説明

粘着剤組成物及び表面保護フィルム

【課題】表面保護フィルム等において粘着力の昂進を抑制しうる粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックaと、共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、ビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロックbとを含み、[a−b]−Y(但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、xは2以上の整数、Yはカップリング剤残基を示す。)の構造を有し、重合体ブロックaと重合体ブロックbとの質量比が、a/b=5/95〜45/55であるブロック共重合体を水素添加してなり、重量平均分子量が5〜50万、水素添加率が80%以上、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートが5〜100g/10分、ピール強度上昇値(40℃雰囲気下、7日間)が0.55N/10mm以下である粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させてなる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属板、被覆塗装鋼板、合成樹脂板、化粧合板、銘板、ガラス板等の各種の部材の表面を汚染や損傷から保護するために、これらの部材の表面を表面保護フィルムで被覆することが行われている。
【0003】
一般に、表面保護フィルムは、フィルム状の基材層とその基材層の表面に形成された粘着剤層とを備えた構成を有している。このような表面保護フィルムは、粘着剤層を介してフィルム状の基材を被保護体の表面に貼着させることによって、被保護体の表面を汚染や損傷から保護することができる。
【0004】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成するための粘着剤組成物としては、例えば、芳香族アルケニル化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロックAと、水素添加された共役ジエン化合物単位を主たる繰り返し単位とする重合体ブロックBを含むブロック共重合体を構成成分とする粘着剤組成物を用いることが提案されている。より具体的には、[A−B]型のブロック共重合体や[A−B−A]型のブロック共重合体を含有する表面保護フィルム用の粘着剤組成物(但し、「A」は重合体ブロックA、「B」は重合体ブロックBを示す。)が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特公平6−23365号公報
【特許文献2】特許第2713519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の粘着剤組成物は、金属板等の被保護体(被着体)に接着された後、積み重ねられたり、コイル状に巻き回された状態等で保管されるため、経時的に粘着力が昂進し、その結果、被着体の表面から表面保護フィルムを剥離させる際に、剥離作業が難航したり、あるいは、被着体の上に表面保護フィルムや粘着剤が部分的に残留(糊残り)するなどの問題が起きることがある。また、光学用フィルム(例えば、プリズムシート、拡散板等)のような凹凸フィルムと、表面保護フィルムとの接着剤として、前記の粘着剤組成物を用いた場合においても、凹凸フィルムの使用時に表面保護フィルムを剥離した後に、粘着剤組成物の粘着力の昂進による当該粘着剤組成物の残留に起因して、光学フィルムの機能が低下するという問題が生じることがある。
本発明は、前記の従来技術の問題点を解消しようとするものであり、経時的な粘着昂進の程度が小さい粘着剤組成物、及び該組成物を用いて作製される表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の従来技術の問題を解消するために鋭意検討した結果、粘着剤組成物を構成するブロック共重合体の構造、単量体単位の組成、物性などを特定することによって、上記問題が解消されることに想到し、本発明を完成した。具体的には、本発明により、以下の粘着剤組成物等が提供される。
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 下記(イ)成分を含む粘着剤組成物であって、ピール強度の上昇値(40℃雰囲気下、7日間放置)が0.55N/10mm以下であることを特徴とする粘着剤組成物。
[(イ)成分]下記重合体ブロックaと下記重合体ブロックbとを含み、[a−b]−Y(但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、xは2以上の整数、Yはカップリング剤残基を示す。)の構造を有するブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックbとの質量比が、a/b=5/95〜45/55であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)〜(3)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(1)重量平均分子量が5〜50万である。
(2)水素添加率が80%以上である。
(3)230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートが、5〜100g/10分である。
[2] 下記(ロ)成分を含み、(イ)成分と(ロ)成分の合計100質量%中、(イ)成分の配合量が50質量%以上である前記[1]に記載の粘着剤組成物。
[(ロ)成分]下記重合体ブロックa及び下記重合体ブロックbを含み、[a−b](但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、nは1〜3の整数を示す。)の構造を有するブロック共重合体を水素添加してなる水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
[3] 下記(ハ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ハ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ハ)=10〜90/90〜10である前記[2]に記載の粘着剤組成物。
[(ハ)成分]下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックcと、下記重合体ブロックdとからなるブロック共重合体であって、芳香族ビニル化合物単位/共役ジエン化合物単位の質量比が5/95〜60/40であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックc]共役ジエン化合物単位のみからなる重合体ブロック、または共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とのランダム共重合体ブロック(ただし、芳香族ビニル化合物単位の含有率は45質量%以下である。)であって、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
[重合体ブロックd]共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とを含み、芳香族ビニル化合物単位が漸増するテーパーブロック
(1)水素添加率が80%以上である。
[4] 下記(ニ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ニ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ニ)=10/90〜90/10である前記[2]に記載の粘着剤組成物。
[(ニ)成分]下記重合体ブロックeと、下記重合体ブロックfとを含み、e−(f−e)、又は(e−f)(但し、eは重合体ブロックe、fは重合体ブロックf、n及びmは各々独立に1以上の整数を示す。)の構造を有するブロック共重合体であって、重合体ブロックeと重合体ブロックfとの質量比がe/f=5/95〜50/50であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックe]ビニル結合の含有率が30%以下であるポリブタジエンブロック
[重合体ブロックf]共役ジエン化合物単位を含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(1)水素添加率が80%以上である。
[5] 下記(ホ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ホ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ホ)=10/90〜90/10である前記[2]に記載の粘着剤組成物。
[(ホ)成分]下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックgと、下記重合体ブロックeとを含むブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックbと重合体ブロックeの合計100質量%中、重合体ブロックaの含有率が5〜40質量%、重合体ブロックgの含有率が30〜90質量%、重合体ブロックeの含有率が5〜40質量%であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックg]共役ジエン化合物単位55〜100質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜0質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が40%以上である重合体ブロック
