説明

粘着シート及び積層体の製造方法

【課題】未硬化状態でのハンドリング性に優れており、更に光の照射後に暗反応でも硬化が進行し、かつ硬化後に熱伝導率が高い硬化物を与える粘着シート、並びに該粘着シートを用いた積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る粘着シートは、重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラーとを含有する。本発明に係る積層体の製造方法は、上記粘着シートを介して、発熱部品搭載基板3と金属筐体又は放熱部品4とを積層する工程と、上記積層の前又は後に上記粘着シートに光を照射し、該粘着シートを硬化させ、粘着シートの硬化物2により、発熱部品搭載基板3と金属筐体又は放熱部品4とを接着する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により硬化する粘着シートに関し、より詳細には、光の照射後に暗反応でも硬化が進行する粘着シート、並びに該粘着シートを用いた積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の照射によりカチオン重合し、硬化する光カチオン重合性組成物が、種々提案されている。例えば、下記の特許文献1には、光の照射により活性化される光カチオン重合開始剤と、活性化された光カチオン重合開始剤によりカチオン重合が誘発されるカチオン重合性基を有するカチオン重合性化合物と、高分子とを含む光カチオン重合性組成物が開示されている。
【0003】
特許文献1の光カチオン重合性組成物は、光が照射される前には粘着力を有する。さらに、光が照射された後しばらくの間は該粘着力が持続する。この粘着力が持続する間に、すなわち、可使時間に、接合作業を行うことができる。上記光カチオン重合性組成物の硬化が完了した後の硬化物では、高い接着強度を発現する。
【0004】
また、下記の特許文献2には、光カチオン重合性化合物としてのエポキシ化合物と、光カチオン重合開始剤と、金属水酸化物又は金属酸化物とを含む光カチオン重合性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−144094号公報
【特許文献2】特開2006−199778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電気機器の小型化及び高性能化が進行している。これに伴って、電子部品の実装密度が高くなってきており、電子部品から発生する熱を放散させる必要が高まっている。熱を放散させる方法として、高い放熱性を有し、かつ熱伝導率10W/m・K以上のアルミニウム等の熱伝導体を、発熱源に接着する方法が挙げられる。
【0007】
上記熱伝導体を発熱源に接着するために、特許文献1,2に記載の光カチオン重合性組成物を用いた場合には、該光カチオン重合性組成物を重合させた硬化物の熱伝導率が低く、十分な放熱性が得られないことがある。
【0008】
さらに、特許文献1,2に記載の光カチオン重合性組成物は、未硬化状態ではそれ自体が自立性を有するシートではない。このため、光カチオン重合性組成物のハンドリング性が低い。
【0009】
本発明の目的は、未硬化状態でのハンドリング性に優れており、更に光の照射後に暗反応でも硬化が進行し、かつ硬化後に熱伝導率が高い硬化物を与える粘着シート、並びに該粘着シートを用いた積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラーとを含有する、粘着シートが提供される。
【0011】
上記光カチオン重合性化合物は、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂の内の少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る粘着シートのある特定の局面では、ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の内の少なくとも1種がさらに含有される。
【0013】
上記光カチオン重合開始剤は、下記式(1)で表されるボロン化合物イオンを対イオンとする塩であることが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
上記光カチオン重合開始剤は、水酸基を有し、かつ光の照射により酸を発生する化合物と、水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物との反応物であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る粘着シートの他の特定の局面では、上記フィラーの最大粒子径は35μm以下であり、上記フィラーの最大粒子径は粘着シートの厚みの1/2以下である。
【0017】
本発明に係る粘着シートのさらに他の特定の局面では、上記フィラーの熱伝導率(W/m・K)を上記フィラーの屈折率で除算した値(上記フィラーの熱伝導率/上記フィラーの屈折率)は5以上である。
【0018】
本発明に係る粘着シートのさらに他の特定の局面では、粘着シートを硬化させたときの上記フィラーを除く硬化物部分の屈折率と、上記フィラーの屈折率との差の絶対値が0.3以下である。
【0019】
本発明に係る粘着シートの別の特定の局面では、上記フィラーが酸と反応するアルカリ性フィラーであるか、又は酸を吸着するイオン交換樹脂がさらに含有される。
【0020】
上記アルカリ性フィラーは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩であることが好ましい。さらに、上記アルカリ性フィラーは、炭酸マグネシウムであることが好ましい。
【0021】
本発明に係る積層体の製造方法は、本発明に従って構成された粘着シートを介して、発熱部品搭載基板と金属筐体又は放熱部品とを積層する工程と、上記積層の前又は後に上記粘着シートに光を照射し、該粘着シートを硬化させ、粘着シートの硬化物により、上記発熱部品搭載基板と上記金属筐体又は上記放熱部品とを接着する工程とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粘着シートは、重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラーとを含有するので、未硬化状態でのハンドリング性に優れている。さらに、本発明に係る粘着シートは、光の照射後に暗反応でも硬化が進行し、かつ硬化後に熱伝導率が高い硬化物を与える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートを用いた積層体の一例を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0025】
本発明に係る粘着シートは、重量平均分子量が1万以上であるポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(D)とを含有する。この粘着シートは、光の照射後に暗反応でも硬化が進行する。粘着シートは、硬化前には粘着性を有し、硬化後には接着性が発現する粘接着シートである。
【0026】
(ポリマー(A))
本発明に係る粘着シートに含まれているポリマー(A)は、重量平均分子量が1万以上であれば特に限定されない。ポリマー(A)は、芳香族骨格を有することが好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高めることができる。ポリマー(A)が芳香族骨格を有する場合には、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。ポリマー(A)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の耐熱性をさらに一層高めることができる。ポリマー(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
