説明

粘着シート

【課題】容易に剥離することができると共に、圧縮時の反発力が小さい粘着シートを提供する。
【解決手段】JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が0.2〜1.2N/2mmである弱粘着剤層(A)と、厚さが0.05〜0.5mm、発泡倍率が1.2〜16.7cm3/gである熱可塑性樹脂発泡シート層(B)と、JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が弱粘着剤層(A)の粘着力より0.1N/2mm以上大きい強粘着剤層(C)とがこの順に積層された粘着シートであって、前記熱可塑性樹脂発泡シートは、押出し成形により形成された熱可塑性樹脂シートを発泡させてなる独立気泡を有するものであり、特定の条件を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離性に優れ、IT機器用のシール材として好適に用いることができる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、パーソナルコンピューター等のIT機器、デジカメ、小型ビデオカメラ、薄型テレビ等の電気製品においては、製品内部への異物の侵入を防止するために、また、製品に加わる衝撃を吸収するために、各種部品同士の隙間を埋めるシール材が用いられている。例えば、携帯電話やデジカメ等の製品においては、画像表示パネルと前面板との間に前記シール材を設け、液晶画面にホコリや水滴が付着することを防止している。
【0003】
このようなシール材としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等からなる熱可塑性樹脂発泡体、ポリウレタン系発泡体、合成ゴム又は天然ゴムからなるゴム発泡体等の表面に、部品同士の密着性を向上させるための粘着性を付与したものが使用されている。例えば、下記特許文献1には、架橋可能な液状ゴム、架橋剤、オイル成分、及び加熱分解型発泡剤を含有する発泡組成物を成膜した後、加熱することにより架橋発泡させた発泡シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−064208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の発泡シートは、被着体との接着強度が大きすぎるため、発泡シートの貼り直しが要求される場合に剥がしにくくなっており、これを無理に剥がそうとすると、液晶パネル等の高価な画像表示パネルを破壊してしまうおそれがあり、生産効率が低下する要因となっている。
また、このようなシール材は、例えば、画像表示パネルと前面板との間で圧縮された状態で使用されることが多いため、圧縮時の反発力が大きすぎると前面板が浮き上がってしまうおそれがある。したがって、反発力が小さいシール材の開発が望まれている。
本発明は、前記問題を鑑みてなされたものであって、容易に剥離することができると共に、圧縮時の反発力が小さい粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が0.2〜1.2N/2mmである弱粘着剤層(A)と、厚さが0.05〜0.5mm、発泡倍率が1.2〜16.7cm3/gである熱可塑性樹脂発泡シート層(B)と、JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が弱粘着剤層(A)の粘着力より0.1N/2mm以上大きい強粘着剤層(C)とがこの順に積層された粘着シートであって、前記熱可塑性樹脂発泡シートは、押出し成形により形成された熱可塑性樹脂シートを発泡させてなる独立気泡を有するものであり、以下の条件(I)〜(V)を満たすことを特徴とする粘着シート。
<条件>
(I) JIS K 6767に準拠して測定した25%圧縮強度が25〜200kPa
(II) 熱可塑性樹脂シートの押し出し方向(MD)の平均気泡径が60〜350μm
(III) 熱可塑性樹脂シートの幅方向(CD)の平均気泡径が50〜300μm
(IV) 熱可塑性樹脂シートの厚さ方向(ZD)の平均気泡径が10〜70μm
(V) 粘着シートの厚さが0.15〜0.70mm
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容易に剥離することができると共に、圧縮時の反発力が小さい粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の粘着シートの断面を表す模式図である。
【図2】図2は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD方向、CD方向及びZD方向を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘着シートは、特定の粘着力を有する弱粘着剤層(A)と、特定の条件を満たす熱可塑性樹脂発泡シート層(B)と、特定の粘着力を有する強粘着剤層(C)とをこの順に有する粘着シートであって、前記熱可塑性樹脂発泡シートとして、独立気泡を有するものを用いる粘着シートであるため、剥離性が良好である。したがって、液晶パネルのような画像表示パネル等の部品に対して貼り付けを行う際に位置ズレが生じた場合であっても簡単に貼り直すことができる。また、圧縮時の反発力が小さいため、接着対象である前面板等が浮かび上がることが少ない。
以下、本発明の粘着シートについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<弱粘着剤層(A)>
本発明における弱粘着剤層(A)は、JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が0.2〜1.2N/2mmであるものを用いる。この弱粘着剤層(A)の前記粘着力が0.2N/2mm未満であると、十分な粘着力を得ることができずシール性が低下するため、この粘着シートを用いた機器の内部にホコリや水分が浸入することがある。また、前記粘着力が1.2N/2mmを超えると、貼り直しの際に被着対象から粘着シートを剥がすことが困難になるため、貼り付けの際に生じる位置ズレを修正することが難しくなる。このような観点から、前記粘着力は、0.25〜1.0N/2mmがより好ましく、0.3〜0.9N/2mmが更に好ましい。
