説明

粘性流体の充填装置及び粘性流体の充填方法

【課題】
管状の被充填部材に対して粘性流体を吐出した後に生じる糸引き現象により、粘性流体が飛散等することを防止することを課題とする。
【解決手段】
粘性流体を吐出するノズルを管状に形成された被充填部材との軸心とを略一致させた後、ノズルを被充填部材の開口端から挿し込み、粘性流体を吐出して被充填部材に粘性流体を充填する。その後、ノズルと被充填部材を相対的に回転させることにより、粘性流体の吐出後に発生する糸引き部分を捩じりきることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状に形成された被充填部材に粘性流体(例えばグリス等)を充填する充填装置及びその充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリス等の粘性流体を充填するに際して、粘性流体を吐出するノズルからの糸引き現象を防止する発明が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、連続するリング状の開口部を有する部品に対してグリスを注入するグリス注入装置に係る発明が開示されている。すなわち、回転軸の外周にリング状に形成された開口部に、開口部に対応してリング状に配列されたグリスを吐出する注入口を挿入し、グリスの注入が終了した後、当該部品を回転軸を中心にして回転することで、グリスの糸引きを断ち切る構成が開示されている。さらに、これらの構成に加えて、圧縮空気の噴出を利用して、グリスの糸引きを断ち切る構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2及び3には、インク特性として剪断減粘性や低粘性を有するボールペンにおいて後端にフォロア(逆流防止体、逆流防止栓、インク追従体ともいう。)が充填されたボールペンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−47707号公報
【特許文献2】特許第3956858号公報
【特許文献3】特許第3282084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される発明では、グリス注入後の糸引き現象の対応策として、部品を回転させたり圧縮空気の吹き付けにより糸引き現象が発生したグリスを切断している。この場合、部品の回転によりグリスの糸引きを瞬間的には引き伸ばすこととなり、グリスの飛散が発生する。さらには、圧縮空気の吹き付けにより、さらにグリスの飛散が発生する。
【0007】
特許文献2,3に開示されるボールペンの製造方法におけるグリス状のフォロアの充填においても、フォロア注入後には糸引き現象が発生する。この対応として中芯(インクタンク)を特許文献1に開示される構成と同様に回転させたり、圧縮空気を吹き付けたとしても、フォロア(グリス)の糸引きが引き伸ばされることによるグリスの飛散が発生する。さらに、インクタンクの後端開口部付近にフォロアの飛散物が付着することにより見栄えが悪くなる。特許文献3に開示される構成のように、最終工程でフォロアの飛散物が付着したインクタンクの後端を切断することも考えられるが、部材を無駄に浪費することとなり、好ましく無い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、粘性流体を吐出するノズルの軸心と、粘性流体が充填される管状の被充填部材の軸心を略一致させて挿し込み、粘性流体を吐出する。その後、ノズルと被充填部材を相対的に回転させることを特徴とする粘性流体の充填装置及び粘性流体の充填方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、管状に形成される被充填部材の内部にグリス等の粘性流体を充填するに際して、粘性流体が吐出されるノズルの軸心を、被充填部材の軸心と略一致させることができる。そして、粘性流体を吐出した後、ノズルと被充填部材を相対的に回転することにより、糸状に形成された粘性流体は捩じ切られることとなる。すなわち、ノズルの軸心と被充填部材の軸心とが略一致しているので、相対回転時における両者の回転軸も略一致する。すると、従来技術のように糸状に伸びた粘性流体を引っ張り切ることがなく、糸状に伸びた粘性流体を捩じ切ることとなる。よって、糸状に延びた粘性流体を引っ張り切る場合に比べて、粘性流体の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したボールペンのフォロア充填装置の実施例を示し、装置正面左側上方から見た斜視図である。
