説明

粘性流体供給装置及びその固化防止方法並びにプログラム

【課題】高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする簡素な構造の粘性流体供給装置及びその固化防止方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】本発明の粘性流体塗布装置は、カートリッジ330と、ピストン334と、エアー供給源332と、切替えバルブ331と、供給配管340と、供給コック341と、供給コック341により塗布ヘッド100への粘性流体の供給が停止され塗布ヘッド100が基板への塗布動作を終了させた後、エアー供給源332に接続され大気圧よりも大きい圧力を粘性流体に継続的に加える供給状態から、切替えバルブ331による切替えを所定の時間間隔繰り返す事により、所定の時間間隔で圧力が変化するようパルス状に供給圧力の上昇、下降を繰返し、ピストン334の上下動により粘性流体の固化を防止する固化防止状態に切替えるように制御する制御部160とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体塗布装置及びその固化防止方法並びにプログラムに関し、特に粘性流体を保持し、塗布ヘッドに供給する粘性流体供給装置及びその固化防止方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体パッケージの製造における、アンダーフィル接着剤、フラックス及び封止剤等の粘性流体の基板及び半導体チップへの塗布は、半導体パッケージの製造で広く利用されている一般的な粘性流体塗布装置により行われる。この塗布は、塗布ヘッドにより行われ、搬送手段により作業位置まで搬送されてきた基板に、粘性流体を塗布することにより行われる。
【0003】
ところで、粘性流体塗布装置には、基板等への粘性流体の塗布量のばらつきを防ぐため、高い精度で粘性流体の塗布量を制御することが要求される。このような要求に対応する先行技術として、特許文献1に記載のペースト供給装置がある。これは、粘性流体を保持し、粘性流体を塗布ヘッドに供給する粘性流体供給装置に関するものである。図8は、この粘性流体供給装置の構造を示す断面図である。
【0004】
図9に示されるように、粘性流体供給装置は、粘性流体が保持される容器800と、容器800内に配設されたスクリュー部810と、スクリュー部810を駆動させる駆動モータ820とを有する。このような構造を有する粘性流体供給装置は、粘性流体の供給を行う場合には、粘性流体が供給口830に導かれるように所定の方向にスクリュー部810を回転させ、粘性流体の供給を行わない場合には、前記所定の方向とは逆方向にスクリュー部810を回転させて容器800内の粘性流体の粘度を制御する。よって、粘性流体の供給を行わない場合でも、容器内の粘性流体の粘度が大きく変化せず、良好な粘度を維持することができるので、粘性流体供給装置は、高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする。
【特許文献1】特開平4−347638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の粘性流体供給装置では、容器内にスクリュー部、駆動モータ及びそれらを保持する部材を新たに設けなければならないため、容器の構造が複雑化し、装置の大型化及びコスト上昇という新たな問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする簡素な構造の粘性流体供給装置及びその固化防止方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の粘性流体供給装置は、被塗布体に粘性流体を塗布する塗布ヘッドに粘性流体を供給する粘性流体供給装置であって、粘性流体を保持する筒状のタンクと、前記タンクに保持された粘性流体の液面を覆い、前記タンク内で上下動するピストンと、前記タンク内における前記ピストンよりも上方の空間にエアーを供給するエアー供給手段とを備え、前記エアー供給手段は、前記塗布動作を行っていない時間が所定の時間を超えた時に、前記エアーの供給圧力を変化させることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記タンクおよび前記ピストンの少なくとも一方が弾性部材からなってもよいし、前記粘性流体供給装置はさらに、前記タンクから供給された粘性流体を前記塗布ヘッドに導く配管と、前記配管の途中において粘性流体の供給をオン/オフするコックとを備えてもよい。
