説明

粗紡機における粗糸巻き取り方法

【課題】予定した肩形状の粗糸巻(粗糸パッケージ)を、肩崩れが生じることなく安定して形成することができる粗紡機における粗糸巻き取り方法を提供する。
【解決手段】予め設定された肩形状となるように粗糸を巻き取る際に必要な層チェンジ時の粗糸巻径増加量ΔΦを、粗糸張力検出器の情報から推定し、この推定した粗糸巻径増加量ΔΦを用いてボビンレールの反転位置を決定して粗糸巻を形成する。粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加すると仮定したΔΦ推定モデルを作成する。そして、粗糸張力検出器から得られる粗糸張力信号に基づいて推定した粗糸巻径増加量ΔΦpと、更新前のモデルで算出した粗糸巻径増加量ΔΦqとの差が小さくなるようにΔΦ推定モデルを更新して、更新後のモデルから粗糸巻径増加量ΔΦを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗紡機における粗糸巻き取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粗紡機においては、フロントローラより一定速度で送り出される粗糸を、一定速度で回転しているフライヤとそれより高速で回転するボビンとの回転速度差により粗糸に撚りを掛けつつボビンホイール上のボビンに巻き取って粗糸巻(粗糸パッケージ)を形成する。ボビンはスピンドルに装着されてボビンレールとともに昇降動される。そして、ボビンレールの昇降運動の方向が変わる毎に、即ち粗糸巻表面に新たな粗糸層が形成される毎にボビンレールの移動距離(昇降ストローク)が短縮されて、粗糸巻の両端部が円錘台状となるように粗糸の巻き取りが行われる。粗糸巻の肩形状、即ち粗糸巻の両端部の円錘台状部の形状は、巻き取り層(巻き付け層)を切り換える(層チェンジ)毎に増加する粗糸巻径(粗糸巻直径)に対応して、巻き始め時のリフト長に対し、ボビンレールの反転位置を少しずつリフト長が短くなる方向に切り換えていくことを満管まで繰り返すことで成形されていく。
【0003】
予定した肩形状を実現するには、ボビンレールの反転位置を決定する要素である今回の層チェンジに対する粗糸巻径の増加量(ΔΦ)を予測することが重要になる。従来、このΔΦを推定するために、繊維種、粗糸重量、回転数、プレッサ巻数等の紡出条件からΔΦを算出可能なデータベースを主制御プログラムに内蔵した粗紡機が使用されている。
【0004】
また、ドラフトパ−トを回転駆動するメインモ−タと別に、ボビン回転を独立して変更可能な制御モ−タを備え、ボビンレールの昇降を昇降切換位置で切り換え、ボビン巻径(粗糸巻径)に応じた適正なボビン回転となるように制御モ−タを回転制御してボビンに粗糸を巻き取る粗糸巻き取り方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の粗糸巻き取り方法は、ボビンレールの昇降切換が行われて次の昇降切換位置に達するまでに、次の昇降切換後の粗糸ボビン(粗糸巻)の、予測されるボビン巻径に対応したボビン回転の制御量を予め求め、次の昇降切換とともにその制御量によってボビン回転を制御していく。
【0005】
具体的には、ボビンレールが昇降方向を切り換えて、次の昇降切換位置に達するまでに、粗糸張力検出装置からの粗糸張力に基づいて、粗糸の1層厚さを補正し、その補正した粗糸の1層厚さと、現在のボビン巻径とから、次の昇降切換後のボビン巻径を予測する。そして、その切換後のボビン巻径と対応したボビン回転となる分周比を求めて記憶しておき、次の昇降切換時にその分周比を分周器に設定して、ボビン回転を切換後のボビン巻径と対応した回転に制御する粗糸巻き取り方法が提案されている。
【0006】
粗糸の1層厚さの補正は、粗糸張力を元に、粗糸の一層厚さ(一定増分Δd)に対する補正値(正、負の値をとる)εを演算するもので、予め設定しておいた張力目標値と検出された検出値との偏差に一定の係数を乗じて算出される。そして、次回のボビン巻径Dは、次式によって算出される。
【0007】
D(次回のボビン巻径)=D(今回のボビン巻径)+2×(Δd−ε)
【特許文献1】特開平8−232123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
満ボビン(満粗糸巻)径及びリフト長が一定で、紡出原料が同じであれば、満ボビンに巻き取られる粗糸の量(巻き取り容積)は、肩形状によって決まり、所望の巻き取り容積に対応する肩形状となるように巻き取りが行われれば、予定した巻き取り容積を確保することができる。
【0009】
図4に示すように、一般に、粗糸巻Fの肩形状はボビンBの中心軸方向と一定の角度θを成すようになっている。粗糸巻1本当たりの粗糸巻き取り容積を多くするためには粗糸巻Fの肩角度θを大きくする必要がある。しかし、紡出粗糸重量、繊維種等の紡出条件によって肩崩れを起こさずに成形可能な粗糸巻Fの肩角度θには上限値が存在する。そのため、肩形状が外側に凸の曲面となるように粗糸の巻き取りを行って粗糸巻き取り容積を増加させる場合もある。
