4、図5、図6を参照して、本発明の第1の実施形態における効果について説明する。図4(a)は、比較例1として、従来の粒子状物質検出センサにおいて、製造過程で、センサ素子の方向とカバー体の開孔方向とを一致させた状態で完成させた粒子状物質検出センサを複数(5水準)用いて、既知量の粒子状物質を含む被測定ガスを測定したときのセンサ出力の変化を示し、図4(b)は、それぞれのセンサ出力が所定の閾値VREF以上になるまでの不感質量Q0を計測した結果を示す。
なお、閾値VREFは、ノイズとの区別ができる程度に安定した出力として検出部50によって検出可能となる値であって、検出部50の感度に応じて適宜設定する。
【0044】
図5(a)は、比較例2として、従来の粒子状物質検出センサにおいて、製造過程で、センサ素子の方向とカバー体の開孔方向とを考慮することなく、ランダムな方向で組み付けて完成させた粒子状物質検出センサを複数(5水準)用いて、既知量の粒子状物質を含む被測定ガスを測定ときのセンサ出力の変化を示し、図5(b)は、それぞれのセンサ出力が所定の閾値以上になるまでの不感質量Q0を計測した結果を示す。
【0045】
図6(a)は、本発明の実施例として、製造過程で、センサ素子の方向とカバー体の開孔方向とを考慮せず完成させた粒子状物質検出センサを複数(5水準)用い、本発明の補正方法によって出力補正をした場合のセンサ出力の変化を示し、図6(b)は、それぞれのセンサ出力が所定の閾値以上になるまでの不感質量Q0を計測した結果を示す。
【0046】
なお、本実施形態においては、図1(a)に示すように、検出電極11、12を、櫛状に形成して、極性の異なる電極が一定間隔で交互に並ぶように配設し検出電極11、12間に堆積するPM量に応じて変化する抵抗値を検出するように構成した例を示したが、本発明において、検出電極11、12の形状を櫛状に限定するものではなく、また、検出対象となる電気的特性として、検出部に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出するものであれば、抵抗値以外にも、インダクタンス、静電容量、及び、インピーダンス等を用いることもできる。
例えば、多孔質電極によって検出電極を形成し、多孔質電極の表面に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する抵抗値を検出するものや、検出電極の表面を誘電層又は絶縁層によって覆って、その表面に堆積する粒子状物質の量に応じて変化する静電容量を検出するものでも良い。
さらに、センサ素子1は、通電により発熱する発熱体を有し、検出電極11、12間に堆積した粒子状物質を加熱除去する発熱部を具備する構成としても良い。
【0047】
図4に示すように、比較例1の粒子状物質検出センサにおいては、不感質量Q0に、変動係数CVとして3.3%のバラツキが生じているのが分かる。
比較例1においては、カバー体2の開孔位置のズレ等の影響を廃除するために、センサ素子1とカバー体2の方向性を揃えて組み付けていることから、このようなバラツキは、主に、検出電極間の距離のバラツキによって、センサ出力が所定の閾値以上になるまでに堆積する粒子状物質量に差が生じているためと思料される。
【0048】
図5に示すように、比較例2の粒子状物質検出センサにおいては、不感質量Q0に、変動係数CVとして11.7%のバラツキが生じているのが分かる。
比較例2においては、カバー体の開孔の方向性を考慮せずに組み付けており、検出電極間の距離のバラツキに加えて、カバー体の開孔の位置ズレによりカバー体内に導入される粒子状物質量にバラツキが生じているためと思料される。
【0049】
一方、図6に示すように、本発明の実施例1においては、比較例1に比べると平均値μは僅かに高くなっているが、標準偏差σが小さくなり、変動係数CVが1.7%と大幅に低減されている。
したがって、本発明の粒子状物質検出装置6を用いれば、極めて信頼性の高い粒子状物質検出が可能となる。
【0050】
図7に本実施形態の変形例として示す粒子状物質検出装置6aについて説明する。なお、以下の説明において上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付したので説明を省略し、特徴的な部分についてのみ説明する。なお、以下の実施形態、及び、比較例において、カバー体2、及び、ハウジング3は、特に限定するものではなく、第1の実施形態と同じ構成としている。
上記実施形態においては、センサ素子1の検出電極11、12が捕集用電極を兼ねており、検出電極11、12間に高電圧を印加して、PMを検出部13に捕集する構成について説明したが、本変形例のセンサ素子1aでは、検出電極11、12とは別に、一対の捕集用電極15a、15bを設けて、電界発生用電源50aから捕集用電極15a、15b間に高電圧を印加することによって、捕集用電極15a、15b間に設けた捕集空間160内に電界を発生させ、静電気的な引力により検出部13aにPMを捕集するようにした点が相違する。
【0051】