【0009】
これによって、塗布ヘッドが塗布動作を行っていない場合でも、タンク内の粘性流体に動きが与えられるので、タンク内の粘性流体の粘度上昇が防止される。また、本発明の粘性流体供給装置は、図9の粘性流体供給装置よりも単純な構造を有する。よって、高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする簡素な構造の粘性流体供給装置を実現することができる。
【0010】
また、前記エアー供給手段は、前記塗布動作を行っていない時間が所定の時間を超えた時に、前記エアーの供給圧力の上昇・下降を繰り返してもよいし、前記エアー供給手段は、前記塗布動作を行っていない時間が所定の時間を超えた時に、前記空間に大気圧よりも大きい供給圧力でエアーを供給することと、供給したエアーを大気に開放することとを交互に繰り返してもよい。
【0011】
これによって、タンクへのエアーの供給と停止との単なる繰り返しで、粘性流体の粘度上昇が防止されるので、更に簡素な構造の粘性流体供給装置を実現することができる。
【0012】
また、前記ピストンは、側面が前記タンクの内周面に接する筒体であり、上下動に伴って、前記タンクの内周面に付着した粘性流体を掻き落としてもよい。
【0013】
これによって、タンクの内周面に付着した粘性流体がピストンにより掻き落とされるので、タンク内の粘性流体を塗布ヘッドに確実に供給する粘性流体供給装置を実現することができる。
【0014】
また、本発明は、被塗布体に、動きが与えられないと粘度上昇による固化が始まる粘性流体を塗布する塗布ヘッドに、前記粘性流体を供給する粘性流体供給装置であって、前記粘性流体を保持する筒状のタンクと、前記タンクに保持された前記粘性流体の液面を覆い、前記タンク内で上下動するピストンと、前記タンク内における前記ピストンよりも上方の空間に、大気圧よりも大きい圧力を継続的に加えることにより、エアーを供給するエアー供給源と、前記タンクに前記エアー供給源より大気圧よりも大きい圧力の圧縮空気を供給させるか、あるいはタンクを大気と連通させて大気圧と同等の圧力の空気を供給させるよう切替える切替えバルブと、前記タンク内の粘性流体を前記塗布ヘッドに導く供給配管と、開閉により前記タンク内の粘性流体を塗布ヘッドに導くか否かを決定し、前記粘性流体の供給をオン/オフするように、前記供給配管に接続された供給コックと、前記供給コックにより前記塗布ヘッドへの前記粘性流体の供給が停止され前記塗布ヘッドが基板への塗布動作を終了させた後、前記エアー供給源に接続され大気圧よりも大きい圧力を前記粘性流体に継続的に加える供給状態から、前記切替えバルブによる切替えを所定の時間間隔繰り返す事により、所定の時間間隔で圧力が変化するようパルス状に供給圧力の上昇、下降を繰返し、ピストンの上下動により前記粘性流体の固化を防止する固化防止状態に切替えるように制御する制御手段とを備えることを特徴とする粘性流体供給装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粘性流体供給装置及びその固化防止方法によれば、タンク内に新たな部材を設けたり、タンクの構造を変更したりすることなく、タンクに送るエアーの供給を電磁弁で制御的にオン/オフするだけで、タンク内の粘性流体の粘度上昇を防止することができるので、高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする簡素な構造の粘性流体供給装置及びその固化防止方法を実現することができる。つまり、高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする、小型で低コストの粘性流体供給装置及びその固化防止方法を実現することができる。
【0016】
よって、本発明により、粘性流体の塗布量を高い精度で制御することができる簡素な構造の粘性流体塗布装置を提供することが可能となり、実用的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態における粘性流体供給装置について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の粘性流体供給装置を含んで構成される粘性流体塗布装置の外観図であり、図2は、同粘性流体塗布装置の構造を説明するための図である。