【0010】
予定した肩形状を実現することは、予定した巻き取り容積を確保することになる。しかし、粗糸巻径の増加量(ΔΦ)は、粗糸品種(原料)、ゲレン、撚り数、フライヤ回転数、巻き取り張力、巻き取りピッチ等の紡出条件や気温や湿度の影響を受けるといわれている。そして、予め試験紡出(試紡)を行って適正な紡出条件を定めて、その紡出条件で粗糸の巻き取りを行う場合には、予定した肩形状で粗糸の巻き取りを行うことが可能となる。しかし、紡出条件が変わる毎に試紡を行うのは、試紡による原料及び労力の無駄が生じるとともに、粗紡機の稼動効率が低下するという問題がある。そして、多品種少ロット生産に対応して紡出条件の変更が頻繁に行われることにより、前記の問題がより顕著となる。
【0011】
粗糸の巻き取りを円滑に行うためには、ボビン肩部における粗糸が前層の粗糸より剥がれ落ちる(いわゆる肩崩れ)を抑制する必要があり、肩崩れを防止するためには、紡出条件にもよるが、0.1mm程度のボビンレール反転位置の精度が要求される。そして、粗糸巻径増加量(ΔΦ)の予測精度が悪いと、肩崩れが発生し易くなる。
【0012】
本願発明者は、繊維種、粗糸重量、回転数、プレッサ巻数等の紡出条件から粗糸巻径増加量ΔΦを算出可能なデータベースを主制御プログラムに内蔵した粗紡機において、粗糸巻径増加量ΔΦの予測値(推定値)と、実測値とを比較した。その結果、バラツキはあるが、粗糸巻径の増加にともなって実測値が微小ではあるが単調増加する傾向にあることを見いだした。そのため、紡出条件によっては、肩崩れを避けるため、肩角度θを小さく変更する必要がある。また、肩角度θを小さく変更する場合も、肩崩れを避けるため、肩角度θを小さめに設定するようになり、満粗糸巻の粗糸の量が減少する。
【0013】
特許文献1の粗糸巻き取り方法では、粗糸張力検出器の情報を利用して、粗糸の1層厚さの補正を行っている。特許文献1の補正方法は、粗糸張力を元に、粗糸の一層厚さ(一定増分Δd)に対する補正値(正、負の値をとる)εを演算するもので、予め設定しておいた張力目標値と検出された検出値との偏差に一定の係数を乗じて算出される。即ち、特許文献1では粗糸張力検出器の情報を利用して粗糸層が増加する毎に一定増分Δdの補正を行っている。しかし、補正値εは、張力目標値と検出された検出値との偏差に一定の係数を乗じるだけで、本願発明者が見出した、粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加することに関する配慮は何らなされていない。
【0014】
特許文献1は、ボビンレールの昇降切換をカウントして、その切換毎にこれから巻かれていくボビン巻径に応じたボビン回転に変速制御する構成では、ボビン回転数の演算が、切換信号が発生した後しか実行できず、それだけボビン回転の制御が遅れるという問題を解消する目的でなされたものである。その目的を達成するためであれば、本願発明者が見出した、粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加することを配慮しなくてもそれほど支障は無い。しかし、予定した肩形状の粗糸巻を紡出条件に対応して試紡を行わずに、肩崩れが生じることなく安定して形成することは難しい。
【0015】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、予定した肩形状の粗糸巻(粗糸パッケージ)を、肩崩れが生じることなく安定して形成することができる粗紡機における粗糸巻き取り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、予め設定された肩形状となるように粗糸を巻き取る際に必要な層チェンジ時の粗糸巻径増加量ΔΦを、粗糸張力検出器の粗糸張力情報から推定し、この推定粗糸巻径増加量ΔΦを用いてボビンレールの反転位置を決定して粗糸巻を形成する粗紡機における粗糸巻き取り方法であって、前記推定粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加すると仮定したモデルを作成し、層チェンジ毎に、前記粗糸張力情報から推定した粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前の前記モデルを用いて算出した粗糸巻径増加量ΔΦq との差が小さくなるように前記モデルを更新して、更新された前記モデルから前記推定粗糸巻径増加量ΔΦを算出する。
【0017】