[重合体ブロックe]ビニル結合の含有率が30%以下であるポリブタジエンブロック
(1)水素添加率が80%以上である。
[6] 下記(ヘ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ヘ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ヘ)=10/90〜90/10である前記[2]に記載の粘着剤組成物。
[(ヘ)成分]下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックbとを含むブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックbとの質量比がa/b=5/95〜45/55であり、かつ、少なくとも2つの末端が重合体ブロックaであり、中間部分に少なくとも1つの重合体ブロックbを有するブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体。
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜100質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜0質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(1)水添率が80%以上である。
[7] ポリオレフィンからなる基材層と、該基材層の片面に積層して形成された粘着剤層とからなる表面保護フィルムであって、上記粘着剤層が、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる表面保護フィルム。
[8] 前記[7]に記載の表面保護フィルムを製造する方法であって、上記基材層及び上記粘着剤層を押出成形により積層する工程を含む、表面保護フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層含有部材(例えば、光学用表面保護フィルム等)における粘着剤層の材料に用いた場合に、被着体(例えば、光学フィルム等)に貼着された後の経時的な粘着力の昂進の程度が小さく、そのため、被着体から粘着剤層含有部材(光学用表面保護フィルム等)を剥離するときに、糊残り等の不具合を生じることがなく、容易かつ迅速に剥離作業を行なうことができる。
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着剤層含有部材は、光学用表面保護フィルム(例えば、光学フィルム用の表面保護フィルム)の用途に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。但し、本発明は、特許請求の範囲で規定した特定の事項を備える限りにおいて全ての実施形態を包含するものであり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0010】
[1]粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、1種以上の共重合体(以下、共重合体組成物と称する。)と、必要に応じて添加されるその他の任意成分とを含むものである。
共重合体組成物は、下記(イ)成分を含むことが必要であり、好ましくは、(イ)成分及び下記(ロ)成分を含むものである。さらに、共重合体組成物は、(イ)成分及び(ロ)成分に加えて、下記(ハ)成分、(ニ)成分、(ホ)成分、(ヘ)成分から選ばれる1種以上を含むことができる。
以下、(イ)成分〜(ヘ)成分の各々について説明する。なお、本明細書においては、「単量体Xに由来する繰り返し単位」を単に「X単位」と記す場合がある。
【0011】
[(イ)成分]
(イ)成分は、下記重合体ブロックaと下記重合体ブロックbとを含み、[a−b]−Y(但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、xは2以上の整数、Yはカップリング剤残基を示す。)の構造を有するブロック共重合体(水添前共重合体)を水素添加してなる水添共重合体である。
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(イ)成分の水添前共重合体を構成する重合体ブロックaは、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。重合ブロックa中の芳香族ビニル化合物単位の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。該含有率を高めると、粘着剤組成物の熱可塑性を向上させることができ、粘着剤組成物のリサイクルがより容易になるという利点がある。
重合体ブロックaを構成する繰り返し単位(単量体単位)のうち、芳香族ビニル化合物単位以外の繰り返し単位としては、芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物に由来する繰り返し単位、例えば、共役ジエン化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等に由来する繰り返し単位を挙げることができる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが、芳香族ビニル化合物との共重合性が高いという理由から好ましい。
上記芳香族ビニル化合物単位を構成する単量体である芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン及びビニルピリジン等を挙げることができる。中でも、原料が工業的に入手し易いという理由から、スチレンが好ましい。
【0012】
(イ)成分の水添前共重合体を構成する重合体ブロックbは、共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロックである。
重合体ブロックb中、共役ジエン化合物単位の含有率は、55〜99質量%、好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは65〜99質量%、最も好ましくは70〜99質量%である。
重合体ブロックb中、芳香族ビニル化合物単位の含有率は1〜45質量%、好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは1〜35質量%、最も好ましくは1〜30質量%である。
共役ジエン化合物単位及び芳香族ビニル化合物単位の含有率を上記の数値範囲内とすることによって、粘着剤組成物の柔軟性を向上させることができる。
なお、共役ジエン化合物単位、芳香族ビニル化合物単位以外の繰り返し単位を構成する他の単量体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物等)を用いることもできる。重合体ブロックb中、他の単量体の含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
上記芳香族ビニル化合物単位を構成する芳香族ビニル化合物単量体としては、上記と同様のものが挙げられるが、好ましくはスチレンである。上記共役ジエン化合物単位を構成する共役ジエン化合物単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン及びクロロプレン等が挙げられる。中でも、重合反応性が高く、原料が工業的に入手し易いという理由から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
重合体ブロックb中、ビニル結合の含有率(即ち、1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の合計の質量割合;以下、「ビニル結合含量」ともいう。)は、60%以上、好ましくは60〜90%、より好ましくは60〜85%である。ビニル結合含量を上記範囲内とすることにより、タックと接着力のバランスに優れた粘着剤組成物を得ることができる。
また、水添前共重合体において、上記重合体ブロックaと上記重合体ブロックbとの質量比は、a/b=5/95〜45/55であり、好ましくは5/95〜30/70、より好ましくは5/95〜20/80である。
【0013】
このような水添前共重合体を水素添加してなる水添共重合体((イ)成分)は、[A−B]−Y(但し、Aは重合体ブロックaに由来する重合体ブロック、Bは重合体ブロックbに由来する重合体ブロック、xは2以上の整数、Yはカップリング剤残基を示す。)で表される構造を有するものである。
上記の構造を有する水添共重合体としては、例えば、[(A−B)−Y−(B−A)](x=2の場合)で表される2分子のカップリング体や、3分子以上のカップリング体(いわゆる星型重合体)等が挙げられる。但し、あまりに多数の重合体をカップリングさせて(イ)成分を製造することは副反応を伴うこととなり、重合体の物性をコントロールすることが困難になるおそれがある。従って、xは2〜4の整数であることが好ましい。