【0019】
本実施の形態の粘性流体塗布装置は、被塗布体である基板140aに粘性流体を塗布する塗布ヘッド100と、粘性流体を塗布ヘッド100に供給する粘性流体供給装置102と、第1の軸方向への塗布ヘッド100の移動位置決めを行う第1軸部110(例えばX軸部)と、第1の軸方向と直交する第2の軸方向への塗布ヘッド100及び粘性流体供給装置102の移動位置決めを行う第2軸部120(例えばY軸部)と、第1の軸方向と第2の軸方向とで形成される平面に直交する第3の軸方向への塗布ヘッド100の移動位置決めを行う第3軸部130(例えばZ軸部)と、第1の軸方向と第2の軸方向とで形成される平面の所定の位置まで基板140aを搬送する基板搬送部140と、塗布ヘッド100の高さを検出するヘッド高さ検出センサー150と、第1軸部110、第2軸部120及び第3軸部130の移動動作制御、及び塗布ヘッド100の塗布動作制御を行う制御部160と、基板搬送部140により基板140aが所定の位置に搬送されたことを検出する基板検出センサー(図外)とを備える。
【0020】
なお、これ以降は、例えば第1の軸方向をX方向、第2の軸方向をY方向、第3の軸方向をZ方向、第1軸部をX軸部、第2軸部をY軸部、第3軸部をZ軸部と呼ぶ。ただし、これに限定することはない。
【0021】
図3は、塗布ヘッド100及び粘性流体供給装置102の構造を説明するための図である。
【0022】
塗布ヘッド100は、粘性流体を吐出するノズル310と吐出用シャフト320とを有し、X方向、Y方向、Z方向に移動可能である。
【0023】
粘性流体供給装置102は、粘性流体を保持し、且つ、交換可能なカートリッジ330と、切替えバルブ331と、エアー供給源332と、カートリッジ330の粘性流体を塗布ヘッド100に導く供給配管340とを有し、Y方向に移動可能である。ここで、切替えバルブ331及びエアー供給源332は、エアー供給手段を構成する。
【0024】
ここで、X軸部110に取り付けられている塗布ヘッド100がY方向へ移動する際は、そのX軸部110の一端に固定されている粘性流体供給装置102も、X軸部110の移動に連動して塗布ヘッド100と共にY方向に移動し、塗布ヘッド100がX方向、Z方向へ移動する際は、粘性流体供給装置102は塗布ヘッド100の動きとは無関係に静止している。
【0025】
吐出用シャフト320は、ノズル310の軸方向に沿って軸回り方向に回転可能な状態で塗布ヘッド100内部に配設されている。吐出用シャフト320の一端には、スクリュー部321が形成されており、スクリュー部321が形成されている側の空洞部内に粘性流体が供給配管340から導かれてくる。スクリュー部321は、吐出用シャフト320の回転に従って粘性流体を移送し、ノズル310から粘性流体を吐出させる。ノズル310から粘性流体を吐出させる時には、スクリューの回転による押圧力を利用する。
【0026】
供給配管340の塗布ヘッド100近傍側には、開閉によりカートリッジ330の粘性流体を塗布ヘッド100に導くか否かを決定し、粘性流体の供給をオン/オフする供給コック341が接続されている。
【0027】
カートリッジ330は、Y方向に移動可能な状態で粘性流体塗布装置の端部に配設された筒状で大容量(例えば600cc)のタンクである。
【0028】
カートリッジ330内には、カートリッジ330内の粘性流体の液面を覆い、カートリッジ330内で上下動する筒体であるピストン334が配設される。ピストン334の側面はカートリッジ330の内周面と接し、カートリッジ330の内周面に沿って移動するため、カートリッジ330の内周面に付着する粘性流体はピストン334により掻き落とされる。ここで、ピストン334はプラスチック等からなる弾性部材であり、ピストン334の形状は、圧縮空気と粘性流体とに挟まれて外周面に加えられる力に応じて変化する。ただし、このピストン334は必ずしも弾性部材である必要はない。
【0029】
カートリッジ330内のピストン334上方の空間には、一定圧力の圧縮空気が供給され、圧縮空気は供給配管340に押し出す力をカートリッジ330内の粘性流体に加える。ここで、カートリッジ330は、ポリプロピレンあるいはエチレン等からなる弾性部材であり、カートリッジ330の内容積は、圧縮空気により内周面に加えられる力に応じて変化する。ただし、このカートリッジ330は必ずしも弾性部材である必要はない。更に、ピストン334とカートリッジ330は少なくとも一方が弾性部材であっても、両方が弾性部材であっても、もしくは両方が弾性部材でなくてもよい。