【図2】図1のフォロア充填装置の正面右側上方から見た斜視図である。
【図3】図1のフォロア充填装置の左側面図である。
【図4】本発明に係る被充填部材であるボールペンの中芯である。
【図5】本発明の粘性流体の充填方法をボールペンの中芯に実施した場合の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3に、本発明に係る粘性流体の充填装置を示す。本実施例では、ボールペンの中芯の後端に、インクの逆流を防止するグリス状のフォロアを充填する装置として本発明を適用している。
【0013】
粘性流体の充填装置であるフォロア充填装置1は、ボールペンの中芯にインキングし、組立を行うインキング装置(図示せず)の一部であり、同一平面上の架台2(図3参照)上に設置されている。
【0014】
フォロア充填装置1の概略構成を説明する。架台2上の正面側には、第一移動手段20が設置されている。第一移動手段20上には、中芯100に充填するフォロアを吐出する吐出ユニット30が摺動自在に設けられている。吐出ユニット30と接近・離反する位置には、順次組立工程の上流側から搬送される中芯100が載置される載置ユニット40が設けられる。載置ユニット40の下方には、載置ユニット40を上下動させる第二移動手段50が設けられている。そして、載置ユニット40の上方から背面(第一移動手段20と反対側)に渡って、モーターユニット60が設けられている。
【0015】
以下、より詳細にフォロア充填装置1の構成を説明する。第一移動手段20には、架台2と固設するベース21が設けられている。このベース21上には、ガイドレール22が固設されている。このガイドレール22は、上方に設けられるスライダープレート23を正面−背面方向を摺動自在に支持している。スライダープレート23の上方には、エアスライドテーブル24が固設される。エアスライドテーブル24は、正面−背面方向にガイドブロック24aを摺動自在に支持している。エアスライドテーブル24は、所定圧のエアを駆動源としている。エアスライドテーブル24に接続されるエア機器の回路上にはスピードコントローラー(調整手段)が設けられ、ガイドブロック24aの移動速度を調整可能に構成されている。
【0016】
ここで、スライダープレート23は、図示しないが、架台2の下面等に設けられた駆動カム等の動力源からの連結棒と接続され、正面−背面方向を移動する。そして、スライダープレート23の移動距離は、エアスライドテーブル24によるガイドブロック24aの移動距離よりも数倍程度長く設定されている。よって、スライダープレート23の移動距離は、ガイドブロック24aの移動距離よりも長いが、移動速度はスライダープレート23の方が速く設定されている。ただし、スライダープレート23の移動速度は駆動カムの形状・回転速度により機械的に固定的であるのに対し、ガイドブロック24aの移動速度は、前述のスピードコントローラー(調整手段)により調整可能である。
【0017】
なお、ガイドブロック24aの移動距離は、図示しない規制手段(ストッパ)等により機械的に規制されている。
【0018】
ガイドブロック24aの上面には、吐出ユニット30が固設されている。吐出ユニット30には、定量弁31a,31bが2ブロックを一組にして設けられている。定量弁31a,31bは、シリンダーブロック312a,312b内のピストン等とエアの作用により、粘性流体(フォロア105)を吐出可能に形成された公知の定量弁である。フォロア(105)の吐出量は、吐出量調整ネジ311a,311bで調節することができる。定量弁31a,31bには、粘性流体であるフォロア(105)が、図示しない貯留するタンクからエアポンプを介して常時供給されている。なお、本実施例における図示例では、配管や電気配線は省略している。
【0019】