ポリマー(A)として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等を用いることができる。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、特に限定されない。上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、ベンゾオキサジン、及びポリベンゾオキサゾールとベンゾオキサジンとの反応物などのスーパーエンプラと呼ばれている耐熱性樹脂群等を使用できる。
【0028】
ポリマー(A)は、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体又はフェノキシ樹脂であることが好ましい。このようなポリマーは、光カチオン重合性化合物(B)との相溶性が良いために、未硬化状態でのハンドリング性により一層優れた粘着シートを得ることを可能にする。
【0029】
上記スチレン系重合体として、スチレン系モノマーの単独重合体、又はスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等を用いることができる。中でも、スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン系重合体が好ましい。
【0030】
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0031】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0032】
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0033】
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有することが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、粘着シートの硬化物の耐熱性をさらに一層高めることができる。
【0034】
ポリマー(A)の重量平均分子量は1万以上である。ポリマー(A)の重量平均分子量の好ましい下限は3万、より好ましい下限は4万、好ましい上限は100万、より好ましい上限は25万ある。ポリマー(A)の重量平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、粘着シートが熱劣化し難くなる。ポリマー(A)の重量平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態の粘着シートのハンドリング性、並びに粘着シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0035】
ポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)とを含む粘着シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中、ポリマー(A)の含有量は20〜80重量%の範囲内であることが好ましい。ポリマー(A)は上記範囲内で、ポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)との合計の含有量が100重量%未満であるように含まれていることが好ましい。上記全樹脂成分の合計100重量%中のポリマー(A)の含有量のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は60重量%である。ポリマー(A)の含有量が上記好ましい下限を満たすと、未硬化状態の粘着シートのハンドリング性をより一層高めることができる。ポリマー(A)の含有量が上記好ましい上限を満たすと、フィラー(D)の分散が容易になる。なお、全樹脂成分とは、ポリマー(A)、光カチオン重合性化合物(B)、光カチオン重合開始剤(C)及び必要に応じて添加される他の樹脂成分の総和をいう。
【0036】
(光カチオン重合性化合物(B))
本発明に係る粘着シートに含まれている光カチオン重合性化合物(B)としては、分子内に少なくとも1つの光カチオン重合性の官能基を有する化合物であれば特に限定されない。上記光カチオン重合性の官能基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ビニルエーテル基、チイラン基及びエチレンイミン基等の官能基等が挙げられる。
【0037】
硬化物の耐熱性及び接着性をより一層高くする観点からは、上記光カチオン重合性化合物は、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂の内の少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
上記エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、ピレン骨格を有するエポキシモノマー、及び脂環エポキシ化合物等が挙げられる。これらの水素添加物及び変性物を用いてもよい。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型及びビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、並びにこれらの水素添加物及び変性物等が挙げられる。
【0040】
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
【0041】
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0042】
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
【0043】
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0044】
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
【0045】
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
【0046】
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
【0047】
上記脂環エポキシ化合物の具体例としては例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、及びリモネンジエポキシド等が挙げられる。
【0048】
上記オキセタン樹脂の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。上記オキセタン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
光カチオン重合性化合物(B)の重量平均分子量は、1万未満であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、600以下であることが更に好ましい。光カチオン重合性化合物(B)の重量平均分子量の好ましい下限は200、更に好ましい上限は550である。光カチオン重合性化合物(B)の重量平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、光カチオン重合性化合物(B)の揮発性及び粘着シートのタック性が高くなりすぎず、粘着シートの取扱い性をより一層高めることができる。光カチオン重合性化合物(B)の重量平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、粘着シートが固くかつ脆くなり難く、更に粘着シートの硬化物の接着性をより一層高めることができる。