(イ)成分は、カップリング法を用いて、後述する(ロ)成分と1ポットで合成することができる。なお、カップリング方法等の詳細については、製造方法の項で詳細に説明する。
【0014】
上記水添共重合体の水素添加率は、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。水素添加率が80%以上であると、耐熱性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。なお、本明細書において「水素添加率」とは、四塩化炭素を溶媒として用い、270MHz、H−NMRスペクトルから算出した水素添加率を意味する。
上記水添共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5万〜50万、より好ましくは5万〜30万である。重量平均分子量を5万〜50万の範囲内とすることで、(イ)成分を含む共重合体組成物の工業的な生産を容易なものとすることができる。重量平均分子量が5万未満であると、ポリマーを脱溶媒、乾燥させる工程において製造設備等にポリマーが付着してしまい、(イ)成分等の工業的生産が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が50万を超えると、溶剤への溶解性や熱溶融性が悪くなり、粘着剤層の形成が困難になる場合がある。なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
上記水添共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートは、5〜100g/10分、好ましくは5〜50g/10分、より好ましくは5〜20g/10分である。
【0015】
[(ロ)成分]
(ロ)成分は、重合体ブロックaと重合体ブロックb(ここで、重合体ブロックa、bは、(イ)成分における重合体ブロックa、bと同様に定義される。)とを含み、[a−b](但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、nは1〜3の整数を示す。)で表される構造を有する共重合体(水添前共重合体)を、水素添加してなる水添共重合体である。
水添前共重合体を構成する重合体ブロックa、及び重合体ブロックbにおける、芳香族ビニル化合物単位の含有率、ビニル結合含量、用いられる単量体の種類等の条件は、上述の(イ)成分におけるものと同様である。
(ロ)成分として用いられる水添共重合体は、[A−B](但し、Aは重合体ブロックaに由来する重合体ブロック、Bは重合体ブロックbに由来する重合体ブロック、nは1〜3の整数を示す。)で表される構造を有するものである。
このような水添共重合体としては、例えば、[A−B](n=1)、[A−B−A−B](n=2)、[A−B−A−B−A−B](n=3)等の構造を有するブロック共重合体を挙げることができる。これらのブロック共重合体においては、重合体ブロックA、Bに関し、例えば、[A−B−A−B]のように、各々が異なる重合体ブロックであってもよいし、あるいは、[A−B−A−B]のように、同一の重合体ブロックであってもよい。nが1〜3の整数であると、工業的な生産性が良好となる。一方、nを4以上とすると、工業的な生産性が低下するため好ましくない。なお、接着力及び材料強度を向上させるという観点から、nが1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。即ち、成分(ロ)として用いられる水添共重合体としては、接着力を向上させる観点から、[A−B]の構造を有するブロック共重合体が特に好ましい。
また、[A−B]の構造において、末端の重合体ブロックBは共重合体全体の2質量%以上を占めていることが好ましい。重合体ブロックBの効果を確実に発揮させるためである。
【0016】
上記水添共重合体の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量が3万〜50万であることが好ましく、8万〜30万であることが更に好ましく、8万〜20万であることが特に好ましい。重量平均分子量を3万〜50万の範囲内とすることで、共重合体組成物(例えば、(イ)成分と(ロ)成分からなるもの)の工業的な生産を容易なものとすることができる。重量平均分子量が3万未満であると、ポリマーを脱溶媒、乾燥させる工程において製造設備等にポリマーが付着してしまい、(ロ)成分等の工業的生産が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が50万を超えると、溶剤への溶解性や熱溶融性が悪くなり、粘着剤層の形成が困難になる場合がある。
上記水添共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.01〜100g/10分、より好ましくは0.01〜80g/10分である。
【0017】
[(ハ)成分]
(ハ)成分は、下記重合体ブロックa(ここで、重合体ブロックaの定義及び詳細は、上述の(イ)成分における重合体ブロックaと同様である。)と、下記重合体ブロックcと、下記重合体ブロックdとからなるブロック共重合体(水添前共重合体)であって、芳香族ビニル化合物単位/共役ジエン化合物単位の質量比が5/95〜60/40であるブロック共重合体を、水素添加率が80%以上になるように水素添加してなる水添共重合体である。
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックc]共役ジエン化合物単位のみからなる重合体ブロック、または共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とのランダム共重合体ブロック(ただし、芳香族ビニル化合物単位の含有率は45質量%以下、好ましくは40質量%以下である。)であって、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
[重合体ブロックd]共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とを含み、芳香族ビニル化合物単位が漸増するテーパーブロック
上記(ハ)成分の水添前共重合体は、例えば、[a−c−d](但し、aは重合体ブロックa、cは重合体ブロックc、dは重合体ブロックdを示す。)で表される構造を有するものである。
重合体ブロックc中、ビニル結合含量は、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。ビニル結合含量が60%未満であると、粘着剤組成物の粘着力が劣るため好ましくない。
重合体ブロックd中、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物単位の質量比は、好ましくは70/30〜95/5、より好ましくは85/15〜95/5である。
上記水添前共重合体において、芳香族ビニル化合物単位と共役ジエン化合物単位との質量比は、芳香族ビニル化合物単位/共役ジエン化合物単位=5/95〜60/40であり、好ましくは5/95〜40/60であり、より好ましくは10/90〜30/70である。
【0018】
このような水添前共重合体を水素添加してなる水添共重合体((ハ)成分)は、例えば、[A−C−D](但し、Aは重合体ブロックaに由来する重合体ブロック、cは重合体ブロックcに由来する重合体ブロック、dは重合体ブロックdに由来する重合体ブロックを示す。)で表される構造を有する。
(ハ)成分として用いられる水添共重合体の水素添加率は、80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。水素添加率が80%未満であると、耐熱性、耐候性に劣り、長期に貼付した場合の接着力の上昇が著しく、剥離の際に糊残りを生じやすい。
上記水添共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.01〜100g/10分、より好ましくは0.01〜80g/10分である。
【0019】
[(ニ)成分]
(ニ)成分は、下記重合体ブロックeと、下記重合体ブロックfとを含み、e−(f−e)、又は(e−f)(但し、eは重合体ブロックe、fは重合体ブロックf、n及びmは各々独立に1以上の整数を示す。)の構造を有するブロック共重合体であって、重合体ブロックeと重合体ブロックfとの質量比がe/f=5/95〜50/50であるブロック共重合体を、水素添加率が80%以上となるように水素添加してなる水添共重合体である。
[重合体ブロックe]ビニル結合の含有率が30%以下であるポリブタジエンブロック
[重合体ブロックf]共役ジエン化合物単位を含み、ビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(ニ)成分の水添前共重合体としては、生産性の観点から、上記[e−f]で表される構造を有するものが好ましい。
上記水添前共重合体を構成する重合体ブロックeは、ブタジエンを単独重合してなるポリブタジエンブロックである。重合体ブロックe中、ビニル結合含量は30%以下であり、好ましくは20%以下である。
上記水添前共重合体を構成する重合体ブロックfは、共役ジエン化合物単位及び他の繰り返し単位(例えば、芳香族ビニル化合物単位)からなる重合体ブロックである。
重合体ブロックf中、共役ジエン化合物単位の含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
重合体ブロックf中、ビニル結合含量は60%以上、好ましくは70%以上である。