なお、本発明における粘着力とは、JIS K 0237に準拠し、20mm幅に切断した粘着剤層と、濡れ指数が36N/m以上である100mm角四方のポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム(厚さ0.1mm)とを積層して、2kgのローラーを1往復させることにより加圧して貼り合わせ、24時間放置した後、2mm幅に切断して粘着剤層評価サンプルを作成する。その後、粘着剤層評価サンプルの粘着剤層がアクリル板側となるようにアクリル坂(厚さ10mm、10cm角)上に設置し、2kgのローラーを1往復させることにより加圧し、3分間放置し、剥離速度50mm/minで90°の方向に剥がしたときの抗張力として測定した値である。2mm幅にて測定している理由としては、携帯電話やデジカメ等の電子機器において、大画面化により粘着シートの狭幅化が望まれているからである。
【0011】
上記濡れ指数が36N/m以上である100mm角四方のポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムをコロナ放電処理をすることにより得ることができる。濡れ指数は、濡れ張力試験法(JIS K 6768)に準拠して測定することができる。
【0012】
弱粘着剤層(A)は、アクリル系重合体により構成されることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとした単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルと、これと共重合可能な他の化合物とをモノマーとした共重合体を挙げることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸又はアクリル酸のことである。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜15のアルコールとのエステルを挙げることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸(n−ブチル)等が挙げられる。前記エステル化に用いるアルコールとしては、炭素数4〜12のアルコールがより好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、及び無水マレイン酸等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
弱粘着剤層(A)に用いるアクリル系重合体の重量平均分子量は、30万〜80万が好ましく、40万〜70万がより好ましく、45万〜65万が更に好ましい。アクリル系重合体の重量平均分子量が前記範囲内であれば、耐熱性が向上すると共に剥離性を向上させることができる。
【0014】
この弱粘着剤層(A)の粘着力は、前記アクリル系重合体に粘着性微粒子を添加することにより調整することができる。この粘着性微粒子の数平均粒子径は、10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましく、25〜35μmが更に好ましい。粘着性微粒子の数平均粒子径が前記範囲内であれば、粘着剤の表面に適度な凹凸が形成され、剥離性が向上し、粘着シートの貼り直しを容易に行うことができるようになる。
【0015】
前記粘着性微粒子としては、微粒子自体が粘着性を有するものであればどのようなものを用いてもよいが、剥離性を向上させる観点からアクリル系重合体からなる粘着性微粒子が好ましい。アクリル系重合体で構成される粘着性微粒子としては、例えば、(a)一般式:CH2=CHCOOR(式中、Rは炭素数4〜10の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基を表す。)で示されるアクリル酸エステル系単量体60〜100質量%、(b)カルボキシル基を有する不飽和単量体0〜10質量%、(c)前記単量体(a)及び(b)と共重合可能なその他の不飽和単量体0〜40質量%を共重合して得られるものであって、Tgが10℃以下のアクリル系共重合体で構成される微粒子を挙げることができる。
【0016】
前記単量体(a)を構成する一般式:CH2=CHCOORで表されるアクリル酸エステルとしては、例えば、各種ブチルアルコール、各種へキシルアルコール、各種オクチルアルコール、各種ノニルアルコール、各種デシルアルコール等とアクリル酸とのエステルを挙げることができる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
より具体的には、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート等を挙げることができる。
単量体(a)を構成するアクリル酸エステルの使用量は、前記単量体(a)〜(c)の合計100質量%中、60〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0017】
単量体(b)を構成する前記カルボキシル基を含有する不飽和単量体としては、α,β−不飽和モノカルボン酸化合物、又はα,β−不飽和ジカルボン酸化合物等を挙げることができる。このような化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸等を挙げることができる。
単量体(b)の使用量は、単量体(a)〜(c)の合計100質量%中、0〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0018】
単量体(c)としては、前記単量体(a)及び(b)と共重合可能なその他の不飽和単量体であればどのようなものであってもよく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルへキシルフマレート、ジ−n−オクチルフマレート等が挙げられる。
単量体(c)の使用量は、前記(a)〜(c)の合計100質量%中、0〜40質量%が好ましく、0〜25質量%がより好ましい。
前述の単量体よりなる粘着性微粒子は、例えば、特開2000−281988号公報に記載の方法により製造することができる。
【0019】
本発明においては、前記弱粘着剤層(A)が複数の層で構成されていてもよい。弱粘着剤層(A)が複数の層で構成される場合には、以下の3層構造とすることが好ましい。すなわち、弱粘着剤層(A)の表面を構成する粘着剤層(a−1)と、基材層(a−2)と、熱可塑性樹脂発泡シート層(B)と接する粘着剤層(a−3)との3層構造とすることが好ましい。