【0050】
ポリマー(A)と、光カチオン重合性化合物(B)と、光カチオン重合開始剤(C)とを含む粘着シートに含まれている全樹脂成分の合計100重量%中、光カチオン重合性化合物(B)の含有量は10〜60重量%の範囲内であることが好ましい。上記全樹脂成分の合計100重量%中の光カチオン重合性化合物(B)の含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は40重量%である。光カチオン重合性化合物(B)は上記範囲内でポリマー(A)と光カチオン重合性化合物(B)との合計の含有量が100重量%未満であるように含まれていることが好ましい。光カチオン重合性化合物(B)の含有量が上記好ましい下限を満たすと、粘着シートの硬化物の接着性及び耐熱性をより一層高めることができる。光カチオン重合性化合物(B)の含有量が上記好ましい上限を満たすと、粘着シートの柔軟性をより一層高めることができる。
【0051】
(光カチオン重合開始剤(C))
光カチオン重合開始剤(C)は、光の照射により活性化され、光カチオン重合性化合物(B)のカチオン重合を誘発させるものであれば特に限定されない。光カチオン重合開始剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
光カチオン重合開始剤(C)の種類としては、イオン性光酸発生タイプであってもよく、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
【0053】
上記イオン性光酸発生タイプの光カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩及び有機金属錯体等が挙げられる。上記オニウム塩としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。上記有機金属錯体としては、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体及びアリールシラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0054】
光カチオン重合開始剤(C)は、下記式(1)で表されるボロン化合物イオンを対イオンとする塩であることが好ましい。このカチオン重合開始剤の使用により、接着対象物が金属である場合に、金属と粘着シートの硬化物との界面で酸化が生じ難くなる。このため、金属と粘着シートの硬化物との接着耐久性をより一層高めることができる。
【0055】
【化2】

【0056】
光カチオン重合開始剤(C)としては、下記式(21)で表される化合物(ローヌプラン社製「PI−2074」)、下記式(22)で表される化合物(東洋インキ社製「TAG−371R」)、下記式(23)で表される化合物(東洋インキ社製「TAG−372R」)等が挙げられる。
【0057】
【化3】

【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
ヨウ素を含む光カチオン重合開始剤は、長波長の光を吸収する。このため、重合開始波長を長波長側にすることができる。
【0061】
重合開始波長を長波長側にすることができ、かつ硬化物の着色をより一層抑制する観点からは、下記式(24)〜(26)の内のいずれかで表される光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。
【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
上記非イオン性光酸発生タイプの光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン及びN−ヒドロキシイミドスホナート等が挙げられる。
【0066】
光カチオン重合開始剤(C)として、高分子量化又は多量化した光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。光カチオン重合開始剤(C)が酸を発生して、カチオン重合を開始させた後には、残存物がアウトガスとなり、絶縁層又は接着対象物を劣化させることがある。高分子量化又は多量化した光カチオン重合開始剤を用いれば、アウトガスの発生を抑制できる。
【0067】
高分子量化又は多量化された光カチオン重合開始剤は特に限定されない。高分子量化又は多量化された光カチオン重合開始剤は、水酸基を有し、かつ光の照射により酸を発生する化合物と、水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物との反応物であることが好ましい。さらに、高分子量化又は多量化された光カチオン重合開始剤は、水酸基を2つ以上有し、かつ光の照射により酸を発生する化合物と、無水カルボン酸又はジカルボン酸との反応物であることも好ましい。これらの好ましい光カチオン重合開始剤の使用により、硬化物におけるアウトガス発生をより一層抑えることができる。
【0068】
上記水酸基を有し、かつ光の照射により酸を発生する化合物の市販品としては、例えば、スルホニウム塩骨格を有する三新化学社製「SI−80L」、ADEKA社製「SP−170」、及びヨードニウム塩骨格を有するサートマー社製「CD−1012」等が挙げられる。
【0069】
上記水酸基と反応する官能基としては、カルボキシル基及びイソシアネート基等が挙げられ、上記水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物は、無水カルボン酸又はジカルボン酸であることが好ましい。上記無水カルボン酸としては、例えば、無水フタル酸及び無水マレイン酸等が挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸などの脂肪酸、並びにフタル酸、テレフタル酸及びイソフタル酸などの芳香族酸等が挙げられる。
【0070】
光カチオン重合性化合物(B)100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(C)の含有量は0.1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。光カチオン重合性化合物(B)100重量部に対して、光カチオン重合開始剤(C)の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。光カチオン重合開始剤(C)の含有量が上記好ましい下限を満たすと、光カチオン重合を充分に進行させることができ、反応速度が遅くなり難い。光カチオン重合開始剤(C)の含有量が上記好ましい上限を満たすと、反応が速くなりすぎずに作業性を高めることができ、更に反応を均一に進行させることができる。
【0071】
(フィラー(D))
本発明に係る粘着シートに、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(D)が含まれていることにより、粘着シートの硬化物の熱伝導率を高めることができる。この結果、硬化物の放熱性が高くなる。フィラー(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
フィラー(D)は、熱伝導率が10W/m・K以上であれば特に限定されない。粘着シートの硬化物の熱伝導率をより一層高める観点からは、フィラー(D)の熱伝導率の好ましい下限は15W/m・K、より好ましい下限は20W/m・K以上である。フィラー(D)の熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率300W/m・K程度のフィラーは広く知られており、また熱伝導率200W/m・K程度のフィラーは容易に入手できる。
【0073】