定量弁31a,31bの吐出口にはノズル32a,32bが設けられている。そして、ノズル32a,32bの先部(ノズル先部)321a,321bは、針状に形成され、ボールペンの中芯100のインクタンク102のペン先101の反対側にある開口部(開口端102a)に挿入可能に形成されている。定量弁31a,31bから吐出されるフォロア(105)は、このノズル32a,32bの先端(ノズル先部321a,321bの先端)から吐出されることとなる。
【0020】
載置ユニット40には、図示しない搬送手段から搬送されてきた中芯100がペン先101を背面側へ向けて(換言すれば、インクタンク102の開口部(開口端102a)を正面側に向けて)載置される。中芯100は、フォロア充填装置1の右側面側から左側面側に向けて搬送される。なお、本実施例においては、中芯100は2本一組で搬送されている。
【0021】
より詳細には、後述する第二移動手段50に設けられた昇降ブロック53に固設される固定ブロック54を介して載置部材(正面側載置部材41a,背面側載置部材41b)が設けられている。ここで、固定ブロック54の正面側側面及び背面側側面には、それぞれ上下方向に溝部541a,541bが貫設される。そして、正面側載置部材41aと背面側載置部材41bのそれぞれの板状に形成される基端部411a,411bは、平面を正面側(又は背面側)に向けて、固定ブロック54の正面側側面及び背面側側面にそれぞれ形成された溝部541a,541bにスライド係合されている。さらに、基端部411a,411bは、平面に開けられた長孔に固定ボルトを通して固定ブロック54に固定されている。よって、この固定ボルトを緩めると、正面側載置部材41a及び背面側載置部材41bの上下方向の位置を調節することができる。
【0022】
正面側載置部材41aは、全体を板状に形成し、板厚方向を正面側−背面側方向に平行に設けられている。基端部411a上方から左側面側(換言すれば送り方向FDの下流側)に向って梁状に梁状部412aが延在している。さらに、この梁状部412aの上面には、正面側から背面側に向けて4箇所にV溝413a,414a,415a,416aが設けられている。
【0023】
一方、背面側載置部材41bは、基端部411b上方から正面側に亘って、ブロック状のブロック状部分412b1が形成される。ブロック状部分412b1から左側面側(換言すれば送り方向FDの下流側)に向けては、板状の板状部分412b2が延在している。板状部分412b2は、板厚方向を正面側−背面側方向に平行にして設けられている。そして、ブロック状部分412b1及び板状部分412b2の上面には、正面側から背面側に向けて4箇所にV溝413b,414b,415b,416bが設けられている。
【0024】
正面側載置部材41a及び背面側載置部材41bの上面に設けられたV溝413a,414a,415a,416a,413b,414b,415b,416bは、正面側−背面側方向に中芯100を架設して載置できるよう構成されている。例えば、本実施例の図示例において、上流側では、V溝413aと413bが対応している。
【0025】
本実施例のように、中芯100を載置する溝部をV字状とすることにより、円筒管状に形成された被充填部材である中芯100を載置するのみで、中芯100をセンタリングすることができる。よって、組立用の機械(本実施例では吐出ユニット30)側をセンタリングする必要が無く、容易に高精度な組立作業を実現することができる。
【0026】
さらに、正面側載置部材41a及び背面側載置部材41bの下流側2箇所の対応するV溝415a,415b、416a,416bには、中芯100の軸心回りの回転を支持する支持ローラー417が設けられている。正面側載置部材41aには梁状部412aの正面側に2組(計4個)、板状部分412b2には、正面側及び背面側に、それぞれ2組(計8個)が設けられている。よって、支持ローラー417が設けられたV溝415a,415b,416a,416bでは、中芯100の載置時に、V溝の斜面によりセンタリングが行われるとともに、2個一組に形成される支持ローラーにより軸心回りに回転自在に支持されることとなる。なお、詳細は後述するが、中芯100は、V溝415a,415b,416a,416bに載置されたV溝位置においてフォロアの充填が行われる(以下「フォロア充填V溝」という。)。
【0027】