このように弱粘着剤層(A)を複数の層で構成すると、弱粘着剤層(A)の強度が向上するため、粘着シートを剥離する際に弱粘着剤層(A)が破損するという不具合が防止される。
【0020】
弱粘着剤層(A)を3層構造とする場合の粘着剤層(a−1)の厚さは、5〜200μmが好ましく、基材層(a−2)の厚さは、5〜500μmが好ましく、粘着剤層(a−3)の厚さは、5〜200μmが好ましい。各層の厚さを前記範囲内とすることにより、弱粘着剤層(A)の強度がより一層向上する。粘着剤層(a−1)の厚さは、8〜100μmmがより好ましく、基材層(a−2)の厚さは、5〜100μmがより好ましく、粘着剤層(a−3)の厚さは、8〜100μmがより好ましい。全体の厚さは、15〜900μmであり、21〜300μmがより好ましい。
このように弱粘着剤層(A)を複数の層で構成する場合には、粘着剤層(a−1)の粘着力を0.2〜1.2N/2mm、より好ましくは0.25〜1N/2mmとし、更に好ましくは0.3〜0.9N/2mmとし、粘着剤層(a−3)の粘着力をこれよりも大きくすることにより、剥離性に優れる粘着シートを得ることが可能となる。なお、粘着剤層(a−3)は、後述する強粘着剤層(C)と同程度の粘着力とすることが好ましい。
【0021】
弱粘着剤層(A)を3層構造とする場合における基材層(a−2)に用いる材料としては、粘着シートを剥がす際に加えられる力に耐え得る材料であればどのようなものであってもよく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、アルミニウム箔等の金属箔が挙げられる。
【0022】
<熱可塑性樹脂発泡シート層(B)>
本発明において、熱可塑性樹脂発泡シート層(B)としては、押出し成形により形成された熱可塑性樹脂シートを発泡させてなる独立気泡を有し、厚さが0.05〜0.5mm、発泡倍率が1.2〜16.7cm3/gであるものであって、以下の条件(I)〜(V)を満たすものを用いる。
<条件>
(I) JIS K 6767に準拠して測定した25%圧縮強度が25〜200kPa
(II) 熱可塑性樹脂シートの押し出し方向(MD)の平均気泡径が60〜350μm
(III) 熱可塑性樹脂シートの幅方向(CD)の平均気泡径が50〜300μm
(IV) 熱可塑性樹脂シートの厚さ方向(ZD)の平均気泡径が10〜70μm
(V) 粘着シートの厚さが0.15〜0.70mm
【0023】
前記熱可塑性樹脂発泡シート層の厚さが0.05mm未満であると不陸性が低下するため、十分なシール性を得ることができない。また、熱可塑性樹脂発泡シート層の厚さが0.5mmを超えると、小型、薄型化が望まれている製品の隙間に収めることが困難になる。
【0024】
発泡倍率が1.2cm3/g未満であると圧縮した時の反発力が大きくなるため、部品同士の隙間に収まりにくくなる。一方、16.7cm3/gを超えると、圧縮した時の反発力が小さくなるためシール性が低下する。このような観点から、発泡倍率としては、1.4〜12cm3/gがより好ましく、1.6〜6cm3/gが更に好ましい。
【0025】
また、JIS K 6767に準拠して測定した25%圧縮強度が25kPa未満、又は200kPaを超えると、いずれもシール性が低下すると共に、粘着シートを画像表示パネルと前面板との間に用いた場合に、前面板の浮き上がり量が大きくなる。このような観点から、前記25%圧縮強度としては、10〜180kPaがより好ましく、30〜100kPaが更に好ましい。
【0026】
前記熱可塑性樹脂シートの押し出し方向(MD)の平均気泡径、熱可塑性樹脂シートの幅方向(CD)の平均気泡径、及び熱可塑性樹脂シートの厚さ方向(ZD)の平均気泡径が前記規定を満たさないと、微細な凹凸形状に対する粘着シートの追従性が低下するため、粘着シートをIT機器に使用することが難しくなる。このような観点から、MD方向の平均気泡径は、65〜250μmがより好ましく、70〜180μmが更に好ましく、CD方向の平均気泡径は、50〜250μmがより好ましく、50〜200μmが更に好ましい。また、ZD方向の平均気泡径は12〜60μmがより好ましく、12〜40μmが更に好ましい。
なお、本明細書におけるMD方向とは、図2に示すように、熱可塑性樹脂発泡シート3の押出方向をいい、CD方向とは、MD方向に直交し且つ熱可塑性樹脂発泡シート3の表面に沿った方向(幅方向)をいい、ZD方向とは、熱可塑性樹脂発泡シート3の表面に対して直交する方向をいう。
【0027】
気泡のアスペクト比(CD方向の平均気泡径/ZD方向の平均気泡径)は、2〜18が好ましく、4〜15がより好ましい。前記気泡のアスペクト比が前記範囲内であれば、圧縮強度(圧縮時の反発力)が小さくなるため、シール性が向上する。また、前面板と画像表示パネルとの間に配置して圧縮して使用した場合に、前面板の浮き上がりを抑制することができる。
このように平均気泡径、アスペクト比を調節し、気泡形状を偏平形状にすることにより圧縮強度を低下させることが可能であり、被着体に対する不陸性が高くなり、シール性が向上する。
【0028】
粘着シートの総厚さが0.15mm未満であると、部品同士の隙間公差に対応することができず、シール性を確保できないおそれがある。前記総厚さが0.70mmを超えると部品同士の間隙に粘着シートを配置しにくくなる。
【0029】
また、本発明においては、前記熱可塑性樹脂発泡シートは、独立気泡を有することが重要である。独立気泡を有することにより、ホコリや水分の浸入防止効果がより高いものになる。
なお、本明細書において「独立気泡を有する熱可塑性樹脂発泡シート」とは、「独立気泡率が70%以上である熱可塑性樹脂発泡シート」を指す。
前記独立気泡率は、ASTM D 2856−94に基づき、空気比較式比重計(BECKMAN)を用いて測定することができる。
【0030】
以下に、本発明において用いる熱可塑性樹脂発泡シートについて、さらに詳しく説明する。
<熱可塑性樹脂発泡シート>
本発明において用いる熱可塑性樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡成形させたものが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂組成物を構成するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0031】
(ポリエチレン系樹脂)