フィラー(D)の新モース硬度は3.1以上であることが好ましい。新モース硬度が3.1以上のフィラーが用いられた場合には、粘着シートの硬化物の加工性が低下しやすい。しかし、フィラー(D)とともに、後述のフィラー(E)を用いることにより、粘着シートの硬化物の高い熱伝導性と高い加工性とを両立できる。フィラー(D)の新モース硬度のより好ましい下限は4、好ましい上限は14である。フィラー(D)の新モース硬度が上記好ましい上限を満たすと、粘着シートの硬化物の高い熱伝導性と高い加工性とをより一層高いレベルで両立できる。
【0074】
フィラー(D)は、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましいフィラー(D)の使用により、粘着シートの硬化物の放熱性をより一層高めることができる。
【0075】
新モース硬度が3.1以上であるので、フィラー(D)は、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0076】
フィラー(D)は、球状アルミナ、破砕アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト及び球状窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、球状アルミナ又は球状窒化アルミニウムであることがさらに好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の放熱性をさらに一層高めることができる。
【0077】
フィラー(D)は球状のフィラーであってもよく、破砕されたフィラーであってもよい。
【0078】
フィラー(D)が球状のフィラーである場合には、球状のフィラーの平均粒子径は、0.1〜40μmの範囲内にあることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、球状のフィラーを高密度で充填できる。平均粒子径が40μm以下であると、粘着シートの硬化物の絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0079】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0080】
上記破砕されたフィラーとしては、破砕アルミナ等が挙げられる。破砕されたフィラーは、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー又はボールミル等を用いて、塊状の無機物質を破砕することにより得られる。破砕されたフィラーの使用により、粘着シート中のフィラーが、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。従って粘着シートの硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。さらに、破砕されたフィラーの使用により、粘着シートのコストを低減できる。
【0081】
破砕されたフィラーの平均粒子径は、12μm以下であることが好ましい。平均粒子径が12μm以下であると、破砕されたフィラーを高密度に分散させることができ、粘着シートの硬化物の絶縁破壊特性をより一層高めることができる。破砕されたフィラーの平均粒子径のより好ましい上限は10μm、好ましい下限は1μmである。破砕されたフィラーの平均粒子径が上記好ましい下限を満たすと、破砕されたフィラーをより一層高密度に充填させることができる。
【0082】
破砕されたフィラーのアスペクト比は、特に限定されない。破砕されたフィラーのアスペクト比は、1.5〜20の範囲内であることが好ましい。アスペクト比が1.5未満のフィラーは、比較的高価である。上記アスペクト比が20以下であると、破砕されたフィラーの充填が容易である。
【0083】
破砕されたフィラーのアスペクト比は、例えば、デジタル画像解析方式粒度分布測定装置(商品名:FPA、日本ルフト社製)を用いて、フィラーの破砕面を測定することにより求めることができる。
【0084】
硬化物の耐電圧性(絶縁破壊特性)及び耐熱性をより一層高める観点からは、フィラー(D)の最大粒子径は35μm以下であることが好ましい。硬化物の耐電圧性をより一層高める観点からは、フィラー(D)の最大粒子径は、粘着シートの厚みの1/2以下であることが好ましい。このような関係を満たすように、篩などにより大粒径のフィラーを除去してもよい。
【0085】
硬化物の熱伝導率と加工性とをより一層高める観点からは、フィラー(D)の熱伝導率(W/m・K)をフィラー(D)の屈折率で除算した値(フィラー(D)の熱伝導率/フィラー(D)の屈折率)は5以上であることが好ましい。
【0086】
硬化物の耐熱性及び耐電圧性をより一層高める観点からは、粘着シートを硬化させたときのフィラー(D)を除く硬化物部分の屈折率と、フィラー(D)の屈折率との差の絶対値は0.3以下であることが好ましい。
【0087】
粘着シートが光カチオン重合する際に、酸が発生して、電極の腐食が生じることがある。このような電極の腐食を抑制し、粘着シートを用いた積層体の耐久性をより一層高める観点からは、フィラー(D)は酸と反応するアルカリ性フィラーであるか、又は粘着シートは酸を吸着するイオン交換樹脂を含有することが好ましい。イオン交換樹脂の詳細は後述する。
【0088】
上記酸と反応するアルカリ性フィラーとしては、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ酸と中和する物質であれば特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩等が挙げられる。
【0089】
硬化物の熱伝導率及び加工性をより一層高める観点からは、上記アルカリ性フィラーは、炭酸マグネシウムであることが好ましい。
【0090】
粘着シート100体積%中に、フィラー(D)は20〜90体積%の範囲内で含まれていることが好ましい。フィラー(D)の含有量が上記範囲内にあることにより、粘着シートの硬化物の熱伝導率を高くすることができる。粘着シート100体積%中のフィラー(D)の含有量のより好ましい下限は30体積%、さらに好ましい下限は35体積%、より好ましい上限は85体積%、さらに好ましい上限は80体積%である。フィラー(D)の含有量が上記好ましい下限を満たすと、粘着シートの硬化物の放熱性を充分に高めることができる。フィラー(D)の含有量が上記好ましい上限を満たすと、粘着シートの硬化物の接着性をより一層高めることができ、更にフィラー(D)の新モース硬度が高い場合にはドリル又は打ち抜きプレスによる粘着シートの硬化物の加工性をより一層高めることができる。
【0091】
(フィラー(D)とは異なるフィラー(E))
本発明に係る粘着シートは、フィラー(D)とは異なるフィラー(E)(第2のフィラー(E))を含有していてもよい。フィラー(E)は、有機フィラー(E1)及び新モース硬度が3以下である無機フィラー(E2)(第2の無機フィラー(E2))の内の少なくとも1種であることが好ましい。有機フィラー(E1)と無機フィラー(E2)とは、一方のみが用いられてもよく、双方が用いられてもよい。
【0092】
有機フィラー(E1)は柔軟性が比較的高い。従って、有機フィラー(E1)の使用により、粘着シートの硬化物の加工性が低下することなく、積層プレス時に未硬化状態の粘着シートが過度に流動するのを抑制できる。
【0093】
有機フィラー(E1)は、有機樹脂フィラーであることが好ましく、モノマーにより形成された繰返し構造を含む不溶性粒子であることがより好ましい。上記モノマーは、アクリル系モノマー又はスチレン系モノマーであることが好ましい。
【0094】
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0095】
上記スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0096】