載置ユニット40の下方には、第二移動手段50が設けられている。第二移動手段50には、軸心を架台2に垂直な方向にした円筒部51aと、その外周に形成されたフランジ部51bを有するガイド手段51が設けられている。フランジ部51bは、架台2に固設されている。円筒部51aの内周には円筒に形成されるガイドブッシュ51cが設けられている。そして、丸棒状に形成される従動ロッド52は、ガイドブッシュ51cにより上下方向に摺動自在に支持されている。一方、四角柱状に形成される昇降ブロック53は、その長手方向の軸心を送り方向FDと平行にして設けられている。そして、昇降ブロック53は、昇降ブロック53の長手方向中央部よりやや下流側(左側面側)で、昇降ブロック53の下方に設けられている従動ロッド52の一端部である溝部52aと固設している。さらに、昇降ブロック53の中央部よりやや上流側(右側面側)で、昇降ブロック53に固定ブロック54が固設されている。
【0028】
従動ロッド52の他端側(架台2の内部)は、図示しない駆動カム等の動力源と連結され、ガイドブッシュに倣って上下に摺動する。よって、従動ロッド52の昇降動作により、昇降ブロック53,固定ブロック54を介して、載置ユニット40(正面側載置部材41a,背面側載置部材41b)が昇降動作する。
【0029】
載置ユニット40の上方から背面側方向に渡って、モーターユニット60が設けられている。モーターユニット60の略中央付近には、上方に向けて割りブロック61が立設している。一方で、モーターユニット60のさらに背面側にはモーターベース62が架台2に固設され設けられている。モーターベース62から正面側に向けて突出する支柱ロッド63の端部と、割りブロック61が固設されることにより、モーターユニット60は吊り下げ固定されている。
【0030】
割りブロック61の下面はモーターユニット60のフレーム64と固定されている。フレーム64の背面側には、ギアドモーター65が回転軸を正面側に向けて固設されている。ギアドモーター65の回転軸の動力は、ギアユニット66に伝達される。一方で、長尺棒状に形成される2本の回転ロッド67a,67bは、ギアユニット66から、フレーム64の正面側ブラケット64aに亘って、回転自在に架設されている。そして、回転ロッド67a,67bの背面側の端部は、ギアユニット66と接続される。よって、ギアドモーター65の回転軸の動力(回転力)は、ギアユニット66を介して2本の回転ロッド67a,67bへと伝達される。
【0031】
ここで、2本の回転ロッド67a,67bは、中芯100が載置されフォロア105の充填が行われるフォロア充填V溝の垂直上方位置に設けられている。そして、さらに、2本の回転ロッド67a,67bには、略円柱状に形成される回転駒68が固設されている。回転駒68は、1本の回転ロッド(67a,67b)に2個ずつ(本実施例では合計4個)設けられている。さらに回転駒68は、第二移動手段50による昇降動作の上昇限位置において、フォロア充填V溝に載置される中芯100のインクタンク102と当接可能な位置に設けられている。
【0032】
なお、フォロア充填V溝に載置される中芯100のインクタンク102の上方位置におけるフレーム64には、エアシリンダ69が設けられている。エアシリンダ69のピストンロッドは、連結部材等を介して2本の中芯100と同時に当接可能なプレートが設けられている。このエアシリンダ69は、第二移動手段50の昇降タイミングとあわせて動作する。これは、回転駒68と中芯100との当接により、軟質材料であるゴム等で構成された回転駒68の中芯100との当接部分に中芯100がくっついてしまうことを防止するため、エアシリンダ64のロッドを上下方に向けて作動させ、前述のプレートと中芯100を当接させるものである。
【0033】
なお、エアスライドテーブル24の動作(電磁弁等の制御)や吐出ユニット20のフォロア105の吐出タイミング、ギアドモーター65の起動・停止のタイミング等は、PLC等により構成される図示しない制御手段により実現される。
【0034】
中芯100へのフォロア105の充填に関するフォロア充填装置1の位置関係は次のようになる。フォロア充填V溝に載置された中芯100が、第二移動手段50により上昇限に至る位置にて中芯100(インクタンク102)へのフォロアの充填が可能になる。換言すれば、フォロア充填V溝に載置された中芯100の上昇限位置にて吐出ユニット30のノズル32a,32b(ノズル先部321a,321b)の軸心と、フォロア充填V溝に載置された中芯100(インクタンク102)の軸心とは略一致する。