【0030】
切替えバルブ331は、制御部160からの制御信号により動作され、カートリッジ330をエアー供給源332に連通させて大気圧よりも大きい圧力の圧縮空気を、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給させるか、あるいはカートリッジ330を大気に連通させて大気圧と同等の圧力の圧縮空気を、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給させる。ここで、圧縮空気は、供給圧力を構成する。
【0031】
図4は、上記構造を有する粘性流体塗布装置の動作の概略を説明するためのフローチャートである。
【0032】
まず、基板検出センサーが所定の位置まで基板140aが搬送されたのを検出すると共に、粘性流体塗布装置は塗布動作を開始する(ステップS400)。
【0033】
次に、X軸部110及びY軸部120により塗布ヘッド100及び粘性流体供給装置102を所定のX−Y位置に移動させる(ステップS410)。これは、Y軸部120により塗布ヘッド100及び粘性流体供給装置102を所定のY位置に移動させ、かつX軸部110により塗布ヘッド100を所定のX位置に移動させることによりおこなわれる。
【0034】
次に、Z軸部130により塗布ヘッド100を所定の高さまで下降させる(ステップS420)。
【0035】
次に、塗布ヘッド100により基板140aに粘性流体を塗布させる(ステップS430)。
【0036】
次に、Z軸部130により塗布ヘッド100を所定の高さまで上昇させる(ステップS440)。
【0037】
最後に、基板検出センサーが所定の位置に基板140aが無く、搬出されたのを検出すると共に、粘性流体塗布装置は塗布動作を終了する(ステップS450)。
【0038】
図5は、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に加わる力の変化を示す図である。
【0039】
粘性流体塗布装置が塗布動作を開始する前に、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に継続的な一定の力をかけ始めるタイミングと、所定の時間経過後、その力が一旦、開放され、さらにピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体にパルス状の力をかけ始めるタイミングとを示す。このとき、継続的な一定の力は、切替えバルブ331によりカートリッジ330をエアー供給源332に連通させ、大気圧よりも大きい圧力の圧縮空気が常にピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されるようにすることで発生し、パルス状の力は、切替えバルブ331による切替えを所定の時間間隔、例えば2secで繰り返し、所定の時間間隔で圧力が変化する断続的な一定の圧縮空気、つまり、圧力が上昇・下降を繰り返す圧縮空気がピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されるようにすることで発生する。
【0040】
上記パルス状の力をかけ始める動作は、基板検出センサーによって検出される以下の結果に基づいて実行される。例えば、基板に粘性流体が塗布されるステージ及びそのステージの手前にある所定の位置に、次に塗布されるべき基板が何らかのトラブルによって制御された時間内に搬入されないという結果が得られた場合、あるいは、粘性流体の塗布が終了された基板が何らかのトラブルによって制御された時間内に搬出されないという結果が得られた場合等においては、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放された後、継続的な一定の圧縮空気が供給され、ピストン334が上下動されて、粘性流体の粘度上昇を防止する。
【0041】
しかし、正常時間内に基板の搬入・搬出が行われたとしても、基板の搬入・搬出に要する時間が粘性流体の粘性度を上昇させる程度の時間であり、基板が搬入されたのを検出してから制御された時間を経過しても搬出されなければ、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気は開放された後、継続的な一定の圧縮空気が供給され、ピストン334が上下動されて、粘性流体の粘度上昇を防止する。