上記水添前共重合体中、重合体ブロックeと重合体ブロックfとの質量比は、e/f=5/95〜50/50であり、好ましくは20/80〜50/50である。
【0020】
このような水添前共重合体を水素添加してなる水添共重合体((ニ)成分)は、E−[F−E]、又は[E−F](但し、Eは重合体ブロックeに由来する重合体ブロック、Fは重合体ブロックfに由来する重合体ブロック、n及びmは1以上の整数を示す。)で表される構造を有する。(ニ)成分として用いられる水添共重合体としては、生産性の観点から、上記[E−F]で表される構造を有するものが好ましい。
(ニ)成分として用いられる水添共重合体の水素添加率は、80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
上記水添共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.01〜100g/10分、より好ましくは0.01〜80g/10分である。
【0021】
[(ホ)成分]
(ホ)成分は、下記重合体ブロックa(重合体ブロックa定義及び詳細は、(イ)成分における重合体ブロックaと同様である。)と、下記重合体ブロックgと、下記重合体ブロックe(重合体ブロックeの定義及び詳細は、(ニ)成分における重合体ブロックeと同様である。)とを含むブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックgと重合体ブロックeの合計100質量%中、重合体ブロックaの含有率が5〜40質量%、重合体ブロックgの含有率が30〜90質量%、重合体ブロックeの含有率が5〜40質量%であるブロック共重合体を、水素添加率が80%以上となるように水素添加してなる水添共重合体である。
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックg]共役ジエン化合物単位55〜100質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜0質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が40%以上である重合体ブロック
[重合体ブロックe]ビニル結合の含有率が30%以下であるポリブタジエンブロック
重合体ブロックa、eの各々における、ビニル結合含量、芳香族ビニル化合物単位の含有率、単量体の種類等の条件は、上述の(イ)成分及び(ニ)成分におけるものと同様である。
(ホ)成分の水添前共重合体を構成する重合体ブロックgは、共役ジエン化合物単位55〜100質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜0質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が40%以上である重合体ブロックである。
重合体ブロックg中、共役ジエン化合物単位の含有率は、55〜100質量%、好ましくは65〜100質量%、さらに好ましくは75〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。
重合体ブロックg中、芳香族ビニル化合物単位の含有率は0〜45質量%、好ましくは0〜35質量%、さらに好ましくは0〜25質量%、最も好ましくは0〜20質量%である。
共役ジエン化合物単位及び芳香族ビニル化合物単位の含有率を上記の数値範囲内とすることによって、粘着剤組成物の柔軟性を向上させることができる。
なお、共役ジエン化合物単位、芳香族ビニル化合物単位以外の繰り返し単位を構成する他の単量体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物等)を用いることもできる。重合体ブロックb中、他の単量体の含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
重合体ブロックg中、ビニル結合含量は、40%以上、好ましくは40〜90%、より好ましくは40〜85%である。ビニル結合含量を上記範囲内とすることにより、タックと接着力のバランスに優れた粘着剤組成物を得ることができる。
重合体ブロックaと重合体ブロックgと重合体ブロックeの合計100質量%中の各重合体ブロックの含有率は、次のとおりである。
重合体ブロックaの含有率は、5〜40質量%、好ましくは5〜30質量%である。
重合体ブロックgの含有率は、30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%である。
重合体ブロックeの含有率は、5〜40質量%、好ましくは10〜35質量%である。
【0022】
このような水添前共重合体を水素添加してなる水添共重合体((ホ)成分)は、例えば、[E−G−A](但し、Eは、重合体ブロックeに由来する重合体ブロック、Gは、重合体ブロックgに由来する重合体ブロック、Aは、重合体ブロックaに由来する重合体ブロックを示す。)で表される構造を有する。
(ホ)成分として用いられる水添共重合体の水素添加率は、80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
上記水添共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.01〜100g/10分、より好ましくは0.01〜80g/10分である。
【0023】
[(ヘ)成分]
(ヘ)成分は、下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックb(以上の重合体ブロックa、bの定義及び詳細は、(イ)成分における重合体ブロックa、bと同様である。)とを含むブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックbとの質量比がa/b=5/95〜45/55であり、かつ、少なくとも2つの末端が重合体ブロックaであり、中間部分に少なくとも1つの重合体ブロックbを有するブロック共重合体(但し、カップリングにより得られる共重合体は除く。ここでの水添前のブロック共重合体を以下、水添前共重合体という。)を、水素添加率が80%以上となるように水素添加してなる水添共重合体である。
水添前共重合体としては、例えば、[a−b−a]、[a−b−b−a]、[a−b−a−a]、[a−b−b−b−a](但し、a、a、aは上記重合体ブロックaの条件を満たす重合体ブロック、b、bは上記重合体ブロックbの条件を満たす重合体ブロックを示す。)で表される構造を有するものである。これらのブロック共重合体においては、例えば、a、a、a及びb、bは、重合体ブロックa及び重合体ブロックbに関し、各々が異なる重合体ブロック(例えば、a、a、aがすべて異なるもの)であってもよいし、同一の重合体ブロック(例えば、a、a、aがすべて同じもの)であってもよい。
上記水添共重合体において、上記重合体ブロックaと上記重合体ブロックbとの質量比は、a/b=5/95〜45/55であり、好ましくは10/90〜35/65である。
【0024】
このような水添前共重合体を水素添加してなる水添共重合体((ヘ)成分)は、例えば、[A−B−A]、[A−B−B−A]、[A−B−A−A]、[A−B−B−B−A]等で表される構造を有する。(但し、A、A、Aは、上記重合体ブロックaに由来する重合体ブロック、B、Bは、重合体ブロックbに由来する重合体ブロックを示す。)。これらのブロック共重合体においては、例えば、A、A、A及びB、Bは、重合体ブロックA、Bに関し、各々が異なる重合体ブロック(例えば、A、A、Aがすべて異なるもの)であってもよいし、同一の重合体ブロック(例えば、A、A、Aがすべて同じもの)であってもよい。
なお、末端の重合体ブロックAは、共重合体全体の2質量%以上を占めていることが好ましい。重合体ブロックAの効果を確実に発揮させるためである。
(ヘ)成分として用いられる水添共重合体の水素添加率は、80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
上記水添共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.01〜100g/10分、より好ましくは0.01〜80g/10分である。
【0025】
[共重合体組成物]
本発明の粘着剤組成物を構成する共重合体組成物(1種以上の共重合体の集合)は、(イ)成分を必須成分として含むものであり、好ましくは、少なくとも(イ)成分及び(ロ)成分を含むものである。
共重合体組成物中の(イ)成分の含有率は、(イ)成分と(ロ)成分との合計量を100質量%として、粘着昂進を抑制する観点から、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
共重合体組成物は、さらに、上記(ハ)成分、上記(ニ)成分、上記(ホ)成分、及び上記(ヘ)成分から選ばれる1種以上を含むことができる。
共重合体組成物中、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ハ)成分の配合量との質量比は、((イ)+(ロ))/(ハ)=10/90〜90/10であり、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは50/50〜90/10である。
共重合体組成物中、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ニ)成分の配合量との質量比は、((イ)+(ロ))/(ニ)=10/90〜90/10であり、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは50/50〜90/10である。