【0035】
ここで、図4により、粘性流体の被充填部材であるボールペンの中芯100の構成について説明する。中芯100は、一端にボールペンのペン先101を有し、他端を開口(開口端102a)して形成される。円筒の管状に形成されるインクタンク102とペン先101とは、接続部材103にて接続されている。インクタンク102には、剪断減粘性を有するインク(いわゆるゲルインク)や、低粘度化された油性インク、水性インク等のインク104が充填されている。
【0036】
インク104の開口端102a側には、フォロア105がインク104と接触して充填されている。フォロア105は、インク104に対して不溶性又は高い難溶性を有し、インク104の消費(筆記)に対してインク104の端面に追従できる性能(インク追従性)を有している。さらに、中芯100が落下等の衝撃を受けても、開口端102aからインク104が漏れ出さないための逆流防止性も有するものである。このため、フォロア105は、油性成分を2種以上(例えば鉱油とポリブテン、常温液状炭化水素を2種以上等)と、種々の組成物を撹拌させて製造されるものであり、公知のフォロアである。ボールペン用のフォロアとしては、25℃におけるちょう度が220〜475程度のものが一般に使用され、いわゆるグリス状に形成されている。
【0037】
なお、インクタンク102と接続部材103は、ポリプロピレン等の透明樹脂材料で形成される。よって、外観からインク104を目視できる。また、通常、インク104は有色不透明の外観を有し、フォロア105は透明又は有色半透明状に形成されている。
【0038】
本発明に係るフォロア充填装置1は、図示しない前工程にてペン先101や接続部材103のインクタンク102への接続、インク104の充填が行われた状態で、載置ユニット40のV溝413a,413b、414a,414bに載置される。さらに、フォロアの充填終了後、中芯100は図示しない次工程に搬送される。次工程以降では、中芯100(具体的にはインク104,フォロア105)にペン先101側へ向けた遠心力を付与し、インク104やフォロア105の充填により内部に残留した空気を開口端102aから外方放出される工程等が処理される。
【0039】
次に、図5と、前掲図1〜4により、中芯100(インクタンク102)へのフォロア105の充填工程を説明する。
【0040】
[第1工程]
前工程処理された中芯100は、2本一組にして搬送され、載置ユニット40のV溝413a,413b、414a,414bにペン先101側を背面側に向けて(換言すれば、開口端102aを正面側に向けて)載置される。2本の中芯100は、図示しない搬送手段により次工程となるフォロア充填V溝(V溝415a,415b、416a,416b)に載置される(図5(a))。V溝413a,413bに載置された中芯100は、V溝415a,415bに載置され、V溝414a,414bに載置された中芯100は、V溝416a,416bに載置される。このとき、ノズル32a,32b(吐出ユニット30)は、正面側の移動限(後退限)に待機している。
[第2工程]
第二移動手段50により載置ユニット40が上昇限位置まで上昇する。上昇限位置にて、ノズル32a,32b(ノズル先部321a,321b)の軸心と、中芯100(インクタンク102)の軸心とが略一致される(図5(b))。なお、載置ユニット40が上昇限位置まで上昇することで、モーターユニット60の回転駒68は、中芯100と当接する。
[第3工程]
第一移動手段20のスライダープレート23(すなわち吐出ユニット20のノズル32a,32b)が背面側へ移動(前進)する(中芯100への吐出ユニット20の接近動作)。そして、ノズル32a,32bが中芯100の開口端102aに接近した所定位置から先は、エアスライドテーブル24の駆動によりガイドブロック24a(すなわち吐出ユニット20のノズル32a,32b)は前進する。ノズル32a,32bの先端は開口端102aに挿入される(図5(c))。
[第4工程]