【0042】
すなわち、塗布ヘッド100が基板140aに粘性流体を塗布していない時間、つまり塗布ヘッド100が実際に塗布動作を行っていない時間が長くなり、粘性流体の粘性度が塗布動作を行うのに支障が起こる程度に上昇する場合には、上記動作が実行されることにより、カートリッジ330及びピストン334は弾性部材であるためカートリッジ330の内容積及びピストン334の形状は常時変化することとなるので、カートリッジ330内の粘性流体に常時動きが与えられ、再度、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に継続的な一定の圧縮空気が供給されるまでの間における粘性流体の粘度上昇が防止される。特に粘性流体が封止剤である場合には、封止剤が高い分子間引力を有する高分子材料であるフィラーを含み、粘度が高くなり易いため、粘性流体が封止剤である場合に大きな効果を発揮する。
【0043】
例えば、粘性流体がシリコンから構成される封止剤である場合には、約2〜3分間、塗布ヘッドにより塗布動作が行われず、粘性流体に動きが与えられないと、粘性流体の粘度上昇による固化が始まるが、塗布動作が行われていない間に約1〜30回/minの切替えバルブによる切替えが行われると、粘性流体の粘度上昇は防止され、固化が防止される。
【0044】
図6は、塗布ヘッド100による粘性流体の塗布(図4のステップS430における粘性流体の塗布)を説明するためのタイミングチャートである。なお、図6(a)は供給コック341の開閉タイミングを示し、図6(b)は吐出用シャフト320の回転タイミングを示し、図6(c)はノズル310からの粘性流体の吐出タイミングを示している。
【0045】
まず、供給コック341を開いて、粘性流体を塗布ヘッド100に供給させる(t=t0)。
【0046】
次に、スクリュー部321を回転させて、粘性流体をノズル310から吐出させる(t=t1)。
【0047】
次に、供給コック341を閉じて、塗布ヘッド100への粘性流体の供給を停止させる(t=t2)。
【0048】
最後に、スクリュー部321の回転を停止させて、ノズル310からの粘性流体の吐出を停止させる(t=t3)。
【0049】
以下、本実施の形態の粘性流体供給装置の作用について説明する。
【0050】
図7(a)は、塗布動作および基板の搬入・搬出が行われない時などにおいて、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放されずに供給され続けられていた時の時間の経過、あるいは、開放された状態で放置されていた時の時間の経過と、それらの状況下におけるピストン334とカートリッジ330との隙間に存在する粘性流体(図3におけるA部の粘性流体)の粘度の変化との関係を示している。図7(b)は、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放された後、圧縮空気が断続的に供給された時の時間の経過と、ピストン334とカートリッジ330との隙間に存在する粘性流体(図3におけるA部の粘性流体)の粘度の変化との関係を示す図である。
【0051】
また、図8は、塗布動作を再開させてからの塗布回数と、そのときの塗布量との関係を示す図である。なお、図7(a)及び図8(a)は(1)基板に粘性流体が塗布されるステージ及びそのステージの手前にある所定の位置に、次に塗布されるべき基板が何らかのトラブルによって制御された時間内に搬入されない場合と、粘性流体の塗布が終了された基板が何らかのトラブルによって制御された時間内に搬出されない場合等において、あるいは、(2)正常時間内に基板の搬入・搬出は行われたが、基板の搬入・搬出が完了するまでに粘性流体の粘性度が上昇してしまう程度の時間を要する場合において、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放されずに供給され続けられていた、あるいは、開放された状態で放置されていた時の粘性流体の粘性度上昇経過を示す図である。また、図7(b)及び図8(b)は上記(1)及び(2)条件下において、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が一旦、開放され、その後、圧縮空気が断続的にカートリッジ330内の粘性流体に供給された場合におけるものである。また、図8において、「●」、「○」、「△」、「□」及び「◇」はそれぞれピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放されてから、再度、同様の条件の圧縮空気がその粘性流体に供給されるまでに要した時間が0、5、10、30及び60minであることを示している。