本実施形態においては、電気的特性として上記実施形態と同様、検出電極11、12間に堆積したPM量によって変化する抵抗値を検出対象としている。
捕集用電極15a、15bは、両面を平板状の絶縁体10又は、絶縁体100に挟さまれて絶縁状態となっている。
捕集用電極15a、15bは、検出部13aを間に挟んで対向している。
さらに、本変形例においては、検出部13を覆うように、絶縁体からなる捕集空間形成層16が形成され、検出部13の一部が、両側面が開口する捕集空間160に露出するようにした点が相違する。
捕集用電極15a、15bは、それぞれ、電界発生部150a、150bとリード部151、151bとによって構成され、電界発生用電源部50aに接続されている。
【0052】
さらに、本変形例においては、通電により発熱する発熱部14が設けられ、検出部13に堆積したPMを加熱除去する構成となっている。
発熱部14は、絶縁体10及び、絶縁体100に挟まれた発熱体140、リード部141、142によって構成され、検出部13に積層して設けられ、発熱体通電制御装置53に接続されている。
本変形例においても、上記実施形態と同様、印加電圧補正手段511が、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスを用い検出抵抗測定手段510によって検出された検出抵抗RSENが所定の閾値以上となる不感質量Q0と、外部補正手段7として、校正用被測定ガスに対する校正センサ4REFの不感質量Q0REFとの比較を行い、それらが一致するように、電界発生用電源部50aから印加される電圧を増減させることで、上記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0053】
加えて、本変形例においては、検出電極11、12と捕集用電極15a、15bとが別に設けられているので、抵抗値検出のための印加電圧とPMを捕集するための印加電圧とを独立して設定できるので検出精度がさらに向上できる。
さらに、本変形例においては、上記実施形態と同様の効果に加えて、捕集用電極15a、15b間に発生させた電界による引力によって、センサ素子1aの先端側の両側面方向に向かって開口する捕集用空間160内にPMを吸引する構成となっているので、カバー体2の組み付け方向のバラツキによるカバー体2内における被測定ガスの流速の違いの影響を少なくすることもできる。
なお、絶縁体10と同様、絶縁体100には、アルミナ等の公知のセラミック絶縁材料が用いられている。
【0054】
図8、図9、図10、図11を参照して本発明の第2の実施形態として、検出部に堆積するPM量を静電容量Cによって計測するように構成した、粒子状物質検出装置6bについて説明する。
上記実施形態においては、検出電極11、12間に堆積するPM量に応じて変化する検出電極11、12間の抵抗値変化によって、PM量を検出する構成を示したが、本実施形態においては、検出電極11b、12bを絶縁体100によって覆い、PM捕集空間160に捕集されたPM量によって変化する電気的特性として、静電容量Cを検出するようにした点が相違する。
このような構成とすることにより、電気的特性として、検出部13における静電容量Cを測定する場合においても、上記実施形態と同様、個体差を校正用センサ4REFとの比較に基づいて決定した電界発生用電源部からの印加電圧の増減によって上記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0055】
また、上記実施形態においては、検出部13の一方の側に積層して発熱部14を設けた変形例を示したが、本実施形態においては、捕集用電極15a、15bのさらに外側に積層して、発熱部14a、14bを設けて、検出部13bの両面から加熱するようにしている。
このような構成とすることにより、捕集空間160を区画する絶縁体10、161、162、100の内周表面に堆積したPMを確実に除去することが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態におけるセンサ素子1bは、図9に示すように、検出電極11b、12b間に堆積するPM量によって変化する静電容量CPM、抵抗値RPMと、リード部111b、121b等に寄生する寄生容量C1、C2、内部抵抗R1、R2を接続した等価回路で表すことができ、電気特性計測部510bの入力端子間のインピーダンスZxをいわゆるI−V法等の公知のインピーダンス計測方法によって検出することができる。
具体的には、所定の周波数特性を有する発振器RFから印加した電圧V1と既知の抵抗値RSの両端で検出される電位差V2とを用い、ZX=V1/I=(V1/V2)・RSによって算出される。
さらに、本実施形態においては、図8の粒子状物質検出センサ4bと同様の構成の校正用センサ4bREFを用いて、既知量のPMを含有する校正用ガスに対する検出インピーダンスZXREFと検出インピーダンスZxとの比較によって、電界発生用電源部50bの印加電圧VOUTを増減すべく、可変抵抗r1の抵抗値を設定し、分圧抵抗値r2との比によって増幅器OPの増幅率を増減する構成となっている。