ノズル32a,32bの前進が一端停止し、エアスライドテーブル24の駆動により正面側への移動(後退)を開始する(中芯100から吐出ユニット20が離反する離反動作)。この後退開始と同時にノズル32a,32bの先端からフォロア105が吐出し、充填が開始される(図5(d))。すなわち、ノズル32a,32bは、後退しながらフォロア105を充填(吐出)する(図5(e))。このとき、フォロア105と、フォロア105と対向するインク104の端面とは所定の空間Sを設けてある。フォロア105の吐出の勢いの影響により、有色のインク104が透明又は有色半透明のフォロア105に混じり込み、外観を害することを防止するためである。
[第5工程]
フォロア105を所定量充填した後、ノズル32a,32bの後退移動は一端停止する。このとき、充填されたフォロア105のノズル32a,32b付近には、糸引き現象が発生している(糸引き部分105a)。ノズル32a,32bの後退移動の停止と同時にモーターユニット60のギアドモーター65が起動し、ギアユニット66,回転ロッド67a,67b,回転駒68を介して中芯100が回転される(図5(f))。
[第6工程]
所定回数中芯100を回転すると、フォロア105の糸引き部分105aが捩じり切られる。回転停止後、ノズル32a,32bはエアスライドテーブル24及びスライダープレート23の正面側への移動により後退限まで後退する。
【0041】
以上でフォロア105の充填工程は終了し、中芯100は次工程に搬送される。
【0042】
上記第2工程でノズル32a,32bの軸心と、中芯100の軸心とを略一致させることにより、後に発生するフォロア105の糸引き部分105aを捩り切ることができる。換言すると、糸引き部分105aの両端部の回転速度に差があり、さらに両端部分の回転軸が略一致しているので、糸引き部105aは捩じられることとなる。ノズル32a,32bの軸心と、中芯100の軸心が一致していない場合、糸引き部分105aは、中芯100の回転により糸引き部105aは引っ張り力を受け、その結果引きちぎられる様にして切断されることとなるので、フォロア105の飛散等が発生してしまう。本発明の装置及び方法によれば、そのような問題は発生しない。
【0043】
さらに、第4工程で、ノズル32a,32bを後退させながらフォロア105を吐出することにより、より確実にフォロア105と、フォロア105と対向するインク104の端面に所定の空間Sを設けてフォロア105を吐出することができる。またさらに、本発明に係る本実施例においては、ノズル32a,32bの先端が中芯100の開口端102a付近からインクタンク102内へ挿入される区間におけるノズル32a,32b(吐出ユニット20)の前進・後退移動をエアスライドテーブル24により行っている。エアスライドテーブル24は、速度を調整する調整手段(具体的にはスピードコントローラー)をエア機器回路上に有している。よって、外部環境やフォロア105の種類に応じて、ノズル32a,32bの移動速度を調整することができる。ゆえに、常に適切なフォロア105の吐出位置を容易に設定することができる。
【0044】
ここで、ノズル32a,32b(吐出ユニット20)の後退限から、ノズル32a,32bが開口端102a付近までの区間のノズル32a,32b(吐出ユニット20)の移動は、駆動カムによるスライダープレート23の移動により行われている。よって、外部環境変化等による速度調整が不要な区間(ノズル32a,32b(吐出ユニット20)の後退限から、ノズル32a,32bが開口端102a付近までの区間)における移動は、生産効率上適切な速度で効率よくノズル32a,32b(吐出ユニット20)の移動を動作させることができる。
【0045】
さらにまた、本発明に係るフォロア充填装置1の載置ユニット40のように、中芯100を長手方向を水平にして載置することにより、フォロア105の吐出位置を適切に制御することができる。そのうえさらに、V溝により中芯100を支持することにより、中芯100の自重により容易にセンタリングを行うことができる。中芯100のペン先101側を鉛直下向きにして、本発明を実施することもできるが、この場合、別途中芯100をクランプ・アンクランプする機構等を設けてセンタリングを行う必要が生じる。さらに、吐出したフォロア105が、その種類によっては自重でインク104と接触してしまう場合も生ずる。
【0046】
また、モーターユニット60の回転駒68を中芯100と当接させて中芯100を回転させる構造としているので、モーターユニット60の構造を簡便な構成とすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。