共重合体組成物中、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ホ)成分の配合量との質量比は、((イ)+(ロ))/(ホ)=10/90〜90/10であり、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは50/50〜90/10である。
共重合体組成物中、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ヘ)成分の配合量との質量比は、((イ)+(ロ))/(ヘ)=10/90〜90/10であり、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは50/50〜90/10である。
【0026】
また、共重合体組成物中、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの質量比(A/B)は、好ましくは5/95〜25/75、より好ましくは5/95〜20/80、より好ましくは5/95〜15/85である。重合体ブロックAと重合体ブロックBとの質量比が上記範囲内であると、形成される粘着剤層に適度な保持力を付与することができ、また、被着体の表面に凹凸加工面が存在する場合でも、粘着剤層が凹凸加工面に対して良好な追随性を示すため、被着体の表面を確実に保護することができる。
共重合体組成物中、芳香族ビニル化合物単位の含有率は、5質量%以上、25質量%未満の範囲内とすることが好ましく、5〜20質量%の範囲内とすることが更に好ましく、7〜20質量%の範囲内とすることが特に好ましい。芳香族ビニル化合物単位の含有率を上記範囲内とすることにより、適度な保持力と被着体の表面の凹凸加工面への追随性を兼ね備えた粘着剤組成物を得ることができる。
【0027】
共重合体組成物の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量が3万〜50万であることが好ましく、8万〜30万であることが更に好ましく、10万〜20万であることが特に好ましい。重量平均分子量を3万〜50万の範囲とすることで、共重合体組成物の工業的な生産を容易なものとすることができる。重量平均分子量が3万未満であると、ポリマーを脱溶媒、乾燥させる工程において製造設備等にポリマーが付着してしまい、共重合体組成物の工業的生産が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が50万を超えると、溶剤への溶解性や熱溶融性が悪くなり、粘着剤層の形成が困難になる場合がある。
【0028】
共重合体組成物の、230℃、21.2Nの荷重で測定したメルトフローレート(以下、「MFR(230℃、21.2N)」と記す。)の値は、1〜100g/10分の範囲内であることが好ましい。MFR(230℃、21.2N)の値を上記の範囲内とすることによって、粘着剤組成物の押出成形性、ひいては生産性を大幅に向上させることができる。
押出成形性を更に良好なものとするためには、共重合体組成物のMFR(230℃、21.2N)の値を1〜50g/10分の範囲内とすることが好ましい。なお、MFR(230℃、21.2N)の値は、重量平均分子量、(イ)成分と(ロ)成分との質量比、芳香族ビニル化合物単位の含有量、(イ)成分及び(ロ)成分に含まれる共役ジエン化合物単位のビニル結合含有率及び水素添加率等の条件によってコントロールすることができる。なお、本明細書において「MFR(230℃、21.2N)」というときは、JIS K7210に記載の方法に準拠して測定したMFRの値を意味するものとする。
【0029】
また、共重合体組成物は、tanδ(80℃)の値が0.10以上であることが好ましい。tanδ(80℃)の値を0.10以上とすることにより、粘着剤層の浮きという不具合を改善させることができる。耐熱性とのバランスを考慮すると、tanδ(80℃)の値が0.10〜0.50の範囲内であることが好ましく、0.10〜0.20の範囲内であることが更に好ましい。なお、tanδ(80℃)の値は、芳香族ビニル化合物単位の含有率、(イ)成分や(ロ)成分に含まれる共役ジエン化合物単位のビニル結合含量及び水素添加率等の条件によって制御することができる。
【0030】
また、共重合体組成物は、tanδ(20℃)の値が0.15以下であることが好ましい。tanδ(20℃)の値を0.15以下とすることにより、高速剥離性を向上させることができる。なお、tanδ(20℃)の値は、(イ)成分や(ロ)成分に含まれる共役ジエン化合物単位のビニル結合含量及び水素添加率等の条件によって制御することができる。
【0031】
さらに、共重合体組成物は、G’(20℃)の値が1.8×10Pa以下であることが好ましい。G’(20℃)の値を1.8×10Pa以下とすることによって、適度な接着力を得ることができる。
但し、生産性という点を考慮すると、G’(20℃)の値が1.0×10〜1.5×10Paの範囲内であることがより好ましい。なお、G’(20℃)の値は、芳香族ビニル化合物単位の含有率、(イ)成分や(ロ)成分に含まれる共役ジエン化合物単位のビニル結合含量及び水素添加率等の条件によって制御することができる。
なお、本明細書において「tanδ(80℃)」、「tanδ(20℃)」、「G’(20℃)」というときは、商品名:ARES測定器(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、温度分散範囲−60〜100℃、昇温速度5℃/分、歪み0.14%、周波数10Hzの条件下で測定した動的粘弾性の値を意味するものとする。
【0032】
[任意成分]
本発明の粘着剤組成物において、上記共重合体組成物とともに配合可能な任意成分の一例としては、粘着付与剤が挙げられる。粘着付与剤を配合することにより、粘着剤組成物の初期粘着力を向上させることが可能となる。
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テルぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂又はこれらの水添物等、一般的に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用できる。これら粘着付与剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、本発明の粘着剤組成物に配合可能な任意成分の他の例としては、ポリオレフィン樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、光安定剤、熱重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、保存安定剤、フィラー等が挙げられる。
【0034】
本発明の粘着剤組成物中の任意成分(例えば、粘着付与剤等)の配合割合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%である。
【0035】
本発明の粘着剤組成物における、40℃雰囲気下で7日間放置した場合のピール強度の上昇値は、0.55N/10mm以下、好ましくは0.50N/10mm以下である。
上記ピール強度の上昇値とは、以下のようにして測定されるものである。
基材(ポリオレフィンフィルム)上に、粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されてなる粘着体(25mm×300mm×0.1mm(厚さ))を試験片として用いる。この試験片をJIS Z0237に準拠し、初期ピール強度を測定する。この試験片を40℃雰囲気下に7日間放置し、再度ピール強度を測定する。該ピール強度と初期ピール強度との差を、ピール強度の上昇値とする。
【0036】
[製造方法]
本発明の粘着剤組成物の製造方法としては、カップリング法によって、(イ)成分と(ロ)成分とからなる混合物を得た後、該混合物と、必要に応じて配合される上記(ハ)〜(ヘ)成分等の任意成分を混合する方法が好ましい。この方法によると、(イ)成分と(ロ)成分を1ポットで合成することができるため、製造工程の簡略化及び製造コストの低減を図ることができる。また、カップリング剤の種類や量を適宜定めることによって、(イ)成分と(ロ)成分の比率を所望の数値に容易に制御することができる。
具体的には、まず、(イ)成分と(ロ)成分をカップリング法によって同時に製造する。
上記カップリング法は、第1工程:[a−b]の構造を有する共重合体((ロ)成分の水添前共重合体)をブロック重合により合成する工程と、第2工程:上記[a−b]の構造を有する共重合体の一部を、カップリング剤Y−Z(但し、Yはカップリング剤残基、Zは脱離基、Xは2以上の整数を示す。)によりカップリングさせ、[a−b]−Yの構造を有する共重合体((イ)成分の水添前共重合体)を合成する工程と、第3工程:上記[a−b]の構造を有する共重合体及び上記[a−b]−Yの構造を有する共重合体を水素添加することにより、[A−B]の構造を有する水添共重合体((ロ)成分)及び{[A−B]−Y}の構造を有する水添共重合体((イ)成分)を製造し、(イ)成分と(ロ)成分とからなる共重合体組成物を得る工程とを含むものである。
【0037】