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを50質量%以上含有するエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレンを50質量%以上含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。
また、ポリエチレン系樹脂としては、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂を挙げることもできる。なお、本明細書においては、「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂」を「メタロセン重合ポリエチレン系樹脂」と称す場合がある。前記重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂としては、公知のものを使用する事ができる。
【0032】
(ポリプロピレン系樹脂)
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂として、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリプロピレン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂を挙げることもできる。なお、本明細書においては、「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリプロピレン系樹脂」を「メタロセン重合ポリプロピレン系樹脂」と称す場合がある。前記重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリプロピレン系樹脂としては、公知のものを使用する事ができる。
【0033】
≪熱可塑性樹脂シート≫
本発明における熱可塑性樹脂シートは、前記の通り、ポリオレフィン系樹脂を押出し成型することにより得られるシートが好ましい。
熱可塑性樹脂シート中のメタロセン重合ポリエチレン系樹脂、又はメタロセン重合ポリプロピレン系樹脂を含む場合はそれぞれの含有量は、ポリオレフィン系樹脂の合計を100質量%とした場合、40質量%以上が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、60〜100質量%が更に好ましい。メタロセン重合ポリエチレン系樹脂、及びメタロセン重合ポリプロピレン系樹脂の含有量が前記範囲内であれば、前記気泡のアスペクト比を所定範囲内とすることが容易に可能とすることができると共に、熱可塑性樹脂発泡シートの機械的強度及び柔軟性を向上させることができる。
なお、メタロセン重合ポリエチレン系樹脂及びメタロセン重合ポリプロピレン系樹脂の含有量が100質量%とは、ポリオレフィン系樹脂として、メタロセン重合ポリエチレン系樹脂及びメタロセン重合ポリプロピレン系樹脂のみを用いた場合を意味する。
【0034】
(MD方向の平均気泡径の測定方法)
熱可塑性樹脂発泡シートのMD方向の平均気泡径は下記の方法により測定される。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートを、CD方向における中央部においてZD方向に平行な面で全長にわたって切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて60倍に拡大し、ZD方向の全長が収まるように写真撮影する。次いで、撮影した写真における、ZD方向の中央部に写真上での長さが15cm(拡大前の実際の長さ2500μm)の直線を、熱可塑性樹脂発泡シート表面と平行になるように描く。この直線上に位置する気泡数を目視により数え、下記式に基づいて気泡のMD方向の平均気泡径を算出する。
MD方向の平均気泡径(μm)=2500(μm)/気泡数(個)
【0035】
(ZD方向の平均気泡径の測定方法)
熱可塑性樹脂発泡シートのZD方向の平均気泡径は下記の方法により測定される。すなわち、前記MD方向の平均気泡径を算出する際の方法と同様の方法で写真撮影を行なう。撮影した写真において、熱可塑性樹脂発泡シートの表面に対して直交する方向(ZD)に発泡シートの全長にわたって、3本の直線を切断面のMD方向を四分割するように描く。次いで、各直線の長さを測定すると共に各直線上に位置する気泡数を目視により数え、下記式に基づいて各直線毎に気泡のZD方向の平均気泡径を算出し、これらの相加平均をZD方向の平均気泡径とする。
ZD方向の平均気泡径(μm)=写真上における直線の長さの合計(μm)/(60×気泡数(個))
【0036】
(CD方向の平均気泡径の測定方法)
熱可塑性樹脂発泡シートのCD方向の平均気泡径は下記の方法により測定される。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートを、CD方向に平行で且つ熱可塑性樹脂発泡シートの表面に対して直交する方向(ZD)に平行な面で厚さ方向の全長に亘って切断する。次いで、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて60倍に拡大し、熱可塑性樹脂発泡シートの厚さ方向の全長が収まるように写真撮影する。そして、撮影した写真に基づいて、MD方向の平均気泡径を測定した時と同様の方法で、CD方向の平均気泡径を算出する。
【0037】
上述の平均気泡径を測定する方法において、直線上に位置する気泡数を数えるにあたっては、写真上に表れた気泡断面のみに基づいて気泡径を判断する。すなわち、気泡同士は、熱可塑性樹脂発泡シートの切断面においては気泡壁によって互いに完全に分離しているように見えても、熱可塑性樹脂発泡シートの切断面以外の部分において互いに連通しているような場合もあるが、本発明においては、熱可塑性樹脂発泡シートの切断面以外の部分において互いに連通しているか否かについて考慮せず、写真上に表れた気泡膜断面のみに基づいて気泡形態を判断し、写真上に表れた気泡膜断面により完全に囲まれた一個の空隙部分を一個の気泡として判断する。
直線上に位置するとは、直線が気泡を該気泡の任意の部分において完全に貫通している場合をいい、又、直線の両端部においては、直線が気泡を完全に貫通することなく直線の端部が気泡内に位置した状態となっているような場合には、この気泡を0.5個として数えた。
【0038】
なお、熱可塑性樹脂発泡シートの切断面を写真撮影する際、熱可塑性樹脂発泡シートの切断面を着色すると気泡の判別が容易になると共に、例えば、2500μmの目盛りを一緒に拡大して写真撮影しておくと、写真上における直線長さを特定し易くなる。