【0052】
図7(a)、図8(a)から、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体にかけられている継続的な一定の圧縮空気が開放されてから、再度、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に同様の条件の圧縮空気が供給されるまでに圧縮空気が断続的に供給されないと、粘性流体の特性上、ピストン334とカートリッジ330との隙間に存在する粘性流体の粘度が高くなり、塗布量のばらつきが大きくなっていくのがわかる。一方、図7(b)、図8(b)から、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放されてから、再度、同様の条件の圧縮空気がその粘性流体に供給されるまでに圧縮空気が断続的に供給されると、ピストン334とカートリッジ330との隙間の粘性流体の粘度がほとんど高くならず、塗布量のばらつきがほとんど無くなっているのがわかる。これは、ピストン334とカートリッジ330との隙間の粘性流体(図3におけるA部の粘性流体)の粘度上昇を防止したことに大きく起因していると考えられる。すなわち、ピストン334とカートリッジ330との隙間の粘性流体の粘度が高くなると、ピストン334が下降に際して大きな抵抗を受け、塗布ヘッドへの粘性流体の供給量が変化するからである。
【0053】
以上のように、本実施の形態の粘性流体塗布装置によれば、粘性流体供給装置102は、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放されてから、再度、同様の条件の圧縮空気がその粘性流体に供給されるまでにおける、カートリッジ330内の粘性流体の粘度上昇を単純な構造で防止する。すなわち、図9の粘性流体供給装置のように、スクリュー部及び駆動モータを設けることなく、ピストン334とカートリッジ330とを利用してカートリッジ330内の粘性流体の粘度上昇を防止するので、本実施の形態の粘性流体塗布装置は、高精度での粘性流体の塗布量制御を可能にする簡素な構造の粘性流体供給装置を実現することができる。
【0054】
以上、本発明に係る粘性流体塗布装置について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能であることはいうまでもない。
【0055】
例えば、本実施の形態の粘性流体塗布装置において、切替えバルブ331による切り替えを繰り返して、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に圧縮空気を断続的に供給し、カートリッジ330の内容積及びピストン334の形状を変化させて粘性流体の粘度上昇を防止した。しかし、基板に粘性流体が塗布されるステージ及びそのステージの手前にある所定の位置に、次に塗布されるべき基板が何らかのトラブルによって制御された時間内に搬入されない場合と、粘性流体の塗布が終了された基板が何らかのトラブルによって制御された時間内に搬出されない場合等において、あるいは、正常時間内に基板の搬入・搬出は行われたが、基板の搬入・搬出が完了するまでに粘性流体の粘性度が上昇してしまう程度の時間を要する場合において、切替えバルブ331の代わりに圧力調節部を設けて、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に圧縮空気を断続的に供給し,カートリッジ330の内容積及びピストン334の形状を変化させ、粘性流体の粘度上昇を防止しても構わない。
【0056】
また、塗布動作を終了させてから再開させるまでに10min以上の時間を要した場合、塗布動作再開後の最初の粘性流体の塗布は基板140aに対しておこなわず、最初の粘性流体の塗布を捨て打ちにしても構わない。
【0057】
また、本実施の形態では被塗布体として基板を例に挙げて説明しているが、基板以外の被塗布体に粘性流体を供給する粘性流体供給装置にも本発明は適用できる。