このような構成とすることによって、校正用ガスに対する出力を校正用センサ4bREFの出力に近似させるように電界発生用電源部50bの印加電圧VOUTを任意に補正することが可能となる。
【0057】
比較例3として、図8に示した粒子状物質検出装置6bを用い、本発明の補正方法を適用しない場合について、上記実施形態と同様の試験を行った。
図10に示すように、静電容量(インピーダンスZx)によってPM量を検出した場合でも、本発明の補正方法を適用しない場合には、不感質量Q0に大きなバラツキ(変動係数CV=19.5%)があることがわかる。
一方、図11に実施例2として示すように、本実施形態においても、不感質量Q0のバラツキを小さく(変動係数CV=1.4%)できることが判明した。
【0058】
図12を参照して、本発明の第2の実施形態における変形例について説明する。
図8に示した構成では、検出電極11b、12bと捕集用電極15a、15bとを別に設けた構成を示したが、図12に示すように、検出電極11c、12cを、捕集用電極として用いるように構成しても良い。
本実施形態において、検出電極11b、12bは、平板状に広がる検出電極平板部110c、120cとリード部111c、121cとによって構成されている。
また、検出電極11c、12cの表面は、それぞれ、平板状の絶縁体101c、100cによって覆われている。
このような構成とすることによって、検出電極平板部110c、120cの面積に比例し、互いに対向する検出電極平板部110c、120cの距離に反比例する静電容量Cの並行平板を構成し、PMの捕集量の変化に伴い、検出電極平板部110c、120c間の誘電率が変化し必然的に検出電極11c、12c間の静電容量Cが変化し、これを検出することで、捕集空間160内に堆積するPM量を算出できる。
本実施形態においても、検出電極平板部110c、120cの面積のバラツキや、電極間距離のバラツキ等があっても、上記実施形態と同様に印加電圧補正手段511が、既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスを用い検出抵抗測定手段510によって検出された検出抵抗RSENが所定の閾値以上となる不感質量Q0と、外部補正手段7として、校正用被測定ガスに対する校正センサ4cREFの不感質量Q0REFとの比較を行い、それらが一致するように、電界発生用電源部50aから印加される電圧を増減させることで、上記実施形態と同様の効果を発揮する。
【0059】
図13、図14を参照して、本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置6dについて説明する。
上記実施形態においては、検出部13に堆積するPM量に応じて変化する抵抗値、静電容量等の電気的特性を直接計測する例を示したが、本実施形態においては、検出部13dに捕集したPMを電気化学反応によって酸化除去すると共に、その際に流れる電流を検出部51dで検出するようにした点が相違する。
【0060】
本実施形態では、検出電極11d、12dが、多孔質電極からなり、平板状に形成した検出電極平板部110d、120dとリード部111d、121dによって構成され、酸素イオンやプロトン等の特定のイオンに対して伝導性を有する固体電解質材料からなり、平板状に形成した固体電界層10dの対向する表面に形成され、一方の検出電極平板部110dを捕集空間160に対向させ、他方の検出電極平板部120dを、排出層17の排出空間170に対向させてある。
具体的な固体電解質材料としては、酸素イオン伝導性を有するイットリア安定化ジルコニアやプロトン伝導性を有する一部を遷移金属等で置換したMP2O7型ピロリン酸塩等の公知の固体電解質材料を用いることができる。
排出空間170は、アルミナ等の絶縁材料からなり、略コ字形に形成された排出空間形成層171と、平板状に形成された絶縁体100とによって区画されている。
排出層17に積層して、発熱部14dが形成されている。発熱部14dは、絶縁体100によって覆われ、発熱体140dと一対のリード部141d、142dによって構成されている。
【0061】
上記実施形態において、発熱部14は、検出部13に堆積したPMを燃焼除去するために設けられているが、本実施形態においては、PMの燃焼除去は、検出電極110d上で、PM量を検出する際の電気化学反応によってもたらされ、発熱部14は、固体電解質体10dを加熱し、活性化するために用いられる。
【0062】
図14に示すように、本実施形態においては、固体電解質体10dの一方の表面に形成された検出電極11dと捕集用電極15dとの間に電界発生用電源部50dから高電圧を印加して、電界を形成し、電界による引力によって検出電極11dの表面にPMを捕集し、さらに、検出電極11d、12d間に電気化学反応用電源513dから電気化学反応によって検出電極11の表面に堆積したPMを酸化除去したときに発生するプロトンH+、又は、電子が固体電解質体10dを移動する際に検出抵抗Rsの両端に発生する電位差を電気特性計測部510dによって計測し、PM量を算出することができる。