有機フィラー(E1)は、コアシェル構造を有することが好ましい。コアシェル構造を有する有機フィラーの使用により、粘着シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。コアシェル構造を有する有機フィラーは、コア層と、該コア層を被覆しているシェル層とを有する。上記コア層及び該コア層を被覆しているシェル層はアクリル系化合物であることが好ましい。
【0097】
有機フィラー(E1)は、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物と、有機物とを含む複合フィラーであることが好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0098】
上記コア層が、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むことが好ましい。上記シェル層が、有機物を含むことが好ましい。有機フィラー(E1)は、上記ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むコア層と、上記有機物を含むシェル層とを有する複合フィラーであることが好ましい。
【0099】
上記ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物は、シロキサン系ポリマーであることが好ましい。上記有機物は、アクリル系化合物であることが好ましい。
【0100】
有機フィラー(E1)の平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は40μm、より好ましい上限は20μmである。有機フィラー(E1)の平均粒子径が上記好ましい下限を満たすと、有機フィラー(E1)をより一層高密度で充填できる。有機フィラー(E1)の平均粒子径が上記好ましい上限を満たすと、粘着シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0101】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0102】
粘着シートの硬化物の加工性が低下することなく、積層プレス時に未硬化状態の粘着シートの硬化物の過度の流動を抑制でき、更に粘着シートの硬化物の放熱性及び耐熱性をより一層高くする観点からは、フィラー(E)として、無機フィラー(E2)が好適に用いられる。
【0103】
無機フィラー(E2)は、珪藻土、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー及びマイカからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、タルクであることがより好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の加工性をより一層高めることができる。
【0104】
フィラー(E)を用いる場合には、粘着シート100体積%中、フィラー(D)の含有量の好ましい下限は20体積%、より好ましい下限は30体積%、好ましい上限は60体積%、より好ましい上限は55体積%である。フィラー(D)の含有量が上記好ましい下限を満たすと、粘着シートの硬化物の放熱性を充分に高めることができる。フィラー(D)の含有量が上記好ましい上限を満たすと、粘着シートの硬化物の加工性をより一層高めることができる。例えば、粘着シートの硬化物の加工の際に、金型が摩耗し難くなる。
【0105】
フィラー(E)を用いる場合には、粘着シート100体積%中、フィラー(E)の含有量は1〜40体積%の範囲内であることが好ましい。フィラー(E)が有機フィラー(E1)を含む場合には、粘着シート100体積%中、有機フィラー(E1)の含有量は3〜40体積%の範囲内であることが好ましい。フィラー(E)は上記範囲内で、フィラー(D)とフィラー(E)との合計の含有量が100体積%未満であるように含まれる。粘着シート100体積%中のフィラー(E)の含有量の好ましい下限は3体積%、より好ましい下限は5体積%、さらに好ましい下限は10体積%、好ましい上限は30体積%、より好ましい上限は20体積%である。フィラー(E)の含有量が上記好ましい下限を満たすと、積層プレス時に粘着シートの流動を充分に抑制できる。フィラー(E)の含有量が上記好ましい上限を満たすと、フィラー(D)とフィラー(E)との合計の添加量が多くなりすぎず、粘着シートの硬化物の絶縁破壊特性をより一層高めることができる。さらに、未硬化状態の粘着シートのハンドリング性及び粘着シートの硬化物の接着性をより一層高めることができる。
【0106】
本発明に係る粘着シートでは、フィラー(E)は第2の無機フィラー(E2)であり、フィラー(D)及び第2の無機フィラー(E2)が、下記式(X)を満たすことが好ましい。この場合には、硬化物の加工性をより一層高くすることができる。
【0107】
[{(フィラー(D)の新モース硬度)×(粘着シート100体積%中のフィラー(D)の含有量(体積%))}+{(第2の無機フィラー(E2)の新モース硬度)×(粘着シート100体積%中の第2の無機フィラー(E2)の含有量(体積%))}]<6 ・・・式(X)
上記式(X)中の右辺の値は6であり、上記式(X)中の右辺の値は5.5であることが好ましく、5であることがより好ましい。すなわち、上記式(X)中の「<6」は、「<5.5」であることが好ましく、「<5」であることがより好ましい。
【0108】
(他の成分)
本発明に係る粘着シートは、ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の内の少なくとも1種を含有することが好ましい。上記ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素は、光カチオン重合反応を阻害し、反応調節剤としての役割を果たす。このため、上記ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の使用により、光の照射後の使用可能時間及び硬化時間を制御できる。上記ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の使用により、接着時の作業性を大幅に高めることができる。
【0109】
上記ポリエーテル化合物としては、例えば、クラウンエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。なかでもポリアルキレンオキサイドが好適に用いられ、ポリオキシテトラメチレングリコールが特に好適に用いられる。上記ポリアルキレンオキサイドの末端は、特に限定されず、水酸基であってもよく、他の化合物によりエーテル化又はエステル化されていてもよく、エポキシ基等の官能基であってもよい。水酸基及びエポキシ基等は、上記カチオン重合性化合物と反応する。このため、上記ポリアルキレンオキサイドの末端は水酸基又はエポキシ基であることが好ましい。
【0110】
さらに、上記ポリエーテル化合物としては、ポリアルキレンオキサイド付加ビスフェノール誘導体が好適に用いられ、特に末端に水酸基又はエポキシ基を有する化合物が特に好適に用いられる。上記ポリエーテル化合物の市販品としては、例えば、リカレジンBPO−20E、リカレジンBEO−60E、リカレジンEO−20及びリカレジンPO−20(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0111】
上記水酸基を有する脂肪族炭化水素としては、例えば、グリセリン及びペンタエリスリトールなどの多官能水酸基含有化合物等が挙げられる。
【0112】
上記ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の内の少なくとも1種が含まれる場合には、上記光カチオン重合性化合物100重量部に対して、上記ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の内の少なくとも1種の含有量の好ましい下限は1重量部、より好ましい下限は5重量部、好ましい上限は30重量部、より好ましい上限は20重量部である。上記ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の内の少なくとも1種の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、粘着シートの光の照射後の使用可能時間及び硬化時間が適度になる。