【0039】
≪引張強度≫
熱可塑性樹脂発泡シートにおけるMD方向又はCD方向の少なくとも一方向における23℃での引張強度は、粘着シートの基材として用いた場合の材料強度及び切断の容易性の観点から2〜20MPaが好ましく、4〜14MPaがより好ましく、6〜13MPaが更に好ましい。2MPa以上であると剥離時の切断を抑制することが可能となる。
なお、本明細書において、熱可塑性樹脂発泡シートのMD方向又はCD方向における引張強度は、23℃にてJIS K 6767に準拠して測定された値である。
【0040】
≪加熱寸法変化率≫
熱可塑性樹脂発泡シートの90℃におけるMD方向の加熱寸法変化率は、−10%以上が好ましく、−10〜5%がより好ましく、−2.0〜2.0%が更に好ましい。前記加熱寸法変化率が前記範囲内であると、粘着シートが収縮又は膨張して貼着位置からズレてしまう不具合が防止される。
なお、熱可塑性樹脂発泡シートの90℃におけるMD方向の加熱寸法変化率は、測定温度を90℃としたこと以外はJIS K 6767に準拠して測定された値である。
【0041】
(熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法)
前記熱可塑性樹脂発泡シートは、例えば、以下の(1)〜(4)の方法により製造することができる。
【0042】
製造方法(1)
製造方法(1)は、下記(1−1)〜(1−3)の工程を含む。
ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性の熱可塑性樹脂シートを製造する工程(1−1)と、
この発泡性の熱可塑性樹脂シートに電離性放射線を照射して発泡性の熱可塑性樹脂シートを5〜60質量%の架橋度に架橋させる工程(1−2)と、
架橋させた発泡性の熱可塑性樹脂シートを加熱、発泡させ、得られた発泡シートを発泡時の溶融状態を維持したままMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、前述の特性を備える熱可塑性樹脂発泡シートを製造する工程(1−3)と
を有する製造方法。
【0043】
製造方法(2)
製造方法(2)は、下記(2−1)〜(2−3)の工程を含むものである。
ポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤及び有機過酸化物を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性の熱可塑性樹脂シートを製造する工程(2−1)と、
この発泡性の熱可塑性樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させ、発泡性の熱可塑性樹脂シートを5〜60質量%の架橋度に架橋させつつ発泡させる工程(2−2)と、
得られた発泡シートを発泡時の溶融状態を維持したままMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、前述の特性を備える熱可塑性樹脂発泡シートを製造する工程(2−3)と
を有する製造方法。
【0044】
製造方法(3)
製造方法(3)は、下記(3−1)〜(3−5)の工程を含むものである。
ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性の熱可塑性樹脂シートを製造する工程(3−1)と、
この発泡性の熱可塑性樹脂シートに電離性放射線を照射して、発泡性の熱可塑性樹脂シートを5〜60質量%の架橋度に架橋させる工程(3−2)と、
架橋させた発泡性の熱可塑性樹脂シートを加熱、発泡させた後に冷却して発泡シートを製造する工程(3−3)と、
この発泡シートを再度、加熱して溶融又は軟化状態とする工程(3−4)と、
上記発泡シートをMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、前述の特性を備える熱可塑性樹脂発泡シートを製造する工程(3−5)と
を有する製造方法、
【0045】
製造方法(4)
製造方法(4)は、下記(4−1)〜(4−3)の工程を含むものである。
ポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤及び有機過酸化物を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって発泡性の熱可塑性樹脂シートを製造する工程(4−1)と、
この発泡性の熱可塑性樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させ、発泡性の熱可塑性樹脂シートを5〜60質量%の架橋度に架橋させつつ発泡させた後に冷却して発泡シートを製造する工程(4−2)と、
この発泡シートを再度、加熱して溶融又は軟化状態とする工程(4−3)と、
上記発泡シートをMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方の方向に向かって延伸させて発泡シートの気泡を延伸し、前述の特性を備える熱可塑性樹脂発泡シートを製造する工程(4−4)と
を有する製造方法等が挙げられる。
【0046】
前記製造方法において用いることができる熱分解型発泡剤としては、特に制限はなく、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これらの中では、アゾジカルボンアミドが好ましい。なお、熱分解型発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。更に好ましくは2〜6質量部である。熱分解型発泡剤の添加量が前記範囲内であると、発泡性の熱可塑性樹脂シートの発泡性が向上し、所望する発泡倍率を有する熱可塑性樹脂発泡シートを得ることができると共に、引張強度及び圧縮回復性が向上する。
【0048】
なお、本発明においては、物理発泡を行うことにより、熱可塑性樹脂シートを発泡させてもよい。この場合、前記熱可塑性樹脂シートに含浸させる物理発泡剤としては、前記特定の平均気泡径を具備させる観点から、高圧の不活性ガスを用いることが好ましい。
本発明で用いられる不活性ガスとしては、熱可塑性樹脂シートに対して不活性で、かつ含浸可能なものであれば特に制限されず、例えば、二酸化炭素、窒素ガス、空気等が挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、発泡体の素材として用いる樹脂への含浸量が多く、含浸速度の速い二酸化炭素が好適である。また、不純物の少ないクリーンな樹脂発泡体を得る観点からも二酸化炭素が好ましい。