この発明では、粗糸巻を形成する際、予め設定された肩形状となるように粗糸を巻き取る際に必要な層チェンジ時の粗糸巻径増加量ΔΦを、粗糸張力検出器の情報から推定する。この推定粗糸巻径増加量ΔΦを用いてボビンレールの反転位置を決定して粗糸巻を形成する。推定粗糸巻径増加量ΔΦを求めるため、粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加すると仮定したモデルを作成する。そして、層チェンジ毎に、前記粗糸張力情報から推定した粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前の前記モデルを用いて算出した粗糸巻径増加量ΔΦq との差が小さくなるように前記モデルを更新して、更新された前記モデルから前記推定粗糸巻径増加量ΔΦを算出する。したがって、予定した肩形状の粗糸巻(粗糸パッケージ)を、肩崩れが生じることなく安定して形成することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記単調増加は一次増加とする。粗糸巻径の増加に伴う粗糸巻径増加量ΔΦは正確には一次増加ではないが、一次増加と仮定しても支障はない。この発明では、一次増加とするため、演算が簡単になる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、粗紡機は、フライヤの回転速度を粗糸巻径が所定の値に達した後は粗糸巻径の増加に伴って減速するように変速制御され、前記モデルにおいて、変速中の粗糸巻径増加量ΔΦは、フライヤ回転速度の初速を現在回転速度で割った値に比例すると仮定する。この発明では、フライヤの回転速度が、粗糸巻径が所定の値に達した後は粗糸巻径の増加に伴って減速するように変速制御される場合でも、粗糸巻を安定して形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、予定した肩形状の粗糸巻(粗糸パッケージ)を、肩崩れが生じることなく安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、フロントローラ11はその回転軸11aの一端と、主モータMにより回転駆動されるドライビングシャフトとの間に配設された歯車列(何れも図示せず)を介して回転駆動されるようになっている。フライヤ12の上部には被動歯車13が一体回転可能に嵌着固定されている。前記ドライビングシャフトの回転がベルト伝動機構(図示せず)を介して伝達される回転軸14の回転により、回転軸14に嵌着された駆動歯車15を介して被動歯車13がフライヤ12とともに回転駆動される。一方、ボビンレール16上に装備されたボビンホイール17には被動歯車17aが固着されている。被動歯車17aと噛合する駆動歯車18が嵌着固定された回転軸19には、ドライビングシャフトの回転力と、インバータ20bを介して変速駆動される巻取用モータ21による回転力とが差動歯車機構22により合成されて伝達されるようになっている。
【0022】
ボビンレール16にはリフターラック23が固定されている。リフターラック23と噛合する歯車24が嵌着された回転軸25には、駆動軸27の回転が切換機構28及び歯車列を介して伝達される。駆動軸27はインバータ20cを介して変速駆動される昇降用モータ26により駆動される。切換機構28は中間軸29と、該中間軸29と前記駆動軸27との間に設けられた一対の歯車列30,31と、歯車列30,31の回転を中間軸29に伝達する電磁クラッチ32,33とから構成されている。そして、電磁クラッチ32,33の励消磁により回転軸25の回転方向、即ちボビンレール16の昇降動の方向が変更されるようになっている。回転軸25の端部にはボビンレール16の移動方向を検知するセンサとしてのロータリエンコーダ34が接続されている。
【0023】
フロントローラ11とフライヤトップ12aとの間には、フロントローラ11からフライヤトップ12aに至る粗糸Rの位置を連続的に非接触で検出して粗糸張力を検出する粗糸張力検出器35が設けられている。粗糸張力検出器35は、例えば、特公昭63−47811号公報に開示されたものと同様な構成で、対向して配置された発光部と受光部とを備え、発光部と受光部との間に粗糸Rが位置するようになっている。発光部は赤外発光ダイオードアレーにより構成され、受光部は粗糸Rの直径の約半分のピッチで上下方向に並設された多数の受光素子からなる受光素子アレーを有している。各受光素子は受ける光の強弱に対応した電気信号を出力するようになっている。即ち、粗糸Rが発光部からの光を遮ることにより、粗糸Rの位置と対応した受光素子が光を受けなくなるため、その受光素子を検出することによって粗糸Rの位置が求められ、粗糸張力が求められる。
【0024】
次に前記駆動系を駆動制御するための電気的構成を図2に従って説明する。制御装置37を構成するマイクロコンピュータ38はCPU(中央処理装置)39と、制御プログラムを記憶した読出し専用メモリ(ROM)よりなるプログラムメモリ40と、作業用メモリ42とから構成されている。作業用メモリ42は、入力装置41により入力された入力データ及びCPU39における演算処理結果等を一時記憶する読出し及び書替可能なメモリ(RAM)よりなる。CPU39はプログラムメモリ40に記憶されたプログラムデータに基づいて動作する。