【0113】
フィラー(D)は、酸と反応するアルカリ性フィラーであるか、又は粘着シートは、酸を吸着するイオン交換樹脂を含有することが好ましい。
【0114】
上記酸を吸着するイオン交換樹脂としては、陽イオン交換型、陰イオン交換型及び両イオン交換型のいずれも使用できる。特に塩化物イオンを吸着する陽イオン交換型及び両イオン交換型のイオン交換性樹脂を用いることが好ましい。
【0115】
上記酸を吸着するイオン交換樹脂が含まれる場合には、上記光カチオン重合性化合物100重量部に対して、上記酸を吸着するイオン交換樹脂の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は20重量部、より好ましい上限は10重量部である。上記酸を吸着するイオン交換樹脂の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、硬化物の耐電圧性をより一層高めることができる。
【0116】
本発明に係る粘着シートは、分散剤を含有していてもよい。分散剤の使用により、粘着シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。上記分散剤は水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することが好ましい。このような官能としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、及びフェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
【0117】
上記分散剤の上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaの好ましい下限は2、より好ましい下限は3、好ましい上限は10、より好ましい上限は9である。上記官能基のpKaが上記好ましい下限を満たすと、分散剤の酸性度が高くなりすぎず、原料樹脂成分中のエポキシ成分及びオキセタン成分の反応が促進され難い。従って、未硬化状態の粘着シートの貯蔵安定性をより一層高めることができる。上記官能基のpKaが上記好ましい上限を満たすと、分散剤としての機能が充分に果たされ、粘着シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
【0118】
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基は、カルボキシル基又はリン酸基であることが好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をさらに一層高めることができる。
【0119】
上記分散剤としては、具体的には、例えば、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、脂肪族系フェノール及びポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。上記分散剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0120】
粘着シート100重量%中、分散剤の含有量の好ましい下限は0.01重量%、より好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は20重量%、より好ましい上限は10重量%である。分散剤の含有量が上記範囲内にある場合には、フィラー(D)の凝集を抑制でき、かつ粘着シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性を充分に高めることができる。
【0121】
本発明に係る粘着シートは、室温(23℃)において未硬化状態でも自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、粘着シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。粘着シートが上記基材物質を含まない場合には、粘着シートの厚みを薄くすることができ、かつ粘着シートの硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。さらに、粘着シートが上記基材物質を含まない場合には、必要に応じて粘着シートにレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルム又は銅箔などの支持体が存在しなくても、未硬化状態であっても、シートの形状を保持し、シートとして取扱うことができることをいう。
【0122】
また、本発明の粘着シートは、必要に応じて、チキソ性付与剤、難燃剤及び着色剤等を含有していてもよい。
【0123】
(粘着シート)
本発明に係る粘着シートの製造方法は特に限定されない。粘着シートは、例えば、上述した材料を混合した混合物を溶剤キャスト法又は押し出し成膜法等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
【0124】
粘着シートの厚みは特に限定されない。粘着シートの厚みは、10〜300μmの範囲内であることが好ましい。粘着シートの厚みのより好ましい下限は20μm、さらに好ましい下限は30μm、より好ましい上限は200μm、さらに好ましい上限は120μmである。粘着シートの厚みが上記好ましい下限を満たすと、粘着シートの硬化物の絶縁性が高くなる。粘着シートの厚みが上記好ましい上限を満たすと、粘着シートの硬化物の放熱性がより一層高くなる。
【0125】
粘着シートの硬化物の熱膨張係数は、10〜40ppm/℃であることが好ましい。この場合には、粘着シートの硬化物の寸法安定性を高めることができる。
【0126】
粘着シートの硬化物の熱伝導率は、0.5W/m・K以上であることが好ましく、1.0W/m・K以上であることがより好ましく、3.0W/m・K以上であることがさらに好ましい。熱伝導率が高いほど、粘着シートの硬化物の放熱性が高くなる。
【0127】
粘着シートの硬化物の絶縁破壊電圧は、30kV/mm以上であることが好ましく、40kV/mm以上であることがより好ましく、50kV/mm以上であることがさらに好ましく、80kV/mm以上であることがさらに好ましく、100kV/mm以上であることが最も好ましい。絶縁破壊電圧が高いほど、粘着シートが例えば電力素子用のような大電流用途に用いられた場合に、絶縁性が高くなる。
【0128】
(積層体)
本発明に係る粘着シートは、発熱部品搭載基板と金属筐体又は放熱部品とを接着するのに好適に用いられる。
【0129】
図1に、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法により得られる積層体の一例を模式的に示す。
【0130】
図1に示す積層体1は、発熱部品搭載基板3と、粘着シートの硬化物2と、放熱部品4とを備える。放熱部品4にかえて、金属筐体を用いてもよい。粘着シートの硬化物2は、発熱部品搭載基板3と放熱部品4との間に配置されている。粘着シートの硬化物2により、発熱部品搭載基板3と、放熱部品4とが接着されている。
【0131】
積層体1を得る際には、粘着シートを介して、発熱部品搭載基板3と金属筐体4とを積層する。次に、粘着シートに光を照射し、粘着シートの光重合を進行させ、粘着シートを硬化させる。粘着シートに光を照射すると、光カチオン重合開始剤(C)が活性化し、光カチオン重合性化合物(B)が重合し、粘着シートが次第に硬化する。光の照射後に粘着シートは、暗反応でも硬化が進行する。
【0132】