上記カップリング剤としては、例えば、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジブロモエタン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン等のハロゲン化合物;エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸等のカルボニル化合物、ジビニルベンゼン等のポリビニル化合物;ポリイソシアネート;等を挙げることができる。中でも、工業的に入手し易く、反応性も高いという理由から、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
【0038】
水素添加触媒としては、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を挙げることができ、より具体的には、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Rh、Ruなどのメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ruなどの金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土、塩基性活性炭などの担体に担持させた担持型不均一系触媒を挙げることができる。
なお、メタロセン系化合物の具体例としては、Cp環またはCp環上の水素をアルキル基で置換した配位子を二つ有するKaminsky(カミンスキー)触媒、ansa(アンサ)型メタロセン触媒、非架橋ハーフメタロセン触媒、架橋ハーフメタロセン触媒等を挙げることができる。
【0039】
また、Ni、Coなどの金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と、有機アルミニウムなどの還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru,Rhなどの有機金属化合物等を挙げることができる。
これらの水素添加触媒の中では、Ti,Zr,Hf,Ni,Co,Ru,Rhのいずれかを含むメタロセン系化合物が好ましく、Ti,Zr,Hfのいずれかを含むメタロセン系化合物が更に好ましい。また、チタノセン化合物とアルコキシリチウムとを反応させた触媒は、安価で工業的に特に有用な触媒であり、特に好ましい。
【0040】
水素添加触媒の具体的な例を挙げると、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭63−5401号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の触媒を挙げることができる。これら各種の触媒は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
次いで、上記カップリング法により得られた(イ)成分及び(ロ)成分の混合物に対して、(イ)成分及び(ロ)成分とは別に合成された(ハ)〜(ヘ)成分及び他の任意成分を、必要に応じて配合して、粘着剤組成物を得る。
上記(ハ)〜(ヘ)成分の各々の製造方法は特に限定されず、公知の方法によって合成することができるが、例えば以下のような方法で製造される。
水添前共重合体を構成する重合体ブロック(例えば、(ハ)成分の場合、重合体ブロックa、重合体ブロックb、及び重合体ブロックd)を有機溶媒中で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合し、ブロック共重合体(水添前共重合体)を得たのち、さらにこのブロック共重合体を水素添加すれば、共重合体組成物の任意の構成成分(例えば、(ハ)成分)が得られる。
前記有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレンなどの炭化水素溶媒が用いられる。
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。
この有機リチウム化合物としては、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物が用いられる。これらの具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルリチウム、イソプレニルジリチウムなどが挙げられ、単量体100重量部当たり、例えば、0.02〜0.2重量部の量で用いられる。
また、この際、ミクロ構造(共役ジエン部分のビニル結合含量)の調節剤としては、ルイス塩基、例えばエーテル、アミンなどが挙げられる。
このうち、エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、ブチルエーテル、高級エーテル、またはエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのポリエチレングリコールのエーテル誘導体などが挙げられる。アミンとしては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリブチルアミンなどの第3級アミンなどが挙げられる。
ミクロ構造の調節剤は、前記有機溶媒とともに用いられる。
重合反応は、通常、−30℃〜150℃で実施される。
また、重合は、一定温度にコントロールして実施してもよいし、あるいは、熱を除去せずに温度の上昇下で実施してもよい。
水素添加に用いられる触媒等としては、上述のものが挙げられる。
【0042】
[粘着剤層含有部材(表面保護フィルム等)]
本発明の粘着剤層含有部材(例えば、表面保護フィルム)は、基材と、基材の表面に積層して形成された粘着剤層とを備えたものであって、上記粘着剤層が、本発明の粘着剤組成物を含むものである。
【0043】
基材としては、例えば、金属、ガラス等の無機材料;ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の合成樹脂材料;その他セルロース系材料等の材料からなる基材を挙げることができる。これらの基材は単独で用いてもよいし、2種以上の基材を積層した積層体を用いてもよい。これらの基材の中でも、生産性、ハンドリング性、コスト的な観点からポリオレフィン系樹脂からなる基材が好適に用いられる。基材の厚さは特に限定されないが、粘着剤層と基材をロール状等のように変形させて取り扱う場合には、1.0mm以下であることが好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。下限値は、実用性の観点から、好ましくは10μm、より好ましくは20μmである。
【0044】
粘着剤層含有部材の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、成膜された合成樹脂製の基材の表面に粘着剤組成物をラミネートし、基材と粘着剤層とを積層一体化する方法、或いは、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物と合成樹脂製の基材を形成するための樹脂組成物とを共押出することにより、基材と粘着剤層とを積層一体化する方法等を挙げることができる。
【0045】
粘着剤組成物を合成樹脂製の基材にラミネートする方法としては、例えば、粘着剤組成物の溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出コーティング法等を用いることができる。この場合、基材層と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、合成樹脂製の基材に予め、コロナ放電、プライマー塗布等の表面処理を施しておくことが好ましい。
また、合成樹脂製の基材用の樹脂組成物と粘着剤組成物とを共押出により積層一体化する方法としては、例えば、インフレーション法やTダイ法等、従来公知の方法を用いることができる。これらの方法の中でも、高品質の粘着剤層含有部材を経済的に製造することが可能な、Tダイ法による共押出法が最も好ましい。
【0046】
粘着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、3〜50μmの範囲であることが望ましい。厚さが3μm未満であると、粘着力が不足する場合があり、50μmを超えると、コストが高くなるおそれがある。
本発明の粘着剤層含有部材(例えば、表面保護フィルム)は、光学用表面保護フィルムとして好適である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の粘着剤組成物及び粘着剤層含有部材について、実施例を用いて更に具体的に説明する。但し、これらの実施例は本発明の実施形態の例を示すものに過ぎない。従って、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるべきではない。なお、実施例、比較例中の部及び%は、特に断らない限り質量基準である。
【0048】
[共重合体組成物の調製]
(共重合体組成物1)
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500質量部、スチレン10質量部及びテトラヒドロフラン5質量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.13質量部を添加して、昇温重合を行った。重合転化率が略100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン87質量部、スチレン3質量部を加え、更に昇温重合を行った。