【0063】
比較例4として、図12に示した粒子状物質検出装置6dを用い、本発明の補正方法を適用しない場合について、上記実施形態と同様の試験を行った。
図15に示すように、電気化学反応によってPMを酸化除去したときに流れる電流からPM量を検出した場合でも、本発明の補正を行わない場合には、不感質量Q0に大きなバラツキ(変動係数CV=9.3%)があることがわかる。
一方、図16に実施例3として示すように、本実施形態においても、予め、校正用センサ4dREFの不感質量Q0REFとの比較した結果に応じて、電界強度を補正した場合には、不感質量Q0のバラツキを小さく(変動係数CV=1.3%)できることが判明した。
【0064】
図17は、比較例1〜4、実施例1〜3について、上述の如く、複数の粒子状物質検出センサの不感質量Q0の平均μ及び標準偏差σを求め、個体差を示す指標として平均位置μを標準偏差σで割った変動係数CV(=100×標準偏差σ/平均値μ(%))を算出し、それを並べたものである。
【0065】
以上より、本発明のいずれの実施形態においても、粒子状物質検出センサの製造過程で不可避的に発生する電極間距離のバラツキと、センサ素子1、1a〜1dの方向性とカバー体2に設けた開孔の方向性とのズレとによって重畳的に拡大されるセンサ出力の個体差に応じて電界発生用電源部50、50aからセンサ素子1、1a〜1dの検出部に印加される電圧の補正によって、粒子状51、51d物質の捕集量が増減され、出力結果のバラツキを小さくできることが判明した。
【符号の説明】
【0066】
1 センサ素子
10 絶縁性基体
11、12 検出電極
111、121 検出電極リード部
112、122 検出電極端子部
2 カバー体
20 カバー内筒
21 カバー外筒
201、202、211、212 カバー開孔
3 ハウジング
4 粒子状物質検出センサ
5 検出制御部
50 電界発生用電源部
500 昇圧回路
51 計測部
510 電気特性計測部
511 補正手段
512 検出電圧決定手段
6 粒子状物質検出装置
7 外部補正手段
8 被側手ガス流路
80 被測定ガス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開昭59−197847号公報
【特許文献2】特表2008−502892号公報
【特許文献3】特開2010−32488号公報
【特許文献4】特開2010−54432号公報
【特許文献5】特開2009−97868号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界発生用電源部と、
少なくとも、上記電界発生用電源部により発生する電界による引力を利用して測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する捕集用電極と、
上記捕集用電極、又は、これとは別に設けた電極を、上記検出部に捕集した粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極としたセンサ素子と、
上記センサ素子を保護するカバー体と、
上記検出部を被測定ガス中に載置するハウジングとからなる粒子状物質検出センサと、
上記捕集用電極に電界を発生させる電界発生用電源部と、
上記検出部に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質によって変化する電気的特性を計測する計測部とを有し、
被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、
基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を所定の印加電圧値に維持して、不感質量を低減させる電界強度に維持し、
基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を、所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、所定の印加電圧上限閾値より高くして、不感質量を増加させる電界強度に補正する印加電圧補正手段を設けたことを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
上記印加電圧下限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.0kV/mmとなる電圧であり、上記印加電圧上限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.4kV/mmとなる電圧である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量は、電界強度が1.0kV/mmとなる印加電圧にて測定した値であるとともに、該測定値を用いて補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