【0049】
また、樹脂に含浸させる際の不活性ガスは、超臨界状態又は亜臨界状態であることが好ましい。超臨界状態では、樹脂へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、前記のように高濃度であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が、気孔率が同じであっても、大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。
ここで、例えば、二酸化炭素の「超臨界状態」とは、圧力が二酸化炭素の臨界圧力以上であり、かつ温度が臨界温度以上である状態をいう。二酸化炭素を超臨界状態とするためには、温度40〜50℃、圧力7.38〜30MPa、特に8〜20MPとすることが好ましい。また、二酸化炭素の「亜臨界状態」とは、(i)圧力が二酸化炭素の臨界圧力(7.38MPa)以上であり、温度が二酸化炭素の臨界温度(31.1℃)未満である液体状態、(ii)圧力が二酸化炭素の臨界圧力未満であり、温度が臨界温度以上である液体状態、又は(iii)温度及び圧力が共に二酸化炭素又は窒素の臨界点未満ではあるがこれに近い状態をいう。より具体的には、二酸化炭素の場合、温度が20℃〜31℃で圧力が5MPa以上の状態が好ましい。
【0050】
発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の酸化防止剤、酸化亜鉛等の発泡助剤、気泡核調整材、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等が、熱可塑性樹脂発泡シートの物性を損なわない範囲で添加されていてもよい。
【0051】
発泡性の熱可塑性樹脂シートを架橋する方法としては、例えば、発泡性の熱可塑性樹脂シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法、発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、得られた発泡性の熱可塑性樹脂シートを加熱して有機過酸化物を分解させる方法等が挙げられ、これらの方法は併用されてもよい。
【0052】
前記製造方法において用いることができる有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が前記範囲内であると、発泡性の熱可塑性樹脂シートの架橋が進行しやすく、また、得られる熱可塑性樹脂発泡シート中に有機過酸化物の分解残渣の量を抑制することができる。
【0054】
発泡性の熱可塑性樹脂シートを発泡させる方法としては、特に制限はなく、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法等が挙げられ、これらは併用してもよい。
【0055】
前記発泡シートの延伸は、発泡性の熱可塑性樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、発泡性の熱可塑性樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、発泡性の熱可塑性樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸してもよく、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。
【0056】
発泡シートの溶融状態とは、発泡シートをその両面温度が、発泡シートを構成しているポリオレフィン系樹脂の融点以上に加熱した状態をいう。なお、ポリオレフィン系樹脂の融点(℃)とは、示差走査熱量分析(DSC)で熱量分析を行った際に得られる、結晶の融解に伴う吸熱ピークのうち最大ピークの温度をいう。
発泡シートの軟化状態とは、発泡シートをその両面温度T(℃)が下記式を満たす温度に加熱した状態をいう。なお、ポリオレフィン系樹脂の軟化点(℃)とは、ASTM D1525に準拠して測定されたビカット軟化点である。
ポリオレフィン系樹脂の軟化点−10℃≦T≦ポリオレフィン系樹脂の軟化点+10℃
【0057】
上記発泡シートを延伸することによって、発泡シートの気泡を所定方向に延伸し変形させて、気泡のアスペクト比が所定範囲内となった熱可塑性樹脂発泡シートを製造することができる。
【0058】
発泡シートの延伸方向にあたっては、長尺状の発泡性の熱可塑性樹脂シートのMD方向又はCD方向に向かって、又はMD方向及びCD方向に向かって延伸させる。なお、発泡性の熱可塑性樹脂シートをMD方向及びCD方向に向かって延伸させる場合、発泡シートをMD方向及びCD方向に向かって同時に延伸してもよいし、一方向ずつ別々に延伸してもよい。
【0059】
上記発泡シートをMD方向に延伸する方法としては、例えば、長尺状の発泡性の熱可塑性樹脂シートを発泡工程に供給する速度(供給速度)よりも、発泡後に長尺状の発泡シートを冷却しながら巻き取る速度(巻取速度)を速くすることによって発泡シートをMD方向に延伸する方法、得られた発泡シートを延伸工程に供給する速度(供給速度)よりも、発泡シートを巻き取る速度(巻取速度)を速くすることによって発泡シートをMD方向に延伸する方法等が挙げられる。
【0060】
なお、前者の方法において、発泡性の熱可塑性樹脂シートは、それ自身の発泡によってMD方向に膨張するので、発泡シートをMD方向に延伸する場合には、発泡性の熱可塑性樹脂シートの発泡によるMD方向への膨張分を考慮した上で、その膨張分以上に発泡シートがMD方向に延伸されるように、シートの供給速度と巻取り速度とを調整することができる。
また、上記発泡シートをCD方向に延伸する方法としては、発泡シートのCD方向の両端部を一対の把持部材によって把持し、この一対の把持部材を互いに離間する方向に徐々に移動させることによって発泡シートをCD方向に延伸する方法が好ましい。なお、発泡性の熱可塑性樹脂シートは、それ自身の発泡によってCD方向に膨張するので、発泡シートをCD方向に延伸する場合には、発泡性の熱可塑性樹脂シートの発泡によるCD方向への膨張分を考慮した上で、その膨張分以上に発泡シートがCD方向に延伸されるように調整する必要がある。
【0061】