【0025】
紡出粗糸重量、繊維種、フライヤ回転数、撚り数、ボビン径、粗糸巻の肩角度等の紡出条件を入力する入力装置41は制御装置37にキーボードとして一体に組込まれている。ロータリエンコーダ34及び粗糸張力検出器35からの出力信号は入力インタフェース43を介してCPU39に入力されるようになっている。
【0026】
電磁クラッチ32,33はCPU39からの信号に基づき、電磁クラッチ励消磁回路44を介してその励消磁が制御され、ボビンレール16の昇降切換が行われる。ボビンレール16は第1の電磁クラッチ32が励磁されたときに上昇移動され、第2の電磁クラッチ33が励磁されたときに下降移動されるようになっている。両電磁クラッチ32,33が同時に励磁されることはない。
【0027】
また、CPU39は出力インタフェース45、モータ駆動回路46a,46b,46c及びインバータ20a,20b,20cを介して主モータM、巻取用モータ21及び昇降用モータ26を駆動制御する。
【0028】
ロータリエンコーダ34は回転軸25の正転、逆転に対応してそれぞれ別のパルス信号を出力するようになっており、ボビンレール16の上昇、下降の区別がパルス信号からも確認できるようになっている。CPU39はプログラムメモリ40に記憶されたプログラムデータに基づいて動作する。CPU39はロータリエンコーダ34からの出力信号に基づいてボビンレール16の昇降速度及び位置を演算するようになっている。
【0029】
CPU39は、粗糸張力検出器35から得られる粗糸張力信号に基づいて現在粗糸巻径Φp を推定し、この現在粗糸巻径Φp から、層チェンジ時の粗糸巻径増加量ΔΦp を推定する。CPU39は、粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻層の増加に伴って単調増加すると仮定したモデルを用い、粗糸張力検出器35から得られる粗糸張力に基づいて推定された粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前の前記モデルで算出した粗糸巻径増加量ΔΦq との差が小さくなるようにモデルを更新して、更新後のモデルから現在粗糸巻径Φp に対する粗糸巻径増加量ΔΦを算出する。
【0030】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。機台の運転に先立ってまず紡出粗糸重量、繊維種、フライヤ回転数、撚り数、粗糸巻の肩角度等の紡出条件が入力装置41により入力される。
【0031】
CPU39は、紡出条件に基づいて巻き取り開始から満管までのフライヤ12の回転速度を設定する変速曲線を決定する。変速曲線は、生産性を向上させるためと粗糸巻が成長した場合にフライヤ12の回転に伴う遠心力によって粗糸の巻き取りが阻害されないようにするために、巻き取り開始から所定の巻径、例えば、80〜85mmに達するまでは一定の高速回転に保持され、その後は粗糸巻径が増大するに連れて徐々に減速するように設定されている。CPU39は現在の粗糸巻径に応じて主モータMの回転速度を決定し、設定された撚り数により紡出速度を決定する。また、CPU39は、紡出速度と現在粗糸巻径から巻取用モータ21の回転速度を決定し、さらに層数から昇降用モータ26の回転速度を決定する。
【0032】
機台の運転が開始されると、主モータMが駆動され、主モータMの駆動によりフロントローラ11及びフライヤ12がそれぞれ回転駆動される。機台の起動と同時に巻取用モータ21及び昇降用モータ26も駆動され、差動歯車機構22に入力された主モータMの回転力と、巻取用モータ21の回転力とが差動歯車機構22で合成され、合成された回転力により回転軸19が駆動されてボビンホイール17が回転駆動される。その結果、フロントローラ11から紡出された粗糸Rがフライヤ12により加撚され、フライヤ12より高速で回転するボビンBに層状に巻き取られる。また、昇降用モータ26の駆動により、切換機構28、回転軸25等を介してリフターラック23とともにボビンレール16が昇降動される。また、ロータリエンコーダ34からの出力信号がCPU39に入力される。
【0033】
また、粗糸張力検出器35により粗糸Rの張力状態を示す信号がCPU39に入力され、CPU39はその信号から粗糸Rの張力が適正状態か否かを判断し、適正張力からずれている場合には、ボビン回転速度の調整によって粗糸張力が適正値に戻るように、巻取用モータ21を制御する。
【0034】
巻取り速度及びボビンレール16の昇降速度は巻取用モータ21及び昇降用モータ26の回転速度を変更することにより、粗糸層の増加に伴い漸減される。CPU39はロータリエンコーダ34からの出力信号に基づいて常にボビンレール16の位置を演算する。