重合転化率が略100%に達した後、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.07質量部を加え、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa−Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約17万であった。
その後、反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03質量部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06質量部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、(イ)成分と(ロ)成分からなる共重合体組成物1を得た。共重合体組成物1は、(イ)成分として[A−B]−Y(Yはカップリング剤残基)の構造を有する共重合体(イ−1)と、(ロ)成分として[A−B]の構造を有する共重合体(ロ−1)とを含むものである。
【0049】
(共重合体組成物2、8、9)
単量体(スチレン、1,3−ブタジエン)、カップリング剤、触媒等の配合量を適宜調整したこと以外は前記の共重合体組成物1と同様にして、[A−B]−Y(Yはカップリング剤残基)の構造を有する共重合体(イ−1)((イ)成分)と、[A−B]の構造を有する共重合体(ロ−1)((ロ)成分)とからなる共重合体組成物2、8、9を得た。
(共重合体組成物3、4、10)
単量体(スチレン、1,3−ブタジエン)、カップリング剤、触媒等の配合量を適宜調整したこと以外は前記の共重合体組成物1と同様にして、[A−B]−Y(Yはカップリング剤残基)の構造を有する共重合体(イ−2)((イ)成分)と、[A−B]の構造を有する共重合体(ロ−2)((ロ)成分)とからなる共重合体組成物3、4、10を得た。
(共重合体組成物5〜7、11)
単量体(スチレン、1,3−ブタジエン)、カップリング剤、触媒等の配合量を適宜調整したこと以外は上記調製例1と同様にして、[A−B]−Y(Yはカップリング剤残基)の構造を有する共重合体(イ−3)((イ)成分)と、[A−B]の構造を有する共重合体(ロ−3)((ロ)成分)とからなる共重合体組成物5〜7、11を得た。
(共重合体組成物12)
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500質量部、スチレン10質量部及びテトラヒドロフラン5質量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.10質量部を添加して、昇温重合を行った。重合転化率が略100%に達した後、反応液を25℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン87質量部、スチレン3質量部を加え、更に昇温重合を行った。
重合転化率が略100%に達した後、水素ガスを0.4MPa−Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約13万であった。その後、反応容器内に、テトラクロロシラン0.04質量部を加え、撹拌した。調製例1と同様の条件で水素添加反応を行い、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、[A−B]構造を有する共重合体(ロ−1)からなる共重合体組成物12を得た。
【0050】
得られた共重合体組成物1〜12を構成する共重合体(イ−1)〜(イ−3)、共重合体(ロ−1)〜(ロ−3)の物性を表1に示す。
なお、表1中、「各ブロックの質量比」として記載した「a−b」または「a−b−c」(a、b、cは、数字を示す。)は、「(共重合体ブロックAの質量)−(共重合体ブロックBの質量)」(イ−1〜イ−3、ロ−1〜ロ−3)、「(共重合体ブロックAの質量)−(共重合体ブロックCの質量)−(共重合体ブロックDの質量)」(ハ−1)、「(共重合体ブロックEの質量)−(共重合体ブロックFの質量)」(ニ−1)、「(共重合体ブロックEの質量)−(共重合体ブロックBの質量)−(共重合体ブロックAの質量)」(ホ−1)、「(共重合体ブロックAの質量)−(共重合体ブロックBの質量)−(共重合体ブロックAの質量)」(ヘ−1、ヘ−2)を示す。
【0051】
(共重合体組成物13)
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500質量部、スチレン15質量部及びテトラヒドロフラン5質量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.10質量部を添加して、昇温重合を行った。重合転化率が略100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン75質量部を加え、更に昇温重合を行った。
重合転化率が略100%に達した後、スチレン10質量部を加え、更に重合を行った。重合転化率が略100%に達した後、水素ガスを0.4MPa−Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約13万であった。その後、調製例1と同様の条件で水素添加反応を行い、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、[A−B−A]構造を有する共重合体(ヘ−1)からなる共重合体組成物13を得た。
(共重合体組成物14)
単量体(スチレン、1,3−ブタジエン)、触媒等の配合量を適宜調整したこと以外は共重合体組成物13と同様にして、[A−B−A]の構造を有する共重合体(ヘ−2)からなる共重合体組成物14を得た。
共重合体(ヘ−1)、(ヘ−2)の物性を表1に示す。
【0052】
(共重合体組成物15〜17)
単量体(スチレン、1,3−ブタジエン)、触媒等の配合量を適宜調整したこと以外は共重合体組成物13と同様にして、共重合体(ハ−1)からなる組成物15、共重合体(ニ−1)からなる組成物16、及び共重合体(ホ−1)からなる組成物17の各々を得た。
共重合体(ハ−1)、共重合体(ニ−1)、共重合体(ホ−1)の物性を表1に示す。
なお、上記共重合体の物性の評価は以下の方法によるものである。
(1)重合体ブロックAと重合体ブロックBの質量比(A/B比)
共重合体を製造するときの原料の仕込み量から、重合体ブロックAと重合体ブロックBの質量比を算出した。
(2)1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の含有率(ビニル結合含量)
赤外吸収スペクトル法を用い、モレロ法により算出した。
(3)共役ジエン化合物単位の水素添加率(水素添加率)
四塩化炭素を溶媒として用い、270MHz、H−NMRスペクトルから算出した。
(4)MFR(230℃、21.2N)
JIS K7210に記載の方法に準拠して、230℃、21.2N荷重の条件で測定した。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例1)
共重合体組成物として、前記の共重合体組成物1((イ)成分及び(ロ)成分からなるもの)を用い、テトラヒドロフランを加えてテトラヒドロフラン溶液とした。その後、予め表面にコロナ放電処理を施した基材(厚さ80μmのPPフィルム)を用意し、その基材のコロナ放電処理を施した表面に、前記テトラヒドロフラン溶液を塗工し、乾燥して厚さ20μmの粘着剤層を形成して、基材の表面に粘着剤層が形成されてなる粘着剤層含有部材(表面保護フィルム)を得た。この粘着剤層含有部材をロール状の巻回体とし、下記の方法により物性を評価した。その結果を表2に示す。
(ピール強度)
JIS Z0237に準拠し、試験片を作製し初期ピール強度を測定した。また、その試験片を40℃雰囲気下で、7日間放置した後に再度ピール強度を測定し、初期ピール強度に対する上昇値を求めた。
また、実施例1で用いた共重合体組成物1中の、(イ)成分(共重合体(イ−1))と(ロ)成分(共重合体(ロ−1))との質量比を表2に示す。(イ)成分と(ロ)成分との質量比は下記の方法により求めた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、商品名:HLC−8120GPC、東ソー・ファインケム社製)による測定で得られた波形を波形分離することにより、(イ)/(ロ)の質量比を算出した。
【0055】
(実施例2〜7、比較例2〜5)
共重合体組成物として表2に記載した共重合体組成物((イ)成分及び(ロ)成分からなるもの)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験した。結果を表2に示す。
組成物中の(イ)成分と(ロ)成分との質量比も併せて表2に示す。
(比較例1)
共重合体組成物12(共重合体(ロ−1)からなる組成物)を用いたこと以外は実施例1と同様にして実験した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例8、9)
共重合体組成物3(共重合体(イ−2)及び共重合体(ロ−2)からなる組成物)と共重合体組成物15(共重合体(ハ−1)からなる組成物)との混合物(質量比は表3に示す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験した。結果を表3に示す。
(実施例10)
共重合体組成物3(共重合体(イ−2)及び共重合体(ロ−2)からなる組成物)と共重合体組成物16(共重合体(ニ−1)からなる組成物)との混合物(質量比は表3に示す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験した。結果及を表3に示す。