上記粒子状物質検出センサの製造ロットから抽出したサンプルの内、不感質量が最も多いものを上記校正用粒子状物質検出センサとする請求項1ないし3のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の出力を補正する補正方法であって、
既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電界発生用電源部から上記検出部に印加する電圧を、不感質量を最少化する電界強度となる所定の印加電圧下限閾値から所定の印加電圧上限閾値までの範囲内に維持し、
基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電源部から上記検出電極間に印加する電圧を、上記所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、上記所定の印加電圧上限閾値より高くして、上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量に近似させることを特徴とする粒子状物質検出装置の補正方法。
【請求項1】
電界発生用電源部と、
少なくとも、上記電界発生用電源部により発生する電界による引力を利用して測定ガス中の粒子状物質を検出部に捕集する捕集用電極と、
上記捕集用電極、又は、これとは別に設けた電極を、上記検出部に捕集した粒子状物質の量に応じて変化する電気的特性を検出する検出電極としたセンサ素子と、
上記センサ素子を保護するカバー体と、
上記検出部を被測定ガス中に載置するハウジングとからなる粒子状物質検出センサと、
上記捕集用電極に電界を発生させる電界発生用電源部と、
上記検出部に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質によって変化する電気的特性を計測する計測部とを有し、
被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、
基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を所定の印加電圧値に維持して、不感質量を低減させる電界強度に維持し、
基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電界発生用電源部から印加する電圧を、所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、所定の印加電圧上限閾値より高くして、不感質量を増加させる電界強度に補正する印加電圧補正手段を設けたことを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
上記印加電圧下限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.0kV/mmとなる電圧であり、上記印加電圧上限閾値が、上記検出電極間に形成する電界強度が1.4kV/mmとなる電圧である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量は、電界強度が1.0kV/mmとなる印加電圧にて測定した値であるとともに、該測定値を用いて補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
上記粒子状物質検出センサの製造ロットから抽出したサンプルの内、不感質量が最も多いものを上記校正用粒子状物質検出センサとする請求項1ないし3のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の粒子状物質検出装置の出力を補正する補正方法であって、
既知量の粒子状物質を含む校正用被測定ガスに対する出力が所定の閾値以上となるまでの不感質量が、基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも多い場合には、上記電界発生用電源部から上記検出部に印加する電圧を、不感質量を最少化する電界強度となる所定の印加電圧下限閾値から所定の印加電圧上限閾値までの範囲内に維持し、
基準となる校正用粒子状物質検出センサの不感質量よりも少ない場合には、上記電源部から上記検出電極間に印加する電圧を、上記所定の印加電圧下限閾値より低く、又は、上記所定の印加電圧上限閾値より高くして、上記校正用粒子状物質検出センサの不感質量に近似させることを特徴とする粒子状物質検出装置の補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−233874(P2012−233874A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1803(P2012−1803)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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