【0035】
次に設定された肩角度θを実現するための制御装置37の作用を説明する。粗糸巻の肩角度θは、図4に示すように、層当たりの粗糸巻径増加量をΔΦ、層当たりのリフトの減少量をΔYLとすると、次式で表される。
【0036】
θ=tan−1(ΔΦ/2ΔYL)・・・(1)
粗糸巻径増加量ΔΦは一定ではなく、粗糸巻径Φの増加に伴って単調増加する。したがって、設定された肩角度θの粗糸巻Fを形成するためには、粗糸巻層が増加する毎に粗糸巻径増加量ΔΦを演算し、それに対応して(1)式が成立するようにリフトの減少量ΔYLを決定し、そのリフトの減少量ΔYLとなるようにボビンレール16を反転させる必要がある。
【0037】
CPU39は、図3のフローチャートにしたがって、粗糸巻径Φ、粗糸巻径増加量ΔΦ、反転目標位置を決定し、ボビンレール16の反転を制御する。ボビンレール16の位置は、図4に示すように、ボビンBの粗糸巻き取り可能位置の下端を原点(0)として、ボビンレール16の上昇方向に向かって大きくなるように設定された位置座標の値として表される。この実施形態においては、粗糸の巻き取りは、ボビンBの中間位置から開始され、粗糸は巻き取り位置が次第にボビンBの下側に向かって移動するように巻き取られて、最初の反転位置でボビンレール16の移動方向が反転された後、粗糸は巻き取り位置が次第にボビンBの上側に向かって移動するように巻き取られる。即ち、ボビンレール16は先ず上昇移動した後、反転して下降移動するように昇降制御が行われる。
【0038】
したがって、ボビンレール16は、上側反転位置及び下側反転位置とも、ボビンBに巻き取られる粗糸層が奇数層の巻き取り状態から偶数層の巻き取り状態に変わるときに反転が行われる。なお、下側反転位置とは、粗糸の巻き取りが下側に向かって移動する状態から上側に向かって移動する状態に変化するようにボビンレール16が反転する位置を意味し、ボビンレール16は上昇移動をしている状態から下降移動をする状態に移動方向を変更する。また、上側反転位置は、逆にボビンレール16が下降移動をしている状態から上昇移動をする状態に移動方向を変更する位置を意味する。そして、ボビンレール16の最初の下側反転目標位置は入力装置41により入力されたリフト長LLによって決まり、最初の上側反転目標位置は、入力装置41により入力されたマージンLmによって決まる。
【0039】
粗紡機の運転が開始されると、CPU39は、ステップS1において、1層目の巻付け(巻き取り)か否かを判断し、1層目の巻付けであればステップS2に進み、粗糸巻径をボビン裸径とし、反転目標位置を決定する。反転目標位置は、ロータリエンコーダ34の出力信号からボビンレール16が上昇中か下降中かを判断し、上昇中であればリフト長LLから反転目標位置が決定され、下降中であればマージンLmから反転目標位置が決定される。なお、反転目標位置で電磁クラッチ32,33が切り換えられてもボビンレール16は直ちに移動方向が変更されるのではなく、オーバーランをした後、移動方向が変更される。そのため、ボビンレール16のオーバーラン量を考慮して反転目標位置が決められる。
【0040】
つぎにCPU39は、ステップS3に進み、ロータリエンコーダ34の出力信号に基づいて、反転目標位置に到達したか否かを判断する。CPU39は、反転目標位置に到達すると、電磁クラッチ32,33に励消磁切換信号を出力する。また、層毎の運転情報を更新する。具体的には、現在のフライヤ回転速度Sou[n]Vf及び現在の粗糸巻径Sou[n]Φを層毎の運転情報として作業用メモリ42に記憶する。励消磁切換信号により電磁クラッチ32,33の励消磁状態が切り換えられて、ボビンレール16の移動方向が反転する。励消磁切換信号を出力した時点から、ボビンレール16が反転するまでのロータリエンコーダ34からの出力パルス数がカウントされる。CPU39は、そのカウント数からオーバーラン量を求めて作業用メモリ42に記憶させる。
【0041】
次にCPU39は、ステップS5に進み、フィルタ係数更新用データの加工を行う。フィルタ係数とは、粗糸巻径増加量ΔΦの推定に使用するΔΦ推定モデルの係数を意味する。具体的には、推定モデルは、現在粗糸巻径とフライヤ回転速度Vfの関数として、次式で表される。
【0042】
ΔΦ=係数A×現在粗糸巻径+係数B
このモデルは、次の2つを仮定している。
1.フライヤ回転速度Vfが一定の場合、粗糸巻径増加量ΔΦは、粗糸巻径の一次式(単調増加)となる。
【0043】
2.係数Aは、フライヤ回転速度Vfが変速中、即ち変速点以降は、係数A=(フライヤ回転速度の初速)/(フライヤ現在回転速度)の関係がある。