なお、光の照射は、上記積層の前に行われてもよく、上記積層の後に行われてもよい。粘着シートが完全に硬化する前に、上記積層工程が行われればよい。完全に硬化する前の粘着シートは、例えば、粘着性を有する。粘着シートが完全に硬化することにより、高い接着強度が発現する。粘着シートの硬化によって、該粘着シートの硬化物2により、発熱部品搭載基板3と金属筐体4とを接着する。このようにして、積層体1を得ることができる。
【0133】
粘着シートを硬化させるための光としては、例えばマイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線及びγ線などが挙げられる。なかでも、紫外線が好ましく、200〜400nmの紫外線がより好ましい。
【0134】
上記紫外線を照射するための光源としては特に限定されず、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ及びキセノンランプ等が挙げられる。
【0135】
発熱部品搭載基板2としては、具体的には、FR−4、CEM3、セラミック基板、及びメタル基板等が挙げられる。
【0136】
放熱部品4としては、具体的には、ヒートシンク等が挙げられる。放熱部品4にかえて用いることができる金属筐体としては、具体的には、アルミニウム製又はステンレス製のシャーシ等が挙げられる。
【0137】
上記放熱部品は、熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体であることが好ましい。この熱伝導体としては、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム又はグラファイトシート等が挙げられる。中でも、上記熱伝導体は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。銅又はアルミニウムは、放熱性に優れている。
【0138】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0139】
以下の材料を用意した。
【0140】
[ポリマー(A)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:E1256、Mw=51,000、Tg=98℃)
(2)エポキシ基含有スチレン樹脂(日油社製、商品名:マープルーフG−1010S、Mw=100,000、Tg=93℃)
【0141】
[ポリマー(A)以外のポリマー]
(1)エポキシ基含有アクリル樹脂(日油社製、商品名:マープルーフG−0130S、Mw=9,000、Tg=69℃)
【0142】
[光カチオン重合性化合物(B)]
(1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828US、Mw=370)
(2)ナフタレン骨格液状エポキシ樹脂(DIC社製、商品名:EPICLON HP−4032D、Mw=304)
(3)ヘキサヒドロフタル酸骨格液状エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:AK−601、Mw=284)
(4)ビスフェノールA型固体エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:1003、Mw=1300)
(5)ベンゼン骨格含有オキセタン樹脂(宇部興産社製、商品名:エタナコールOXTP、Mw=362.4)
【0143】
[光カチオン重合開始剤(C)]
(1)ボロン化合物系光カチオン重合開始剤(ローヌプラン社製、商品名:「PI−2074」、式(1)で表されるボロン化合物イオンを対イオンとする塩)
(2)スルホニウム塩骨格を有する光カチオン重合開始剤(三新化学社製社製、商品名:「SI−80L」、水酸基を有し、かつ光の照射により酸を発生する化合物と、水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物との反応物)
【0144】
[フィラー(D)]
(1)2μm破砕アルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製、商品名:LS−242C、平均粒子径2μm、最大粒子径20μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12、屈折率1.75)
(2)6μm破砕窒化アルミニウム(破砕フィラー、東洋アルミニウム社製、商品名:FLC、平均粒子径6μm、最大粒子径20μm、熱伝導率200W/m・K、新モース硬度11、屈折率2.2)
(3)球状アルミナ(デンカ社製、商品名:DAM−10、平均粒子径10μm、最大粒子径30μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12、屈折率1.75)
(4)合成マグネサイト(神島化学社製、商品名:MSL、平均粒子径6μm、最大粒子径20μm、熱伝導率15W/m・K、新モース硬度3.5、屈折率1.7)
(5)結晶シリカ(龍森社製、商品名:クリスタライトCMC−12、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、熱伝導率10W/m・K、新モース硬度7、屈折率1.46)
(6)炭化ケイ素(信濃電気製錬社製、商品名:シナノランダムGP#700、平均粒子径17μm、最大粒子径30μm、熱伝導率125W/m・K、新モース硬度13、屈折率2.22)
(7)酸化亜鉛(堺化学工業社製、商品名:LPZINC−5、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、熱伝導率54W/m・K、新モース硬度5、屈折率1.9)
【0145】
[有機フィラー(E1)]
(1)0.1μm粒子(コアシェル型シリコーン−アクリル粒子、旭化成ワッカーシリコーン社製、商品名:P22、平均粒子径0.1μm、コアシェル構造を有する、ケイ素原子に酸素原子が直接結合された骨格を有する化合物を含むコア層と有機物を含む)
(2)0.5μm粒子(コアシェル型有機粒子、ガンツ化成社製、商品名:AC−3355、平均粒子径0.5μm、コアシェル構造を有する)
【0146】
[無機フィラー(E2)]
(1)マイカ(山口雲母工業所社製、商品名:SJ005、平均粒子径5μm、新モース硬度2.8)
(2)タルク(日本タルク社製、商品名:K−1、平均粒子径8μm、新モース硬度1)
(3)窒化ホウ素(昭和電工社製、商品名:UHP−1、平均粒子径8μm、新モース硬度2)
【0147】
[ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素]
(1)クラウンエーテル(18クラウン−6エーテル、東京化成工業社製)
(2)ポリエチレングリコール(水酸基を有する脂肪族炭化水素、分子量500)
【0148】
[添加剤]
(1)エポキシシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBE403)
【0149】
[溶剤]
(1)メチルエチルケトン
【0150】
(実施例1〜18及び比較例1〜2)
ホモディスパー型攪拌機を用いて、下記の表1〜2に示す割合(配合単位は重量部)で各原料を配合し、混練し、粘着シート材料を調製した。
【0151】
厚み50μmの離型PETシートに、上記粘着シート材料を厚みが100μmであるように塗工し、90℃で10分乾燥して、粘着シートを作製した。
【0152】
(評価)
(1)ハンドリング性
PETシートと、該PETシート上に形成された粘着シートとを有する積層シートを460mm×610mmの平面形状に切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを用いて、室温(23℃)でPETシートから未硬化状態の粘着シートを剥離したときのハンドリング性を下記の基準で評価した。
【0153】
[ハンドリング性の判定基準]