ここで、熱可塑性樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率は、小さいと、熱可塑性樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下することがある一方、大きいと、発泡シートが延伸中に切断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が著しく低下し、熱可塑性樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下したり品質が不均一となる場合があるので、1.1〜3.0倍が好ましく、1.2〜2倍がより好ましい。
【0062】
なお、熱可塑性樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率は下記要領で算出される。即ち、熱可塑性樹脂発泡シートの発泡倍率の三乗根Fを求める一方、巻取速度と供給速度の比(巻取速度/供給速度)Vを求め、下記式に基づいて熱可塑性樹脂発泡シートのMD方向における延伸倍率を算出することができる。但し、熱可塑性樹脂発泡シートの発泡倍率は、発泡性の熱可塑性樹脂シートの比重を熱可塑性樹脂発泡シートの比重で除したものをいう。
発泡シートのMD方向における延伸倍率(倍)=V/F
【0063】
また、熱可塑性樹脂発泡シートのCD方向における延伸倍率は、小さいと、熱可塑性樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下することがある一方、大きいと、発泡シートが延伸中に切断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けてしまって、得られる熱可塑性樹脂発泡シートの発泡倍率が著しく低下し、熱可塑性樹脂発泡シートの柔軟性及び引張強度が低下したり品質が不均一となったりすることがあるので、1.2〜4.5倍が好ましく、1.5〜3.5倍がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂発泡シートにおけるCD方向の延伸倍率は、発泡性の熱可塑性樹脂シートをそのMD方向及びCD方向に延伸させずに加熱、発泡させて得られた熱可塑性樹脂発泡シートのCD方向の長さをW1とする一方、CD方向に延伸させた熱可塑性樹脂発泡シートのCD方向の長さをW2とし、下記式に基づいて算出することができる。
発泡シートのCD方向における延伸倍率(倍)=W2/W1
【0064】
<強粘着剤層(C)>
本発明における強粘着剤層(C)は、JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が弱粘着剤層(A)の粘着力より0.1N/2mm以上大きい層である。
この強粘着剤層(C)の粘着力を、弱粘着剤層(A)の粘着力より0.1N/2mm以上大きくすることにより、粘着シートの2つの粘着剤層のうち、弱粘着剤層を剥がれやすくすることが可能となる。また、高温時において貼り付け位置をズレ難くすることができる。強粘着剤層(C)の粘着力は、弱粘着剤層(A)の粘着力より0.15N/2mm以上大きいことがより好ましく、0.2N/2mm以上大きいことが更に好ましい。
強粘着剤層(C)の粘着力と、弱粘着剤層(A)の粘着力との差が1.0N/2mmを超えていても問題はないが、製造コストが上昇するため好ましくない。このような観点から、強粘着剤層(C)の粘着力は、弱粘着剤層(A)の粘着力より0.1〜1.0N/2mm程度大きいことが好ましく、0.15〜0.8N/2mm程度大きいことがより好ましく、0.2〜0.7N/2mm程度大きいことが更に好ましい。
強粘着剤層(C)の粘着力が5N/2mmを超えると、テープをはがす際にテープが破れたり、作業性が悪くなるため、強粘着剤層(C)の粘着力は、5N/2mm以下であることが好ましい。
強粘着剤層(C)は、製造コストの観点から、前記弱粘着剤層(A)と同様の材料で構成することが好ましい。前述のとおり、粘着性微粒子の配合を変化させることにより、前記粘着力を有する層を容易に形成することができる。さらに、この強粘着剤層(C)は、前記弱粘着剤層(A)と同様に、複数の層により構成されてもよい。この場合、強粘着剤層(C)の強度が向上する。
【0065】
本発明の粘着シートは、どのような製品に用いてもよいが、液晶テレビ等の前面板と画像表示パネルとの間に用いることが好ましい。前記画像表示パネルは、一般的にアクリル系の材料で構成されているため、この画像表示パネルに対してアクリル系粘着剤で構成される弱粘着剤層(A)を貼り付けることにより、画像表示パネルから容易に粘着シートを剥がすことができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
<実施例1>
DIC(株)製「ダイタック#8616DJ クロ」(厚さ0.1mm)を弱粘着剤層(A)とし、積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ソフトロン S07005」(密度0.14g/cm3:厚さ0.5mm)を熱可塑性樹脂発泡シート層(B)として、それぞれ20cm角の大きさに切り出し、ローラーにて積層一体化した。次いで、前記熱可塑性樹脂発泡シート層の弱粘着剤層(A)を設けた面とは反対側の面に対して、アクリル系樹脂粘着剤(一方社油脂工業製「バインゾール R−8510E」)を、硬化後の厚さが30μmとなるように塗布して強粘着剤層(C)を形成した。この粘着シート全体の厚さは0.63mmであった。
このようにして製造した粘着シートを以下の評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
【0068】
<実施例2>
熱可塑性樹脂発泡シート層(B)を積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「XLIM WL03」(密度0.125g/cm3、厚さ0.3mm)に変更したこと以外は実施例1と同様に粘着シートを作成した。この粘着シート全体の厚さは0.43mmであった。
<実施例3>
弱粘着剤層(A)を(株)寺岡製作所製耐熱マスキング用両面テープ「No.7691#25 黒」(粘着力0.25N/2mm、厚さ0.085mm)にしたこと以外は実施例2と同様に粘着シートを作成した。この粘着シート全体の厚さは0.415mmであった。
【0069】
<比較例1>