(実施例11)
共重合体組成物3(共重合体(イ−2)及び共重合体(ロ−2)からなる組成物)と組成物17(共重合体(ホ−1)からなる組成物)との混合物(質量比は表3に示す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験した。結果を表3に示す。
(実施例12)
共重合体組成物3(共重合体(イ−2)及び共重合体(ロ−2)からなる組成物)と組成物13(共重合体(ヘ−1)からなる組成物)との混合物(質量比は表3に示す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験した。結果を表3に示す。
(比較例6〜10)
共重合体組成物として、表3に示す組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実験した。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表2及び表3から、本発明の粘着剤組成物は、ピール強度の上昇値が小さく、粘着力の昂進の抑制効果に優れることがわかる。一方、本発明に属さない粘着剤組成物は、ピール強度の上昇値が高く、粘着力が昂進することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(イ)成分を含む粘着剤組成物であって、ピール強度の上昇値(40℃雰囲気下、7日間放置)が0.55N/10mm以下であることを特徴とする粘着剤組成物。
[(イ)成分]下記重合体ブロックaと下記重合体ブロックbとを含み、[a−b]−Y(但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、xは2以上の整数、Yはカップリング剤残基を示す。)の構造を有するブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックbとの質量比が、a/b=5/95〜45/55であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)〜(3)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(1)重量平均分子量が5〜50万である。
(2)水素添加率が80%以上である。
(3)230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレートが、5〜100g/10分である。
【請求項2】
下記(ロ)成分を含み、(イ)成分と(ロ)成分の合計100質量%中、(イ)成分の配合量が50質量%以上である請求項1に記載の粘着剤組成物。
[(ロ)成分]下記重合体ブロックa及び下記重合体ブロックbを含み、[a−b](但し、aは重合体ブロックa、bは重合体ブロックb、nは1〜3の整数を示す。)の構造を有するブロック共重合体を水素添加してなる水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜99質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜1質量%とを含み、共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
【請求項3】
下記(ハ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ハ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ハ)=10/90〜90/10である請求項2に記載の粘着剤組成物。
[(ハ)成分]下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックcと、下記重合体ブロックdとからなるブロック共重合体であって、芳香族ビニル化合物単位/共役ジエン化合物単位の質量比が5/95〜60/40であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックc]共役ジエン化合物単位のみからなる重合体ブロック、または共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とのランダム共重合体ブロック(ただし、芳香族ビニル化合物単位の含有率は45質量%以下である。)であって、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
[重合体ブロックd]共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とを含み、芳香族ビニル化合物単位が漸増するテーパーブロック
(1)水素添加率が80%以上である。
【請求項4】
下記(ニ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ニ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ニ)=10/90〜90/10である請求項2に記載の粘着剤組成物。
[(ニ)成分]下記重合体ブロックeと、下記重合体ブロックfとを含み、e−(f−e)、又は(e−f)(但し、eは重合体ブロックe、fは重合体ブロックf、n及びmは各々独立に1以上の整数を示す。)の構造を有するブロック共重合体であって、重合体ブロックeと重合体ブロックfとの質量比がe/f=5/95〜50/50であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックe]ビニル結合の含有率が30%以下であるポリブタジエンブロック
[重合体ブロックf]共役ジエン化合物単位を含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(1)水素添加率が80%以上である。
【請求項5】
下記(ホ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ホ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ホ)=10/90〜90/10である請求項2に記載の粘着剤組成物。
[(ホ)成分]下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックgと、下記重合体ブロックeとを含むブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックgと重合体ブロックeの合計100質量%中、重合体ブロックaの含有率が5〜40質量%、重合体ブロックgの含有率が30〜90質量%、重合体ブロックeの含有率が5〜40質量%であるブロック共重合体を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックg]共役ジエン化合物単位55〜100質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜0質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が40%以上である重合体ブロック
[重合体ブロックe]ビニル結合の含有率が30%以下であるポリブタジエンブロック
(1)水素添加率が80%以上である。
【請求項6】
下記(ヘ)成分を含み、かつ、(イ)成分と(ロ)成分との合計の配合量と、(ヘ)成分の配合量との質量比が、((イ)+(ロ))/(ヘ)=10/90〜90/10である請求項2に記載の粘着剤組成物。
[(ヘ)成分]下記重合体ブロックaと、下記重合体ブロックbとを含むブロック共重合体であって、重合体ブロックaと重合体ブロックbとの質量比がa/b=5/95〜45/55であり、かつ、少なくとも2つの末端が重合体ブロックaであり、中間部分に少なくとも1つの重合体ブロックbを有するブロック共重合体(但し、カップリングにより得られる共重合体は除く。)を水素添加してなる下記(1)の条件を満たす水添共重合体。
[重合体ブロックa]芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
[重合体ブロックb]共役ジエン化合物単位55〜100質量%と芳香族ビニル化合物単位45〜0質量%とを含み、該共役ジエン化合物単位におけるビニル結合の含有率が60%以上である重合体ブロック
(1)水添率が80%以上である。
【請求項7】
ポリオレフィンからなる基材層と、該基材層の片面に積層して形成された粘着剤層とからなる表面保護フィルムであって、上記粘着剤層が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる表面保護フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の表面保護フィルムを製造する方法であって、上記基材層及び上記粘着剤層を押出成形により積層する工程を含む、表面保護フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−274211(P2008−274211A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259745(P2007−259745)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】