CPU39は、フィルタ係数更新用の粗糸巻径データCln[n]Φ、フライヤ回転速度データCln[n]Vf、粗糸巻径増加量データCln[n]ΔΦを、過去4層前の層毎の運転情報を参照して次式で求める。但し、4層に満たない場合は、算出可能な層情報を用いて算出する。算出可能な層情報とは、データベースとして予めプログラムメモリ40あるいは図示しない不揮発性メモリに記憶されている粗糸巻径や粗糸巻径増加量の各層に対応するデータである。
【0044】
Cln[n]Φ=(Sou[n]Φ+Sou[n−4]Φ)/2
Cln[n]Vf=(Sou[n]Vf+Sou[n−4]Vf)/2
Cln[n]ΔΦ=(Sou[n]ΔΦ+Sou[n−4]ΔΦ)/4
例えば、粗糸層が1層目のときは、Cln[1]Φは紡出条件から得られる1層の粗糸巻径に、Cln[1]Vfは反転直前の時点のフライヤ回転速度に、Cln[1]ΔΦは紡出条件から得られる1層の粗糸巻径増加量ΔΦに設定される。同様に、nが3迄、即ち3層目から4層目の巻き取りに反転するまでは、Cln[n]Φは紡出条件から得られるn層の粗糸巻径に、Cln[n]Vfは反転直前の時点のフライヤ回転速度に、Cln[n]ΔΦは紡出条件から得られる1層の粗糸巻径増加量ΔΦに設定される。
【0045】
まず、ΔΦ推定モデルをy=Ax+Bとし、最初の所定回数の昇降切換時に得られるデータを基にして、最小自乗法で初期値A0 を求める。
A0 =Σ偏差xy/Σ偏差x
Σ偏差x=(inX−ave X0 )
Σ偏差xy=(inX−ave X0 )*(inY−ave Y0 )
分散の初期値P0 は、inXの分散の逆数とする。
【0046】
P0 =1/Σ偏差x
但し、inXはフィルタ係数更新用データのCln[n]Φ、inYはフィルタ係数更新用データのCln[n]ΔΦ、ave X0 は粗糸巻径の基準平均値、ave Y0 は粗糸巻径増加量の基準平均値である。ave X0 及びave Y0 はフィルタ係数更新用データClnの6層目以降のデータから演算される。具体的には、ave X0 は6層目のCln[6]Φからn層目までのCln[n]Φの平均値であり、ave Y0 は6層目のCln[6]ΔΦからn層目までのCln[n]ΔΦの平均値である。
【0047】
次にCPU39はステップS6に進み、フィルタ係数更新(ΔΦ推定モデル更新)を行う。
CPU39は、パラメータ推定のオンライン方式を使って、粗糸張力検出器35から得られる粗糸張力信号に基づいて推定した粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前のモデルで算出した粗糸巻径増加量ΔΦq との差が小さくなるようにフィルタ係数を更新する。すなわち、ΔΦ推定モデルをinY=A*inXと線形化し、inX=現在粗糸巻径−ave X0 、inY=現在粗糸巻径増加量−ave Y0 との演算結果に基づいて把握される粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前モデルの係数A(傾き)に基づいて算出された粗糸巻径増加量ΔΦq とを用いて、係数A(傾き)が更新される。
【0048】
次にCPU39は、更新された係数Aに基づき、ステップS7で次式を使用して粗糸巻径増加量ΔΦを推定、即ちΔΦ予測値を演算する。
ΔΦ予測値=A*inX*VfRate+ave Y0
但し、VfRateはフライヤ回転速度の初速Vf/現在回転速度Vfnow
次にCPU39はステップS8で次の反転目標位置を演算して決定する。
【0049】
反転目標位置は、反転目標位置が下側反転位置、即ちボビンレール16が上昇から下降に移動方向を変える場合であれば、前回の反転位置からΔYLを差し引いた値となり、反転目標位置が上側反転位置、即ちボビンレール16が下降から上昇に移動方向を変える場合であれば、前回の反転位置にΔYLを加えた値となる。ΔYL=ΔΦ/(2tanθ)であり、ステップS7の結果から、ΔYLが演算でき、前回の反転位置は作業用メモリ42に記憶されているため、CPU39は、前回の反転位置とΔYLから反転目標位置を演算して決定する。
【0050】
次にCPU39はステップS9で粗糸巻径Φを更新する。その後、CPU39は更新された粗糸巻き径に基づいて巻取用モータ21及び昇降用モータ26の速度を制御する。そして、再び、ステップS1に戻る。2層目以降の巻き取りの場合は、ステップS1からステップS3に進み、ステップS3以降の各工程が実施される。
【0051】
したがって、従来と異なり、粗糸巻層が増加する毎に、パラメータ推定のオンライン方式を使って更新されたより正確なモデルにより粗糸巻径増加量ΔΦが推定されて、その粗糸巻径増加量ΔΦに基づいて反転目標位置が決定されるため、各紡出条件に対応して試紡を行わなくても、予め設定された肩形状となるように粗糸の巻き取りを行うことができる。
【0052】