【0048】
例えば、第3工程以降の工程を以下のように変更することもできる。
[第3’工程]
第一移動手段20により、ノズル32a,32bを背面側へ移動(前進)し、中芯100の開口端102aからノズル32a,32bを挿し込む。
[第4’工程]
ノズル32a,32bを所定量前進させた後停止させ、ノズル32a,32bからフォロア105を吐出(充填)する。
[第5’工程]
フォロア105を所定量充填した後、モーターユニット60のギアドモーター65を起動し、中芯100を所定回数回転させる。これにより、フォロア105の糸引き部分105aが捩り切られる。
[第6’工程]
回転停止後、ノズル32a,32bは第一移動手段20により、後退限まで後退する。
【0049】
上記第3’〜6’工程は、フォロア105の種類や吐出量によっては、実施することができる。上記第3’〜6’工程によれば、中芯100のフォロア充填工程の工数を削減する、又は単位時間当たりの生産数量を増加させることができる。しかし、通常、フォロア105の充填位置(インク104との距離等)を制御する必要があるので、ボールペンの中芯に対しては、前述の実施例(第3工程〜第6工程)が好ましい。
【0050】
中芯100のモーターユニット60による回転は、本実施例では一方向回転としたが、これに限定されるものではなく、例えば任意の回転角度を正逆回転する回動動作でもよい。これもフォロア105の種類(性質)により適宜選択することができる。
【0051】
また、エアスライドテーブル24による吐出ユニット20の移動の速度調整は、「フォロア105を吐出しながら後退する」ときのみ調整可能であれば良い。
【0052】
また、各移動される装置・部位等は、相対的な移動であればよく、本実施例には限定されない。例えば、糸引き部分を捩り切る際の中芯100の回転は、ノズル32a,32b側を回転させてもよい。また、双方を逆転又は回転数を異ならせて回転させてもよい。すなわち相対的に位相差が生じていれば、糸引き部分105aを捩り切ることができる。
【0053】
また、中芯100に対する吐出ユニット30の移動、モーターユニット60に対する中芯100(載置ユニット40)の移動も同様に相対的に接近・離反がされればよい。
【0054】
各部の移動に用いる動力源も、本実施例に限定されることは無く、例えばサーボモーターや油圧機器等を利用しても良い。
【0055】
さらに、本発明に係る装置及び方法は、被充填部材をボールペンの中芯に限定する必要は無く、管状に形成された被充填部材に対してグリス状の粘性流体を充填する装置及び方法に適宜適用することができる。特に、既に異種の流体が先に充填されている等の理由により、グリス状の粘性流体の吐出位置を制御する必要がある場合に、好適に本発明を適用して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 フォロア充填装置
20 吐出ユニット
20 第一移動手段
21 ベース
22 ガイドレール
23 スライダープレート
24 エアスライドテーブル
24a ガイドブロック
30 吐出ユニット
31a,31b 定量弁
32a,32b ノズル
311a,311b 吐出量調整ネジ
312a,312b シリンダーブロック
321a,321b ノズル先部
40 載置ユニット
41a 正面側載置部材
41b 背面側載置部材
411a 基端部
411b 基端部
412a 梁状部
412b1 ブロック状部分
412b2 板状部分
413a,414a,415a,416a V溝
413b,414b,415b,416b V溝
417 支持ローラー
50 第二移動手段
51 ガイド手段
51a 円筒部
51b フランジ部
51c ガイドブッシュ
52 従動ロッド
52a 溝部
53 昇降ブロック
54 固定ブロック
541a,541b 溝部
60 モーターユニット
61 ブロック
62 モーターベース
63 支柱ロッド
64 フレーム
64a 正面側ブラケット
65 ギアドモーター
66 ギアユニット
67a 回転ロッド
67b 回転ロッド
68 回転駒
69 エアシリンダ
100 中芯
101 ペン先
102 インクタンク
102a 開口端