〇:粘着シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:粘着シートを剥離できるものの、シート伸びや破断が発生する
×:粘着シートを剥離できない
【0154】
(2)熱伝導率
粘着シートを365nmの紫外線を照射量が2400mJ/cmとなるように照射し、その後30分放置することにより、粘着シートを光カチオン重合させ、粘着シートを硬化させた。粘着シートの硬化物の熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。
【0155】
(3)放熱性
2枚の厚み1mmのアルミ板の間に、365nmの紫外線を照射量が2400mJ/cmとなるように照射した直後の粘着シートを挟み込んだ後、30分間放置し、光カチオン重合を更に進行させ、接着サンプルを形成した。得られた接着サンプルの片面を、同じサイズの60℃に制御された表面平滑な発熱体に196N/cmの圧力で押し付けた。アルミ板の表裏面の温度差を熱伝対により測定し、放熱性を下記の基準で判定した。
【0156】
[放熱性の判定基準]
○○:アルミ板の表裏面の温度差が3℃以下
○:アルミ板の表裏面の温度差が3℃を超え、6℃以下
△:アルミ板の表裏面の温度差が6℃を超え、10℃以下
×:アルミ板の表裏面の温度差が10℃を超える
【0157】
(4)絶縁破壊電圧
粘着シートを100mm×100mmの平面形状に切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルに365nmの紫外線を照射量が2400mJ/cmとなるように照射し、その後30分放置することにより光カチオン重合させ、粘着シートの硬化物を得た。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、粘着シートの硬化物間に、1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。粘着シートの硬化物が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
【0158】
(5)冷熱サイクル信頼性試験
2枚の厚み1mmのアルミ板の間に、365nmの紫外線を照射量が2400mJ/cmとなるように照射した直後の粘着シートを挟み込んだ後、30分間放置して、光カチオン重合を更に進行させ、接着サンプルを形成した。得られた接着サンプルを、−40℃で30分及び125℃で30分を1サイクルとする冷熱サイクル処理を100サイクル行い、1000サイクル後の接着サンプルについて、冷熱サイクル信頼性を以下の基準で判定した。
【0159】
[冷熱サイクル信頼性の判定基準]
〇:剥離の発生なし
△:部分的に剥離発生
×:全面剥離
【0160】
(6)加工性
2枚の厚み1mmのアルミ板の間に、365nmの紫外線を照射量が2400mJ/cmとなるように照射した直後の粘着シートを挟み込んだ後、光カチオン重合を更に進行させ、接着サンプルを形成した。得られた接着サンプルを直径2.0mmのドリル(ユニオンツール社製、RA series)を用いて、回転数30,000及びテーブル送り速度0.5m/分の条件でルーター加工した。ばりが発生するまでの加工距離を測定し、加工性を以下の基準で評価した。
【0161】
[加工性の判定基準]
○:ばりが発生することなく5m以上加工可能
△:ばりが発生することなく1m以上、5m未満加工可能
×:1m未満の加工によりばりが発生
【0162】
(7)フィラーを除く硬化物部分の屈折率
粘着シートを3mm×25mmの大きさに切り出し、365nmの紫外線を照射量が2400mJ/cmとなるように照射し、粘着シートを光カチオン重合させ、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルのフィラーを除く硬化物部分の屈折率を、アッベの屈折率計で測定することにより求めた。
【0163】
粘着シート材料の配合成分及び評価結果を下記の表1〜3に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
【表2】

【0166】
【表3】

【符号の説明】
【0167】
1…積層体
2…粘着シートの硬化物
3…発熱部品搭載基板
4…放熱部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1万以上であるポリマーと、
光カチオン重合性化合物と、
光カチオン重合開始剤と、
熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラーとを含有する、粘着シート。
【請求項2】
前記光カチオン重合性化合物が、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂の内の少なくとも1種である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
ポリエーテル化合物及び水酸基を有する脂肪族炭化水素の内の少なくとも1種をさらに含有する、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記光カチオン重合開始剤が、下記式(1)で表されるボロン化合物イオンを対イオンとする塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【化1】

【請求項5】
前記光カチオン重合開始剤が、水酸基を有し、かつ光の照射により酸を発生する化合物と、水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物との反応物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記フィラーの最大粒子径が35μm以下であり、
前記フィラーの最大粒子径が粘着シートの厚みの1/2以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記フィラーの熱伝導率(W/m・K)を前記フィラーの屈折率で除算した値(前記フィラーの熱伝導率/前記フィラーの屈折率)が5以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
粘着シートを硬化させたときの前記フィラーを除く硬化物部分の屈折率と、前記フィラーの屈折率との差の絶対値が0.3以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記フィラーが酸と反応するアルカリ性フィラーであるか、又は酸を吸着するイオン交換樹脂をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記アルカリ性フィラーが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩である、請求項9に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記アルカリ性フィラーが、炭酸マグネシウムである、請求項10に記載の粘着シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の粘着シートを介して、発熱部品搭載基板と金属筐体又は放熱部品とを積層する工程と、
前記積層の前又は後に前記粘着シートに光を照射し、該粘着シートを硬化させ、粘着シートの硬化物により、前記発熱部品搭載基板と前記金属筐体又は前記放熱部品とを接着する工程とを備える、積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195674(P2011−195674A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62797(P2010−62797)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】