同じ紡出条件で粗糸の巻き取りを複数回行う場合、初回(1回目)の巻き取りと2回目以降の巻き取りでは、巻き取り初期、例えば6層目までの巻き取り時におけるステップS7におけるΔΦの推定方法が異なる。具体的には、初回の巻き取りの場合、ΔΦを推定モデルから推定するのではなく、ステップS5で処理したフィルタ係数更新用加工データを直接使用する。一方、2回目以降の巻き取りでは、前回の巻き取りにおいてフィルタ係数の初期値が確定しているため、1層目からΔΦを、推定モデルを用いて推定する。
【0053】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)予め設定された肩形状となるように粗糸Rを巻き取る際に必要な層チェンジ時の粗糸巻径増加量ΔΦを、粗糸張力検出器35の情報から推定し、この推定粗糸巻径増加量ΔΦを用いてボビンレール16の反転位置を決定して粗糸巻(粗糸パッケージ)Fを形成する。そして、粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加すると仮定したモデルを作成し、粗糸張力検出器35から得られる粗糸張力信号に基づいて推定した粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前のモデルで算出した粗糸巻径増加量ΔΦq との差が小さくなるようにモデルを更新して、更新後のモデルから粗糸巻径増加量ΔΦを算出するので、更新毎にモデルから得られる粗糸巻径増加量ΔΦの値が最適値に近づくと共に、張力信号の変動によってモデルのパラメータが急激に変化することが抑制される。したがって、予定した肩形状の粗糸巻Fを、肩崩れが生じることなく安定して形成することができる。その結果、肩形状による巻き取り容積から、生産可能紡出長の目安を容易に導き出すことができる。
【0054】
(2)フライヤ回転速度が一定の場合、前記単調増加が一次増加として粗糸巻径増加量ΔΦを推定する。粗糸巻径の増加に伴う粗糸巻径増加量ΔΦは正確には一次増加ではないが、一次増加と仮定しても支障はなく、一次増加と仮定することにより、演算が簡単になる。
【0055】
(3)粗紡機は、フライヤ12の回転速度を粗糸巻径が所定の値に達した後は粗糸巻径の増加に伴って減速するように変速制御され、前記モデルにおいて、変速中の粗糸巻径増加量ΔΦは、フライヤ回転速度の初速を現在回転速度で割った値に比例すると仮定する。したがって、フライヤ12の回転速度が、粗糸巻径が所定の値に達した後は粗糸巻径の増加に伴って減速するように変速制御される場合でも、粗糸巻Fを安定して形成することができる。
【0056】
(4)CPU39はステップS9で更新した粗糸巻径に基づいて巻取用モータ21及び昇降用モータ26の速度を制御する。したがって、紡出条件に基づいて設定されたフライヤ12の変速曲線に基づいて巻取用モータ21及び昇降用モータ26の速度を制御する場合に比較して、巻き取り制御の安定化(特に巻き取り初期)に繋がる。
【0057】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 予め設定される肩形状は、肩角度θが一定に限らず、肩角度θが粗糸巻径の増加に伴って次第に小さくなるように変化する形状、即ち肩の外形が外側に凸の曲面となる形状や、複数段階で肩角度θが変化する形状であってもよい。これらの形状であっても、各反転目標位置を決定する際、その層における対応する肩角度θとΔΦとからΔYLを求め、そのΔYLと前回の反転目標位置とから今回の反転目標位置を演算することができる。
【0058】
○ 肩形状は、上肩と下肩とが異なる形状であってもよい。例えば、肩角度θが上肩と下肩とで異なる値としたり、肩形状が曲面形状の場合にその曲率が上肩と下肩とで異なる値としたりしてもよい。
【0059】
○ ステップS8においてボビンレール16の反転目標位置を決定する場合、ステップ7で推定されたΔΦ及び肩角度θから求めた次回のΔYLと、前回の反転目標位置とから今回の反転目標位置を演算する方法に限らない。例えば、予め設定された肩形状に対応して、反転目標位置と粗糸巻径Φとの関係式を求めておき、その式を使用して反転目標位置を決定してもよい。反転目標位置と粗糸巻径Φとの関係式として、例えば次式が挙げられる。
【0060】
反転目標位置=0.5*K1(粗糸巻径−ボビン裸径)+K2(粗糸巻径−ボビン裸径)+K3
但し、K1:反転位置変化曲線勾配の勾配、K2:反転位置変化曲線勾配初期値
K3:オーバーラン補正用オフセット量
○ 反転目標位置を粗糸巻径Φの関数である関係式を使用して決定する場合、2回目以降の巻き取りにおいては、最適化したパラメータと基準位置を使用して、巻き始めからΔΦ推定モデルによる推定により、反転目標位置の決定を行ってよい。この場合、実績データの再利用により、巻き始めの初期値決定が不要となる。
【0061】
○ 粗糸の巻き取り開始位置はボビンBの中間位置からではなく、ボビンBの粗糸巻き取り可能位置の上端から開始してもよい。この場合、粗糸層の奇数層はボビンBの上側から下側に向かうように巻き取りが行われ、偶数層はボビンBの下側から上側に向かうように巻き取りが行われる。