【0058】
また、(1)基板に粘性流体が塗布されるステージ及びそのステージの手前にある所定の位置に、次に塗布されるべき基板が何らかのトラブルによって制御された所定の時間内に搬入されない場合、粘性流体の塗布が終了された基板が何らかのトラブルによって制御された所定の時間内に搬出されない場合、あるいは、(2)正常時間内に基板の搬入・搬出は行われたが、基板の搬入・搬出が完了するまでに粘性流体の粘性度が上昇してしまう程度の所定の時間を要する場合における、所定の時間は、それぞれ塗布ヘッド100に供給される粘性流体の種類、例えば温度等の供給条件等により決定されてもよい。
【0059】
また、本実施の形態ではパルス状の力をかけ始める動作は、基板検出センサーによって検出される結果に基づいて実行されるとした。しかし、パルス状の力をかけ始める動作は、制御部160によるスクリュー部321の回転開始及び停止の制御結果に基づいて実行されてもよい。すなわち、スクリュー部321に回転開始を指示するオフ信号を送信してから、制御された時間内に回転停止を指示するオフ信号を送信しない場合に、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に継続的な一定の圧縮空気を供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、粘性流体塗布装置及びその固化防止方法に利用でき、特に粘性流体を保持し、塗布ヘッドに供給する粘性流体塗布装置の粘性流体供給装置及びその固化防止方法等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態の粘性流体塗布装置の外観図である。
【図2】同実施の形態の粘性流体塗布装置の構造を説明するための図である。
【図3】塗布ヘッド及び粘性流体供給装置の構造を説明するための図である。
【図4】同実施の形態の粘性流体塗布装置の塗布動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】カートリッジ及びピストンに加わる力の変化を示す図である。
【図6】(a)供給コックの開閉タイミングを示す図である。(b)吐出用シャフトの回転タイミングを示す図である。(c)ノズルからの粘性流体の吐出タイミングを示す図である。
【図7】(a)塗布動作および基板の搬入・搬出が行われない時等において、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放されずに供給され続けられた、あるいは、開放された状態で放置されていた時間の経過と、カートリッジ内の粘性流体の粘度との関係を示す図である。(b)塗布動作および基板の搬入・搬出が行われない時などにおいて、ピストン334を通じてカートリッジ330内の粘性流体に供給されている継続的な一定の圧縮空気が開放された後、圧縮空気が断続的に供給された時の時間の経過と、カートリッジ内の粘性流体の粘度との関係を示す図である。
【図8】(a)塗布動作を再開させてからの塗布回数と、塗布量との関係を示す図である(b)塗布動作を再開させてからの塗布回数と、塗布量との関係を示す図である。
【図9】特許文献1に記載の粘性流体供給装置の構造を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布体に、動きが与えられないと粘度上昇による固化が始まる粘性流体を塗布する塗布ヘッドに、前記粘性流体を供給する粘性流体供給装置であって、
前記粘性流体を保持する筒状のタンクと、
前記タンクに保持された前記粘性流体の液面を覆い、前記タンク内で上下動するピストンと、
前記タンク内における前記ピストンよりも上方の空間に、大気圧よりも大きい圧力を継続的に加えることにより、エアーを供給するエアー供給源と、
前記タンクに前記エアー供給源より大気圧よりも大きい圧力の圧縮空気を供給させるか、あるいはタンクを大気と連通させて大気圧と同等の圧力の空気を供給させるよう切替える切替えバルブと、
前記タンク内の粘性流体を前記塗布ヘッドに導く供給配管と、
開閉により前記タンク内の粘性流体を塗布ヘッドに導くか否かを決定し、前記粘性流体の供給をオン/オフするように、前記供給配管に接続された供給コックと、