弱粘着剤層(A)を積水化学工業(株)製アクリル系両面テープ「♯5782」、厚さ0.13mmに変更し、さらに、強粘着剤層(C)を東亞合成(株)製アクリル系粘着剤「S−3452」を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥したこと以外は実施例2と同様に粘着シートを作成した。この粘着シート全体の厚さは0.46mmであった。
【0070】
<比較例2>
熱可塑性樹脂発泡シート層(B)を積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ボラーラXL−H#02003」、厚さ0.3mmにしたこと以外は実施例2と同様に粘着シートを作成した。この粘着シート全体の厚さは0.43mmであった。
【0071】
<比較例3>
弱粘着剤層(A)を積層しなかったこと以外は、実施例2と同様に粘着シートを作成した。この粘着シート全体の厚さは0.33mmであった。
【0072】
[評価方法]
前記実施例1〜3、比較例1〜3で作成した粘着シートを下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(アクリル板の浮き上がり量)
粘着シートを幅50mm、長さ80mmの大きさに切り出し、この粘着シートを100mm角のアクリル板(厚さ0.8mm)2枚で挟んだ。この2枚のアクリル板の四隅に、ボルト用の穴を設けることにより、ボルトとナットを用いて2枚のアクリル板の間隔を調整できるようにした。本評価においては、2枚のアクリル板の間隔を0.47mmとすることにより、粘着シートの圧縮率を25%とし、室温(23℃)で12時間放置した。12時間放置後、試験体を水平な台の上に静置し、台と接していない上側のアクリル板の端部と台との間隔と、当該アクリル板の中心部と台との間隔とをそれぞれ測定し、その差をアクリル板の浮き上がり量とした。結果を表1に示す。
【0074】
<剥離性評価>
実施例及び比較例の粘着シートを幅2mm幅に切断し、弱粘着剤層(A)が貼着面となるように、厚さ10mm、10cm角のアクリル坂上に設置し、2kgローラーを1往復させることにより加圧して貼着した。これを室温(23℃)で3分間放置し、続けて粘着シートをPET板から手で剥がした。剥がす際に粘着シートに破れなかったものを合格(P)、剥がす際に破れたものを不合格(F)として評価した。結果を表1に示す。なお、比較例3は弱粘着剤層(A)を有しないため、本評価を行っていない。
【0075】
(防水性)
粘着シートを外径60mm、内径40mmのリング状に打ち抜いて試験片とした。この試験片を2枚のアクリル板の間に挟み、試験片の圧縮率が25%(試験片の圧縮後の厚さが圧縮前の厚さの75%)になるように圧縮した。
2枚のアクリル樹脂板のうちの一方のアクリル板には、試験片の貫通孔に対応する部分に水封入用、圧力印可用の孔が開いており、この孔から試験片の貫通孔とアクリル板とで形成される空間内に水道水を注入した。前記空間に印加される圧力を1kPaから順次増加させ、水漏れが生じた際の圧力を測定した。なお、当該試験は23℃にて行った。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかなように、本発明によれば、容易に剥離することができ、かつ圧縮時の反発力が小さく、更に防水性能が高い粘着シートが提供される
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の粘着シートによれば、0.2〜1.2N/2mmの粘着力を有する弱粘着剤層(A)と熱可塑性樹脂発泡シート層(B)と、強粘着剤層(C)とを積層したものであり、剥離性に優れるものであるため、液晶パネル等の高価な画像表示パネルに対して粘着シートの貼り付けミスをした場合であっても、剥離、再貼り付けが可能である。したがって、製品組み立て工程において歩留まりを改善することができると共に、これを用いた製品の修理も容易になる。また、熱可塑性樹脂発泡シート層(B)が独立気泡を有するため、ホコリだけでなく水分に対してもシール性が高く、防水機能を付与できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が0.2〜1.2N/2mmである弱粘着剤層(A)と、厚さが0.05〜0.5mm、発泡倍率が1.2〜16.7cm3/gである熱可塑性樹脂発泡シート層(B)と、JIS K 0237に準拠して測定した粘着力が弱粘着剤層(A)の粘着力より0.1N/2mm以上大きい強粘着剤層(C)とがこの順に積層された粘着シートであって、前記熱可塑性樹脂発泡シートは、押出し成形により形成された熱可塑性樹脂シートを発泡させてなる独立気泡を有するものであり、以下の条件(I)〜(V)を満たすことを特徴とする粘着シート。
<条件>
(I) JIS K 6767に準拠して測定した25%圧縮強度が25〜200kPa
(II) 熱可塑性樹脂シートの押し出し方向(MD)の平均気泡径が60〜350μm
(III) 熱可塑性樹脂シートの幅方向(CD)の平均気泡径が50〜300μm
(IV) 熱可塑性樹脂シートの厚さ方向(ZD)の平均気泡径が10〜70μm
(V) 粘着シートの厚さが0.15〜0.70mm
【請求項2】
各粘着剤層が、アクリル系粘着剤からなる請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
各粘着剤層が、基材層を有する請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
熱可塑性樹脂発泡シートの気泡のアスペクト比(CDの平均気泡径/ZDの平均気泡径)が、2〜18である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
熱可塑性樹脂シートは、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリオレフィン系樹脂を40質量%以上含有するポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによって製造されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214623(P2012−214623A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80883(P2011−80883)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】