【0062】
○ 反転目標位置の関係式は、偶数層と奇数層に分けてもよい。
○ 1回目の巻き取りにおいては、初期ΔΦは、データベースでなく任意の適当な値の設定でもよい。この場合、ΔΦ推定用のデータベースを保持しなくてもよい。即ち、粗糸巻径増加量ΔΦの初期値を与えることができれば、繊維品種、プレッサ巻数、粗糸重量の設定をしなくても粗糸張力検出器35とフライヤ回転速度の計測情報のみで粗糸巻径増加量ΔΦを推定することができ、繊維品種、粗糸重量等の紡出条件と関連するデータベースを保有する必要がない。
【0063】
○ ボビンレール16の反転目標位置は、ボビンレール反転時のオーバーラン量を、ボビンレール移動速度を要素にした予測フィードバックにより決定してもよい。ボビンレール16の移動速度の変化が巻き始めと巻き終りで大きく、オーバーラン量の差がボビン形状に影響する場合、有効になる。
【0064】
○ 1回目の巻き取り終了後に、適当な各層データを使用してパラメータの最適化を行ってもよい。
○ 紡出条件毎に、ΔΦ推定モデルのパラメータ群を記憶しておき、次回の巻き始めから使用してもよい。この場合、実績データの再利用により、巻き始めの初期値決定が不要となる。
【0065】
○ ステップS8における反転目標位置を決定する際、オーバーラン量の値として2回前のボビンレール16の反転時におけるオーバーラン量、即ちボビンレール16の同じ移動方向での反転時で直近における実際のオーバーラン量を用いるようにしたり、前回のボビンレール16の反転時におけるオーバーラン量を用いたりしてもよい。
【0066】
○ ステップS8における反転目標位置を決定する際、オーバーラン量の値として過去複数回(例えば、数回)のオーバーラン量の平均値を用いてもよい。
○ フライヤ回転速度Vfが一定の場合、粗糸巻径増加量ΔΦは、粗糸巻径の一次式ではなく粗糸巻径に対して単調増加となる関係であればよく、例えば二次式であってもよい。
【0067】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記粗糸巻径増加量ΔΦを予想するΔΦ推定モデルをΔΦ=係数A×現在粗糸巻径+係数Bとして、1回目の巻き取りにおいては、初期ΔΦは、データベースを用いずに任意の適当な値に設定する。
【0068】
(2)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、紡出条件毎にΔΦ推定モデルのパラメータ群を記憶しておき、同じ紡出条件の次回の巻き取り時にそのパラメータ群を巻き始めから使用する。
【0069】
(3)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、1回目の巻き取り終了後に、各層のデータを使用してパラメータの最適化を行い、2回目以降の巻き取りにそのパラメータを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】粗紡機の駆動系の概略図。
【図2】制御装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】反転指令出力位置の設定手順を示すフローチャート。
【図4】粗糸巻の肩角度を示す一部破断模式図。
【符号の説明】
【0071】
F…粗糸巻、R…粗糸、12…フライヤ、16…ボビンレール、35…粗糸張力検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された肩形状となるように粗糸を巻き取る際に必要な層チェンジ時の粗糸巻径増加量ΔΦを、粗糸張力検出器の粗糸張力情報から推定し、この推定粗糸巻径増加量ΔΦを用いてボビンレールの反転位置を決定して粗糸巻を形成する粗紡機における粗糸巻き取り方法であって、
前記推定粗糸巻径増加量ΔΦが粗糸巻径の増加に伴って単調増加すると仮定したモデルを作成し、層チェンジ毎に、前記粗糸張力情報から推定した粗糸巻径増加量ΔΦp と、更新前の前記モデルを用いて算出した粗糸巻径増加量ΔΦq との差が小さくなるように前記モデルを更新して、更新された前記モデルから前記推定粗糸巻径増加量ΔΦを算出することを特徴とする粗紡機における粗糸巻き取り方法。
【請求項2】
前記単調増加は一次増加とする請求項1に記載の粗紡機における粗糸巻き取り方法。
【請求項3】
粗紡機は、フライヤの回転速度を粗糸巻径が所定の値に達した後は粗糸巻径の増加に伴って減速するように変速制御され、前記モデルにおいて、変速中の粗糸巻径増加量ΔΦは、フライヤ回転速度の初速を現在回転速度で割った値に比例すると仮定する請求項1又は請求項2に記載の粗紡機における粗糸巻き取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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