103 接続部材
104 インク
105 フォロア
105a 糸引き部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体をノズルから吐出可能に形成された吐出ユニットと、
管状に形成された被充填部材を、該被充填部材の軸心回りに回転自在に載置される載置ユニットと、
前記吐出ユニットのノズルと前記被充填部材を接近・離反させる第一移動手段と、
前記被充填部材に前記被充填部材の軸心回りの回転力を付与するモーターを有するモーターユニットと、
前記吐出ユニットのノズルの軸心と前記被充填部材の軸心を略一致させるよう前記吐出ユニットと前記被充填部材を相対的に移動させる第二移動手段と、
を有することを特徴とする粘性流体の充填装置。
【請求項2】
前記被充填部材は、前記載置ユニットに長手方向を水平にして載置されることを特徴とする請求項1記載の粘性流体の充填装置。
【請求項3】
前記モーターユニットは、前記モーターの回転軸と連結する回転駒を有し、該回転駒が前記被充填部材と当接することにより前記被充填部材が回転されることを特徴とする請求項1又は2記載の粘性流体の充填装置。
【請求項4】
前記第一移動手段は、前記吐出ユニットと前記被充填部材の接近・離反動作における相対速度を調整可能な調整手段を有することを特徴とする請求項1乃至3記載の粘性流体の充填装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記第一移動手段による前記吐出ユニットと前記被充填部材の相対的な全移動距離のうち、両者が近接した位置における相対速度を調整可能に形成されたことを特徴とする請求項4記載の粘性流体の充填装置。
【請求項6】
前記吐出ユニットのノズルから吐出される粘性流体は、25℃におけるちょう度が220〜475であることを特徴とする請求項1乃至5記載の粘性流体の充填装置。
【請求項7】
前記被充填部材は、一端にボールペンチップが固設され他端を開口され、既にインクが充填されているボールペンの中芯であり、
前記吐出ユニットにより吐出される粘性流体は、前記中芯のインクの逆流を防止するグリス状のフォロアであることを特徴とする請求項1乃至6記載の粘性流体の充填装置。
【請求項8】
粘性流体を吐出するノズルを、管状に形成された被充填部材に対して両者の軸心を略一致させて挿し込む工程と、
前記ノズルから前記粘性流体を所定量吐出する工程と、
前記ノズルと前記被充填部材を軸心回りに相対的に回転させる工程と、
を有することを特徴とする粘性流体の充填方法。
【請求項9】
粘性流体を吐出するノズルを、管状に形成された被充填部材に対して両者の軸心を略一致させて挿し込む工程と、
前記ノズルから前記粘性流体を吐出するとともに、前記ノズルと前記被充填部材とを軸心に沿って相対的に離反するよう移動させる工程と、
前記ノズルからの前記粘性流体の吐出を停止するとともに、前記ノズルと前記被充填部材の相対的に離反する移動を停止する工程と、
前記ノズルと前記被充填部材を軸心回りに相対的に回転させる工程と、
を有することを特徴とする粘性流体の充填方法。
【請求項10】
前記被充填部材を軸心回りに回転させることで前記ノズルと前記被充填部材を相対的に回転させる工程とすることを特徴とする請求項7又は8記載の粘性流体の充填方法。
【請求項11】
前記ノズルから吐出される前記粘性流体は、25℃におけるちょう度が220〜475であることを特徴とする請求項1乃至5記載の粘性流体の充填方法。
【請求項12】
前記被充填部材は、一端にボールペンチップが固設され他端を開口され、既にインクが充填されているボールペンの中芯であり、
前記吐出ユニットにより吐出される粘性流体は、前記中芯のインクの逆流を防止するグリス状のフォロアであることを特徴とする請求項7乃至9記載の粘性流体の充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218325(P2011−218325A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92801(P2010−92801)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000108328)ゼブラ株式会社 (172)
【Fターム(参考)】