前記供給コックにより前記塗布ヘッドへの前記粘性流体の供給が停止され前記塗布ヘッドが基板への塗布動作を終了させた後、前記エアー供給源に接続され大気圧よりも大きい圧力を前記粘性流体に継続的に加える供給状態から、前記切替えバルブによる切替えを所定の時間間隔繰り返す事により、所定の時間間隔で圧力が変化するようパルス状に供給圧力の上昇、下降を繰返し、ピストンの上下動により前記粘性流体の固化を防止する固化防止状態に切替えるように制御する制御手段とを備える
ことを特徴とする粘性流体供給装置。
【請求項2】
前記タンクは、内容積が圧縮空気により内周面に加えられる力に応じて変化する構成であり、
前記制御手段は、前記固化防止状態において、前記タンク内の圧力を変化させることで内容積を変化させ、前記タンク内の粘性流体に常時動きを与える
ことを特徴とする請求項1に記載の粘性流体供給装置。
【請求項3】
被塗布体に、動きが与えられないと粘度上昇による固化が始まる粘性流体を塗布する塗布ヘッドに、前記粘性流体を供給する粘性流体供給装置における粘性流体の固化防止方法であって、
前記粘性流体供給装置は、
粘性流体を保持する筒状のタンクと、
前記タンクに保持された前記粘性流体の液面を覆い、前記タンク内で上下動するピストンと、
前記タンク内における前記ピストンよりも上方の空間に、大気圧よりも大きい圧力を継続的に加えることにより、エアーを供給するエアー供給源と、
前記タンクに前記エアー供給源より大気圧よりも大きい圧力の圧縮空気を供給させるか、あるいはタンクを大気と連通させて大気圧と同等の圧力の空気を供給させるよう切替える切替えバルブと、
前記タンク内の粘性流体を前記塗布ヘッドに導く供給配管と、
開閉により前記タンク内の粘性流体を塗布ヘッドに導くか否かを決定し、前記粘性流体の供給をオン/オフするように、前記供給配管に接続された供給コックとを備え、
前記粘性流体の固化防止方法は、
前記供給コックにより前記塗布ヘッドへの前記粘性流体の供給が停止され前記塗布ヘッドが基板への塗布動作を終了させた後、前記エアー供給源に接続され大気圧よりも大きい圧力を前記粘性流体に継続的に加える供給状態から、前記切替えバルブによる切替えを所定の時間間隔繰り返す事により、所定の時間間隔で圧力が変化するようパルス状に供給圧力の上昇、下降を繰返し、ピストンの上下動により前記粘性流体の固化を防止する固化防止状態に切替える
ことを特徴とする粘性流体の固化防止方法。
【請求項4】
被塗布体に、動きが与えられないと粘度上昇による固化が始まる粘性流体を塗布する塗布ヘッドに、前記粘性流体を供給する粘性流体供給装置を動作させるためのプログラムであって、
前記粘性流体供給装置は、
粘性流体を保持する筒状のタンクと、
前記タンクに保持された前記粘性流体の液面を覆い、前記タンク内で上下動するピストンと、
前記タンク内における前記ピストンよりも上方の空間に、大気圧よりも大きい圧力を継続的に加えることにより、エアーを供給するエアー供給源と、
前記タンクに前記エアー供給源より大気圧よりも大きい圧力の圧縮空気を供給させるか、あるいはタンクを大気と連通させて大気圧と同等の圧力の空気を供給させるよう切替える切替えバルブと、
前記タンク内の粘性流体を前記塗布ヘッドに導く供給配管と、
開閉により前記タンク内の粘性流体を塗布ヘッドに導くか否かを決定し、前記粘性流体の供給をオン/オフするように、前記供給配管に接続された供給コックとを備え、
前記プログラムは、
前記供給コックにより前記塗布ヘッドへの前記粘性流体の供給が停止され前記塗布ヘッドが基板への塗布動作を終了させた後、前記エアー供給源に接続され大気圧よりも大きい圧力を前記粘性流体に継続的に加える供給状態から、前記切替えバルブによる切替えを所定の時間間隔繰り返す事により、所定の時間間隔で圧力が変化するようパルス状に供給圧力の上昇、下降を繰返し、ピストンの上下動により前記粘性流体の固化を防止する固化防止状態に切替えるステップを
コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148763(P2009−148763A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80161(P2009−80161)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【分割の表示】特願2004−203036(P2004−203036)の分割
【原出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】